説明

ピロメリット酸の製造方法

【課題】 本発明は、石油化学製品として安価に得られるキシレン等から環境にやさしく高収率でピロメリット酸を工業的に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 1,2,4,5−置換アルキルベンゼン誘導体を、酸化触媒を用いて酸素酸化するピロメリット酸の製造方法において、置換基の1〜3個がアセトキシメチル基あるいはヒドロキシメチル基であるアルキルベンゼン誘導体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族アルキルベンゼン誘導体を酸素酸化することによるピロメリット酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,2,4,5−位にカルボキシル基を有するベンゼンテトラカルボン酸であるピロメリット酸は、各種縮合性高分子の基本要素として工業的に重要な化合物である。
【0003】
従来、ピロメリット酸の製造方法としては、(1)テトラアルキルベンゼンの接触気相酸化法によるもの(特許文献1、特許文献2)、(2)テトラアルキルベンゼンの液相酸化法によるもの(特許文献3)、(3)トリメチルベンズアルデヒドの液相酸化法によるもの(特許文献4、特許文献5)が主なものとしてあげられる。
(4)プソイドクメンをクロロメチル化し、次いで5−ヒドロキシメチルプソイドクメンを合成したのち硝酸酸化によるもの(特許文献6)もある。
その際の硝酸酸化法としては、古くからアルキルベンゼン誘導体をクロロメチル化した後、硝酸を使用する方法などが知られている(特許文献7、非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、上記(1)乃至(4)記載の方法は、反応に使用する触媒あるいは酸化剤が危険であること、原料が高価であること等、ピロメリット酸を工業的に高収率で、且つ安全に製造するという点においては、未だ不十分なものであった。
【0005】
例えば、上記(1)の方法では、原料として使用するデュレンは石油中に微量含まれるものであるが、その分離が困難である。
更に、気相で反応を行う為には原料の完全酸化が避けられず、選択率および収率が低いという問題も存し、触媒寿命が短いという欠点もある。
上記(2)の方法は、上記(1)の方法を液相で行うものであるが、触媒活性が低い為、高濃度の酸化触媒を使用しなければならず、また活性を向上させるために酸素加圧下で行うことが不可欠であるといった問題を有している。
上記(3)及び(4)の方法は、原料のデュレンやプソイドクメンの入手及びその取り扱いが困難であり、毒性が高いHF−BFや硝酸を触媒若しくは反応物として用いなければならない。
更に、廃棄物として生成するホウ素化合物の処理が困難であるという問題を有するとともに、硝酸のように強い酸化剤を高温で使用しなければならない等、工業的に多くの課題を有している。
【0006】
【特許文献1】特公平04−15020号公報
【特許文献2】特開平08−41067号公報
【特許文献3】特開昭61−27942号公報
【特許文献4】特開昭57−38745号公報
【特許文献5】特開平08−41067号公報
【特許文献6】特公昭54−14097号公報
【特許文献7】スイス特許第216693号
【非特許文献1】ユーエスエスアール キミケスカヤ プロミシェレノスト(USSR.Khimicheskaya Promyshlennost)、1968年、44巻8号563〜567
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は石油化学製品として安価に得られるキシレンやトルエン等から環境にやさしく安全かつ高収率でピロメリット酸を工業的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示すピロメリット酸の製造方法が提供される。
即ち、請求項1は、1,2,4,5−置換アルキルベンゼン誘導体を酸素酸化するピロメリット酸の製造方法において、該アルキルベンゼン誘導体の置換基の1〜3個がアセトキシメチル基及び/又はヒドロキシメチル基であるアルキルベンゼン誘導体を用いることを特徴とするピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項2は、重金属の化合物から構成される酸化触媒を用いて酸素酸化することを特徴とする請求項1に記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項3は、前記重金属の化合物が遷移金属の化合物、ランタノイド金属の化合物及び周期律表のVA族に属する金属の化合物からなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項4は、前記遷移金属が、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、白金、銅、亜鉛の群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項5は、前記ランタノイド金属がスカンジウム、イッテルビウム、ランタン、セリウムの群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項6は、前記周期律表のVA族に属する金属がアンチモン及び/又はビスマスであることを特徴とする請求項3に記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項7は、前記酸化触媒に、アルカリ金属やアルカリ土類金属から構成される触媒を含むことを特徴とする請求項2乃至6いずれかに記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項8は、前記アルカリ金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項9は、前記アルカリ土類金属が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項10は、有機溶媒の存在下で酸化反応を行うことを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
請求項11は、前記有機溶媒が、炭素数2〜6の有機カルボン酸であることを特徴とする請求項10に記載のピロメリット酸の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環境にやさしく安全かつ高収率でピロメリット酸を工業的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のピロメリット酸の製造方法について詳しく説明する。
【0011】
本発明においては、大量に入手できるキシレンなどをハロメチル化することにより容易に合成できる1,2,4,5−置換ベンゼン誘導体(アルキル基:A個、ハロメチル基:B個、A+B=4)のハロメチル基をアセトキシメチル基またはヒドロキシメチル基に置換し、メチル基をカルボキシル基に、アセトキシメチル基またはヒドロキシメチル基をカルボキシル基に酸化することにより、ピロメリット酸を製造する。
即ち、1,2,4,5−置換アルキルベンゼン誘導体の置換基の1〜3個がアセトキシメチル基及び/又はヒドロキシメチル基であるアルキルベンゼン誘導体において、メチル基をカルボキシル基に、アセトキシメチル基またはヒドロキシメチル基をカルボキシル基に酸化することにより、ピロメリット酸を製造する。
【0012】
かかる方法によれば、従来法のデュレンまたはプソイドクメン等を用いる方法に比べ、高収率でピロメリット酸を製造できる。
しかも、毒性があり取り扱いの難しいHF−BF等の触媒を用いることもなく、かつハロゲン化水素ガスが発生しないことから、環境にもやさしい方法でピロメリット酸を製造することができる。
【0013】
上記1,2,4,5−置換アルキルベンゼン誘導体としては、次式1(化1)に示される1,2,4−トリス(アセトキシメチル)−5−メチルベンゼン、次式2(化2)の(1)に示される1,2−ビス(アセトキシメチル)−4,5−ジメチルベンゼン、次式2の(2)に示される1,4−ビス(アセトキシメチル)−2,5−ジメチルベンゼン、次式2の(3)に示される1,5−ビス(アセトキシメチル)−2,4−ジメチルベンゼン、次式3(化3)の(1)に示される1,2−ビス(アセトキシメチル)−4−ヒドロキシメチル−5−メチルベンゼン、次式3の(2)に示される1,4−ビス(アセトキシメチル)−2−ヒドロキシメチル−5−メチルベンゼン、次式3の(3)に示される1,3−ビス(アセトキシメチル)−4−ヒドロキシメチル−6−メチルベンゼン、次式4(化4)に示される1−アセトキシメチル−2,4,5−トリメチルベンゼン、次式5(化5)の(1)に示される1−アセトキシメチル−2−ヒドロキシメチル−4,5−ジメチルベンゼン、次式5の(2)に示される1−アセトキシメチル−4−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンゼン、次式5の(3)に示される1−アセトキシメチル−3−ヒドロキシメチル−4,6−ジメチルベンゼン、次式6(化6)の(1)に示される1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−4−アセトキシメチル−5−メチルベンゼン、次式6の(2)に示される1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−2−アセトキシメチル−5−メチルベンゼン、次式6の(3)に示される1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4−アセトキシメチル−6−メチルベンゼン、次式7(化7)に示される1−ヒドロキシメチル−2,4,5−トリメチルベンゼン、次式8(化8)の(1)に示される1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−4,5−ジメチルベンゼン、次式8の(2)に示される1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジメチルベンゼン、次式8の(3)に示される1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4,6−ジメチルベンゼン、次式9(化9)に示される1,2,4−トリス(ヒドロキシメチル)−5−メチルベンゼンなどを用いることができる。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
【化9】

【0023】
上記1,2,4,5−置換アルキルベンゼン誘導体の内、特にアセトキシメチル化ベンゼン誘導体としては、(化2)に示される1,5−ビス(アセトキシメチル)−2,4−ジメチルベンゼン、1,4−ビス(アセトキシメチル)−2,5−ジメチルベンゼン、1,2−ビス(アセトキシメチル)−4,5−ジメチルベンゼン等の中から選択されるものを用いることが好ましい。
【0024】
上記1,2,4,5−置換アルキルベンゼン誘導体の内、特にヒドロキシメチル化ベンゼン誘導体としては、(化8)に示される1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4,6−ジメチルベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジメチルベンゼン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−4,5−ジメチルベンゼン等の中から選択されるものを用いることが好ましい。
【0025】
かかるベンゼン誘導体(以下、「原料」と称する場合がある)は、それぞれo−キシレン、m−キシレン、p−ジエチルベンゼンをハロメチル化したのちにアセトキシメチル化あるいはヒドロキシメチル化することにより、容易に製造することができる。
但し、本発明で用いられる原料は前述の方法により製造されたアセトキシメチル化ベンゼン誘導体やヒドロキシメチル化ベンゼン誘導体に限定されるものではない。
例えば、トルエンやエチルベンゼンから得られるハロメチル化ベンゼンの誘導体をアセトキシメチル化あるいはヒドロキシメチル化したベンゼンの誘導体も好ましく用いることができる。
【0026】
ハロメチル基を有するアルキルベンゼン誘導体は、たとえば、キシレン誘導体をトリフルオロメタンスルホン酸の金属塩触媒の存在下でクロロメチル化することによって容易に得ることができる。
具体的には、スカンジウム、イッテルビウム、サマリウムなどのトリフラート塩触媒の存在下で、ホルムアルデヒド重合物と塩酸を用いるクロロメチル化反応を水−有機溶媒2相系で行うことにより得ることができる。
【0027】
アセトキシメチル基を有するアルキルベンゼン誘導体は、たとえば、ハロメチル基を有するアルキルベンゼン誘導体を、酢酸ナトリウム等の酢酸塩と相関移動触媒の存在下、水−有機溶媒2相系において、ハロメチル基をアセトキシメチル基に置換することにより得ることができる。
【0028】
ヒドロキシメチル基を有するアルキルベンゼン誘導体は、たとえば、アセトキシメチル基を有するアルキルベンゼン誘導体のアセトキシメチル基をアルカリの存在下で加水分解することにより、容易に得ることができる。
但し、本発明は前述の製造方法に限定されるものではない。
【0029】
以下、本発明において、アルキル基、アセトキシメチル基及びヒドロキシメチル基をカルボキシル基に酸化する際、好ましく用いられる酸化反応について説明する。
【0030】
本発明における酸化反応は、液相で触媒を用い、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
この理由は、液相酸化反応は反応熱を抑制することができ、効率よく酸化反応を行うことができるからである。
【0031】
使用する触媒としては、重金属の化合物から構成される触媒を用いることが好ましい。
重金属の化合物から構成される触媒としては、遷移金属の化合物、ランタノイド金属の化合物及び周期律表のVA族に属する金属の化合物からなる群より選択される一種以上であることがより好ましい。
【0032】
遷移金属としては、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、白金、銅、亜鉛の群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
ランタノイド金属としては、スカンジウム、イッテルビウム、ランタン、セリウムの群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
周期律表のVA族に属する金属としては、アンチモン及び/又はビスマスから選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0033】
これらの触媒は、複数の金属の相乗作用により活性を増大させることが可能であり、高効率で酸化反応が進行する。
【0034】
これらの重金属の化合物は、例えば、有機酸塩(酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩等)、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水和物等であっても良い。
【0035】
本発明においては、遷移金属の化合物またはランタノイド金属の化合物から選ばれた少なくとも1種を触媒として使用することが好ましいが、複合触媒として用いた方がより反応活性に優れるので特に好ましい。
即ち、遷移金属の化合物及び/又はランタノイド金属の化合物から選ばれる2種類以上の金属の化合物からなる複合触媒を用いることが特に好ましい。
【0036】
複合触媒中における重金属組成比(モル比)は、一の遷移金属又はランタノイド金属1に対して、その他の遷移金属及び/又はランタノイド金属が、好ましくは0.01〜1.0、より好ましくは0.05〜0.5、更に好ましくは0.02〜0.5である。
この理由は、モル比が0.01未満の場合は反応増大効果が小さいため、1.0を超える場合は反応速度の増大は期待できるが副反応が増大し収率が低下するため、いずれの場合も好ましくないからである。
【0037】
原料に対する重金属の化合物中の重金属のモル比は、原料1に対して、好ましくは0.001〜1.0、より好ましくは0.01〜0.5である。
この理由は、重金属のモル比が0.001未満の場合は、反応増大効果が小さく、1.0を超える場合は、反応速度は速くなるが触媒量が多くなりすぎるので、いずれの場合も好ましくないからである。
【0038】
これらの遷移金属、ランタノイド金属、または周期律表のVA族に属する金属の化合物は、例えば、有機酸塩(酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等)、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水和物等であっても良い。
【0039】
前記触媒の活性を高めるために、アルカリ金属の化合物及び/又はアルカリ土類金属の化合物から構成される触媒を添加しても良い。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの群から選ばれた1種以上の金属種であることが好ましい。
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム群から選ばれた1種以上の金属種であることが好ましい。
【0040】
原料に対するアルカリ金属化合物若しくはアルカリ土類金属化合物中の金属のモル比は、原料1に対し、0.0005〜0.5が適切であるが、より好ましくは0.1〜0.4である。
この理由は、原料に対する金属のモル比が、0.0005未満の場合は選択率に与える効果が小さく、0.5を超える場合は反応速度が低下する恐れがあり、いずれの場合も好ましくないからである。
【0041】
アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物は、例えば、有機酸塩(酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩等)、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水和物等であってもよい。
【0042】
本発明で使用する触媒(助触媒を加える場合も含む)の使用量は、特に限定されるものではなく、触媒の種類によって大きく異なるが、通常原料に対し、0.01〜100重量%未満である。
より好ましくは0.1〜50重量%である。
この理由は、触媒の使用量が0.01重量%未満の場合は、反応速度が遅くなり、100重量%を超える場合は、反応速度は速くなるが触媒量が多くなりすぎるので、いずれの場合も好ましくないからである。
【0043】
本発明における酸化反応は、有機溶媒の存在下で行われることが好ましい。
その理由は、反応時の発熱を抑制するためである。
この有機溶媒としては、炭素数2〜6のカルボン酸が挙げられる。
これらの内、好ましく使用されるのは、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の比較的炭素数が少ないカルボン酸である。
原料に対する有機溶媒の重量比は、原料1に対して、好ましくは1〜100、より好ましくは5〜80とする。
その理由は、重量比が1未満の場合は触媒と原料の接触が充分でなく、100を超えても原料の濃度が薄くなり反応速度が遅くなる為、いずれの場合も好ましくないからである。
【0044】
本発明は、反応速度を上げる為、酸素加圧下で行うことが望ましい。
酸素圧としては1〜200気圧が好ましく、より好ましくは20〜100気圧である。
この理由は、酸素圧が1気圧未満の場合は、反応速度を改善する効果が期待できないからであり、200気圧を超える場合は、安全性の確保が課題であり、反応速度の制御が困難になるおそれがあり、いずれの場合も好ましくないからである。
【0045】
反応温度は、使用するアセトキシメチル基あるいはヒドロキシメチル基が置換された芳香族アルキルベンゼン誘導体の種類、溶媒の種類や触媒の種類、量により異なるが、通常高温下で行う必要がある。
具体的には、反応温度は100〜350℃、より好ましくは、180〜280℃である。
この理由は、反応温度が100℃未満の場合は反応が進行しにくく、350℃を超える場合は原料或いは生成物の酸化反応により収率の低下が起こり、いずれの場合も好ましくないからである。
【0046】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明する。
但し、本発明は実施例および比較例に限定されるものではない。
【0047】
〔実施例1〕
120ml撹拌式オートクレーブに100mlのガラス製内筒を入れ、ガラス製内筒に1,4−ビス(アセトキシメチル)−2,5−ジメチルベンゼン1.10g(4.39mmol)、臭化コバルト(II)273mg(1.25mmol)、臭化マンガン(II)27mg(0.13mmol)、酢酸40mlを加え、200℃、酸素加圧下(1.0〜1.50MPa)でかきまぜながら20時間反応させた。
反応後は室温まで冷却し、常圧に戻したあと、反応液中の不溶物をろ別し、HPLCで分析した。
ピロメリット酸の収率は70%であった。
実施例1の結果を表1に示す。
【0048】
〔実施例2〕
反応時間を7時間に変更したほかは、実施例1と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は55%であった。
実施例2の結果を表1に示す。
【0049】
〔実施例3〕
酸素加圧を2.0〜2.15MPaに変更した他は実施例1と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は74%であった。
実施例3の結果を表1に示す。
【0050】
〔実施例4〕
実施例1の臭化マンガン(II)を塩化バナジウム(III)20mg(0.13mmol)に変更したほかは、実施例1と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は70%であった。
実施例4の結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
〔実施例5〕
120ml撹拌式オートクレーブに100mlのガラス製内筒を入れ、ガラス製内筒に1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジメチルベンゼン732mg(4.40mmol)、臭化コバルト(II)273mg(1.25mmol)、臭化マンガン(II)27mg(0.13mmol)、酢酸40mlを加え、200℃、酸素加圧下(1.0〜1.50MPa)でかきまぜながら20時間反応させた。
反応後は室温まで冷却し、常圧に戻したあと、反応液中の不溶物をろ別し、HPLCで分析した。
ピロメリット酸の収率は74%であった。
実施例5の結果を表2に示す。
【0053】
〔実施例6〕
実施例5の臭化マンガン(II)を塩化バナジウム(III)20mg(0.13mmol)に変更したほかは、実施例5と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は69%であった。
実施例6の結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
〔実施例7〕
実施例1の臭化マンガン(II)をオキシ塩化ジルコニウム(IV)・8水和物92mg(0.29mmol)に変更したほかは、実施例1と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は72%であった。
実施例7の結果を表3に示す。
【0056】
〔実施例8〕
実施例1の臭化マンガン(II)を塩化タングステン(IV)41mg(0.13mmol)に変更したほかは、実施例1と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は65%であった。
実施例8の結果を表3に示す。
【0057】
〔実施例9〕
実施例1の触媒を塩化コバルト(II)205mg(1.58mmol)と塩化銅(II)17mg(0.13mmol)と水酸化マグネシウム(II)2mg(0.03mmol)に変更したほかは、実施例1と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は70%であった。
実施例9の結果を表3に示す。
【0058】
〔実施例10〕
実施例1の触媒を酢酸マンガン(II)・4水和物387mg(1.58mmol)と塩化バナジウム(III)83mg(0.53mmol)に変更したほかは、実施例1と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は69%であった。
実施例10の結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
〔実施例11〕
実施例5の臭化マンガン(II)をオキシ塩化ジルコニウム(IV)・8水和物92mg(0.29mmol)と臭化ナトリウム3mg(0.03mmol)に変更したほかは、実施例5と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は75%であった。
実施例11の結果を表4に示す。
【0061】
〔実施例12〕
実施例5の臭化マンガン(II)を塩化モリブデン(V)27mg(0.10mmol)と塩化スカンジウム(III)・6水和物5mg(0.02mmol)に変更したほかは、実施例5と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は71%であった。
実施例12の結果を表4に示す。
【0062】
〔実施例13〕
実施例5の触媒を塩化コバルト(II)205mg(1.58mmol)と塩化ニッケル(II)52mg(0.40mmol)と水酸化マグネシウム(II)2mg(0.03mmol)に変更したほかは、実施例5と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は69%であった。
実施例13の結果を表4に示す。
【0063】
〔実施例14〕
実施例5の触媒を酢酸マンガン(II)・4水和物387mg(1.58mmol)と臭化コバルト(II)65mg(0.30mmol)と塩化白金(II)3mg(0.01mmol)に変更したほかは、実施例5と同様に反応させた。
ピロメリット酸の収率は73%であった。
実施例14の結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
〔比較例1〕
1,4−ビス(アセトキシメチル)−2,5−ジメチルベンゼン1.10g(4.39mmol)のかわりにデュレン(1,2,4,5−テトラメチルベンゼン)591mg(4.40mmol)を使用した以外は、実施例3と同様の操作により酸化反応を行った。
反応液中の不溶物をろ別し、HPLCで分析した結果、原料98%、ピロメリット酸0.2%であった。比較例1の結果を表5に示す。
【0066】
〔比較例2〕
1,4−ビス(アセトキシメチル)−2,5−ジメチルベンゼン1.10g(4.39mmol)のかわりに2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド652mg(4.40mmol)を使用した以外は、実施例3と同様の操作により酸化反応を行った。
反応液中の不溶物をろ別し、HPLCで分析した結果、原料78%、ピロメリット酸12%であった。比較例2の結果を表5に示す。
【0067】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によって製造されるピロメリット酸は、高耐熱性ポリマーの主原料として利用され、自動車産業、航空宇宙産業、電子器械産業等の分野に期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2,4,5−置換アルキルベンゼン誘導体を酸素酸化するピロメリット酸の製造方法において、該アルキルベンゼン誘導体の置換基の1〜3個がアセトキシメチル基及び/又はヒドロキシメチル基であるアルキルベンゼン誘導体を用いることを特徴とするピロメリット酸の製造方法。
【請求項2】
重金属の化合物から構成される酸化触媒を用いて酸素酸化することを特徴とする請求項1に記載のピロメリット酸の製造方法。
【請求項3】
前記重金属の化合物が遷移金属の化合物、ランタノイド金属の化合物及び周期律表のVA族に属する金属の化合物からなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のピロメリット酸の製造方法。
【請求項4】
前記遷移金属が、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、白金、銅、亜鉛の群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のピロメリット酸の製造方法。
【請求項5】
前記ランタノイド金属がスカンジウム、イッテルビウム、ランタン、セリウムの群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のピロメリット酸の製造方法。
【請求項6】
前記周期律表のVA族に属する金属がアンチモン及び/又はビスマスであることを特徴とする請求項3に記載のピロメリット酸の製造方法。
【請求項7】
前記酸化触媒に、アルカリ金属やアルカリ土類金属から構成される触媒を含むことを特徴とする請求項2乃至6いずれかに記載のピロメリット酸の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載のピロメリット酸の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ土類金属が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載のピロメリット酸の製造方法。
【請求項10】
有機溶媒の存在下で酸化反応を行うことを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載のピロメリット酸の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒が、炭素数2〜6の有機カルボン酸であることを特徴とする請求項10に記載のピロメリット酸の製造方法。

【公開番号】特開2006−206549(P2006−206549A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24245(P2005−24245)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(591100297)株式会社日生化学工業所 (5)
【出願人】(597112472)財団法人岐阜県研究開発財団 (25)
【出願人】(503094313)
【Fターム(参考)】