説明

ピッキング又は仕分け用カート、並びに、ピッキング又は仕分け用カート及び台車セット

【課題】直進安定性に優れるとともに、小さな力で運搬方向を左右に変更することが可能な、ピッキング又は仕分け用カートを得る。
【解決手段】ピッキング又は仕分け用カート2は、物品を運搬するためのピッキング又は仕分け用台車3を連結する連結部材4を備え、当該連結部材4によって台車3を押すことで物品を運搬するピッキング又は仕分け用カートであって、連結部材4は、カート2の幅方向に対して略中央部に配置され、カート2の直進方向に延設するドッキングフレーム26を有し、ドッキングフレーム26には、台車3と係合する複数の突起28,29が延設方向に沿って直線状に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫や工場などにおける物品のピッキング又は仕分けの作業、ファクトリーオートメーションにおける同様の作業に用いられる、ピッキング又は仕分け用カート、並びに、ピッキング又は仕分け用カート及び台車セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
倉庫や工場などにおける物品収容場では、物品のピッキングや仕分けの作業効率を高めるため、通常、物品収容棚をある規則で配列している。そして、ピッキングした物品や仕分けをする物品を載せる台車であるピッキング又は仕分け用台車を、このような物品収容棚に沿って移動させながらピッキングや仕分けの作業を行っている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたピッキング又は仕分け用カートでは、カートと台車とを連結部材にて連結させ、該カートと該台車とが一体に方向変更可能なように、連結装置の連結部材を、左右方向の幅をもって該台車の被係合用部材と係合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3194558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたピッキング又は仕分け用カートによると、台車とカートとが左右方向の幅をもって連結されている。そのため、直進方向にカートを押す場合に左右均等の力で押さなければ、台車に加わる力がアンバランスとなって運搬方向が左右にずれてしまい、直進安定性が悪い。
【0006】
また、台車に対してカート近傍の連結位置で連結しているため、運搬方向を左右に変更する場合でも台車の手前にしか力を加えることができない。従って、力を加えられる位置から離れた台車の先頭には力を加えづらく、台車の先頭の方向変更をするには大きな力が必要となる。
【0007】
本発明はかかる問題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、カートを押して台車を運搬する場合に、直進安定性に優れるとともに、小さな力で運搬方向を左右に変更することが可能な、ピッキング又は仕分け用カート、並びに、ピッキング又は仕分け用カート及び台車セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係るピッキング又は仕分け用カートは、物品を運搬するためのピッキング又は仕分け用台車を連結する連結部材を備え、当該連結部材によって前記台車を押すことで物品を運搬するピッキング又は仕分け用カートであって、前記連結部材は、前記カートの幅方向に対して略中央部に配置され、前記カートの直進方向に延設する延設部材を有し、当該延設部材には、前記台車と係合する複数の係合部が延設方向に沿って直線状に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
第1の態様に係るピッキング又は仕分け用カートによれば、カートの幅方向に対して略中央部に設けられた連結部材を介して、台車を押す力をカートから台車に伝えるため、台車の幅方向に対して力のバランスがとれた状態で、押す力を台車に確実に伝えることができる。その結果、カートを押して台車ごと運搬する場合に、押す力が運搬方向に対して効率良く加わるとともに、台車を左右にぶれることなく運搬することができるため、直進安定性を高めることができる。
【0010】
また、延設部材には、台車と係合する複数の係合部が延設方向に沿って直線状に設けられている。そのため、台車を直進させる場合には複数の係合部が一体となって押す力を効率良く台車に伝えるとともに、運搬方向を左右に変更する場合には、複数の係合部のうちカートから遠い係合部が作用点、カートと連結部材との接合部が支点となるため、小さい力で左右への方向転換が可能となる。
【0011】
本発明の第2の態様に係るピッキング又は仕分け用カートは、第1の態様に係るピッキング又は仕分け用カートにおいて特に、前記複数の係合部は、前記連結部材の幅方向に対して略中央部に設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
第2の態様に係るピッキング又は仕分け用カートによれば、複数の係合部が連結部材の幅方向に対して略中央部に設けられていることにより、複数の係合部は、カートの幅方向に対して略中央部に設けられていることとなる。従って、台車を押す力を、幅方向に対してさらにバランス良く台車に伝えることができる。
【0013】
本発明の第3の態様に係るピッキング又は仕分け用カート及び台車セットは、第1又は第2の態様に係るピッキング又は仕分け用カートと、前記ピッキング又は仕分け用カートに連結されるピッキング又は仕分け用台車とを備え、前記台車には、前記カートに設けられた複数の係合部と係合する複数の被係合部が、当該台車の幅方向に対して略中央部に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
第3の態様に係るピッキング又は仕分け用カート及び台車セットによれば、第1又は第2の態様に係るピッキング又は仕分け用カートにより得られる上記効果に加えて、以下の効果を得ることができる。つまり、台車には、カートに設けられた複数の係合部と係合する複数の被係合部が、当該台車の幅方向に対して略中央部に設けられている。従って、台車は、カートから連結部材を介して伝わる台車を押す力を、台車の幅方向に対してバランス良く受けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カートを押して台車を運搬する場合に、直進安定性に優れるとともに、小さな力で運搬方向を左右に変更することが可能な、ピッキング又は仕分け用カート、並びに、ピッキング又は仕分け用カート及び台車セットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るピッキング又は仕分け用カート及び台車セットの全体構成を模式的に示す側面図である。
【図2】連結部材及びカートの構造を示す分解斜視図である。
【図3】カートと台車とを連結させる動作を示す図である。
【図4】カートと台車とを連結させる動作を示す図である。
【図5】カートと台車とを連結させる動作を示す図である。
【図6】カートと台車との連結を切り離す動作を示す図である。
【図7】図1に示したラベルプリンタの動作を示す図である。
【図8】図1に示したラベルプリンタの動作を示す図である。
【図9】図1に示したラベルプリンタの動作を示す図である。
【図10】図1に示したラベルプリンタの動作を示す図である。
【図11】図1に示した操作入力部の外観を模式的に示す図である。
【図12】キーの構造を示す側面図である。
【図13】特定のキーが点灯された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るピッキング又は仕分け用カート及び台車セット1の全体構成を模式的に示す側面図である。ピッキング又は仕分け用カート及び台車セット1は、ピッキング又は仕分け用カート(以下「カート」と略す)2と、ピッキング又は仕分け用台車(以下「台車」と略す)3とを備えている。カート2は、連結部材4、ラベルプリンタ5、操作入力部6、表示部7、及び方向変更自在な複数の車輪8を有している。ラベルプリンタ5は、ピッキング又は仕分けの作業結果等をラベルに印字して排出する。操作入力部6は、ピッキング又は仕分けの作業に伴う各種のデータ入力を行う。表示部7は、ピッキング又は仕分けの作業に伴う操作ガイダンス等の各種の情報を表示する。台車3は、方向変更自在な複数の車輪9を有している。なお、図1に示した例では、作業者によって物品収容棚からピッキングされた複数の物品10が、台車3上に載置されている。
【0019】
カート2と台車3とは、連結部材4によって一体に連結固定されており、作業者が台車3を前方にして後方からカート2を押すことにより、押す力が連結部材4を介してカート2から台車3に伝わり、カート2と台車3とが一体に運搬される。また、カート2と台車3とが連結された状態では、連結部材4に対してカート2及び台車3はいずれも非回動状態で固定されている。従って、連結状態で作業者がカート2に対して方向変更の力を加えることにより、カート2及び台車3は一体に方向変更される。
【0020】
図2は、連結部材4及びカート3の構造を示す分解斜視図である。連結部材4は、足踏みプレート20、ブッシュブロック21、スプリングを固定するスプリングブラケット22、ジュラコンカラー23、当接部25を含むロックユニット24、ドッキングフレーム26(延設部材)、ガイド板27、及び、上端にテーパー部を有する丸棒状の複数の突起28,29(係合部)等を備えて構成されている。連結部材4(特にドッキングフレーム26)は、カート2に対してその幅方向(直進方向に直交する方向)の略中央部に配置されている。ドッキングフレーム26は、カート2の直進方向に沿って延設した形状(つまりカート2の前端から突出した形状)を有している。突起28,29は、ドッキングフレーム26上において、ドッキングフレーム26の延設方向に沿って直線状に並んで設けられている。
【0021】
台車3には、当て板金具34及び取り付け金具35によって、直進方向に沿って延在するドッキングプレート31が取り付けられている。ドッキングプレート31は、台車3に対してその幅方向の略中央部に配置されている。ドッキングプレート31には、突起28,29に係合する複数の貫通孔32,33(被係合部)が形成されている。貫通孔32,33は、突起28,29の配設箇所に対応して、ドッキングプレート31の延在方向に沿って直線状に並んで形成されている。
【0022】
図3〜5は、カート2と台車3とを連結させる動作を示す図である。図3には、連結前の連結部材4の状態を示している。図3に示すように、連結前の状態では、ドッキングフレーム26は、床面に近い所定の下方位置まで降下されている。ドッキングフレーム26が下方位置に降下された状態では、台車3の底面と床面との隙間にドッキングフレーム26を潜り込ませることが可能である。
【0023】
図4には、カート2の方向から眺めた当て板金具34の構造を示している。当て板金具34には、先に向かって徐々に狭くなる形状の凹部41と、凹部41の先端に繋がるガイド溝40とが形成されている。作業者は、ガイド板27の先端部が凹部41を介してガイド溝40内に挿入されるように、カート2又は台車3を移動させて両者を位置決めする。
【0024】
図4,5を参照して、ガイド板27がガイド溝40内に挿入される位置までカート2又は台車3が移動されると、当て板金具34の側面42がロックユニット24の当接部25に当接する。これにより、ロックユニット24によるスプリングのロックが解除され、ドッキングフレーム26が上方位置まで上昇する。ドッキングフレーム26の上昇に伴って突起28,29も上昇し、突起28,29と貫通孔32,33とがそれぞれ係合することにより、図5に示すようにカート2と台車3とが互いに連結される。なお、ガイド溝40の幅はガイド板27の幅よりも狭く設定されているため、カート2と台車3とが連結された状態では、ガイド板27は当て板金具34に接触しない。
【0025】
図6は、カート2と台車3との連結を切り離す動作を示す図である。カート2と台車3とが連結された状態で、作業者は足踏みプレート20を踏み降ろす。これにより、ドッキングフレーム26が図3に示した下方位置まで降下され、その状態でロックユニット24によってスプリングがロックされる。ドッキングフレーム26の降下に伴って突起28,29も降下し、突起28,29と貫通孔32,33との係合が解除される。その後、カート2又は台車3を移動することにより、カート2と台車3とが切り離される。
【0026】
このように本実施の形態に係るピッキング又は仕分け用カート2によれば、カート2の幅方向に対して略中央部に設けられた連結部材4を介して、台車3を押す力をカート2から台車3に伝えるため、台車3の幅方向に対して力のバランスがとれた状態で、押す力を台車3に確実に伝えることができる。その結果、カート2を押して台車3ごと運搬する場合に、押す力が運搬方向に対して効率良く加わるとともに、台車3を左右にぶれることなく運搬することができるため、直進安定性を高めることができる。
【0027】
また、延設部材としてのドッキングフレーム26には、台車3と係合する複数の突起28,29が延設方向に沿って直線状に設けられている。そのため、台車3を直進させる場合には複数の突起28,29が一体となって押す力を効率良く台車3に伝えるとともに、運搬方向を左右に変更する場合には、複数の突起28,29のうちカート2から遠い突起29が作用点、カート2と連結部材4との接合部が支点となるため、小さい力で左右への方向転換が可能となる。
【0028】
また、本実施の形態に係るピッキング又は仕分け用カート2によれば、複数の突起28,29が連結部材4の幅方向に対して略中央部に設けられていることにより、複数の突起28,29は、カート2の幅方向に対して略中央部に設けられていることとなる。従って、台車3を押す力を、幅方向に対してさらにバランス良く台車3に伝えることができる。
【0029】
また、本実施の形態に係るピッキング又は仕分け用カート及び台車セット1によれば、台車3には、カート2に設けられた複数の突起28,29と係合する複数の貫通孔32,33が、台車3の幅方向に対して略中央部に設けられている。従って、台車3は、カート2から連結部材4を介して伝わる台車3を押す力を、台車3の幅方向に対してバランス良く受けることができる。
【0030】
図7〜10は、図1に示したラベルプリンタ5の動作を示す図である。ラベルプリンタ5は、サーマルヘッド100、プラテンローラ101、固定刃102、可動刃103、及びラベルガイド104を備えている。まず図7を参照して、サーマルヘッド100とプラテンローラ101との間で矢印Y1の方向にラベル105を搬送することにより、ラベル105の所定箇所への印字を行う。次に図8を参照して、可動刃103を上昇させることにより、固定刃102と可動刃103とによって、印字済みの箇所のラベル105を切断する。次に図9を参照して、可動刃103を降下させた後、矢印Y2の方向にラベル105を所定量だけ搬送し、切断されたラベル105を未印字のラベル105によって後方から押すことにより、印字済みのラベル105を強制的に排出する。これにより、切断されたラベル105が糊や静電気の影響によって適切に排出されないという不具合を回避することができる。次に図10を参照して、未印字のラベル105の先頭がプラテンローラ101の位置まで戻るように、矢印Y3の方向にラベル105を搬送する。その後、図7と同様の動作によって次の印字を行う。
【0031】
図11は、図1に示した操作入力部6の外観を模式的に示す図である。操作入力部6には、テンキーやファンクションキー等の複数のキー200が所定の規則で配列されている。図12は、キー200の構造を示す側面図である。キー200は、操作感の良いブロック状のいわゆるハードキーであり、キー本体部201上にキートップ部202が固定された二層構造を有している。キートップ部202には、電気的制御によって点灯及び消灯を切り替え可能な発光機能が備えられている。上述の通り、表示部7にはピッキング又は仕分けの作業に伴う操作ガイダンス等が表示されるが、表示部7への操作ガイダンスの表示に連動させて、操作入力部6が備える全てのキー200のうち、作業者が操作すべき特定のキー200のキートップ部202を点灯させる。図13は、特定のキー200が点灯された状態を示す図であり、点灯状態のキー200にハッチングを付している。例えば、マスターデータの選択及び呼び出しの操作時には、テンキー及び呼び出しキーに相当する特定のキー200が点灯される。また、加算機能が「F1」のファンクションキーに割り当てられている場合において、データの加算作業を行う場合には、「F1」のファンクションキーに相当する特定のキー200が点灯される。このように作業者が操作すべき特定のキー200を点灯させることにより、キー操作の速度を向上できるとともに、操作ミスを軽減することができる。また、どのような機能が割り当てられているかを直感的には理解し難いファンクションキーに関しても、作業内容に応じて操作すべきファンクションキーを点灯させることにより、キー操作のミスを防ぎ、より効果的にファンクションキーを活用することができる。さらに、キートップ部202を多色に発光させることもでき、この場合には、操作入力部6がイルミネーションの役割を担うため、ユーザの目に留まりやすい高デザインの製品を提供することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ピッキング又は仕分け用カート及び台車セット
2 ピッキング又は仕分け用カート
3 ピッキング又は仕分け用台車
4 連結部材
26 ドッキングフレーム
28,29 突起
32,33 貫通孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を運搬するためのピッキング又は仕分け用台車を連結する連結部材を備え、当該連結部材によって前記台車を押すことで物品を運搬するピッキング又は仕分け用カートであって、
前記連結部材は、前記カートの幅方向に対して略中央部に配置され、前記カートの直進方向に延設する延設部材を有し、当該延設部材には、前記台車と係合する複数の係合部が延設方向に沿って直線状に設けられていること
を特徴とするピッキング又は仕分け用カート。
【請求項2】
前記複数の係合部は、前記連結部材の幅方向に対して略中央部に設けられていること
を特徴とする、請求項1に記載のピッキング又は仕分け用カート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のピッキング又は仕分け用カートと、
前記ピッキング又は仕分け用カートに連結されるピッキング又は仕分け用台車と
を備え、
前記台車には、前記カートに設けられた複数の係合部と係合する複数の被係合部が、当該台車の幅方向に対して略中央部に設けられていること
を特徴とする、ピッキング又は仕分け用カート及び台車セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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