説明

ビレットヒータおよびビレットヒータにおける被加熱物の強制排出方法

【課題】加熱が完了したビレットを強制排出する際のタイムラグを短くすることができるビレットヒータを提供する。
【解決手段】ビレット60を搬送速度可変の送りローラ16により、誘導加熱コイルユニット12による加熱領域に連続的に搬送するビレットヒータ10であって、センサ20と、誘導加熱コイルユニット12とセンサ20との間に設けられた挟持部を有する挟持手段24と、挟持手段24をビレット60の搬送方向に移動させる強制排出手段40と、ビレット60の先端がセンサ20に達した時点で低速搬送に移行させ、低速搬送時間が所定時間に達した時点で高速搬送に移行させると共に、前記低速搬送への移行に従って挟持手段24によりビレット60を挟持して、強制排出手段40により前記加熱領域から強制排出させる制御手段52を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビレットヒータに係り、特に被加熱部材(ビレット)の先端側と後端側とにおける温度ムラを抑制することに適したビレットヒータ、およびこのビレットヒータにおける被加熱物の強制排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造加工を行う際、その前工程としての加熱工程では、加熱後の材料内温度分布に均一性が求められる。このような材料の加熱に用いるヒータとして知られているビレットヒータは、複数の誘導加熱コイルを直線上に配置し、この直線上に配置した誘導加熱コイル内に、加熱対象とする被加熱部材(ビレット)を連続投入する構成を基本としている。
【0003】
しかし、このような基本構成を有するビレットヒータでは、誘導加熱コイルの出口に近づいたビレットは先端部が加熱部から露出されるため、放熱による急激な温度低下を生じさせる。一方、同一ビレットの後端部は、未だ加熱部(誘導加熱コイル)の内部に位置すると共に、加熱状態にある次の材料と接触しているため、放熱による温度低下が小さい。このため、1つの材料(ビレット)であっても、その先端部と後端部との間において温度差が生じてしまうことがあり、特に材料長が長かったり、1つのビレットを排出するまでのサイクルタイムが長い場合には、その温度差が顕著に現れることとなる。
【0004】
こうした温度ムラを生じさせた部材は、次工程である鍛造加工に悪影響を与えるため、1部材における先端側と後端側との間における温度ムラを解消するための手法や、加熱装置が種々考案されてきている。
【0005】
例えば特許文献1には、出口形状を自然落下方式とするビレットヒータが開示されている。特許文献1に開示されているビレットヒータでは、後段側の誘導加熱コイル内における搬送ルートに傾斜角度を設け、ビレットが誘導加熱コイル内に位置する状態から、材料を自重落下により排出するというものである。
【0006】
また、特許文献2、3には、誘導加熱コイルの後段に配置したセンサにより、ビレットの先端の露出が確認された時点でビレットの搬送速度を上昇させ、誘導加熱コイルの後段に配置されたピンチローラによりビレットを挟み込み、強制排出すると共に、ビレットの搬送速度を元に戻す構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−84664号公報
【特許文献2】特公昭60−37599号公報
【特許文献3】特開平6−88121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、上記特許文献に開示されているような構成のビレットヒータであれば、ビレットの露出から排出までに要する時間を短縮し、ビレット内における温度ムラを抑制することができると考えられる。
【0009】
しかし、例えば特許文献1に開示されているような構成のビレットヒータでは、ビレットを長尺とした場合には、誘導加熱コイル内において傾斜を確保することができなくなる可能性が生ずるといった問題がある。
【0010】
また、特許文献2、3に開示されているようなビレットヒータでは、ビレットが誘導加熱コイルから露出した後に、ピンチローラまでの送り速度を速めるといった構成が採られている。このため、ビレットの先端が露出してから、ビレットがピンチローラの巻き込み位置に至るまでには、低速搬送される距離があると共に、前記巻き込み位置までの距離もピンチローラの半径以上が必要となる。よって、誘導加熱装置からビレットが強制排出されるまでの間には必然的にタイムラグが生ずることとなり、このタイムラグに起因する温度ムラが生ずることとなる。
【0011】
そこで本発明では、加熱が完了したビレットを強制排出する際のタイムラグを短くすることで、ビレット内における温度ムラを極力抑制することができるビレットヒータ、およびビレットヒータにおける被加熱物の強制排出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための、本発明に係るビレットヒータは、複数の被加熱物を搬送速度可変の送りローラにより、誘導加熱コイルユニットによる加熱領域に連続的に搬送するビレットヒータであって、前記誘導加熱コイルユニットの後段に設けられたセンサと、前記誘導加熱コイルユニットと前記センサとの間に設けられた挟持部を有する挟持手段と、前記挟持手段を前記被加熱物の搬送方向に移動させる強制排出手段と、前記被加熱物の先端が前記センサに達した時点で前記送りローラの搬送速度を降下させて低速搬送に移行させ、低速搬送時間が所定時間に達した時点で前記送りローラの搬送速度を上昇させて高速搬送に移行させると共に、前記低速搬送への移行に従って前記挟持手段により前記被加熱物を挟持して、前記強制排出手段により前記挟持手段を移動させて前記被加熱物を前記加熱領域から強制排出させる制御手段を有することを特徴とする。
【0013】
また、上記のような特徴を有するビレットヒータにおいて前記挟持手段は、駆動源としての第1アクチュエータと前記被加熱物の挟み込みを行う挟持部を有し、前記第1アクチュエータの駆動量よりも前記挟持部の移動量が大きくなる第1リンク機構を備えるようにすると良い。
【0014】
このような特徴を有することによれば、第1アクチュエータの駆動に起因した挟持部の挟持速度、すなわち反応速度を速めることができる。これにより、センサによる検知から挟持までのタイムラグを短縮することができる。
【0015】
また、上記のような特徴を有するビレットヒータにおいて前記強制排出手段は、駆動源としての第2アクチュエータを有し、前記第2アクチュエータの駆動量よりも前記挟持手段の移動量を大きくする第2リンク機構を備えるようにすると良い。
【0016】
このような特徴を有することによれば、第2アクチュエータの駆動に起因した挟持手段の移動速度を速めることができる。これにより、ビレットを挟持してから強制排出するまでに要する時間(タイムラグ)を短くすることができる。
【0017】
さらに、上記目的を達成するための本発明に係るビレットヒータにおける被加熱物の強制排出方法は、複数の被加熱物を搬送速度可変の送りローラにより、誘導加熱コイルユニットによる加熱領域に連続的に搬送するビレットヒータによる前記被加熱物の強制排出方法であって、前記被加熱物の先端が前記誘導加熱コイルユニット後段の検知位置に達した時点で、前記送りローラによる搬送速度を降下させる工程と、前記搬送速度の降下から所定時間経過後に前記送りローラによる搬送速度を上昇させる工程と、前記被加熱物が前記検知位置に達したことを検知して、前記被加熱物を挟持すると共に前記上昇させた搬送速度よりも速い速度で前記被加熱物を前記誘導加熱コイルユニットから引き出す工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記のような特徴を有するビレットヒータ、およびビレットヒータにおける被加熱物の強制排出方法によれば、加熱が完了したビレットを強制排出する際のタイムラグを従来に比べて短くすることができる。これにより、ビレット内における温度ムラを極力抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係るビレットヒータの全体構成を示す図である。
【図2】引出ユニットにおける待機状態を示す図であり、(A)は平面構成、(B)は正面構成を示す図である。
【図3】引出ユニットにおけるビレットの挟持状態を示す図であり、(A)は平面構成、(B)は正面構成を示す図である。
【図4】引出ユニットにおけるビレットの強制排出状態を示す図であり、(A)は平面構成、(B)は正面構成を示す図である。
【図5】引出ユニットにおけるビレット強制排出後の挟持解除状態を示す図であり、(A)は平面構成、(B)は正面構成を示す図である。
【図6】制御部による送りローラと挟持手段、強制排出手段の制御状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のビレットヒータ、およびビレットヒータにおける被加熱物の強制排出方法に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態に係るビレットヒータ10は、図1に示すように、誘導加熱コイルユニット12と、搬送レール15、送りローラ16、センサ20、引出ユニット22、および制御手段52を基本として構成される。
【0021】
誘導加熱コイルユニット12は、単体、または複数(図1に示す例では3つ)のソレノイド状の誘導加熱コイル14(14a〜14c)と、これらの誘導加熱コイル14を覆うケーシング13とを基本として構成される。誘導加熱コイル14には、図示しないインバータやコンバータ、およびチョッパなどの電力制御手段と、電源部が接続されている。図1に示すように、誘導加熱コイル14を複数配置する場合、複数の誘導加熱コイル14はそれぞれ、個別のインバータに接続されて、個別の電力制御を行うことを可能としても良いし、単一のインバータに対して直列または並列に接続されて、一括電力制御を行うようにしても良い。なお、連続して配置される誘導加熱コイル14は、その内径部を被加熱物であるビレット60の通過路とする。
【0022】
ケーシング13は、誘導加熱コイル14の外周を覆う外殻であり、誘導加熱コイル14から生ずる磁束が外部要素に影響を与えることを避けるために、耐熱性を有する磁気遮蔽部材により構成することが望ましい。
【0023】
搬送レール15は、ソレノイド状に形成された誘導加熱コイル14の内周に配置され、詳細を後述する送りローラ16により押出されるビレットを摺動させて、誘導加熱コイル14内を通過させる役割を担う。このため、搬送レール15は通過路の下部側に配置される。搬送レール15は、2本一対で構成され、所定間隔をおいて配置される亙り板(不図示)により、対を成すレールの間隔が広がることを防止している。搬送レール15は、耐熱性を有する中空部材により構成されることが望ましい。このような構成とすることで、搬送レール15の内部に、冷却水などの冷媒を送通させることが可能となり、搬送レール15が加熱されることにより生ずるレールの変形等を防止することが可能となる。
【0024】
送りローラ16は、ビレット60を搬送するための搬送手段としての役割を担う。送りローラ16は、上述した誘導加熱コイルユニット12の前段(上流側)に設けられる。図1に示す例の場合、搬送対象となるビレット60を挟み込むように配置された対を成すローラにより構成され、対を成すローラのうちの少なくとも一方を回転駆動させる駆動手段18(例えばモータ)と、駆動力を伝達可能に接続されている。このような構成とされる送りローラ16では、対を成すローラをビレットに圧接させることで、送りローラ16に伝達された回転力をビレット60の推進力へ変換することとなる。
【0025】
センサ20は、上述した誘導加熱コイルユニット12の後段(下流側)近傍に配置される。このような配置形態を採られるセンサ20は、接触型のセンサであっても良いし、非接触型のセンサであっても良く、ビレット60の先端が検知位置に達したことを検知することにより、検知信号を出力する。
【0026】
センサ20の配置位置は、誘導加熱コイルユニット12の出口側に近接した位置とすることが、ビレット60の放冷時間短縮の面で効果的である。ここで、センサ20を誘導加熱コイルユニットの近傍に配置する観点から、挟持部30にセンサ20を配置する構成としても良い。このような構成とすることにより、ビレット60の先端が排出されてからビレット60が挟持されるまでの時間を短くすることができ、放冷時間を短縮することができるからである。なお、誘導加熱コイルユニット12と挟持部30における待機位置との間隔は、10mm程度あれば良い。
【0027】
引出ユニット22は、上述した誘導加熱コイルユニット12の後段に配置され、後端が誘導加熱コイルユニット12に残留するビレット60を強制排出させる役割を担う。引出ユニット22は、ユニット本体23に設けられた挟持手段24と強制排出手段40、および搬出ローラ46とを基本として構成される。
【0028】
挟持手段24は詳細を図2(A)に示すように、ユニット本体23の上部に設けられ、一対の挟持部30と一対の第1アクチュエータ26、および一対の第1リンク機構28を有する。挟持部30は、詳細を後述する第1リンク機構28の先端部に位置する爪(チャック)であり、誘導加熱コイルユニット12から露出したビレット60の先端部分を挟持する役割を担う。このため挟持部30は、搬送されるビレット60の高さ方向中心位置を挟持可能な高さに配置されると共に、誘導加熱コイルユニット12と、センサ20との間に配置される。このような配置形態とすることで、センサ20によりビレット60の先端が通過したことを確認した後に挟持動作が行われれば、挟持部30は確実にビレット60の先端近傍を挟持することが可能となるからである。また、挟持部30を爪としたことにより、ローラによる挟み込みに比べて挟持箇所を誘導加熱コイルユニット12の近傍に配置することが可能となる。このため、ビレット60の先端が露出されてから引出ユニット22が稼動するまでの時間(挟持可能となる時間)を短くすることができる。
【0029】
第1アクチュエータ26は、挟持部30による挟持動作を行うための駆動源であり、本実施形態ではエアシリンダを採用している。第1リンク機構28は、ほぼL字状の板部材により構成される。支持点28aを支点、挟持部30を作用点、第1アクチュエータ26との連結点28bを力点とした際に、支点から力点までの距離よりも、支点から作用点までの距離が長くなるように構成している。第1リンク機構28をこのような構成とすることにより、第1アクチュエータ26の駆動量、すなわち第1アクチュエータ26のロッド26aが摺動する量よりも、挟持部30の移動量が大きくなり、挟持動作の高速化を図ることが可能となる。
【0030】
なお、第1リンク機構28は、第1アクチュエータ26におけるロッド26aが矢印Aの方向に摺動することにより、支持点28aを基点として矢印Bの方向へ回動することとなる。ここで、対を成す第1リンク機構28間に、両リンク機構間の中心に屈曲部を有する1自由度のリンク機構(同期リンク機構32)を備えるようにすることで、対を成す第1リンク機構28の回動動作を同期させることが可能となり、挟持時の調芯を図ることができる。
【0031】
強制排出手段40は、図2(B)に示すように、第2アクチュエータ42と、第2リンク機構44を有する。第2アクチュエータ42は、ユニット本体23の上部に配置された挟持手段24をビレット60の搬送方向へ移動させるための駆動源であり、本実施形態ではエアシリンダを採用している。ここで挟持手段24は、ユニット本体23の上部に設けられた摺動手段34に搭載されることで、ビレット60の搬送方向への摺動を自在とされる。摺動手段34としては例えば、摺動レールとスライダから成るリニアガイドなどであれば良く、この場合に挟持手段24は、スライダに搭載されることとなる。
【0032】
第2リンク機構44は、ほぼL字状の板部材により構成される。支持点44aを支点、スライダとの連結点44cを作用点、第2アクチュエータ42との連結点44bを力点とした際に、支点から力点までの距離よりも、支点から作用点までの距離が長くなるように構成している。第2リンク機構44をこのような構成とすることにより、第2アクチュエータ42の駆動量、すなわち第2アクチュエータ42のロッド42aが摺動する量よりも、挟持手段24の移動量が大きくなり、ビレット60を引き出す際の動作の高速化を図ることが可能となる。なお動作時には、作用点と力点は共に、支点を基点として扇状の軌跡を描くこととなる。このため第2リンク機構44はスライダとの連結点44cに長孔を有する構成とした。また、第2アクチュエータ42は、固定点43を基点として矢印Cに示す方向への回動を可能に固定されている。
【0033】
搬出ローラ46は、挟持手段24により挟持され、強制排出手段40によって誘導加熱コイルユニット12から、後端部まで引き出されたビレット60を排出シュート48まで送り出すためのローラである。搬出ローラ46は、隣接配置された駆動用モータ50からの駆動力を伝達可能に配置され、誘導加熱コイルユニット12から引き出されたビレット60を排出シュート48側へ送り出す。
【0034】
このような構成を有する引出ユニット22は、図2〜図5に示すような動作で、ビレット60の挟持から引出までの動作を行う。なお、図2〜図5において、それぞれ(A)は引出ユニットの平面構成を示す図であり、(B)は引出ユニットの正面構成を示す図である。
【0035】
図2は、ビレット60がセンサ20による検知位置に到達する直前の状態を示す図である。ビレット60の到達を検知すると、図3に示すように、第1アクチュエータ26を駆動させる信号が出力され、爪状の挟持部30によりビレット60が挟持される。その後、図4に示すように、第2アクチュエータ42が第2リンク機構44を稼動させ、誘導加熱コイルユニット12からビレット60を強制排出(引抜き)し、ビレット60を搬出ローラ46へ移載する。ビレット60を搬出ローラ46へ移載させた後、図5に示すように、第1アクチュエータ26を駆動させ、挟持部30によるビレット60の挟持を解除することで、ビレット60は搬出ローラ46により排出シュート48へと送り出される。
【0036】
制御手段52は、送りローラ16によるビレット60の搬送速度の制御と、引出ユニット22によるビレット60の強制排出の制御を行う役割を担う。
【0037】
搬送速度の制御は、ビレット60の材料長に応じて定められた定常搬送速度と、定常搬送速度よりも送りローラ16による搬送速度を上昇させた高速搬送速度、および高速搬送速度よりも送りローラ16による搬送速度を降下させた低速搬送速度といった少なくとも3段階の制御が成される。以下、図6に示すタイムチャートを参照して、送りローラ16による搬送速度の制御と、引出ユニット22によるビレット60の強制排出制御の詳細について説明する。
【0038】
ビレット60はまず、定常搬送速度により誘導加熱コイルユニット12内へ送り出される。送り出されたビレット60のうちの先頭のビレット60の先端がセンサ20による検知位置に到達すると、センサ20から制御手段52に対して検知信号が出力される。
【0039】
検知信号を受けた制御手段52は、送りローラ16を駆動させる駆動手段18に対して、低速搬送速度での搬送を行う旨の制御信号を出力し、ビレット60は低速搬送に移行される。制御手段52には、低速搬送速度による搬送時間をカウントするタイマ(不図示)が備えられ、低速搬送速度での搬送時間(低速搬送時間)が所定時間に達すると、駆動手段18に対して高速搬送速度での搬送を行う旨の制御信号を出力する。高速搬送速度でのビレット60の搬送は、次段に位置する(先頭となった)ビレット60がセンサ20による検知位置に到達するまで行われる。
【0040】
また、センサ20からの検知信号を受けた制御手段52は、第1アクチュエータ26のロッド26aを伸縮させるための制御部(例えば図示しない電磁弁)に対して、第1アクチュエータ26のロッド26aを短縮させる旨の駆動信号を出力する。このような駆動信号の出力に伴い、挟持部30によりビレット60が挟持される。制御手段52は、第1アクチュエータ26のロッド26aを短縮させる旨の駆動信号を出力した後、第2アクチュエータ42のロッド42aを伸縮させるための制御部(例えば図示しない電磁弁)に対して、第2アクチュエータ42のロッド42aを短縮させる旨の駆動信号を出力する。このような駆動信号の出力に伴い、挟持手段24は摺動手段34を介してビレット60の搬送方向へ摺動し、ビレット60は誘導加熱コイルユニット12から引き出される。
【0041】
その後、制御手段52は、第1アクチュエータ26のロッド26aを伸縮させるための制御部に対して、ロッド26aを伸張させる旨の制御信号を出力する。このような制御信号の出力に伴い、挟持部30によるビレット60の挟持が解除される。ビレット60の挟持が解除された後、制御手段52は第2アクチュエータ42のロッド42aを伸縮させるための制御部に対して、ロッド42aを伸張させる旨の駆動信号を出力する。このような駆動信号の出力に伴い、挟持部30が誘導加熱コイルユニット12とセンサ20との間の初期位置に回帰することとなる。なお、第1アクチュエータ26、第2アクチュエータ42の制御部に対する駆動信号の出力は、各動作に要する動作時間を考慮したタクトタイムを持って出力されることとなる。また、第2アクチュエータ42を介したビレット60の引き出し速度は、送りローラ16による高速搬送速度よりも速く設定することが望ましい。
【0042】
ここで、高速搬送速度でビレット60が搬送される時間(高速搬送時間)と、低速搬送速度でビレット60が搬送される時間(低速搬送時間)は、それぞれ次のようにして求めるようにすると良い。
【数1】


【数2】


【数3】


ただし、上記数式1〜3は、例えば1.4mm/sec≦低速搬送速度≦高速搬送速度≦13.0mm/sec、および低速搬送時間≧0の要件を満たすものとするなど、送りローラ16の定格使用範囲における最低値と最高値に基づいて、上限と下限を定めるものとする。また、数式2、3より、高速搬送距離は、材料長を越えない範囲で定められることとなる。
【0043】
上記のような構成を有すると共に制御されるビレットヒータ10によれば、ビレット60は、誘導加熱コイルユニット12の内部(加熱領域)内において高速搬送化され、高速搬送速度のまま、引出ユニット22へ引き渡されることとなる。このため、加熱領域からビレットの先端が露出し、露出したビレットの先端をセンサが検知した後に加速されてピンチローラに引き渡される従来の誘導加熱装置に比べ、ビレット60の先端が露出してから後端が排出されるまでのタイムラグを短くすることができる。このため、ビレット内における温度ムラを極めて小さくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
10………ビレットヒータ、12………誘導加熱コイルユニット、13………ケーシング、14(14a〜14c)………誘導加熱コイル、15………搬送レール、16………送りローラ、18………駆動手段、20………センサ、22………引出ユニット、23………ユニット本体、24………挟持手段、26………第1アクチュエータ、26a………ロッド、28………第1リンク機構、30………挟持部、32………同期リンク機構、34………摺動手段、40………強制排出手段、42………第2アクチュエータ、42a………ロッド、44………第2リンク機構、46………搬出ローラ、48………排出シュート、50………駆動用モータ、52………制御手段、60………ビレット。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被加熱物を搬送速度可変の送りローラにより、誘導加熱コイルユニットによる加熱領域に連続的に搬送するビレットヒータであって、
前記誘導加熱コイルユニットの後段に設けられたセンサと、
前記誘導加熱コイルユニットと前記センサとの間に設けられた挟持部を有する挟持手段と、
前記挟持手段を前記被加熱物の搬送方向に移動させる強制排出手段と、
前記被加熱物の先端が前記センサに達した時点で前記送りローラの搬送速度を降下させて低速搬送に移行させ、低速搬送時間が所定時間に達した時点で前記送りローラの搬送速度を上昇させて高速搬送に移行させると共に、前記低速搬送への移行に従って前記挟持手段により前記被加熱物を挟持して、前記強制排出手段により前記挟持手段を移動させて前記被加熱物を前記加熱領域から強制排出させる制御手段を有することを特徴とするビレットヒータ。
【請求項2】
前記挟持手段は、駆動源としての第1アクチュエータと前記被加熱物の挟み込みを行う挟持部を有し、前記第1アクチュエータの駆動量よりも前記挟持部の移動量が大きくなる第1リンク機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のビレットヒータ。
【請求項3】
前記強制排出手段は、駆動源としての第2アクチュエータを有し、前記第2アクチュエータの駆動量よりも前記挟持手段の移動量を大きくする第2リンク機構を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビレットヒータ。
【請求項4】
複数の被加熱物を搬送速度可変の送りローラにより、誘導加熱コイルユニットによる加熱領域に連続的に搬送するビレットヒータによる前記被加熱物の強制排出方法であって、
前記被加熱物の先端が前記誘導加熱コイルユニット後段の検知位置に達した時点で、前記送りローラによる搬送速度を降下させる工程と、
前記搬送速度の降下から所定時間経過後に前記送りローラによる搬送速度を上昇させる工程と、
前記被加熱物が前記検知位置に達したことを検知して、前記被加熱物を挟持すると共に前記上昇させた搬送速度よりも速い速度で前記被加熱物を前記誘導加熱コイルユニットから引き出す工程とを有することを特徴とするビレットヒータにおける被加熱物の強制排出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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