説明

ビール醸造におけるフレーバー回収方法及び装置

本発明はビール醸造方法に関し、この場合、煮沸段階中の麦汁から流出される蒸気は、スチーム側において麦汁ボイラーに連結されている精留塔に流入し、蒸気は精留されて、少なくとも一つのフレーバー含有蒸留物が蒸気から回収され、煮沸段階後の麦汁に供給される。また、本発明は、本発明にかかる方法を実行するための装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール醸造におけるフレーバー回収方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102004034555(A1)号明細書には、ビール醸造中の麦汁の煮沸段階において流出する麦汁スチームは、蒸発スチームと反対方向に精留されることが開示されている。浮力カラム(buoyancy column)のカラムボトム(column bottom)上に集められたスチーム凝縮物は、それぞれのカラムボトムの出口シャフトを経てそれぞれ次の下のカラムボトムに流れ、又は、最低のカラムボトムから醸造釜の中に戻る。カラムボトム上の所謂渦層(whirl layer)において、ガス段階に残されている高揮発性のフレーバーは、水の凝縮及び麦汁スチームの低揮発性フレーバーの凝縮によって順次に濃厚になる。分離効果は、逆流する加熱されたスチーム凝縮物において放出される凝縮熱によって高まり、これによって、同時に凝縮された高揮発性フレーバーはスチーム凝縮物から再び蒸発される。これは、必要な全体的な蒸発量を大幅に減らし、それによって、エネルギーが保存できる。
【0003】
麦汁煮沸期間中、フレーバーが失われる恐れがあり、特にホップフレーバーが考えられる。これらの損失は、ホップの後期追加によって及び高速攪拌しながらホップを加える(whirlpool hopping)ことによって多少補償される。外国において、麦汁煮沸後に高価なホップアロマを用いることができるが、ドイツでは法律(ビール醸造に関するドイツ純粋法)によって用いることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的はビール醸造におけるフレーバー回収方法及び装置を提供することにあり、そのために、特にドイツ純粋法にも注目しながら、蒸気のために麦汁煮沸期間中に損失したフレーバーを麦汁に供給することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1による方法及び請求項7による装置をもって達成できる。
【0006】
好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
ビール醸造におけるフレーバー回収のための本発明の方法において、麦汁の煮沸段階中に流出する蒸気は、麦汁釜のスチーム側に連結されている精留塔に供給される。この釜において、蒸気を精留することができ、この場合、少なくとも一つのフレーバー含有蒸留物を得ることができて、煮沸段階後の麦汁に供給されることができる。
【0008】
一つ以上のフレーバー含有蒸留物は、精留塔において蒸気から回収され得る。また、例えば一工程で価値のないフレーバー含有蒸留物(ビール醸造において求めてない蒸留物)を分離することもできる。価値のあるフレーバー含有蒸留物(ビール醸造において求めている蒸留物)が得られてから、及び/又は、蓄えられてから、冷却した麦汁に戻された後のビールにおける新しいフレーバーバリエーションに用いられることができる。
【0009】
このフレーバー戻し工程は、例えばホップを節減できるという利点を有する。さらに、使用される原料装填物における変動(例えば、異なる生産地域からの原料による味の微妙な違い)は、得られるフレーバー含有蒸留物を変えることによって和らげることができる。ホップフレーバーを回収及び/又は分析することばかりか、例えば一つ又は様々なフレーバーへの影響を、例えば麦汁の精留後の糖化工程及び煮沸工程において検出すること、及び/又は、例えばビールへのフレーバーバリエーションを成すために用いることができる。
【0010】
上述の方法は簡単な技術手法で実施することができるので、フレーバー回収手順及び麦汁へのフレーバーの新たな供給は、簡単な技術手法に従っている。
【0011】
フレーバー含有蒸留物は、精留塔を構成している少なくとも一つのカラムボトムによって得られる。しかし、精留塔は、5個、10個、20個、30個又はそれ以上のカラムボトムを備えてもよい。精留塔において、上昇する蒸気の一部は凝縮され得る。同時に、カラムボトムのスチーム凝縮物は、その下に配置されている一つ及び/又は様々なカラムボトムへ還流することができる。最下位ボトム上から上昇するスチームは、既に流出した凝縮物のカラムボトムからの蒸気の凝縮熱によって、そのカラムボトムより上に配置されている更なるカラムボトムを通ることができ、そこで、スチームの一部は更に凝縮され得る。そのカラムボトムから上昇するスチームは、その上のボトムを再び通過することができ、この工程は繰り返すことができる。麦汁釜からのカラムボトムの距離が遠いと、麦汁釜の近くに配置されているカラムボトムと比べて、その温度を低くすることができる。向流蒸留物の分離作業は、物質が沸騰する液体混合物から平衡曲線によって決められた比率で蒸発することができるという事実による。
【0012】
精留塔が少なくとも一つのカラムボトムを有するため、例えば、カラムボトム上に凝縮させる方法により蒸気に存在するフレーバーを抽出することができる。
【0013】
少なくとも一つのフレーバー含有凝縮物は、カラムボトムから少なくとも一つの弁を通って移すことができ、そして、煮沸段階後の麦汁に供給することができる。この方法で得られるフレーバー含有凝縮物は、一つ以上の用途に用いられるまで例えば貯留容器に保存することができ、また、貯留容器から移すこともできる。ビール醸造工程において求められていないフレーバー含有凝縮物は捨てることもできる。弁は、全て又は一部のカラムボトムの近くに配置されてもよい。
【0014】
煮沸段階後の麦汁に供給される前に、少なくとも一つのフレーバー含有凝縮物は分析され得る。ここで、この凝縮物は求められているものであるか否か、及び/又は、どんなフレーバー含有凝縮物が含まれているかを決めることができる。また、求められていないフレーバー含有凝縮物も、対応する方法で分析することができる。
【0015】
弁の後に、貯留容器が、フレーバー含有凝縮物を収容するために配置されてもよい。これによって、煮沸段階後の麦汁に再び供給されるまでフレーバー含有凝縮物を蓄えることができる。また、フレーバー含有凝縮物は例えば求められているフレーバー含有凝縮物であるか否かを決める一つの又は様々な分析のために、少なくとも一つの貯留容器から取ることもできる。貯留容器は、全て又は一部の弁の後に配置されてもよい。
【0016】
貯留容器は不活性気体で充満されてもよい。無酸素気体は、得られたフレーバー含有凝縮物の酸化反応を防ぐことができるので好ましい。
【0017】
煮沸予定の麦汁を、不連続的に又は連続的に麦汁釜に供給することができる。操作の連続モードにおいて、麦汁は常に供給されており、また、精留塔はある程度不変の平衡状態にある。操作の不連続モードにおいて、一定量の麦汁が供給されており、また、精留塔はカラムボトム上で平行状態が達成されるまで操作される。その後、少なくとも一つのフレーバー含有凝縮物は、対応するカラムボトムから取り出すことができる。
【0018】
本発明による装置の有利な設計において、麦汁釜は精留塔のスチーム側に連結することができ、精留塔は、少なくとも一つのフレーバー含有凝縮物を戻すための少なくとも一つの弁及び少なくとも一つのカラムボトムを備えることができる。
【0019】
この装置の一つの利点は、例えば少なくとも一つのフレーバー含有濃縮物を少なくとも一つのカラムボトム上で得ることができ、このフレーバー含有濃縮物は、弁を経て移すことができ、その後、例えば貯留容器に保存することができる。この貯留容器は、弁の直後に配置されてもよく、弁から一定の距離を置いて配置されてもよい。
【0020】
さらに、麦汁釜は内部ボイラーを備えてもよい。内部ボイラーは、ポンプによって麦汁を中央パイプを通って所謂ジェットポンプまで通すことができ、ここで、内部ボイラーの管状熱交換器である加熱パイプを通る連続流をもたらすことができる吸引効果を発生させてもよい。結果として、麦汁の部分的な流れは、パイプの中で上に向かって運ばれることができ、中央パイプを通って汲み上げられた麦汁と共に麦汁表面上に分散させることができる。この強制奔流の利点は、加熱段階中の麦汁のいかなる脈動をも防ぐことにある。さらに、釜の底部における口(taps)又は開口部は、釜内容物の完全な混合を確保する。
【0021】
本発明の実施形態を、添付図面を参照しながらより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】麦汁釜及びその麦汁釜のスチーム側に連結されている精留塔を有する麦汁煮沸用装置の部分的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1はビール醸造における麦汁煮沸用装置1を概略的に示している。煮沸予定の麦汁2は入口ライン8によって麦汁釜4の中に流入する。煮沸後の麦汁2は、麦汁釜4からの出口ライン9を経て排出され得る。
【0024】
図示の麦汁釜は内部ボイラーを含み、ここで、周波数制御ポンプが、麦汁2を中央パイプを通ってジェットポンプまで通している。この部位で吸引効果が発生することによって、連続流が管状熱交換器6である加熱パイプを通る。これによって、内部ボイラーパイプにおける麦汁2の部分的なスチームは上に向かって運ばれ、中央パイプ5を通って汲み上げられた麦汁と共に麦汁表面上に分散される。この強制奔流で、麦汁の脈動は加熱段階中に防ぐことができる。さらに、釜の底部に開口部7が設けられることによって、釜内容物が確実に完全に混ぜられる。
【0025】
上部において、麦汁釜4には精留塔10の底部にあるスチーム出口端末が設けられている。図示の精留塔10は、内蔵されたカラムの構成要素として複数のカラムボトム11を含む。カラムボトム11は、蒸気3(煮沸している麦汁の蒸気)の流れの向きに垂直な方向に配列されており、互いに距離を置いて離れている。蒸気がカラムボトム11を通ることができるように、ボトムには蒸気用通過口が設けられている。蒸気は、通過口を通ってから上に向かって、その下に配置されているカラムボトムより低い温度を有する他のカラムボトムへ流れる。
【0026】
還流条件を定めるために、精留塔10のヘッド部分において冷却ユニット13及び装置14が設けられている。冷却ユニット13は、残り蒸気の余熱12を回収するために働き、余熱は、例えば他の醸造工程に用いることができる。さらに、冷却ユニットは、精留工程において蒸気からまだ取り除かれていないフレーバーを凝縮するために働く。
【0027】
蒸気の収集最終スチームは、スチーム放出ラインを経て放出され、又は、後で煮沸工程後冷却された麦汁に再び供給されることができるように、特定フレーバー含有凝縮物17として低温の貯留容器16(例えば不活性ガスを包含する)に集められてもよい。貯留容器16を冷却するために、その容器は、冷却剤が流れているハウジングによって囲まれている。
【0028】
蒸気3は、煮沸段階中に煮沸している麦汁2から流出して、麦汁釜4のスチーム出口を経て精留塔10の中に入り、カラムボトム11を順次通って流れる。この工程において、水及び種々のフレーバーは上昇する蒸気3から凝縮され、これによって、蒸気の液体凝縮物(フレーバー含有蒸留物17)を形成することができ、液体膜としてカラムボトム11上に集められる。
【0029】
各カラムボトム11は、そこに付属されている弁15を有し、弁15を通って、カラムボトム11のフレーバー含有蒸留物17を完全に、部分的に又は例えば時間依存機能に合わせて出すことができる。
【0030】
特定フレーバー含有凝縮物17は、好ましい冷却された貯留容器16(例えば不活性ガスを包含する)に貯蔵されることができ、その後、沸騰18した後更に冷却させた麦汁2に供給することができる。求めていないフレーバーを含む凝縮物は廃棄物処分容器19に供給することができ、したがって、冷却された麦汁には供給されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煮沸段階中の麦汁(2)から流出される蒸気が、麦汁釜(4)のスチーム側に連結されている精留塔(10)に流入し、該精留塔で精留される、ビール醸造中におけるフレーバー回収用方法において、
少なくとも一つのフレーバー含有蒸留物(17)が、蒸気(3)から回収されて、煮沸段階後の麦汁(2)に供給されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記フレーバー含有蒸留物(17)が、精留塔(10)を構成している少なくとも一つのカラムボトム(11)によって得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つの前記フレーバー含有蒸留物(17)が、少なくとも一つの弁(15)を通って煮沸段階後の麦汁(2)に供給されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの前記フレーバー含有蒸留物(17)が、少なくとも一つの前記弁(15)の後に配置される少なくとも一つの好ましい低温貯留容器(16)の中に収容されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの前記貯留容器(16)が、不活性ガスで充満されていることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
煮沸予定の麦汁(2)が、不連続的に又は連続的に麦汁釜(4)に供給されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置であって、
麦汁釜(4)と、
前記麦汁釜の蒸気側に連結されており、少なくとも一つのカラムボトム(11)を備えている精留塔(10)と、
前記少なくとも一つのフレーバー含有蒸留物(17)を戻すための少なくとも一つの弁(15)と
を備えている装置。
【請求項8】
前記麦汁釜(4)は、内部ボイラーであることを特徴とする、請求項7に記載の装置。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−539892(P2010−539892A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525259(P2010−525259)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007902
【国際公開番号】WO2009/040059
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(506040652)クロネス アクティェンゲゼルシャフト (55)
【Fターム(参考)】