説明

ピラゾールカルボン酸アミドの調製のためのプロセス

本発明は、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドの調製のためのプロセスに関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドの調製のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
化合物3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドおよびその殺菌性特性は、例えば、国際公開第2007/048556号に記載される。
【0003】
3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドの調製は、国際公開第2007/048556号から既知である。該化合物は、図式1および4に従って、
a)式A
【0004】
【化1】

【0005】
の化合物を、亜硝酸アルキルの存在下で、式B
【0006】
【化2】

【0007】
(式中、R’およびR’’は、例えば、C−Cアルキルである)
の化合物と反応させて、式C
【0008】
【化3】

【0009】
の化合物にすること、
b)式Cの化合物を、好適な金属触媒の存在下で水素化して、式D
【0010】
【化4】

【0011】
の化合物にすること、
c)式Dの化合物をオゾン化すること、およびその後の還元剤での処理により、式E
【0012】
【化5】

【0013】
の化合物にすること、
d)式Eの化合物を、トリフェニルホスフィン四塩化炭素の存在下で反応させて、式F
【0014】
【化6】

【0015】
の2,9−ジクロロメチリデン−5−ニトロ−ベンゾノルボルネンにすること、
e)式Fの化合物を、金属触媒の存在下で水素化して、式G
【0016】
【化7】

【0017】
の2,9−ジクロロメチリデン−5−アミノ−ベンゾノルボルネンにすること、
f)ならびに式Gの化合物を、式H
【0018】
【化8】

【0019】
の化合物と反応させて、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドにすること、によって調製することができる。
【0020】
この先行技術のプロセスの重大な不利点は、扱いが困難であるオゾン分解反応、およびトリフェニルホスフィンの使用を必要とする高価なステップd)である。該不利点のために、このプロセスは不経済であり、特に大規模な生成に不適当である。
【発明の概要】
【0021】
したがって本発明の目的は、既知のプロセスの不利点を回避し、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドを高収率および良品質で、経済的に有利な方法で調製することを可能にする、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドの生成のための新規プロセスを提供することである。
【0022】
したがって、本発明に従って、式I
【0023】
【化9】

【0024】
の化合物の調製のためのプロセスが提供され、該プロセスは、
a)式II
【0025】
【化10】

【0026】
の化合物を、好適な有機溶媒中の触媒の存在下で、式III
【0027】
【化11】

【0028】
の化合物と反応させて、式IV
【0029】
【化12】

【0030】
の化合物にすること、
b)式IVの化合物を、金属触媒の存在下で水素化して、式V
【0031】
【化13】

【0032】
の化合物にすること、
c)式Vの化合物を、還元剤の存在下で還元して、式VI
【0033】
【化14】

【0034】
の化合物にすること、
d)式VIの化合物を、酸の存在下で脱水して、式VII
【0035】
【化15】

【0036】
の化合物にすること、
e)式VIIの化合物を、ヒドロキシルアミンと反応させて、式VIII
【0037】
【化16】

【0038】
の化合物にすること、ならびに、
f)式VIIIの化合物のオキシム酸素を、溶媒およびアシル化剤の存在下でアシル化し、得られた生成物を、式IX
【0039】
【化17】

【0040】
の化合物と最後に反応させること、または
ff)式VIIIの化合物を、過剰の式IXの化合物と反応させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0041】
反応ステップa):
式IIの化合物は、既知であり、例えば、Chemical Communications,20,1293(1971)に開示される。式IIの化合物は、例えば、シクロペンタジエンを、ルテニウム、銅、鉄、パラジウム、およびロジウム錯体から選択される金属触媒の存在下でCClと反応させて、式X
【0042】
【化18】

【0043】
の化合物にすること、および式Xの化合物を、適切な溶媒中の塩基と反応させて、式IIの化合物にすることによって調製することができる。
【0044】
式IIIの化合物は、既知であり、市販されている。
【0045】
式IVの化合物(ならびにそのエンド異性体およびエキソ異性体)は、新規であり、本発明に従ったプロセスのために特に開発され、したがって本発明のさらなる目的を構成する。
【0046】
反応ステップa)に好適な不活性有機溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、メチルシクロヘキサン、ジクロロメタン、またはクロロベンゼン、好ましくはトルエンである。反応は、触媒として、ルイス酸の存在下で有利に行うことができる。また幾つかの強力なブレンステッド酸、例えば、メタンスルホン酸、ならびに固体支持体上に固定化されたブレンステッド酸、例えば、アンバーリストを触媒として使用することができる。ルイス酸は、ブレンステッド酸よりも効率的であった。
【0047】
好適なルイス酸は、例えば、SnCl、AlCl、またはFeClである。ドナーリガンドは、収量を増加させるために、特にAlClまたはFeClが触媒として使用される場合に添加することができる。好ましいドナーリガンドは、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ニトロメタン、またはニトロベンゼンである。反応ステップa)のために好ましい触媒は、テトラヒドロフランの存在下でのAlCl(1〜100mol%の量で、好ましくは10〜20mol%の量で有利に使用される)である。テトラヒドロフランは、使用されるAlClに対して1〜3当量の量で、特に1.1当量で添加することができる。本発明の好ましい実施形態では、好ましい該触媒は、テトラヒドロフランを溶媒中(例えば、トルエン中)のAlClの懸濁液に、−10℃から60℃で、好ましくは25℃で添加することによって有利に調製することができる。AlCl/テトラヒドロフラン溶液は、溶媒中(例えば、トルエン中)の式IIおよびIIIの化合物の混合物に、−20℃から30℃、好ましくは−10℃の温度で添加することができる。AlCl/ジエチルエーテル溶液は、クロロベンゼン中の式IIおよびIIIの化合物の混合物に、−50℃から−30℃、好ましくは−35℃の温度で添加することができる。本発明の別の好ましい実施形態では、固体AlClを、式IIおよびIIIの化合物ならびにテトラヒドロフランまたはジエチルエーテルを含有する反応混合物に、上述の温度で添加することができる。
【0048】
反応ステップb):
式Vの化合物およびその異性体は、新規であり、本発明に従ったプロセスのために特に開発され、したがって本発明のさらなる目的を構成する。
【0049】
反応ステップb)に好適な不均一金属触媒は、元素の周期表の第8、9、および10族の微分散金属であり、任意に、例えば、活性炭、酸化アルミニウム、または酸化カルシウム、好ましくはPd/C、Pt/C、Rh/C、またはニッケル(ニッケル合金)スポンジ触媒(例えば、ラネーニッケル)としての固体支持上にある。Pd/C、Pt/C、およびRh/Cを用いて、水素化を、1000〜15000hPa水素圧力で、0から60℃で、好ましくは30〜35℃または周囲温度で有利に行うことができる一方で、ラネーニッケルは、より高い水素圧力、例えば、1000〜30000hPaを必要とする。好ましい触媒は、特に0.03〜0.5mol%充填による、1000〜15000hPaの水素圧力での、好ましくは2000〜5000hPaの水素圧力での、特に3000hPaの水素圧力でのRh/Cである。反応ステップb)は、溶媒の存在下で行われる。反応ステップb)に好適な有機溶媒は、アルコール、エステル、エーテル、任意に、例えば、プロパン−2−オール、ペンタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、酢酸エチルエステル、またはtert.ブチル−メチルエーテル、特にテトラヒドロフランとしての塩素化芳香族および脂肪族炭化水素である。水素化反応は、低温から高温で、好ましくは0から80℃の、より好ましくは20から60℃の温度で、特に30〜35℃で行うことができる。また、均一水素化触媒(イリジウム、ロジウム、またはルテニウム錯体、例えば、(PhP)RhCl)によって、ならびに例えば、インサイツで生成されたプロパン−2−オール、シクロヘキサジエン、またはジイミド(HN=NH)を用いる移動水素化反応によって、水素化を達成してもよい。
【0050】
反応ステップc):
式VIの化合物およびその異性体は、新規であり、本発明に従ったプロセスのために特に開発され、したがって本発明のさらなる目的を構成する。
【0051】
好適な還元剤は、例えば、金属触媒との水素、NaBH、水素化アセトキシホウ素(NaBHOAc)、LiAlH、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red−Al)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)、もしくはボラン(BH*SMe、BH*テトラヒドロフラン)、またはギ酸塩もしくはアルコールからの移動水素化である。NaBHが特に好ましい。また場合によっては、還元ステップc)は、反応ステップb)に使用される水素化触媒の存在下で行うこともできる。NaBHでの還元は、溶媒または溶媒の混合物中で、例えば、アルコール中で、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン/メタノール混合物、テトラヒドロフラン/エタノール混合物中で、好ましくはメタノール/テトラヒドロフラン中で、有利に行われる。好ましい温度は、−20から+40℃、特に0〜30℃である。また、還元剤として触媒の存在下で水素を使用することも可能である。
【0052】
反応ステップd):
反応ステップd)に好適な酸は、リン酸、ポリリン酸、濃縮HSO、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、例えば、アンバーリスト(商標)等の固定化された(高分子担体上に固定された)酸、好ましくは濃縮HSO等の、強酸である。使用される酸に応じて、反応は、10℃から150℃の温度で行うことができる。溶媒として濃縮HSOを使用するために好ましい温度範囲は、10から25℃である。濃縮HSOについて、濃縮HSOに対する出発物質の重量比は、1:0.2から1:10、好ましくは1:1以下であり、その場合、溶媒が必要とされ、好ましい温度範囲は、70〜90℃である。式VIの化合物は、固体形態で酸に添加されるか、または酸は、有機溶媒中の式VIの化合物の溶液に添加される。反応は、特に触媒量の酸が使用される場合、水の共沸蒸留によって、任意に減圧下で、支持することができる。
【0053】
反応ステップd)に好適な有機溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサンクロロベンゼン、またはジクロロベンゼン、好ましくはトルエンである。任意の排除として、この反応は、ヒドロキシルを、例えば、ハロゲン(例えば、PCl、PBr、SOClとの反応によるBr、Cl)またはスルホン酸塩(例えば、塩基の存在下でのメタンスルホニルクロリドとの反応による)等の好適な脱離基に変換することによって、続いて塩基、酸、もしくはルイス酸(例えば、KOH、NaOH NaOBu、KOBu、または例えば、ピリジン等の芳香族を含む第三級アミン)での処理によって行うことができる。
【0054】
式VIIの化合物は、次の異性体またはその混合物中で生じ得る:
【0055】
【化19】

【0056】
式VIIの具体的な異性体または異性体混合物の単離または精製は、必要でない。式VIIの化合物およびその異性体は、新規であり、本発明に従ったプロセスのために特に開発され、したがって本発明のさらなる目的を構成する。
【0057】
反応ステップe):
ヒドロキシルアミンは、水中の遊離塩基(50%溶液が市販されている)として使用するか、または例えば、塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、NaOHまたはKOH、酢酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム)での処理による塩酸塩または硫酸塩等のその塩からインサイツで生成することができる。ヒドロキシルアミンは、好ましくはその硫酸塩または塩酸塩の形態で、および式VIIの化合物に対して1から2当量、特に1.1から1.3当量の量で使用される。この反応ステップに好適な塩基は、例えば、ピリジン、トリエチルアミン等の第三級アミン、NaOHまたはKOH、酢酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムである。酢酸ナトリウムおよびNaOHが特に好ましい。塩基は、式VIIの化合物に対して1から2当量、好ましくは1〜1.5当量の量で使用される。好適な溶媒は、アルコール(好ましくは無水)、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、またはCHCN、特に無水エタノールまたは無水メタノールである。特に好ましい溶媒は、無水エタノールである。反応ステップe)は、10から40℃の温度で、好ましくは25℃または周囲温度で、有利に行うことができる。
【0058】
また、反応は、2相系(有機溶媒/水、有機溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサンである)において、50〜100℃の温度で、上述のヒドロキシルアミン源および塩基を用いて、2〜50mol%の量で使用されるカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸、2−エチルヘキサン酸)から選択される相移動触媒の存在下で行うこともできる。好ましい触媒の量は、5〜10mol%であり、好ましい温度は、80〜90℃であり、好ましい触媒は、安息香酸および2−エチルヘキサン酸である。
【0059】
塩基として酢酸ナトリウムを用いる場合、相移動触媒は、必要とされない。これはプロセスの好ましい実施形態である。
【0060】
式VIIIの化合物は、次の異性体またはその混合物中で生じ得る:
【0061】
【化20】

【0062】
式VIIIの具体的な異性体または異性体混合物の単離または精製は、必要でない。式VIIIの化合物およびその異性体は、新規であり、本発明に従ったプロセスのために特に開発され、したがって本発明のさらなる目的を構成する。
【0063】
反応ステップf):
式IXの化合物は、既知であり、市販されている。化合物は、例えば、米国第5,093,347号に開示される。
【0064】
このステップは、次の2つの化学転換からなる:オキシム酸素の、酸塩化物(例えば、塩化アセチル、塩化ピバロイル、塩化ベンゾイル、または塩化クロロアセチル)または無水酢酸等のアシル無水物、好ましくは塩化ピバロイルとの反応、続いて有利に酸(典型的にはHClまたはMeSOH、最も好ましくはHCl)の存在下での、アシル化誘導体の、1当量の式IXの化合物との反応による、式Iの化合物へのインサイツ転換。最初のアシル化ステップ(オキシムアシル化)のために、追加的当量の式IXの化合物を使用することができる。1種類のみのアシル化試薬の使用は、再利用手順に有利である。アシル化は、塩基の存在下で有利に行われる。塩基は、式IXの化合物に対して1から1.5当量の量、特に等モル量で使用される。反応ステップf)に好適な塩基は、ピリジンまたはトリエチルアミン等の第三級アミンである。トリエチルアミンが塩基として特に好ましい。反応ステップf)に好ましい反応温度は、60から120℃、特に80〜100℃、最も好ましくは85〜95℃である。好適な溶媒は、トルエン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、キシレン、クロロベンゼン、またはアセトニトリルである。最も好ましい溶媒は、ジオキサンである。
【0065】
反応ステップff)は、本発明に従ったプロセスの特に好ましい変形である:式VIIIの化合物は、過剰の式IXの化合物で直接反応させられる。式IXの化合物は、式VIIIの化合物に対して過剰で、好ましくは2から3当量、好ましくは2.1当量の量で使用される。追加的アシル化剤の使用は、この変形に必要でない。このプロセスの変形において副生成物として形成される3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸を回収し、式IXの化合物に転換することができる。この反応を行うために追加的アシル化剤は必要でないため、このプロセスの変形は、経済的に非常に有利である。このプロセスの変形は、酸の存在を必要としない。さらに、反応はまた、塩基を用いずに行うこともでき、その収量は若干減少する(3〜5%)。
【0066】
好ましいプロセスの変形は、f)式VIIIの化合物のオキシム酸素を、溶媒およびアシル化剤の存在下でアシル化し、得られた生成物を、式IXの化合物と最後に反応させることを含む。
【0067】
別の好ましいプロセスの変形は、ff)式VIIIの化合物を、過剰の2から3当量の式IXの化合物と反応させることを含む。
【0068】
本発明のプロセスの特に好ましい変形において、反応ステップa)は、触媒として、SnCl、AlCl、またはFeClの存在下で行われ、反応ステップb)のための金属触媒として、Pd/C、Pt/C、Rh/C、またはラネーニッケルが使用され、反応ステップc)における還元剤として、NaBH、水素化アセトキシホウ素(NaBHOAc)、LiAlH、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red−Al)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)、またはボラン(BHSMe、BHテトラヒドロフラン)が使用され、反応ステップd)における酸として、リン酸、ポリリン酸、濃縮HSO、メタンスルホン酸、またはp−トルエンスルホン酸が使用され、反応ステップe)において、ヒドロキシルアミンがその塩酸塩の形態で使用され、ステップff)において、式VIIIの化合物が、過剰の2から3当量の式IXの化合物と直接反応させられる。
【0069】
プロセスのこの好ましい変形の反応ステップa)は、好ましくは、触媒としてAlClまたはFeClと共に、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、およびピリジンから選択されるドナーリガンドの存在下で行われる。
【0070】
本発明のプロセスの特に好ましい変形において、反応ステップa)は、触媒として、AlClの存在下で行われ、反応ステップb)のための金属触媒として、Rh/Cが使用され、反応ステップc)における還元剤として、NaBHが使用され、反応ステップd)における酸として、濃縮HSOが使用され、反応ステップe)において、ヒドロキシルアミンがその塩酸塩の形態で使用され、反応ステップff)において、式VIIIの化合物が、過剰の2から3当量の式IXの化合物と直接反応させられる。
【0071】
式VIの化合物は、新規であり、本発明のさらなる目的を代表する。式VIの化合物は、式Xの化合物に変換することができ、それを式XIの化合物と反応させることができる。これは、次の反応図式1に示される。
【0072】
反応図式1:
【0073】
【化21】

【0074】
図式1において、Rは、メチル、tert.−ブチル、CHCl、またはフェニルである。Xが水素である式XIの化合物はまた、図式2:
【0075】
【化22】

【0076】
に示す通り、式VIIIの化合物から出発して調製することもできる。
【0077】
図式2において、Rは、メチル、tert.−ブチル、CHCl、またはフェニルである。式XIの化合物は、式Iの化合物の調製のために貴重な中間体である。式Iの化合物は、式XIの化合物の、式IXの化合物との反応によって調製することができる。また、化合物XIは、好適な溶媒(例えば、ジオキサン)中の酸の存在下で(HCl)VIIIを加熱することによって、化合物VIIIから直接(1ステップ)調製することもできる。また、この転換は、トリグリム等の高沸点溶媒中の触媒量のPd/C(0.5〜5mol%)の存在下で、VIIIを180℃で加熱することによって行うこともできる。
【実施例】
【0078】
調製実施例:
実施例P1:式IVの化合物の調製:
【0079】
【化23】

【0080】
触媒溶液:
トルエン(200g)中のAlCl(60.0g、0.45mol)の撹拌した懸濁液に、テトラヒドロフラン(46.0g、0.64mol)を、不活性大気(窒素)下で、20〜25℃で滴加した。透明の触媒の溶液を室温で保管した。
【0081】
ディールズ・アルダー環化付加反応:
ガラス製反応器に、トルエン(858g、0.479mol、8.2%)および1,4−ベンゾキノン(56.9g、0.526mol)中の6,6−ジクロロフルベンの冷溶液を充填した。不活性大気(窒素)下で撹拌しながら、反応器の含有物を−9℃まで冷却した。触媒溶液(40g、7.8g AlClを含有する)を反応器中に−9℃で、30分以内で添加し、次いで追加量の触媒溶液(10g、2.0g AlClを含有する)を60分以内で添加した。−9℃で3.5時間撹拌した後、反応混合物を、エタノール(70mL)の−9℃での滴加によって反応停止処理した。反応質量を−9℃で30分間撹拌し、濾過した。生成物を冷エタノ/トルエン混合物(2:1、360mL)で洗浄し、真空中で乾燥させた。収量102g(83%)。
H NMR(CDCl、400MHz)δ3.40(m、2H)、4.09(m、2H)、6.21(t、J=2.0Hz、2H)、6.66(s、2H)。13C NMR(CDCl、75MHz)δ47.5、49.6、103.4、134.8、142.6、147.6、196.6。
【0082】
実施例P2:式Vの化合物の調製:
【0083】
【化24】

【0084】
1L 2口フラスコに、式IVの化合物(36.6g、0.143mol)および5%−Rh/C(3.0g、0.42mol%Rh、含水量58.0%)を充填した。フラスコを排気し、窒素を2回補充し、続いてテトラヒドロフラン(600mL)を添加した。次いでテトラヒドロフランが沸騰するまで反応混合物を排気し、バルーンからの水素を2回補充した。バブルカウンターを用いて水素の消費をモニターした。反応混合物の集中的撹拌は、迅速な水素化に必須である。H NMRによって変換をモニターし、変換は7時間後に完了した。今回、水素の消費は非常に低速となった。ガラスフリット濾器を通して反応混合物を濾過した。溶解していない生成物を含有する濾過ケーキをテトラヒドロフランで数回洗浄して、それを溶解させた。組み合わせた濾液を蒸発させ、残った結晶質残渣をメタノール(150mL)と共に周囲温度で約15分間撹拌し、次いで冷浴中で冷却し、さらに15分間撹拌し、濾過し、メタノールで洗浄し、空気中で乾燥させた。収量32.7g(88%)。
H NMR(CDCl、400MHz)δ1.47−1.53(m、2H)、1.72−1.79(m、2H)、2.51−2.60(m、2H)、2.82−2.92(m、2H)、3.20(m、2H)、3.37(m、2H)。13C NMR(CDCl、100MHz)δ23.7、38.8、43.9、50.5、106.9、144.0、207.8。
【0085】
実施例P3:式VIの化合物の調製:
【0086】
【化25】

【0087】
式Vの化合物(47.3g、0.183mol)、メタノール(300mL)、およびテトラヒドロフラン(300mL)の混合物を冷浴中で0〜5℃まで冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(2.17g、0.0573mol)を1.5時間にわたって分割して添加した。反応混合物を周囲温度まで温めさせ、溶媒を回転蒸発によって除去した。残渣をメチル−tert−ブチルエーテル(1000mL)と0.5N HCl(300mL)とに分割した。有機相を分離し、濾過し、蒸発させた。残渣を真空中で乾燥させた。収量46.9g(98%、ヒドロキシルでの異性体の9:1混合物)。
H NMR(CDCl、400MHz)δ(メジャー異性体)1.58−1.72(m、3H)、1.84(bs、1H)、2.04(m、2H)、2.20−2.35(m、2H)、2.48−2.55(m、1H)、2.74(m、2H)、3.12(m、1H)、3.28(m、1H)、4.41(m、1H)。
【0088】
実施例P4:式VIIの化合物の調製:
【0089】
【化26】

【0090】
微粉末化した式VIの化合物(26.25g、0.1005mol)を、集中的に撹拌した96%硫酸(80mL)に、周囲温度で(水浴で冷却)、10分以内で添加した。反応混合物を同一の温度で30分間撹拌し、次いで氷(200g)、冷氷水(200mL)、およびメチル−tert−ブチルエーテル(250mL)の混合物中に、激しい撹拌の下に徐々に注いだ。有機相を分離し、水相をメチル−tert−ブチルエーテル(70mL)で抽出した。組み合わせた抽出物を、炭酸水素ナトリウムの3%溶液(150mL)で、次いでブライン(100mL)で洗浄した。有機相を分離し、溶媒を回転蒸発によって除去した。残渣を沸騰したヘキサン中に抽出した(100+10+10mL)。高温の溶液を、ガラスフリット濾器を通して濾過し(若干の排気)、周囲温度での結晶化のために放置した。1時間後、結晶化混合物を0℃までさらに冷却し(氷浴)、この温度で30分間維持した。形成された大きい結晶を濾過し、ヘキサン(30mL)で洗浄し、空気中で乾燥させた。母液を15mL容量まで濃縮し、さらなる収穫物を収集した。収量20.7g(85%)。
H NMR(CDCl、400MHz)δ(メジャー異性体)1.23−1.32(m、2H)、1.88−2.14(m、4H)、2.23−2.30(m、1H)、2.35−2.57(m、3H)、3.49(m、1H)、3.87(m、1H)。13C NMR(CDCl、100MHz)δ23.3、24.2、25.0、25.7、37.4、42.2、49.6、102.3、140.7、149.2、167.1、193.7。
【0091】
実施例P5−a:式VIIIの化合物の調製:
【0092】
【化27】

【0093】
式VIIの化合物(24.6g、0.101mol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(8.43g、0.121mol)、ピリジン(12.0g、0.152mol)、および無水エタノールの混合物を周囲温度で4時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(500mL)と水(500mL)とに分割した。有機相を分離し、水(500mL)で2回洗浄し、蒸発させた。残った結晶質残渣を真空中で乾燥させた。収量25.6g(99%)。
H NMR(DMSO−d6、400MHz)δ(メジャー異性体)1.17(m、1H)、1.32(m、1H)、1.67(m、2H)、1.77−1.92(m、2H)、2.14−2.31(m、3H)、2.50(m、1H)、3.36(d、J=3.4Hz、1H)、3.64(d、J=3.3Hz、1H)、10.70(s、1H)。
【0094】
実施例P5−b:式VIIIの化合物の調製(2相系において):
ガラス製反応器中、VIIの化合物(30.0g、0.123mol)、硫酸ヒドロキシルアミン(12.15g、0.074mol)、酢酸ナトリウム(12.15g、0.148mol)、トルエン(100mL)、および水15mLの混合物を85℃で3時間撹拌した。水(30mL)を反応混合物に添加し、温度を80〜85℃範囲に維持しながら、続いて水酸化ナトリウム水溶液(18.1g、0.136mol、30%)を滴加した。水相を分離し(高温)、有機相を部分的に蒸発させた(65mLのトルエンを除去した)。得られた懸濁液を−10℃まで冷却し、この温度で1時間撹拌し、濾過した。生成物を冷トルエン(20mL)で洗浄し、真空中で、60℃で乾燥させた。収量29.6g(92%、99%純生成物)。
【0095】
実施例P6:式Iの化合物の調製(反応ステップf):
【0096】
【化28】

【0097】
式VIIIの化合物(5.16g、0.02mol)、塩化ピバロイル(2.41g、0.02mol)、トリエチルアミン(2.04g、0.02mol)、およびジオキサン(80mL)の混合物を40℃で30分間撹拌した。次いでジオキサン(2mL、0.01mol、2.0M)中のHClの溶液およびDFPA−Cl(式IXの化合物)(3.89g、0.02mol)を添加した。この反応混合物を85℃で1.5時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、溶媒の主要な部分を回転蒸発によって除去し、残渣を酢酸エチル(100mL)と水(100mL)とに分割した。有機相を分離し、1N NaOH(100mL)で、次いで水(100mL)で2回洗浄し、蒸発させた。残った残渣を真空中で乾燥させた。収量6.60g(70%、定量H NMRにより85%純粋)。
【0098】
粗物質(5.00g)をキシレン(10mL)およびメチルシクロヘキサン(5mL)の混合物中に80℃で溶解させた。溶液を撹拌しながら5℃まで徐々に冷却した(氷浴)。沈殿物を濾過し、冷キシレン(1g)で洗浄し、真空中で乾燥させた。収量3.0g(50%、定量H NMRにより99%純粋)。
H NMR(CDCl、400MHz)δ1.37(m、1H)、1.49(m、1H)、2.09(m、2H)、3.90(s、3H)、3.94(m、1H)、4.07(m、1H)、6.91(t、JH−F=54.2Hz、1H)、7.02(d、J=7.3Hz、1H)、7.16(t、J=7.8Hz、1H)、7.79(d、J=8.2Hz、1H)、8.01(s、1H)、8.15(m、1H)。
【0099】
実施例P7:式Iの化合物の調製(反応ステップff):
ジオキサン(25mL)中の式VIIIの化合物(5.00g、0.0193mol)およびトリエチルアミン(1.76g、0.0174mol)の撹拌した溶液に、式IX(7.91g、0.0406mmol)の化合物を、温度を25〜35℃範囲に維持しながら15分の期間にわたって添加した。反応混合物を82°の温度まで徐々に加熱し、この温度で3時間維持した。周囲温度まで冷却した後、溶媒のほとんどを回転蒸発によって除去し、残渣をメチル−tert−ブチルエーテル(150mL)および水(35mL)で25分間撹拌した。水(10mL)中のNaOH(2.4g、0.06mol)の溶液を添加し、混合物をさらに30分間撹拌した。水相を分離し、有機相を1N NaOH(5mL)で抽出した。組み合わせた水抽出物を32%HCl(5mL、0.05mol)で酸性化し、0℃まで冷却し、得られた懸濁液をこの温度で30分間撹拌した。白色の沈殿物を濾過し、水(20mL)で洗浄し、乾燥させて、99%純DFPA酸を得た。収量3.60g(96%)。有機相を1N HCl(50mL、0.05mol)で、次いで水(50mL)で洗浄した。溶媒を回転蒸発によって徐々に除去し、残った結晶質残渣を真空中で、50℃で乾燥させた。収量7.66g(96%、95%純度)。
【0100】
この物質をメチルシクロヘキサン(50mL)と共に、還流で30分間撹拌した。懸濁液を45℃まで徐々に冷却した。結晶質物質を濾過し、メチルシクロヘキサンで洗浄し、空気中で乾燥させて、式Iの純化合物を得た。収量7.07g(92%、定量H NMRにより99%純粋)。
【0101】
式IXの化合物の純度に応じて、最終生成物は、式BおよびB
【0102】
【化29】

【0103】
の少量の副生成物を含有し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

の化合物の製造方法であって、該方法は、
a)式II
【化2】

の化合物を、好適な有機溶媒中の触媒の存在下で、式III
【化3】

の化合物と反応させて、式IV
【化4】

の化合物にすることと、
b)式IVの化合物を、金属触媒の存在下で水素化して、式V
【化5】

の化合物にすることと、
c)式Vの化合物を、還元剤の存在下で還元して、式VI
【化6】

の化合物にすることと、
d)式VIの化合物を、酸の存在下で脱水して、式VIIの化合物にすることと、
【化7】

e)式VIIの化合物を、ヒドロキシルアミンと反応させて、式VIII
【化8】

の化合物にすることと、
f)式VIIIの化合物のオキシム酸素を、溶媒およびアシル化剤の存在下でアシル化し、得られた生成物を、式IX
【化9】

の化合物と最後に反応させること、または、
ff)式VIIIの化合物を、過剰の式IXの化合物と反応させることと、
を含む、方法。
【請求項2】
f)式VIIIの化合物のオキシム酸素を、溶媒およびアシル化剤の存在下でアシル化し、得られた生成物を、式IXの化合物と最後に反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ff)式VIIIの化合物を、過剰の2から3当量の式IXの化合物と反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式IV
【化10】

の化合物およびその異性体。
【請求項5】
式V
【化11】

の化合物およびその異性体。
【請求項6】
式VI
【化12】

の化合物およびその異性体。
【請求項7】
式VII
【化13】

の化合物およびその異性体。
【請求項8】
式VIII
【化14】

の化合物およびその異性体。

【公表番号】特表2013−501016(P2013−501016A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523260(P2012−523260)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059703
【国際公開番号】WO2011/015416
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】