説明

ピストン及び摺動用被覆構造

【課題】 シリンダ等の部材との摺動性を向上させ、耐久性、燃費性能を向上させるピストン、及び相互に接触する部材の摺動部分の摺動性を向上させる摺動用被覆構造を提供する。
【解決手段】 摺動部の基材の表面に摺動性を向上させる被膜6aを設けたピストン6であって、前記被膜6aは、ナノカーボン材が添加された樹脂材がキュア処理されて前記基材に密着し、前記被膜6aの表面近傍には、被膜6aの表面から端部が突出するナノカーボン材が存在することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガソリンエンジン等のエンジンに用いるピストン及びピストンの摺動部等に用いられる摺動用被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン等のエンジンには、軽量化や燃費向上等の目的から、アルミニウム合金からなるピストンが用いられている。ピストンはコネクティングロッドに連繋してシリンダ内において往復駆動される際に、シリンダの軸線方向とは直交する方向の力を受け、シリンダ内で傾倒する作用を受ける。ピストンには、ピストンの傾倒を防止するスカート部が設けられている。
【0003】
ピストンはシリンダ内において高速で往復動するから、その際に、ピストンがシリンダと接触して摩耗したり、焼き付いたりしないようにピストンの摺動性を向上させる手段が施されている。ピストンのスカート部等の摺動部分の表面を、潤滑性を備える樹脂被膜により被覆して摺動性を高めるようにする方法も一例である。
ピストンのスカート部等の摺動部分を樹脂被膜により被覆して摺動性を向上させる方法には、ポリアミドイミド樹脂あるいはポリイミド樹脂といった耐熱性樹脂に、固体潤滑材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン、グラファイト、アルミナ粒子、窒化ケイ素のウイスカーを加えるといった方法が提案されている(特許文献1、2、3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−97517号公報
【特許文献2】特開2001ー11372号公報
【特許文献3】特開2009−68584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピストンのスカート部等の摺動部分を、固体潤滑材を添加した樹脂によって被覆する方法においては、使用とともに固体潤滑材が摩耗して摺動性が低下し、相手材への攻撃性が増大して、低摩擦性と耐摩耗性が劣化するという問題があった。なお、ピストンとシリンダとの間に限らず、軸受け等の、互いに接触して摺動する部材間においては、部材の動きを滑らかにし、部材の耐久性を向上させる上で、摺動部分の摺動性、潤滑性を向上させることは従来から求められている。
本発明は、摺動部分における摺動性を向上させることにより、部材の耐摩耗性、燃費性能を向上させることを可能にするエンジンに用いられるピストンと、ピストン等の一般的な部材の摺動部分に好適に適用することができる摺動用被覆構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るピストンは、摺動部の基材の表面に摺動性を向上させる被膜を設けたピストンであって、前記被膜は、ナノカーボン材が添加された樹脂材がキュア処理されて前記基材に密着し、前記被膜の表面近傍には、被膜の表面から端部が突出するナノカーボン材が存在することを特徴とする。
また、前記ナノカーボン材が、気相法炭素繊維であり、前記被膜中に2.5wt%〜10.0wt%含まれていることにより効果的な摺動性、潤滑性を得ることができる。
また、前記被膜に用いる樹脂材としては、ポリアミドイミド樹脂が好適に用いられる。
【0007】
また、本発明に係る摺動用被覆構造は、相互に接触する部材の摺動部分を被覆して部材間の摺動性を向上させる摺動用被覆構造であって、前記摺動部分の基材の表面に、ナノカーボン材が添加された樹脂材がキュア処理されて密着する被膜が形成され、前記被膜の表面近傍には被膜の表面から端部が突出するナノカーボン材が存在することを特徴とする。
ナノカーボン材の端部を突出させて被膜を形成する方法としては、スクリーン印刷方法による塗布方法において、スクリーンのメッシュが♯500〜♯250と比較的細かいメッシュを使うことにより、ナノカーボンの端部を効果的に被膜の表面から突出させるようにすることができる。
また、前記ナノカーボン材が、気相法炭素繊維であり、前記ナノカーボン材が前記被膜中に2.5wt%〜10.0wt%含まれていることにより、好適な摺動性、潤滑性を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るピストンは、摺動部分の摺動性が向上することにより、ピストンの耐久性を向上させ、燃費の向上を図ることができる。また、本発明に係る摺動用被覆構造によれば、部材の摺動部分の摺動性を向上させることができ、部材の耐久性、動作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】被膜を設けたピストンの側面図である。
【図2】摺動用樹脂被膜の構成を示す説明図である。
【図3】基材の表面に被膜を形成した状態を断面方向から見たSEM写真である。
【図4】摺動用樹脂被膜の作用を示す説明図である。
【図5】被膜を形成したサンプルの表面粗さの測定結果を示すグラフである。
【図6】被膜を形成したサンプルの摩擦係数の測定結果を示すグラフである。
【図7】被膜を形成したサンプルの摩耗量の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ピストン及び被膜の構成)
本発明に係るピストンは、シリンダ内をピストンが往復動する際にシリンダ等と接触する部位の表面に、固体潤滑材としてのナノカーボン材を添加した樹脂被膜により被覆した構成を備える。図1はエンジンのシリンダ5にピストン6を配した構成を示す。ピストン6はコンロッド7を介してクランクシャフト8に連繋し、シリンダ5内におけるピストン6の往復動がクランクシャフト8の回転運動に変換される。
【0011】
ピストン6には、コンロッド7が揺動する作用によって生じるスラスト力を受けるスカート部6aが設けられ、ピストン6がシリンダ5内において往復動する際にスカート部6aがシリンダ5の内壁に接触しながら移動する。前述した樹脂被膜は、ピストン6のスカート部6aの外面を被覆し、ピストン6とシリンダ5との潤滑性を良好にし、ピストン6の耐久性を向上させる作用をなす。ピストン6がシリンダ5内に往復動する際に摺動する部位はスカート部6aに限らず、コンロッド7とシャフト8との摺動部やリング溝部分もある。これらの摺動部についても樹脂被膜を設けて潤滑性を向上させることは有効である。
【0012】
図2は、ピストンの摺動部を被覆する被膜10の構成を説明的に示している。被膜10は、ナノカーボン材12が添加された樹脂材14をピストンの摺動部の基材表面に塗布し、加熱キュア処理を施して基材の表面に密着形成する。
【0013】
熱硬化型の樹脂材は、一般に、キュア温度により処理後の硬度が異なる。したがって、キュア温度を制御する方法によって被膜10の硬度を調節することができる。たとえば、キュア温度を高く設定して被膜の硬度を上げることによりピストンの摺動部の摩耗を抑えることが可能である。しかしながら、アルミニウム製のピストンは、過度に熱を加えると熱変形するという問題があり、キュア温度は200℃程度に設定することが望ましい。したがって、潤滑性を向上させる被膜10を形成する際には、キュア温度を200℃程度以下に抑えることが求められる。
【0014】
エンジン用のピストンに設ける摺動用樹脂被膜のように高温、高圧の環境下において使用する場合には、被膜10を構成する樹脂材14には、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の、200℃程度以上の耐熱温度を有する耐熱性樹脂を用いる必要がある。
被膜10を形成する際には、ピストンの基材であるアルミニウムと被膜10との密着性を良好にするため、基材に脱脂等の表面処理を行う。基材に化成処理を施して被膜10と基材との密着性をさらに向上させることもできる。
【0015】
樹脂材14に添加するナノカーボン材12にはカーボンナノチューブ(CNT)が好適に用いられる。カーボンナノチューブには、単層、多層といった層構成の他に、チューブ径や、長さ、曲り度合いといった性状が異なる種々の製品がある。ナノカーボン材12は、これらの特性が異なるカーボンナノチューブを包含する意味で使用する。
図2に示すように、樹脂材14に添加されたナノカーボン材12のうち、被膜10の表面近傍に存在するナノカーボン材12は、一方の端部が被膜10の表面から突出し、ナノカーボン材12の突出端側が可倒となる。
【0016】
図3は、基材のアルミニウムの表面に被膜10を形成した状態を断面方向から見たSEM写真である。このSEM写真から、アルミニウムの基材上に被膜10が形成されていること、被膜10に添加されたナノカーボン材12が被膜10中に存在すること、被膜10の表面近傍に存在するナノカーボン材12については被膜10から端部が外方に延出しているように見て取れる。
【0017】
本発明における被膜10の構成としてナノカーボン材12が被膜10の表面から突出する構成は、被膜10の潤滑性、摺動性を向上させる作用において重要な機能を奏するものと考えられる。
図4は、被膜10から延出するナノカーボン材12の作用を、説明的に示したものである。図4(a)は、ピストンの基材16の表面に被膜10が形成された状態を示す。被膜10中には、いろいろな向きにナノカーボン材12が混入している。被膜10の表面近傍にあるナノカーボン12は、被膜10の表面からいろいろな向きに端部を延出させた状態になる。
【0018】
図4(b)は、シリンダ18内でピストンを摺動(往復動)させた状態を示す。ピストンを摺動させる操作を行うと、被膜10の表面から端部が延出したナノカーボン材12はシリンダ18の内面に接触し、ピストンの摺動作用によって被膜10の表面に向かって倒される。ピストンは一方向に往復動するから、摺動動作を繰り返すことによってナノカーボン材12の倒れ方向はピストンの往復動方向に揃うようになる。図4(b)は、ピストンが往復動することにより、被膜10の表面から延出したナノカーボン材12が、ピストンの往復動方向にならって倒れるようになることを示している。
【0019】
ピストンの摺動性を向上させるための被膜は、被膜に加えた固体潤滑材が、たとえばピストンとシリンダの内面との間に介在して、相互の摩擦を緩和するように作用する。本実施形態においては、ナノカーボン材12がピストンとシリンダとの間に介在して摩擦を緩和する固体潤滑材として作用している。
後述するように、ナノカーボン材12を固体潤滑材として使用した被膜は、二硫化モリブデン等の固体潤滑材を使用した被膜と比較して、摺動性、耐摩耗性が大きく向上することが確かめられた。このような優れた作用は、図4(b)に示すように、ナノカーボン材12が倒れる作用によって、摺動する部材間に入り込んで介在する作用が的確に生じること、倒れ方向が摺動部の動き方向にならう(一致する)ことにより、摩擦を軽減させる作用が効果的に生まれるためと考えられる。
【0020】
エンジンに用いるピストンでは、シリンダとピストンとの摺動部に潤滑用のオイルが供給される。樹脂被膜の表面から延出するナノカーボン材は、ピストンとシリンダとの空隙内に確実にオイルを保持する作用を有するから、エンジン用のピストンの摺動性を向上させる上でさらに効果的に作用する。
【0021】
(被膜の表面粗さ、摩擦係数、摩耗量の測定)
以下では、本発明に係る被膜の潤滑性、耐摩耗性を評価する測定を行った結果について説明する。
図5は、下記の9個のサンプル(1)〜(9)について、被膜の表面粗さを測定した結果を示す。サンプル(1)〜(9)は、いずれもポリアミドイミド樹脂をベースの樹脂材としたもので、サンプル(1)は固体潤滑材として二硫化モリブデンを15wt%含むもの、サンプル(2)は固体潤滑材をまったく含まないポリアミドイミド樹脂100%のもの、サンプル(3)は固体潤滑材であるナノカーボン材として気相法炭素繊維(VGCF:商標名 昭和電工製)を2.5wt%含むもの、サンプル(4)はVGCFを5wt%含むもの、サンプル(5)はVGCFを7.5wt%含むもの、サンプル(6)はVGCFを10wt%含むもの、サンプル(7)は固体潤滑材としてVGCFを5wt%と二硫化モリブデンを5wt%含むもの、サンプル(8)はVGCFを26.8wt%含むもの、サンプル(9)はVGCFを45.1wt%含むものである。
【0022】
ナノカーボン材としてVGCFを添加したサンプルは、ポリアミドイミド樹脂(PAI)に溶剤としてn‐メチル‐2‐ピロリドンン(NMP)〔PAI:NMP=30.4:69.6〕を加えて溶解し、所定wt%に相当するカーボンナノチューブ(VGCF)を加え、撹拌器(自公転ミキサー)を用いて撹拌処理と脱泡処理(攪拌2000rpm、脱泡2200rpm)を施してコーティング用の樹脂材を作製し、この樹脂材をアルミニウム合金からなるプレートにコーティングし、200℃で焼成して作成した。
【0023】
サンプルの表面粗さは粗さ計を使用し、Ra粗さを測定した。測定長さは2.5mmである。
図5から、ベースの樹脂材であるポリアミドイミド樹脂に添加するナノカーボン材(VGCF)の添加量が増えるにしたがって被膜の表面粗さが大きくなることがわかる。ナノカーボン材(VGCF)の分量が2.5wt%〜10wt%の範囲においては、表面粗さRaは0.23以下である。
【0024】
図6は、サンプル(1)〜(9)について、摩擦係数を測定した結果を示す。
摩擦摩耗試験は、ピンオンディスク型の試験機を使用し、サンプルを往復動させながらサンプルに一定荷重でピンを当接して摩擦係数を測定する方法によって行った。使用したピンは鋳鉄製、先端形状R30である。試験時間60min、試験速度60cpmとし、サンプルの被膜上に綿棒でオイルを塗布して試験を行った。測定開始後、最初の30秒間の間で摩擦係数の値が安定している箇所の5箇所についての平均値を摩擦係数とした。
【0025】
摩擦係数が比較的小さいものは、サンプル(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)であり、これらのサンプルに用いられる被膜の摺動性、潤滑性が良好であることが認められた。
【0026】
図7は、サンプル(1)〜(9)について、摩耗量を測定した結果を示す。
摩耗量は、上述した摩擦摩耗試験後、サンプル表面のピン摺動面と非摺動面との高低の差から摩耗量を算出した。
図7から、摩耗量が比較的小さいものは、サンプル(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)であることがわかる。
【0027】
上述した表面粗さ、摩擦係数、摩耗量についての測定結果を表1にまとめて示す。
【表1】

【0028】
表1及び図5、6、7に示す測定結果は、サンプル(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)については摩擦係数、摩耗量とも、従来の固体潤滑材として二硫化モリブデンを使用したもの(サンプル(1))、固体潤滑材を使用しないもの(サンプル(2))、ナノカーボン材であるVGCFを比較的多く含むもの(サンプル(8)、(9))と比較して良好な結果が得られることを示している。
サンプル(3)、(4)、(5)、(6)は、ベースの樹脂材に添加するナノカーボン材であるVGCFの添加量を2.5wt%〜10wt%程度としたものであり、サンプル(7)は、固体潤滑材としてナノカーボン材であるVGCF(5%)に二硫化モリブデンを加えたものである。
【0029】
上記実験結果は、樹脂材に固体潤滑材としてナノカーボン材、とくにVGCFを2.5wt%〜10wt%加えたものが、摺動部の潤滑性、摺動性を向上させる上で、有効であること、また、固体潤滑材として二硫化モリブデンを併用することも有効であることを示す。したがって、これらの被膜を摺動用被覆構造として、ピストンの摺動部等に適用することにより、部材の摺動性、潤滑性を向上させ、部材の耐久性を向上させるとともに、燃費の向上等に有効に利用することが可能である。
【0030】
前述したように、上記実験においてナノカーボン材としてカーボンナノチューブ(VGCF)を加えたサンプルでは、図2、3に示すように、樹脂材に加えたカーボンナノチューブのうち表面近傍のカーボンナノチューブが、被膜の表面から端部を延出させた状態に混入されることが被膜の潤滑性、耐久性を向上させる上で有効な作用をなすものと考えられる。
【0031】
上記実験に使用したカーボンナノチューブ(VGCF)は、径〜150nm、長さ〜8μmで、アスペクト比が53程度である。このカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ自体が高強度を有することにより、樹脂被膜の強度を高めて耐久性を向上させるという作用に加え、被膜から延出するカーボンナノチューブが柔軟性を備えることからピストンの摺動方向に倒れて、ピストンとシリンダとの間における固体潤滑材として機能することによって、潤滑性、摺動性を向上させるものと考えられる。シリンダに装着されるピストンは、往復動作の際にスラスト力によりシリンダの内壁と何度も衝突する。ピストンとシリンダとの間に固体潤滑材として介在するカーボンナノチューブは、潤滑用のオイルとともにピストンの摺動性を向上させる上で有効な寄与をなすものと考えられる。
【0032】
このようなカーボンナノチューブ(ナノカーボン材)の作用、すなわち被膜の表面から突出するカーボンナノチューブの作用を利用するには、樹脂材中においてカーボンナノチューブが凝集したりしないようにする必要がある。上記実験結果において、カーボンナノチューブの分量比を比較的小さく抑えたサンプルについて良い結果が得られているのは、樹脂材中におけるカーボンナノチューブの凝集を抑え、被膜表面からカーボンナノチューブが突出した状態で混入させやすくしたものと考えられる。被膜の耐久性については、被膜と基材との密着性も問題となる。樹脂材に加えるカーボンナノチューブの分量は、被膜と基材との密着性や物理特性に影響を与えるから、カーボンナノチューブの分量については被膜と基材との密着性についても合わせて考慮する必要がある。
【0033】
上述した実施の形態は、摺動用の被膜をピストンの摺動部に設けた例であるが、上述した摺動用の被膜を設ける構成は、エンジンのピストンに適用する場合に限られるものではない。部材(金属に限らない)が相互に接触しながら動作する部位を、上述した被膜により被覆する構造(摺動用被覆構造)を設けることにより、摺動部分の部材の摺動性、潤滑性を効果的に向上させて部材の耐久性、長寿命化を有効に図ることができる。
【符号の説明】
【0034】
5 シリンダ
6 ピストン
10 被膜
12 ナノカーボン材
14 樹脂材
16 基材
18 シリンダ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動部の基材の表面に摺動性を向上させる被膜を設けたピストンであって、
前記被膜は、ナノカーボン材が添加された樹脂材がキュア処理されて前記基材に密着し、前記被膜の表面近傍には、被膜の表面から端部が突出するナノカーボン材が存在することを特徴とするピストン。
【請求項2】
前記ナノカーボン材が、気相法炭素繊維であり、前記被膜中に2.5wt%〜10.0wt%含まれていることを特徴とする請求項1記載のピストン。
【請求項3】
前記樹脂材が、ポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載のピストン。
【請求項4】
相互に接触する部材の摺動部分を被覆して部材間の摺動性を向上させる摺動用被覆構造であって、
前記摺動部分の基材の表面に、ナノカーボン材が添加された樹脂材がキュア処理されて密着する被膜が形成され、前記被膜の表面近傍には被膜の表面から端部が突出するナノカーボン材が存在することを特徴とする摺動用被覆構造。
【請求項5】
前記ナノカーボン材が、気相法炭素繊維であり、前記ナノカーボン材が前記被膜中に2.5wt%〜10.0wt%含まれていることを特徴とする請求項4記載の摺動用被覆構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−246863(P2012−246863A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120266(P2011−120266)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(390008822)アート金属工業株式会社 (39)
【Fターム(参考)】