説明

ピッキング作業用台車

【課題】本発明は、下段のコンテナ載置部と上段のコンテナ載置部のクリアランスを少なくでき、上段のコンテナ載置部の位置が高すぎず、下段のコンテナ載置部の位置が低すぎずに作業性を向上できるピッキング作業用台車を提供することを目的とする。
【解決手段】車体11に、コンテナ2が載置される容器載置部3A,3Bを上下2段に備え、下段の容器載置部3Bと上段の容器載置部3Aをそれぞれ水平に平行に配置し、上段の容器載置部3Aを、下段の容器載置部3Bに載置されるコンテナ2の上方位置と下段の容器載置部3Bに載置されるコンテナ2の上方を開放できる位置との間で前後方向へスライド可能に構成し、下段の容器載置部3Bに載置されるコンテナ2の上端と上段の容器載置部3Aの下端との間の上下方向の隙間gを、コンテナ2と上段の容器載置部3Aが接触しない最小限寸法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品収納棚からピッキングした商品を、台車に載置した仕分け先(例えば、店舗)別のコンテナに仕分けるピッキング作業用台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の上記ピッキング作業用台車には、ピッキングした商品を台車に載置したコンテナへ投入するとき、その投入方向を台車の側面からとするものと正面からとするものがある。
【0003】
商品の投入方向を側面としたピッキング作業用台車の一例が、特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示されているピッキング作業用台車(移動体)は、複数の車輪に支持された台車から構成されており、台車には、上下段に、アドレスが設定され2箱のコンテナ(集品容器)がそれぞれ載置可能とされたコンテナ載置部が設けられ、さらに4箱の各コンテナの載置位置に対応して両側面の4箇所に、コンテナに投入した商品の数を表示する投入数表示器が設けられている。また台車には、作業員がピッキング作業用台車を押すときに掴む把手が設けられ、この把手の上面にパネルが設けられ、このパネル上に、ピッキング作業用の端末器が設けられている。
【0004】
この構成により、端末器に表示されるピッキング作業データにしたがって、指定されたピッキング棚の区画収納空間より指示数(ピック数)の商品を取り出し、台車の側面に移動し、指定されたアドレスのコンテナへ投入することにより、ピッキング作業が実行される。
【0005】
また商品の投入方向を正面としたピッキング作業用台車の一例が、特許文献2に開示されている。
この特許文献2に開示されているピッキング作業用台車(ピッキング台車)は、コンテナが台車本体の左右方向に並べて載置されるコンテナ載置用棚を、台車本体に上下2段に設け、上段のコンテナ載置用棚を、下段のコンテナ載置用棚の手前側の上方が開放されるよう下段のコンテナ載置用棚より先方側へずらして配置し、また上段のコンテナ載置用棚の手前側を下方へ傾斜させている。またコントロールボックスが下段のコンテナ載置用棚の手前側に配置され、ピッキングデータをこのコントロールボックス内の画面(パソコン画面)に表示させている。
【0006】
この構成により、コントロールボックス内のパソコン画面に表示されるピッキングデータにしたがって商品のピッキング作業が実行され、このときピッキング作業用台車のコンテナ載置用棚はコンテナが左右方向に並べて載置され、且つ上段のコンテナ載置用棚の手前側を下方へ傾斜させていることにより、作業者は上下の各コンテナの先方まで手が届き、台車本体の側面に回り込まなくても商品をコンテナへ投入でき、また上段のコンテナ載置用棚は下段のコンテナ載置用棚の手前側の上方が開放されるよう、下段のコンテナ載置用棚より先方側へずらして配置されているため、下段のコンテナへの商品の収納も容易に可能となっている。
【特許文献1】特開2002−87550号公報
【特許文献2】特開2000−255433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の商品の投入方向を側面としたピッキング作業用台車では、作業者が台車側面に移動して商品を投入するため歩行数が増えて作業効率が上がらないという問題があった。
【0008】
また従来の商品の投入方向を正面としたピッキング作業用台車では、側面への歩行は無いが、コンテナのサイズが大きいとコンテナをコンテナ載置用棚に載せずらいという問題があり、また下段のコンテナ載置用棚に載置されたコンテナへ投入する商品が大きいと、上段のコンテナ載置用棚が邪魔になって投入しずらいという問題がある。さらに投入する商品が大きく、数量が多い場合は荷繰り作業(整頓作業)をする必要があるが、特に上段のコンテナを荷繰り作業するには背伸びして作業する必要があり、荷繰り作業がしずらく作業者が疲労するという問題がある。またコントロールボックスが商品の投入に邪魔になるという問題があり、この問題を解決するため、上段のコンテナ載置用棚のさらに上方位置にコントロールボックスを移設すると、今度はピッキング情報が見づらくなるという問題が発生する。
【0009】
従来の商品の投入方向を側面としたピッキング作業用台車と商品の投入方向を正面としたピッキング作業用台車において共通して、下段のコンテナの上端と、上段のコンテナ載置部または載置用棚の下端との間に上下方向に、下段のコンテナへの商品の投入のために所定の隙間(クリアランス)を設ける必要があるが、このクリアランスのために、上段のコンテナ載置部(または載置用棚)の位置が高くなるため、上段のコンテナ載置部(または載置用棚)からピッキング作業が終了し商品で重くなったコンテナを降ろす作業は重労働となり、作業者に負担を強いていた。また空きのコンテナまたは折畳んだ状態のコンテナを台車に載置する個所がないため、ピッキング作業の途中でコンテナが満量となり、空きのコンテナが必要となったとき、すなわち増箱が必要となったとき、空きのコンテナ(または折畳んだ状態のコンテナ)の置き場所まで取りにいく必要があり、作業性を悪くしているという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、下段のコンテナ載置部と上段のコンテナ載置部のクリアランスを少なくでき、上段のコンテナ載置部の位置が高すぎず、下段のコンテナ載置部の位置が低すぎずに作業性を向上でき、また空きのコンテナ(または折畳んだ状態のコンテナ)を載置でき、さらに商品の投入方向を正面からも側面からも可能としたピッキング作業用台車を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、車体に、物品収納容器が載置される容器載置部を上下複数段に備えたピッキング作業用台車であって、前記容器載置部を、ピッキングした物品を前記物品収納容器へ投入する際に、この物品を投入する物品収納容器の上方を開放できるよう構成し、前記各段の容器載置部に載置される物品収納容器の上端と1つ上段の容器載置部の下端との間の上下方向の隙間を、前記物品収納容器と1つ上段の容器載置部が接触しない最小限寸法としたことを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、各段の容器載置部に載置される物品収納容器の上端と1つ上段の容器載置部の下端との間の上下方向の隙間を、前記物品収納容器と1つ上段の容器載置部が接触しない最小限の寸法とすることにより、各段の容器載置部の高さ位置を低く抑えることが可能となり、作業者は背伸びをすることなく物品の投入あるいは荷繰り作業(整頓作業)を容易に行うことができ、また下段の容器載置部の高さ位置を低すぎない高さとすることが可能となり、作業者は腰をかがめることなく物品の投入あるいは荷繰り作業(整頓作業)を容易に行うことができる。
【0013】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、最下段の容器載置部を除く上方の容器載置部を、前記最下段または1つ下段の容器載置部に載置される物品収納容器の上方位置と前記最下段または前記1つ下段の容器載置部に載置される物品収納容器の上方を開放できる位置との間で前後方向へスライド可能に構成したことを特徴とするものである。
【0014】
上記構成によれば、最下段の容器載置部を除く上方の各段の容器載置部を、1つ下段の容器載置部に載置される物品収納容器の上方を開放できる位置までスライドすることにより、各段の容器載置部にそれぞれ載置される物品収納容器への物品の投入を、正面からも側面からも行うことが可能となる。
【0015】
また請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明であって、前記最下段の容器載置部を、その上方の容器載置部と同様に前後方向へスライド可能に構成したことを特徴とするものである。
【0016】
上記構成によれば、最下段の容器載置部をスライドさせることにより、最下段の容器載置部に載置される物品収納容器の上方を、上段の容器載置部のスライド位置に無関係に自在に開放することが可能となる。
【0017】
また請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明であって、各段の容器載置部は、前後にスライドする任意位置で固定可能としたことを特徴とするものである。
【0018】
上記構成によれば、各段の容器載置部は任意の位置で固定され、各段の容器載置部に載置される物品収納容器の位置が前後に揺れることが防止される。
また請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明であって、各段の容器載置部は、上下にスライドする任意位置で固定可能としたことを特徴とするものである。
【0019】
上記構成によれば、各段の容器載置部を上下にスライドさせることにより、各段の容器載置部の高さを各種の物品収納容器の高さに合わせて調整可能となり、また作業者が自分の身長に合わせて各段の容器載置部の高さを調整でき、作業性を向上できる。
【0020】
また請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明であって、前記各段の容器載置部の前方位置にそれぞれ、ピッキング情報を表示する表示器を配置したことを特徴とするものである。
【0021】
上記構成によれば、表示器に表示されるピッキング情報により、この表示器に対応する物品収納容器に対して物品の投入作業が実行される。また最下段の容器載置部を除く上方の各段の容器載置部の前方位置にもピッキング情報を表示する表示器が配置されることにより、スライドとして位置が変更になっても、各段の容器載置部に載置される物品収納容器へのピッキング作業が支障なく行える。
【発明の効果】
【0022】
本発明のピッキング作業用台車は、各段の容器載置部の高さ位置を低く抑えることが可能となり、作業者は背伸びをすることなく物品の投入あるいは荷繰り作業(整頓作業)を容易に行うことができ、また下段の容器載置部の高さ位置を低すぎない高さとすることが可能となり、作業者は腰をかがめることなく物品の投入あるいは荷繰り作業(整頓作業)を容易に行うことができ、作業効率を改善することができる、という効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1におけるピッキング作業用台車の側面図、図2は同ピッキング作業用台車の正面図である。
【0024】
図1および図2に示すように、ピッキング作業用台車1は、上下2段(上下複数段の一例)に、コンテナ(物品収納容器の一例)2を載置する容器載置部3A,3Bを備えた台車であり、上段の容器載置部3Aはスライド構造とされ(詳細は後述する)、物品収納棚(図示せず)に沿って作業者Pが台車のハンドル6を使用して押し引き走行させながら、物品収納棚よりコンテナ2へ物品のピッキング作業を行う台車である。なお、ピッキング作業用台車1は、台車全体として、上段の容器載置部3Aがスライドしても重心が安定した構造とされている。以下、ピッキング作業用台車1の走行方向を前後方向X、走行方向と直角な方向を左右方向Yとし、また前後方向Xのうち作業者Pの手前側を前方、反対側を後方とする。
【0025】
図1および図2において、11はピッキング作業用台車1の車体であり、車体11は、下段の容器載置部3Bを形成する水平板状の下部部材12と、下部部材12の上方に位置し上段の容器載置部3Aを形成するスライド13と、スライド13の上方に位置し蓋状で載置台を形成する上部部材14と、これら下部部材12とスライド13と上部部材14の左右方向Yの両端をそれぞれ、これらの前後方向の中央部分で接続する左右一対の伸縮式の側部部材15から形成されている。
【0026】
また下部部材12(下段の容器載置部3B)に載置されるコンテナ2の上端とスライダ13(上段の容器載置部3A)の下端との間の上下方向の隙間(クリアランス)gを、コンテナ2とスライダ13が接触しない最小限の寸法としている。
【0027】
上記下部部材12は、前方に左右に2個にコンテナ2をその長手を前後方向Xとして載置でき、後方に、折畳んだコンテナ(空きのコンテナ)2をその短手を前後方向Xとして載置できる大きさに形成され、その下方には、ピッキング作業用台車1を支持し床面7に沿ってピッキング作業用台車1を走行させるために、左右一対の前輪16と左右一対の中間輪17と左右一対の後輪18が回転自在に取付けられ、またバッテリ19が設けられ、その前端には、2個のコンテナ2にそれぞれ対応してピッキング情報を表示するピッキング表示器20が設けられている。
【0028】
また上部部材14は、上段の容器載置部3Aに配置されたコンテナ2への物品の投入の妨げとならないように、前方(作業者P側)が広く開放された大きさに限定されており、その上部には、ピッキング作業のデータ等が表示され作業者Pにピッキング作業を指示する端末器21と、コンテナ2へ貼りつけるラベル等を発行するプリンタ22が載置され、また前面の左右両端にそれぞれ前記ハンドル6が取付けられている。
【0029】
また各側部部材15はそれぞれ、下部部材12に垂直に立設(固定)された筒状の下部側部部材15aと、上部部材14に垂設(固定)された筒状の上部側部部材15bと、これら筒状の下部側部部材15aの上方内方および上部側部部材15bの下方内方に嵌入される中間側部部材15cから構成され、中間側部部材15cには、複数の左右方向へ抜ける貫通孔15dが上下方向に設けられている。そして下部側部部材15aと中間側部部材15cを固定する際には、下部側部部材15aの上方に設けられた貫通孔(図示せず)と選択した中間側部部材15cの貫通孔15dを合わせてこれら貫通孔を通すボルト・ナット23が使用される。また上部側部部材15bと中間側部部材15cを固定する際には、上部側部部材15bの下方に設けられた貫通孔と選択した中間側部部材15cの貫通孔15dを合わせてこれら貫通孔を通すボルト・ナット23が使用される。この伸縮式の側部部材15の構成により、上段の容器載置部3A(スライダ13)と上部部材14は、上下にスライドする任意位置で固定可能となり、下段の容器載置部3Bに載置されるコンテナ2の高さにより上段の容器載置部3Aの高さが調整され、上段の容器載置部3Aに載置されるコンテナ2の高さにより上部部材14の高さが調整される。なお、図示していないが、下段の容器載置部3B(下部部材12)の高さは、下部部材12と車輪(前輪16と中間輪17と後輪18)の支持部との距離を可変とすることにより任意位置で固定可能としている。
【0030】
上記スライダ13について詳細に説明する。
スライダ13は、両側の左右一対の側部部材15(中間側部部材15c)にそれぞれ水平に固定された案内レール25と、これら左右の案内レール25に案内支持されて前後方向Xへ移動自在な板状のスライダ本体26から構成されている。なお、スライダ本体26は下部部材12(下段の容器載置部3B)の前方に載置されるコンテナ2の上方位置と、この下段の容器載置部3Bのコンテナ2の上方を開放できる位置との間で前後方向へスライド可能とされている。
【0031】
また案内レール25上を前後にスライドするスライダ本体26の位置を任意の位置に固定するために、スライダ本体26の左右端にはそれぞれ、前後方向Xに一定間隔で複数の係止孔27が形成され、左右方向Yの案内レール25の前端にそれぞれ1個の固定孔28が形成されており、固定ピン(インデックスプランジャ)29を、スライダ本体26をスライドさせて選択した1つの係止孔27と案内レール25の固定孔28を通すことで、スライダ本体26の位置を任意の位置で固定できるようにされている。
【0032】
またスライダ本体26は、左右に2個にコンテナ2をその長手を前後方向Xとして載置できる大きさに形成され、その前端には、2個のコンテナ2にそれぞれ対応して上記ピッキング表示器20が設けられ、その中央には取っ手30が設けられている。なお、スライダ本体26に設けられるピッキング表示器20は、スライダ本体26とともに前後にスライドするために、ピッキング表示器20用の配線も前後に移動することから、ケーブルベア(図示せず)を使用して配線しており、スライドするスライダ本体26に設けたピッキング表示器20に支障なくピッキング情報が伝達されている。
【0033】
このようにスライダ13は、上段の容器載置部3Aを、下段の容器載置部3Bに載置されるコンテナ2の上方位置と下段の容器載置部3Bに載置されるコンテナ2の上方を開放できる位置との間で前後方向へスライド可能に構成されている。そして、この構成により、図4に示すように、スライダ本体26には、左右に2個にコンテナ2をその長手を前後方向Xとして載置され、図4(a)に示すように、下部部材12(下段の容器載置部3B)の前方に載置されるコンテナ2の上方位置に、上段の容器載置部3Aのコンテナ2が位置するときに、これら上段のコンテナ2にピッキングされた物品が投入される。そして、下段の容器載置部3Bのコンテナ2に物品を投入するときには、左右の固定ピン29を抜き、図4(b)に示すように、取っ手30を掴んで後方へスライドさせ、下段の容器載置部3Bのコンテナ2へ物品を投入することが可能な空間が開放されると、スライドを停止させ、左右の固定ピン29を差し込む。そして、下段の容器載置部3Bのコンテナ2へ物品を投入する。またこの状態で、逆に上段の容器載置部3Aのコンテナ2へ物品を投入するときには、左右の固定ピン29を抜き、図4(a)に示すように、取っ手30を掴んで前方へスライドさせ、上段の容器載置部3Aのコンテナ2へ物品を投入することが可能な空間が開放されると、スライドを停止させ、左右の固定ピン29を差し込む。そして、上段の容器載置部3Aのコンテナ2へ物品を投入する。
【0034】
また上段の容器載置部3Aと下段の容器載置部3Bに設けられた各ピッキング表示器20はそれぞれ端末器21に接続され、ピッキング表示器20に対応するコンテナ2に投入する物品があるとき、端末器21よりピッキング表示器20に投入する物品の数量が表示される。
【0035】
以下、上記実施の形態1における作用を説明する。なお、上段の容器載置部3Aと下段の容器載置部3Bの高さ位置は伸縮式の側部部材15等により調整され、これら上段の容器載置部3Aと下段の容器載置部3Bには、それぞれ2個のコンテナ2が載置されているものとする。また下部部材12の後方には、空きの複数の折畳んだコンテナ2をその短手を前後方向Xとして載置されているものとする。また各コンテナ2には物品が仕分けられる先(例えば、店舗)が設定され、各店舗からのオーダーにより物品が各コンテナ2へ投入されるものとし、端末器21へピッキングする物品の総量と各コンテナ2へ投入する物品の数量が指定されるものとする。
【0036】
まず、物品収納棚(図示せず)に沿ってピッキング作業用台車1を押し引き走行させながら、端末器21側の指示に基づいて物品収納棚から指定された総量の物品のピッキングを行い、これらピッキングした物品をピッキング表示器20により指示されたコンテナ2へ指示された数量だけ正面から投入して行く。このとき、下段の容器載置部3Bのコンテナ2へ物品を投入するときは、スライダ本体26を後方へスライドさせ、上段の容器載置部3Aのコンテナ2へ物品を投入するときは、スライダ本体26を前方へスライドさせる。なお、ピッキング作業の途中でコンテナ2が満量となり、空きのコンテナ2が必要となったとき、すなわち増箱が必要となったとき、下段の容器載置部3Bの後方に積載している折畳んだ状態の空きコンテナ2を組み立てて使用する。
【0037】
そして各コンテナ2に対して全てのピッキング作業が終了すると、作業者Pは、出荷場または出荷場に連絡するコンベヤ(いずれも図示せず)までピッキング作業用台車1をハンドル6を使用して走行させて移動させ、プリンタ22から発行される店舗を特定するラベルを、ピッキングが終了したコンテナ2へ貼りつけて卸す。続いて折畳んだコンテナ2を開いて、上段の容器載置部3Aおよび下段の容器載置部3Bへ載置して次のピッキング作業に戻る。なお、折畳んだコンテナ2が載置されていることにより、空きのコンテナ2をその置き場所まで取りにいく必要は無い。
【0038】
以上のように本実施の形態1によれば、容器載置部3A,3Bを、ピッキングした物品を投入する際に物品を投入するコンテナ2の上方を開放できるよう構成し、下段の容器載置部3Bに載置されるコンテナ2の上端とスライダ13(上段の容器載置部3A)の下端との間の隙間gを、前記コンテナ2とスライダ13が接触しない最小限の寸法とすることにより、上段の容器載置部3Aの高さ位置を低く抑えることが可能となり、作業者Pは背伸びをすることなく物品の投入あるいは荷繰り作業(整頓作業)を容易に行うことができ、また下段の容器載置部3Bの高さ位置を低すぎない高さとすることが可能となり、作業者Pは腰をかがめることなく物品の投入あるいは荷繰り作業(整頓作業)を容易に行うことができ、その結果、作業者Pの作業効率を改善することができる。また下段の容器載置部3Bと上段の容器載置部3Aはともに水平構造であり、傾斜が無いことから、コンテナ2の荷繰り作業(整頓作業)を容易に行うことができる。また下段の容器載置部3Bの後方には空きのコンテナ2を積載可能なことにより、増箱が必要となったときでも、空きのコンテナ2をその置き場所まで取りにいく必要が無くなり、作業性を向上することができる。
【0039】
また本実施の形態1によれば、下段の容器載置部3Bのコンテナ2の開口面の広さを投入する物品(商品)のサイズに応じて可変することができ、よって予め任意の定位置までスライダ本体26を後方へスライドさせておき、容器載置部3Aまたは3Bに載置されているコンテナ2に、サイズの大きい物品を投入するときやコンテナ2の荷繰り作業(整頓作業)を行うときのみに、スライダ本体26を前後に大きくスライドさせるようにすることにより、スライダ本体26をスライドさせる回数を減らすことができ、作業性を向上させることができる。
【0040】
また本実施の形態1によれば、スライド構造のスライダ本体26(上段の容器載置部3A)を固定ピン29を使用することにより任意の位置で固定でき、上段の容器載置部3Aに載置されるコンテナ2の位置が揺れることを防止することができる。
【0041】
また本実施の形態1によれば、下段の容器載置部3Bと上段の容器載置部3Aと上部部材14の高さ位置を任意の位置で固定でき、よって、作業者は使用する各種のコンテナ2の高さに合わせて上段の容器載置部3Aと上部部材14の高さ位置を自在に調整することができ、また作業者は自分の身長に合わせて下段の容器載置部3Bと上段の容器載置部3Aと上部部材14の高さ位置をそれぞれ自在に調整でき、作業性を向上させることができる。
【0042】
また本実施の形態1によれば、下段の容器載置部3Bと上段の容器載置部3Aの前方位置にともにピッキング表示器20が配置されることにより、物品収納棚から取り出した物品を、ピッキング表示器20により指示された数量に分けてコンテナ2へ仕分けることができ、また上段の容器載置部3Aの前方位置にピッキング表示器20が配置されることにより、スライドとして位置が変更になっても、上段の容器載置部20に載置されるコンテナ2へのピッキング作業を支障なく行うことができる。
[実施の形態2]
図5は本発明の実施の形態2におけるピッキング作業用台車の斜視図である。
【0043】
上記実施の形態1では、スライダ13の上方に上部部材14を設けて端末器21等を載置しているが、実施の形態2では、図5に示すように、上部部材14および側部部材15のスライダ13より上方部分を無くし(カットし)、案内レール25に代えて案内レール25を兼ねた枠体31を設け、枠体31の前方側(作業者側)に端末器21’を設けてピッキング作業用台車1’を構成している。
【0044】
前記枠体31は、左右および後方の大きさを下部部材12の外周に合わせ、前方の大きさを下部部材12の外周より前方方向に延長された大きさとされており、枠体31の前方部材31aと後方部材31cはスライダ本体26の前後移動のストッパを兼ね、枠体31の左方部材31bと右方部材31dはスライダ本体26の案内レールを兼ねている。また枠体31の前方部材31aの前面左右両端にそれぞれハンドル6が取付けられている。
【0045】
このようなピッキング作業用台車1’の構成により、図1〜図4に示した実施の形態1のピッキング作業用台車1と同様の作用・効果を有するとともに、上部部材14を無くした構成とすることにより、スライダ13(上段の容器載置部3A)に載置されたコンテナ2の上方を完全に開放され、図5(b)に示すように、コンテナ2を後方へスライドさせた状態のときにでもこのスライダ13に載置されたコンテナ2への物品の投入を行うことができ、さらに上段および下段の容器載置部3A,3Bにそれぞれ載置されるコンテナ2への物品の投入を、正面からも側面からも行うことができ、作業性を改善することができる。
【0046】
なお、上記実施の形態1,2では、ピッキング作業用台車1,1’は、上下2段に、コンテナ2を載置する容器載置部3A,3Bを備えた台車としているが、上下2段に限ることはなく、コンテナ2が小型なときなど、さらに多くの段(3段以上)の容器載置部を備えた台車とすることも可能である。
【0047】
このとき、最下段を除く上方の各段の容器載置部はスライド構造とされる。すなわち、最下段または1つ下段の容器載置部に載置されるコンテナ2の上方位置と前記最下段または1つ下段の容器載置部に載置されるコンテナ2の上方を開放できる位置との間で前後方向へスライド可能に構成される。また各段の容器載置部に載置されるコンテナ2の上端と1つ上段の容器載置部の下端との間の上下方向の隙間を、前記コンテナ2と1つ上段の容器載置部が接触しない最小限寸法とされる。
【0048】
また上記実施の形態1,2では、ピッキング作業用台車1,1’は、上下2段に、コンテナ2を載置する容器載置部3A,3Bを備え、各容器載置部3A,3Bを、ピッキングした物品を投入する際にこの物品を投入するコンテナ2の上方を開放できるよう構成するために、上段の容器載置部3A(スライダ13)をスライド構造としている{なお、下段の容器載置部3B(下部部材12)は固定構造(スライド機能を有していない構造)}が、上段の容器載置部3Aを固定構造、下段の容器載置部3Bをスライド構造とすることも可能である。さらに上段の容器載置部3Aと下段の容器載置部3Bをともにスライド構造とすることも可能である。これらの構成においても、各容器載置部3A,3Bは、ピッキングした物品を投入する際にこの物品を投入するコンテナ2の上方を開放できるよう構成されている。
【0049】
すなわち、上段の容器載置部3Aを固定構造とし、下段の容器載置部3Bをスライド構造とするとき、上段の容器載置部3Aにはコンテナ2をその上方を開放される位置に載置し、下段の容器載置部3Bを前後方向へスライドさせて、下段の容器載置部3Bのコンテナ2の上方を開放することにより、ピッキングした物品を投入する際にこの物品を投入するコンテナ2の上方を開放できる。また上段の容器載置部3Aと下段の容器載置部3Bをともにスライド構造とするとき、いずれか、あるいは両方を前後方向へスライドさせ、上段の容器載置部3Aまたは下段の容器載置部3Bのコンテナ2の上方を開放することにより、ピッキングした物品を投入する際にこの物品を投入するコンテナ2の上方を開放できる。また下段(最下段)の容器載置部3Bをスライド構造とすることにより、下段の容器載置部3Bに載置されるコンテナ2の上方を、上段の容器載置部3Aのスライド位置に無関係に自在に開放することが可能となる。
【0050】
また上記実施の形態1,2では、スライダ本体26は左右の2個のコンテナ2をともに積載して前後方向Xへスライドできるように構成されているが、各コンテナ2毎にスライドできるよう、スライダ本体26を2つに分離した構成とすることも可能である。
【0051】
また上記実施の形態1,2では、下段の容器載置部3Bと上段の容器載置部3Aに単にコンテナ2を積載するようにしているが、重量ユニット(センサ)を介してコンテナ2を積載するようにしてもよい。重量ユニットにより載置されたコンテナ2および投入された物品の重量を測定し、一定の重量となると、コンテナ2は満量と判断され、空きのコンテナ2を用意してピッキング作業を続行することになる。
【0052】
また上記実施の形態1,2では、スライダ本体26(上段の容器載置部3A)を前後の任意位置で固定可能とする手段として、係止孔27、固定孔28および固定ピン29を設けているが、このような手段に限ることはなく、例えば、案内レール25とスライダ本体26との間に楔を差し込む等、スライダ本体26を任意位置で固定することは可能である。
【0053】
また上記実施の形態1,2では、各段の容器載置部3A,3Bをそれぞれ平行に配置している(下段の容器載置部3Bと上段の容器載置部3Aはともに水平構造としている)が、多少の傾斜が容認されることはいうまでもない。また各段の容器載置部3A,3Bをそれぞれ斜めの姿勢で互いに平行に配置することも可能である。また固定側の下段の容器載置部3Bに対して、スライド側の上段の容器載置部3Aを斜め姿勢とすることも可能である。
【0054】
また上記実施の形態1,2では、物品収納容器としてコンテナ2を使用しているが、折畳みが可能な段ボールであってもよい。
また上記実施の形態1,2では、ピッキング作業用台車1,1’は上下2段にそれぞれ左右2個のコンテナ2を載置できるように構成されているが、左右のコンテナ2の数量を増すことは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1におけるピッキング作業用台車の側面図である。
【図2】同ピッキング作業用台車の正面図である。
【図3】同ピッキング作業用台車の部品図であり、(a)は上部部材の平面図、(b)はスライダ本体の平面図である。
【図4】同ピッキング作業用台車の斜視図であり、(a)はスライダを前方へスライドさせた状態の斜視図、(b)はスライダを後方へスライドさせた状態の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるピッキング作業用台車の斜視図であり、(a)はスライダを前方へスライドさせた状態の斜視図、(b)はスライダを後方へスライドさせた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
P 作業者
X 前後方向
Y 左右方向
g 隙間
1,1’ ピッキング作業用台車
2 コンテナ(物品収納容器の一例)
3 容器載置部
11 車体
12 下部部体
13 スライダ
14 上部部材
15 側部部材
20 ピッキング表示器
21,21’ 端末器
22 プリンタ
23 ボルト・ナット
25 案内レール
26 スライダ本体
27 係止孔
28 固定孔
29 固定ピン
30 取っ手
31 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に、物品収納容器が載置される容器載置部を上下複数段に備えたピッキング作業用台車であって、
前記容器載置部を、ピッキングした物品を前記物品収納容器へ投入する際に、この物品を投入する物品収納容器の上方を開放できるよう構成し、
前記各段の容器載置部に載置される物品収納容器の上端と1つ上段の容器載置部の下端との間の上下方向の隙間を、前記物品収納容器と1つ上段の容器載置部が接触しない最小限寸法としたこと
を特徴とするピッキング作業用台車。
【請求項2】
最下段の容器載置部を除く上方の容器載置部を、前記最下段または1つ下段の容器載置部に載置される物品収納容器の上方位置と前記最下段または前記1つ下段の容器載置部に載置される物品収納容器の上方を開放できる位置との間で前後方向へスライド可能に構成したこと
を特徴とする請求項1に記載のピッキング作業用台車。
【請求項3】
前記最下段の容器載置部を、その上方の容器載置部と同様に前後方向へスライド可能に構成したこと
を特徴とする請求項2に記載のピッキング作業用台車。
【請求項4】
各段の容器載置部は、前後にスライドする任意位置で固定可能としたこと
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のピッキング作業用台車。
【請求項5】
各段の容器載置部は、上下にスライドする任意位置で固定可能としたこと
を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のピッキング作業用台車。
【請求項6】
前記各段の容器載置部の前方位置にそれぞれ、ピッキング情報を表示する表示器を配置したこと
を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のピッキング作業用台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−105774(P2008−105774A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288156(P2006−288156)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】