説明

ビトリニット反射率測定方法およびビトリニット反射率測定装置

【課題】 石炭含有岩石試料に含有されるビトリニット粒子について、それが微小粒子である場合にも、石炭含有岩石試料を破壊することなしに確実にその反射率を測定することができるビトリニット反射率測定方法および装置を提供すること。
【解決手段】 ビトリニット反射率測定方法は、石炭含有岩石試料を研磨処理して被観察面を形成し、200〜1000倍の倍率で観察された被観察面において露出する、内側に凸の2つの辺により区画された角状形状を有する角部保有粒子をビトリニット粒子として判別し、その表面領域における反射率を測定する。ビトリニット反射率測定装置は、上記の測定方法に用いられる装置であって、測光手段としてフォトダイオードを備えてなり、落射光の直径を75μm以下とすることができると共に、測光エリアの直径を10μm以下とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭含有岩石試料に含有されるビトリニットの反射率を測定する方法および当該方法に用いられる測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地層の隆起量、または地層中の化石燃料の熟成度などを推定するために、地質体を構成する例えば堆積岩などの岩石類における物理化学的変化を利用して、当該地質体が過去に受けた温度環境(以下、単に「古地温環境」ともいう。)およびその変化を推定することが行われている。そして、推定すべき古地温環境に係る温度範囲が例えば数十℃から300℃程度である場合には、当該古地温環境は、地質体中に含有されるビトリニットの反射率を測定することにより、有効に推定することが可能であることが広く知られている。
【0003】
ビトリニットは、石炭を構成する有機質の主要部分を占めるものであり、従ってほとんどすべての石炭中に存在する微細組織成分群である。ビトリニットは、主として植物の木質部に由来するものであるが、その熱可塑性によってゲル化した状態であるために例えば細胞セルや導管などの源植物組織が分解して均質な状態となっている。ビトリニットの観察においては、反射光線下では灰白色に見え、石炭化が進むに伴って反射率が高くなり、淡色となる。
このビトリニット反射率は、石炭品位の重要な指標として石炭・コークス工業分野で広く利用されており(例えば、特許文献1参照)、このようなビトリニット反射率の測定方法は、JIS M 8816:1992によって標準化されている。
【0004】
JIS M 8816:1992においては、適当量の石炭含有岩石試料を測定対象試料として粉砕し、この粉砕物から例えば重液分離法により粒径が75μm以下の微小粒子を分離することにより粒径が75μmより大きい石炭粒子を得、この石炭粒子をアクリル樹脂などの透光性の樹脂中に埋包させてブリケットを作成し、このブリケットを研磨処理して被観察面を形成し、落射照明機構を備えた測定装置を用いて、当該被観察面において露出するビトリニットに係る表面領域の反射率を測定することとされている。
ここで、或る粒子について「粒径」とは、当該粒子を内包可能な最小の円の直径を意味する。
【0005】
しかしながら、石炭はビトリニットやイナーチニットなどの種々の構成物であるマセラルからなるものであって、石炭含有岩石試料から分離した石炭粒子にはビトリニット以外に他の種々の粒子が多数混在している。このため、ビトリニット粒子についてその反射率を測定するに際しては、当該石炭粒子中におけるビトリニット粒子を事前に判別する必要がある。
【0006】
上述のように、ビトリニットでは細胞セルや導管などの源植物組織が失われて均質な状態となっているが、他の微細組織成分または成分群ではそのような源植物組織が残存している。そこで、従来のビトリニット反射率の測定においては、この源植物組織の存在についての差異を利用して、顕微鏡による観察によって当該源植物組織が観察されない粒子を見出し、それをビトリニット粒子として判別する作業が行われている。そして、この判別作業により判別または認識されたビトリニット粒子について、その反射率測定が行われている。
【0007】
然るに、従来の方法においては、粒径が75μm以下の微小石炭粒子については、当該微小石炭粒子のサイズが源植物組織より微小であるために源植物組成を視覚的に認識することが実際上不可能であることから、或る微小石炭粒子がビトリニット粒子であるときにもそれを識別することができない。このことは、結局、石炭含有岩石試料に含有される粒径が75μm以下の微小石炭粒子については、現実上、ビトリニット反射率測定ができないことを意味し、そのような石炭含有岩石試料については、それが由来する地質体について古地温環境の推定するための情報を得ることができない、という問題がある。
【0008】
また、従来の測定方法においては、石炭含有岩石試料を粉砕する必要があるが、この粉砕によって当該石炭含有岩石試料が破壊されるために、当該石炭含有岩石試料の産状が失われ、従って、反射率測定の対象とされたビトリニット粒子の産状に係る環境情報を得ることができない。
また、得られる反射率の値は、観察試料であるブリケットの調製方法が石炭含有岩石試料を粉砕して比較的大きな粒径の粒子を選別する工程を有するために、当該石炭含有岩石試料全体に係る平均値となってしまい、従って、当該石炭含有岩石試料が由来する地質体について、異なる古地温環境に関する温度分布のマッピングを例えばミリメーター単位という微小なスケールで実施することができない、という問題がある。
【0009】
一方、石炭含有岩石試料を粉砕せずにそのままブリケットに相当するサンプルとして用いる場合には、実際上、例えば黄鉄鉱などのビトリニット以外の高反射性物質が当該サンプルの被観察面に相当に高い密度で露出した状態となることも少なくない。このようなサンプルについての反射率測定を従来の落射型反射率測定装置により行う場合には、落射光の直径が大きいために、微小なビトリニット粒子については正確な反射率測定を行うことが困難となる、という問題点がある。これは、測光エリアを小さくしても、高反射性物質による反射光がビトリニットによる被測定反射光に対して大きな光強度の背景光として作用することとなるので、結局、目的とするビトリニット粒子による反射率を正確に測定することができないからである。
【0010】
【特許文献1】特開平7−253398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような事情に基いてなされたものであって、その目的は、石炭含有岩石試料に含有されるビトリニット粒子について、それが微小粒子である場合にも、石炭含有岩石試料を破壊することなしに確実にその反射率を測定することができるビトリニット反射率測定方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のビトリニット反射率測定方法は、石炭含有岩石試料に含有されるビトリニットの反射率を測定する方法であって、
石炭含有岩石試料を研磨処理して被観察面を形成し、
当該被観察面を200〜1000倍の倍率で観察し、当該被観察面において露出する、内側に凸の2つの辺により区画された角状形状を有する角部保有粒子をビトリニット粒子として判別し、
当該判別されたビトリニット粒子の表面領域における反射率を測定することを特徴とする。
この方法においては、角部保有粒子は粒径が75μm以下のものであってもよい。
【0013】
本発明のビトリニット反射率測定装置は、上記ビトリニット反射率測定方法に用いられる測定装置であって、
測光手段としてフォトダイオードを備えてなり、
落射光の直径を75μm以下とすることができると共に、測光エリアの直径を10μm以下とすることができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のビトリニット反射率測定方法によれば、石炭含有岩石試料に含有される石炭粒子において、測定対象であるビトリニットが高い熱可塑性を有する物質であることより、ビトリニット粒子のほとんどのものが、石炭含有岩石試料を研磨処理して形成される平坦面において「角(つの)状形状」と称することのできる固有の形状特性を有するものとなるところ、ビトリニット以外のイナーチニットなどのマセラル構成粒子は、組成物質の熱可塑性が低くてそのような角状形状を有するものとはならないことに着目し、当該角状形状の有無により、角部保有粒子をビトリニット粒子と判別し、この判別されたビトリニット粒子について表面の反射率測定を行うので、粒径が例えば75μm以下の微小なビトリニット粒子についても、それをビトリニット粒子であると確実に判別することができるので、目的とするビトリニット反射率測定を確実に実行することができる。
【0015】
また、本発明のビトリニット反射率測定方法によれば、岩石試料を研磨して被観察面が形成されればよいので、反射率測定の対象となるビトリニット粒子が含有する岩石試料を粉砕または破壊することが本質的に不要であり、従って反射率測定の対象となるビトリニット粒子が含まれる岩石試料の産状がそのまま保存され、いわば非破壊的に目的とする反射率測定を行うことができるため、当該ビトリニット粒子の反射率測定によって得られる根幹情報(主情報)に加えて、それを補強し補完する環境情報を付随的情報として容易に取得することができ、これにより、ビトリニット粒子の反射率測定により得られる根幹情報の有する意義を飛躍的に高いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のビトリニット反射率測定方法について詳細に説明する。
図1は、石炭含有岩石試料に形成された被観察面の典型例を模式的に示す説明図、図2は、ビトリニット粒子における角状形状を説明するための拡大説明図である。
【0017】
本発明のビトリニット反射率測定方法においては、石炭含有岩石試料を研磨処理することにより平坦な被研磨面を形成し、この被研磨面を被観察面として顕微鏡により倍率200〜1000倍の条件下で観察し、当該被観察面において、輪郭に、内側に凸の2つの辺により区画された角部が形成された形状(これを「角状形状」という。)を少なくとも1つ有する石炭粒子(これを「角部保有粒子」という。)を見出してこれをビトリニット粒子として判別し、この判別作業において判別されたビトリニット粒子について、当該被観察面に露出する表面領域による反射率を測定する。
【0018】
ここで、「被観察面」とは、ビトリニット反射率の測定が実際に行われる表面を含む平坦面であって、この被観察面は、例えば被測定試料である石炭含有岩石試料の外表面を、規定の大きさの面積を有する平坦面が形成されるよう研磨処理することにより、形成することができる。または、石炭含有岩石試料を任意の個所で切断し、これによる切断面を研磨処理することにより、形成することもできる。
【0019】
本発明のビトリニット反射率測定方法においては、通常、堆積岩が石炭含有岩石試料として用いられる。
この堆積岩は、図1に示されているように、組織的には、ビトリニット粒子10およびそれ以外の、イナーチニットなどのマセラル構成粒子である対象外石炭粒子11および例えば石英粒子などの岩石組成粒子12が三次元的に相互に密着して固結されてなるものである。そして通常の場合に、ビトリニット粒子10以外の組成粒子、すなわち対象外石炭粒子11および岩石組成粒子12は、当該粒子に元々存在していた微小突起部が堆積前の運搬過程などにおいて選択的に除かれて更に磨耗することにより、全体として滑らかに湾曲した輪郭による形状を有するものとなっており、またその結果として、相互に隣接する粒子の間に複数の曲線により区画された空隙(以下、「粒子間間隙」という。)13が形成された状態となっている。
【0020】
而して、ビトリニット粒子10は、それ以外の組成粒子である対象外石炭粒子11や岩石組成粒子12に比して、より高い熱可塑性を有するものであるため、時間的および温度的に巨視的に見ると、堆積後の炭化プロセスにおいて、その熱可塑性に起因して流動性を有する溶融状態または圧力により変形可能な状態となり、その結果、当該ビトリニット粒子に隣接する周囲の粒子によって形成される粒子間空隙13を充満するように流れてその輪郭形状が当該粒子間空隙13に従ったものに変形し、その後再凝固することにより、当該空隙の形状に対応する形状を有したものとなっている。
【0021】
一方、対象外石炭粒子11および岩石組成粒子12は、ビトリニットより熱可塑性が低いものであるため、それ自体の形状がビトリニット粒子のように変化することがなく、結局、湾曲した外表面を有する粒子形状を保有するものとして存在する。
【0022】
典型的な例によって具体的に説明すると、図2に拡大して示されているように、例えば2つの対象外石炭粒子11および/または岩石組成粒子12(図2では、2つの岩石組成粒子12による場合が示されている。)が対接することによって粒子間空隙13が形成されている場合において、当該粒子間空隙13は、湾曲した外表面を有する岩石組成粒子12が互いに1点または1個所において対接または当接することによって形成されているため、当該粒子間空隙13には、通常、それら空隙形成粒子の対接個所を頂点とする特有の角状空隙部13aが形成された状態になっている。
【0023】
そして、ビトリニット組成物質は、そのような粒子間空隙13にに従った形状となるため、ビトリニット粒子10は、粒子間空隙13の角状空隙部13aにおいて角状形状が形成された角部保有形状を有する角部保有粒子となる。
すなわち、ビトリニット粒子10は、相互に外周面において接触する2つの岩石組成粒子12, 12の外表面の輪郭による、外側に凸の2つの曲線L1, L2に挟まれて区画される粒子間空隙13を充満するよう当該粒子間空隙13の内形状に沿った外形を有するものとなる結果、角状空隙部13aによる少なくとも1つの角状形状を示す角部20を有する角部保有形状が形成された状態、換言すると、外方に突出する角部20であって、粒子間空隙13を区画する外側に凸の曲線L1, L2の各々に追従して伸びる、内側に凸の2つの辺21, 21により区画された角状形状を有する角部保有粒子となる。
【0024】
以上の説明から明らかなように、ビトリニット粒子10は、通常、粒子間空隙13における上記角状空隙部13aに従った形状である角状形状が形成されることとなるので、当該粒子は角部保有粒子として存在するものとなり、ビトリニット反射率の測定に際して、被観察面14上に露出する多数の石炭粒子において、角状形状の有無により、ビトリニット粒子10を、それ以外の対象外粒子粒子から判別することができる。
【0025】
従って、本発明のビトリニット反射率測定方法においては、200〜1000倍、好ましくは400〜1000倍、具体的には例えば600倍の倍率下において、上述のような特徴を備えた角部保有粒子を発見することにより当該角部保有粒子をビトリニット粒子であると判別し、この判別作業によって判別されたビトリニット粒子について、その表面の反射率を測定する。このようにして、当該岩石試料に含有されるビトリニット粒子について、選択的にその表面の反射率測定が実行される。
【0026】
以上において、顕微鏡による観察における倍率が1000倍より高い場合には、ビトリニット粒子の熱可塑性に起因して形成された角部と、堆積前運搬過程においてきわめて微小であるために除かれなかった例えばイナーチニット粒子などの対象外石炭粒子に存在する角部とを、確実に判別することが困難となる場合があり、識別確率の信頼性が低いものとなりる。一方、上記倍率が200倍より低い場合には、例えば75μm以下という微小な岩石試料の粒子について、ビトリニット粒子における角状形状を識別することが非常に困難となる場合がある。
【0027】
以上のように、本発明のビトリニット粒子反射率測定方法によれば、粒径が例えば75μm以下の微小石炭粒子についても、その石炭粒子がビトリニット粒子であることを、高い効率と信頼性をもって、その形状から視覚的に容易に判別することができる。
その結果、例えば75μm以下であって従来の方法ではビトリニット粒子と判別することができないために測定対象とすることができなかった石炭含有岩石試料中のビトリニット粒子についても、それがビトリニット粒子であることを十分に確実に識別することができるので、その表面の反射率測定を実施することができる。
【0028】
しかも、本発明においては、反射率測定作業は勿論、判別作業においても、本質的に被測定試料である石炭含有岩石試料を破壊することを必要とするものではない。
従って、ビトリニット粒子の反射率測定によって得られる根幹情報に加えて、それを補強し補完する環境または状況に関する付随的情報を取得することが容易であるので、ビトリニット粒子の反射率測定により得られる根幹情報の有する意義を飛躍的に高いものとすることができる。
その結果、例えば古地温環境の推定をより多くの地質体について容易に実行することができ、また、個々のビトリニット粒子の位置情報と、その各々に係る反射率の状況の情報とをきわめて小さいスケールで関連づけることが可能となるため、例えば過去における断層沿いの摩擦加熱や熱水流体による局所的な熱異常などを検出し、これらを精細にマッピングすることが可能となる。
【0029】
図3は、以上のビトリニット反射率測定方法の実施に好適に用いられる装置の構成の一例を概略的に示す説明用側面断面図である。
この例において、反射率測定装置30は、基本的に、被測定試料31を載置するための水平な載置面を有するテーブル32と、当該被測定試料31に落射光を供給する光源ランプ33と、被測定試料31において反射された反射光を測光する、シリコンフォトダイオードよりなる測光手段34とを備えてなるものである。
【0030】
反射率測定装置30において、光源ランプ33からの光路上には、当該光源ランプ33からの光を集束するためのレンズ35と、このレンズ35からの光による被測定試料31上の落射光エリアを規定するための絞り機構36とが設けられており、また、被測定試料31からの反射光の光路上であって測光手段34の手前に、波長545nmの光を例えば50〜90%の高い透過率で透過するバンドパスフィルター37が設けられている。図示する例において38は、接眼レンズ部であり、一点鎖線は光路を示す。
【0031】
ここで、光源ランプ33としては、例えば消費電力が75W以上のハロゲン白熱ランプやキセノン放電ランプなどを好適に用いることができる。
【0032】
このような反射率測定装置30において、上記のビトリニット反射率測定方法による特長を十分に活かした状態で当該方法を実施するためには、絞り機構36により、被測定試料31に係る被観察面における落射光の直径が例えば75μm以下とされることが好ましく、レーザー光でない通常光の場合には、例えば直径30μm程度とされることが好ましい。
一方、落射光エリアの一部である測光エリアは、例えば直径10μm以下とされることが好ましく、落射光の直径が10μm以下の場合には、直径1〜2μmが好適である。
【0033】
本発明のビトリニット反射率測定装置においては、落射光エリアがこのような範囲に設定されることにより、被測定試料31として研磨処理された石炭含有岩石試料を用いた場合であっても、その被観察面において、当該落射光エリア内に、例えば黄鉄鉱などの高反射性物質が存在する可能性を低いものとすることができて落射光エリア内におけるビトリニット粒子によるもの以外の反射光の強度を小さくすることができるため、ビトリニット粒子に係る反射光を高い精度で測光することができる。すなわち、測光エリア内に、被測定対象であるビトリニット粒子以外の高反射性物質が存在する可能性がきわめて小さいものとなり、結局、測定対象とされるビトリニット粒子について、それが粒径の小さい微小粒子であっても、その表面の反射率測定を高い精度で行うことができる。
【0034】
以上の反射率測定装置30を用いたビトリニット反射率測定方法においては、先ず、古地温環境を推定することを目的とする地質体から石炭含有岩石試料を採取し、その石炭含有岩石試料を研磨することによって、または、任意の個所で切断して当該切断面を研磨することによって、被観察面を形成することにより被測定試料31を作成し、この被測定試料31をテーブル32に載置する。
【0035】
そして、接眼レンズ部38を介して、被測定試料31における被観察面を200〜1000倍の倍率で観察して、角状形状を有する角部保有粒子をビトリニット粒子として判別して測定対象となるビトリニット粒子を選定し、この選定されたビトリニット粒子に対して光源ランプ33からの光を落射し、その反射光を測光手段34により測定する。測光手段34が反射光を受光した結果得られる電気信号は、アンプ(図示せず)で増幅され、適宜の電子計算機(図示せず)において処理される。
【0036】
以上のビトリニット反射率測定装置によれば、被測定試料として、被観察面を形成した石炭含有岩石試料そのものを用いた場合においても、当該被観察面に露出しているビトリニット粒子以外の高反射性物質による反射が低減されるため、ビトリニット粒子について目的とする反射率測定を確実に実行することができる。
また、安価で取り扱いが容易なフォトダイオードを測光手段として利用しているので、測定装置全体として安価で取り扱いが容易であり、しかも、測光エリアの直径がきわめて小さく設定されている場合にも、全体の構成として、得られる電気信号においてS/N比の低下が抑制されるため、ビトリニット粒子について高い精度でその反射率を測定することが可能である。
【0037】
以上、本発明のビトリニット反射率測定方法およびビトリニット反射率測定装置について具体的な例により説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】石炭含有岩石試料に形成された被観察面の典型例を模式的に示す説明図である。
【図2】ビトリニット粒子における角状形状を説明するための拡大説明図である。
【図3】本発明のビトリニット反射率測定装置の構成を概略的に示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ビトリニット粒子
11 対象外石炭粒子
12 岩石組成粒子
13 粒子間空隙
13a 角状空隙部
L1, L2 曲線
14 被観察面
20 角部
21 辺
30 反射率測定装置
31 被測定試料
32 テーブル
33 光源ランプ
34 測光手段
35 レンズ
36 絞り機構
37 バンドパスフィルター
38 接眼レンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭含有岩石試料に含有されるビトリニットの反射率を測定する方法であって、
石炭含有岩石試料を研磨処理して被観察面を形成し、
当該被観察面を200〜1000倍の倍率で観察し、当該被観察面において露出する、内側に凸の2つの辺により区画された角状形状を有する角部保有粒子をビトリニット粒子として判別し、
当該判別されたビトリニット粒子の表面領域における反射率を測定することを特徴とするビトリニット反射率測定方法。
【請求項2】
角部保有粒子の粒径が75μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のビトリニット反射率測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のビトリニット反射率測定方法に用いられる測定装置であって、
測光手段としてフォトダイオードを備えてなり、
落射光の直径を75μm以下とすることができると共に、測光エリアの直径を10μm以下とすることができることを特徴とするビトリニット反射率測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−132795(P2007−132795A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326094(P2005−326094)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】