説明

ビデオサーバ装置及びビデオ編集システム

【課題】通常の編集と同じ操作で素材を作成しつつ、映像・音声・補助データの差分のみの追加・削除・差し替えを可能とする。
【解決手段】実施形態によれば、ビデオサーバ装置は、素材データの記録時に、当該素材データを特定する素材IDと、当該素材データとを対応付けた管理テーブルを生成し、当該管理テーブルを記憶部に記憶するテーブル生成手段と、素材データに対する変更要求発生時に、変更要求元から変更対象の素材ID及び変更開始位置及び変更終了位置を示す情報を含む素材管理情報を取得する取得手段と、この取得手段で取得した素材管理情報に含まれる素材IDに基づいて、管理テーブルを参照し、この参照結果に基づいて記憶部に記録された素材データに対する変更処理を実行し、変更後に管理テーブル中の該当する素材IDに対応する素材データの更新を行う制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、ニュース番組等の素材を格納するビデオサーバ装置及びビデオ編集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送番組送出システムにあっては、放送番組の素材データを予めビデオサーバに格納しておき、自動番組送出制御装置(APC)からの指示に従って該当する素材データを再生し、オンエアを行うようになっている。このようなオンエア処理において、通常、オンエア前にオンエア順序に従った素材データの確認作業が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−239400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムにおいて、ビデオサーバに素材データを送った後で、緊急に素材ファイルの部分差し替えが必要となる場合がある。一般に、放送素材データはサイズが大きく、全部をもう一度収録し直すと時間がかかるので、差分のみを送り、放送までの時間を短縮させたいというニーズがある。このニーズには、差分の素材データを送ってプレイリストとして再生させる、という解決手段があるが、ユーザは、差分の素材データを別ファイルとして保存し、プレイリストを作成するという手間がかかるうえに、素材データを保存しておく場合、複数の素材データとプレイリストという形となってしまう。また、映像の一部・音声の一部のみといった変更には対応できないため、音声のみ変更したい場合でも、その部分の映像もあわせて差し替える必要がある。
【0005】
補助データのみの差し替えの場合、別に字幕差し替えサーバを設置するなど、映像や音声・補助データのみの変更は、専用の差し替え装置を設置する方法もあるが、システム全体として高コストとなる。
【0006】
本発明の目的は、通常の編集と同じ操作で素材を作成しつつ、映像・音声・補助データの差分のみの追加・削除・差し替えを可能とするビデオサーバ装置及びビデオ編集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、オンエア用の素材データを記憶部に記録し、再生指示に応じて前記記憶部に記録された素材データを再生するビデオサーバ装置において、素材データの記録時に、当該素材データを特定する素材IDと、当該素材データとを対応付けた管理テーブルを生成し、当該管理テーブルを記憶部に記憶するテーブル生成手段と、素材データに対する変更要求発生時に、変更要求元から変更対象の素材ID及び変更開始位置及び変更終了位置を示す情報を含む素材管理情報を取得する取得手段と、この取得手段で取得した素材管理情報に含まれる素材IDに基づいて、管理テーブルを参照し、この参照結果に基づいて記憶部に記録された素材データに対する変更処理を実行し、変更後に管理テーブル中の該当する素材IDに対応する素材データの更新を行う制御手段とを備えるビデオサーバ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態に係るビデオ編集システムとしての番組送出システムの構成を示すブロック図。
【図2】一実施形態において、送出サーバ内部で持つプレイリストの一例を示す図。
【図3】一実施形態において、編集機から送られる素材ファイルの構造を示す模式図。
【図4】一実施形態において、素材データを差し替える際の送出サーバと編集機との間の情報の送受信動作を示すシーケンス図。
【図5】一実施形態において、差し替えファイルから差分を抽出する場合の制御部の制御処理手順を示すフローチャート。
【図6】一実施形態において、プレイリストの更新を行う際の制御部の制御処理手順を示すフローチャート。
【図7】一実施形態において、プレイリスト更新(作成含む)における、制御部の差替処理を示すフローチャート。
【図8】一実施形態において、プレイリスト更新(作成含む)における、制御部の追加処理を示すフローチャート。
【図9】一実施形態において、プレイリスト更新(作成含む)における、制御部の削除処理を示すフローチャート。
【図10】再生処理と同時に再エンコードする場合の送出サーバの動作を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係るビデオ編集システムとしての番組送出システムの構成を示すブロック図である。
【0011】
図1において、100はビデオサーバ装置としての送出サーバで、制御部101、複数のメモリセットから成るメモリ部102、デコーダ部103、エンコーダ部104、ファイル処理部105を備えている。これら制御部101、メモリ部102、デコーダ部103、エンコーダ部104、ファイル処理部105は、バス106により相互に接続されている。
【0012】
オンエア用放送番組のビデオ信号は、エンコーダ部104によりMPEG2(Moving Picture Experts Group 2)等の符号化形式で符号化され、素材データとしてメモリ部102に記録される。このメモリ部102に記録された素材データは、APC(図示せず)から与えられるオンエア指示信号に応じて、選択的に再生される。この再生データは、デコーダ部103によりビデオ信号にデコードされ、選択的にオンエア出力される。
【0013】
一方、制御部101は、管理用端末110の操作入力指示に従い、メモリ部102、デコーダ部103、エンコーダ部104に対する素材データの記録/再生制御を行うものである。
【0014】
また、ファイル処理部105には、ネットワーク120が必要に応じて接続される。ファイル処理部105は、ファイル入力処理部105−1、ファイル出力処理部105−2及びインタフェース(IF)部105−3を備える。IF部105−3は、接続されたネットワーク120との間でインタフェース処理を行う。さらに、ファイル処理部105は、上記インタフェース処理に係わる種々の制御情報の授受を、ファイル入力処理部105−1、ファイル出力処理部105−2、バス106を介して制御部101との間で行う。
【0015】
送出サーバ100には、ネットワーク120を介して編集機130が接続される。編集機130は、素材データを作成・編集する機能を有し、作成・編集された素材データはデータベース131に格納される。また、本実施形態において、編集機130は、要求送信部132と、素材送出制御部133とを備えている。要求送信部132は、差し替えが必要な素材データをデータベース131に格納した後に、送出サーバ100に対しネットワーク120を介して変更要求を送信する。
【0016】
素材送出制御部133は、送出サーバ100から取得要求を受信した場合に、編集が済んだ素材データを順に送出サーバ100に送信する。
【0017】
本実施形態において、制御部101は、装置管理情報101−1を有し、送出サーバ100内のエンコーダ・デコーダなどのユニットがいくつあるかを管理している。さらに、素材管理情報101−2を有し、送出サーバ100内のどのメモリ部にデータが配置されているかを管理する。メモリ部102は、素材データ記憶部102−1と素材情報記憶部102−2を有する。大きなシステムの場合、負荷分散・高速化のため、複数に分かれる。
【0018】
素材データ記憶部102−1及び素材情報記憶部102−2は、フォルダで分けるなどして、素材ID毎に管理される。1つの管理例として、通常の素材コピー時に、変更がない場合でも管理テーブルとしてのプレイリストを作成し、素材の種別毎に管理する。図2は、送出サーバ100内部で持つプレイリストの例を示す。素材情報記憶部102−2は、内部プレイリストのセット(映像・音声・ANCで1セットとする)に含まれる素材種別毎に作成する。これは管理例であり、別の方法でも構わない。
【0019】
さらに、制御部101は、本実施形態に係わる機能として、取得部101−3と、素材変更制御部101−4とを備えている。取得部101−3は、編集機130から素材データに対する変更要求を受信した時に、編集機130から変更対象の素材ID及び変更開始位置及び変更終了位置を示す情報を含むメタデータ(素材管理情報)を取得する。
【0020】
素材変更制御部101−4は、取得部101−3で取得したメタデータに含まれる素材IDに基づいて、メモリ部102のプレイリストを参照し、この参照結果に基づいて素材データ記憶部102−1に記録された素材データに対する変更処理を実行し、変更後にプレイリスト中の該当する素材IDに対応する素材データの更新を行う。この場合、編集機130から取得した差分データファイルを、素材IDに対応付けて素材データ記憶部102−1に記録し管理する。
【0021】
また、素材変更制御部101−4は、変更対象となる素材データをメモリ部102から読み出してデコーダ部103で復号し、エンコーダ部104で再符号化した後に、メモリ部102に記録する。この場合、空きのメモリセットに記録する。
【0022】
図3は、編集機130から送られる素材ファイルの構造を示す模式図である。図3における素材データファイルは、ヘッダ部、ボディ部、フッタ部を備える。それぞれ素材毎にデータサイズが異なる。
【0023】
ヘッダ部は、素材データファイルの映像フォーマット形式等の属性データを格納する。ヘッダ部内メタデータの拡張部に、差替するための情報が入る。拡張部の情報は、元素材を一意に示すIDと差替数、個々の差替情報からなる。差替情報1で個々の差替情報を説明する。
【0024】
「差替素材(部分)のID」は、差替部分のみに一意に割り振られたIDである。図3全体の素材IDとは異なる。内部での素材管理に利用される(後の編集中の更新の際とフォーマットを共通にするため付与している)。
【0025】
「素材種別」は、差替部分が、映像・音声1ch〜Nch・ANC(補助データ)のどの部分かを指定するために使用する。種別毎にビットで指定することで、複数の種別(音声まとめて、映像・音声・ANC全部差替など)を同時に置き換えることも可能である。
【0026】
「変更種別」は、追加・差替・削除を指定するもので、追加の場合に「差替先頭位置(差替素材)」〜「差替終了位置(差替素材)」を追加する。差替の場合、「追加/差替位置(元素材)」から「差替先頭位置(差替素材)」〜「差替終了位置(差替素材)」の範囲を差し替える。削除の場合、「追加/差替位置(元素材)」から「差替先頭位置(差替素材)」〜「差替終了位置(差替素材)」の範囲を削除する。
【0027】
「転送先頭位置(差替素材)」、「転送終了位置(差替素材)」は、圧縮形式の関係で「差替先頭位置」の映像を作るために差替位置の前後のデータが必要な場合に、必要な部分を指定する。
【0028】
ボディ部は、素材データ本体を格納しており、映像・音声・ANCデータを33msのフレーム周期毎に分割して格納する。また、GOP(Group of Picture)ごとにインデックステーブルを備え、その前のフレーム情報を保持する。フッタ部は映像データファイルの終わりを示す。
【0029】
例えば、緊急ニュース番組において、「XX地方に震度2の地震が発生しました」を「XX地方に震度1の地震が発生しました」に差し替えたい場合、「震度1」に該当する差替開始位置が12フレーム目で差替終了位置が40フレーム目であったとする。12フレーム目がGOPのPピクチャとなり、40フレーム目がGOPのBピクチャとなる場合、転送開始位置はIピクチャに相当する1フレーム目となり、転送終了位置はIピクチャに相当する45フレーム目となる。
【0030】
このGOP構造ではフレーム内符号化によるI(Intra)ピクチャ、フレーム間順方向予測符号化によるP(Predictive)ピクチャ、双方向予測符号化によるB(Bidirectionally Predictive)ピクチャの3タイプのピクチャを有する。その配列順序はIBBPBBP…となっており、一つのGOP期間では通常15フレーム程度に設定されている。このGOP構造がくずれると、映像再生時に画面が乱れたり、再生が途絶える等の不具合を生じる。このため、差し替えの際にはGOP構造のパターンを崩さないようにする必要がある。
【0031】
次に上記構成における動作について説明する。
図4は、素材データを差し替える際の送出サーバ100と編集機130との間の情報の送受信動作を示すシーケンス図である。
【0032】
編集機130は、例えば差替ファイルの編集が完了すると、データベース131に差し替えファイルを蓄積する。そして、編集機130は、データベース131に蓄積された差し替えファイルを解析して、ヘッダ部の算出を行い、ヘッダ部の拡張部に、元素材ID、差し替え開始位置及び差し替え終了位置を示す情報を含むメタデータをデータベース131に蓄積する(図4(1)。
【0033】
続いて、編集機130は、送出サーバ100へネットワーク120を介して差し替え対象となる素材ID及び差し替えの旨を示す情報を含む素材送信要求を送信する(図4(2))。
【0034】
送出サーバ100は、上記素材送信要求を受信すると、編集機130へ受付可能の旨のメッセージ(OK)を返送し(図4(3))、しかる後に、編集機130へファイルヘッダの取得要求を送信する(図4(4))。
【0035】
編集機130は、上記取得要求を受信すると、データベース131から該当する差し替えファイルのヘッダ部を読み出し、このヘッダ部の情報を送出サーバ100へ送信する(図4(5))。
【0036】
送出サーバ100は、ヘッダ部の情報を受信すると、このヘッダ部のメタデータに含まれる素材IDとメモリ部102に記憶されるプレイリスト中の素材IDとを比較照合し、一致した場合に、差し替えファイルの読み出し要求を編集機130へ送信する(図4(6))。
【0037】
編集機130は、送出サーバ100から読み出し要求を受信すると、データベース131から該当する差し替えファイルを読み出し、この差し替えファイルを送出サーバ100へ送信する(図4(7))。そして、送出サーバ100は、差し替えファイルがN個ある場合に、N個目になるまで順に差し替えファイルの読み出し要求を送信し(図4(8))、N個目の差し替えファイルを受信して(図4(9))、処理を終了する。
【0038】
図5は、差し替えファイルから差分を抽出する場合の制御部101の制御処理手順を示すフローチャートである。
【0039】
まず、制御部101はファイルヘッダを編集機130から読みだす(ステップST5a)。そして、ファイルヘッダの拡張部を解析し、差替素材が指定されていない、または差替元素材が収録されていない場合は、ステップST5bからステップST5cに移行してここで新規素材として収録して完了する。
【0040】
一方、差替元素材がすでにメモリ部102に記録されていた場合、制御部101は差替数に指定された部分の差替処理を行う。まず、差替数を「1」に設定し(ステップST5d)、差替元データの情報に従って差し替えファイルを仮素材としてメモリ部102に記録し(ステップST5e)、プレイリストの更新を行う(ステップST5f)。制御部101は、データを読み出す場合、差分情報の一部を、別ファイルとして保存する。音声1chの一部のみなどの場合、音声だけを1つのファイルとして、ヘッダを新たに作成し、必要位置を読みながら作成する。
【0041】
続いて、制御部101は、差し替えファイル1についてのプレイリストの更新が終了すると、差替数を「2」に設定し(ステップST5g)、差替数が指定数「N」を超えるか否かの判断を行う(ステップST5h)。以後、差替数が指定数「N」になるまで、制御部101はステップST5e乃至ステップST5hの処理を繰り返し実行する。
【0042】
図6は、プレイリストの更新を行う際の制御部101の制御処理手順を示すフローチャートである。
【0043】
差分がない場合でも、制御部101は素材収録時に映像・音声(CH毎)・ANC毎にプレイリストを新規作成しておき(ステップST6a)、初期情報として、元素材の情報を、サブクリップとして書き込む。そのため、差分ができたときはプレイリストがすでにあるので、制御部101はプレイリストファイルをメモリ部102から読み出して差替・追加・削除を判断し(ステップST6b)、差替・追加・削除処理を行う(ステップST6c)。差分情報は、素材全体の再生時間は同じに保たれている。
【0044】
図7は、プレイリスト更新(作成含む)における、制御部101の差替処理を示すフローチャートである。
【0045】
差替範囲が全体の場合、制御部101はステップST7aからステップST7bに移行してここでプレイリスト中の元サブクリップを削除し、指定素材に差し替える。
【0046】
一方、差替範囲が一部の場合、制御部101はステップST7aからステップST7cに移行してここで指定範囲を含むサブクリップを分割し、分割したサブクリップの間に指定素材のサブクリップを追加する(ステップST7d)。
【0047】
そして、制御部101は分割したサブクリップ(後)の先頭位置を、追加したサブクリップの分だけ後ろにずらす(ステップST7e)。
【0048】
図8は、プレイリスト更新(作成含む)における、制御部101の追加処理を示すフローチャートである。
【0049】
追加位置が先頭の場合、制御部101はステップST8aからステップST8bに移行してここで指定素材の指定範囲を先頭にサブクリップとして追加する。一方、追加位置が最後の場合、制御部101はステップST8aからステップST8cに移行してここで指定範囲を最後にサブクリップとして追加する。
【0050】
一方、追加位置が途中の場合、制御部101はステップST8aからステップST8dに移行してここで指定位置を含むサブクリップを指定位置で分割し、分割したサブクリップの間に指定素材のサブクリップを追加する(ステップST8e)。
【0051】
図9は、プレイリスト更新(作成含む)における、制御部101の削除処理を示すフローチャートである。
【0052】
削除範囲がある素材種別全体の場合、制御部101はステップST9aからステップST9bに移行してここで該当する種別のプレイリストを削除する。音声CH数を減らす場合などがこれに相当する。
【0053】
一方、削除範囲が一部の場合、制御部101はステップST9aからステップST9cに移行してここで指定位置を含むサブクリップを指定位置で分割し、分割したサブクリップ(後)の先頭位置を、削除した分だけ後ろにずらす(ステップST9d)。
【0054】
(編集途中で差分のみを先に送る場合の編集機130の動作)
編集途中で差分のみを先に送る場合、編集機130のオペレータは、以下の項目を指定して送出サーバ100に対し差し替えを要求することによって、送出サーバ100は、上記のシーケンスと同様に、差分を差替元の素材のフォルダの差替ファイルとして読出・保存することができる。この項目は、「元素材のID」、「差替素材(部分)のID」、「素材種別」、「変更種別」、「転送先頭位置(差替素材)」、「転送終了位置(差替素材)」、「差替素材のファイルのパス」である。
【0055】
編集機130のオペレータは、編集中に途中まで確定した段階でプレイリスト保存をすることで、編集機130は、「元素材のID」、「差替素材(部分)のID」、「素材種別」、「変更種別」、「転送先頭位置(差替素材)」、「転送終了位置(差替素材)」、「差替素材のファイルのパス」を指定して送出サーバ100に差分ファイル要求し、差分ファイルを保存開始することができる。
【0056】
最終的に確定した段階で、図3のヘッダ拡張部にある情報と同じ情報を指定することで、送出サーバ100の内部プレイリスト更新ができるが、その場合、すでに差分ファイルが保存されているかチェックすることで、コピー済差分データの重複コピーを避け、更新時間をさらに短縮することができる。
【0057】
(再生処理と同時に再エンコードする場合の送出サーバ100の動作)
図10は、再生処理と同時に再エンコードする場合の送出サーバ100の動作を示すシーケンスである。
【0058】
管理用端末110から再生要求を受信すると(図10(1))、制御部101はその素材があるメモリ部を素材管理情報101−2から検索し、メモリセット1と判断して、メモリ部1に対しプレイリストを要求し(図10(2))、メモリセット1から読み出されたプレイリストを受信する(図10(3))。
【0059】
制御部101は、デコーダ部103にデータ受信指示を行い(図10(4))、エンコーダ部104に対し再生準備を指示する(図10(5))。また、管理用端末110からの要求が、先頭からの再生で、差分データがある素材であることから、再エンコード処理を実施すると判断し、空いているメモリセットを装置管理情報101−1と、現在の稼働状況からさがし、メモリセット2に再エンコード後のデータ受信指示を行う(図10(6))。
【0060】
図10中の枠で囲んだ部分は再生処理で、ある一定のサイズごとに制御部101はメモリ部102へデータ送信指示を行い(図10(7))、メモリ部102からデータがデコーダ部103へ転送される(図10(8))。その際、メモリ部1は、素材IDに対応する各プレイリストに従い、1フレーム分ずつデータを作成して読み出す。
【0061】
デコーダ部103は、デコードしたデータをバッファに積み、制御部101はデコーダ部103に再生位置を指示して再生させる(図10(9))。ストリームデータは分岐して、構成に従って送出またはモニタに出力されるとともに(図10(10))、エンコーダ部104へ入り、再エンコード処理を行ったあと、空いているメモリセット2へ渡され、新たに1つの素材として保存される(図10(11))。出来上がった素材は、ファイル出力処理部105−2を経由して、アーカイブ用に、(図1には図示していないサーバ等に)取りだすことができる。
【0062】
再生終了になると、制御部101はエンコーダ部104へエンコード終了指示を出し(図10(12))、メモリセット2へはデータ受信停止指示を行う(図10(13))。メモリセット2は、ファイルClose・プレイリスト作成などの後処理を行い、作成完了通知を送ることで、制御部は素材管理情報を更新する(図10(14))。再エンコードした素材ができたため、容量を開けたい場合は、メモリセット1へ古い素材データの削除を行い、容量をふやすことができる(図10(15)及び(16))。
【0063】
以上は、再生要求がある場合の処理であるが、制御部101は送出サーバ100全体の稼働状況を管理しているため、差替素材が再生できるようになった場合は、空いているデコーダ・エンコーダをさがし、自動的に再エンコードを行うことが可能である。
【0064】
(空き時間における差替ファイルの生成動作)
制御部101において、空き時間によって差し替えファイル及び差し替え対象となる元の素材データをメモリ部102から読み出し、当該差し替えファイル及び差し替え対象となる元の素材データをデコーダ部103にデコードさせ、エンコーダ部104に再符号化させて1つの素材データに生成し、メモリ部102に記録させる。この場合、管理用端末110のオペレータは、予め空き時間、例えば13:00になったときに、差し替えファイルと元の素材データとを自動で1つの素材データに生成するように制御部101に設定する。
【0065】
この状態で、制御部101は例えば時刻が13:00になると、差し替えファイル及び差し替え対象となる元の素材データをメモリ部102から読み出し、当該差し替えファイル及び差し替え対象となる元の素材データをデコーダ部103にデコードさせ、エンコーダ部104に再符号化させて1つの素材データに生成し、メモリ部102に記録させる。このようにすることで、空き時間によって差し替えファイルと元の素材データとを1つの素材データに自動で生成することができる。なお、上記設定条件としては、空き時間以外に例えば各ユニットの処理負荷や空いているメモリセット等を用いることが可能である。
【0066】
以上のように上記実施形態では、送出サーバ100において、素材データの記録時に、当該素材データを特定する素材IDと、当該素材データとを対応付けたプレイリストを生成してメモリ部102に記憶し管理しておき、編集機130から素材データに対する変更要求を受信した時に、編集機130から変更対象となる素材データのヘッダ部のメタデータを取得し、メタデータに含まれる素材IDに基づきメモリ部102中のプレイリストを参照して、プレイリストを更新できるか、変更対象の素材データがメモリ部102に既に記録されているかをチェックし、変更対象の素材データがメモリ部102に記録されている場合に、素材IDに対応したメモリ部102中の素材データに対する変更処理を実行し、変更後にプレイリスト中の該当する素材IDに対応する素材データの更新を行うようにしている。
【0067】
従って、上記プレイリストを用いることで、メタデータに含まれる素材IDからメモリ部102中のどの素材データを変更するかを特定でき、これによりコピー一斉差分データの重複コピーを避け、更新時間をさらに短縮することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、メタデータに含まれる素材ID、及び差し替え開始位置後、差し替え終了位置前を示す編集差分情報を用いて、自動的に差分データを特定し、編集機130から差分データを取得し、再生できる。
【0069】
さらに、上記実施形態では、再生時のデコード処理を利用して、変更対象の素材データをエンコーダ部104で再エンコードし、メモリ部102に記録することで、変更部分のみを変更した1つの素材データを再生できる。
【0070】
さらに、上記実施形態では、再エンコードした素材データをメモリ部102の空いているメモリセットに記録することで、メモリ部102の領域を確保し、システム性能を低下させずに済む。
【0071】
さらに、上記実施形態において、編集機130のオペレータは、素材データ全てを送出サーバ100へ転送する場合と同じ操作を行なうだけで、差分データのみを送出サーバ100に送り、再生することができ、これによりオペレータに対する作業負担を大幅に軽減できる。
【0072】
さらに、上記実施形態によれば、変更処理が済んだ素材データが順番に編集機130から送出サーバ100に送られることになるため、差替データが長時間に渡るデータであっても送出サーバ100にて短時間で再生することができる。
【0073】
その他、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100…送出サーバ、101…制御部、101−3…取得部、101−4…素材変更制御部、102…メモリ部、102−1…素材データ記憶部、102−2…素材情報記憶部、103…デコーダ部、104…エンコーダ部、105…ファイル処理部、106…バス、105−1…ファイル入力処理部、105−2…ファイル出力処理部、105−3…インタフェース(IF)部、110…管理用端末、120…ネットワーク、130…編集機、131…データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンエア用の素材データを記憶部に記録し、再生指示に応じて前記記憶部に記録された素材データを再生するビデオサーバ装置において、
前記素材データの記録時に、当該素材データを特定する素材IDと、当該素材データとを対応付けた管理テーブルを生成し、当該管理テーブルを前記記憶部に記憶するテーブル生成手段と、
前記素材データに対する変更要求発生時に、変更要求元から変更対象の素材ID及び変更開始位置及び変更終了位置を示す情報を含む素材管理情報を取得する取得手段と、
この取得手段で取得した前記素材管理情報に含まれる素材IDに基づいて、前記管理テーブルを参照し、この参照結果に基づいて前記記憶部に記録された素材データに対する変更処理を実行し、変更後に前記管理テーブル中の該当する素材IDに対応する素材データの更新を行う制御手段とを具備することを特徴とするビデオサーバ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記変更要求が前記素材データの追加である場合に、前記素材管理情報に含まれ前記記憶部の記録領域の追加開始位置後、追加終了位置前の期間を指定し、この期間に対応する追加素材データを要求元から取得し、この取得した追加素材データを前記記憶部中の該当する素材IDに対応する素材データに追加することを特徴とする請求項1記載のビデオサーバ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記変更要求が前記素材データの削除である場合に、前記素材管理情報に含まれ前記記憶部の記録領域の削除開始位置後、削除終了位置前の期間を指定し、前記記憶部中の該当する素材IDに対応する素材データから前記期間に対応する素材データを削除することを特徴とする請求項1記載のビデオサーバ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記変更要求が前記素材データの差し替えである場合に、前記素材管理情報に含まれ前記記憶部の記録領域の差し替え開始位置後、差し替え終了位置前の期間を指定し、この期間に対応する差し替え素材データを要求元から取得し、この取得した差し替え素材データと、前記記憶部中の該当する素材IDに対応する素材データの少なくとも一部とを差し替えることを特徴とする請求項1記載のビデオサーバ装置。
【請求項5】
さらに、前記記憶部から再生される素材データをビデオ信号に復号する復号手段と、このビデオ信号を前記素材データに再符号化する符号化手段とを備え、
前記制御手段は、再符号化した素材データを前記記憶部に記録することを特徴とする請求項1記載のビデオサーバ装置。
【請求項6】
前記記憶部が複数のメモリセットから成るとき、前記制御手段は、前記再符号化した素材データを前記記憶部の空いているメモリセットに記録することを特徴とする請求項5記載のビデオサーバ装置。
【請求項7】
前記制御手段は、所定の条件に従って、変更された素材データを前記記憶部から再生し、当該再生データを前記復号手段に復号させ、前記符号化手段に再符号化させることを特徴とする請求項6記載のビデオサーバ装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記条件の判断に、空き時間、空いているメモリセットの少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項7記載のビデオサーバ装置。
【請求項9】
オンエア用の素材データを編集する編集装置と、
この編集装置に接続され、前記編集装置で編集された素材データを記憶部に記録し、再生指示に応じて前記記憶部に記録された素材データを再生するビデオサーバ装置とを備え、
前記編集装置は、
変更した素材データをデータベースに登録すると共に、当該素材データを特定する素材ID、変更開始位置及び変更終了位置を示す情報を含む素材管理情報を前記変更した素材データに付加して前記データベースに登録する登録手段と、
前記データベースに登録後に、前記ビデオサーバ装置に対し変更要求を送信する変更要求送信手段とを備え、
前記ビデオサーバ装置は、
前記素材データの記録時に、当該素材データを特定する素材IDと、当該素材データとを対応付けた管理テーブルを生成し、当該管理テーブルを前記記憶部に記憶するテーブル生成手段と、
前記編集装置から前記素材データに対する変更要求を受信するとき、前記編集装置から変更対象となる素材データの前記素材管理情報を取得する取得手段と、
この取得手段で取得した前記素材管理情報に含まれる素材IDに基づいて、前記管理テーブルを参照し、この参照結果に基づいて前記記憶部に記録された素材データに対する変更処理を実行し、変更後に前記管理テーブル中の該当する素材IDに対応する素材データの更新を行う制御手段とを備えることを特徴とするビデオ編集システム。
【請求項10】
前記編集装置は、変更処理が済んだ素材データを順に前記ビデオサーバ装置に送信する手段を備えることを特徴とする請求項9記載のビデオ編集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−195893(P2012−195893A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59927(P2011−59927)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】