説明

ビットホルダおよび切削刃ならびにオーガヘッド

【課題】ビットの長手方向の軸を中心として回動可能に取り付けられる回動可能な切削刃と回動が規制された切削刃の複数種のビットを取付け可能なビットホルダを提供する。
【解決手段】切削刃4aの固定棒41を受け入れる固定棒受入れ穴11と,固定棒41を取り付ける取付け棒49を挿入する取付け穴12とを備え、端面に切削刃の回転を規制する回転阻止部13と切削刃の回転を許容する切削刃回転受け部14とを備えたビットホルダ1a。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削する掘削爪およびオーガヘッドに関し、ことにオーガヘッドの構造およびアースオーガヘッドのビットホルダならびに切削刃の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アースオーガのビットを交換可能とした構造は、例えば、下記特許文献1に記載されている。図9に示すように、この着脱式アースオーガビットは、ビット本体51とビットホルダ52と連結部材53とからなる。ビット本体51は、切削刃511を供えた切削頭部512およびこれに連接された固定棒513から構成される。この固定棒513は、軸方向に直交する断面形状が上下に配置された1対の円柱部分513bと中間のくびれ部分513aとを有しており、一方の側面には半欠状態にある抜け止め凹部514が構成される。ビットホルダ52はその端面に前記固定棒が挿入される受入れ穴521が穿設され、上下面には受入れ穴と交差する取付け穴522が穿設される。連結部材53は、ボルト531とナット532からなる。アースオーガのスクリューに溶接により固定されたビットホルダ52の受入れ穴521にビット本体51の固定棒513を挿入し、取付け穴522に連結部材53を挿入することによって、ビットはスクリューに取り付けられる。
【0003】
この着脱式アースオーガビットは、特殊な形状の固定棒を有する剣先刃ビット本体とこれを受け入れるビットホルダを用いているので、通常の円錐形のビット(丸形刃ビット)をビットホルダに回動可能に取り付けることはできない。このような、丸形刃ビットを取り付けるには、ビットホルダ自体を付け替えるか、ビットホルダが固定されたオーガヘッドを取り換えることが必要となる。
【特許文献1】特開2002−339680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ビットの長手方向の軸を中心として回動可能に取り付けられる従来からの形状を有する丸形刃ビット(回動可能な切削刃)と固定された剣先刃ビット(回動が規制された切削刃)の複数種のビットを選択して取付け可能なビットホルダ、および、このホルダに取り付ける剣先刃ビットの構造ならびにこのビットホルダを備えたアースオーガヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、ビットホルダの構造を、回動可能な切削刃である丸形刃ビットを回動可能に取り付けるとともに、回動が規制された切削刃である剣先刃ビットを回動しないように取り付け可能な構造とした。すなわち、本発明のビットホルダは、丸形刃ビットを回動可能に受ける受け部と、剣先刃ビットの回動を阻止する受け部とを備え、回動を阻止する受け部が回動可能受け部での丸形刃ビットの回動を妨げない構成とした。
【発明の効果】
【0006】
上記構成を備えることにより、本発明のビットホルダは、丸形刃ビットと剣先刃ビットを交換可能にビットホルダに取り付けることができ、地層の状態の変化に応じてビットを選択してオーガヘッドに取り付けて使用することができるので、地層の状態の変化に応じてオーガヘッドを交換する必要がなくなるまた、オーガヘッドを複数設ける必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[実施例1]図1〜図3を用いて、本発明にかかるビットホルダと剣先刃ビットの構造を説明する。図1は、上段が剣先刃ビットをビットホルダに取り付けた状態の上面図であり、下段がその正面図である。図2は、ビットホルダの構造を説明する図であり、上段が上面図、下段右がその正面図、下段左がその左側面図である。図3は、剣先刃ビットの構造を説明する図であり、上段が上面図、下段左がその正面図、下段右がその右側面図である。
【0008】
図2に示すように、ビットホルダ1は、直方体に構成され、固定棒受入れ穴11と、取付け穴12と、剣先刃ビット受け部13と、丸形刃ビット受け部14とを有している。
【0009】
固定棒受入れ穴11は、ビットの固定棒を受け入れる穴で、挿入された固定棒が内部で回動できるように固定棒の軸方向に直交する面での断面形状が円形に構成されている。固定棒受入れ穴11の底部111は、固定棒の後端部を支持することもできる。
【0010】
取付け穴12は、固定棒受入れ穴11の円形断面の側部の一部分を通ってビットホルダ1の上面から下面を貫通する穴で、挿入された固定棒のピン受け溝42に取付け棒49が嵌合して、ビットの前後方向の動きを規制し、ビットを回動可能に保持する働きを有する。
【0011】
剣先刃ビット受け部13は、ビットホルダ1の端面に設けられた縦長の溝で構成され、剣先刃ビット受け面131と案内壁132と底面133を有している。
【0012】
丸形刃ビット受け部14は、ビットホルダ1の端面に設けられた丸形刃ビット4bを受ける大きさの円形の穴を有し、丸形刃ビット受け部周壁面141と丸形刃ビット受け部底面142とを有している。丸形刃ビット受け部底面142は丸形刃ビットの端面442を受ける面である。丸形刃ビット受け部周壁面141は丸形刃ビットが挿入される穴を構成する壁面であり、剣先刃ビット受け部13の規制壁132の一部を外側に広げる形に設けられ、丸形刃ビットが回動可能に支持される。
【0013】
図1、図3に示すように、剣先刃ビット4aは、固定棒41と、ピン受け溝42と、係止部43と、凸条46と、剣先刃48とを有している。固定棒41は、剣先刃ビットの後部に設けられ、その後端部には係止部43と環状のピン受け溝42が設けられている。
【0014】
ピン受け溝42は、固定棒41がビットホルダ1の固定棒受入れ穴11に挿入された状態で取付け穴12に取付け棒49を挿入することにより、前後方向の動きが規制される。
【0015】
係止部43は、取付け棒49とともに切削刃ビットの抜けを阻止する。
【0016】
凸条46は、ビットホルダ1の剣先刃ビット受け部13に嵌合するように設けられ、ビットホルダ1に剣先刃ビット4aを取り付けたときに、剣先刃ビット4aの凸部46の周壁462が剣先刃ビット受け部13の規制壁132に接して、ビット長手方向軸での回動を規制する。
【0017】
剣先刃48は先端に剣先刃チップ483が溶接などにより固定されその後方に剣先刃48を覆うようにして硬化肉盛部482が設けられる。剣先刃48の後部は裾広がりとされ、剣先刃係止面481が設けられている。
【0018】
図1に示すように、剣先刃ビット4aの固定棒41をビットホルダ1の固定棒受入れ穴11に挿入した後、取付け穴12に取付け棒49を挿入することにより、剣先刃ビット4aは、前後の動きが規制されるとともに、ビット受け部13の規制壁132によって、回動が規制される。このことにより、剣先刃ビット4aの剣先刃係止面481がビットホルダ1の剣先刃ビット受け面131で受けられる。
【0019】
このようにして、ビットホルダ1に取り付けられた剣先刃ビット4aは、前後方向の動きが規制されて取り付けられるとともに、剣先刃ビット4aの長手方向の軸を中心とした回動も規制される。
【0020】
上記説明では、剣先刃ビット4aは、剣先刃係止面481がビットホルダ1の剣先刃ビット受け面131で受けられる構造としたが、剣先刃ビット4aの凸条底面461が、ビットホルダ1の剣先刃ビット受け部底面133で受けられる構造としてもよい。
【0021】
図2、4、5を用いて、発明のビットホルダ1に丸形刃ビット4bを取り付けた状態を説明する。丸形刃ビット4bは、固定棒41と、ピン受け溝42と、係止部43と、凸部底面441および凸部周壁面442を有する断面円形の凸部44と、先端に丸形刃チップ452を取り付けた先端部451が設けられた丸型刃45とからなる。
【0022】
ビットホルダ1の固定棒受入れ穴11に丸形刃ビット4bの固定棒41を挿入して、取付け穴12に取付け棒49を挿入することによって、丸形刃ビット4bは前後の移動が規制されて取り付けられる。丸形刃ビット4bの凸部44は丸形刃ビット受け部14に挿入され、凸部底面441が丸形刃ビット受け部底面142に支持され、ビットの長手方向軸を中心にして回動可能に支持される。
【0023】
[実施例2]本発明の第2の実施例を、図6および図7を用いて説明する。この実施例は、第1の実施例における剣先刃ビットの回動を規制する回動規制部を切削刃回動受け部の外側に設けた例であり、剣先刃ビットは切削刃回動受け部で支持されるように構成した。図6は、本実施例における剣先刃ビット4cの構造を示す正面図と右側面図であり、図7は、この実施例のビットホルダ1bの構造を示す正面図および左側面図ならびに側面図のI−I線での断面図である。
【0024】
第2の実施例にかかる剣先刃ビット4cは、固定棒41と、ピン受け溝42と、係止部43と、凸部44と、剣先刃48とを有している。固定棒41は、剣先刃ビットの後部に設けられ、その後端部には係止部43と環状のピン受け溝42が設けられている。ピン受け溝42は、固定棒41がビットホルダ1の固定棒受入れ穴11に挿入された状態で取付け穴12に取付け棒49を挿入することにより、前後方向の動きが規制される。剣先刃48は先端に剣先チップ483が固定されその後方に剣先刃48を覆うようにして硬化肉盛部482が設けられ、剣先刃48の後部は裾広がりとされ、剣先刃係止面481が設けられている。
【0025】
本実施例においては、凸部44の周壁面442に外側に突出する回動阻止用突出部463が設けられている。この例では、回動阻止用突出部463は、凸部底面441よりも先端側にその底部4631が設けられる。
【0026】
ビットホルダ1bは、固定棒受入れ穴11と、取付け穴12と、丸形刃ビット受け部14とを有している。さらに、ビットホルダ1bの丸形刃ビット受け部の周壁141には、複数の剣先刃ビット受け部134が周壁の外側に向けて設けられる。剣先刃ビット受け部134は、剣先刃ビット受け部底面1341が丸形刃ビット受け部底面142より剣先側になるように設けられている。
【0027】
このビットホルダ1bに剣先刃ビット4cを取り付けると、固定棒41が固定棒受入れ穴11に挿入されるとともに、凸部44がビットホルダ1bの丸形刃ビット受け部14に挿入される。凸部底面441は、丸形刃ビット受け部底面142に支持される。回動阻止用突出部463は、剣先刃ビット受け部134に挿入され、その側壁4632が剣先刃ビット受け部134の側壁1342により回動が規制される。
【0028】
このようにして、第1の実施例と同様に、同一のビットホルダを用いて、回動可能な切削刃を有する例えば丸形刃ビットと、回動を規制した切削刃を有する例えば剣先刃ビットの双方を選択して取り付けることが可能となる。
【0029】
この実施例では、剣先刃ビット受け部134の底面1341が丸形刃ビット受け部14の底面142より剣先側になるように設けるとしたが、剣先刃ビット受け部底面1341は、丸形刃ビット受け部底面142と同じ面であっても良い。この場合、剣先刃ビット4cの回転阻止用突出部底面4631は、凸部44の底面441と同じ面とされる。
【0030】
図8を用いて、オーガヘッドに溶接した本発明にかかるビットホルダにビットを取り付けた例を説明する。オーガヘッド2は、回転軸21と、この回転軸21の周囲に螺旋状に巻かれた2枚の羽根22と、回転軸21の上部に設けた結合部23とから構成される。羽根22の先端部には、本発明にかかるビットホルダ1と従来のビットホルダ3が溶接により固定され、各ビットホルダ1、3にはビット4が取り付けられる。
【0031】
このように、本発明によれば、一つのビットホルダで、回動可能に支持する丸形刃ビットと、回転を規制した剣先刃ビットの双方を選択して取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかるビットホルダに剣先刃ビットを固定した状態を説明する図。
【図2】本発明にかかるビットホルダの形状を説明する図。
【図3】本発明にかかる剣先刃ビットの形状を説明する図。
【図4】本発明にかかるビットホルダに取り付ける丸形刃ビットの形状を説明する図。
【図5】本発明にかかるビットホルダに丸形刃ビットを固定した状態を説明する図。
【図6】本発明の第2の実施例にかかる剣先刃ビットの形状を説明する図。
【図7】本発明の第2の実施例にかかるビットホルダの形状を説明する図。
【図8】本発明にかかるビットホルダを取り付けたオーガヘッドの形態を説明する図。
【図9】従来の剣先刃ビットとビットホルダの構成を説明する図。
【符号の説明】
【0033】
1a、1b:ビットホルダ
11:固定棒受入れ穴
111:固定棒受入れ穴底部
12:取付け穴
13:剣先刃ビット受け部
131:剣先刃ビット受け面
132:規制壁
133:剣先刃ビット受け部底面
134:剣先刃ビット受け部
1341:剣先刃ビット受け部底面
1342:剣先刃ビット受け部側壁
14:丸形刃ビット受け部
141:丸形刃ビット受け部周壁面
142:丸形刃ビット受け部底面
2:オーガヘッド
3:従来のビットホルダ
4:掘削刃(ビット)
4a、4c:剣先刃ビット
4b:丸形刃ビット
41:固定棒
42:ピン受け溝
43:係止部
44:凸部
441:凸部底面
442:凸部周壁面
45:丸形刃
451:先端部
452:丸形刃チップ
46:凸条
461:凸条底面
462:凸条案内面
463:回動阻止用突出部
4631:回動阻止用突出部底面
4632:回動阻止用突出部側壁
48:剣先刃
481: 剣先刃係止面
482:硬化肉厚部
483:剣先刃チップ
49:取付け棒
51:ビット本体
511:切削刃
512:切削頭部
513:固定棒
513a:くびれ部分
513b:円柱部分
514:抜け止め凹部
52:ビットホルダ
521:受入れ穴
522:取付け穴
53:連結部材
531:ボルト
532:ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アースオーガのオーガヘッドに固定するビットホルダにおいて、
切削刃の固定棒を受け入れる固定棒受入れ穴と固定棒を取り付ける取付け棒を挿入する取付け穴とを備え、
端面に切削刃の回転を規制する回転阻止部と切削刃の回転を許容する切削刃回転受け部とを備えた
ことを特徴とするビットホルダ。
【請求項2】
請求項1記載のビットホルダにおいて、
前記回転阻止部は、ビットホルダの端面に設けた溝形状で構成される
ことを特徴とするビットホルダ。
【請求項3】
請求項2記載のビットホルダにおいて、
前記回転阻止部の溝の両端部の面を、回転が規制される切削刃を受ける面とした
ことを特徴とするビットホルダ。
【請求項4】
請求項1記載のビットホルダにおいて、
前記回転阻止部は、ビットホルダの端面から内側に延びる溝形状で構成される
ことを特徴とするビットホルダ。
【請求項5】
請求項4記載のビットホルダにおいて、
前記切削刃回転受け部を、回転が規制される切削刃を受ける面とした
ことを特徴とするビットホルダ。
【請求項6】
請求項1に記載のビットホルダにおいて、
前記切削刃回転受け部は、前記回転阻止部の底面よりも奥に底面が設けられる
ことを特徴とするビットホルダ。
【請求項7】
請求項6に記載のビットホルダにおいて、
前記切削刃回転受け部の底面を、回転を許容する切削刃の受け面とした
ことを特徴とするビットホルダ。
【請求項8】
請求項2に記載のビットホルダに取り付けられる回転が規制される切削刃において、
前記ビットホルダに対向する面に前記回転阻止部に嵌めあわされる凸条を設けた
ことを特徴とする回転が規制される切削刃。
【請求項9】
請求項4に記載のビットホルダに取り付けられる回転が規制される切削刃において、
前記ビットホルダの端面から内側に延びる溝に嵌めあわされる凸条を設けた
ことを特徴とする回転が規制される切削刃。
【請求項10】
先端部に切削刃を取り付けるビットホルダを固定したオーガヘッドにおいて、
前記ビットホルダは、前記切削刃を支持するにあたり、切削刃の長手方向軸に回動可能に切削刃を支持する機構と、切削刃の長手方向軸の回動を阻止して切削刃を指示する機構とを備えた
ことを特徴とするオーガヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−1661(P2010−1661A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161791(P2008−161791)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(598152426)
【Fターム(参考)】