説明

ビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩の製造方法

【課題】 一段階の反応で合成することができ、かつステンレス製やガラス製の反応器を用いることが可能なビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 化学式:XSONCO(式中、Xは、塩素、フッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基である)で示される化合物と、三酸化硫黄と、MF(式中、Mは、1価の陽イオンである)で示される化合物塩とを、反応させる、(FSO)(XSO)NM(式中、Xは、フッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基である)で示される化合物塩の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質等に用いられるビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩は、イオン伝導材料やイオン液体のアニオン部位として有用であることが知られている。このビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩の合成方法としては、以下が知られている。
【0003】
第1の合成方法は、フルオロ硫酸と尿素を反応させる方法で、具体的には、原料として、フルオロ硫酸と尿素を用い、原料を加熱しながら反応させ、生成したビス(フルオロスルホニル)アミド((FSONH)と過剰のフルオロ硫酸を、減圧蒸留により回収する(非特許文献1)。この合成方法は、式(1):
3FSOH+CO(NH
→(FSONH+NHHSO+HF+CO (1)
で示される。
【0004】
第2の合成方法は、ビス(クロロスルホニル)アミド((ClSONH)をAsFと反応させる(非特許文献2)。この合成方法は、式(2):
3(ClSONH+2AsF→3(FSONH+2AsCl (2)
で示される。
【0005】
第3の合成方法は、ビス(クロロスルホニル)アミド((ClSONH)を、ニトロメタン溶媒中、KF等によりフッ素置換する方法であり(特許文献1)、この合成方法は、式(3):
(ClSONH+2KF→(FSONH+2KCl (3)
で示される。
【0006】
第4の合成方法は、ペルフルオロ−N−(ハロゲン化スルホニル)アルカンスルホニルアミド((RSO)(XSO)N−、式中、Rはペルフルオロアルキル基であり、Xはハロゲンである)を有機溶媒中、塩基性触媒存在下でKF等を用いてフッ素置換し、ペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミドカリウム塩((RSO)(FSO)NK)等を合成する方法であり(特許文献2)、この合成方法は、式(4):
(RSO)(XSO)NH+KF
→(RSO)(FSO)NK+HF (4)
で示される。
【0007】
第5の合成方法は、フルオロ硫酸(FSOH)とフルオロスルホニルイソシアネート(FSONCO)とを反応させ、生成したビス(フルオロスルホニル)アミド((FSONH)と過剰に投入したフルオロ硫酸を、減圧蒸留で回収する(非特許文献3)。この合成方法は、式(5):
FSOH+FSONCO→(FSONH+CO (5)
で示される。
【0008】
第6の合成方法は、クロロスルホニルアミド((ClSO)(RSO)NH、式中、Rはフッ素、塩素または炭素数1〜6のフッ化アルキル基である)とオニウム塩とを反応させ、クロロスルホニルアミドのオニウム塩((ClSO)(RSO)NX、式中、Xはオニウム塩である)を生成し、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(アンチモン、砒素は除く)のフッ化物を用いて、フルオロスルホニルアミド塩((FSO)(RSO)NX)を合成する方法である(特許文献3)。ここで、クロロスルホニルアミドは、塩化シアン、もしくはアミド硫酸を原料として合成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2004−522681号公報
【特許文献2】特開2007−182410号公報
【特許文献3】特開2010−168308号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】アッペル及びアイゼンハウアー(Appel & Eisenhauer)、Chem.Ber.、1962年、95、p.246〜248
【非特許文献2】ルフ及びルスティッヒ(Ruff & Lustig)、Inorg.Synth.、1968年、11、p.138〜143
【非特許文献3】アッペル及びリッタースバッハー(Appel & Rittersbacher)、Chem.Ber.、1964年、97、p.849〜851)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、第1の合成方法では、副生成物としてフッ化水素が発生するため、ステンレス製やガラス製の反応器を使用することが困難であり、ポリテトラフルオロエチレン製等のフッ素樹脂を使用しなければならない。ポリテトラフルオロエチレン製反応器は、伝熱性が悪いので、加熱時のエネルギー伝達効率が低く、高価である、という問題がある。
【0012】
また、第2の合成方法で原料として使用するAsFは、入手が困難であり、かつ有毒である、という問題がある。
【0013】
第3の合成方法で溶媒として使用するニトロメタンは、爆発しやすい上に高価である。第4の合成方法では、塩基性触媒にアミンを使用するため、臭気対策が必要になる。また、第3、第4の製造方法は、ともに高価なフッ化カリウムを使用する、という問題がある。
【0014】
第5の製造方法では、フルオロ硫酸とフルオロスルホニルイソシアネート(FSONCO)の反応時間が長い、という問題がある。
【0015】
第6の製造方法では、原料のクロロスルホニルアミドを合成するために、有毒な塩化シアンを使用しなければならない、製造工程が長い、フッ化物が高価である、という問題がある。
【0016】
また、第1、5の製造方法では、いずれも反応時に水が混入した場合、フッ化水素の発生を防ぐことができない。
【0017】
本発明は、上記の問題を解決し、ビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩を一段階の反応で合成することができ、かつステンレス製やガラス製の反応器を用いることが可能なビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決したビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩の製造方法に関する。
〔1〕化学式:XSONCO(式中、Xは、塩素、フッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基である)で示される化合物と、三酸化硫黄と、化学式:MF(式中、Mは、1価の陽イオンである)で示される化合物塩とを、反応させることを特徴とする、化学式:(FSO)(XSO)NM(式中、Xは、フッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基であり、Mは、上記のとおりである)で示される化合物塩の製造方法。
〔2〕化学式:XSONCOで示される化合物に、三酸化硫黄を溶解した後、得られた溶解液と化学式:MFで示される化合物塩とを反応させることを特徴とする、上記〔1〕記載の化合物塩の製造方法。
〔3〕ステンレス製またはガラス製の反応器中で反応させる、上記〔1〕または〔2〕記載の化合物塩の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ビス(フルオロスルホニル)アミド塩、またはペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩を、一段階の反応で合成することができ、かつステンレス製やガラス製の反応器を用いることができる。また、MFを過剰に加え反応系内を塩基性にすることにより、反応時に水が混入しフッ化水素が発生した場合でも、MFがフッ化水素を中和することで、ステンレスやガラスの腐食を防ぐことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いてモル%である。
【0021】
本発明の化学式:(FSO)(XSO)NM(式中、Xは、フッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基であり、Mは、1価の陽イオンである)で示される化合物塩(ビス(フルオロスルホニル)アミド塩、またはペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩)の製造方法は、化学式:XSONCO(式中、Xは、塩素、フッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基である)で示される化合物(ペルフルオロアルカンスルホニルイソシアネートまたはハロゲン化スルホニルイソシアネート)と、三酸化硫黄と、化学式:MF(式中、Mは、1価の陽イオンである)で示される化合物塩とを反応させることを特徴とする。ここで、Xが、フッ素または塩素の場合には、Xがフッ素になり、ビス(フルオロスルホニル)アミド((FSONM)が製造され、Xが炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基である場合には、XはXと同じで、ペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩((FSO)(XSO)NM)が製造される。
【0022】
Mとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、オニウムイオン等が挙げられる。オニウムイオンは、窒素、硫黄、酸素、リン、セレン、錫、ヨウ素、アンチモン等の孤立電子対を有する元素を含む化合物に、陽イオン柄の電子団が配位して生ずる少なくとも一つの有機基を有するカチオンであればよく、特に制限されない。オニウムイオンは、具体的には、テトラ−n−ブチルアンモニウムイオン、テトラ−n−エチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムイオン等のイミダゾリウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルヘキサデシルホスホニウムイオン等のホスホニウムイオンが挙げられる。
【0023】
、及びXの炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、ノナフルオロブチル、ノナフルオロイソブチル、ノナフルオロ−sec−ブチル、ノナフルオロ−tert−ブチルが挙げられる。
【0024】
また、化学式:(FSO)(XSO)NMで示される化合物塩の好ましい製造方法は、化学式:XSONCOで示される化合物に三酸化硫黄を溶解させる。その後、化学式:MFで示される化合物塩、好ましくは溶媒に溶解もしくは分散させた液に、上記三酸化硫黄のXSONCO溶液を滴下して反応させる。これは三酸化硫黄が、化学式:XSONCOで示される化合物に溶解しやすく、三酸化硫黄とMFが直接接触すると激しく反応してしまうからである。
【0025】
ペルフルオロアルカンスルホニルイソシアネートまたはハロゲン化スルホニルイソシアネートに溶解させる三酸化硫黄の量は、ペルフルオロアルカンスルホニルイソシアネートまたはハロゲン化スルホニルイソシアネート:1モルに対して1〜2モル、好ましくは1.0〜1.2モルである。三酸化硫黄の量がペルフルオロアルカンスルホニルイソシアネートまたはハロゲン化スルホニルイソシアネート:1モルに対して1モル未満であると、反応効率が悪く、2モルを超えると、三酸化硫黄が過剰になり、MFを大量に使用しなければならないため経済的に無駄である。
【0026】
が塩素の場合、MFの添加量は、三酸化硫黄:1モルに対して2〜10モル、好ましくは2〜5モルである。MFの量が三酸化硫黄:1モルに対して2モル未満であると、反応効率が悪く、系内が酸性になりステンレス製やガラス製の反応器が腐食してしまう。10モルを超えると、MFが過剰になり、経済的に無駄である。MFを反応に必要な化学等量に対して過剰にすることにより、系内の酸性化を防ぐことができる。系内にMFが過剰に存在すると、仮に、ペルフルオロアルカンスルホニルイソシアネートまたはハロゲン化スルホニルイソシアネート等に水が混入し、反応中にフッ化水素が発生しても、MFがフッ化水素を中和し、ステンレス製またはガラス製の反応器を使用していても容器の腐食を防止することが可能となる。
【0027】
がフッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基である場合、MFの添加量は、三酸化硫黄:1モルに対して1〜5モル、好ましくは1〜3モルである。MFの量が三酸化硫黄:1モルに対して1モル未満であると、反応効率が悪く、系内が酸性になりステンレス製やガラス製の反応器が腐食してしまう。MFの量が三酸化硫黄:1モルに対して5モルを超えると、MFが過剰になり、経済的に無駄である。
【0028】
溶媒は使用しなくても良いが、好ましくは溶媒を使用したほうが良い。使用する溶媒としては、ペルフルオロアルカンスルホニルイソシアネートまたはハロゲン化スルホニルイソシアネートや、三酸化硫黄と反応しない溶媒であれば特に限定されず、例えば、デカヒドロナフタレン、直鎖状、分岐状、または環状のアルカンが挙げられる。溶媒の量は、ペルフルオロアルカンスルホニルイソシアネートまたはハロゲン化スルホニルイソシアネート:1質量部に対して、2〜10質量部とするのが好ましく、より好ましくは2〜5質量部である。前記溶媒量がペルフルオロアルカンスルホニルイソシアネートまたはハロゲン化スルホニルイソシアネート:1質量部に対して10質量部を超えると溶媒が過剰になり、経済的に無駄である。
【0029】
反応温度は、50℃〜150℃、好ましくは80〜140℃である。
【0030】
ここで、Xが塩素の場合の反応は、式(7):
ClSONCO+SO+2MF→(FSONM+MCl+CO (7)
であり、Xがフッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基である場合の反応は、式(8):
SONCO+SO+MF→(FSO)(XSO)NM+CO (8)
である、と推測される。
【0031】
これらの反応の特徴は、一段階の反応で目的物を製造することができ、かつフッ化水素等の腐食性の高い副生成物の発生がないため、伝熱性がよく、加熱時のエネルギー伝達効率が高いステンレス製またはガラス製の反応器を用いることができることである。
【0032】
本発明のビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩の製造方法により、イオン伝導材料、およびイオン液体のアニオン部位として有用なビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩を、一段階の反応で製造することが可能となる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
攪拌機、温度計を備えた500cmのガラス製反応器に、三酸化硫黄:80g(1モル)を仕込み、クロロスルホニルイソシアネート:144g(1モル)を少量ずつ添加し、三酸化硫黄のクロロスルホニルイソシアネート溶液を調製した。
【0035】
攪拌機、温度計を備えた2dmのガラス製反応器に、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム:656g(2.5モル)、デカヒドロナフタレン:576gを仕込み、100℃に加熱した。そこに、上記三酸化硫黄のクロロスルホニルイソシアネート溶液を、30分かけて滴下した。滴下と同時にCOガスの発生が確認された。24時間後、COガスの発生が収まったところで反応終了とした。その後、速やかに冷却し、反応液を19F−NMRで分析を行った。51.4ppmにビス(フルオロスルホニル)アミド・テトラ−n−ブチルアンモニウム塩のピークが確認された。内部標準添加法による、ビス(フルオロスルホニル)アミド・テトラ−n−ブチルアンモニウム塩のクロロスルホニルイソシアネート基準の収率は、70%であった。また、ガラス製反応器は、重量減少が無く、さらに腐食がないことが目視で確認された。
【0036】
〔実施例2〕
攪拌機、温度計を備えた500cmのガラス製反応器に、三酸化硫黄:80g(1モル)を仕込み、フルオロスルホニルイソシアネート:125g(1モル)を少量ずつ添加し、三酸化硫黄のフルオロスルホニルイソシアネート溶液を調製した。
【0037】
攪拌機、温度計を備えた2dmのSUS304製反応器に、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム:395g(1.5モル)、デカヒドロナフタレン:500gを仕込み、100℃に加熱した。そこに、上記三酸化硫黄のフルオロスルホニルイソシアネート溶液を、30分かけて滴下した。滴下と同時にCOガスの発生が確認された。24時間後、COガスの発生が収まったところで反応終了とした。その後、速やかに冷却し、反応液を19F−NMRで分析を行った。51.4ppmにビス(フルオロスルホニル)アミド・テトラ−n−ブチルアンモニウム塩のピークが確認された。内部標準添加法による、ビス(フルオロスルホニル)アミド・テトラ−n−ブチルアンモニウム塩のフルオロスルホニルイソシアネート基準の収率は、65%であった。また、SUS304製反応器は、重量減少が無く、さらに腐食がないことが目視で確認された。
【0038】
〔実施例3〕
攪拌機、温度計を備えた500cmのガラス製反応器に、三酸化硫黄:80g(1モル)を仕込み、トリフルオロメタンスルホニルイソシアネート:175g(1モル)を少量ずつ添加し、三酸化硫黄のトリフルオロメタンスルホニルイソシアネート溶液を調製した。
【0039】
攪拌機、温度計を備えた2dmのガラス製反応器に、フッ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム:196g(1.5モル)、デカヒドロナフタレン:784gを仕込み、120℃に加熱した。そこに、上記三酸化硫黄のトリフルオロメタンスルホニルイソシアネート溶液を、20分かけて滴下した。滴下と同時にCOガスの発生が確認された。20時間後、COガスの発生が収まったところで反応終了とした。その後、速やかに冷却し、19F−NMRで分析を行った。56.7ppmにトリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホニルアミド・1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩のピークが確認された。内部標準添加法による、トリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホニルアミド・1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩のトリフルオロメタンスルホニルイソシアネート基準の収率は、67%であった。また、ガラス製反応器は、重量減少が無く、さらに腐食がないことが目視で確認された。
【0040】
〔実施例4〕
攪拌機、温度計を備えた500cmのガラス製反応器に、三酸化硫黄:80g(1モル)を仕込み、ノナフルオロブタンスルホニルイソシアネート:325g(1モル)を少量ずつ添加し、三酸化硫黄のノナフルオロブタンスルホニルイソシアネート溶液を調製した。
【0041】
攪拌機、温度計を備えた2dmのSUS304製反応器に、フッ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム:239g(1.8モル)、デカヒドロナフタレン:1300gを仕込み、80℃に加熱した。そこに、上記三酸化硫黄のノナフルオロブタンスルホニルイソシアネート溶液を、60分かけて滴下した。滴下と同時にCOガスの発生が確認された。33時間後、COガスの発生が収まったところで反応終了とした。その後、速やかに冷却し、反応液を19F−NMRにて分析を行った。57.2ppmにノナフルオロ−N−(フルオロスルホニル)ブタンスルホニルアミド・1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩のピークが確認された。内部標準添加法による、ノナフルオロ−N−(フルオロスルホニル)ブタンスルホニルアミド・1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩のノナフルオロブタンスルホニルイソシアネート基準の収率は、60%であった。また、SUS304製反応器は、重量減少が無く、さらに腐食がないことが目視で確認された。
【0042】
〔比較例1〕
攪拌機、温度計を備えた50cmのガラス製反応器に、フルオロ硫酸:16gを仕込み、冷却しながら尿素:4gを少量ずつ添加し、尿素のフルオロ硫酸溶液を調製した。
【0043】
攪拌機、温度計を備えた100cmのガラス製反応器に、SUS304テストピースを容器内に入れ、フルオロ硫酸:5gを仕込み、80℃に加熱した。そこに、尿素のフルオロ流酸溶液を15g滴下した。尿素のフルオロ硫酸溶液を全て滴下しても溶液内に結晶の析出はみられなかった。また、COガスの発生も確認できなかったため、そのままの温度で、反応を48時間行った。冷却後、反応液を水に溶解し、19F−NMRにて分析を行った。51.4ppmにビス(フルオロスルホニル)アミドのピークが確認された。内部標準添加法による、ビス(フルオロスルホニル)アミドの尿素基準の収率は、18%であった。また、SUS304テストピースとガラス製反応器に、激しい腐食が目視にて確認された。
【0044】
上記のように、実施例1〜4の全てで、目的物を製造することができ、収率は60〜70%であった。また、SUS304製反応器、ガラス製反応器を、いずれも使用することができ、腐食が観察されなかった。これに対して、フルオロ硫酸と尿素から合成した比較例1では、収率が18%と低く、SUS304テストピースとガラス製反応器に、激しい腐食が確認された。
【0045】
このように、本発明のビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩の製造方法により、一段階の反応で、SUS304製反応器やガラス製反応器を用いて、ビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩を製造することできる。これらのビス(フルオロスルホニル)アミド塩、及びペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩は、イオン伝導材料、およびイオン液体のアニオン部位として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式:XSONCO(式中、Xは、塩素、フッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基である)で示される化合物と、三酸化硫黄と、化学式:MF(式中、Mは、1価の陽イオンである)で示される化合物塩とを、反応させることを特徴とする、化学式:(FSO)(XSO)NM(式中、Xは、フッ素または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキル基であり、Mは、上記のとおりである)で示される化合物塩の製造方法。
【請求項2】
化学式:XSONCOで示される化合物に、三酸化硫黄を溶解した後、得られた溶解液と化学式:MFで示される化合物塩とを反応させることを特徴とする、請求項1記載の化合物塩の製造方法。
【請求項3】
ステンレス製またはガラス製の反応器中で反応させる、請求項1または2記載の化合物塩の製造方法。

【公開番号】特開2012−162470(P2012−162470A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22306(P2011−22306)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(597065282)三菱マテリアル電子化成株式会社 (151)
【Fターム(参考)】