説明

ピックル液注入インジェクタ

【課題】原料肉塊に供給されず循環するピックル液の量を従来よりも少なくすることできるピックル液注入インジェクタを提供する。
【解決手段】原料肉塊Mを搬送するベルトコンベア1と、前記原料肉塊Mに注入針2aを刺してピックル液を注入する上下動可能な注入ヘッド2とを備えたピックル液注入インジェクタにおいて、前記注入ヘッド2の上流側に離間して設けられ、前記原料肉塊Mを検知する肉塊検出センサ3と、前記肉塊検出センサ3からの出力信号Sに基づき、前記ベルトコンベア1のベルト送り回数を調整し、前記原料肉塊Mの位置を制御すると共に、前記注入ヘッド2の前記ピックル液の吐出を制御するコントロール手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックル液注入インジェクタに関し、より詳細には、肉塊検出センサを備えたピックル液注入インジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ハム、ソーセージ、ベーコン等の製品では、製品全体にわたり、均一な味であることが求められている。そこで、従来、ピックル液注入インジェクタを用いて、前記製品の原料である、豚肉、牛肉、家禽等の肉塊に、所定量のピックル液や調味料を注入している(例えば、特許文献1参照)。当該インジェクタでは、送りコンベヤの上方に、多数の注入針を有する注入ヘッドが、原料肉塊の流れ方向に間隔をおいて複数配設され、前記送りンベヤで搬送される前記原料肉塊が前記注入ヘッドの真下に到達したときに、前記コンベヤを一時停止させると共に、前記注入ヘッドを降下させて前記注入針を前記原料肉塊に刺し込み前記ピックル液を注入している。
【0003】
通常、前記原料肉塊にピックル液を注入の際には、ピックル液の温度領域は衛生上の観点等から厳密に管理される。又、前記注入ヘッドから吐出したピックル液はその全てが原料肉塊に注入されるのではなく、注入されずに無駄となるピックル液が少なからず存在する。
【0004】
例えば、前記注入ヘッドは前記インジェクタの作動と略同時にピックル液の吐出を開始するため、原料肉塊が当該ヘッドの真下に到達するまでに当該ヘッドから吐出されたピックル液は無駄になることとなる。又、原料肉塊に注入しきれずに溢れてくるピックル液もある。この無駄を最小限とするために、ピックル液注入インジェクタは原料肉塊に注入されなかったピックル液は回収及び循環し再度、原料肉塊に当該液を注入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−209693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記原料肉塊にピックル液を供給の際の当該液の循環は、当該液の温度上昇の要因となってしまうため、原料肉塊に供給されず循環するピックル液の量は可能な限り少ないことが望ましい。
【0007】
そこで、本発明は、原料肉塊に供給されず循環するピックル液の量を従来よりも少なくすることできるピックル液注入インジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原料肉塊を搬送するベルトコンベアと、前記原料肉塊に注入針を刺してピックル液を注入する上下動可能な注入ヘッドとを備えたピックル液注入インジェクタにおいて、前記注入ヘッドの上流側に離間して設けられ、前記原料肉塊を検知する肉塊検出センサと、前記肉塊検出センサからの出力信号に基づき、前記ベルトコンベアのベルト送り回数を調整し、前記原料肉塊の位置を制御すると共に、前記注入ヘッドの前記ピックル液の吐出を制御するコントロール手段とを備えることを特徴とするピックル液注入インジェクタである。
【0009】
又、本発明は、前記肉塊検出センサは、接触センサ又は非接触センサであること特徴とするピックル液注入インジェクタである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、前記原料肉塊を検知する前記肉塊検出センサの出力信号に基づき、前記ベルトコンベアの送り回数を制御することで該原料肉塊の位置を制御し、前記注入ヘッドの前記ピックル液の吐出を制御する前記制御手段を備えているため、該肉塊が該ヘッドの真下に到達するまでに、該ヘッドからピックル液が吐出することがないため、該肉塊に注入されずに循環する該液の量を少なくすることができる。尚、該センサは接触センサ又は非接触センサを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における吐出開始動作時の様子を表す図である。
【図2】本発明の実施形態における吐出停止動作時の様子を表す図である。
【図3】本発明の実施形態における制御系統を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における実施の形態を図1及び3に基づき説明する。ピックル液注入インジェクタ(図示せず)はベルトコンベア1、単数又は複数の注入ヘッド2及び肉塊検出センサ3を備える。尚、本発明において、図1及び2において右側(肉塊検出センサ3側)を上流側、左側(注入ヘッド2側)を下流側と定義する。
【0013】
又、ピックル液注入インジェクタは、後述のようにベルトコンベア1及び肉塊検出センサ3等を監視等し、ベルトコンベア1及び注出ヘッド2等の動作を制御するためコントロール手段たるマイクロコンピュータ4を更に備えている。
【0014】
ベルトコンベア1は原料肉塊Mをそのベルト1Aのベルト面1aに乗せ上流側から下流側へと搬入するためのものである。ベルトコンベア1はベルト1A及びベルト1A送るためのベルト車1Bとを備える。又、ベルトコンベア1はマイクロコンピュータ4に接続され、そのベルト送り回数をマイクロコンピュータ4によって調整されている。
【0015】
本実施の形態においては、マイクロコンピュータ4は、ベルトコンベア1のベルト送り駆動信号Sを監視することによりそのベルト送り回数C,Eを決定している。そして、マイクロコンピュータはその出力された該駆動信号Sに基づきベルト1Aの移動量を積算算出する。更に、ベルトコンベア1は、その動作がマイクロコンピュータ4によって制御される。尚、送り回数C,Eの定義については後述する(段落番号[0029]及び[0036]参照)。
【0016】
注入ヘッド2は原料肉塊Mにピックル液を注入するためのものであり、そのために尖端に穴の開いた注入針2aを備え、上下動ができるようになっている。その上下動は、注入ヘッド2が接続されるマイクロコンピュータ4によって制御されている。又、注入ヘッド2は、マイクロコンピュータ4によって制御されるポンプ5を介してピックル液貯留タンク6に接続される。そして、ポンプ5によって該貯留タンク6からピックル液が供給され、注入針2aからピックル液を吐出できるようになっている。
【0017】
従って、そのピックル液の吐出はマイクロコンピュータ6によって制御される。本実施の形態では、後述の位置P乃至位置Pの間は当該液を吐出せず、位置P乃至位置Pの間でのみ当該液を吐出するように制御される(その詳細については段落番号[0023]乃至[0036]参照)。
【0018】
肉塊検出センサ3は原料肉塊Mを検出するセンサであり、肉塊検出センサ3には、例えば、接触センサや光学センサ等のセンサを必要に応じて適宜に選択することができる。又、肉塊検出センサ3は注入ヘッド2の上流側に注入ヘッド2から離間して設けられる。尚、肉塊検出センサ3は注出ヘッド2の近傍に設けることも可能であるが、原料肉塊Mに注入されずに溢れ出たピックル液により原料肉塊Mの検出に支障が生じる可能性があるため、本実施の形態のように肉塊検出センサ3を該ピックル液の影響を受けることのない注入ヘッド2の上流側の離れた位置に設けることが望ましい。
【0019】
本実施の形態において、肉塊検出センサ3は接触センサであり、接触部3A、可動部3B及びセンサ部3Cを備える。可動部3Bは軸部3a及び被検出部3bによって構成される。軸部3aは、可動部3Bを、その軸部3aを中心に回動可能とするための部材であり、又、被検出部3bは軸部3aの外周から略半周に亘り、延在する扇状の部材である。
【0020】
接触部3Aは軸部3aに固定される2本の腕部3c,3cと、その下端を橋絡する桟部3dから構成される。桟部3d下端の初期位置Hはベルト面1aからの位置は少なくとも原料肉塊Mの厚さTよりも低い位置となるように調整されている。つまり、接触部3Aは、原料肉塊Mに桟部3dを介して接触できるようになっており、その際に原料肉塊Mによって下流側に押されるようになっている。
【0021】
そして、接触部3Aが原料肉塊Mによって下流側に押されると、接触部3Aは腕部3cを介して可動部3Bの軸部3bに固定されているため、接触部3Aと連動して軸部3aが回転する。軸部3bの回転に伴い、軸部3aから延在する被検出部3bもまた回転する。
【0022】
センサ部3Cは被検出部3bの前記回転を検出するセンサである。本実施の形態においてセンサ部3Cにはスイッチが仕込まれており被検出部3bが回転し当該スイッチを押すことによりその回転を検出する。そして、センサ部3Cは当該スイッチのON/OFFに基づく信号Sをマイクロコンピュータ4に出力をするようになっている。そのため、スイッチのONで原料肉塊Mの先端部mが、スイッチのOFFでその後端部mが夫々検出されることとなる。尚、センサ部3Cは本実施形態のような接触式に限られるものでなく、例えば、光学センサのような非接触式とすることもできる。
【0023】
次に本実施の形態における原料肉塊Mへのピックル液注入工程について説明する。下記工程の際、注入ヘッド2からのはピックル液の吐出の開始/停止及びベルトコンベア1の動作は、肉塊検出センサ3の出力に基づきマイクロコンピュータ4によって制御される。
【0024】
(1)ベルトコンベア1によって複数の原料肉塊Mが順次、マイクロコンピュータ4の制御によりベルト車1Bを回転させ、ピックル液注入インジェクタに搬入される。
【0025】
(2)先頭の原料肉塊Mが肉塊検出センサ3の接触部3Aの位置まで搬入されると先頭の原料肉塊Mの先端部mによって桟部3dが押されることにより、可動部3Bが回転し、センサ部3Cが該肉塊先端部mを検知する。
【0026】
(3)上記工程(1)及び(2)に連続してベルトコンベア1のベルト車1Bを回転させることにより、ベルト面1a上の先頭の原料肉塊Mの先端部mは注入ヘッド2の真下に移動し、該肉塊先端部mにピックル液を注入する間、一時的にベルトコンベア1を停止させる。
【0027】
(4)ピックル液の吐出開始までに、注入ヘッド2の注入針2aをその初期位置Pから吐出動作開始位置Pまで下降させる。そして、先頭の原料肉塊Mの先端部mを注入ヘッド2の真下に移動すると略同時に、ポンプ5を駆動させて注入ヘッド2にピックル液貯留タンクよりピックル液を供給し、その注入針2aからピックル液の吐出を開始させる。
【0028】
(5)そして、注入ヘッド2の注入針2aを更に液注入位置Pまで降下させ、注入針2aを先頭の原料肉塊Mの先端部mに刺し、先頭の原料肉塊Mにピックル液の注入を開始する。
【0029】
本実施の形態では、上記工程(2)乃至(5)の際、先頭の原料肉塊Mの先端部mを肉塊検出センサ3が検知し、そのセンサ部3Cからの出力信号Sをマイクロコンピュータ4が受信すると、ベルトコンベア1からの出力されたベルト送り駆動信号Sに基づき、肉塊検出センサ3から注出ヘッド2までの距離A及びベルトコンベア1のベルト送り量Bから算出された送り回数C(式[数1]を参照)の回数だけ、ベルトコンベア1のベルト車1Bを回転させ、その後、ベルトコンベア1を一時的に停止させるようになっている。ここで、ベルト送り量Bとはベルト車1Bが1回転する際のベルト1Aの移動量であり、又、距離A及びベルト送り量Bは装置毎に適宜決定される固定値である。
【数1】

【0030】
これにより先頭の原料肉塊Mの先端部mは注入ヘッド2の真下に確実に移動される。そして、迅速に該肉塊先端部mにピックル液を供給できるよう、この移動完了よりも少し前にマイクロコンピュータは信号Sを出力し、ポンプ5を作動させ注入ヘッド2にピックル液を供給する。ポンプ5の作動開始時期は装置毎に適宜決定されるものであるが、例えば、ベルト送り量B=45mm/回の場合、マイクロコンピュータ4は前記距離A−90mmの位置に該肉塊先端部mが来た時にポンプ5の作動を開始させる。
【0031】
(6)注入終了後、注入ヘッド2を位置Pまで上昇させ、注入針2aを先頭の原料肉塊Mの先端部mから抜きベルトコンベア1を再度作動させる。
【0032】
(7)そして、上記工程(5)及び(6)のように注入ヘッド2の下降及び上昇並びにベルトコンベア1の作動を繰り返し、先頭の原料肉塊M全体に亘ってピックル液を注入していく。
【0033】
(8)更に、この注入ヘッド2の下降及び上昇並びにベルトコンベア1の作動を繰り返し、ベルトコンベア1により搬入された全ての原料肉塊Mについてピックル液を注入する。
【0034】
本実施の形態では、上記工程(8)の際、マイクロコンピュータは肉塊検出センサ3のセンサ部3Cの出力信号Sに基づき、ある原料肉塊Mの後端部mと次の原料肉塊Mの先端部mとの間(即ち、センサ部3Cのスイッチが一旦OFFになってから再度ONとなるまでの間)の距離に対応する送り回数Cを算出又は計測し、その回数だけ、ベルト車1Bを回転させることで次の原料肉塊Mの先端部mもまた確実に注入ヘッド2の真下に移動させ、ベルトコンベア1がピックル液注入のため一時的に停止するようになっている。
【0035】
(9)そして、肉塊検出センサ3が原料肉塊Mを検出しなくなった後、つまり、そのセンサ部3CのスイッチがOFFになって一定時間が経過後、最後尾の原料肉塊Mの後端部mが注入ヘッド2よりも下流に到達した際、例えば、距離Dに到達した際、マイクロコンピュータ4は再度信号Sを出力し、ポンプの作動を停止し、注出針2aからのピックル液の吐出を停止させる。
【0036】
該肉塊後端部mの距離Dへの到達の判断は、上記工程(2)乃至(5)と同様に、距離D及びベルトコンベア1のベルト送り量Bから算出された送り回数Eを算出し、ベルト送り駆動信号Sに基づき判断される(式[数2]参照)。その際、注入ヘッド2の注入針2aは位置Pから位置Pを経て位置Pまで上昇する。
【数2】

【0037】
尚、本実施の形態では、原料肉塊M間の距離が短いことを想定しているため肉塊検出センサ3のセンサ部3Cのスイッチが一旦OFFになってから再度ONとなるまでの間も注出ヘッド3にピックル液は供給され続ける。即ち、先頭の原料肉塊Mの先端部mによりセンサ部3Cのスイッチが最初にONになってから、最後尾の原料肉塊Mの後端部mへのピックル液の注入を終了するまでに間、ピックル液は注入ヘッド2に供給されていることとなる。しかしながら、注出ヘッド3へのピックル液の供給を完全にセンサ部3CのスイッチのON/OFFに連動させることで循環するピックル液をより減らすことも可能である。
【0038】
従って、本実施の形態は、上記工程(1)乃至(9)のようにマイクロコンピュータ4によって注入ヘッド2からのはピックル液の吐出の開始/停止が制御されているので、特に、先頭の原料肉塊Mが注出ヘッド2の真下に到達するまでの間に原料肉塊Mに注入されないピックル液の量を最小限にすることが可能なため、原料肉塊Mに注入されず循環するピックル液の量を必要最小限にすることができる。このため、本実施の形態のピックル液注入インジェクタはピックル液の温度範囲をより容易に管理することが可能である。
【0039】
尚、本実施の形態は、ベルトコンベア1上の原料肉塊Mの位置に合わせて注入ヘッド2からのピックル液の吐出及びベルトコンベア1の動作を制御することが可能であるため、その位置(部位)によって硬さの異なる原料肉塊Mに対して、当該部位によって味に差がでないように当該部位によってピックル液の供給量を打ち分けるために応用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 ベルトコンベア 1A ベルト
1B ベルト車 1a ベルト面
2 注入ヘッド 2a 注入針
3 肉塊検出センサ 3A 接触部
3B 可動部 3C センサ部
3a 軸部 3b 被検出部
3c 腕部 3d 桟部
4 マイクロコンピュータ 5 ポンプ
6 ピックル液貯留タンク M 原料肉塊
先頭の原料肉塊 M 最後尾の原料肉塊
肉塊先端部 m 肉塊後端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料肉塊を搬送するベルトコンベアと、前記原料肉塊に注入針を刺してピックル液を注入する上下動可能な注入ヘッドとを備えたピックル液注入インジェクタにおいて、
前記注入ヘッドの上流側に離間して設けられ、前記原料肉塊を検知する肉塊検出センサと、
前記肉塊検出センサからの出力信号に基づき、前記ベルトコンベアのベルト送り回数を調整し、前記原料肉塊の位置を制御すると共に、前記注入ヘッドの前記ピックル液の吐出を制御するコントロール手段とを備えることを特徴とするピックル液注入インジェクタ。
【請求項2】
前記肉塊検出センサは、接触センサ又は非接触センサであること特徴とする請求項1に記載のピックル液注入インジェクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate