説明

ピンホール試験用アルミ溶湯容器

【課題】アルミニウム溶湯を短時間でかつ簡単に採取することを課題とする。
【解決手段】アルミニウム溶湯中の水素ガスを簡易に判定するピンホール試験機に使用されるピンホール試験用アルミ溶湯容器であって、ステンレス製の容器本体21と、この容器本体21の側壁に設けられ,容器本体21に一定量のアルミニウム溶湯を収容するための段差22とを具備することを特徴とするピンホール試験用アルミ溶湯容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はピンホール試験用アルミ溶湯容器に関し、具体的にはアルミニウム溶湯中の水素ガスを簡易に判定するピンホール試験機に使用されるアルミ溶湯容器に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、数十年前から、アルミニウムの炉前検査法として減圧凝固法が知られている。この減圧凝固法は、アルミニウム溶湯をカップ状の容器で汲み取った後、ピンホール試験器の真空装置にセットして減圧開始し、凝固又は凝固後の状態を目視等することにより、アルミニウム溶湯中の水素ガスの有無を簡易に判定するものである。
【0003】
図3は、ピンホール試験機(減圧凝固試験機)を示し、図3(A)は同試験機の概略外観図、図3(B)は図3(A)の側面図、図3(C)は図3(A)の上面図、図3(D)は図3(A)の正面図を示す。
【0004】
図中の符番1は、試験機本体を示す。この試験機本体1内には、前記容器を収容する為の真空装置2が配置されている。この真空装置2には、真空ポンプ3や排気バルブ4が接続されている。前記試験機本体1の上部には、真空装置2の真空度を測定するための真空メーター5やタイマー6が配置されているともに、ブザー7,電源ランプ8,ストップボタン9及びスタートボタン10が配置されている。また、試験機本体1の側部には電源コード11やブレーカー(図示せず)が設けられ、試験機本体1の底部には4個のゴム足(図示せず)がコーナー部に取り付けられている。
【0005】
こうした構成のピンホール試験機を用いてアルミニウム溶湯中の水素ガスの有無を判定するときは、次のように行う。
1) まず、試験機本体1のブレーカーをONし、電源ランプ8が点灯することを確認する。次に、図2に示すようなカップ状のSUS製ルツボ12にコーティング材(NC10)を塗り、充分に予熱する。
【0006】
2) 次に、ルツボ12の約6分目までアルミニウム溶湯を汲み、数秒以内に真空装置2に設置する。つづいて、真空装置2の蓋をし、排気バルブ4を閉じる。この後、スタートボタン9を押すと、運転状態になり、減圧を開始する。
【0007】
3) ここで、減圧方法としては、2通りが選択できる。第1は、圧力計を選択する場合で、圧力計の設定した上限値、下限値でタイムアップまで制御する方法である。第2は、圧力計を使用しない場合で、真空ポンプ3をタイムアップまで引き続ける方法である。なお、高真空での試料の状態を確認するときは、圧力計を使用しない方法を選択して測定する。
【0008】
4) 次に、試験機本体1をOFFにしてルツボ12を取り出し、凝固又は凝固後の状態を目視又は限度見本と比較して水素ガス混入による鋳造欠陥を判定する。ここで、限度見本とは、予めガス量の多いのから少ないのまで5段階くらいの見本を作っておくとともに、ランズレー法等でガス量を別途測定しておき、これを装置の前において実際のルツボと比較して合否を判定するものである。
【0009】
ところで、従来、上述したように図2のルツボが知られているが、アルミニウム溶湯を汲む場合は、専用の鋏でルツボを持った状態で目分量で汲むため、溶湯量にばらつきが生じる。例えば、限度見本と比較して鋳造欠陥を判定する場合、ルツボで汲んだ溶湯量が限度見本の溶湯量より明らかに少ない場合、判定が充分できない恐れがある。しかし、従来のルツボはカップ状で格別な目盛等ついていないので、短時間で正確に適量のアルミニウム溶湯を汲むことは困難であった。
【0010】
なお、従来例として、例えば、特許文献1のような金属溶湯の熱分析用試料採取容器が知られている。しかし、上述した課題を解決するものではない。
【特許文献1】特開2002−317220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、こうした事情を考慮してなされたもので、アルミニウム溶湯の量を短時間でかつ簡単に採取しえるピンホール試験用アルミ溶湯容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るピンホール試験用アルミ溶湯容器は、アルミニウム溶湯中の水素ガスを簡易に判定するピンホール試験機に使用されるピンホール試験用アルミ溶湯容器であって、ステンレス製の容器本体と、この容器本体の内側又は側壁に設けられ,容器本体に一定量のアルミニウム溶湯を収容するための目視手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、ステンレス容器本体の内側又は側壁に、容器本体に一定量のアルミニウム溶湯を収容するための目視手段を設けることにより、アルミニウム溶湯を短時間でかつ簡単に採取しえるピンホール試験用アルミ溶湯容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明において、目視手段とは、作業者が目視で直に判断できるような目印のことであり、後述するように、容器本体の側壁に設けた1つ以上の段差(図1,4参照)、あるいは容器本体の側壁に設けた,目印治具とボルトからなるもの(図5参照)、あるいは容器本体の側壁に設けた貫通穴(図6参照)、あるいは容器本体の側壁に設けた切り込み、あるいは容器本体の側壁の内側面に設けた環状の突起が挙げられる。また、目視手段を設ける位置は、例えば限度見本を利用する方法においては、限度見本と同量のアルミ溶湯を採取するような位置が容易に分かるようにする。なお、汲み取るべきアルミ溶湯の量が限度見本の溶湯量と比べて明らかに少ない場合、十分な判定ができないので、一定量の溶湯を汲み取ることは重要である。
【0015】
次に、本発明に係るピンホール試験用アルミ溶湯容器について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1を参照する。図中の符番21は、カップ状のステンレス製の容器本体を示す。この容器本体21の側壁には、例えば6分目の位置(ラインL)に1つの段差(目視手段)22が設けられている。
こうした構成のアルミ溶湯容器によれば、段差22を目視としてアルミニウム溶湯を汲むことができる。従って、図2のような従来のルツボと比べ、アルミニウム溶湯を短時間でかつ簡単に採取することができる。その結果、限度見本との比較によりアルミニウム溶湯の鋳造欠陥を判定する場合、正確な判定を行うことができる。
【0016】
(第2の実施形態)
図4を参照する。本実施形態は、図4に示すように、容器本体21に2段の段差(目視手段)23を設けたことを特徴とする。図4の構成のアルミ溶湯容器によれば、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
なお、第2の実施形態では、2段の段差を設ける場合について述べたが、3段以上の多段の段差を設けても、同様な効果が期待できる。
【0017】
(第3の実施形態)
図5を参照する。図中の符番24は、容器本体21の側壁に設けた目視手段を示す。この目視手段24は、一端側が容器本体21の内側壁に沿って延出する断面コ字形の治具本体25と、この治具本体25の他端側の端部を容器本体21の外壁面に係止させるボルト26とから構成されている。なお、容器本体21の内側壁に沿って延出した治具本体25の先端25aは、アルミ溶湯を汲み取るべき6分目のラインLまで達している。
【0018】
こうした構成のアルミ溶湯容器によれば、治具本体25の先端25aを目印としてアルミ溶湯を汲むことができるので、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0019】
(第4の実施形態)
図6を参照する。図中の符番27は、容器本体21の側壁に設けられた目視手段としての貫通穴を示す。ここで、貫通穴27は、1つ設けられていればよいが、2つ以上も設けられていてもよい。
こうした構成のアルミ溶湯容器によれば、目視手段としての貫通穴27を容器本外21の側壁に設けることにより、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0020】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。具体的には、目視手段は、上述したものに限らず、例えば、容器本体に上端面から下方向に向って切れ込みを設けた場合(但し、切れ込みの先端は例えば6分目までとする)、あるいは容器本体の側壁の内面側で且つ周方向に沿って突起を設けた場合が挙げられる。更には、容器本体の側壁に汲み取るべき位置が分かるようなマーク等をつけてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、この発明の第1の実施形態に係るピンホール試験用アルミ溶湯容器の断面図を示す。
【図2】図2は、従来のルツボの断面図を示す。
【図3】図3は、ピンホール試験機の概略的な説明図を示す。
【図4】図4は、この発明の第2の実施形態に係るピンホール試験用アルミ溶湯容器の断面図を示す。
【図5】図5は、この発明の第3の実施形態に係るピンホール試験用アルミ溶湯容器の断面図を示す。
【図6】図6は、この発明の第4の実施形態に係るピンホール試験用アルミ溶湯容器の断面図を示す。
【符号の説明】
【0022】
21…ステンレス製の容器本体、22,23…段差、24…目視手段、25…治具本体、25a…先端、26…ボルト、27…貫通穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム溶湯中の水素ガスを簡易に判定するピンホール試験機に使用されるピンホール試験用アルミ溶湯容器であって、
ステンレス製の容器本体と、この容器本体の内側又は側壁に設けられ,容器本体に一定量のアルミニウム溶湯を収容するための目視手段とを具備することを特徴とするピンホール試験用アルミ溶湯容器。
【請求項2】
前記目視手段は、容器本体に設けられた段差であることを特徴とする請求項1記載のピンホール試験用アルミ溶湯容器。
【請求項3】
前記目視手段は、容器本体の内側壁の上下方向に沿って取り付けられた目印治具と、この目印治具を容器本体に固定する為の固定治具とから構成されることを特徴とする請求項1記載のピンホール試験用アルミ溶湯容器。
【請求項4】
前記目視手段は、容器本体の側壁に設けられた貫通穴又は切り込みであることを特徴とする請求項1記載のピンホール試験用アルミ溶湯容器。
【請求項5】
前記目視手段は、容器本体の内側壁に周方向に沿って設けられたリング状の突起であることを特徴とする請求項1記載のピンホール試験用アルミ溶湯容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−170414(P2008−170414A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169567(P2007−169567)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3130467号
【原出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(591058792)日本金属化学株式会社 (11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】