説明

ピッキング用冷凍冷蔵倉庫

【課題】漏れた冷気を回収し、作業環境を向上することができるピッキング用冷凍冷蔵倉庫を提供すること。
【解決手段】庫内に据え付けられたクーリングコイル63によって冷却された冷気を前面開口の内側上縁から下方に向けて吐出させるとともに、吐出された冷気を前面開口の内側下縁から回収するピッキング用冷凍冷蔵倉庫において、前面開口の外側に前面開口に沿って設けられ、前面開口から漏れた冷気を回収する上面が開口した冷気回収ダクト81と、冷気回収ダクト81に沿って配設され、作業スペースの床を温める床暖房装置83とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫に関するものであって、たとえば、物流センタや配送センタに設置されるピッキング用冷凍冷蔵倉庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物流センタや配送センタに構築されるピッキングシステムは、冷凍冷蔵倉庫と、冷凍冷蔵倉庫から取り出された商品を搬送する搬送装置とを備えている。冷凍冷蔵倉庫の庫内には、冷凍冷蔵倉庫の前面開口に臨むように複数の棚装置が配置されるとともに、庫内を保冷するための冷却装置が備えられている。棚装置は、複数段の傾斜棚で構成され、棚装置の作業スペース側先端部には、配送対象となる商品の保管位置をランプ等により示すとともにピッキング数を示す表示器が備えられている。
【0003】
そして、冷凍冷蔵倉庫の前面開口を構成する側壁の内側に冷気エアカーテンを生成する第一送風装置を備えるとともに、側壁の外側に外気エアカーテンを生成する第二送風装置を備えている。第一送風装置及び第二送風装置は、床面に向けて略垂直方向に冷気又は外気を吹き出すものであり、冷凍冷蔵倉庫の床面には、第一送風装置に対応する吸気装置が設置されている。また、前面下側開口には、吸気装置の高さよりも高い位置まで下部断熱壁が立ち上げられている。
【0004】
吸気装置は、棚装置の脚部間に配置されており、第一送風装置の吹出口に対向する位置に設けられた吸込口と、吸込口から庫内方向に延長するダクトと、ダクトの後端部に連設し、冷凍冷蔵倉庫の略中央付近に配置された吸込ファンとを有する。
【0005】
このように構成された冷凍冷蔵倉庫の外側上部には、作業フロアと天井との間の空間に冷却装置の廃熱を利用する熱交換器としてヒートリクレイム熱交換器が設置され、作業フロアは所定温度(摂氏5度程度)に保たれている。さらに、作業スペースとなる床には、床暖房装置が配設されており、オペレータの足元を直接暖めることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2006−90619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前面開口内側に冷気エアカーテンを生成するために、第一送風装置から吹き出した冷気は吸気装置にすべて吸い込まれるわけではなく、どうしても冷凍冷蔵倉庫の外に漏れてしまう。この漏れた冷気は、作業フロアに吹き溜まり、作業環境を悪化させる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、漏れた冷気を回収し、作業環境を向上することができるピッキング用冷凍冷蔵倉庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1にかかるピッキング用冷凍冷蔵倉庫は、庫内に据え付けられた冷却装置によって冷却された冷気を前面開口の内側上縁から下方に向けて吐出させるとともに、吐出された冷気を前面開口の内側下縁から回収するピッキング用冷凍冷蔵倉庫において、前面開口の外側に前面開口に沿って設けられ、前面開口から漏れた冷気を回収する上面が開口した冷気回収ダクトと、該冷気回収ダクトに沿って配設され、作業スペースの床を温める床暖房装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2にかかるピッキング用冷凍冷蔵倉庫は、上記請求項1において、前記床暖房装置の熱源は、前記冷却装置の廃熱であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3にかかるピッキング用冷凍冷蔵倉庫は、上記請求項1または2において、冷気回収ダクトの上面開口は、格子状に形成され、冷気が通過する蓋で覆ってあることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4にかかるピッキング用冷凍冷蔵倉庫は、上記請求項1または2において、前記床暖房装置は、前記冷却装置から吐出された冷媒が流れる吐出管を浸漬させる温水タンクと、温水タンクから温水を汲み上げる循環ポンプと、作業スペースの床に埋設され、循環ポンプから供給された温水を循環させる温水管とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるピッキング用冷凍冷蔵倉庫は、前面開口の外側に前面開口に沿って設けられ、前面開口から漏れた冷気を回収する上面が開口した冷気回収ダクトを備えたので、漏れた冷気を回収し、作業環境を向上させることができる。また、冷気回収ダクトに沿って配設され、冷却装置の廃熱を熱源として作業スペースの床を温める床暖房装置を備えたので、オペレータの足元を効率的に温めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるピッキング用冷凍冷蔵倉庫の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態であるピッキング用冷凍冷蔵倉庫が設置された配送センタを示す側断面図である。
【0016】
図1に示すように、配送センタの建屋1の内部には、冷凍冷蔵ピッキングシステムが構築されている。冷凍冷蔵ピッキングシステムは、商品が陳列されたピッキング用冷凍冷蔵倉庫2と、積載された商品を搬送するセンタコンベア3とにより構成されており、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2(たとえば、後述する傾斜流動棚)に陳列された商品は、オペレータによって取り出され、センタコンベア3に積載されるようになっている。
【0017】
図1に示した本実施の形態である冷凍冷蔵ピッキングシステムは、センタコンベア3を中央に配置し、その両側にピッキング用冷凍冷蔵倉庫2を配置することにより、一のセンタコンベア3を効率的に運用できるようになっている。
【0018】
図2は、図1に示したピッキング用冷凍冷蔵倉庫を示す側断面図であり、図3は、図2に示したピッキング用棚装置を示す側断面図である。
【0019】
ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2は、配送センタの建屋1の内部に構築されたプレハブ倉庫であって、プレハブ断熱材で構成されている。このピッキング用冷凍冷蔵倉庫2は、前方領域を収納陳列領域4とし、後方領域を収容搬送領域6としている。収納陳列領域(前方領域)4は、床から天井までの高さが2メートル50センチメートル程度であり、前面が開口し、商品を陳列する陳列・ピッキング部(棚装置)41の設置を可能にしている。収容搬送領域(後方領域)6は、床から天井までの高さが3メートル50センチメートル程度であり、大型の設備機械(たとえば、後述する商品投入搬送装置)の設置を可能にしている。そして、収納陳列領域(前方領域)4の天井と収容搬送領域(後方領域)6の天井との間に生じる隙間は、垂直な壁体21で塞がれ、当該壁体21は、収納陳列領域(前方領域)4と収容搬送領域(後方領域)6との間の段差となっている。
【0020】
図2に示すように、収納陳列領域4には、複数台(本実施の形態であるピッキング用冷凍冷蔵倉庫は、8台)の陳列・ピッキング部(棚装置)41が横並びとなるように設置してある。陳列・ピッキング部41は、商品を保管するピッキング用棚装置であって、前面及び後面が開口している。
【0021】
図3に示すように、陳列・ピッキング部41には、上下方向に複数段(本実施の形態の陳列・ピッキング部は、四段)の傾斜流動棚42が架設してある。傾斜流動棚42は、後方から前方に向けて漸次低くなるように傾斜する態様で架設してあり、後方から投入された商品は、傾斜流動棚42の上面を転動又は滑走することにより、前方に搬送され、前方から後方に向けて順次収納されるようになっている。
【0022】
図4は、図3に示した傾斜流動棚を示す斜視図、図5は、図4に示したLED表示パネルを示す斜視図、図6は、図5に示したLED表示パネルの一部を拡大した拡大斜視図、図7は、LED表示パネルの回路図である。
【0023】
図4に示すように、傾斜流動棚42は、複数種類(本実施の形態の傾斜流動棚は6種類)の商品が保管可能であって、その前縁には、商品種類に対応するように、LED表示パネル43が配設してある。
【0024】
たとえば、本実施の形態の一の傾斜流動棚42は、6種類の商品が保管可能であるから、一の傾斜流動棚42を6等分し、それぞれの前縁にLED表示パネル43が配設してある。したがって、本実施の形態の陳列・ピッキング部41は、24個のLED表示パネル43が配設してある。
【0025】
LED表示パネル43は、後方から投入された商品を受け止め、商品を整列させるとともに、取り出す商品が保管されている保管位置を明示するものである。すなわち、LED表示パネル43は、フェンスとして機能するとともに、ピッキング指示パネルとしても機能するようになっている。
【0026】
図5に示すように、LED表示パネル43は、導光板431を左右一対となるLEDユニット432,433の相互間に配設したもので、導光板431の下縁に密着するステー434によって一体化されている。導光板431は、側端面から入射した光によって点灯するもので、細長の矩形を呈したアクリル板で構成してあり、その上端面には、前下がりとなるように傾斜面431aが設けてある。この導光板431の裏面側には、反射板あるいは白色の塗装板が配設してある(図示せず)。
【0027】
図6に示すように、各LEDユニット432は、導光板431に対向する面に導光板431が嵌る凹部が形成された柱体であって、凹部の導光板に対向する面には、赤色LED(Light Emitting Diode)435と青色LED436とが配設してある。
【0028】
図7に示すように、これら左右一対となる赤色LED435の各アノード端子と青色LED436の各アノード端子とは接続され、コモン端子を構成している。一方、左右一対となる赤色LED435の各カソード端子は相互に接続され、赤色LEDカソード端子となり、左右一対となる青色LED436の各カソード端子は相互に接続され、青色LEDカソード端子となっている。
【0029】
そして、コモン端子に正の電圧(+25V)、赤色LEDカソード端子に負の電圧がかけられると、左右一対となるLEDユニット432、433の赤色LED435から赤色光が出射され、導光板431が赤く点灯するようになっている。一方、コモン端子に正の電圧(+25V)、青色LEDカソード端子に負の電圧がかけられると、左右一対となるLEDユニット432,433の青色LED436から青色光が出射され、導光板431が青く点灯するようになっている。
【0030】
LED表示パネル43の各端子(コモン端子、赤色LEDカソード端子、青色LEDカソード端子)は、三芯ケーブル44(図5参照)によって、図示せぬ管理装置に接続されている。そして、管理装置は、一人のオペレータが受け持つ棚においてLED表示パネル43(導光板431)を赤く点灯させることにより保管位置を明示し、隣り合う一人のオペレータが受け持つ棚においてLED表示パネル43(導光板431)を青く点灯させることにより保管位置を明示するようになっている。
【0031】
また、図3に示すように、最上段となる傾斜流動棚42の上方となる収納陳列領域4の天井には、後方から前方に延在するダクト45が配設してある。ダクト45は、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口に低温のエアカーテンを生成するためのものであり、後端が開口している。この後端開口には、送風ファン(送風装置)46が配設してある。送風ファン46は、陳列・ピッキング部41の奥方、すなわち、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の収容搬送領域6から空気を導入するものである。
【0032】
ダクト45の内部は、上下に仕切られ、下側がインナーダクト47を構成し、上側がミドルダクト48を構成するようになっている。そして、ダクト45に導入された空気は、インナーダクト47とミドルダクト48とに分配されるようになっている。
【0033】
インナーダクト47は、分配された空気を冷却し、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口内側に低温(たとえば、摂氏−30度)のエアカーテンを生成するためのもので、インナーダクト47の内部には、蒸発器(エボパレータ)471が設置してあり、ダクト45の後端開口から導入され、分配された空気は、蒸発器471の周囲を通過する際に摂氏−30度程度まで冷却されるようになっている。
【0034】
インナーダクト47は、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口内側において前端が下方に向かって開口している。この前端開口には、冷気吐出口を構成するハニカム472が取り付けてあり、ハニカム472を通過した空気は整流され、下方に向かって流れるようになっている。
【0035】
ミドルダクト48は、分配された空気をピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口内側であって、インナーダクト47が生成するエアカーテンよりも外側に低温(たとえば、摂氏−25度)のエアカーテンを生成するためのもので、インナーダクト47の外側であって、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口内側において前端が下方に向かって開口している。この前端開口には、冷気吐出口を構成するハニカム481が取り付けてあり、ハニカム481を通過した空気は整流され、下方に向かって流れるようになっている。
【0036】
また、収納陳列領域4の天井前縁には、奥方から前方に延在した後に下方に延在するアウターダクト49が配設してある。アウターダクト49は、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口外側に室温のエアカーテンを生成するものであり、奥方端と下方端とが開口している。この奥方端開口には、アウターファン(送風装置)491が配設してある。このアウターファン491は、稼働させると配送センタの建屋(ピッキング用冷凍冷蔵倉庫の天井裏)から空気を導入するようになっている。また、下方端開口には、空気吐出口を構成するハニカム492が取り付けてあり、ハニカム492を通過した空気は整流され、下方に向かって流れるようになっている。
【0037】
最下段となる傾斜流動棚42の前方にリターングリル(開口)50が形成されるように、フロントパネル51が床に立設してある。リターングリル50は、インナーダクト47の前端開口及びミドルダクト48の前端開口と対向するように形成され、インナーダクト47の前端開口及びミドルダクト48の前端開口から供給され、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口にエアカーテンを生成した空気を回収するようになっている。
【0038】
また、最下段となる傾斜流動棚42の下方には、吸気ファン52が傾斜する態様で取り付けてあり、リターングリル50から回収された空気を収納陳列領域4から収容搬送領域6に送出するようになっている。
【0039】
図2に示すように、収容搬送領域6の床には、前方から後方に延在するダクト61が配設してある。ダクト61は、リターングリル50から回収された空気を収容搬送領域6に循環させるためのものであり、前端が最下段となる傾斜流動棚42と収納陳列領域4の床との間に形成された開口に対向し、開口している。また、後端は、ピッキング用冷凍冷蔵庫の奥壁近傍まで延在し、開口している。また、ダクト61の出口近傍となる内部には、循環ファン62が配設してある。循環ファン62は、最下段となる傾斜流動棚42と収納陳列領域4との間から送出された空気を吸い込み、奥壁に沿って循環させるようになっている。
【0040】
図2に示すように、収容搬送領域6の天井には、複数台(本実施の形態では3台)のクーリングコイル(冷却装置)63が据え付けてある。クーリングコイル63は、供給された空気を冷却して、送出するものであり、上述した陳列・ピッキング部41に均等に冷却した空気を送出するように、均等に配設してある。クーリングコイル63は、空気が通過する際に摂氏−25度程度まで冷却されるようになっている。また、クーリングコイル63の空気送出能力は、ダクト45に配設した送風ファン46の数倍の能力を有している。
【0041】
図3に示すように、アウターダクト49の下方端外側には、ナイトカバー71と照明装置72とが並設してある。ナイトカバー71は、ロールスクリーンのように、巻き上げることにより収納可能なカバーであって、冷凍冷蔵ピッキングシステム稼働中に収納し、稼働を停止した場合に降ろすことにより、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口を塞ぐことができるようになっている。照明装置72は、たとえば、蛍光灯であって、冷凍冷蔵ピッキングシステム稼働中は点灯し、稼働を停止した場合に消灯することができるようになっている。
【0042】
これら、ナイトカバー71と照明装置72とは、傘体73によって覆われている。傘体73の前面には、照明装置72を点灯あるいは消灯させるスイッチ74が設けてある。このスイッチ74は、図8に示すように、アウターファン491と連動しており、照明装置72を点灯させた場合にアウターファン491が駆動され、照明装置72を消灯させた場合にアウターファン491を停止させるようになっている。
【0043】
また、このスイッチ74は、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の内部温度を調節する温度調節装置に指示信号を与えるようになっている。たとえば、図9に示すように、照明装置72を点灯した場合に設定温度を摂氏−18度にするように指示し、照明装置72を消灯した場合に設定温度を摂氏−15度にするように指示するようになっている。
【0044】
また、図3に示すように、上述したフロントパネル51の前方には、漏れ冷気回収ダクト81が配設してある。漏れ冷気回収ダクト81は、リターングリル50から回収されずにオペレータの作業領域に漏れた冷気を回収することを目的に配設したダクトであって、フロントパネル51と並行するように配設してある。漏れ冷気回収ダクト81は、上面が開口した断面凹の字を呈しており、この上面開口は、グレーチングと称される格子状の蓋82で覆ってある。このように格子状の蓋82で上面開口を覆うことにより、漏れた冷気の回収を可能にするとともに、オペレータが誤って漏れ冷気回収ダクト81に足を取られる事態を防止するようになっている。なお、漏れ冷気回収ダクト81から回収した冷気は、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の床下を通って、影響の及ばないところ(たとえば、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫の裏側上方)に排出するようになっている(図示せず)。
【0045】
また、漏れ冷気回収ダクト81の前方には、床暖房装置83が配設してある。床暖房装置83は、床に埋設した温水管に温水を通すことにより、床を温めるものであって、漏れ冷気回収ダクト81と並行するように配設してある。
【0046】
図10は、床暖房装置に温水を送る冷媒回路を示す回路図である。本発明の実施の形態の床暖房装置83は、上述したインナーダクト47に配設した蒸発器(エボパレータ)471を含んで構成される冷凍サイクルまたはクーリングコイル63を含んで構成される冷凍サイクルの廃熱を用いたものであって、蒸発器(エボパレータ)4またはクーリングコイル63から吐出された冷媒が流れる吐出管84を浸漬させた温水タンク85と、温水タンク85から温水を汲み上げる循環ポンプ86と、作業スペースの床に埋設され、循環ポンプ66から供給された温水を循環させる温水管(床暖房装置83)とを備えている。
【0047】
また、図2に示すように、収容搬送領域6には、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2に商品を搬入するための商品搬入コンベア64、搬入した商品を一時保管する商品一時保管棚、商品一時保管棚から上述した陳列・ピッキング部41に商品を投入する商品投入搬送装置66が設置してある。
【0048】
本発明の実施の形態にかかるピッキング用冷凍冷蔵倉庫2において、クーリングコイル(冷却装置)63、送風ファン(送風装置)46、吸気ファン52、循環ファン62、アウターファン491を稼働すると、クーリングコイル63の周囲を通過した空気は、摂氏−25度程度まで冷却され、収納陳列領域(前方領域)4と収容搬送領域(後方領域)6との間に設けられた垂直な壁体(段差)2に向けて送出される。送出された空気は、収納陳列領域(前方領域)4と収容搬送領域(後方領域)6との間に設けられた垂直な壁体(段差)2に衝突することにより拡散され、クーリングコイル63から送風ファン46に直接空気を送出する場合よりも、空気の流速が遅くなり、送風ファン46に空気が均等に供給される。
【0049】
そして、送風ファン46に供給された空気は、インナーダクト47とミドルダクト48とに分配される。インナーダクト47に分配された空気は、蒸発器(エボパレータ)471の周囲を通過する際に摂氏−30度程度まで冷却され、前端開口からリターングリルに向けて流れることにより、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口内側に摂氏−30度程度のエアカーテンを生成する。一方、ミドルダクト48に分配された空気は、前端開口からリターングリル50に向けて流れることにより、インナーダクト47が生成するエアカーテンよりも外側に摂氏−25度程度のエアカーテンを生成する。
【0050】
一方、アウターファン491を稼働することにより、配送センタの建屋から導入された空気は、上述したエアカーテンに沿って流れ、エアカーテンを生成する空気の乱れを抑制する。
【0051】
他方、リターングリル50から回収された空気は、吸気ファン52及び循環ファン62によって、奥方に送出され、奥壁に沿って循環する。そして、奥壁に沿って循環した空気は、再び、クーリングコイル63に供給される。
【0052】
このように循環され、クーリングコイル63、蒸発器(エボパレータ)471によって冷却された空気は、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の内部を冷却する。
【0053】
また、本発明の実施の形態にかかる冷凍冷蔵ピッキングシステムは、商品搬入コンベア64によって、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の外部から商品が搬入される。ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2に搬入された商品は、商品一時保管棚に一時保管され、あるいは、商品投入搬送装置66によって、陳列・ピッキング部41の傾斜流動棚42に投入される。なお、商品一時保管棚に一時保管された商品も順番がきたら商品投入搬送装置66によって、陳列・ピッキング部41の傾斜流動棚42に順次投入される。
【0054】
また、本発明の実施の形態にかかる冷凍冷蔵ピッキングシステムは、管理装置によって制御され、取り出す商品が保管されている保管位置のLED表示パネル43が点灯される。すると、オペレータは、点灯したLED表示パネル43が示す保管位置が受け持つ棚であるか否かを識別し、自らが受け持つ棚であると識別した場合には、点灯したLED表示パネル43が示す保管位置から商品を取り出し、センタコンベア3に積載する。
【0055】
たとえば、赤色に点灯されるLED表示パネル43が示す保管位置をオペレータが受け持つ棚であるとすると、LED表示パネル43が赤く点灯された場合に当該LED表示パネル43が示す保管位置から商品を取り出す一方、LED表示パネル43が青く点灯された場合にはLED表示パネル43が示す保管位置から商品を取り出すことはなく、他のオペレータに任される。
【0056】
上述した本発明の実施の形態であるピッキング用冷凍冷蔵倉庫2は、稼働を停止した場合に、ナイトカバー71を降ろせば、ピッキング用冷凍冷蔵倉庫2の前面開口が塞がれる。つづいて、傘体73の前面に設けてあるスイッチ74を操作して照明装置72を消灯すれば、アウターファン491が停止するとともに、設定温度を摂氏−15度にするように温度調節装置に指示を与える。
【0057】
上述した本発明の実施の形態であるピッキング用冷凍冷蔵倉庫は、クーリングコイル(冷却装置)63から送出された空気が、収納陳列領域(前方領域)4と収容搬送領域(後方領域)6との間に設けられた垂直な壁体(段差)21に衝突することにより拡散され、クーリングコイル63から送風ファン46に直接空気を送出する場合よりも、空気の流速が遅くなり、送風ファン(送風装置)46に空気が均等に供給される。このため、陳列・ピッキング部41の前面に生成されるエアカーテンの温度が均一なものとなり、冷えすぎたり、冷えなさすぎたりすることがない。また、壁体21によって画成された収納陳列領域(前方領域)4の天井裏を配管、配線スペースとすれば、常温環境で配管、配線することができ、点検、修理を容易なものにできる。
【0058】
上述した本発明の実施の形態であるピッキング用冷凍冷蔵倉庫2は、フロントパネル51の前方に漏れ冷気回収ダクト81が配設してあり、リターングリル50から回収されずにオペレータの作業領域に漏れた冷気を回収するので、オペレータの作業環境に冷気が溜まる事態を抑制でき、作業環境を向上させることができる。
【0059】
さらに、漏れ冷気回収ダクト81の前方に床暖房装置83が配設してあり、床を温めることにより、オペレータの作業環境を改善することができる。また、床暖房装置83の熱源として、インナーダクト47に配設した蒸発器(エボパレータ)471を含んで構成される冷凍サイクルまたはクーリングコイル63を含んで構成される冷凍サイクルの廃熱を用いたので、廃熱の有効利用にも資することになる。
【0060】
上述した本発明の実施の形態である陳列・ピッキング部41は、傾斜流動棚42の前面に保管位置を示すLED表示パネル43が配設され、取り出す商品が保管されている傾斜流動棚42の保管位置を明示するので、オペレータによる人為的ミスを低減することができる。また、オペレータは自らが受け持つ傾斜流動棚42であるか他のオペレータが受け持つ傾斜流動棚42であるかを容易に識別できるので、混乱を防止できる。
【0061】
また、LED表示パネル43を構成する導光板431の上端面には、前下がりとなるように傾斜面431aが設けてあるので、傾斜面431aがオペレータに正対し、オペレータの視認性を向上させている。さらに、LED表示パネル43を構成する導光板431の裏面側には、反射板あるいは白色の塗装板が配設してあるので、LED表示パネル43を点灯すると、光が反射板あるいは塗装板に反射することになり、オペレータの視認性を向上させている。
【0062】
上述した本発明の実施の形態であるピッキング用冷凍冷蔵倉庫2によれば、照明装置72を消灯すれば、アウターファン491が停止するので、照明装置72をみればアウターファン491が停止しているか否かを識別できることになる。したがって、ナイトカバー71が降ろされているにもかかわらず照明装置72が点灯している場合には、アウターファン491が駆動しているので、照明装置72を消灯させることにより、アウターファン491を停止させ、温かい空気の流入を防ぐ。このようにして空気の流入を防げば、商品への着霜を防止できる。
【0063】
また、照明装置72を消灯した場合に設定温度を摂氏−15度にするように温度調節装置に指示を与えるので、照明装置72をみれば設定温度がどの値になっているかを識別することができる。したがって、ナイトカバー71が降ろされているにもかかわらず、照明装置72が点灯している場合には、設定温度が摂氏−18度であるから、照明装置72を消灯させることにより、設定温度を摂氏−15度に設定し、冷えすぎる事態を防止する。このように、設定温度を上げれば、省エネルギーに資することになる。
【0064】
上述した本発明の実施の形態である冷凍冷蔵ピッキングシステムは、センタコンベア3を中央に配置し、その両側にピッキング用冷凍冷蔵倉庫2を配置することにより、両側に配属されたオペレータが一のセンタコンベア3を効率的に運用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態であるピッキング用冷凍冷蔵倉庫が設置された配送センタを示す側断面図である。
【図2】図1に示したピッキング用冷凍冷蔵倉庫を示す側断面図である。
【図3】図2に示したピッキング用棚装置を示す側断面図である。
【図4】図3に示した傾斜流動棚を示す斜視図である。
【図5】図4に示したLED表示パネルを示す斜視図である。
【図6】図5に示したLED表示パネルの一部を拡大した拡大斜視図である。
【図7】LED表示パネルの回路図である。
【図8】照明装置及びアウターファンを制御する制御回路の回路図である。
【図9】照明と温度設定との相関を示すタイムチャートである。
【図10】床暖房装置に温水を送る冷媒回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0066】
2 ピッキング用冷凍冷蔵倉庫
4 収納陳列領域
41 陳列・ピッキング部(棚装置)
42 傾斜流動棚
45 ダクト
46 送風ファン
47 インナーダクト
471 蒸発器
472 ハニカム
48 ミドルダクト
481 ハニカム
49 アウターダクト
491 アウターファン
492 ハニカム
50 リターングリル
51 フロントパネル
52 吸気ファン
6 収容搬送領域
61 ダクト
62 循環ファン
63 クーリングコイル
81 冷気回収ダクト
82 蓋
83 床暖房装置
84 吐出管
85 温水タンク
86 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内に据え付けられた冷却装置によって冷却された冷気を前面開口の内側上縁から下方に向けて吐出させるとともに、吐出された冷気を前面開口の内側下縁から回収するピッキング用冷凍冷蔵倉庫において、
前面開口の外側に前面開口に沿って設けられ、前面開口から漏れた冷気を回収する上面が開口した冷気回収ダクトと、
該冷気回収ダクトに沿って配設され、作業スペースの床を温める床暖房装置と
を備えたことを特徴とするピッキング用冷凍冷蔵倉庫。
【請求項2】
前記床暖房装置の熱源は、前記冷却装置の廃熱であることを特徴とする請求項1に記載のピッキング用冷凍冷蔵倉庫。
【請求項3】
冷気回収ダクトの上面開口は、格子状に形成され、冷気が通過する蓋で覆ってあることを特徴とする請求項1または2に記載のピッキング用冷凍冷蔵倉庫。
【請求項4】
前記床暖房装置は、前記冷却装置から吐出された冷媒が流れる吐出管を浸漬させる温水タンクと、温水タンクから温水を汲み上げる循環ポンプと、作業スペースの床に埋設され、循環ポンプから供給された温水を循環させる温水管とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のピッキング用冷凍冷蔵倉庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−222335(P2009−222335A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69638(P2008−69638)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】