説明

ピストン式計量装置

【課題】液体の計量に用いられるシリンダおよびピストンの隅々までを、全く分解することなく、自動的に、簡単に、かつ、確実に定置洗浄することができ、洗浄効果を向上させ、洗浄液量の低減や、作業時間の短縮、コストの低廉化を図ることができるピストン式計量装置を提供すること。
【解決手段】シリンダ8の軸方向一端部から挿入されたピストン9を当該シリンダ8の軸方向他端部に向けて往復動させて当該他端部側から液体を吸排するピストン式計量装置1において、シリンダ8の軸方向中間部分に、ピストン9の外周部に設けた密封部材27と摺接して液体を計量する内周面の内径が一定な計量領域Laを設け、シリンダ8の計量領域Laの軸方向両端部にそれぞれ、ピストン9および密封部材27から離間した大径の内周面を備えた洗浄領域Lb、Lcを連続して形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン式計量装置に係り、例えば、スタンディングパウチ、アンプル、ボトル等の容器に液体を定量充填するのに好適なピストン式計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充填包装業界等においては、容器へ高粘度の液体を高速、高圧で定量充填するために液体の計量精度の高いピストン式計量装置を用いている。
このピストン式計量装置においては、充填する液体を変更するたび若しくは定期的に装置全体を手作業によって分解洗浄し再組立して用いていた。しかしながら、手作業による分解洗浄、再組立には長時間を要し、コストも高くなり、作業ミスによる破損のリスクも伴うという不都合があった。
そこで、本出願人は装置を分解することなく、簡単に、かつ、確実に液体の流路の洗浄を行うことができる装置を提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−151099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは更に鋭意研究し、前記特許文献1に記載の装置の作用効果を更に向上させて本発明を完成させた。
【0005】
本発明は、液体の計量に用いられるシリンダおよびピストンの隅々までを、全く分解することなく、自動的に、簡単に、かつ、確実に定置洗浄することができ、洗浄効果を向上させ、洗浄液量の低減や、作業時間の短縮、コストの低廉化を図ることができるピストン式計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明の第1の態様に係るピストン式計量装置は、シリンダの軸方向一端部から挿入されたピストンを当該シリンダの軸方向他端部に向けて往復動させて当該他端部側から液体を吸排するピストン式計量装置において、前記シリンダの軸方向中間部分に、前記ピストンの外周部に設けた密封部材と摺接して液体を計量する内周面の内径が一定な計量領域を設け、前記シリンダの前記計量領域の軸方向両端部にそれぞれ、前記ピストンおよび密封部材から離間した大径の内周面を備えた洗浄領域を連続して形成したことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、シリンダの軸方向の両端部の洗浄領域を利用してピストンの軸方向両端側部分を確実に洗浄することができ、液体の計量に用いられるシリンダおよびピストンの隅々までを、分解することなく、自動的に、簡単に、かつ、確実に定置洗浄することができ、洗浄効果を向上させ、洗浄液量の低減や、作業時間の短縮、コストの低廉化を図ることができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係るピストン式計量装置は、シリンダの軸方向一端部から挿入されたピストンを当該シリンダの軸方向他端部に向けて往復動させて当該他端部側から液体を吸排するピストン式計量装置において、前記シリンダの前記ピストンの外周部に設けた密封部材と摺接して液体を計量する内周面の内径が一定な計量領域の軸方向他端部に、前記ピストンおよび密封部材から離間した大径の内周面を備えた洗浄領域を連続して形成したことを特徴とする
【0009】
このような構成によれば、シリンダの軸方向の他端部の洗浄領域を利用してピストンの軸方向両端側部分を確実に洗浄することができ、液体の計量に用いられるシリンダおよびピストンの隅々までを、分解することなく、自動的に、簡単に、かつ、確実に定置洗浄することができ、洗浄効果を向上させ、洗浄液量の低減や、作業時間の短縮、コストの低廉化を図ることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る液体充填装置は、前記ピストンの先端面とこれに対面する前記シリンダの軸方向他端部側の内端面の少なくとも一方に洗浄液の乱流形成手段が形成されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、前記ピストンの先端面とこれに対面する前記シリンダの軸方向他端部側の内端面の少なくとも一方に形成されている洗浄液の乱流形成手段によってシリンダ内に洗浄液の乱流が形成されるので、より確実に液体の計量に用いられるシリンダおよびピストンの隅々までを洗浄することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る液体充填装置は、前記乱流形成手段が、シリンダ内部に洗浄液の旋回流を形成する凹凸部により形成されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、凹凸部により形成されている乱流形成手段によってシリンダ内部に洗浄液の旋回流が形成されるので、当該旋回流によってより強い洗浄能力をもって確実に洗浄が行われる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る液体充填装置は、前記シリンダの軸方向他端部側の内端面には、前記洗浄領域において洗浄液を前記密封部材に向けて進行させる流路変更手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、密封部材とピストンとの連結部分に形成される狭隘部分に対して洗浄液を進行させて確実に洗浄することができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る液体充填装置は、前記ピストンがピストンロッドを回転中心として回転自在に形成されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、ピストンをシリンダ内において回転させることにより洗浄液を回転させて効率的な洗浄を行うことができる。
【0018】
また、本発明の第7の態様に係る液体充填装置は、前記シリンダの軸方向他端部側の内端面に連接形成されている前記液体および洗浄液を吸排させる流路は、前記シリンダの中心軸と偏心した位置に設けられていることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、液体および洗浄液を吸排させる流路からシリンダの中心軸と偏心した位置より洗浄液をシリンダ内に流入させることにより、更に乱流形成能力が高くなり、より確実な洗浄が行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のピストン式計量装置によれば、液体の計量に用いられるシリンダおよびピストンの隅々までを、分解することなく、自動的に、簡単に、かつ、確実に定置洗浄することができ、洗浄効果を向上させ、洗浄液量の低減や、作業時間の短縮、コストの低廉化を図ることができるという優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るピストン式計量装置の一実施形態を用いた液体充填装置の一例を示す縦断側面図
【図2】本発明に係るピストン式計量装置の一実施形態を示し、(a)はピストンが計量領域にある状態を示す縦断面図、(b)はピストンが上の洗浄領域にある状態を示す縦断面図、(c)はピストンが下の洗浄領域にある状態を示す縦断面図
【図3】ピストンが上の洗浄領域にある状態を示すシリンダ部分の拡大縦断面図
【図4】(a)はピストンの上面を示す平面図、(b)ピストンが回転している状態を示す縦断面図、(c)は(a)のc−c線に沿った断面図
【図5】ピストンとシリンダの上部蓋部分を示す拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るピストン式計量装置の1実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、本実施形態においては、シリンダの軸方向の両端部に洗浄領域が形成されたピストン式計量装置について説明するが、本発明において、前記洗浄領域は計量領域の軸方向他端部にのみ形成されていてもよい。そのように洗浄領域は計量領域の軸方向他端部にのみ形成されたピストン式計量装置においても、以下の実施形態における、ピストンを軸方向一端部(下部)に形成された洗浄領域に位置させた場合に得られる作用効果を除く、所定の作用効果を得られるものとし、その説明を省略する。
【0023】
図1乃至図5は本実施形態のピストン式計量装置1の1実施形態を示す。
図1は本実施形態のピストン式計量装置1を用いて液体を充填する液体充填装置2を示している。
【0024】
この液体充填装置2は、基礎上に定置された架台3の上に支承ステー4をもって固定されたタンク5内の液体を流路6を通して本実施形態のピストン式計量装置1内に吸引し、その後ピストン式計量装置1から所定量の液体を流路7を通して排出することにより充填部(図示せず)に送付するように形成されている。
【0025】
図1において、本実施形態のピストン式計量装置1は中心軸を鉛直方向とし、同図には左右に2基を並べて示している。
【0026】
各ピストン式計量装置1の概略を説明すると、図1に示すように、シリンダ8とピストン9とを有している。ピストン9はシリンダ8の軸方向一端部(本実施形態においては下端部)から挿入されたピストンロッド10の上端部に固着されており、ピストンロッド10をピストン駆動機構11によってシリンダ8の軸方向他端部(本実施形態においては上端部)に向けて往復動させられる。ピストン駆動機構11は、ボールネジ12をもって形成されている。このボールネジ12は、6基のピストン式計量装置1、1の水平投影面の中心位置において架台3の天板3a部分より鉛直下方に垂下するようにして回転自在に設置されており、中間部にボールナット体13が螺合されており、このボールナット体13に固着した水平板14に各ピストンロッド10の下端部を固着している。また、ボールネジ12の下端部に固着したプーリ15と駆動モータ16の出力軸17との間にベルト18が巻回されている。この駆動モータ16を正逆回転させてボールネジ12を正逆回転させることにより、ボールナット体13および水平板14をボールネジ12に沿って上下動させることにより、各ピストンロッド10およびピストン9が軸方向に往復動させられる。各ピストンロッド10は、架台3の天板3aの貫通部分において、円筒状の支持スリーブ19により上下方向移動が円滑となるように支承されている。
【0027】
各ピストン式計量装置1部分を図2乃至図5により説明する。各ピストン式計量装置1の構成は同一であるので、1基のピストン式計量装置1について説明する。
【0028】
架台3の天板3a上には、複数の支柱20によってシリンダ8を支える基板21が水平に設置されている。シリンダ8はその下端部を基板21に開設された円孔22に嵌めて固着され、下部蓋23を基板21の下面に固着することによって下端部を閉塞されている。ピストンロッド10はこの下部蓋23を貫通している。更に、下部蓋23のピストンロッド10の貫通部を外れた位置には、洗浄時に洗浄液等を排出したり逆に供給するための流路24が接続されている。シリンダ8の上端部は上部蓋25を螺着することによって閉塞されている。両者間にパッキング26を介在させて密封を図っている。
【0029】
上部蓋25の中心軸部には流路6、7と接続するための接続筒25aが上向きに突出形成されている。このシリンダ8の内部においては、シリンダ8の軸方向中間部分に、ピストン9の外周部に設けた密封部材27と摺接して液体を計量する内周面Saの内径が一定な計量領域La(図2(a)参照)を設け、このシリンダ8の計量領域Laの軸方向両端部にそれぞれ、ピストン9および密封部材27から離間した大径の内周面Sb、Scを備えた洗浄領域Lb、Lcを連続して形成されている。シリンダ8の上の洗浄領域Lbにおいては、図2(b)に示すように、ピストン9部分の全体が収容される軸方向長さの範囲に亘って大径な内周面Sbが形成されている。この大径な内周面Sbは、内径が一定な内周面Saの上端部から上方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパ部tと、当該テーパ部tの最大内径の大きさとされた大径部fとによって形成されている。シリンダ8の下の洗浄領域Lcにおいては、図2(c)に示すように、ピストン9部分の全体が収容される軸方向長さの範囲に亘って大径な内周面Scが形成されている。この大径な内周面Scは、内径が一定な内周面Saの下端部から下方に向けて徐々に内径が大きくなるテーパ部tと、当該テーパ部tの最大内径の大きさとされた大径部fとによって形成されている。
【0030】
また、ピストン9の上面9aは上向きに若干のテーパ面とされており、上蓋部25の内面もこれに平行に凹入するテーパ面とされている。同様に、ピストン9の下面9bは下向きにテーパ面とされており、下蓋部23の内面もこれに平行に凹入するテーパ面とされている。図4(a)は、本実施形態のピストン9の上面9aの詳細を示すものであり、当該上面9aに洗浄液を強制的に乱流とさせる乱流形成手段としての4本の渦状の溝28(断面は同図(c)に示すように液体の滓がたまらないように滑らかに形成されている)が形成されている。この渦状の溝28は、シリンダ8の内部に洗浄液の旋回流を形成する凹凸部となるものであり、上面9aと対向する上蓋部25の内面の双方若しくは一方に形成するとよい。同様に、ピストン9の下面9bと下蓋部23の内面に対しても渦状の溝28のような乱流形成手段を形成するとよい。
【0031】
このような乱流形成手段としては、図4(a)の渦状の溝28と同様に乱流を形成できるものであればどのような構成のものであってもよい。例えば、図4(b)に示すように、ピストン9をピストンロッド10と一緒に回転自在に設けて、回転による旋回流を形成するようにしてもよい。この場合には、図1の鎖線に示すように、ボールナット体13に固定されている水平板14の下面側にピストンロッド10を自転させるモータ29を設けるとよい。また、シリンダ8の上蓋部25に設けた接続筒25aをシリンダ8の中心軸と偏心した位置に設けて、当該接続筒25aからシリンダ8内に流入する洗浄液の流れを中心軸から偏心させて、洗浄水の乱流を形成するように形成するとよい。
【0032】
図5はシリンダ8の上蓋部25と密封部材27との詳細内容を示している。
【0033】
本実施形態においては、ピストン9の上面9aと対向するシリンダ8の軸方向端部に設けられている上部蓋25の内端面には、上の洗浄領域Lbにおいて洗浄液を密封部材27とピストン9との連結部分に向けて進行させる流路変更手段としての環状の凸部30が設けられている。この環状の凸部30は、例えば、図5に示すように、断面を三角形山形に形成されており、径方向外向きに流れる洗浄液をピストン9の外周を過ぎた位置において密封部材27とピストン9との連結部分に向けて強制的に流れ方向を変更させて、当該連結部分を洗浄液によって洗浄させるものである。
【0034】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0035】
<液体の計量>(図1および図2(a)参照)
図1に示すように、タンク5内に貯留されている液体は図示しない送給ポンプやタンク5の加圧により各種仕切り弁等を開放して流路6を通して本実施形態のピストン式計量装置1に送給される状態に設定されている。
【0036】
まず、タンク5とピストン式計量装置1との間に敷設された流路6に配設された吸引側バルブ31を開放するとともに、ピストン式計量装置1から充填部までの間に敷設された流路7に配設された不図示の吐出側バルブを閉じた状態で、駆動モータ16によりボールネジ12を正回転させてボールナット体13、水平板14およびピストンロッド10と一緒にピストン9をシリンダ8の計量領域La部分を下方に移動させて、流路6、上蓋部25の接続筒25aを通してシリンダ8の上部内に必要量の液体を吸引する。この時、ピストン9はシリンダ8の計量領域La部分にあり、密封部材27が自己の弾性によって常時シリンダ8の内周面に密着していて、液体の吸引が良好に行われる。
【0037】
続いて、流路6に配設された吸引側バルブ31を閉じるとともに、流路7に配設された不図示の吐出側バルブを開いた状態で、駆動モータ16によりボールネジ12を逆回転させてボールナット体13、水平板14およびピストンロッド10と一緒にピストン9をシリンダ8の計量領域La部分を上方に移動させて、上蓋部25の接続筒25a、流路7を通してシリンダ8内の所定量の液体を排出する。この時、ピストン9はシリンダ8の計量領域La部分にあり、密封部材27が自己の弾性によって常時シリンダ8の内周面に密着しているので、ピストン9が所定長さを上方に移動することによって、正確に計量された所定量の液体が良好に排出される。
【0038】
以下の説明部分においても、ピストン9の軸方向の移動は駆動モータ16により行われるので、駆動系の説明を省略する。
【0039】
<洗浄前準備>(図2(b)、図2(c)参照)
洗浄を開始する前に、図2(b)に示すように、ピストン9を上部の洗浄領域Lbに上げるか、または、図2(c)に示すように、ピストン9を下部の洗浄領域Lcに下げ、下部蓋23に接続した流路24を開放し、併せて、不図示の排液口を開放する等して、タンク5、流路6、7等の経路内にある充填すべき液体の全部を外部に排出する。
【0040】
<上部の洗浄領域Lbを利用した洗浄>(図2(b)、図3乃至図5参照)
本実施形態のピストン式計量装置1において、特に、ピストン9の上面9a部分や、シリンダ8の上部の洗浄領域Lbの大径の内周面Sbとその近傍を重点的に洗浄する場合には、図2(b)、図3乃至図5に示すように、ピストン9を上部の洗浄領域Lbに押し上げ、流路24を開放させておく。
【0041】
続いて、タンク5内に充填した洗浄液を流路6、上部蓋25の接続筒25aを通してシリンダ8内に相当の流速をもって送給する。この洗浄液による洗浄能力は、洗浄液の流速、洗浄液のpH、洗浄液の温度等を適宜に選択することによって適正に調整するとよい。洗浄液は、タンク5以外の部位から流路6に送給されるようにしてもよい。
【0042】
ピストン9の上面9aと上部蓋25の内端面との間に送給された洗浄液は、中心部から径方向外方に向けて流れて両面(代表して9aとする)を洗浄する。この時、図3に示すように、ピストン9を軸方向に上下動させると、洗浄液が両面(9a)間で振動させられて両面(9a)の洗浄が更に効率的に行われる。その際、水圧と自重により、シリンダ8内へ下方へ向けて吐出され、ピストン9の上面9aに当たった洗浄液は、その周囲に位置する内周面Sbへ向かって流れる直接流となり、洗浄領域Lbの大径の内周面Sbとその近傍の洗浄効果を高めることができる。また、図4(a)(c)に示すように、両面(9a)の少なくとも一方に乱流形成手段としての渦状の溝28を設けていると、乱流の一種として洗浄水に外向きに広がる旋回流を発生させることができ、更に洗浄効率を高くすることができる。これに図4(b)に示すように、モータ29を稼働させてピストン9を回転させると、洗浄液の旋回流を更に強くすることができ、より一層洗浄効率を高くすることができる。更に、図5に示すように、両面(9a)間を径方向外方に進み環状の凸部30に達した洗浄液は、当該凸部30に衝突して流れ方向を密封部材27とピストン9との連結部分の狭隘部分に向けて強制的に変更されて、当該連結部分を洗浄液によって確実に洗浄させることができる。更に、シリンダ8の上部の洗浄領域Lbの大径の内周面Sbとピストン9の外周面との間の狭隘な部分を高速で流れる洗浄液によって両周面(代表してSbとする)が確実に洗浄される。このように、上部の洗浄領域Lbにおいてシリンダ8とピストン9とに間に形成される洗浄液の流通可能となる流路の断面積が膨大・縮小の変化をすることにより、洗浄液の流速が大小に変化して、効率的な洗浄が実行される。更に、ピストン9を移動させることにより、洗浄液の流通可能となる流路の断面積を適宜に変更することができる。
【0043】
また、ピストン式計量装置1に流路24の開閉手段を設け、適宜、この開閉手段の開閉を調整して、シリンダ8内に洗浄液を満たした状態でピストン9を上下動させたり、回転させたりすることにより十分な洗浄液を利用して洗浄してもよい。
【0044】
また、上部の洗浄領域Lbにおける前記の各種の洗浄方法を組み合わせて相乗効果の発揮する洗浄を実行するとよい。
【0045】
<下部の洗浄領域Lcを利用した洗浄>(図2(c)参照)
本実施形態のピストン式計量装置1において、特に、ピストン9の下面9b部分を重点的に洗浄する場合には、図2(c)に示すように、ピストン9を下部の洗浄領域Lcに下げ、流路24は開放させておく。
【0046】
シリンダ8内に送給された洗浄液はピストン9の上面9a部分に到達し、その後シリンダ8の下部の洗浄領域Lcの大径の内周面Scとピストン9の外周面との間の狭隘な部分を高速で流れて両周面(代表してScとする)を確実に洗浄する。その後、ピストン9の下面9bと下部蓋23の内端面との間に送給された洗浄液は、径方向外方から中心部に向けて流れて両面(代表して9bとする)を洗浄する。また、図4(a)(c)に示すと同様に、両面(9b)の少なくとも一方に乱流形成手段としての渦状の溝28を設けていると、洗浄水に中心方向に向かう旋回流を発生させることができ、両面(9b)を効率的に洗浄することができる。このように、下部の洗浄領域Lcにおいてシリンダ8とピストン9との間に形成される洗浄液の流通可能となる流路の断面積が膨大・縮小の変化をすることにより、洗浄液の流速が大小に変化して、効率的な洗浄が実行される。
【0047】
また、ピストン式計量装置1に流路24の開閉手段を設け、適宜、この開閉手段の開閉を調整しつつ、液体の計量に用いられるシリンダ8およびピストン9の洗浄を行なうようにしてもよい。つまり、この開閉手段により、流路24を閉塞させて、洗浄液を下部の洗浄領域Lcおよびピストン9の上面9aより上部のシリンダ8内に洗浄液を貯留した状態として以下の洗浄を実行してもよい。
【0048】
この状態で図3に示すと同様に、ピストン9を軸方向に上下動させると、洗浄液が両面(9b)間で振動させられて両面(9b)の洗浄が更に効率的に行われる。更に、図4(b)に示すと同様に、モータ29を稼働させてピストン9を回転させると、洗浄液の中心に向かう旋回流を更に強くすることができ、より一層洗浄効率を高くすることができる。
【0049】
更に、図4(a)(b)に示すようにピストン9の上面9aに渦状の溝28を形成し、ピストン9を回転させると、ピストン9の上面9aより上部のシリンダ8内に貯留されている洗浄液を旋回させて、シリンダ8の全内面Sc、Sa、Sbを洗浄液の貯留高さに応じて効率的に洗浄することができる。
【0050】
また、下部の洗浄領域Lcにおける前記の各種の洗浄方法を組み合わせて相乗効果の発揮する洗浄を実行するとよい。
【0051】
更に、洗浄液の送給は、下部の流路24を通して行うようにしてもよい。
【0052】
このような洗浄工程を適宜に洗浄液を変更して実行することにより、本実施形態のピストン式計量装置1の内部の完璧な洗浄を実行するとよい。
【0053】
本実施形態のピストン式計量装置1によれば、シリンダ8の軸方向の両端部の洗浄領域Lb、Lcを利用してピストン9の軸方向両端側部分9a、9bを確実に洗浄することができ、液体の計量に用いられるシリンダ8およびピストン9の隅々までを、分解することなく、自動的に、簡単に、かつ、確実に定置洗浄することができ、洗浄効果を向上させ、洗浄液量の低減や、作業時間の短縮、コストの低廉化を図ることができる。特に、固形物を含む液体や粘度の高い液体を計量した後において、当該固形物や粘度の高い液体がシリンダ8やピストン9に付着したとしても、確実に取り除く洗浄を施すことができる。
【0054】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0055】
例えば、下部の流路24を通して小型カメラをシリンダ8の内部に挿入して洗浄状態を確認するとよい。また、タンパク質他有機物の残留を検出可能な試薬をシリンダ8内に流通させて、下部の流路24から当該試薬を取り出してタンパク質他有機物の有無を調査して、洗浄の良否を確認してもよい。
【0056】
更に、シリンダ8内に高温の空気を流通させて装置内を強制乾燥させて、滅菌、殺菌等の種々の処理を施すとよい。
【符号の説明】
【0057】
1 ピストン式計量装置
8 シリンダ
9 ピストン
9a ピストンの上面
9b ピストンの下面
10 ピストンロッド
La 計量領域
Lb、Lc 洗浄領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの軸方向一端部から挿入されたピストンを当該シリンダの軸方向他端部に向けて往復動させて当該他端部側から液体を吸排するピストン式計量装置において、
前記シリンダの軸方向中間部分に、前記ピストンの外周部に設けた密封部材と摺接して液体を計量する内周面の内径が一定な計量領域を設け、
前記シリンダの前記計量領域の軸方向両端部にそれぞれ、前記ピストンおよび密封部材から離間した大径の内周面を備えた洗浄領域を連続して形成した
ことを特徴とするピストン式計量装置。
【請求項2】
シリンダの軸方向一端部から挿入されたピストンを当該シリンダの軸方向他端部に向けて往復動させて当該他端部側から液体を吸排するピストン式計量装置において、
前記シリンダの前記ピストンの外周部に設けた密封部材と摺接して液体を計量する内周面の内径が一定な計量領域の軸方向他端部に、前記ピストンおよび密封部材から離間した大径の内周面を備えた洗浄領域を連続して形成した
ことを特徴とするピストン式計量装置。
【請求項3】
前記ピストンの先端面とこれに対面する前記シリンダの軸方向他端部側の内端面の少なくとも一方に洗浄液の乱流形成手段が形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のピストン式計量装置。
【請求項4】
前記乱流形成手段は、シリンダ内部に洗浄液の旋回流を形成する凹凸部により形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のピストン式計量装置。
【請求項5】
前記シリンダの軸方向他端部側の内端面には、前記洗浄領域において洗浄液を前記密封部材に向けて進行させる流路変更手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のピストン式計量装置。
【請求項6】
前記ピストンはピストンロッドを回転中心として回転自在に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のピストン式計量装置。
【請求項7】
前記シリンダの軸方向他端部側の内端面に連接形成されている前記液体および洗浄液を吸排させる流路は、前記シリンダの中心軸と偏心した位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のピストン式計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−60226(P2013−60226A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201108(P2011−201108)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(390029090)靜甲株式会社 (30)
【Fターム(参考)】