説明

ピレン系化合物、該化合物を用いた有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】発振波長が350〜500nmの半導体レーザ等の像露光光源で形成された有機感光体上の静電潜像を高細密に形成し、該高細密に形成された静電潜像を忠実にトナー像として再現し、印刷分野に適した高細密の電子写真画像を形成できるピレン系化合物、有機感光体、画像形成方法、画像形成装置を提供する。
【解決手段】熱質量分析において、下記式で定義される400℃の質量減少率D400が1.0%以下のピレン系化合物。 D400={(Gi−G400)/Gi}×100

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の電荷発生物質として、高感度特性を示す新規な物性を有するピレン系化合物を提供することであり、該ピレン系化合物を用いた有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置に関し、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成に用いる新規な物性を有するピレン系化合物、及び該ピレン系化合物を用いた有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷分野やカラー印刷の分野において、電子写真方式の複写機やプリンタを使用される機会が増加している。該印刷分野やカラー印刷の分野においては、高画質のデジタルのモノクロ画像或いはカラー画像を求める傾向が強い。このような要求に対し、露光光源として短波長のレーザ光を用い、高精細のデジタル画像を形成することが提案されている。しかしながら、該短波長レーザ光を用い、露光のドット径を絞り、電子写真感光体上に細密の静電潜像を形成しても、最終的に得られる電子写真画像は、十分な高画質を達成し得ていないのが現状である。
【0003】
その原因は、電子写真感光体の感光特性や現像剤のトナーの帯電特性等が細密なドット潜像の形成やトナー画像の形成に必要な特性を十分に備えていないことによる。
【0004】
即ち、電子写真感光体としては、従来の長波長レーザ用に開発された有機感光体(以後、単に感光体とも云う)では、感度特性が劣り、短波長レーザ光を用いて露光のドット径を絞った像露光を行なうと、ドット潜像が明瞭に形成されず、ドット画像の再現性が劣化しやすい。
【0005】
従来、短波長レーザ用感光体の電荷発生物質としては、アンスアンスロン系顔料やピランスロン系化合物が知られている(特許文献1)。しかし、該特許文献に記載されたアンスアンスロン系顔料等の多環キノン系顔料等は、単に、何ら特別の処理をされている記載はなく、単に市販の顔料を用いているものと思われるが、これらの市販の顔料をもちいた場合に得られる感度等の特性は、今後、開発が期待される短波長のレーザを用いた高速のプリンターや複写機では、十分な感度や高速性が得られていない。
【0006】
又、多環キノン系顔料を高感度化するために、昇華精製を施すことも知られている(特許文献2)。しかし、該特許文献に記載された昇華精製法は、単純な1回限りの昇華精製法であり、この昇華精製で得られる顔料も、尚、短波長のレーザを用いた高速のプリンターや複写機では、十分な感度や高速性が得られていない。
【0007】
そこで、本願発明者等は、多環キノン系顔料に似た環構造の化合物で、しかも短波長側で、比較的感度の高い公知のピレン系化合物(特許文献3)を電荷発生物質として用い、短波長レーザ用感光体を試作したが、該特許文献に記載された合成法で得られたピレン系化合物の電荷発生物質では、尚、短波長のレーザを用いた高速のプリンターや複写機では、十分な感度や高速性が得られていない。
【特許文献1】特開2000−47408号公報
【特許文献2】特開昭57−67934号公報
【特許文献3】特開平5−301876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされた。本発明の目的は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの像露光を用いて有機感光体上に高密度の静電潜像を形成し、感度や繰り返し特性、或いは、ドット再現性の劣化等が改善された有機感光体に用いる新規な物性を有するピレン系化合物を提供することであり、該ピレン系化合物を用いた有機感光体、画像形成方法、画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々は上記問題点について検討を重ねた結果、本発明の課題は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの像露光を用いて有機感光体上に高密度の静電潜像を形成し、感度や残留電位の特性、或いは、ドット再現性等が改善された電子写真画像を形成するためには、短波長のレーザ光等に対し、感度特性が改善された新規な物性を有するピレン系化合物を有機感光体の電荷発生物質として用いることが有効であることを見出し、本発明を完成した。即ち、短波長レーザ光の露光光で発生しやすい上記課題に対しては、下記に記すような熱質量特性を示すピレン系化合物を用いることが、効果的であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は以下のような構成のピレン系化合物、有機感光体を用いることにより達成される。
(1)熱質量分析において、下記式で定義される400℃の質量減少率D400が1.0%以下で、且つ下記一般式(1)〜(3)の化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とするピレン系化合物。
【0011】
D400={(Gi−G400)/Gi}×100
但し、Giは測定開始時の質量であり、G400は400℃での質量である。
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(1)〜(3)中、Xは置換又は無置換の2価の芳香族基或いは複素環基を表し、Rは置換又は無置換の1価の芳香族基或いは複素環基を表す。)
(2)多段昇華精製により得られることを特徴とする前記1に記載のピレン系化合物。
(3)分別昇華精製により得られることを特徴とする前記1に記載のピレン系化合物。
(4)高沸点有機溶媒中で加熱処理して得られることを特徴とする前記1に記載のピレン系化合物。
(5)アシッドペースト処理により得られることを特徴とする前記1に記載のピレン系化合物。
(6)導電性支持体上に感光層を有する有機感光体において、感光層が、下記式で定義される400℃の質量減少率D400が1.0%以下であり、且つ一般式(1)〜(3)の少なくとも1つのピレン系化合物を含有することを特徴とする有機感光体。
【0014】
D400={(Gi−G400)/Gi}×100
但し、Giは測定開始時の質量であり、G400は400℃での質量である。
【0015】
【化2】

【0016】
(一般式(1)〜(3)中、Xは置換又は無置換の2価の芳香族基或いは複素環基を表し、Rは置換又は無置換の1価の芳香族基或いは複素環基を表す。)
(7)有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記式で定義される400℃の質量減少率D400が、1.0%以下であり、且つ下記一般式(1)〜(3)の少なくとも1つのピレン系化合物を含有することを特徴とする画像形成方法。
【0017】
D400={(Gi−G400)/Gi}×100
但し、Giは測定開始時の質量であり、G400は400℃での質量である。
【0018】
【化3】

【0019】
(一般式(1)〜(3)中、Xは置換又は無置換の2価の芳香族基或いは複素環基を表し、Rは置換又は無置換の1価の芳香族基或いは複素環基を表す。)
(8)有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光手段を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像手段を有する画像形成装置において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記式で定義される400℃の質量減少率D400が、1%以下であり、且つ下記一般式(1)〜(3)の少なくとも1つのピレン系化合物を含有することを特徴とする画像形成装置。
【0020】
D400={(Gi−G400)/Gi}×100
但し、Giは測定開始時の質量であり、G400は400℃での質量である。
【0021】
【化4】

【0022】
(一般式(1)〜(3)中、Xは置換又は無置換の2価の芳香族基或いは複素環基を表し、Rは置換又は無置換の1価の芳香族基或いは複素環基を表す。)
【発明の効果】
【0023】
本願発明のピレン系化合物を含有する有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置を用いることにより、短波長レーザ光等を用いた電子写真画像形成方式において、単位露光量に対する電位減衰値が大きく且つ繰り返し特性も良好であり、小径のドット潜像をシャープに形成することができ、ドット再現性が改善された電子写真画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の有機感光体について、詳細に説明する。
【0025】
本発明のピレン系化合物は、熱質量分析において、前記式で定義される400℃の質量減少率D400が、1.0%以下で、且つ前記一般式(1)〜(3)の化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とする。
【0026】
本願発明は前記のような熱質量特性を有するピレン系化合物を有機感光体の電荷発生物質として用いることにより、短波長レーザ光等を用いた電子写真画像形成方式において、高細密のドット画像を形成することができ、単位露光量に対する電位減衰値が大きく且つ繰り返し特性も良好であり、小径のドット潜像をシャープに形成することができ、ドット再現性が改善された電子写真画像を形成することができる。
【0027】
以下、本願発明の構成要件について、詳細に記載する。
【0028】
本願発明のピレン系化合物は、熱質量分析において、下記式で定義される400℃の質量減少率D400が、1.0%以下である。
【0029】
D400={(Gi−G400)/Gi}×100
但し、Giは測定開始時の質量であり、G400は400℃での質量である。
【0030】
該質量減少率D400は、ピレン系化合物を室温から400℃に昇温した際に生じる質量減少率であり、この測定は以下のような条件で測定できる。
【0031】
「示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200」(セイコーインスツルメンツ(株)社製)により、約5mgの試料を100ml/minの窒素気流下毎分10℃の速度で昇温するようにして加熱し、測定開始時(室温)から400℃に昇温した際に生じる質量減少率を測定する。
【0032】
前記一般式(1)〜(3)のピレン系化合物においては、上記の温度範囲の質量減少率は、ピレン系化合物の昇華点近くで揮発する不純物成分の量を示しているものと思われ、このような不純物成分が多量にピレン系化合物の顔料中に含有されていると、顔料中に不純物準位が、多量に発生し、感光体の感度や、繰り返し特性を劣化させるものと思われる。
【0033】
本発明に係わる有機感光体は、上記のような、1.0質量%以下の質量減少率のピレン系化合物を電荷発生物質として含有する。即ち、ピレン系化合物の電荷発生物質としては、前記一般式(1)〜一般式(3)のピレン系化合物の少なくとも1種を含有する。
【0034】
前記一般式(1)〜一般式(3)中、Xとしては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、ピリジン環、アントラキノン環などが挙げられ、特に好ましいものはベンゼン環、ナフタレン環である。X上の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、アシロキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。2つのXは同一でも異なっていてもよい。Rとしては、置換、無置換のフェニル基、ナフタレニル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基などが挙げられ、特に好ましいものは置換、無置換のフェニル基、ナフタレニル基である。R上の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、アシロキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。2つのRは同一でも異なっていてもよい。
【0035】
これらの化合物は、波長が350〜500nmの露光光源に対し、単位露光量に対する電位減衰値が大きく、小径のドット潜像をシャープに形成することができる。
【0036】
一般式(1)〜一般式(3)で表されるピレン系化合物は、下記一般式(6)で表されるピレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物誘導体と一般式(7)で表されるジアミノ化合物の脱水縮合反応により製造される。
【0037】
【化5】

【0038】
(一般式(6)中、Rは一般式(1)〜一般式(3)におけると同一である。一般式(7)中、Xは一般式(1)〜一般式(3)におけると同一である。)
又、一般式(1)〜一般式(3)で表されるピレン系化合物は、それぞれが互いに構造異性体の化合物であり、上記縮合反応において生成する化合物は、これら構造異性体の混合物として生成し得るが、これらは単離することなく使用しても本発明の効果を良好に発揮できる。以下に記す一般式(1)〜一般式(3)の具体例においては、それぞれの化合物で構造異性体を取り得ることを前提としている。又、後述する実施例においては、構造異性体の混合物をそのまま用いて、有機感光体を作製している。
【0039】
一般式(1)〜一般式(3)のピレン系化合物の具体例を下記に例示する。
【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
次に、上記例示化合物の合成例を記載する。
【0047】
合成例1(CGM−1)
3,8−ジフェニルピレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物2.5g(0.005モル)、o−フェニレンジアミン1.6g(0.015モル)、無水塩化亜鉛0.1g(0.001モル)を、キノリン50ml中2時間加熱還流し、析出した結晶を濾取した。アセトン、メタノールで洗浄した後乾燥し、2.8g(88%)の例示化合物CGM−1を得た。
【0048】
次に、上記合成例1で得られた、ピレン系化合物(顔料)を用いて、本発明に係わる質量減少率が1.0%以下のピレン系化合物に精製する方法について、以下a〜d(ピレン系化合物の精製処理a〜d)で具体的に記載する。
【0049】
a.多段昇華精製により得られるピレン系化合物
多段昇華精製とは、2段階以上の昇華工程を含むものである。最初の段階は、顔料の昇華温度よりわずかに高い温度で、有効量、例えば約1〜10質量%の昇華物を第1基体上に凝縮させる。引き続き、第2段階では昇華温度を10〜100℃の範囲で上げ、昇華物を第2基体上に凝縮させることにより、揮発性不純物や分解不純物を含まない高純度の顔料を得ることができる。場合によっては、3段階以上の工程を含んでも良い。
【0050】
精製例1(多段昇華精製の具体例)
合成例1で得られたピレン系化合物(CGM−1)5gをるつぼに入れ、昇華装置のチャンバを約10-3〜10-4Torrに減圧した後、るつぼの温度を420℃にて上げて10分間維持し、加熱を止めた。るつぼが200℃以下になった時チャンバ内を大気圧にし、コレクタ基体から昇華物0.5g(第1段の昇華CGM−1)を集めた。次いで、昇華装置のチャンバを約10-3〜10-4Torrに減圧した後、るつぼの温度を450℃にて2時間加熱した。冷却後コレクタ基体に付着した昇華物4.2gのピレン系化合物(第2段の昇華CGM−1)を得た。該CGM−1の質量減少率は0.5%であった。
【0051】
b.分別昇華精製により得られるピレン系化合物
分別昇華精製とは、まず顔料を第1位置で温度T1に加熱して顔料及びそれに含まれる揮発性不純物の蒸発を行い、次いでT1より低い温度T2に保った第2位置にて顔料蒸気を凝縮させ、続いてT2より低い温度T3に保った第3位置にて揮発性不純物の蒸気を凝縮させることによって行う。非昇華性不純物は出発物質をおいた第1位置に残存し、揮発性不純物からも分離した精製顔料が得られる。本発明の分別昇華法は、トレイン昇華のような公知の精製方法を含む。
【0052】
精製例2(分別昇華精製の具体例)
合成例1で得られたピレン系化合物(CGM−1)5gをパイレックス(登録商標)ガラスチューブに入れ、このチューブを、チューブの長さに沿って約480℃〜約20℃の温度勾配(1mの長さで、約480℃〜約20℃の温度勾配をつけた)を生ずる炉の内側に置いた。ガラスチューブ内を約10-3〜10-4Torrに減圧し、精製すべきピレン系顔料が置かれた位置を約480℃に加熱した。生成した蒸気をチューブの低温側に移動、凝縮させ、約300〜420℃の間の領域に凝縮した昇華物4.4gのピレン系化合物(CGM−1)を得た。該CGM−1の質量減少率は0.24%であった。
【0053】
c.高沸点溶媒中で加熱処理して得られるピレン系化合物
高沸点溶媒中で加熱処理とは、未精製顔料を沸点150℃以上の高沸点溶媒中で加熱することにより再結晶または洗浄し、高沸点溶媒に対する溶解性の高い不純物を除去することである。本発明において好ましい高沸点溶媒としては、o−ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、ニトロベンゼン、キノリン、スルホラン等が挙げられる。
【0054】
精製例3(高沸点溶媒中で加熱処理の具体例)
合成例1で得られたピレン系化合物(CGM−1)5gをるつぼに入れ、昇華装置のチャンバを約10-3〜10-4Torrに減圧した後、るつぼの温度を450℃に上げて2時間加熱した。冷却後チャンバ内を大気圧にし、コレクタ基体に付着した昇華物4.5gを得た。次いで、該昇華物1.0gをキノリン100mlに懸濁させ、200℃にて1時間加熱した後濾過し、アセトン、次いでメタノールにて洗浄し、乾燥させて、精製したCGM−1を得た。該CGM−1の質量減少率は0.51%であった。
【0055】
d.アシッドペースト処理により得られるピレン系化合物
アシッドペースト処理とは、顔料を硫酸、クロロ硫酸、トリフルオロ酢酸等の強い酸に溶かして水に注いで微粒子化すると同時に水溶性無機不純物の除去処理及び顔料粒子のアモルファス化を促進する処理であり、フタロシアニン顔料ではよく用いられる処理技術である。本発明のピレン化合物のアシッドペースト処理には、トリフルオロ酢酸を用いて処理するのが好ましい。
【0056】
アシッドペースト処理された顔料は微細な粒子のため、その後の水洗浄後も濾過された結晶は水を通常、顔料質量の5〜10倍質量含み、ウェットケーキ又は含水ペースト状で得られるが、これを乾燥して、目的の顔料が得られる。
【0057】
精製例4(アシッドペースト処理の具体例)
合成例1で得られたピレン系化合物(CGM−1)5gをるつぼに入れ、昇華装置のチャンバを約10-3〜10-4Torrに減圧した後、るつぼの温度を450℃に上げて2時間加熱した。冷却後チャンバ内を大気圧にし、コレクタ基体に付着した昇華物4.5gを得た。次いで、該昇華物1.0gをトリフルオロ酢酸30mlに溶解し、これを水500mlに滴下した。沈殿した顔料をろ過し、200mlの水に懸濁させて洗浄した。洗浄液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗を繰り返し、得られたウェットケーキを乾燥し、精製したCGM−1を得た。該CGM−1の質量減少率は0.76%であった。
【0058】
本発明に係わる有機感光体は、前記一般式(1)の電荷発生物質を含有する有機感光体であるが、これらの電荷発生物質を含有する有機感光体の構成について以下に記載する。
【0059】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0060】
本発明の有機感光体の構成は、本発明に係わる前記一般式(1)の化合物を含有する限り特に制限されるものではなく、例えば、以下に示すような構成が挙げられる;
1)導電性支持体上に感光層として電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した構成;
2)導電性支持体上に感光層として電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層を順次積層した構成;
3)導電性支持体上に感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層を形成した構成;
4)導電性支持体上に感光層として電荷輸送層および電荷発生層を順次積層した構成;
5)上記1)〜5)の感光体の感光層上にさらに表面保護層を形成した構成。
【0061】
感光体が上記いずれの構成を有する場合であってもよい。感光体の表面層とは、感光体が空気界面と接触する層であり、導電性支持体上に単層式の感光層のみが形成されている場合は当該感光層が表面層であり、導電性支持体上に単層式または積層式感光層と表面保護層とが積層されている場合は表面保護層が最表面層である。本発明では上記2)の構成が最も好ましく用いられる。尚、本発明の感光体はいずれの構成を有する場合であっても、導電性支持体上、感光層の形成に先だって、下引層(中間層)が形成されていてもよい。
【0062】
電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを有機感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味し、該電荷輸送機能の具体的な検出は、電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検知することにより確認することができる。
【0063】
次に、有機感光体の層構成を上記1)の構成を中心にして記載する。
【0064】
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0065】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0066】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。本発明の導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。該アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
【0067】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、中間層を設けることが好ましい。
【0068】
本発明に用いられる中間層にはN型半導性粒子を含有することが好ましい。該N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子を意味する。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
【0069】
N型半導性粒子としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)が好ましく、特に酸化チタンが特に好ましく用いられる。
【0070】
N型半導性粒子は数平均一次粒径が3.0〜200nmの範囲の微粒子を用いる。特に、5nm〜100nmが好ましい。数平均一次粒径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径が3.0nm未満のN型半導性粒子は中間層バインダー中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残電上昇が発生しやすい。一方、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は中間層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸を通してドット画像が劣化しやすい。又、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすく、その結果、ドット画像が劣化しやすい。
【0071】
前記酸化チタン粒子は、結晶形としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形等があるが、中でもルチル形酸化チタン顔料又はアナターゼ形酸化チタン顔料は、中間層を通過する電荷の整流性を高め、即ち、電子の移動性を高め、帯電電位を安定させ、残留電位の増大を防止すると共に、ドット画像の劣化を防止することができ、本発明のN型半導性粒子として最も好ましい。
【0072】
N型半導性粒子はメチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体で表面処理されたものが好ましい。該メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体の分子量は1000〜20000のものが表面処理効果が高く、その結果、N型半導性粒子の整流性を高め、このN型半導性粒子を含有する中間層を用いることにより、黒ポチ発生が防止され、又、良好なドット画像の再現性に効果がある。
【0073】
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体とは−(HSi(CH3)O)−の構造単位とこれ以外の構造単位(他のシロキサン単位のこと)の共重合体が好ましい。他のシロキサン単位としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジエチルシロキサン単位等が好ましく、特にジメチルシロキサンが好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の割合は10〜99モル%、好ましくは20〜90モル%である。
【0074】
メチルハイドロジェンシロキサン共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいがランダム共重合体及びブロック共重合体が好ましい。又、共重合成分としてはメチルハイドロジェンシロキサン以外に、一成分でも二成分以上でもよい。
【0075】
本発明に用いられる中間層を形成するために作製する中間層塗布液は前記表面処理酸化チタン等のN型半導性粒子の他にバインダー樹脂、分散溶媒等から構成される。
【0076】
N型半導性粒子の中間層中での比率は、中間層のバインダー樹脂との体積比(バインダー樹脂の体積を1とすると)で1.0〜2.0倍が好ましい。中間層中でこのような高密度で本発明のN型半導性粒子を用いることにより、中間層の整流性が高まり、膜厚を厚くしても残留電位の上昇やドット画像の劣化を効果的に防止でき、良好な有機感光体を形成することができる。又、このような中間層はバインダー樹脂100体積部に対し、N型半導性粒子を100〜200体積部を用いることが好ましい。
【0077】
一方、これらの粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂が好ましいが、特に以下に示すポリアミド樹脂が好ましい。
【0078】
中間層のバインダー樹脂としてはアルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。有機感光体の中間層のバインダー樹脂としては、中間層を均一な膜厚で形成するために、溶媒溶解性の優れた樹脂が必要とされている。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂としては、前記した6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂が知られているが、これ意外にも下記のようなポリアミドも好ましく用いることができる。
【0079】
【化12】

【0080】
又、上記ポリアミド樹脂の分子量は数平均分子量で5,000〜80,000が好ましく、10,000〜60,000がより好ましい。数平均分子量が5,000以下だと中間層の膜厚の均一性が劣化し、本発明の効果が十分に発揮されにくい。一方、80,000より大きいと、樹脂の溶媒溶解性が低下しやすく、中間層中に凝集樹脂が発生しやすく、黒ポチの発生やドット画像の劣化を起こしやすい。
【0081】
上記ポリアミド樹脂はその一部が既に市販されており、例えばダイセル・デグサ(株)社製のベスタメルトX1010、X4685等の商品名で販売されて、一般的なポリアミドの合成法で作製することができるが、以下に合成例の一例を挙げる。
【0082】
上記ポリアミド樹脂を溶解し、塗布液を作製する溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。これらの溶媒は全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、更には50〜100質量%が好ましい。前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0083】
本発明の中間層の膜厚は0.3〜10μmが好ましい。中間層の膜厚が0.5μm未満では、黒ポチラが発生しやすく、ドット画像の劣化を起こしやすい。10μmを超えると、残留電位の上昇が発生しやすく、ドット画像が劣化しやすい。中間層の膜厚は0.5〜5μmがより好ましい。
【0084】
又、上記中間層は実質的に絶縁層であることが好ましい。ここで絶縁層とは、体積抵抗が1×108以上である。本発明の中間層及び保護層の体積抵抗は1×108〜1015Ω・cmが好ましく、1×109〜1014Ω・cmがより好ましく、更に好ましくは、2×109〜1×1013Ω・cmである。体積抵抗は下記のようにして測定できる。
【0085】
測定条件;JIS:C2318−1975に準ずる。
【0086】
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:30±2℃、80±5RH%
体積抵抗が1×108未満では中間層の電荷ブロッキング性が低下し、黒ポチの発生が増大し、有機感光体の電位保持性も劣化し、良好な画質が得られない。一方1015Ω・cmより大きいと繰り返し画像形成で残留電位が増大しやすく、良好な画質が得られない。
【0087】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。
【0088】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0089】
電荷発生層
本発明の有機感光体には、電荷発生物質として350nm〜500nmの波長領域に高感度特性を有する前記した電荷発生物質を用いる。この電荷発生物質以外に、必要により、他の電荷発生物質を併用してもよい。併用する顔料としてはアゾ顔料、ペリレン顔料、多感キノン顔料等が挙げられる。
【0090】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3μm〜2μmが好ましい。
【0091】
電荷輸送層
本発明では電荷輸送層を複数の電荷輸送層から構成し、且つ最上層の電荷輸送層に本発明の無機微粒子を含有させた構成を用いてもよい。
【0092】
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により前記した無機微粒子の他に酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0093】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることが好ましい。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。特に、像露光のレーザ光の波長を吸収しない電荷輸送物質が好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる電荷輸送物質としては、下記のような化合物が挙げられる。
【0094】
【化13】

【0095】
電荷輸送物質(CTM)としては、公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0096】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0097】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
【0098】
電荷輸送層の合計膜厚は、10〜30μmが好ましい。該合計膜厚が10μm未満では、現像時の潜像電位を十分に獲得しにくく、画像濃度の低下やドット再現性の劣化が発生しやすく、又、30μmを超えると、電荷キャリアの拡散(電荷発生層で発生した電荷キャリアの拡散)が大きくなり、ドット再現性が劣化しやすい。また、電荷輸送層を複層で形成した場合、表面層となる電荷輸送層の膜厚は1.0〜8.0μmが好ましい。
【0099】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の地球環境に優しい溶媒が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0100】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、スライドホッパー型塗布装置の他に、浸漬塗布、スプレー塗布等の塗布加工法が用いられる。
【0101】
上記塗布液供給型の塗布装置の中でもスライドホッパー型塗布装置を用いた塗布加方法は、前記した低沸点溶媒を用いた分散液を塗布液として用いる場合に最も適しており、円筒状の感光体の場合は特開昭58−189061号公報等に詳細に記載されている円形スライドホッパー型塗布装置等を用いて塗布することが好ましい。
【0102】
又、本発明に係わる感光体の表面層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。表面層は感光体の帯電時の活性ガス、例えばNOxやオゾン等で酸化されやすく、画像ボケが発生しやすいが、酸化防止剤を共存させることにより、画像ボケの発生を防止することが出来る。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。
【0103】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0104】
次に、本発明に係わる有機感光体を用いた画像形成装置について説明する。
【0105】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0106】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0107】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0108】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0109】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光徐電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0110】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0111】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードを像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜50μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0112】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e2以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0113】
用いられる光ビームとしては半導体レーザを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e2以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0114】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0115】
本発明の有機感光体上に形成された静電潜像は現像によりトナー像として顕像化される。現像に用いられるトナーは、粉砕トナーでも、重合トナーでもよいが、本発明に係わるトナーとしては、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
【0116】
重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0117】
なお、トナーの体積平均粒径、即ち、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってドット画像の再現性が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0118】
本発明に係わるトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0119】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0120】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0121】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0122】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0123】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25によって転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送されながら転写紙Pに転写され、該転写紙Pは感光体21面より分離し、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0124】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0125】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0126】
更に、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0127】
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
【0128】
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0129】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0130】
図2は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0131】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0132】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0133】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0134】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0135】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0136】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0137】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザ光学系などが用いられる。
【0138】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0139】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0140】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0141】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0142】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0143】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0144】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0145】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0146】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0147】
次に図3は本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置(少なくとも有機感光体の周辺に帯電手段、露光手段、複数の現像手段、転写手段、クリーニング手段及び中間転写体を有する複写機あるいはレーザビームプリンタ)の構成断面図である。ベルト状の中間転写体70は中程度の抵抗の弾性体を使用している。
【0148】
1は像形成体として繰り返し使用される回転ドラム型の感光体であり、矢示の反時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0149】
感光体1は回転過程で、帯電手段(帯電工程)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段(像露光工程)3により画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のカラー画像のイエロー(Y)の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0150】
次いで、その静電潜像がイエロー(Y)の現像手段:現像工程(イエロー色現像器)4Yにより第1色であるイエロートナーにより現像される。この時第2〜第4の現像手段(マゼンタ色現像器、シアン色現像器、ブラック色現像器)4M、4C、4Bkの各現像器は作動オフになっていて感光体1には作用せず、上記第1色目のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0151】
中間転写体70はローラ79a、79b、79c、79d、79eで張架されて時計方向に感光体1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0152】
感光体1上に形成担持された上記第1色目のイエロートナー画像が、感光体1と中間転写体70とのニップ部を通過する過程で、一次転写ローラ5aから中間転写体70に印加される一次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体70の外周面に順次中間転写(一次転写)されていく。
【0153】
中間転写体70に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光体1の表面は、クリーニング装置6aにより清掃される。
【0154】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のクロ(ブラック)トナー画像が順次中間転写体70上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した重ね合わせカラートナー画像が形成される。
【0155】
二次転写ローラ5bで、二次転写対向ローラ79bに対応し平行に軸受させて中間転写体70の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0156】
感光体1から中間転写体70への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための一次転写バイアスはトナーとは逆極性で、バイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜+2kVの範囲である。
【0157】
感光体1から中間転写体70への第1〜第3色のトナー画像の一次転写工程において、二次転写ローラ5b及び中間転写体クリーニング手段6bは中間転写体70から離間することも可能である。
【0158】
ベルト状の中間転写体70上に転写された重ね合わせカラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、二次転写ローラ5bが中間転写体70のベルトに当接されると共に、対の給紙レジストローラ23から転写紙ガイドを通って、中間転写体70のベルトに二次転写ローラ5bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。二次転写バイアスがバイアス電源から二次転写ローラ5bに印加される。この二次転写バイアスにより中間転写体70から第2の画像担持体である転写材Pへ重ね合わせカラートナー画像が転写(二次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着手段24へ導入され加熱定着される。
【0159】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0160】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
(実施例1)
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
【0161】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、十点表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を用意した。
〈中間層〉
中間層1
上記導電性支持体上に、下記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚1.0μmの中間層1を形成した。
【0162】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
【0163】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(例示ポリアミドN−1) 1部(1.00体積部)
N型半導性粒子:ルチル形酸化チタンA1(一次粒径35nm;メチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンの共重合体(モル比1:1)を用い、酸化チタン全質量の5質量%の量で表面処理したもの) 3.5部(1.0体積部)
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比)10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
【0164】
〈電荷発生層:CGL〉
電荷発生物質(CGM):前記多段昇華精製のCGM−1(質量減少率0.5%)
24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0165】
〈電荷輸送層(CTL)〉
電荷輸送物質(CTM):下記CTM−1 225部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(下記AO) 6部
THF/トルエン混合液(体積比3/1混合) 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚20.0μmの電荷輸送層1を形成し、感光体1を作製した。
【0166】
【化14】

【0167】
感光体2〜5の作製
CGM−1を表1に記載のCGMに変更した以外は、全く同様の多段昇華精製(精製例1)を行い、その後、感光体1のCGM−1をそれぞれのCGMに変更した以外は同様にし、感光体2〜5を作製した。
【0168】
感光体6の作製
感光体1の作製において、CGM−1を精製例1の第1段の昇華CGM−1に変更した以外は同様にし、感光体6を作製した。
【0169】
感光体7の作製
感光体1の作製において、CGM−1を合成後(合成例1)、精製せずに、そのまま用いた以外は、同様にして、感光体7を作製した。
【0170】
《評価1》
このようにして作成した電子写真感光体を、静電複写紙試験装置(川口電機製:EPA−8100)を用いて、以下のように評価した。
【0171】
(感度)
感光体の表面電位を−700Vになるようにコロナ帯電器で帯電し、次いでモノクロメータで分離した400nmの単色光で露光し、表面電位が−350Vまで減衰するのに必要な光量を測定し、感度(E1/2)を求めた。
【0172】
同様に、450nm、500nmの単色光における感度を測定した。
【0173】
(繰り返し特性)
次に初期暗部電位(Vd)及び初期明部電位(Vl)をそれぞれ−700V、−200V付近に設定し、450nmの単色光を用いて帯電、露光を3000回繰り返し、Vd、Vlの変動量(ΔVd、ΔVl)を測定した。
【0174】
以上の結果を表1に示す。
【0175】
尚、以下表中のマイナス記号は電位の低下を表し、プラス記号は電位の上昇を表す。
【0176】
(画像評価)
評価機として、基本的に図1の構成を有するコニカ社製デジタル複写機Konica7085改造機(像露光光源に450nmの半導体レーザを使用、ビーム径30μmで、1200dpiの露光を行い、プロセス速度は500mm/secに改造)を用い、該複写機に感光体1〜9を搭載し評価した。評価項目と評価基準を下記に示す。
【0177】
1ドットラインの評価
白地のA4紙に1ドットラインと黒べた画像を作製し、下記の基準で評価した。
【0178】
◎:1ドットラインが連続して再現されており、黒べたの画像濃度が1.2以上(良好)
○:1ドットラインは連続して再現されているが、黒べたの画像濃度が1.2未満〜1.0以上(実用性に問題なし)
×:1ドットラインが切断されて再現されているか、又は1ドットラインが連続して再現されていても、黒べたの画像濃度が1.0未満(実用性に問題有り)
2ドットラインの評価
べた黒の画像の中に、2ドットラインの白線を作製し、下記の基準で評価した。
【0179】
◎:2ドットラインの白線が連続して再現されており、黒べたの画像濃度が1.2以上(良好)
○:2ドットラインの白線は連続して再現されているが、黒べたの画像濃度が1.2未満〜1.0以上(実用性に問題なし)
×:2ドットラインの白線が切断されて再現されているか、又は2ドットラインの白線は連続して再現されていても、黒べたの画像濃度が1.0未満(実用性に問題有り)
上記のべた画像濃度は、マクベス社製RD−918を使用して測定。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した。結果は表1に示した。
【0180】
【表1】

【0181】
表1より明らかなように、一般式(1)のピレン系化合物で、多段昇華精製の電荷発生物質を用いた有機感光体1〜5は、短波長レーザ光等の400〜500nmの照射光に対して、優れた感度特性及び繰り返し特性を有し、450nmの短波長レーザ光を用いての画像評価においても1ドットライン及び2ドットラインの再現性が優れている。一方、比較例の1段昇華精製の電荷発生物質に用いた感光体6及び精製なしの電荷発生物質を用いた感光体7は、感度及び繰り返し特性の評価においても、本発明の感光体1〜5に比し相対的に劣っており、画像評価においても、感光体6は1ドットラインの再現性の劣化が大きく、感光体7は1ドットライン及び2ドットラインの再現性の劣化が大きい。
【0182】
感光体11〜16の作製
感光体1のCGMの多段昇華精製を表2に記載の分別昇華精製に変更し、質量減少率を表2に記載の例示化合物に変更した以外は感光体1と同様にし、感光体11〜16を作製した。但し、感光体12に用いたCGM−1の精製条件は精製例2の温度勾配の長さを1mから0.5mに変更した(温度勾配は約480℃〜約20℃で同じ)。
【0183】
《評価2》
感光体11〜16を感光体1と同様に評価1で行った評価を行った。結果を表2に示す。
【0184】
【表2】

【0185】
表2より明らかなように、一般式(1)のピレン系化合物で、分別昇華精製の電荷発生物質を用いた有機感光体11〜16は、短波長レーザ光等の400〜500nmの照射光に対して、優れた感度特性及び繰り返し特性を有し、450nmの短波長レーザ光を用いての画像評価においても1ドットライン及び2ドットラインの再現性が優れている。
【0186】
感光体21〜28の作製
感光体1のCGMの多段昇華精製を表3に記載の高沸点溶媒中で加熱処理に変更し(溶媒と加熱条件を表3に示した)、質量減少率を表3に記載の例示化合物に変更した以外は感光体1と同様にし、感光体21〜28を作製した。
【0187】
《評価3》
感光体21〜28を感光体1と同様に評価1で行った評価を行った。結果を表3に示す。
【0188】
【表3】

【0189】
表3より明らかなように、一般式(1)のピレン系化合物で、高沸点溶媒中の加熱処理を行なった電荷発生物質を用いた有機感光体21〜27は、短波長レーザ光等の400〜500nmの照射光に対して、優れた感度特性及び繰り返し特性を有し、450nmの短波長レーザ光を用いての画像評価においても1ドットライン及び2ドットラインの再現性が優れている。一方、比較例のトルエン中での加熱処理の電荷発生物質に用いた感光体28は、感度及び繰り返し特性の評価においても、1ドットライン及び2ドットラインの再現性においても、本発明の感光体21〜27に比し相対的に劣っている。
【0190】
感光体31〜35の作製
感光体1のCGM−1の多段昇華精製を表4に記載のアシッドペースト処理に変更し(精製条件は全て精製例4に同じ)、質量減少率を表4に記載の例示化合物に変更した以外は感光体1と同様にし、感光体31〜35を作製した。
【0191】
《評価4》
感光体31〜35を感光体1と同様に評価1で行った評価を行った。結果を表4に示す。
【0192】
【表4】

【0193】
表4より明らかなように、一般式(1)のピレン系化合物で、アシッドペースト処理の電荷発生物質を用いた有機感光体31〜35は、短波長レーザ光等の400〜500nmの照射光に対して、優れた感度特性及び繰り返し特性を有し、450nmの短波長レーザ光を用いての画像評価においても1ドットライン及び2ドットラインの再現性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図3】本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置の構成断面図である。
【符号の説明】
【0195】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱質量分析において、下記式で定義される400℃の質量減少率D400が1.0%以下で、且つ下記一般式(1)〜(3)の化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とするピレン系化合物。
D400={(Gi−G400)/Gi}×100
但し、Giは測定開始時の質量であり、G400は400℃での質量である。
【化1】

(一般式(1)〜(3)中、Xは置換又は無置換の2価の芳香族基或いは複素環基を表し、Rは置換又は無置換の1価の芳香族基或いは複素環基を表す。)
【請求項2】
多段昇華精製により得られることを特徴とする請求項1に記載のピレン系化合物。
【請求項3】
分別昇華精製により得られることを特徴とする請求項1に記載のピレン系化合物。
【請求項4】
高沸点有機溶媒中で加熱処理して得られることを特徴とする請求項1に記載のピレン系化合物。
【請求項5】
アシッドペースト処理により得られることを特徴とする請求項1に記載のピレン系化合物。
【請求項6】
導電性支持体上に感光層を有する有機感光体において、感光層が、下記式で定義される400℃の質量減少率D400が1.0%以下であり、且つ一般式(1)〜(3)の少なくとも1つのピレン系化合物を含有することを特徴とする有機感光体。
D400={(Gi−G400)/Gi}×100
但し、Giは測定開始時の質量であり、G400は400℃での質量である。
【化2】

(一般式(1)〜(3)中、Xは置換又は無置換の2価の芳香族基或いは複素環基を表し、Rは置換又は無置換の1価の芳香族基或いは複素環基を表す。)
【請求項7】
有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記式で定義される400℃の質量減少率D400が、1.0%以下であり、且つ下記一般式(1)〜(3)の少なくとも1つのピレン系化合物を含有することを特徴とする画像形成方法。
D400={(Gi−G400)/Gi}×100
但し、Giは測定開始時の質量であり、G400は400℃での質量である。
【化3】

(一般式(1)〜(3)中、Xは置換又は無置換の2価の芳香族基或いは複素環基を表し、Rは置換又は無置換の1価の芳香族基或いは複素環基を表す。)
【請求項8】
有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光手段を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像手段を有する画像形成装置において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記式で定義される400℃の質量減少率D400が、1%以下であり、且つ下記一般式(1)〜(3)の少なくとも1つのピレン系化合物を含有することを特徴とする画像形成装置。
D400={(Gi−G400)/Gi}×100
但し、Giは測定開始時の質量であり、G400は400℃での質量である。
【化4】

(一般式(1)〜(3)中、Xは置換又は無置換の2価の芳香族基或いは複素環基を表し、Rは置換又は無置換の1価の芳香族基或いは複素環基を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−127294(P2008−127294A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311232(P2006−311232)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】