説明

ビデオゲーム処理装置、およびビデオゲーム処理プログラム

【課題】音響空間の構成を複雑にすることなく、ゲームの世界観に応じた聴取音を導出することができるようにする。
【解決手段】ビデオゲーム処理装置100が、仮想空間における所定の聴取位置Pにて聴き取られる聴取音をビデオゲーム処理装置100に備えられた音声出力部14により出力する音響情報として管理する音響管理テーブル12aと、仮想空間に存在する音源オブジェクトが発する音の可聴領域を含む音源オブジェクト情報を記憶する音源オブジェクト情報記憶部12bとを備え、聴取位置Pが可聴領域内に位置するか否かを判定し、聴取位置Pが可聴領域201内に位置すると判定したことに応じて、可聴領域201に対応する音源オブジェクト202の位置から聴取位置までの距離を示す聴取距離を算出し、聴取位置において音が聴こえる方向を示す聴取方向を特定し、聴取距離と聴取方向とに従って聴取音を導出し、導出した聴取音に従って音響情報を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレイヤが操作するプレイヤキャラクタが存在する仮想空間を表示画面上に表示してビデオゲームの進行を制御するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のビデオゲーム処理装置におけるサウンドシステム(ゲームの進行に応じて音声を出力するためのシステム)では、仮想空間に音響遮蔽物(以下、遮蔽物と呼ぶ。)が存在する場合、仮想空間における音源により発生する音に対する遮蔽物の影響を考慮して、聴取位置(例えば、プレイヤキャラクタの位置)で聴き取られる音(聴取音)を決定するための処理(音響処理)を実行している。
【0003】
このようなビデオゲーム処理装置には、例えば、仮想三次元空間内にオブジェクトを配置し、所定の発音位置から発音される音を所定の聴取位置において音響シミュレーションをする場合の音響シミュレーションの対象となる音場空間(すなわち、仮想空間における音の響きを示す空間。音響空間)を、複数の空間オブジェクト(所定の音響パラメータが与えられた仮想的なオブジェク)を組み合せることで構成するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−267675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のビデオゲーム処理装置では、音を発するオブジェクト(音源オブジェクト)自身の基準座標点などを音の発生位置とみなし、音響シミュレーションを行っている。そのため、ゲームの世界観に応じた特殊な音響効果を表現したい場合などには、音源オブジェクトや音響に影響を与えるオブジェクト(音響オブジェクト)の配置が複雑になり、音響シミュレーションに要する処理負荷が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決すべく、音響空間の構成を複雑にすることなく、ゲームの世界観に応じて聴取音を導出することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のビデオゲーム処理装置は、プレイヤが操作するプレイヤキャラクタが存在する仮想空間を表示画面上に表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、前記仮想空間における所定の聴取位置にて聴き取られる聴取音を前記ビデオゲーム処理装置に備えられた音声出力手段により出力する音響情報として管理する音響管理テーブルと、仮想空間に存在する音源オブジェクトが発する音の可聴領域と、前記仮想空間における前記音源オブジェクトの位置を示す座標である存在位置座標と、当該存在位置座標とは無関係に任意に定められた音が発生する方向を示す座標である方向指定座標とを含む音源オブジェクト情報を記憶する音源オブジェクト情報記憶手段と、前記聴取位置が前記可聴領域内に位置するか否かを判定する聴取判定手段と、該聴取判定手段により前記聴取位置が前記可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、前記聴取位置を示す聴取位置座標と前記方向指定座標とに基づいて、当該聴取位置において前記音が聴こえる方向を示す聴取方向を特定する聴取方向特定手段と、前記聴取方向に基づいて前記聴取音を導出する聴取音導出手段と、該聴取音導出手段により導出された聴取音に従って前記音響情報を更新する音響情報更新手段とを含むことを特徴とする。
【0008】
上記の構成としたことで、音響空間の構成を複雑にすることなく、ゲームの世界観に応じて聴取音を導出することができるようになる。
【0009】
前記聴取判定手段により前記聴取位置が前記可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、該可聴領域に対応する前記音源オブジェクトの位置から前記聴取位置までの距離を示す聴取距離を前記聴取位置を示す聴取位置座標と前記存在位置座標とに応じて算出する聴取距離算出手段を含み、前記聴取音導出手段は、前記聴取距離算出手段によって算出された聴取距離と前記聴取方向特定手段によって特定された聴取方向とに従って前記聴取音を導出する構成とされていてもよい。
【0010】
前記音源オブジェクト情報に含まれる前記可聴領域は、異なる音量レベル毎に区分けされた複数の区分エリアによって構成されており、前記聴取判定手段により前記聴取位置が前記可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、前記聴取位置が当該可聴領域における何れの区分エリアに位置しているかを確認する区分エリア確認手段を含み、前記聴取音導出手段は、前記区分エリア確認手段によって確認された区分エリアにおける音量レベルと前記聴取方向特定手段によって特定された聴取方向とに従って前記聴取音を導出する構成とされていてもよい。
【0011】
前記存在位置座標と前記方向指定座標とは、前記仮想空間における別々の座標を示す構成とされていてもよい。
【0012】
さらに、本発明のビデオゲーム処理プログラムは、プレイヤが操作するプレイヤキャラクタが存在する仮想空間を表示画面上に表示してビデオゲームの進行を制御するようにビデオゲーム処理装置に動作制御させるためのビデオゲーム処理プログラムであって、前記ビデオゲーム処理装置に、前記仮想空間における所定の聴取位置が、仮想空間に存在する音源オブジェクトが発する音の可聴領域と前記仮想空間における前記音源オブジェクトの位置を示す座標である存在位置座標と当該存在位置座標とは無関係に任意に定められた音が発生する方向を示す座標である方向指定座標とを含む音源オブジェクト情報を記憶する音源オブジェクト情報記憶手段に記憶される音源オブジェクト情報が示す可聴領域内に位置するか否かを判定する聴取判定処理と、該聴取判定手段により前記聴取位置が前記可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、前記聴取位置を示す聴取位置座標と前記方向指定座標とに基づいて、当該聴取位置において前記音が聴こえる方向を示す聴取方向を特定する聴取方向特定処理と、前記聴取方向に基づいて前記聴取位置にて聴き取られる聴取音を導出する聴取音導出処理と、該聴取音導出処理にて導出された聴取音に従って、前記聴取音を前記ビデオゲーム処理装置に備えられた音声出力手段により出力する音響情報として管理する音響管理テーブルにて管理される音響情報を更新する音響情報更新処理とを実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、音響空間の構成を複雑にすることなく、ゲームの世界観に応じて聴取音を導出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ビデオゲーム処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】音響情報の格納状態の例を示す説明図である。
【図3】音源オブジェクト情報の格納状態の例を示す説明図である。
【図4】音源オブジェクト情報の概念について説明するための説明図である。
【図5】音響情報更新処理の例を示すフローチャートである。
【図6】音響情報更新処理が開始されたときの仮想空間の構成の例について説明するための説明図である。
【図7】可聴領域における設定の他の例を説明するための説明図である。
【図8】音響情報更新処理の他の例を示すフローチャートである。
【図9】音源オブジェクト情報について仮想空間の他の構成例を用いて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態を示すビデオゲーム処理装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、ビデオゲーム処理装置100は、ゲームプログラム読取部10、制御部11、記憶部12、表示部13、音声出力部14、およびプレイヤ操作受付部15を含む。
【0017】
ゲームプログラム読取部10は、ゲームプログラムが格納された記憶媒体を内蔵するゲームカートリッジ20を着脱可能に受け付ける。ゲームプログラム読取部10は、挿入されたゲームカートリッジ20の記憶媒体から必要なゲームプログラムを読み出す。なお、この実施形態では、ゲームカートリッジ20に内蔵される記憶媒体には、RPGに分類されるビデオゲームプログラムが記憶されているものとする。ただし、ゲームカートリッジ20に内蔵される記憶媒体に記憶されるビデオゲームプログラムが属するジャンルはRPGに限定されず、例えばシミュレーションゲームなど種々のジャンルのものに適用できる。
【0018】
制御部11は、ゲームプログラム読取部10により読み取られたゲームプログラムを実行し、プレイヤの操作に応じてビデオゲームを進行するための各種の制御を実行する機能を有する。特に、本例における制御部11は、所定の聴取位置が音源オブジェクトに応じた可聴領域内に位置するか否かの判定、聴取距離の算出、聴取方向の特定、聴取距離と聴取方向に応じた聴取音の導出、キャラクタ毎の音響情報の導出、および記憶部12が備えた各種管理テーブルや記憶部にて管理される各種情報の更新処理などに必要な制御を行う。
【0019】
記憶部12は、ビデオゲームを進行する際に必要なゲームプログラムや各種のデータを記憶する記憶媒体である。記憶部12は、例えばRAMなどの不揮発性のメモリによって構成される。記憶部12には、ゲームの進行に従って登録・更新される各種の情報や、ゲームカートリッジ20に内蔵される記憶媒体から読み出されたゲームにおいて使用される各種の情報が格納される。
【0020】
本例では、記憶部12には、音響管理テーブル12aと、音源オブジェクト情報記憶部12bとが含まれる。情報の記憶媒体であるテーブルや記憶部に格納される各種情報については、後で詳しく説明する。
【0021】
表示部13は、制御部11の制御に従って、ゲーム進行やプレイヤ操作に応じたゲーム画面を表示する表示装置である。表示部13は、例えば、液晶表示装置によって構成される。なお、本例においては、仮想空間を表すゲーム画面が表示され、音響空間は表示されない。ただし、音響空間がゲーム画面として表示される構成とされていてもよい。
【0022】
音声出力部14は、制御部11の制御に従って、ゲーム進行やプレイヤ操作に応じて更新される音響管理テーブル12aに格納された音響情報などに基づいて音声などの音を出力する。
【0023】
プレイヤ操作受付部15は、複数のボタンやマウスなどによって構成されるコントローラからのプレイヤ操作に応じた操作信号を受け付け、その結果を制御部11に通知する。
【0024】
次に、ビデオゲーム処理装置100の記憶部12に格納される各種情報について説明する。
【0025】
図2は、音響管理テーブル12aにて管理される音響情報の格納状態の例を示す説明図である。ここで、「音響情報」とは、予め聴取位置として決められた位置において、仮想空間に存在する発音物体(音源オブジェクト)が発生する音がどのように聴こえるかを示す情報である。図2に示すように、本例においては、音響情報は、キャラクタを一意に特定するためのキャラクタIDと、プレイヤの操作対象であるキャラクタ(プレイヤキャラクタ)を示す操作フラグと、聴取位置を示す聴取位置座標と、聴取位置が音源オブジェクトの可聴領域内に位置する場合に可聴領域に対応する音源オブジェクトを示す音源オブジェクトIDと、減衰率と、聴取方向と、聴取音とを含む。
【0026】
ここで、「操作フラグ」とは、複数のキャラクタのうち、プレイヤの操作対象となっているキャラクタを特定するためのフラグである。本例においては、操作フラグが「1」に設定されたキャラクタを「プレイヤキャラクタ」とし、プレイヤキャラクタの位置を聴取位置とする。
【0027】
また、「減衰率」とは、音源オブジェクトIDにより特定可能な音源オブジェクトが発する音が聴取位置に到達するまでに減衰する割合を示す値である。本例においては、制御部11が、音源オブジェクトの存在位置から聴取位置までの距離に基づいて減衰率を算出する。なお、例えば音源オブジェクトが発する音の特性などに応じて、算出される減衰率の値が変わる構成としてもよい。
【0028】
また、「聴取方向」とは、聴取位置において音が聴こえる方向を示す情報である。本例においては、制御部11が、音源オブジェクトの存在位置ではなく、後述する「方向指定座標」を参照して聴取方向を特定する(図3参照)。
【0029】
また、「聴取音」とは、仮想空間においてプレイヤキャラクタが聴き取る音を示す情報である。本例においては、プレイヤキャラクタの「耳」に対応して互いに異なる2チャンネルの音を出力するための情報を管理する場合を例に説明を行なう。なお、公知のサラウンドシステムに対応するために、聴取音として3つ以上のチャンネルが設定される構成としてもよい。
【0030】
なお、プレイヤキャラクタが変更した場合に、出力する聴取音を素早く変更するために、制御部11は、後述する音響情報更新処理(図5参照)において、プレイヤキャラクタ以外の各キャラクタに対応する音響情報を適宜更新する構成としてもよい。また、この場合、例えばプレイヤキャラクタになる頻度が低いキャラクタの音響情報を更新する優先度を、他のキャラクタに比べて低くする構成としてもよい。
【0031】
図3は、音源オブジェクト情報記憶部12bにおける音源オブジェクト情報の格納状態の例を示す説明図である。ここで、「音源オブジェクト情報」とは、仮想空間において音を発する(すなわち、音を発しているように表示される)三次元オブジェクトである音源オブジェクトに関する情報である。図3に示すように、本例においては、音源オブジェクト情報は、音源オブジェクトを一意に特定するための音源オブジェクトIDと、音源オブジェクトから発生する音を示す音データと、仮想空間における音源オブジェクトの存在する位置を示す存在位置座標と、音の可聴領域と、方向指定座標とを含む。
【0032】
ここで、「可聴領域」は、仮想空間において音源オブジェクトが発する音が聴こえる領域として予め設定された領域を示す。可聴領域指定方法としては、例えば、「座標(D1,E2,F1)を中心とする半径Rの円の内側」など、種々の指定方法が考えられる。また、1つの音源オブジェクトに対して複数の可聴領域が設定された構成としてもよいし、可聴領域が所定の条件に従って仮想空間内を移動する構成としてもよい。
【0033】
また、「方向指定座標」とは、音源オブジェクトに対応する音が発生する方向を示す座標である。すなわち、制御部11は、聴取位置座標と方向指定座標とから、可聴領域にて聴き取られる音が発生している方向を特定する。つまり、制御部11は、聴取距離に応じた減衰率を算出することにより可聴領域で聴き取られる音の音量を特定する一方で、聴取位置座標と方向指定座標とから、可聴領域にて聴き取られる音が聴こえる方向を特定する。
【0034】
すなわち、音源オブジェクト情報は、一般的な音響シミュレーションとは異なり、音源オブジェクトの存在位置座標からは音が聴こえる方向を特定しない。よって、本例における「音源オブジェクト」の「音源」は、現実空間での「音源」とは、その概念を異にするものである。
【0035】
図4は、本例における音源オブジェクト情報の概念について説明するための説明図である。図4に示すように、仮想空間において、音源オブジェクト情報は、音源オブジェクト101と、可聴領域102と、方向指定座標103とを示す。
【0036】
そして、聴取位置が可聴領域102内に侵入すると、制御部11は、可聴領域102に対応する音源オブジェクト情報を参照して、聴取位置から音源オブジェクト101までの距離により音の減衰率を算出し、聴取位置と方向指定座標103とから音が聴こえる方向を特定する。
【0037】
次に、本例のビデオゲーム処理装置100の動作について説明する。
【0038】
図5は、音響処理の1つとして、ビデオゲーム処理装置100が実行する音響情報更新処理の例を示すフローチャートである。音響情報更新処理では、音源オブジェクト情報に基づいて聴取位置における聴取音の音量と聴取方向とを特定し、特定した音量と聴取方向とに応じて、音響管理テーブル12aに格納される音響情報を更新するための処理が実行される。なお、本発明に特に関係しない処理については、その内容を省略している場合がある。
【0039】
音響情報更新処理は、例えば、ゲームの進行中、制御部11が、仮想空間における聴取位置から所定範囲内に可聴領域が存在すると判定した場合に開始される。
【0040】
図6は、音響情報更新処理が開始されたときの仮想空間の構成の例について説明するための説明図である。図6に示すように、本例においては、仮想空間に、音源オブジェクトとして滝オブジェクト202が配置され、音響に影響を与えない仮想オブジェクトとして、「岩場」などが配置されている場合について説明を行なう。なお、聴取位置Pとしては、仮想空間を移動可能なプレイヤキャラクタの位置を用いるものとする。
【0041】
音響情報更新処理において、制御部11は、先ず、聴取位置Pが可聴領域内にあるか否かを判定する(ステップS101)。本例においては、制御部11は、音響管理テーブル12aと音源オブジェクト情報記憶部12bを参照して、操作フラグに「1」が設定されたキャラクタの聴取位置が可聴領域内に位置するか否かを判定する。すなわち、図5に示した場面では、制御部11は、聴取位置Pが可聴領域201内に位置すると判定する。
【0042】
ここで、聴取位置Pが可聴領域201内に位置すると判定すると(ステップS101のY)、制御部11は、可聴領域201に対応する音源オブジェクトである滝オブジェクト202の存在位置座標から聴取位置Pの位置を示す聴取位置座標までの距離(聴取距離)を算出する(ステップS102)。
【0043】
聴取距離を算出すると、制御部11は、算出した聴取距離に応じた音の減衰率を算出する(ステップS103)。なお、聴取距離に応じた音の減衰率の算出方法としては、例えば、予め音データの1部として距離に応じた音の減衰率を設定しておくことなどが考えられる。
【0044】
減衰率を算出すると、制御部11は、音源オブジェクト情報記憶部12bを参照して、可聴領域101に対応する方向指定座標203を特定する(ステップS104)。
【0045】
方向指定座標を特定すると、制御部11は、方向指定座標203と聴取位置Pの位置を示す聴取位置座標から、聴取方向を特定する(ステップS104)。本例においては、制御部11は、方向指定座標203から聴取位置座標に向かうベクトルの方向を聴取方向として特定する。
【0046】
聴取方向を特定すると、制御部11は、特定した減衰率と聴取方向から聴取音を導出する(ステップS106)。本例においては、制御部11は、可聴領域201に対応する音データに対して聴取方向と減衰率とに基づく調整処理(例えば、減衰率に応じて音量を変更したり、聴取方向に応じて各チャンネルに割り当てる音の出力タイミングにずれを与えたりする処理)を行うことにより、聴取音を導出する。なお、音データの調整処理に関しては、プレイヤキャラクタの向きと聴取方向とから出力音を調整することにより、プレイヤに対して実際にプレイヤキャラクタの位置で音を聴いているようにする公知の音響処理を採用するので、詳しい説明は省略する。
【0047】
聴取音を導出すると、制御部11は、音響情報を更新し(ステップS107)、ここでの処理を終了する。なお、音響情報を更新すると、制御部11は、更新した音響情報に応じた音を、音声出力部14を用いて出力するための処理を行う。
【0048】
上述した実施の形態では、音源オブジェクトの存在位置座標から聴取位置の位置を示す聴取位置座標までの距離(聴取距離)を算出し、算出した聴取距離に応じた音の減衰率を算出する構成としていたが、音源オブジェクトの存在位置ではなく、可聴領域が複数に区分された区分エリアによって構成されることとし、その可聴領域内における何れのエリアに聴取位置の位置を示す聴取位置座標が存在しているかを確認し、確認したエリアに応じて音の減衰率を決定するようにしてもよい。すなわち、音発生位置を音源オブジェクトの存在位置に設定することなく、聴取位置が可聴領域内の何れの区分エリアに位置しているかによって、音量が決定されるような構成としてもよい。
【0049】
具体的には、例えば図7に示すように、可聴領域が4つの区分エリアPmax,P2,P3,Pminによって構成されるものとし、各区分エリアPmax,P2,P3,Pmin毎に減衰率が対応付けされているものとする。各区分エリアPmax,P2,P3,Pminそれぞれの領域(例えば座標群)と、各区分エリアPmax,P2,P3,Pmin毎の減衰率とは、例えば音源オブジェクト情報における「可聴領域」に含まれるようにすればよい。なお、図7に示す例の場合、例えば、区分エリアPmaxが最大音量となるエリア(減衰率が最小)となり、区分エリアP2、区分エリアP3、区分エリアPminとなるに従って音量が低下していくように減衰率を設定しておくようにすればよい。
【0050】
図8は、上記の例の場合における音響情報更新処理の例を示すフローチャートである。この例では、音響情報更新処理において、聴取位置が可聴領域内に位置すると判定すると(ステップS101のY)、制御部11は、聴取位置が可聴領域内における何れの区分エリアに位置しているかを確認し(ステップS102a)、音源オブジェクト情報を参照して、確認した区分エリア(確認エリア)に応じた音の減衰率を決定する(ステップS103a)。そして、ステップS104に移行する。
【0051】
なお、上記の例においては、可聴領域を複数のエリアに区分して減衰率を設定しておくようにしていたが、可聴領域を区分することなく、可聴領域内の位置に応じて減衰率が定められるようにしてもよい。例えば、可聴領域内のある点(最高音量点)からの距離に応じて音量が低下していくような減衰率を算出する構成とすればよい。また、可聴領域に最大音量となる特定エリア(減衰率が最小となるエリア)を設定し、可聴領域における特定エリア以外のエリア(非特定エリア)については、特定エリアと非特定エリアとの境界からの距離に応じて音量が低下していくように減衰率を算出する構成としてもよい。
【0052】
以上に説明したように、上述した各実施の形態では、プレイヤが操作するプレイヤキャラクタが存在する仮想空間を表示画面上に表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置100が、仮想空間における所定の聴取位置Pにて聴き取られる聴取音をビデオゲーム処理装置100に備えられた音声出力部14により出力する音響情報として管理する音響管理テーブル12aと、仮想空間に存在する音源オブジェクトが発する音の可聴領域と、仮想空間における音源オブジェクトの位置を示す座標である存在位置座標と、その存在位置座標とは無関係に任意に定められた音が発生する方向を示す座標である方向指定座標とを含む音源オブジェクト情報を記憶する音源オブジェクト情報記憶部12bとを備え、聴取位置Pが可聴領域(例えば、可聴領域201)内に位置するか否かを判定し、聴取位置Pが可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、聴取位置Pを示す聴取位置座標と方向指定座標とに基づいて、その聴取位置Pにおいて音が聴こえる方向を示す聴取方向を特定し、聴取方向に基づいて聴取音を導出し、導出された聴取音に従って音響情報を更新する構成としているので、音響空間の構成を複雑にすることなく、ゲームの世界観に応じた聴取音を導出することができるようになる。
【0053】
すなわち、音源オブジェクトの位置とは無関係に任意に定められた聴取方向から聴取音を導出する構成としているので、複雑な音響効果を表現したい場合、例えば聴取方向の設定を先に行い、それに合わせて音響に影響しない仮想オブジェクトから成る仮想空間を作成することができるようになる。
【0054】
また、作成された仮想空間に対応する音響空間を作成する場合には、仮想空間に配置される仮想オブジェクトに対応する音響オブジェクトを作成して音響空間に配置することで音の遮蔽領域や可聴領域を構成するのではなく、可聴領域とする範囲を指定し、可聴領域に対応する音源オブジェクトの存在位置座標あるいは可聴領域における区分エリアの設定と、方向指定座標とを決定することにより目的とする音響空間を作成することができるので、音響空間の構成を複雑にすることなく、ゲームの世界観に応じた聴取音を導出できるようになる。
【0055】
すなわち、例えば図9に示すように、音源オブジェクト302にて発生する音が可聴領域301A,301Bでのみ聴き取れる仮想空間を作成する場合、仮想オブジェクトの位置に音響オブジェクトを配置して遮蔽率などを設定しても、なかなか上手くいかず、目的とする音響空間を構成することが困難となる場合がある。しかし、ビデオゲーム処理装置100で利用可能な音響空間を作成する場合、音源オブジェクト302と可聴領域301A,301Bとを別々に設定できるので、簡単に目的とする音響空間を作成することができるようになる。さらに、任意の位置に方向指定座標303A,303Bを設定することにより聴取方向を決めることができるので、より仮想空間の見た目に適した音響空間であると仮想空間の作成者が感じることのできる音響空間を作成することができるようになる。
【0056】
さらに、ビデオゲーム処理装置100が、聴取位置を示す聴取位置座標と存在位置座標から聴取距離を算出して音量レベル(減衰率)を定めたり、可聴領域における区分エリアの設定に応じて音量レベルを定めたりし、聴取位置を示す聴取位置座標と方向指定座標から聴取方向を特定する構成としているので、音源情報を作成する場合に、目的とする音響効果を実現する音響空間を作成するための作業負担を軽減させることができるようになる。
【0057】
すなわち、音源オブジェクトの配置作業において、可聴領域と、可聴領域において音が聴こえる方向と、可聴領域内における音量レベルとを別々に設定することができるので、希望する音響効果を作成したり、特殊な効果を表現したりすることが容易になる。また、仮想空間の構成をできるだけ音響効果に適したものとすることにより、仮想空間の構成に合わせた音響空間を用いて音響シミュレーションを行うことにより聴取音を導出するような場合に比べて、小さい処理負荷で適切な聴取音を出力することができるようになる。
【0058】
また、上述した実施の形態において、ビデオゲーム処理装置100が、聴取位置Pが可聴領域201内に位置すると判定されたことに応じて、その可聴領域201に対応する音源オブジェクト(例えば、滝オブジェクト202)の位置から聴取位置Pまでの距離を示す聴取距離を聴取位置を示す聴取位置座標と存在位置座標とに応じて算出し、算出された聴取距離と特定された聴取方向とに従って聴取音を導出する構成とした場合には、音源オブジェクトの位置に応じて決定した聴取距離と任意に設定した聴取方向とによって聴取音を導出することができ、音響空間の構成を複雑にすることなく、ゲームの世界観に応じた聴取音を導出することができるようになる。
【0059】
また、上述した実施の形態において、ビデオゲーム処理装置100が、算出した聴取距離に従って音の減衰率を算出する構成とした場合には、音源オブジェクトの存在位置を示す存在位置座標を音の大きさの基準となる座標とすることができるようになり、「聴取位置が音源オブジェクトに近づく程音量が大きくなる一方、音が聴こえるのは方向指定座標の方向である」というような特殊な音響効果を実現することができるようになる。
【0060】
また、上述した実施の形態において、音源オブジェクト情報に含まれる可聴領域は、異なる音量レベル毎に区分けされた複数の区分エリアによって構成され、ビデオゲーム処理装置100が、聴取位置が可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、聴取位置がその可聴領域における何れの区分エリアに位置しているかを確認し、確認された区分エリアにおける音量レベルと特定された聴取方向とに従って前記聴取音を導出する構成とした場合には、可聴領域における区分エリアと任意に設定した聴取方向とによって聴取音を導出することができ、音響空間の構成を複雑にすることなく、ゲームの世界観に応じた聴取音を導出することができるようになる。
【0061】
また、上述した実施の形態において、ビデオゲーム処理装置100が、聴取位置が位置する可聴領域内の区分エリアに応じて音の減衰率を決定する構成とした場合には、可聴領域内を区分して任意に音の大きさの基準を設定することができるようになり、例えば、音源オブジェクトに近い区分エリア程減衰率を低く設定することとすれば、「聴取位置が音源オブジェクトに近づく程音量が大きくなる一方、音が聴こえるのは方向指定座標の方向である」というような特殊な音響効果を実現することができるようになる。
【0062】
なお、上述した実施の形態では特に言及していないが、存在位置座標と方向指定座標とは、仮想空間における別々の座標を示す構成とされていてもよい。このような構成とすることにより、音源オブジェクトが存在する位置が音量基準位置であり音発生位置であるとして取り扱ってきた一般的な音源オブジェクト(または、音源など)を配置した音響空間では表現が困難であった音響効果を容易に表現することができるようになる。
【0063】
なお、上述した実施の形態では特に言及していないが、可聴領域は、複数重複していてもよい。この場合、聴取音として複数の音が導出されることとなる。
【0064】
なお、上述した実施の形態では特に言及していないが、制御部11は、可聴領域の変更だけでなく、可聴領域内での聴取位置の移動に応じても、音響情報の更新処理を行う構成とされることが好ましい。すなわち、例えば、聴取方向が導出された聴取位置座標と方向指定座標、および移動後の聴取位置を示す聴取位置座標とで構成される角の大きさが所定の閾値を超えた場合に、制御部11は、移動後の聴取位置を示す聴取位置座標と存在位置座標から聴取距離(聴取距離により算出される減衰率)を算出し、移動後の聴取位置座標と方向指定座標から聴取方向を特定する。そして、新たな聴取距離と聴取方向から聴取音を導出し、音響情報を更新する。よって、可聴領域に対して方向指定座標の位置が近いほど、聴取位置座標の移動量に対する音響情報の更新回数が増えることとなる。逆に、可聴領域に対応する方向指定座標を、可聴領域に対して無限遠方に設定することにより、可聴領域内での聴取方向を統一して音響情報更新処理に要する処理負荷を軽減させることができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、ビデオゲーム処理装置100がゲームカートリッジ20から読み取ったゲームプログラムに基づいて上述したゲーム処理などの各種の処理を実行する構成としていたが、ゲームサーバからインターネットなどの通信ネットワークを介してゲームプログラムを取得するようにしてもよい。また、ビデオゲーム処理装置100がゲームサーバとして機能し、通信ネットワークを介してゲームプログラムをゲーム端末に提供するようにしてもよい。
【0066】
なお、上述した実施の形態では、ビデオゲーム処理装置100は、自己が備える記憶装置(記憶部12)に記憶されている制御プログラム(ビデオゲーム処理プログラム)に従って、上述した各種の処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、音響空間の構成を複雑にすることなく、ゲームの世界観に応じた聴取音を導出することができるビデオゲームを提供するのに有用である。
【符号の説明】
【0068】
10 ゲームプログラム読取部
11 制御部
12 記憶部
13 表示部
14 音声出力部
15 プレイヤ操作受付部
100 ビデオゲーム処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレイヤが操作するプレイヤキャラクタが存在する仮想空間を表示画面上に表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、
前記仮想空間における所定の聴取位置にて聴き取られる聴取音を前記ビデオゲーム処理装置に備えられた音声出力手段により出力する音響情報として管理する音響管理テーブルと、
仮想空間に存在する音源オブジェクトが発する音の可聴領域と、前記仮想空間における前記音源オブジェクトの位置を示す座標である存在位置座標と、当該存在位置座標とは無関係に任意に定められた音が発生する方向を示す座標である方向指定座標とを含む音源オブジェクト情報を記憶する音源オブジェクト情報記憶手段と、
前記聴取位置が前記可聴領域内に位置するか否かを判定する聴取判定手段と、
該聴取判定手段により前記聴取位置が前記可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、前記聴取位置を示す聴取位置座標と前記方向指定座標とに基づいて、当該聴取位置において前記音が聴こえる方向を示す聴取方向を特定する聴取方向特定手段と、
前記聴取方向に基づいて前記聴取音を導出する聴取音導出手段と、
該聴取音導出手段により導出された聴取音に従って前記音響情報を更新する音響情報更新手段とを含む
ことを特徴とするビデオゲーム処理装置。
【請求項2】
前記聴取判定手段により前記聴取位置が前記可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、該可聴領域に対応する前記音源オブジェクトの位置から前記聴取位置までの距離を示す聴取距離を前記聴取位置を示す聴取位置座標と前記存在位置座標とに応じて算出する聴取距離算出手段を含み、
前記聴取音導出手段は、前記聴取距離算出手段によって算出された聴取距離と前記聴取方向特定手段によって特定された聴取方向とに従って前記聴取音を導出する
請求項1記載のビデオゲーム処理装置。
【請求項3】
前記音源オブジェクト情報に含まれる前記可聴領域は、異なる音量レベル毎に区分けされた複数の区分エリアによって構成されており、
前記聴取判定手段により前記聴取位置が前記可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、前記聴取位置が当該可聴領域における何れの区分エリアに位置しているかを確認する区分エリア確認手段を含み、
前記聴取音導出手段は、前記区分エリア確認手段によって確認された区分エリアにおける音量レベルと前記聴取方向特定手段によって特定された聴取方向とに従って前記聴取音を導出する
請求項1記載のビデオゲーム処理装置。
【請求項4】
前記存在位置座標と前記方向指定座標とは、前記仮想空間における別々の座標を示す
請求項1から請求項3のうちいずれかに記載のビデオゲーム処理装置。
【請求項5】
プレイヤが操作するプレイヤキャラクタが存在する仮想空間を表示画面上に表示してビデオゲームの進行を制御するようにビデオゲーム処理装置に動作制御させるためのビデオゲーム処理プログラムであって、
前記ビデオゲーム処理装置に、
前記仮想空間における所定の聴取位置が、仮想空間に存在する音源オブジェクトが発する音の可聴領域と前記仮想空間における前記音源オブジェクトの位置を示す座標である存在位置座標と当該存在位置座標とは無関係に任意に定められた音が発生する方向を示す座標である方向指定座標とを含む音源オブジェクト情報を記憶する音源オブジェクト情報記憶手段に記憶される音源オブジェクト情報が示す可聴領域内に位置するか否かを判定する聴取判定処理と、
該聴取判定手段により前記聴取位置が前記可聴領域内に位置すると判定されたことに応じて、前記聴取位置を示す聴取位置座標と前記方向指定座標とに基づいて、当該聴取位置において前記音が聴こえる方向を示す聴取方向を特定する聴取方向特定処理と、
前記聴取方向に基づいて前記聴取位置にて聴き取られる聴取音を導出する聴取音導出処理と、
該聴取音導出処理にて導出された聴取音に従って、前記聴取音を前記ビデオゲーム処理装置に備えられた音声出力手段により出力する音響情報として管理する音響管理テーブルにて管理される音響情報を更新する音響情報更新処理とを
実行させるためのビデオゲーム処理プログラム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate