説明

ビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤の製造方法

【課題】本発明は、ビール系飲料および焙煎飲料の濃厚感、旨味を付与する風味付与剤を提供する。
【解決手段】穀物の摩砕物にプロテアーゼ処理を施した、風味付与剤により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物の摩砕物にプロテアーゼ処理したものからエキス分を回収する工程を含む、ビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールは昔から世界各地で製造され様々な種類のものが飲用されてきた。近年では消費者の嗜好性の多様化、ライフスタイルの変化などにより、ビールのみならず、発泡酒やビール風アルコール飲料や低アルコールビールなど種類も多様化し、バラエティーに富んだものが作られるようになっている。
【0003】
これに伴い、商品の差別化をはかるため、新たな風味や香味を付与、増強する素材が望まれるようになってきている。特にビール風アルコール飲料や低アルコールビールなどは商品差別化のために濃厚感や旨味を付与することが求められており、それらを可能にする新規な風味付与剤が望まれている。
【0004】
また同時に珈琲や麦茶のような焙煎飲料においてもビール系飲料と同様に濃厚感や旨味を付与することができる風味付与剤が求められている。
【0005】
例えば、ビール醸造用麦汁の製造工程においてプロテアーゼを添加することにより、香味の改良されたビールを製造する方法(特開平6-78740号公報:特許文献1)が知られている。
【0006】
また、麦芽を水とエチルアルコールとの混合溶液で抽出して得られる抽出物を発泡酒などのビール様飲料にモルト感やボリューム感などを付与、増強させるビール様飲料用香味改善剤(特開2005-13166号公報:特許文献2)が知られている。
【0007】
これらの従来技術(特開2005-13166号公報:特許文献2)ではある程度の風味や香味を付与、増強効果は見られるものの、必ずしも満足できるものではなく、さらに優れた風味付与剤の開発が望まれている。
【0008】
【特許文献1】特開平6−78740号公報
【特許文献2】特開2005−13166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ビール系飲料および焙煎飲料に添加することにより、ビール系飲料および焙煎飲料に望まれる濃厚感、旨味感を付与することが可能な風味付与剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、穀物の摩砕物にプロテアーゼ処理をすることにより、ビール系飲料および焙煎飲料に望まれる濃厚感、旨味を付与することが可能な風味付与剤の製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.以下の工程(1)〜(3)を含むビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤の製造方法。
(1)穀物の摩砕物を加熱する工程
(2)プロテアーゼ処理する工程
(3)エキス分を回収する工程
2.穀物が稗、粟、はと麦、蕎麦、脱脂小麦胚芽、麦芽、アマランサス、胚芽押麦、玄米胚芽、オートミール、キャロブ、ライ麦、米、グリンピース、発芽玄米の少なくとも一つである前項1記載の製造方法。
3.前項1または2記載の製造方法により製造されたビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤。
4.前項3記載のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤に、さらに香料を含むことを特徴とする香料組成物。
5.前項3または4記載のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤又は香料組成物を含有する飲食品。
6.前項3または4記載のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤又は香料組成物をビール系飲料および焙煎飲料に添加することにより、その風味を増強する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば濃厚感、旨味を付与あるいは増強することができ、嗜好性に優れた飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
本発明は、以下の工程(1)〜(3)を含むビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤の製造方法を提供する。
(1)穀物の摩砕物を加熱する工程
(2)プロテアーゼ処理する工程
(3)エキス分を回収する工程
【0015】
各工程について以下に説明する。
【0016】
(1)穀物の摩砕物を加熱する工程
工程(1)は、穀物の摩砕物を加熱する工程である。工程(1)において穀物の摩砕物は、穀物を水に浸漬した後、摩砕機により摩砕することにより調製することができる。また、予め摩砕若しくは粉砕して粉末状にした穀物を水に浸漬したものを、穀物の摩砕物として加熱してもよい。
【0017】
工程(1)における穀物を水に浸漬する際の浸漬温度および浸漬時間は特に制限されるものではなく、適時選択することができる。例えば、0〜100℃で0分〜5時間、好ましくは4〜90℃で10分〜4時間、さらに好ましくは4〜80℃で30分〜3時間の範囲内で攪拌または静置条件下で浸漬する。
【0018】
工程(1)における穀物の浸漬に使用する水の量は、使用する穀物により適宜調整することができるが、穀物:水(質量比)は通常は90〜1:10〜99、好ましくは70〜1:30〜99である。
【0019】
前記摩砕機は穀物を摩砕、粉砕可能なものであれば特に制限されるものではなく、一般的に粉砕や摩砕に用いられる装置を使用することができる。例えば家庭用ミキサーを使用する場合、水に浸漬した穀物を1分間破砕処理することで摩砕物を得ることができる。
【0020】
工程(1)においては、穀物の摩砕物を加熱することにより、穀物の内在酵素(穀物の中に元々含有されている酵素のこと)を失活させることができる。加熱手段は任意に選択することができ、通常は55℃〜121℃にて1分〜90分、好ましくは60℃〜115℃にて5分〜70分、より好ましくは65℃〜110℃にて10分〜60分加熱する。また、該加熱は密封系もしくは開放系のいずれでも行うことができるが、密封系で行うのがより好ましい。
【0021】
本発明の方法に使用する穀物として、例えば、稗、粟、はと麦、蕎麦、脱脂小麦胚芽、麦芽、アマランサス、胚芽押麦、玄米胚芽、オートミール、キャロブ、ライ麦、米、グリンピース、発芽玄米であり、好ましくは稗、粟、脱脂小麦胚芽、麦芽、玄米胚芽、キャロブ、ライ麦、米が挙げられる。本発明に使用する穀物は市場で容易に入手できるものである。
【0022】
前記麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、燕麦などの麦類を原料として得られる公知なのものであり特に制限はないが、好適な具体例としては、ピルスナー麦芽、エール麦芽、ミュンヘン麦芽、アンバー麦芽、ロースト麦芽、チョコレート麦芽、キャラメル麦芽、小麦麦芽などが挙げられる。また、前記キャロブとは、イナゴ豆の豆部分ではなく莢部分を使用したものを指す。
【0023】
(2)プロテアーゼ処理する工程
工程(2)は、工程(1)で加熱した摩砕物にプロテアーゼを添加して加水分解処理する工程である。プロテアーゼ処理は1種又は2種以上のプロテアーゼの存在下で行うことができる。2種以上のプロテアーゼの存在下で行う場合、複数種のプロテアーゼで処理するか、あるいは1種類のプロテアーゼで処理した後に異なる種類のプロテアーゼで処理するかは、プロテアーゼの種類により適宜選択することができる。
【0024】
工程(2)におけるプロテアーゼの使用量は使用する酵素の活性や種類によって異なるため一概には言えないが、穀物の摩砕物に対して約0.0001〜20質量%、好ましくは約0.001〜10質量%、より好ましくは約0.01〜5質量%の範囲内を例示することができる。
【0025】
工程(2)におけるプロテアーゼ処理の反応条件は、使用するプロテアーゼにより適宜選択することができる。例えば、反応温度および時間は約5〜90℃にて約0.5〜96時間、好ましくは約10〜85℃にて約0.5〜72時間、さらに好ましくは約15〜80℃にて約1〜48時間の範囲内で攪拌または静置条件下でプロテアーゼ処理することができる。また、pH条件は、特に制限されず、使用するプロテアーゼの至適条件に合わせて調整することができるが、通常はpH4.0〜10.0の範囲でプロテアーゼ処理することができる。
【0026】
前記プロテアーゼによる加水分解終了後、加熱して該プロテアーゼを失活させる。該加熱の条件は使用するプロテアーゼにより適宜選択することができるが、55℃〜140℃にて1分〜180分、好ましくは60℃〜130℃にて5分〜120分、より好ましくは65℃〜121℃にて10分〜90分加熱する。
【0027】
一般的にプロテアーゼは、ペプチド結合の加水分解を触媒する酵素の総称であり、エンドぺプチダーゼとエキソペプチダーゼに分類できる。エンドペプチダーゼはポリペプチド鎖に内在するペプチド結合を加水分解して大雑把にいくつかのペプチドに分解するプロテアーゼである。エキソペプチダーゼはペプチドのアミノ末端あるいはカルボキシ末端のペプチド結合を加水分解する酵素で、ペプチド鎖の末端から順次アミノ酸を遊離させるプロテアーゼである。本明細書においては、エンドペプチダーゼをエンド型プロテアーゼ、エキソペプチダーゼをエキソ型プロテアーゼと呼称する。この呼称は他特許文献においても使われている(例えば、特開2005-87017号公報等)。
【0028】
本発明の方法に使用するプロテアーゼの種類は、特に限定されず、広く市販されているプロテアーゼを使用することができる。本発明に使用するエンド型プロテアーゼとしては、例えば、プロテアーゼN(天野エンザイム社)、プロテアーゼNL(天野エンザイム社)、プロテアーゼS(天野エンザイム社)、プロレザー(登録商標)FG-F(天野エンザイム社)、パパインW-40(天野エンザイム社)、ニュートラーゼ(ノボザイムズ社)、プロタメックス(ノボザイムズ社)、アルカラーゼ(登録商標)(ノボザイムズ社)、ブロメライン(日本バイオコン社)、オリエンターゼ(登録商標)10NL(エイチビィアイ社)、オリエンターゼ(登録商標)90(エイチビィアイ社)などが挙げられる。
【0029】
本発明に使用するエキソ型プロテアーゼとしては、ウマミザイム(天野エンザイム社)、ぺプチダーゼR(天野エンザイム社)、プロテアーゼA(天野エンザイム社)、プロテアーゼP(天野エンザイム社)、プロテアーゼM(天野エンザイム社)、デナプシン2P(ナガセケムテックス社)、デナチーム(登録商標)AP(ナガセケムテックス社)、フレーバーザイム(ノボザイム社)、スミチーム(登録商標)AP(新日本化学社)、スミチーム(登録商標)MP(新日本化学社)、スミチーム(登録商標)FP(新日本化学社)、スミチーム(登録商標)LP(新日本化学社)、オリエンターゼ(登録商標)20A(エイチビィアイ社)、オリエンターゼ(登録商標)ONS(エイチビィアイ社)などが挙げられる。
【0030】
また、本発明で使用するプロテアーゼの由来は特に制限されるものではなく、カビ、酵母、細菌等の各種微生物由来のもの、植物由来のもの、動物由来のもの由来のプロテアーゼを適宜選択して使用することができる。
【0031】
(3)エキス分を回収する工程
工程(3)は工程(2)においてプロテアーゼ処理した反応溶液を固液分離することにより固形分を除去して、エキス分を回収する工程である。固液分離する手段としては、例えば、スクリューデカンタなどの遠心分離機を使用した遠心分離、フィルタープレスなどを使用した圧搾、濾紙若しくは膜または珪藻土などの一般的な濾過助剤を使用した濾過などの各種固液分離手段が挙げられる。また、これらの固液分離装置を単体もしくは2つ以上組み合わせて固液分離するのが好ましい。
【0032】
本発明のエキス分とは、工程(3)においてプロテアーゼ処理した反応溶液を固液分離して得られる液体のことである。該エキス分のpHは2.0〜8.0、好ましくは2.5〜7.5であることが好ましい。また該エキス分のBRIXは10.0〜50.0、好ましくは20.0〜40.0であることが好ましい。
【0033】
前記エキス分は、ビール系飲料および焙煎飲料に濃厚感、旨み、おいしさといった風味を付与、増強するための風味付与剤として用いることができる。したがって本発明は、ビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤を提供する。また、本発明はビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤をビール系飲料および焙煎飲料に添加することにより、風味を増強する方法を提供する。
【0034】
前記ビール系飲料とは、ビール類、発泡酒、ビール風アルコール飲料、低アルコールビール類、ノンアルコールビール類、フレーバードビール類、ビター系炭酸飲料類を指す。本発明のビール系飲料の製造方法、用いる原料等としては特に限定されず、公知の方法および原料を用いることができる。
【0035】
前記焙煎飲料とは、コーヒー豆、麦等を焙煎したものを原料とし、そこから水抽出したエキス部分の一部または全量を使用した飲料を指す。該焙煎するための方法は公知であり、特に制限は無いが、直火焙煎、熱風焙煎、遠赤外線焙煎、マイクロ波焙煎、炭火焙煎、過熱水蒸気焙煎などが挙げられる。焙煎の度合いにより様々な焙煎物ができ、またこれらを使用した飲料も焙煎の度合いや抽出方法によって様々な風味を有するようになる。
【0036】
前記焙煎飲料としては、例えば、コーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料、乳飲料などのコーヒー飲料類や麦茶、玄米茶、ほうじ茶、烏龍茶、番茶、黒豆茶、ビワ茶などの茶飲料が挙げられ、好ましくはコーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料、乳飲料、麦茶、ほうじ茶、烏龍茶が挙げられる。
【0037】
本発明の風味付与剤は適当な希釈剤もしくは担体との混合物の形態であってもよい。そのような希釈剤もしくは担体として、例えばアラビアガム、デキストリン、グルコース、シュークロースなどの固体希釈剤もしくは担体、または水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、界面活性剤などの液体希釈剤もしくは担体が挙げられる。
【0038】
本発明の風味付与剤は、例えば、粉末状、顆粒状、液状、乳液状、その他適宜の剤形にしてもよく、また例えば、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンあるいはこれらの混合物に溶解させることもできる。
【0039】
本発明のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤にさらに香料を含有させて、香気を補強することが好ましい。したがって、本発明は前記ビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤に香料を含むことを特徴とする香料組成物を提供する。
【0040】
前記香料とは、精油、オレオレジン、回収フレーバー、エキストラクト、単離香料などの天然香料もしくはエステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類などの合成香料もしくはそれぞれを組み合わせた混合物を指す。
【0041】
本発明のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤または香料組成物は、ビール系飲料および焙煎飲料の製造工程中に添加することができる。本発明のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤または香料組成物をビール系飲料および焙煎飲料に添加する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜用いることができる。
【0042】
本発明のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤または香料組成物をビール系飲料に添加する時期としては、製造工程中の発酵終了後の工程、例えば発酵工程終了後の熟成工程や熟成工程終了後の濾過工程や容器充填工程の直前などが挙げられる。
【0043】
また、本発明のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤または香料組成物を焙煎飲料に添加する時期としては、例えば製造工程中の調合工程、均質化工程、充填工程、巻締工程などが挙げられる。
【0044】
本発明のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤または香料組成物の飲食品に対する添加量には特に制限は無く、飲食品の種類によって適宜選択すればよいが、例えば、ビール系飲料および焙煎飲料または香料組成物中の含有量は、一般的には0.1〜100,000ppm、好ましくは1〜70,000ppm、より好ましくは10〜50,000ppmとすることが好ましい。
【0045】
本発明のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤または香料組成物を配合する飲食品として、例えば、ビール系飲料(各種ビール類、発泡酒、ビール風アルコール飲料、低アルコールビール類、ノンアルコールビール類、フレーバードビール類、ビター系炭酸飲料類など)、焙煎飲料(コーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料、乳飲料や麦茶、玄米茶、ほうじ茶、烏龍茶、番茶、黒豆茶、ビワ茶など)、冷菓類(アイスクリーム、シャーベット、氷菓など)、菓子類(チューイングガム、キャンディ、キャラメル、チョコレート、ビスケット、クッキー、米菓、焼菓子、油菓子、半生菓子、生菓子、スナックなど)およびパン類(食パン、コッペパン、ライ麦パン、フランスパン、クロワッサンなど)が好適に挙げられ、ビール系飲料および焙煎飲料が特に好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
稗粉((株)げんきタウン社製)20gを20℃にて稗粉質量の5倍量の水に浸漬した。1時間浸漬の後、スラリーを得た。このスラリーを90℃で30分間内存酵素失活および殺菌した後、ニュートラーゼ(ノボザイム社製)を0.12g添加して27℃にて20時間酵素反応を行った。反応終了後、115℃にて60分間加熱して酵素失活を行った。
【0048】
酵素失活後、冷却を行い、遠心分離機(日立工機社製)にて15℃、4000×gで20分間遠心分離して、スラリーより固形分除去し、液体を回収した。さらに回収した液体を濾紙(5Bまたは5C、東洋濾紙社製)でろ過し、風味付与剤(1)を得た。
【0049】
[実施例2]
実施例1と同様にして、粟粉((株)げんきタウン社製)から風味付与剤(2)を得た。
【0050】
[実施例3]
実施例1と同様にして、はと麦粉((株)ナチュラルハウス社製)から風味付与剤(3)を得た。
【0051】
[実施例4]
実施例1と同様にして、蕎麦粉(岩手阿部製粉(株)社製)から風味付与剤(4)を得た。
【0052】
[実施例5]
実施例1と同様にして、脱脂小麦胚芽(日清製粉(株)社製)から風味付与剤(5)を得た。
【0053】
[実施例6]
麦芽(アサヒビールモルト社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例1と同様にして、麦芽から風味付与剤(6)を得た。
【0054】
[実施例7]
アマランサス((株)はくばく社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例1と同様にして、アマランサスから風味付与剤(7)を得た。
【0055】
[実施例8]
胚芽押麦((株)ナチュラルハウス社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例1と同様にして、胚芽押麦から風味付与剤(8)を得た。
【0056】
[実施例9]
玄米胚芽((株)東リョー社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例1と同様にして、玄米胚芽から風味付与剤(9)を得た。
【0057】
[実施例10]
オートミール(日本食品製造合資会社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例1と同様にして、オートミールから風味付与剤(10)を得た。
【0058】
[実施例11]
実施例1と同様にして、キャロブパウダー(桜井食品(株)社製)から風味付与剤(11)を得た。
【0059】
[実施例12]
実施例1と同様にして、ライ麦粉(桜井食品(株)社製)から風味付与剤(12)を得た。
【0060】
[実施例13]
実施例1と同様にして、米(パウダーライスC1、グリコ栄養食品(株)社製)から風味付与剤(13)を得た。
【0061】
[実施例14]
実施例1と同様にして、グリンピースパウダー(こだま食品(株)社製)から風味付与剤(14)を得た。
【0062】
[実施例15]
発芽玄米((株)アイリッツ社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例1と同様にして、発芽玄米から風味付与剤(15)を得た。
[官能評価1]
【0063】
水 100 mlに実施例1〜15の風味付与剤(1)〜(15)を各0.1 ml添加して、専門パネラー3人により官能評価を行った。官能評価は、無添加品と比較して 4‥非常に強くなる、3‥強くなる、2‥やや強くなる、1‥変化無し、0‥弱くなる、として評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、本発明の風味付与剤により、水の濃厚感、旨味が強く付与、増強されるという効果が得られることがわかった。
【0066】
[実施例16]
稗粉((株)げんきタウン社製)40gを20℃にて稗質量の5倍量の水に浸漬した。1時間浸漬の後、スラリーを得た。このスラリーを90℃で30分間内存酵素失活および殺菌した後、プロテアーゼM(天野エンザイム社製)を0.16g添加して27℃にて20時間酵素反応を行った。反応終了後、115℃にて60分間加熱して酵素失活を行った。酵素失活後、実施例1と同様にして風味付与剤(16)を得た。
【0067】
[実施例17]
実施例16と同様にして、脱脂小麦胚芽(日清製粉(株)社製)から風味付与剤(17)を得た。
【0068】
[実施例18]
麦芽(アサヒビールモルト社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例16と同様にして、麦芽から風味付与剤(18)を得た。
【0069】
[実施例19]
胚芽押麦((株)ナチュラルハウス社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例16と同様にして、胚芽押麦から風味付与剤(19)を得た。
【0070】
[実施例20]
実施例16と同様にして、キャロブパウダー(桜井食品(株)社製)から風味付与剤(20)を得た。
【0071】
[実施例21]
実施例16と同様にして、米(パウダーライスC1、グリコ栄養食品(株)社製)から風味付与剤(21)を得た。
【0072】
[官能評価2]
市販のビール風アルコール飲料 99.5 mgに実施例16〜21の風味付与剤(16)〜(21)を各0.5 mg添加して、専門パネラー4人により官能評価を行った。官能評価は、無添加品と比較して4‥非常に強くなる、3‥強くなる、2‥やや強くなる、1‥変化無し、0‥弱くなる、として評価した。その結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2から明らかなように、本発明の風味付与剤をビール風アルコール飲料に添加することによって、無添加品と比較して濃厚感、旨味が強く付与、増強されるという効果が得られることがわかった。
【0075】
[実施例22]
粟粉((株)げんきタウン社製)40gを20℃にて粟質量の5倍量の水に浸漬した。1時間浸漬の後、スラリーを得た。このスラリーを90℃で30分間内存酵素失活および殺菌した後、ウマミザイム(天野エンザイム社製)を0.16g添加して27℃にて20時間酵素反応を行った。反応終了後、115℃にて60分間加熱して酵素失活を行った。酵素失活後、実施例1と同様にして風味付与剤(22)を得た。
【0076】
[実施例23]
麦芽(アサヒビールモルト社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例22と同様にして、麦芽から風味付与剤(23)を得た。
【0077】
[実施例24]
胚芽押麦((株)ナチュラルハウス社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例22と同様にして、胚芽押麦から風味付与剤(24)を得た。
【0078】
[実施例25]
実施例22と同様にして、キャロブパウダー(桜井食品(株)社製)から風味付与剤(25)を得た。
【0079】
[実施例26]
実施例22と同様にして、ライ麦粉(桜井食品(株)社製)から風味付与剤(26)を得た。
【0080】
[実施例27]
実施例22と同様にして、米(パウダーライスC1、グリコ栄養食品(株)社製)から風味付与剤(27)を得た。
【0081】
[官能評価3]
市販の発泡酒 99.5 mlに実施例22〜27の風味付与剤(22)〜(27)を各0.5 ml添加して、専門パネラー4人により官能評価を行った。官能評価は、無添加品と比較して 4‥非常に強くなる、3‥強くなる、2‥やや強くなる、1‥変化無し、0‥弱くなる、として評価した。その結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
表3から明らかなように、本発明の風味付与剤を発泡酒に添加することによって、無添加品と比較して濃厚感、旨味が強く付与、増強されるという効果が得られることがわかった。
【0084】
[実施例28]
稗粉((株)げんきタウン社製)40gを20℃にて稗質量の5倍量の水に浸漬した。1時間浸漬の後、スラリーを得た。このスラリーを90℃で30分間内存酵素失活および殺菌した後、プロレザー(登録商標)FG-F(天野エンザイム社製)を0.16g添加して27℃にて20時間酵素反応を行った。反応終了後、115℃にて60分間加熱して酵素失活を行った。酵素失活後、実施例1と同様にして風味付与剤(28)を得た。
【0085】
[実施例29]
実施例28と同様にして、粟粉((株)げんきタウン社製)から風味付与剤(29)を得た。
【0086】
[実施例30]
麦芽(アサヒビールモルト社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例28と同様にして、麦芽から風味付与剤(30)を得た。
【0087】
[実施例31]
玄米胚芽((株)東リョー社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例28と同様にして、玄米胚芽から風味付与剤(31)を得た。
【0088】
[実施例32]
実施例28と同様にして、キャロブパウダー(桜井食品(株)社製)から風味付与剤(32)を得た。
【0089】
[実施例33]
実施例28と同様にして、ライ麦粉(桜井食品(株)社製)から風味付与剤(33)を得た。
【0090】
[官能評価4]
市販の麦茶 99.5 mgに実施例28〜33の風味付与剤(28)〜(33)を各0.5 mg添加して、専門パネラー4人により官能評価を行った。官能評価は、無添加品と比較して 4‥非常に強くなる、3‥強くなる、2‥やや強くなる、1‥変化無し、0‥弱くなる、として評価した。その結果を表4に示す。
【0091】
【表4】

【0092】
表4から明らかなように、本発明の風味付与剤を麦茶に添加することによって、無添加品と比較して濃厚感、旨味が強く付与、増強されるという効果が得られることがわかった。
【0093】
[比較例1]
特開2005−13166号公開特許公報による製法
300 mlのコルベンにエチルアルコールを75%含有するエチルアルコール水溶液120 gと市販のミュンヘン麦芽40 gを添加し、攪拌しつつ温浴上で70℃で2時間加温した。室温まで冷却した後、原料麦芽をろ過除去して90 gの麦芽抽出物(C)を得た。麦芽抽出物(C)の他に同様にしてエチルアルコール25%水溶液による麦芽抽出物(A)、エチルアルコール45%水溶液による麦芽抽出物(B)、エチルアルコール93%水溶液による麦芽抽出物(D)、水による麦芽抽出物(E)を得た。
【0094】
[実施例34]
脱脂小麦胚芽(日清製粉(株)社製)40gを20℃にて脱脂小麦胚芽質量の8倍量の水に浸漬した。1時間浸漬の後、スラリーを得た。このスラリーを90℃で30分間内存酵素失活および殺菌した後、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)を0.16g添加して27℃にて20時間酵素反応を行った。反応終了後、115℃にて60分間加熱して酵素失活を行った。酵素失活後、実施例1と同様にして風味付与剤(34)を得た。
[実施例35]
麦芽(アサヒビールモルト社製)を20℃にて水に浸漬した後、市販のジュースミキサー(ナショナル社製)にて摩砕し、スラリーを得たこと以外は実施例34と同様にして、麦芽から風味付与剤(35)を得た。
【0095】
[実施例36]
実施例34と同様にして、キャロブパウダー(桜井食品(株)社製)から風味付与剤(36)を得た。
【0096】
[実施例37]
実施例34と同様にして、ライ麦粉(桜井食品(株)社製)から風味付与剤(37)を得た。
【0097】
[実施例38]
実施例34と同様にして、米(パウダーライスC1、グリコ栄養食品(株)社製)から風味付与剤(38)を得た。
【0098】
[官能評価5]
市販のビール風アルコール飲料 99.97 mgに実施例34〜38の風味付与剤(34)〜(38)を各0.03mg、比較例1の香味改善剤(A)〜(E)を各300 ppm添加して、専門パネラー5人により官能評価した。官能評価は、無添加品と比較して 4‥非常に強くなる、3‥強くなる、2‥やや強くなる、1‥変化無し、0‥弱くなる、として評価した。その結果を表5に示す。
【0099】
【表5】

【0100】
表5から明らかなように、本発明の風味付与剤をビール風アルコール飲料に添加することによって、無添加品および比較例1のものと比較して、濃厚感、旨味が強く付与、増強されるという効果が得られることがわかった。
【0101】
[官能評価6]
市販の発泡酒 99.97 mgに実施例34〜38の風味付与剤(34)〜(38)を各0.03 mg、比較例1の香味改善剤(a)〜(e)を各300ppm添加して、専門パネラー5人により官能評価をおこなった。官能評価は、無添加品と比較して 4‥非常に強くなる、3‥強くなる、2‥やや強くなる、1‥変化無し、0‥弱くなる、として評価した。その結果を表6に示す。
【0102】
【表6】

【0103】
表6から明らかなように、本発明の風味付与剤を発泡酒に添加することによって、無添加および比較例2のものと比較して、濃厚感、旨味が強く付与、増強されるという効果が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の風味付与剤は、ビール系飲料および焙煎飲料に濃厚感、旨味を増強する風味付与剤として利用することができ、産業上非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)〜(3)を含むビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤の製造方法。
(1)穀物の摩砕物を加熱する工程
(2)プロテアーゼ処理する工程
(3)エキス分を回収する工程
【請求項2】
穀物が稗、粟、はと麦、蕎麦、脱脂小麦胚芽、麦芽、アマランサス、胚芽押麦、玄米胚芽、オートミール、キャロブ、ライ麦、米、グリンピース、発芽玄米の少なくとも一つである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の製造方法により製造されたビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤。
【請求項4】
請求項3記載のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤に、さらに香料を含むことを特徴とする香料組成物。
【請求項5】
請求項3または4記載のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤又は香料組成物を含有する飲食品。
【請求項6】
請求項3または4記載の記載のビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤又は香料組成物をビール系飲料および焙煎飲料に添加することにより、その風味を増強する方法。

【公開番号】特開2008−43231(P2008−43231A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220244(P2006−220244)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】