説明

ビニルベンジルエーテル化合物及び該化合物を必須成分とする樹脂組成物

【課題】低誘電率、低誘電正接の化合物。該化合物を必須成分とする樹脂組成分の提供。
【解決手段】一般式(1)で示される脂環構造を有する新規なビニルベンジルエーテル化合物であって、該化合物を必須成分とする樹脂組成物は低誘電率、低誘電正接の硬化物を得ることが出来る。


Rは水素原子又はC1〜C12の炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの環状構造であっても良い。Xは直接結合しているか直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの炭化水素により結合していても良い。nは1以上の整数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂環構造を有する新規なビニルベンジルエーテル化合物及び該ビニルベンジルエーテル化合物を必須成分とする樹脂組成物に関する発明であり、電子回路基板に用いられる銅張積層板製造用の樹脂組成物や電子部品に用いられる封止材・成形材・注型材・接着剤・電気絶縁塗料・フィルム材などに有用な熱硬化性化合物及び該化合物を必須成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理技術の向上に伴い、電子機器に使用される電子回路は高周波数化が進んでいる。電子回路に使用される絶縁材料の誘電特性によっては高周波数化に伴い誘電損失が大きくなり信号遅延、信号減衰等の不具合が生じることが知られている。誘電損失は誘電率、誘電正接の値から計算で求めることができるが、絶縁材料の誘電率の値は2〜5程度であるのに対して誘電正接は0.0500〜0.0002程度であり、低誘電損失の電子回路にはより低誘電正接材料が必要とされている。
【0003】
エポキシ樹脂は取り扱い性の容易さやバランスの取れた諸物性により電子回路材料として広く使用されている。しかし、硬化の際にエポキシ基と硬化剤が反応しアルコール性水酸基を生成する。この様な極性基による分極のため誘電率、誘電正接が高く改良が求められていた。これに対して、各種置換基を導入することにより反応で生成するアルコール性水酸基濃度を低減する手法が提案されている。例えば、例えば特許文献1ではモノスチレン化フェノールノボラック樹脂を用い、特許文献2では、アルキル置換フェノールノボラック樹脂を用いることによって改良を提案している。特許文献3ではエポキシ基とイソシアネート基を反応することによってオキサゾリドン環を生成してアルコール性水酸基の無いエポキシ樹脂を用いることによって改良を提案している。これらの方法によりある程度の低誘電率・低誘電正接化は可能であるが、エポキシ基を反応して硬化を行う限りアルコール性水酸基濃度を低減するには限界があり、低誘電率・低誘電正接化も限界があった。
【特許文献1】特開平08−165328号公報
【特許文献2】特開平08−198949号公報
【特許文献3】特開平09−278867号公報
【0004】
また、熱硬化性樹脂であるビニルベンジルエーテル化合物は、ビニル基による硬化反応のため、エポキシ樹脂の様にアルコール性水酸基の生成が無く硬化物の誘電率・誘電正接等の誘電特性が良好である。該化合物として、特許文献4にはビスフェノールAやビスフェノールS等のポリフェノールのビニルベンジルエーテルが開示されており、特許文献5にはポリフェニレンエーテル(PPE) の優れた性質を受け継いだバランスのとれた特性を有する2官能PPEオリゴマーの末端をビニル基に変換した化合物が開示されている。特許文献10には、その硬化物はガラス転移点が高く、低誘電率、低誘電正接であり耐熱性、電気特性の優れたビニル化合物が得られることが開示されているが、近年の電子回路に使用される絶縁材料には一段の高周波数化に伴い、誘電特性、特に誘電正接の値が更に低い電子回路材料が求められている。
【特許文献4】米国特許第4,116,936号公報
【特許文献5】特開2004−067727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、ビニルベンジルエーテル化合物につき鋭意研究し、特定の構造を有するビニルベンジルエーテル化合物の誘電特性が著しく低いことを見いだし本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明の要旨は、一般式1または一般式2で示される脂環構造を有するビニルベンジルエーテル化合物である。本化合物は、例えば一般式3または一般式4で示される分子骨格中に脂環構造を有するフェノール化合物とビニルベンジルハライドを反応して得ることができる。この様な特定の分子構造を持つビニルベンジルエーテル化合物を用いることによって誘電特性、特に誘電正接の低い硬化物を得ることが出来る。
【0007】
【化1】

Rは水素原子又はC1〜C12の炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの環状構造であっても良い。Xは直接結合しているか直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの炭化水素により結合していても良い。nは1以上の整数を示す。
【0008】
【化2】

Rは水素原子又はC1〜C12の炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの環状構造であっても良い。mは0以上の整数を示す。Yはm=0の時は水素を表し、mが1以上の整数の場合は直接結合しているか直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの炭化水素により結合していても良い。
【0009】
【化3】

Rは水素原子又はC1〜C12の炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの環状構造であっても良い。Xは直接結合しているか直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの炭化水素により結合していても良い。nは1以上の整数を示す。
【0010】
【化4】

Rは水素原子又はC1〜C12の炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの環状構造であっても良い。mは0以上の整数を示す。Yはm=0の時は水素を表し、mが1以上の整数の場合は直接結合しているか直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの炭化水素により結合していても良い。
【0011】
更に、本発明のビニルベンジルエーテル化合物及び、該ビニルベンジルエーテル化合物を必須成分とする樹脂組成物は従来のビニルベンジルエーテル化合物と同様に建材用の注型材・成形剤・接着剤・塗料などや、電子回路基板や電子部品に用いられるプリプレグ、積層板、封止材、成形剤、注型材、接着剤、塗料、ペースト材、フィルム材などあらゆる用途に使用可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のビニルベンジルエーテル化合物は後述の実施例で示されるように、誘電率が3未満であり、誘電正接は0.010未満であるのに対して比較例では誘電率が3以上であったり、誘電正接が0.010以上となっている。一般式1又は一般式2で示されるビニルベンジルエーテル樹脂を用いることによって低い誘電率、誘電正接を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に述べる。
本発明のビニルベンジルエーテル化合物は前記一般式1又は一般式2で示される脂環構造を有する化合物であり、この様な特定の分子構造により低誘電率・低誘電正接を発現するものである。本化合物を得る方法としては、例えば、前記一般式3又は一般式4で示される脂環構造を有するフェノール化合物と下記のビニルベンジルハライドを反応して得ることができる。
【0014】
【化5】

【0015】
フェノール化合物の具体例としては2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ビス(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、テルペンとフェノール類の共重合体、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2−シクロヘキシルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−シクロヘキシルフェノール)、4,4’−(4−ヒドロキシフェニルメチレン)ビス(2−シクロヘキル−5−メチルフェノール)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の化合物を得る方法として前述のビニルベンジルハライドを用いる方法の具体例としてはp−ビニルベンジルクロライド(CMS−14 セイミケミカル株式会社製)、m−ビニルベンジルクロライド、あるいは2種類の混合物(CMS−AM,CMS−P セイミケミカル株式会社製)、p−ビニルベンジルブロマイド、m−ビニルベンジルブロマイド等を用いる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ビニルベンジルハライドを2種類以上混合して使用しても良い。
【0017】
分子骨格中に脂環構造を有するフェノール化合物とビニルベンジルハライドの反応は、ポリフェノール類とビニルベンジルハライドとの反応であり、従来から公知の方法により反応する事ができる。例えばフェノール化合物とビニルベンジルハライドを適当な不活性溶媒中で、アルカリ金属水酸化物を分割投入又は滴下して反応を行い、生成するハロゲン化金属を濾過や水洗によって分離する方法がある。あるいはフェノール化合物と、アルカリ金属水酸化物を配合し、ビニルベンジルハライドを分割投入又は滴下して反応を行い、生成するハロゲン化金属を濾過や水洗によって分離する方法もある。
【0018】
反応に用いる不活性溶媒は特に限定はなくヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、ジメチルブタン、ペンテン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の各種炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、メチルアミルアルコール、ヘプタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フリフリルアルコール等のアルコール類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、アミルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル、ジオキサン、メチルフラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が使用できるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上混合して使用しても良い。しかし、生成したハロゲン化金属を水洗により除去する場合は水層と有機溶媒層を分離可能な溶媒を使用する必要がある。好ましい分液可能な溶媒としてはベンジン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等があるがこれらに限定されるものではなく、2種類以上混合して使用しても良い。
【0019】
反応に用いるアルカリ金属水酸化物としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できるがこれらに限定されるものではなく、2種類以上混合して使用しても良い。また、固形で使用しても水溶液等の溶液で使用しても良い。
【0020】
反応には必要に応じて触媒を使用することも出来る。使用する触媒の具体例としてはベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、2メチルイミダゾール、2エチル4メチルイミダゾール等のイミダゾール類等各種触媒が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種類以上使用しても良い。
【0021】
反応は30℃〜150℃、好ましくは50℃〜90℃で反応を行うことが好ましい。反応温度が高いとビニル基の反応により重合してしまい、低すぎると反応が進まず効率が悪い。また、ビニル基の重合を抑える方法として酸素を系内に導入することも出来る。反応の追跡には各種クロマトグラフィーやIR、UV等を利用することが出来る。例えば、原料のビニルベンジルハライドの残存量や、反応に関わる官能基のピークを測定することで終点を決定することが出来る。
【0022】
得られたビニルベンジルエーテル化合物はビニル基の反応性から光照射や加熱により重合することができる。また、保存に際して重合禁止剤を添加しておくことも出来る。重合禁止剤の例としてはキノン類、ハイドロキノン類、フェノール類、各種銅塩類、アミジン類、ヒドラジン類等があり、より具体的にはトルキノン、ハイドロキノン、ナフテン銅酸、ヒドラジン塩酸塩などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種類以上使用しても良い。
【0023】
ビニルベンジルエーテル化合物を必須成分とする硬化性樹脂組成物には必要に応じてラジカル重合開始剤を使用することもできる。具体的にはメチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルアセテートパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種類以上使用しても良い。
【0024】
本発明のビニルベンジルエーテル化合物を必須成分として含有する樹脂組成物には他の各種硬化性樹脂を配合することが出来る。また、必要に応じて熱可塑性樹脂や各種充填剤を配合することが出来る。硬化性樹脂の具体例としてはエポキシ樹脂、ビニルベンジルエーテル化合物、ポリエステル樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種類以上使用しても良い。
【0025】
充填剤の具体例としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、酸化チタン、ガラス粉末、シリカバルーン等、ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種類以上使用しても良い。更に顔料等を配合しても良い。
本発明組成物の特性の評価を行った結果、一般式1又は一般式2で示される分子骨格中に脂環構造を有するビニルベンジルエーテル化合物を必須成分として含有する樹脂組成物は、低誘電正接であり優れた硬化物物性を示した。
【実施例】
【0026】
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例に示されている部数は重量部を意味する。また、赤外吸光スペクトルはパーキンエルマージャパン製1760Xで測定を行った。分子量分布は東ソー株式会社製液体クロマトグラフィーHLC−8120にて測定を行った。誘電率、誘電正接はヒューレットパッカード株式会社製4291Bにて測定を行った。
【0027】
合成例1
攪拌装置、温度計、冷却管、酸素ガス導入装置を備えたガラス製セパラブルフラスコに、フェノール化合物として2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ビス(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン(精工化学株式会社製 NONFLEX CBP)80.0部、アルカリ金属として20%NaOH水溶液77.4部、溶媒としてトルエン100部を仕込み、50〜60℃に加温して溶解した。触媒としてトリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン2.0gを仕込んだ。65℃〜75℃に反応温度を保ち、酸素をバブリングしながら、ビニルベンジルハライドとしてp−ビニルベンジルクロライド(CMS−14 セイミケミカル株式会社製)61.0部を滴下した。反応温度を75℃に保ちながら、ガスクロマトグラフィーにてCMS−14の残存量を追跡し、十分反応する迄反応を継続した。CMS−14を滴下終了後約15時間経過していた。その後、トルエン70部を加え希釈した。35%塩酸で、pHが5〜6になるまで中和し、下層水層を分離除去した。りん酸2水素ナトリウム水溶液でpHが7〜6になる様にしながら、水洗洗浄、水層分離除去を3〜5回繰り返した。還流脱水を行い、重合禁止剤を配合した後、溶液濾過を行って溶剤回収を行った。得られたビニルベンジルエーテル化合物は暗褐色の半固形状物質であった。赤外吸光スペクトルを図1に、液体クロマトグラフィーを図2に示した。
【0028】
合成例2
合成例1と同様な装置に1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン)(アデカアーガス株式会社製 DH−43)100部、20%NaOH水溶液97.5部、トルエン160部、触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド1.7部、p−ビニルベンジルクロライド(CMS−14)77.4部を加えた以外は合成例1と同様な操作を行った。得られたビニルベンジルエーテル化合物は暗褐色の半固形状物質であった。赤外吸光スペクトルを図3に、液体クロマトグラフィーを図4に示した。
【0029】
合成例3
合成例1と同様な装置にテルペンフェノール共重合体(ヤスハラケミカル(株)製 YP−90)70部、メチルエチルケトン50部、20%水酸化ナトリウム水溶液36部、テトラメチルアンモニウムクロライド1.5部、p−ビニルベンジルクロライド(CMS−14)69.3部を仕込んだ以外は合成例1と同様な操作を行った。得られたビニルベンジルエーテル化合物は暗褐色の半固形状物質であった。赤外吸光スペクトルを図5に、液体クロマトグラフィーを図6に示した。
【0030】
合成例4
合成例1と同様な装置にテルペンフェノール共重合体(ヤスハラケミカル(株)製 マイティエースK−125)80部、トルエン120部、20%水酸化ナトリウム水溶液60.1部、テトラメチルアンモニウムクロライド1.5部、p−ビニルベンジルクロライド(CMS−14)47.7部を仕込んだ以外は合成例1と同様な操作を行った。得られたビニルベンジルエーテル化合物は暗褐色の半固形状物質であった。赤外吸光スペクトルを図7に、液体クロマトグラフィーを図8に示した。
【0031】
合成例5
合成例1と同様な装置にテトラブロモビスフェノールA170部、反応溶媒としてトルエン90部、ビニルベンジルハライドとしてp−ビニルベンジルクロライドとm−ビニルベンジルクロライドの2種類の混合物(セイミケミカル株式会社製 CMS−P)97.9部、触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド0.9部、アルカリ金属として48.5%水酸化ナトリウム水溶液83.1部とした以外は合成例1と同様な操作を行った。得られたビニルベンジルエーテル化合物は淡黄色の固形状物質であった。
【0032】
合成例6
合成例1と同様な装置にビスフェノールフルオレン100部、反応溶媒としてメチルエチルケトン100部、ビニルベンジルハライドとしてp−ビニルベンジルクロライド(CMS−14)91.5部、触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド1.9部、アルカリ金属として48.5%水酸化ナトリウム水溶液48.4部とした以外は合成例1と同様な操作を行った。得られたビニルベンジルエーテル化合物は淡黄色の固形状物質であった。
【0033】
合成例7
合成例1と同様な装置に4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチリデン)ビス[2−メチルフェノール]100部、反応溶媒としてメチルエチルケトン120部、ビニルベンジルハライドとしてp−ビニルベンジルクロライドとm−ビニルベンジルクロライドの2種類の混合物(CMS−P)85.7部、触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド1.9部、アルカリ金属として48.5%水酸化ナトリウム水溶液44.7部とした以外は合成例1と同様な操作を行った。得られたビニルベンジルエーテル化合物は淡黄色の固形状物質であった。
【0034】
実施例1〜4及び比較例1〜3
上記の合成例1〜4で得られた化合物(樹脂)を実施例1〜4として、また、合成例5〜7で得られた化合物(樹脂)として表1にその誘電率及び誘電正接を示す。150℃×2時間及び180℃×2時間の条件で硬化物を作成した硬化物物性として誘電率、誘電正接の値を示す。
【0035】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】合成例1で得られたビニルベンジルエーテル化合物の赤外吸光スペクトル
【図2】合成例1で得られたビニルベンジルエーテル化合物の液体クロマトグラフィー
【図3】合成例2で得られたビニルベンジルエーテル化合物の赤外吸光スペクトル
【図4】合成例2で得られたビニルベンジルエーテル化合物の液体クロマトグラフィー
【図5】合成例3で得られたビニルベンジルエーテル化合物の赤外吸光スペクトル
【図6】合成例3で得られたビニルベンジルエーテル化合物の液体クロマトグラフィー
【図7】合成例4で得られたビニルベンジルエーテル化合物の赤外吸光スペクトル
【図8】合成例4で得られたビニルベンジルエーテル化合物の液体クロマトグラフィー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1または一般式2で示される脂環構造を有するビニルベンジルエーテル化合物。
【化1】

Rは水素原子又はC1〜C12の炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの環状構造であっても良い。Xは直接結合しているか直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの炭化水素により結合していても良い。nは1以上の整数を示す。
【化2】

Rは水素原子又はC1〜C12の炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの環状構造であっても良い。mは0以上の整数を示す。Yはm=0の時は水素を表し、mが1以上の整数の場合は直接結合しているか直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの炭化水素により結合していても良い。
【請求項2】
一般式3または一般式4で示される脂環構造を有するフェノール化合物とビニルベンジルハライドを反応して得られる請求項1記載のビニルベンジルエーテル化合物。
【化3】

Rは水素原子又はC1〜C12の炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの環状構造であっても良い。Xは直接結合しているか直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの炭化水素により結合していても良い。nは1以上の整数を示す。
【化4】

Rは水素原子又はC1〜C12の炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの環状構造であっても良い。mは0以上の整数を示す。Yはm=0の時は水素を表し、mが1以上の整数の場合は直接結合しているか直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は、シクロ環、アリール基などの炭化水素により結合していても良い。
【請求項3】
フェノール化合物が2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ビス(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタンである請求項1,2記載のビニルベンジルエーテル化合物。
【請求項4】
フェノール化合物が1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタンである請求項1,2記載のビニルベンジルエーテル化合物。
【請求項5】
フェノール化合物がテルペンとフェノール類の共重合体である請求項1,2記載のビニルベンジルエーテル化合物。
【請求項6】
請求項1〜5記載のビニルベンジルエーテル化合物を必須成分とする、熱硬化性樹脂及び又は熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜5記載のビニルベンジルエーテル化合物を必須成分とする電子回路基板や電子部品として用いられるプリプレグ、積層板、封止材、成形剤、注型材、接着剤、塗料、ペースト材、フィルム材等の樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−15945(P2007−15945A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196307(P2005−196307)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000221557)東都化成株式会社 (53)
【Fターム(参考)】