説明

ビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体

【課題】有機EL用素子成分、特に正孔輸送材料として優れた新規なビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で示されるターフェニル誘導体に特定構造の三環性アミン基を2個有する新規なビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体である。


〔一般式(1)において、Aは、水素原子または一般式(2)で示される基を示す。〕


〔一般式(2)において、Arはアリール基を示し、また、Arは水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体に関する。さらに詳しくは、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子成分として用いることができる新規なビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子については、その原理的な可能性は従来から知られていたものの、実用的な素子の作製が初めて報告されたのは、1987年にコダック社のTangらによるものが最初である。彼らは発光層と正孔輸送層を分離し、薄膜で積層化させることにより有機EL素子の発光効率を向上させ、かつ、低電圧での発光を可能にし、発光素子としての可能性を世に示した(例えば、特許文献1参照)。これ以降、多くの研究者によって発光効率や素子寿命の改良のための研究が行われ、素子用材料として数多くの化合物が提案されてきた。その結果、発光特性についても十分な実用性を有する材料が開発されるに至った(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、素子寿命については未だに十分な特性が得られているとは言い難く、素子の駆動時に、時間とともに発光輝度が低下したり、ダークスポットと呼ばれる発光しない部分が現れたりする等の劣化が観測されている。これらの素子寿命に影響を及ぼす劣化の原因の一つとして、正孔輸送材料の特性が大きくかかわっていることが、最近の研究で明らかになってきた。具体的には、通電により正孔輸送材料が結晶化して薄膜の均一性をゆがめ、素子の短絡を招いたり、また、通電により正孔輸送材料が分解を起こして機能しなくなり、発光を阻害する等である。
【0003】
このような問題を解決すべく、正孔輸送材料として、改良された特性を有する化合物(通称:α−NPD)が用いられている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【化1】

【0005】
また、さらに最近になって、正孔輸送材料として、より高い融点や高い熱分解点を有するものが、発光や保存の安定性に優れ、また、発光寿命が長いことも見出されている(例えば、特許文献4参照)。一方、正孔輸送材料を含む正孔輸送層と陽極との間に、適切なイオン化ポテンシャル値を有する正孔注入材料を含む正孔注入層を設けることによって、よりスムースにホール移動が起こり、結果として単独の正孔輸送層を有する構成のものと比較して、より駆動電圧の低い、結果として安定性に優れ、駆動による特性の劣化が改善された素子が得られることも見出されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、これまでに開発されている優れた発光材料の特性を生かすに足る、十分な安定性を持った正孔輸送材料や正孔注入材料については、未だ得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−295695号公報
【特許文献2】特開平4−220995号公報
【特許文献3】特開平5−234681号公報
【特許文献4】特開2004−182740号公報
【特許文献5】特開2007−42973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、正孔注入及び輸送能力に優れ、駆動による特性の劣化が改善された、有機EL用正孔注入材料や有機EL用正孔輸送材料として優れた特性を有する新規なビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、文献に未記載の新規化合物である特定の構造を有するビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体を見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式(1)で示されるビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体を提供するものである。
【0010】
【化2】

【0011】
〔一般式(1)において、Aは水素原子または一般式(2)で示される基を示す。〕
【0012】
【化3】

【0013】
〔一般式(2)において、Arはアリール基を、またArは水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を示す。〕
【発明の効果】
【0014】
本発明のビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体を、正孔注入材料や正孔輸送材料として用いることにより、駆動電圧が十分低く、素子寿命の長い、優れた有機EL素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般式(1)におけるArの具体例としては、フェニル基;2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−メチル−4−エチルフェニル基、2−エチル−5−ブチルフェニル基等のアルキル基で置換されたフェニル基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−プロポキシフェニル基、3−イソプロポキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、4−t−ブトキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2−メトキシ−5−エトキシフェニル基等のアルコキシ基で置換されたフェニル基;2−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,6−ジメチル−4−メトキシフェニル基、2−イソプロポキシ−5−t−ブチルフェニル基、3−t−ブトキシ−4−イソプロピルフェニル基等のアルキル基及びアルコキシ基の双方で置換されたフェニル基;4−スチリルフェニル基、4−(1−メチル−2−フェニルエテニル)フェニル基、4−(1,2−ジフェニルエテニル)フェニル基、4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル基等のアルケニル基で置換されたフェニル基等を挙げることができる。
【0016】
また、1−ナフチル基、2−ナフチル基;4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、4−エチル−2−ナフチル基、4−プロピル−1−ナフチル基、4−イソプロピル−1−ナフチル基等のアルキル基で置換されたナフチル基;2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基;4′−メチル−4−ビフェニリル基、2′,4′−ジメチル−4−ビフェニリル基、3′,5′−ジエチル−3−ビフェニリル基、3′−メチル−4′−t−ブチル−3−ビフェニリル基等のアルキル基で置換されたビフェニリル基;4−p−ターフェニリル基、4−m−ターフェニリル基、4−o−ターフェニリル基;4′′−メチル−p−ターフェニリル基、3′′−5′′−ジメチル−p−ターフェニリル基、4′′−t−ブチル−p−ターフェニリル基、4′′−オクチル−p−ターフェニリル基等のアルキル基で置換されたターフェニリル基;9−フェナントリル基、1−アントリル基、9−アントリル基、1−ピレニル基等のアリール基等を挙げることができる。
【0017】
Arの具体例としては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基;ベンジル基;4−メチルベンジル基、2,4−ジメチルベンジル基、2−メチル−4−エチルベンジル基等のアルキル基で置換されたベンジル基;2−メトキシベンジル基、4−エトキシベンジル基、2,4−ジメトキシベンジル基等のアルコキシ基で置換されたベンジル基;1−ナフチルメチル基、4−ビフェニリルメチル基、2−(9−アントラセニル)メチル基等のアラルキル基等を挙げることができる。
【0018】
また、フェニル基;2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−メチル−4−エチルフェニル基、2−エチル−5−ブチルフェニル基等のアルキル基で置換されたフェニル基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−プロポキシフェニル基、3−イソプロポキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、4−t−ブトキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2−メトキシ−5−エトキシフェニル基等のアルコキシ基で置換されたフェニル基;2−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,6−ジメチル−4−メトキシフェニル基、2−イソプロポキシ−5−t−ブチルフェニル基、3−t−ブトキシ−4−イソプロピルフェニル基等のアルキル基及びアルコキシ基の双方で置換されたフェニル基;4−スチリルフェニル基、4−(1−メチル−2−フェニルエテニル)フェニル基、4−(1,2−ジフェニルエテニル)フェニル基、4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル基等のアルケニル基で置換されたフェニル基等を挙げることができる。
【0019】
さらに、1−ナフチル基、2−ナフチル基;4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、4−エチル−2−ナフチル基、4−プロピル−1−ナフチル基、4−イソプロピル−1−ナフチル基等のアルキル基で置換されたナフチル基;2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基;4′−メチル−4−ビフェニリル基、2′,4′−ジメチル−4−ビフェニリル基、3′,5′−ジエチル−3−ビフェニリル基、3′−メチル−4′−t−ブチル−3−ビフェニリル基等のアルキル基で置換されたビフェニリル基;4−p−ターフェニリル基、4−m−ターフェニリル基、4−o−ターフェニリル基;4′′−メチル−p−ターフェニリル基、3′′−5′′−ジメチル−p−ターフェニリル基、4′′−t−ブチル−p−ターフェニリル基、4′′−オクチル−p−ターフェニリル基等のアルキル基で置換されたターフェニリル基;9−フェナントリル基、1−アントリル基、9−アントリル基、1−ピレニル基等のアリール基等を挙げることができる。
【0020】
次に、上記一般式(1)で示されるビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体の製造方法について説明する。一般式(1)で示されるビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体は、Aが水素原子のものについては、式(3)で示される三環性アミン誘導体と、一般式(4)で示される4,4′′−ビスハロゲン置換−p−ターフェニルとを縮合反応させることにより合成できる。
【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
〔一般式(4)において、Xは臭素原子またはヨウ素原子のハロゲン原子を示す。〕
【0024】
式(3)の三環性アミン誘導体及び一般式(4)の4,4′′−ビスハロゲン置換−p−ターフェニルは、公知化合物である。
【0025】
また、一般式(1)で示されるビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体で、Aが一般式(2)で示される化合物については、一般式(1)でAが水素原子のものを、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、オキシ塩化リンを用いるVilsmeier反応によって、ビスフォルミル化することにより得られる式(5)のビスアルデヒド化合物を、一般式(6)のアリールフォスフォネート誘導体と縮合反応させることにより得られる。
【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
〔一般式(6)において、Ar及びArは前記一般式(1)の場合と同じである。また、Rはメチル基、エチル基、ブチル基等のC〜Cの低級アルキル基を示す。〕
【0029】
また、一般式(6)のアリールフォスフォネート誘導体は、一般式(7)のハロゲノメチル置換アリール誘導体を、亜リン酸トリアルキル等と加熱して合成することができる。
【0030】
【化8】

【0031】
〔一般式(7)において、Ar及びArは前記一般式(1)の場合と同じである。また、Yは塩素原子または臭素原子のハロゲン原子を示す。〕
【0032】
上記一般式(6)で示されるアリールフォスフォネート誘導体の具体例としては、下記式(6−01)〜(6−42)などが挙げられる。
【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
また、一般式(7)で示されるハロゲノメチル置換アリール誘導体の具体例としては、下記式(7−01)〜(7−42)などが挙げられる。
【0040】
【化15】

【0041】
【化16】

【0042】
【化17】

【0043】
【化18】

【0044】
【化19】

【0045】
【化20】

【0046】
上記式(5)のビスアルデヒド化合物と、一般式(6)のアリールフォスフォネート誘導体との縮合反応においては、一般的に縮合剤として塩基が用いられる。塩基の例としては、アルカリ金属やアルカリ土金属の水酸化物、炭酸塩、水素化物、低級アルコールの金属塩、または3級アミン類が用いられる。好ましくは、カリウムターシャルブトキシドやナトリウムメチラート等の低級アルコールの金属塩が用いられる。
【0047】
また、反応溶剤としては、ある程度の溶解性を有する、不活性の有機溶剤であればいずれをも用いることができる。好ましくは、メタノール、エタノール、1−ブタノール等の低級アルコールや、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類またはN,N−ジメチルホルムアミド等の極性の高い溶剤が用いられる。
【0048】
反応温度は、原料化合物の溶剤に対する溶解度や、反応のし易さ等によっても異なるので、一概には言えないが、通常、氷冷下または水冷下に反応物を混合させ、次いで室温で数時間撹拌して反応を完結させるのが一般的である。但し、反応の進行が遅い場合には、加熱等により反応を促進させる場合もある。
【0049】
次に、本発明の一般式(1)の化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化21】

【0051】
【化22】

【0052】
【化23】

【0053】
【化24】

【0054】
【化25】

【0055】
【化26】

【0056】
【化27】

【0057】
【化28】

【0058】
【化29】

【実施例】
【0059】
本発明のビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体について、代表的な合成の実施例を以下に示す。
【0060】
(実施例1)
4,4′′−ジブロモ−p−ターフェニル〔一般式(4)でX=Brの化合物〕5.82g(15.0ミリモル)、1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔式(3)〕6.36g(39.94ミリモル)、カリウムターシャルブトキシド5.39g(48.03ミリモル)、酢酸パラジウム0.21g(0.935ミリモル)、トリターシャルブチルフォスフィン1.2g(5.93ミリモル)及びキシレン240mlの混合物を窒素気流下撹拌しながら、100℃で1時間、次いで120℃で4時間加熱して反応を完結させる。反応液を熱時セライト濾過し、減圧で溶剤を留去して粗生成物7.99gを得る。このものについて、クロマト精製をくり返すことにより精製し、目的とするビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体〔例示化合物(1−43)〕の高純度品6.11gを得た(収率74.8%)。融点は245〜247℃であった。
【0061】
このものは、H−NMR(δ,ppm,CDCl)において、7.66(s,4H)、7.62(d,4H)、7.37(d,4H)、7.00〜7.20(m,6H)、6.76(t,2H)、4.79(t,3H)、3.87(t,3H)、1.50〜2.10(m,12H)のピークを示していることから、その構造が確認された。
【0062】
このものについて、熱分析による分解点の測定を行ったところ、熱分解温度は350℃以上という結果が得られた。
【0063】
(実施例2)
(1)N,N−ジメチルホルムアミド16.81g(230.0ミリモル)を氷冷下、冷却撹拌している中へ、オキシ三塩化リン14.64g(95.47ミリモル)を25分かけて滴下する。さらに、氷冷下1時間撹拌してVilsmeier試薬を調製した後、実施例1で得られた例示化合物(1−43)8.36g(15.35ミリモル)をN,N−ジメチルホルムアミド80mlに懸濁した溶液を、氷冷下4分かけて添加する。さらに氷冷下1時間、次いで室温で一晩撹拌して反応を完結させた後、氷水400mlに注入、撹拌しながら60℃湯浴で1時間加温して加水分解する。析出した結晶を濾取し、水、次いでメタノールで分散洗浄する。得られた結晶を減圧で加熱乾燥して粗生成物9.63gを得る。これをクロロホルムを溶媒に用いてクロマト精製することによりビスアルデヒド化合物〔式(5)〕7.32gを得た(収率79.4%)。
【0064】
(2)α−ブロモジフェニルメタン370.7g(1.50モル)〔例示化合物(7−29)、東京化成工業社製〕とトリエチルフォスファイト274.2g(1.65モル)を、160℃で4時間加熱、撹拌して反応を完結させる。室温に戻した後、反応混合物を減圧蒸留して、目的とするアリールフォスフォネート誘導体〔例示化合物(6−29)〕388.6gを得た(収率85.1%)。沸点は160〜164℃/0.3mmHgであった。
【0065】
(3)上記(1)で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕4.0g(6.66ミリモル)、上記(2)で得られたアリールフォスフォネート誘導体〔例示化合物(6−29)〕4.88g(16.04ミリモル)及びテトラヒドロフラン480mlを水冷下撹拌している中へ、カリウムターシャルブトキシド2.24g(19.96ミリモル)を加える。水冷下5分間撹拌した後、40℃で30分、さらに50℃で1時間撹拌して反応を完結させる。反応液を400ml氷水に注入して、析出結晶を濾取、メタノールで分散洗浄した後、乾燥させて粗生成物5.19gを得る。このものについてクロマト精製をくり返すことにより精製し、目的とするビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体〔例示化合物(1−29)〕の高純度品2.36gを得た(収率39.3%)。融点は260.5〜268℃であった。
【0066】
このものは、H−NMR(δ,ppm,CDCl)において、7.63(s,4H)、7.59(d,4H)、7.21〜7.40(m,20H)、6.92(s,2H)、6.89(d,2H)、6.83(d,2H)、6.69(s,2H)、4.75(t,2H)、3.65(t,2H)、1.44〜1.94(m,12H)のピークを示していることから、その構造が確認された。
【0067】
このものについて、熱分析による分解点の測定を行ったところ、熱分解温度は350℃以上という結果が得られた。
【0068】
(実施例3)
(1)ベンジルクロリド303.8g(2.40モル)〔例示化合物(7−01)、東京化成工業社製〕とトリエチルフォスファイト418.8g(2.52モル)を混合し、170℃で5時間加熱、撹拌して反応を完結させる。室温に戻した後、反応混合物を加熱減圧下に過剰のトリエチルフォスファイトを留去して、目的とするアリールフォスフォネート誘導体〔例示化合物(6−01)〕547gを得た(収率99.9%)。
【0069】
(2)実施例2の(3)と同様の方法で、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕4.0g(6.66ミリモル)及び実施例3の(1)で得られた例示化合物(6−01)3.66g(16.04ミリモル)を反応させて、例示化合物(1−01)を収率43.5%で得た。
【0070】
(実施例4)
(1)α−クロロ−p−キシレン56.24g(400ミリモル)〔例示化合物(7−02)、東京化成工業社製〕とトリエチルフォスファイト66.46g(400モル)を混合し、160℃で1時間、さらに170℃で7時間加熱、撹拌して反応を完結させる。室温に戻した後、反応混合物を加熱減圧下に過剰のトリエチルフォスファイトを留去して、目的とするアリールフォスフォネート誘導体〔例示化合物(6−02)〕94.5gを得た(収率97.5%)。
【0071】
(2)実施例2の(3)と同様の方法で、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕2.0g(3.33ミリモル)及び実施例4の(1)で得られた例示化合物(6−02)1.94g(8.01ミリモル)を反応させて、例示化合物(1−02)を収率46.7%で得た。
【0072】
(実施例5)
(1)α−クロロ−o−キシレン421.8g(3.0モル)〔例示化合物(7−04)、東京化成工業社製〕とトリエチルフォスファイト523.4g(3.15モル)を混合し、140℃で1時間、さらに170℃で5時間加熱、撹拌して反応を完結させる。室温に戻した後、反応混合物を加熱減圧下に過剰のトリエチルフォスファイトを留去して、目的とするアリールフォスフォネート誘導体〔例示化合物(6−04)〕706gを得た(収率97.1%)。
【0073】
(2)実施例2の(3)と同様の方法で、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕2.0g(3.33ミリモル)及び実施例5の(1)で得られた例示化合物(6−04)1.94g(8.01ミリモル)を反応させて、例示化合物(1−04)を収率37.1%で得た。
【0074】
(実施例6)
(1)2,4−ジメチルベンジルクロライド25.60g(165.5ミリモル)〔例示化合物(7−11)、東京化成工業社製〕とトリエチルフォスファイト28.90g(173.8ミリモル)を混合し、160℃で1時間、170℃で1.5時間、さらに180℃で2時間加熱、撹拌して反応を完結させる。室温に戻した後、反応混合物を加熱減圧下に過剰のトリエチルフォスファイトを留去して、目的とするアリールフォスフォネート誘導体〔例示化合物(6−11)〕34.2gを得た(収率80.6%)。
【0075】
(2)実施例2の(3)と同様の方法で、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕2.0g(3.33ミリモル)及び実施例6の(1)で得られた例示化合物(6−11)2.05g(8.00ミリモル)を反応させて、例示化合物(1−11)を収率34.4%で得た。
【0076】
(実施例7)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−15)より得られた例示化合物(6−15)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−15)を収率56.7%で得た。
【0077】
(実施例8)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−17)より得られた例示化合物(6−17)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−17)を収率44.1%で得た。
【0078】
(実施例9)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−20)より得られた例示化合物(6−20)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−20)を収率50.8%で得た。
【0079】
(実施例10)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−22)より得られた例示化合物(6−22)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−22)を収率46.4%で得た。
【0080】
(実施例11)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−24)より得られた例示化合物(6−24)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−24)を収率53.0%で得た。
【0081】
(実施例12)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−25)より得られた例示化合物(6−25)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−25)を収率29.8%で得た。
【0082】
(実施例13)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−27)より得られた例示化合物(6−27)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−27)を収率38.6%で得た。
【0083】
(実施例14)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−28)より得られた例示化合物(6−28)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−28)を収率47.1%で得た。
【0084】
(実施例15)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−30)より得られた例示化合物(6−30)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−30)を収率49.9%で得た。
【0085】
(実施例16)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−31)より得られた例示化合物(6−31)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−31)を収率60.5%で得た。
【0086】
(実施例17)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−35)より得られた例示化合物(6−35)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−35)を収率50.3%で得た。
【0087】
(実施例18)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−38)より得られた例示化合物(6−38)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−38)を収率23.6%で得た。
【0088】
(実施例19)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−40)より得られた例示化合物(6−40)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−40)を収率19.2%で得た。
【0089】
(実施例20)
実施例3の(1)と同様の方法で、例示化合物(7−41)より得られた例示化合物(6−41)と、実施例1で得られたビスアルデヒド化合物〔式(5)〕とを、実施例2の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−41)を収率42.2%で得た。
【0090】
実施例1〜20以外の目的とするビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体の例示化合物についても、上記の方法に準じて合成を行った。
【0091】
(応用例1)
以上の実施例1〜20で得られた例示化合物(1−43)、(1−29)、(1−01)、(1−02)、(1−04)、(1−11)、(1−15)、(1−17)、(1−20)、(1−22)、(1−24)、(1−25)、(1−27)、(1−28)、(1−30)、(1−31)、(1−35)、(1−38)、(1−40)、(1−41)を用いて、有機EL素子を作製し、その正孔輸送材料としての機能を確認した。有機EL素子は、ガラス基板上にITO電極を予め形成してある透明電極の上に、正孔輸送層として本発明の例示化合物の薄膜を形成し、その上に発光層及び電子輸送層としてアルミキノリン3量体の薄膜を形成、その上にMg/Al電極薄膜をさらに形成することにより作製した。
【0092】
以上のようにして作製した有機EL素子について、定電流装置を用いて100mA/cmの電流を印加したところ、十分な発光輝度で連続して発光することが確認された。いずれの例示化合物を用いた場合も、初期感度が半減するまでの発光寿命は100時間以上であった。
【0093】
(比較応用例1)
これに対し、比較化合物としてα−NPDを用いて、同様の有機EL素子を作製し、同様の定電流装置を用いて100mA/cmの電流を印加したところ、最初は十分な発光輝度で発光したが、発光寿命が例示化合物と比較して短く、約50時間であった。
【0094】
(応用例2)
次に、正孔輸送層の代わりに正孔注入層として、応用例1で用いた本発明の例示化合物を用い、応用例1で作製した正孔輸送層の代わりに、応用例1で作製した正孔輸送層の約半分の膜厚の正孔注入層を形成させ、その上に、比較物質のα−NPDを用いて、応用例1で作製した正孔輸送層の約半分の膜厚の正孔輸送層を形成させて、通常の構成の正孔輸送層の代わりに、ほぼ同じ膜厚で、正孔注入層/正孔輸送層の2層構成とした素子を作製した。比較応用例1の正孔輸送材料としてα−NPDを用いた通常の構成の素子と比較した結果、2層構成とした素子では、同一の電流密度を与えるのに必要な駆動電圧が、10%〜20%低減することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の活用例として、特に駆動電圧が低く、また発光寿命に優れた有機EL用素子を実現することができる。また、この他、電子写真感光体等に用いる電子材料としても、優れた特性を有すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるビス三環性アミン置換ターフェニル誘導体。
【化1】

〔一般式(1)において、Aは、水素原子または一般式(2)で示される基を示す。〕
【化2】

〔一般式(2)において、Arはアリール基を示し、また、Arは水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を示す。〕

【公開番号】特開2011−63550(P2011−63550A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216407(P2009−216407)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】