説明

ピザ生地の成形装置及びこの成形装置を使用したピザ生地の成形方法

【課題】手作りのピザ生地と同様に外側に引き延ばして生地を成形し、手作りのものと同じ食感のピザ生地を得る。
【解決手段】中心位置に固定された中央台12と、この中央台12の周囲に配置され、複数個に分割されて外方に向かって放射状に移動する支持片28からなる拡張台14と、この拡張台14を外方に向かって放射状に移動させる拡張台移動装置18とを有し、あらかじめプレス成形されたピザ生地16を、支持片28を外側に移動することにより、所定のピザ生地の寸法に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピザ生地の成形装置及びこの成形装置を使用したピザ生地の成形方法に関するものであり、より詳細には、ピザ生地を大量に生産する際に、手作りと同じように生地を外側に引き延ばして成形することによって、手作りと同じ食感の得られるピザ生地の成形装置及びこの成形装置を使用したピザ生地の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピザ生地は、広く知られているように、生地を外側に引き延ばして円形に成形するものであり、通常、外縁部に比べて中央部が薄くなるように成形している。このため、手作りでピザ生地を成形するときには、生地を外側に引き延ばして成形した後で、空中で回転させるなどのパフォーマンスを行って中央部が薄くなるように成形している。
【0003】
ピザ生地を大量に機械生産する際にも、手作りと同じ食感を得るように成形するためには、手作りと同じように生地を外側に引き延ばして成形し、外縁部に比べて中央部が薄くなるように成形することが望ましい。特に、ナポリスタイルのピザ生地では、外縁部を肉厚にするのが特徴となっている。しかしながら、従来技術では特許文献1の図8等に示されるように、単にプレスで押さえて成形するのみのものだったので、形状はほぼ同じに成形することはできても、手作りのピザ生地と同様に、外側に引き延ばして成形するものと同じ食感のピザ生地を得ることは、非常に困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−10731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消して、手作りのピザ生地と同様に外側に引き延ばして生地を成形し、手作りのものと同じ食感のピザ生地を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、中心位置に固定された中央台と、この中央台の周囲に配置され、複数個に分割されて外方に向かって放射状に移動する拡張台と、この拡張台を外方に向かって放射状に移動させる拡張台移動装置とを有することを特徴とするピザ生地の成形装置を提供するものである。
【0007】
ここで、前記拡張台移動装置が、中央に孔の設けられたドーナツ状の円板と、このドーナツ状の円板に放射状に移動可能に配設された複数個の案内軸と、この複数個の案内軸を外方に向かって放射状に一斉に移動させる拡張台駆動源とを有することが好ましく、さらに、前記拡張台駆動源が、上下方向に移動する円錐カムと、前記案内軸の内側端部に設けられ、前記円錐カムに係合するカムフォロアと、このカムフォロアを前記円錐カムに向けて付勢する付勢手段とからなることが好ましい。また、前記円錐カムが、速度制御された微速シリンダによって上下方向に移動することが好ましい。
【0008】
また、前記拡張台が、前記案内軸に固定されたセグメント状の支持片の集合体であることが好ましく、さらに、前記セグメント状の支持片が、前記案内軸に固定されており、縮径したときに、前記中央台と前記セグメント状の支持片とで実質的に単一の円板の形状となることが好ましい。
【0009】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、中心位置に固定された中央台と、この中央台の周囲に配置され、複数個に分割されて外方に向かって放射状に移動可能な拡張台との全面にピザ生地が載置された後、前記拡張台を外方に向かって放射状に移動させることにより前記ピザ生地を延伸することを特徴とするピザ生地の成形方法を提供するものである。
【0010】
ここで、前記ピザ生地は、縮径した状態の前記拡張台の外径よりわずかに大きく成形され、縮径した状態の前記拡張台の外周に外縁部を垂らして載置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成されているので、大量に機械生産するピザ生地でありながら、手作りと同じように生地を外側に引き延ばして成形し、かつ、外縁部に比べて中央部が薄くなるように成形することができ、それにより、手作りのピザ生地と同じ食感を得るように成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係るピザ生地の成形装置及びこの成形装置を使用したピザ生地の成形方法について、添付の図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は、本発明の実施形態に係るピザ生地の成形装置の一実施形態を概念的に示す図面であって、図1は縮径したときの平面部分断面図、図2は縮径したときの正面断面図、図3は延伸したときの平面部分断面図、図4は延伸したときの正面断面図である。また、図5はセグメント状に形成された支持片の詳細図、図6は拡張台移動装置の詳細を示す図2の部分拡大図である。
【0013】
図1ないし図4及び図6に示すように、本発明のピザ生地の成形装置10は、中心位置に固定された中央台12が設けられており、この中央台12の周囲に、複数個(実施例では8個)に分割されて外方に向かって放射状に移動する拡張台14が配置されている。そして、図2及び図4に示すように、この中央台12と拡張台14との上面にピザ生地16を載せて、複数個に分割された拡張台14を、それぞれ外方に向かって放射状に移動することによってピザ生地16を外側に向かって延伸するように構成されている。
【0014】
この拡張台14を外方に向かって放射状に移動させるために、拡張台14の下方には、拡張台移動装置18が設けられている。この拡張台移動装置18は、中央に孔の設けられたドーナツ状の円板20を有しており、このドーナツ状の円板20に放射状に設けられた複数個の貫通孔22にそれぞれ案内軸24が挿入されている。この案内軸24の数は、拡張台14の分割数と同数であり、この実施例では8個となっている。
【0015】
さらに、案内軸24の内側端部には、詳細は後述するカムフォロア26を介して、セグメント状に形成されたピザ生地の支持片28が取り付けられている。この支持片28は、図5に示す形状であって、中央台12の外側に環状に配置されており、この支持片28の集合体が全体として環状の拡張台14を構成している。この拡張台14の分割数は、この実施例では8分割であるが、8分割に限定されるものではなく、6〜12個程度に分割することが望ましい。6個以上とすることで、延伸成形後のピザ生地16をほぼ均整のとれた円形とすることができる。また、その数を増やすほどきれいな円形に近付くが、部品点数の削減の観点からは、12個程度以下とするのがよい。
【0016】
支持片28は、ピザ生地に直接接触し、延伸の作用を及ぼす部材である。このような支持片28の少なくともピザ生地と接触する部分は、食品衛生法に準じた材質であって、ピザ生地の張り付きが少なく、かつピザ生地を引っ張るための適度な摩擦力を有するものを用いるのが好ましい。例えば、ジュラコン等を用いることができる。
【0017】
図2及び図4に示すように、この拡張台移動装置18は、拡張台駆動源30によって移動される。拡張台駆動源30は、円錐カム32と、カムフォロア26と、カムフォロア26を円錐カム32に向けて付勢する付勢手段とを有している。以下、拡張台駆動源30について説明する。
【0018】
円板20の中央の下側には、上下方向に移動する円錐カム32が設けられている。この円錐カム32は、微速シリンダ34によって上下方向に移動する。この微速シリンダ34は、図示しないスピードコントローラなどの任意の速度制御手段によって、ピザ生地を引き延ばすのに適した速度でゆっくりと上昇するように速度制御される。
【0019】
案内軸24の外側端部近傍には、案内軸24の内側端部に設けられたカムフォロア26を円錐カム32の中心軸に向けて略水平に付勢する付勢手段が設けられている。この付勢手段は案内軸24を内側に向けて付勢する圧縮コイルばね36と、この圧縮コイルばね36を支持する支持管38とからなっている。支持管38は、円板20の外周の貫通孔22に対応する位置に放射状に取り付けられており、圧縮コイルばね36は、貫通孔22に挿入された案内軸24の外側端面と支持管38の外側の内端面との間に装填されている。付勢手段は、圧縮コイルばね36によって、常に案内軸24を内側に向けて付勢する。
【0020】
なお、この付勢手段は、円錐カム32による案内軸24の移動量(ストローク)に対応し、その移動量の間でカムフォロア26が円錐カム32に柔軟に追随する程度の力で案内軸24(カムフォロア26)を付勢できるものであればよく、圧縮コイルばねを用いるもの以外にも、ガスシリンダを用いるもの等であってもよい。
【0021】
案内軸24の内側端部には、カムフォロア26が設けられている。このカムフォロア26は、支持片28とは反対側の端部(図2における下側端部)にカムローラ36を有しており、カムローラ36は、円形カム32に接する接触するように配置されている。上述のように、カムフォロア26は、円錐カム32の中心に向けて常に付勢されているので、カムローラ36は、常に円錐カム32に当接(係合)している。このように、カムフォロア26は、常に円錐カム32に当接するように付勢されており、円錐カム32が上下動することによって、案内軸24が放射状に往復動し、案内軸24にカムフォロア26を介して取り付けられているセグメント状に形成されたピザ生地の支持片28が、外側に向かって放射状に拡縮する。
【0022】
拡張台駆動源30は、以上のように構成されているので、円錐カム32が微速シリンダ34によってゆっくりとした速度で上昇することによって、案内軸24の内側に設けられたカムフォロア26の先端のカムローラ36が外側に移動し、図6に想像線で描かれているように、それぞれの案内軸24が外方に向かって放射状に移動する。
【0023】
そして、この移動によって、案内軸24にカムフォロア26を介して固定された、複数個のセグメント状のピザ生地の支持片28からなる拡張台14がゆっくりと外方に向かって移動して、図3及び図4に示す位置、図6では想像線で示した位置まで放射状に拡がり、ピザ生地16を外側に向かって延伸して所定のピザ生地の寸法に成形する。
【0024】
このとき、円錐カム32の上昇する速度は、ピザ生地16が引き延ばされるのに最適な速度で拡張台14の支持片28が外側に向かって放射状に延伸するように設定されることが望ましく、この速度で円錐カム32がゆっくりと上昇するように、微速シリンダ34の上昇速度をスピードコントローラなどの任意の速度制御手段によって調整する。
【0025】
なお、図3及び図4に示す位置、図6では想像線で示した位置から拡張台14が縮径するときには、延伸して成形したピザ生地が取り出されて拡張台14上には何も存在しないので、速度制御して微速シリンダ34をゆっくり下降させる必要はない。
【0026】
セグメント状の支持片28は、縮径したときには、図2に示すように、その内径(内周面)28a(図5参照)が中央台12の外周に近接する位置まで縮径して、セグメント状の支持片28と中央台12とで実質的に単一の円板の形状となるように構成されている。また、中心位置に固定された中央台12は、ドーナツ状の円板20に支持板42で固定されており、円板20は、4本の脚44で支持されている。
【0027】
本発明のピザ生地の成形装置は、以上に説明したように構成されているので、ピザ生地16を成形する際には、セグメント状の支持片28と中央台12とでほぼ単一の円板の形状となるように縮径した拡張台14の上に、所定の形状にあらかじめプレスで押さえて成形した材料を載せ、拡張台駆動源30の円錐カム32を微速シリンダ34によってゆっくりとした速度で上昇させることによって、案内軸24にカムフォロア26を介して固定された複数個のセグメント状のピザ生地の支持片28からなる拡張台14がゆっくりと外方に向かって延伸して、ピザ生地16を外側に向かって延伸して成形する成形方法を得ることができる。
【0028】
そして、このピザ生地の成形方法によれば、手作りのピザ生地と同様に、ピザ生地16を外側に引き延ばして所定の寸法のピザ生地に成形するものであり、生地を外側に向かって引き延ばすことによって、図7に示すように、外縁部に比べて中央部が薄くなるように成形することができる。図7は、ピザ生地の成形装置10によって成形されたピザ生地16の断面を模式的に示す図である。この方法によれば、手作りのピザ生地と同じ成形方法となるため、手作りの生地と同じ食感の生地を得ることができる。
【0029】
特に、ナポリスタイルのピザ生地では、図2に示すように、縮径した状態の拡張台14の上に、外径よりわずかに大きくなるようにプレスで押さえて成形したピザ生地の材料を用いて、拡張台14の外周にピザ生地16の外縁部を垂らして載置してから延伸することによって、外周を肉厚にすることが可能になり、手作りのピザ生地と同様の形状であり、かつ手作りのピザ生地と同じように外側に引き延ばして成形するので、手作りのピザ生地と同様の食感のピザ生地を得ることができる。
【0030】
以上、本発明に係るピザ生地の成形装置及びこの成形装置を使用したピザ生地の成形方法について詳細に説明したが、本発明は上記種々の実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のピザ生地の成形装置の一実施形態の、縮径した状態を示す平面部分断面図である。
【図2】図1のピザ生地の成形装置の正面断面図である。
【図3】図1のピザ生地の成形装置の、延伸した状態を示す平面部分断面図である。
【図4】図3の状態のピザ生地の成形装置の正面断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、セグメント状に形成された支持片の詳細図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図6】拡張台移動装置の詳細を示す図2の部分拡大図である。
【図7】図1のピザ生地の成形装置によって成形されたピザ生地の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 ピザ生地の成形装置
12 中央台
14 拡張台
16 ピザ生地
18 拡張台移動装置
20 円板
22 貫通孔
24 案内軸
26 カムフォロア
28 支持片
28a 内径(内周面)
30 拡張台駆動源
32 円錐カム
34 微速シリンダ
36 圧縮コイルばね
38 支持管
40 カムローラ
42 支持板
44 脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心位置に固定された中央台と、
この中央台の周囲に配置され、複数個に分割されて外方に向かって放射状に移動する拡張台と、
この拡張台を外方に向かって放射状に移動させる拡張台移動装置とを有することを特徴とするピザ生地の成形装置。
【請求項2】
前記拡張台移動装置が、中央に孔の設けられたドーナツ状の円板と、このドーナツ状の円板に放射状に移動可能に配設された複数個の案内軸と、この複数個の案内軸を外方に向かって放射状に一斉に移動させる拡張台駆動源とを有することを特徴とする請求項1に記載のピザ生地の成形装置。
【請求項3】
前記拡張台駆動源が、上下方向に移動する円錐カムと、前記案内軸の内側端部に設けられ、前記円錐カムに係合するカムフォロアと、このカムフォロアを前記円錐カムに向けて付勢する付勢手段とからなることを特徴とする請求項2に記載のピザ生地の成形装置。
【請求項4】
前記円錐カムが、速度制御された微速シリンダによって上下方向に移動することを特徴とする請求項3に記載のピザ生地の成形装置。
【請求項5】
前記拡張台が、前記案内軸に固定されたセグメント状の支持片の集合体であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のピザ生地の成形装置。
【請求項6】
前記セグメント状の支持片が、前記案内軸に固定されており、縮径したときに、前記中央台と前記セグメント状の支持片とで実質的に単一の円板の形状となることを特徴とする請求項5に記載のピザ生地の成形装置。
【請求項7】
中心位置に固定された中央台と、この中央台の周囲に配置され、複数個に分割されて外方に向かって放射状に移動可能な拡張台との全面にピザ生地が載置された後、
前記拡張台を外方に向かって放射状に移動させることにより前記ピザ生地を延伸することを特徴とするピザ生地の成形方法。
【請求項8】
前記ピザ生地は、縮径した状態の前記拡張台の外径よりわずかに大きく成形され、縮径した状態の前記拡張台の外周に外縁部を垂らして載置されることを特徴とする請求項7に記載のピザ生地の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−43247(P2008−43247A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221631(P2006−221631)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】