説明

ピラゾリル5−チオグリコシド化合物

【課題】選択的にSGLT1活性を阻害し、消化管からのグルコース吸収を抑制することで、IGT(耐糖能異常)をコントロールする新規なピラゾリル 5−チオ−β−D−グルコピラノシド化合物を提供する。
【解決手段】下記式(I)
【化1】


[式(I)中、Zは、C1-6アルキル基を示し、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、又はC1-6アルキル基を示し、nは1から4の整数を示し、Xは、水酸基、又は−OC1-4アルキルフェニル等を示す。]で表されるピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎臓でのグルコース再吸収に関わるナトリウム依存性グルコース供輸送体1(SGLT1)の阻害活性を有するピラゾリル 5−チオグリコシド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病に罹患すると、空腹時の血糖値は126mg/dL以上を示す。また、空腹時の血糖値が正常であっても、食事の後に140〜200mg/dLという高い血糖値を示す場合には、耐糖能異常(以下、IGT(impaired glucose tolerance)という。)と診断される。そして、このIGTの状態は、「境界型」と呼ばれ、糖尿病予備群と位置付けられている。この境界型から糖尿病の発症を遅らせることは、心血管障害のリスクを低減させると考えられ、それを示す幾つかの知見が得られている。例えば、1997年に中国で行われたDa Qing IGT and Diabetes Studyでは、ダイエットや運動を行うことでIGTから2型糖尿病への移行を有意に抑制したと報告されている(非特許文献1参照)。また、薬剤治療が有効な例として、糖の加水分解酵素を阻害し、小腸からの糖の吸収を遅延させるα−グルコシダーゼ阻害剤アカルボースを投与すると、IGTから2型糖尿病への移行を抑制し、さらに高血圧の発症も有意に抑制することが報告されている(非特許文献2参照)。
【0003】
以上のことから、糖尿病の発症を抑えるには、食事療法、運動及び薬物療法によってIGTをコントロールすることが重要である。
【0004】
ここで、小腸上皮には高い頻度でナトリウム依存性グルコース共輸送体1(SGLT1)が発現している。このSGLT1は小腸において、ナトリウムに依存し、グルコース又はガラクトースの能動輸送を司っている。そこで、SGLT1活性を阻害し、血糖値の上昇を抑制して、IGTの改善を図るピラゾール誘導体の合成例が報告されている(特許文献1〜5参照)。
【0005】
また、腎臓に高頻度で発現するSGLT2の阻害活性を有するピラゾリル 5−チオグリコシド誘導体も開示されている(特許文献6参照)。
【0006】
しかしながら、選択的にSGLT1活性を阻害するピラゾリル 5−チオグリコシド誘導体については知られていない。
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2002/098893号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO2004/014932号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO2004/018491号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO2004/019958号パンフレット
【特許文献5】国際公開第WO2005/0121161号パンフレット
【特許文献6】国際公開第WO2004/089967号パンフレット
【非特許文献1】Pan XR, et al. Diabets Care, 第20巻, 534項, 1997年
【非特許文献2】J.-L. Chiasson, et al. Lancent, 第359巻, 2072項, 2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、選択的にSGLT1活性を阻害し、消化管からのグルコース吸収を抑制することで、IGTをコントロールする新規なピラゾリル 5−チオ−β−D−グルコピラノシド化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究した結果、ある種のピラゾール誘導体を5−チオグルコシル化した化合物が、優れたSGLT1活性阻害作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(I)で表されるピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物である。
【0011】
【化1】

【0012】
式(I)中、
Zは、C1-6アルキル基を示す。
1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、又はC1-6アルキル基を示す。
nは、1から4の整数を示す。
Xは、水酸基、−OC1-4アルキルフェニル、又は−N(RA)RBを示す。
ただし、RA及びRBは、同一又は異なって、水素原子、“−CONH2で置換されたC1-6アルキル基”、−CONHRC(式中、RCは、水酸基で置換されたC1-6アルキル基を示す。)、又は−C(=NH)NHRD(式中、RDは、水素原子、又は−CO21-4アルキルフェニルを示す)を示す。
【0013】
本発明の他の態様は、前記式(I)で表されるピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とするSGLT1活性阻害剤である。
【0014】
本発明の他の態様は、前記式(I)で表されるピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病の予防又は治療剤である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、SGLT1活性を選択的に阻害する新規なピラゾリル 5−チオグルコシド化合物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明において使用する用語を以下に定義する。
【0017】
「C1-6アルキル基」とは、炭素原子を1−6個有する直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味する。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。
【0018】
「−OC1-4アルキルフェニル」とは、C1-4アルコキシ基とフェニルが複合した形態を有する基である。例えば、ベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基が挙げられる。
【0019】
「水酸基及び−CONH2の少なくとも1つで置換されたC1-6アルキル基」とは、C1-6アルキル基上の水素原子が、水酸基及び−CONH2から選択される1つ以上の基によって置換されたC1-6アルキル基を示す。例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル基、1,3−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル基、カルバモイルメチル基が挙げられる。
【0020】
「製薬学的に許容される塩」とは、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、アルキルアンモニウムなどとの塩、鉱酸又は有機酸との塩であり、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ぎ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、ラクトビオン酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アジピン酸塩、システインとの塩、N−アセチルシステインとの塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、よう化水素酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、ピクリン酸塩、チオシアン酸塩、ウンデカン酸塩、アクリル酸ポリマーとの塩、カルボキシビニルポリマーとの塩が挙げられる。
【0021】
「水和物」とは、本発明の化合物又はその塩の製薬学的に許容される水和物である。本発明の化合物又はその塩は、大気にさらされ、あるいは再結晶することなどにより、水分を吸収し、吸着水がつく場合や、水和物となる場合がある。本発明における水和物には、そのような水和物も含まれる。
【0022】
本発明の式(I)化合物の製造方法を以下に説明する。
【0023】
製造法1
本発明の式(I)化合物において、Xが水酸基、−OC1-4アルキルフェニル又はアミノ基である化合物は以下の方法で合成できる。
ただし、P1、P2、P3及びP4は、アセチル基、ピバロイル基等のC2-6アルカノイル基又はベンゾイル基を示し、その他の記号は前記と同義である。
【0024】
【化2】

【0025】
ここに、ピラゾール誘導体1は国際公開WO2004/018491号に準拠して合成することができる。5−チオグルコース誘導体2は、国際公開WO2004/014931号に準拠して合成することができる。
【0026】
(1)工程1(光延反応)
光延反応(国際公開WO2004/089966号)によって、ピラゾール誘導体1と5−チオグルコース誘導体2からピラゾリル 5−チオ−β−D−グルコシド誘導体3を選択的に製造することができる。この反応における試薬として必要なホスフィン類の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリストリルホスフィンやジフェニル−2−ピリジルホスフィン等が挙げられる。中でもトリフェニルホスフィン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィンが好ましく、トリフェニルホスフィンがより好ましい。
【0027】
アゾ試薬の例としては、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートやジ−tert−ブチルアゾジカルボキシレート、1,1'−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)や1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジンを用いることができる。中でも、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートが好ましい。
【0028】
本反応に用いる溶媒はテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等であり、好ましいのは、テトラヒドロフラン、トルエンである。
【0029】
反応温度は−20℃から室温が好ましく、−5℃から+5℃がより好ましい。
【0030】
(2)工程2(脱ベンジル化)
上記で得られた化合物3をパラジウム活性炭、水酸化パラジウム、又は白金−パラジウム活性炭等の触媒を用いて水素雰囲気下にて接触水素添加することによりベンジル基を除去することができる。中でも水酸化パラジウムが触媒として好ましい。この反応に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸等を挙げることができる。反応温度は室温から還流温度であるが、室温が好ましい。
【0031】
(3)工程3(アミノ基への変換)
上記で得られた化合物4の水酸基をアミノ基に変換し化合物5を得ることができる。まず、化合物4をトリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等の塩基の存在下、メタンスルホニルクロリドやp−トルエンスルホニルクロリドを用いて、脱離基を導入する。この反応に使用する溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は0℃から室温である。
【0032】
次に、アジ化ナトリウムを用いて、アジド基に変換することができる。この反応に使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は室温から還流温度である。
【0033】
さらに、アジド基を上記の脱ベンジル化の条件と同様な接触水素添加にてアミノ基に変換し化合物5が得られる。
【0034】
(4)工程4(P1、P2、P3及びP4の脱保護)
5−チオグルコースの保護基を適当な塩基を用いて除去し、本発明化合物(I)が得られる。この反応に使用する塩基として、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムベンジルオキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン等が挙げられる。反応に適当な溶媒はメタノール、エタノール、ベンジルアルコール、水又はこれらの混合溶媒である。反応温度は0℃から室温であり、室温が好ましい。
【0035】
製造法2
本発明の式(I)化合物において、Xが−NH−C(=NH)NHRDである化合物は以下の方法で合成できる。
ただし、記号は前記と同義である。
【0036】
【化3】

【0037】
(1)工程5(グアニジノ基の導入)
化合物5からグアニジノ化試薬6を用いて化合物7に誘導することができる。この反応に使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。反応温度は室温から還流温度である。
【0038】
(2)工程6及び工程7(脱保護)
グアニジノ基の保護基RD、ベンジルオキシカルボニル基をナトリウムベンジルオキシドで処理することで、本発明化合物(I)(X=NH−C(=NH)NHCOOBn)が得られる。さらに、ベンジルオキシカルボニル基は、製造法1の工程2に記載した脱ベンジル化と同様な方法で除去することができる。このときの好ましい触媒は水酸化パラジウムである。
【0039】
製造法3
本発明の式(I)化合物において、Xが−NHCONHRCである化合物は以下の方法で合成できる。
ただし、RCは水素原子又は水酸基で置換されてもよいC1-6アルキル基を示し、他の記号は前記と同義である。
【0040】
【化4】

【0041】
(1)工程8(ウレイド基の構築)
化合物5から適当な塩基の存在下、p−ニトロフェニルクロロホルメートやトリホスゲンを用いて、アミンRCNH2と縮合することにより、化合物8に誘導することができる。適当な塩基としては、トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、DBU、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等が挙げられる。また、使用する溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は0℃から還流温度である。
【0042】
(2)工程9(脱保護)
1、P2、P3、及びP4を製造法1の工程4に記載の方法で脱保護し、本発明化合物(I)が得られる。
【0043】
製造法4
本発明の式(I)化合物において、Xが−N(RA)RBで、RA及びRBの少なくとも一つが“水酸基、−CONH2及び−OC1-4アルキルフェニルからなる群より選択される1〜3個の基で置換されてもよいC1-6アルキル基”である化合物は以下の方法で合成できる。
ただし、L1はハロゲン原子、MeSO2O-等の脱離基を示し、その他の記号は前記と同義である。
【0044】
【化5】

【0045】
(1)工程10
化合物5を適当な塩基の存在下、RAL1又はRBL1と反応させることにより、化合物9が得られる。適当な塩基としては、トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、DBU、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等が挙げられる。また、使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。反応温度は室温から還流温度である。
【0046】
(2)工程11
化合物4から製造法1のアミノ基への変換と同様の条件で、化合物9を製造することもできる。まず、化合物4をトリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等の塩基の存在下、メタンスルホニルクロリドやp−トルエンスルホニルクロリドを用いて、脱離基を導入する。この反応に使用する溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は0℃から室温である。
【0047】
次に、トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、DBU、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等の適当な塩基の存在下、NHRABと反応させることにより化合物9が得られる。この反応に使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は室温から還流温度である。
【0048】
(3)工程12(脱保護)
1、P2、P3及びP4を製造法1の工程4に記載の方法で脱保護し、本発明化合物(I)が得られる。
【0049】
本発明の化合物は、SGLT1を選択的に阻害し、小腸からの糖の吸収を抑制して、IGTを改善することができる。
【0050】
よって、本発明の化合物は、SGLT1阻害剤、あるいは、糖尿病、糖尿病関連疾患及び糖尿病合併症の予防又は治療剤として提供されうる。
【0051】
ここで、「糖尿病」には、1型糖尿病、2型糖尿病の他、特定の原因によるその他の型の糖尿病が含まれる。
【0052】
本発明の化合物は、医薬として、全身的又は局所的に、経口投与又は非経口投与することができる。
【0053】
本発明の化合物を医薬として提供する場合、固形剤、液剤等の種々の態様の製剤形態を適宜に採択することができる。その際、製薬学的に許容される担体を配合することも可能である。そのような担体の例としては、一般的な賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、糖衣剤、pH調整剤、溶解剤又は水性若しくは非水性溶媒などが挙げられる。本発明の化合物とこれらの担体から、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤等を調製することができる。
【0054】
また、本発明の化合物を、α、β若しくはγ−シクロデキストリン又はメチル化シクロデキストリン等に包接させて、その溶解性を改善することも可能である。
【0055】
本発明の化合物の投与量は、疾患、症状、体重、年齢、性別、投与経路等により異なってくるが、成人に対し、1日当たり0.1〜1000mg/kg体重であり、0.1〜200mg/kg体重が好ましく、0.1〜10mg/kg体重がより好ましい。これを1日1回から数回に分けて投与することができる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例及び参考例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
【0057】
実施例1
4−{4−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシド(化合物11)の合成
【0058】
【化6】

【0059】
(1)4−{4−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−D−グルコピラノース(0.582g、1.60mmol)、4−{[4−(2−ベンジルオキシエトキシ)−2−メチルフェニル]メチル}−1,2−ジヒドロ−5−イソプロピル−3H−ピラゾール−3−オン(0.304g、0.799mmol;国際公開WO04/050122号を参考に4−ブロモ−3−メチルフェノールより合成)及びトリフェニルホスフィン(0.420g、1.60mmol)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液に氷冷下、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(0.809mL、1.60mmol)の40%トルエン溶液をゆっくりと滴下した。氷冷下で30分間攪拌し、室温に昇温後、さらに3時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて2回精製した後、薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1)にて精製し、無色ガム状物質として表記化合物(0.040g、7%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 1.12 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.80 (s, 3 H) 1.98 (s, 3 H) 2.02 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 2.26 (s, 3 H) 2.74 - 2.86 (m, 1 H) 3.38 - 3.59 (m, 3 H) 3.76 - 3.85 (m, 2 H) 4.05 - 4.18 (m, 3 H) 4.35 (dd, J=11.97, 4.51 Hz, 1 H) 4.63 (s, 2 H) 5.17 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.37 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.51 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.86 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.61 (dd, J=8.55, 2.49 Hz, 1 H) 6.72 (d, J=2.49 Hz, 1 H) 6.79 (d, J=8.55 Hz, 1 H) 7.21 - 7.43 (m, 5 H)
【0060】
(2)4−{4−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−{4−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.40g、0.055mmol)のメタノール(1mL)、水(1mL)溶液にトリエチルアミン(2mL)を加え室温で1時間攪拌した。反応液を減圧下留去し、得られた残渣を薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=17:3)にて精製し、白色粉末として表題化合物(0.029g、94%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 1.13 (d, J=7.38 Hz, 3 H) 1.16 (d, J=7.38 Hz, 3 H) 2.31 (s, 3 H) 2.75 - 2.91 (m, 2 H) 3.25 (t, J=8.94 Hz, 1 H) 3.51 - 3.97 (m, 8 H) 4.07 - 4.16 (m, 2 H) 4.62 (s, 2 H) 5.41 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.67 (dd, J=8.39, 2.49 Hz, 1 H) 6.76 (d, J=2.49 Hz, 1 H) 6.90 (d, J=8.39 Hz, 1 H) 7.24 - 7.43 (m, 5 H).
ESI m/z = 581 (M+Na).
【0061】
実施例2
4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシド(化合物12)の合成
【0062】
【化7】

【0063】
(1)4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド
2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−D−グルコピラノース(51.1g、70.1mmol)、4−{[4−(2−ベンジルオキシエトキシ)−2−メチルフェニル]メチル}−1,2−ジヒドロ−5−イソプロピル−3H−ピラゾール−3−オン(26.7g、70.1mmol;国際公開WO04/050122号を参考に4−ブロモ−3−メチルフェノールより合成)及びトリフェニルホスフィン(36.8g、140mmol)のテトラヒドロフラン(175mL)溶液に氷冷下、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(73.8mL、140mmol)の40%トルエン溶液をゆっくりと滴下した。氷冷下で30分間攪拌し、室温に昇温後、さらに3時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、褐色ガム状物質として粗化合物(44.5g)を得た。この粗化合物(28.4g)のメタノール(156mL)溶液に20%水酸化パラジウム−活性炭素(10.2g)を加え、水素雰囲気下、室温にて一晩攪拌した。反応液をセライト濾過後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=40:1)にて精製し、淡黄色粉末として表記化合物(9.53g、21%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.14 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.82 (s, 3 H) 1.98 (s, 3 H) 2.02 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 2.27 (s, 3 H) 2.72 - 2.89 (m, 1 H) 3.37 - 3.60 (m, 3 H) 3.89 - 3.97 (m, 2 H) 3.99 - 4.18 (m, 3 H) 4.33 (dd, J=11.89, 4.59 Hz, 1 H) 5.16 (t, J=9.71 Hz, 1 H) 5.35 (t, J=9.71 Hz, 1 H) 5.49 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.85 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.62 (dd, J=8.55, 2.64 Hz, 1 H) 6.72 (d, J=2.64 Hz, 1 H) 6.81 (d, J=8.55 Hz, 1 H).
【0064】
(2)4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.175g、0.275mmol)のメタノール(3mL)溶液にナトリウムメトキシドの25%メタノール溶液を加え室温で3時間攪拌した。反応液にドライアイスを加え、中和した後に、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=20:2:1〜15:2:1)にて精製し、白色粉末として表記化合物 (0.106g、82%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 1.12 (d, J=7.54 Hz, 3 H) 1.15 (d, J=7.54 Hz, 3 H) 2.30 (s, 3 H) 2.75 - 2.91 (m, 2 H) 3.26 (t, J=8.94 Hz, 1 H) 3.51 - 4.06 (m, 10 H) 5.42 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.67 (dd, J=8.39, 2.64 Hz, 1 H) 6.77 (d, J=2.64 Hz, 1 H) 6.90 (d, J=8.39 Hz, 1 H).
ESI m/z = 491 (M+Na).
【0065】
実施例3
4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシド(化合物13)の合成
【0066】
【化8】

【0067】
(1)4−[4−(2−アジドエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
実施例2(1)で合成した4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(8.38g、13.2mmol)、トリエチルアミン(2.8mL、20mmol)のクロロホルム(82mL)溶液に氷冷下、メタンスルホニルクロリド(1.2mL、13mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応液に0.5N塩酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和重曹水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去した。残渣をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させアジ化ナトリウムを加えて100℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、淡黄色粉末として表題化合物(6.98g、80%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.14 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.82 (s, 3 H) 1.98 (s, 3 H) 2.03 (s, 3 H) 2.06 (s, 3 H) 2.28 (s, 3 H) 2.76 - 2.89 (m, 1 H) 3.35 - 3.63 (m, 5 H) 4.05 - 4.18 (m, 3 H) 4.34 (dd, J=11.97, 4.66 Hz, 1 H) 5.15 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.36 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.50 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.85 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.61 (dd, J=8.55, 2.64 Hz, 1 H) 6.72 (d, J=2.64 Hz, 1 H) 6.81 (d, J=8.55 Hz, 1 H).
【0068】
(2)4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−[4−(2−アジドエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(6.98g、10.6mmol)のメタノール溶液に10%パラジウム−活性炭素(0.49g)を加え、水素雰囲気下、室温にて一晩攪拌した。不溶物をセライト濾過後、ろ液を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=30:1)にて精製し、淡黄色粉末として表記化合物(6.16g、91%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.13 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.81 (s, 3 H) 1.98 (s, 3 H) 2.02 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 2.27 (s, 3 H) 2.75 - 2.91 (m, 1 H) 3.05 (t, J=5.13 Hz, 2 H) 3.34 - 3.69 (m, 3 H) 3.86 - 4.20 (m, 3 H) 4.34 (dd, J=11.97, 4.66 Hz, 1 H) 5.16 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.36 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.50 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.85 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.60 (dd, J=8.39, 2.64 Hz, 1 H) 6.71 (d, J=2.64 Hz, 1 H) 6.80 (d, J=8.39 Hz, 1 H).
【0069】
(3)4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの代わりに4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドを用いて、実施例2(2)に示す方法と同様の方法で表記化合物を合成した。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 1.11 (d, J=7.15 Hz, 3 H) 1.13 (d, J=7.15 Hz, 3 H) 2.30 (s, 3 H) 2.72 - 2.89 (m, 2 H) 3.08 - 3.24 (m, 2 H) 3.24 - 3.29 (m, 1 H) 3.46 - 3.79 (m, 5 H) 3.83 - 3.92 (m, 1 H) 4.10 - 4.17 (m, 2 H) 5.36 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.69 (dd, J=8.55, 2.80 Hz, 1 H) 6.79 (d, J=2.80 Hz, 1 H) 6.90 (d, J=8.55 Hz, 1 H).
ESI m/z = 468 (M+H).
【0070】
実施例4
ベンジル [イミノ({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチル]カルバマート(化合物14)の合成
【0071】
【化9】

【0072】
(1)ジベンジル [(E)−({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチルイリデン]ビスカルバマートの合成
実施例3(2)で合成した4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.503g、0.791mmol)のテトラヒドロフラン(0.3mL)溶液にN、N´−ビス(ベンジルオキシカルボニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシアミジン(0.359g、0.949mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧下で留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、淡黄色粉末として表題化合物(0.547g、73%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.12 (d, J=1.63 Hz, 3 H) 1.15 (d, J=1.63 Hz, 3 H) 1.81 (s, 3 H) 1.97 (s, 3 H) 2.02 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 2.27 (s, 3 H) 2.74 - 2.87 (m, 1 H) 3.30 - 3.39 (m, 1 H) 3.44 - 3.61 (m, 2 H) 3.77 - 3.86 (m, 2 H) 3.99 - 4.18 (m, 3 H) 4.34 (dd, J=11.89, 4.90 Hz, 1 H) 5.07 - 5.23 (m, 5 H) 5.36 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.49 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.82 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.59 (dd, J=8.39, 2.64 Hz, 1 H) 6.71 (d, J=2.64 Hz, 1 H) 6.79 (d, J=8.39 Hz, 1 H) 7.34 (m, 10 H) 8.72 (t, J=5.28 Hz, 1 H) 11.72 (br. s., 1 H).
【0073】
(2)ベンジル [イミノ({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチル]カルバマートの合成
ジベンジル [(E)−({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチルイリデン]ビスカルバマート(0.530g、0.560mmol)のベンジルアルコール(1mL)溶液にナトリウムベンジルオキシドのベンジルアルコール溶液(1M、0.34mL、0.34mmol)を室温で加え6時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=20:2:1)にて精製し、淡茶色粉末として表記化合物(0.163g、45%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 1.11 (d, J=7.31 Hz, 3 H) 1.13 (d, J=7.31 Hz, 3 H) 2.27 (s, 3 H) 2.72 - 2.88 (m, 2 H) 3.19 (t, J=8.94 Hz, 1 H) 3.46 - 3.79 (m, 7 H) 3.82 - 3.92 (m, 1 H) 3.96 - 4.08 (m, 2 H) 5.08 (s, 2 H) 5.35 (d, J=8.70 Hz, 1 H) 6.64 (dd, J=8.47, 2.72 Hz, 1 H) 6.73 (d, J=2.72 Hz, 1 H) 6.87 (d, J=8.47 Hz, 1 H) 7.22 - 7.41 (m, 5 H).
ESI m/z = 666 (M+Na).
【0074】
実施例5
N−{2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}グアニジン(化合物15)の合成
【0075】
【化10】

【0076】
実施例4で合成したベンジル [イミノ({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチル]カルバマート(0.154g、0.239mmol)のメタノール(3mL)溶液に20%水酸化パラジウム−活性炭素(0.03g)を加え、水素雰囲気下、室温にて2時間攪拌した。不溶物をセライト濾過後、ろ液を減圧下留去し、白色粉末として表記化合物(0.108g、85%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 1.07 - 1.23 (m, 6 H) 2.31 (s, 3 H) 2.75 - 2.93 (m, 2 H) 3.20 - 3.36 (m, 2 H) 3.50 - 3.96 (m, 7 H) 4.08 (t, J=4.82 Hz, 2 H) 5.41 (d, J=8.70 Hz, 1 H) 6.68 (dd, J=8.55, 2.33 Hz, 1 H) 6.77 (d, J=2.33 Hz, 1 H) 6.92 (d, J=8.55 Hz, 1 H).
ESI m/z = 510 (M+H).
【0077】
実施例6
4−{4−[2−(N−カルバモイルメチルアミノ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシド(化合物16)の合成
【0078】
【化11】

【0079】
(1)4−{4−[2−(N−カルバモイルメチルアミノ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
実施例3(2)で合成した4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.507g、0.797mmol)のN、N−ジメチルホルムアミド(1.6mL)溶液に2−クロロアセトアミド(0.112g、1.20mmol)、トリエチルアミン(0.17mL、1.2mmol)を加え、50℃で3時間攪拌した。反応液をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=60:1)に付し、淡黄色粉末として表題化合物(0.185g、34%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.13 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.82 (s, 3 H) 1.97 (s, 3 H) 2.01 (s, 3 H) 2.03 (s, 3 H) 2.26 (s, 3 H) 2.71 - 2.89 (m, 1 H) 2.99 (t, J=4.66 Hz, 2 H) 3.30 - 3.59 (m, 5 H) 3.97 - 4.17 (m, 3 H) 4.30 (dd, J=11.97, 4.66 Hz, 1 H) 5.15 (t, J=9.64 Hz, 1 H) 5.34 (t, J=9.64 Hz, 1 H) 5.47 (t, J=8.78 Hz, 1 H) 5.84 (d, J=8.78 Hz, 1 H) 6.30 - 6.45 (m, 1 H) 6.58 (dd, J=8.39, 2.41 Hz, 1 H) 6.68 (d, J=2.41 Hz, 1 H) 6.80 (d, J=8.39 Hz, 1 H) 7.18 - 7.30 (m, 1 H).
【0080】
(2)4−{4−[2−(N−カルバモイルメチルアミノ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの代わりに4−{4−[2−(N−カルバモイルメチルアミノ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドを用いて、実施例2(2)に示す方法と同様の方法で表記化合物を合成した。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 1.14 (d, J=7.38 Hz, 3 H) 1.16 (d, J=7.38 Hz, 3 H) 2.31 (s, 3 H) 2.76 - 2.91 (m, 2 H) 3.03 (t, J=5.05 Hz, 2 H) 3.25 (t, J=9.01 Hz, 1 H) 3.42 (s, 2 H) 3.50 - 3.84 (m, 5 H) 3.87 - 3.95 (m, 1 H) 4.07 (t, J=5.13 Hz, 2 H) 5.41 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.68 (dd, J=8.39, 2.64 Hz, 1 H) 6.78 (d, J=2.49 Hz, 1 H) 6.91 (d, J=8.39 Hz, 1 H).
ESI m/z = 547 (M+Na).
【0081】
実施例7
N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−N’−{2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}ウレア(化合物17)の合成
【0082】
【化12】

【0083】
実施例3(2)で合成した4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.145g、0.228mmol)のクロロホルム(1.5mL)溶液にトリエチルミン(0.043mL、0.308mmol)、クロロギ酸 4−ニトロフェニル(0.053g、0.262mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。さらにトリエチルアミン(0.064mL、0.456mmol)と2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(0.033mL、0.342mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣にメタノール(2.3mL)とナトリウムメトキシド(25%メタノール溶液、0.20mL、0.912mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応液にドライアイスを加え、中和した後に、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=10:2:1)で精製し、白色粉末として表記化合物(0.064g、48%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) d ppm 1.14 (d, J=7.46 Hz, 3 H) 1.16 (d, J=7.46 Hz, 3 H) 1.27 (s, 6 H) 2.31 (s, 3 H) 2.77 - 2.91 (m, 2 H) 3.25 (t, J=8.94 Hz, 1 H) 3.39 - 4.05 (m, 12 H) 5.41 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.66 (dd, J=8.47, 2.56 Hz, 1 H) 6.75 (d, J=2.56 Hz, 1 H) 6.90 (d, J=8.47 Hz, 1 H).
ESI m/z = 605 (M+Na).
【0084】
実施例8
【0085】
【表1】

【0086】
製造方法
薬物を乳糖一水和物、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム及びヒドロキシプロピルセルロースと混合し、この混合物を粉砕機で粉砕する。粉砕された混合物を撹拌造粒機で1分間混合し、その後、水で4−8分間造粒する。得られた造粒物を70℃で40分間乾燥する。造粒乾燥末を500μmの篩で篩過する。篩過後の造粒乾燥末とステアリン酸マグネシウムを、V型混合機を用いて30rpm、3分間混合する。ロータリー式打錠機を用いて得られた打錠用顆粒を圧縮成形し製錠する。
【0087】
【表2】

【0088】
試験例1
(1)ヒトSGLT1とヒトSGLT2のクローニングと発現ベクターへの導入
ヒト小腸由来mRNAからヒトSGLT1配列(NM_000343)を逆転写の後増幅し、pCMV−tag5A(ストラタジーン社)に導入した。また、ヒトSGLT2配列(NM_003041)はヒト腎由来mRNAから同様な方法で調製し、pcDNA3.1+hygro(インビトロジェン社)に導入した。それぞれのクローンの配列が、報告されている配列と一致することを確認した。
【0089】
(2)ヒトSGLT1及びヒトSGLT2を安定に発現するCHO―k1細胞の作成
ヒトSGLT1及びヒトSGLT2発現ベクターを、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を用いてCHO−K1細胞へトランスフェクションした。SGLT発現細胞は、500μg/mLの濃度のジェネティシン(SGLT1)又はハイグロマイシンB(SGLT2)の存在下で培養し耐性株を選択し、下記に示す系により糖取り込み比活性を指標に取得した。
【0090】
(3)細胞におけるナトリウム依存的糖取り込み阻害試験
ヒトSGLT1又はヒトSGLT2を安定に発現する細胞をナトリウム依存的グルコース取り込み活性阻害試験に用いた。
細胞を前処理用緩衝液(140mM 塩化コリン、2mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、10mM HEPES/5mM Tris、pH7.4)1mL中で20分間インキュベーションした。前処理用緩衝液を除去し、試験化合物を含む取り込み用緩衝液([14C]メチル α−D−グルコピラノシドを含むメチル α−D−グルコピラノシド(SGLT1阻害では0.1mM、SGLT2阻害では1mM)、140mM NaCl、2mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、10mM HEPES/5mM Tris、pH7.4)を200μl加え、37℃にて30分(SGLT1)又は1時間(SGLT2)取り込み反応を行った。反応後細胞を洗浄用緩衝液(10mM メチル α−D−グルコピラノシド、140mM 塩化コリン2mM KCl、1mM CaCl2、 1mM MgCl2、10mM HEPES/5mM Tris、pH7.4)1mLで2回洗浄し、0.2M NaOH溶液400μlに溶かした。アクアゾール2(パーキンエルマー社)を加えよく混和した後、液体シンチレーションカウンター(ベックマンコールター社)で放射活性を測定した。対照群として試験化合物を含まない取り込み用緩衝液を調製した。また基礎取り込み用としてNaClに代えて塩化コリンを含む取り込み用緩衝液を調製した。
【0091】
IC50値を求めるにあたり、適当な6濃度の試験化合物を用い、対照群の糖取り込み量(100%)に対し、糖取り込み量が50%阻害される試験化合物濃度(IC50値)を算出した。試験結果を表3に示す。
【0092】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明により、小腸上皮に発現するSGLT1(ナトリウム依存性グルコース共輸送体1)を選択的に阻害し、小腸からの糖吸収を阻害することによって、IGT(耐糖能異常)を制御するピラゾリル 5−チオグリコシド化合物を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療剤を提供することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物。
【化1】

ただし、
Zは、C1-6アルキル基を示す。
1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、又はC1-6アルキル基を示す。
nは、1から4の整数を示す。
Xは、水酸基、−OC1-4アルキルフェニル、又は−N(RA)RBを示す。
ただし、
A及びRBは、同一又は異なって、水素原子、“−CONH2で置換されたC1-6アルキル基”、−CONHRC、又は−C(=NH)NHRDを示す。
ただし、
Cは、水酸基で置換されたC1-6アルキル基を示す。
Dは、水素原子、又は−CO21-4アルキルフェニルを示す。
【請求項2】
前記式(I)で表されるピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とするSGLT1活性阻害剤。
【請求項3】
前記式(I)で表されるピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病の予防又は治療剤。

【公開番号】特開2009−167103(P2009−167103A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128679(P2006−128679)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】