説明

ファイバーレーザー用光ファイバーコネクタ

本発明は、信号伝導が改善され、光学的損失を最小限に抑えるファイバーレーザー用光ファイバーコネクタに向いている。この光ファイバーコネクタは、光ファイバーが高温下で熱膨張した際にも、熱を放散すると共に該ファイバーの位置合わせを維持することによって、高出力レベルで作動し得る。このコネクタは形状記憶合金で形成することができ、略円筒形の本体と光ファイバー同士を接合するための長手方向導管とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には光ファイバーコネクタに関し、詳細にはファイバーレーザー用光ファイバーコネクタに関し、より詳細には高出力レベルで作動するファイバーレーザー用光ファイバーコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブゲイン媒体としてドープ光ファイバーを用いたレーザーは、他種のレーザーと比べて多くの利点を有するため、数多くのアプリケーションで用いられるようになっている。ファイバーレーザーとは、アクティブゲイン媒体が希土類元素(例えば、イッテルビウムやネオジム、エルビウム、ジスプロシウム、プラセオジム、ツリウム)で好適にドープされた光ファイバーであるレーザーである。例えば、このようなレーザーはコンパクト且つ強力であり、幅広い発光波長で用いることができる。このようなレーザー源の設計や構築には、光ファイバーの接続(例えば、光ファイバーへのレーザーの接続)が必要である。接続には2種類、即ち、溶融接合と機械的接合(又は機械的コネクタ)の利用とがある。いずれの場合においても光学的損失が生じる。ファイバー接合部におけるこのような伝達損失は、光ファイバー温度の局所的上昇を引き起こし、得られる性能レベルに関しての制限要因となる。光ファイバー及び/又はコネクタの損傷や破壊を回避し、高出力レベルでの伝達を行うためには、光学的損失を最小限に抑え、このような接続部から生じた熱を効率良く放散させる必要がある。実際、光ファイバー間の接続を最適化することによって、レーザーによる発光出力をより高めることができよう。
【0003】
従って、ファイバーの位置合わせを良好に維持すると共に、ファイバー接合部における光学的損失に起因する熱を放散させることによって、ファイバーレーザー内で光ファイバーを高出力レベルで作動させることが可能なファイバーコネクタが必要である。
【0004】
信号伝導を良好にすることが可能な機械的な光ファイバー接続については、特許文献1〜4に記載されているが(特許文献3:2005年5月6日公開)、これらの内容全てを本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。当接によって2個の光ファイバーの端同士を接続するためのこのような機械的コネクタは、弾性率の低い形状記憶材料(SMM)、例えば、ポリマー、セラミック又は金属合金(形状記憶合金)から製造される。一般に、このような材料は、好適ないずれかの手段(例えば、機械的変形(印加力又は外圧)や温度上昇)によって元の状態(rest condition)から変形させた場合、変形の原因(力、圧、温度)が取り除かれると元の状態へと戻る。しかし、上述の特許及び特許出願においては、このような機械的コネクタをファイバーレーザーと共に用いる際に熱を放散させながら、該コネクタ内でファイバーの位置合わせを維持する上での技術的な問題に関しては検討されていなかった。
【0005】
種々の特許においては、熱に関する問題を減じてファイバーへの損傷を回避しながら高出力レベルで作動し得る光ファイバーデバイスが記載されている。例えば、2種類の取り組みが特許文献5及び6(特許文献6:2007年9月6日公開)に記載されている。しかし、このような公知のファイバーレーザー用光ファイバーデバイスを改良して、信号伝導が改善されると共に光学的損失が最小限に抑えられるコネクタ(接続デバイス)を提供することが、今もなお望まれている。特に、光ファイバーが熱膨張した際にも該ファイバーの正確な位置合わせを維持するだけでなく、効果的な熱放散も可能にすることによって、高出力レベルで作動し得る光ファイバーコネクタを開発することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,066,656号
【特許文献2】米国特許第7,121,731号
【特許文献3】国際公開第2005/040876号
【特許文献4】米国特許出願第60/943,965号
【特許文献5】米国特許第5,291,570号
【特許文献6】米国特許出願第2007/0206909号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、良好な信号伝導を可能とし、光学的損失を最小限に抑え、高出力レベルで作動することができ、光ファイバーが(高出力レベルでの作動の結果として)熱膨張した際に短い距離での光ファイバーの位置合わせを維持する特性を有し、ファイバー接合部での光学的損失によって生じる熱を効果的に放散させることができる、ファイバーレーザー用光ファイバーコネクタを提供する。
【0008】
本発明は、ファイバー接合部における熱が大きな問題となるファイバーレーザーに用いることができる形状記憶合金や他の形状記憶材料で形成された光ファイバーコネクタを提供することによって、先行技術の欠点や不都合に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の主な一態様は、ファイバーレーザーにおいて複数の光ファイバーの端同士を接合させるための光ファイバーコネクタであって、光ファイバーを接合させる寸法としたファイバー導管とコネクタ本体とを有し、コネクタ本体は、コネクタ本体の主長手方向軸に沿って第1の端から第2の端へ延在すると共にコネクタ本体の外表面からファイバー導管へ径方向内側に向かって延在する軸長手方向スロットを有し、拡張スロットに楔力(wedging force)が加わると該スロットと導管が拡張し、楔力が取り除かれると該スロットと導管が収縮して光ファイバーを把持し、かつコネクタ本体は熱伝導性が高い高弾性材料で形成されている光ファイバーコネクタである。
【0010】
本発明の他の態様は、光を供給するためのポンプと、ポンプに接続されており、ポンプからの光が内部に投入されるドープ光ファイバーと、ドープ光ファイバーの下流に接続されており、レーザー光を抽出するアウトレットと、光ファイバーを接合させる寸法とした少なくとも1種の光ファイバーコネクタとを有するファイバーレーザーであって、該コネクタはコネクタ本体を有し、コネクタ本体は、コネクタ本体の主長手方向軸に沿って第1の端から第2の端へ延在すると共にコネクタ本体の外表面からファイバー導管へ径方向内側に向かって延在する軸長手方向スロットを有し、拡張スロットに楔力が加わると該スロットと導管が拡張し、楔力が取り除かれると該スロットと導管が収縮して光ファイバーを把持し、かつコネクタ本体は、光ファイバーを接合し、光ファイバーの接合部における光学的損失によって生じる熱を放散させるために、高弾性で熱伝導性の材料で形成されているファイバーレーザーである。
【0011】
本発明の更なる他の態様は、ファイバーレーザーにおいて光ファイバーを接合する方法である。この方法は、高弾性で熱伝導性の材料で形成されているコネクタ本体を有する光ファイバーコネクタであって、コネクタ本体は、第1の端及び第2の端と第1の端から第2の端に長手方向に延在するファイバー導管とを有し、コネクタ本体は更に、第1の端から第2の端へ長手方向に延在すると共にコネクタ本体の外表面からファイバー導管へ径方向内側に向かって延在する拡張スロットを有する光ファイバーコネクタを用意することと、光ファイバーコネクタのコネクタ本体に力を加えて拡張スロットとファイバー導管を拡張させることと、ファイバー導管内に2個の光ファイバーを挿入することと、力を解放し、該スロットと導管を収縮させて光ファイバーをファイバーレーザーの一部として接合することとを含む。
【0012】
本発明の他の態様及び特徴は、以下の実施形態の説明から明らかになるであろう。
【0013】
本発明がより容易に理解できるように、現状において好ましい実施態様について、添付図面を参照しつつ例を挙げて更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施態様に係る光ファイバーコネクタの等角図である。
【図2】開いた状態にある光ファイバーコネクタデバイスの断面図であり、コネクタのファイバー導管内に2個の光ファイバーが挿入され、その光ファイバーがまだ位置合わせされていないことを示す。
【図3】閉じた状態にある光ファイバーコネクタデバイスの断面図であり、コネクタのファイバー導管内で光ファイバーが自己位置合わせされていることを示す。
【図4】光ファイバーコネクタの半透明等角図であり、該コネクタのファイバー導管内への2個の光ファイバーの挿入及び位置合わせを示す。
【図5】本発明の一実施態様に係る光ファイバーコネクタを用いて接合された2個の光ファイバー(コーニングSMF−28)間で伝達される力の量を示す、入力値の関数として出力値をプロットしたグラフである。
【図6】SMF−28接合部で測定した接合損失の分布を示すヒストグラム(棒グラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、光ファイバーコネクタデバイスは略円筒形の長手方向に延在するコネクタ本体を有する。本明細書で示す光ファイバーコネクタデバイスは円筒形であるが、このようなデバイスに適した如何なる形状も採り得る。光ファイバーコネクタデバイスのコネクタ本体は第1の端と第2の端を有する。該本体は、第1の端から第2の端に延在するファイバー導管を有する。本明細書に示すファイバー導管は円形であるが、光ファイバーの挿入及び接合に適した如何なる形状も採り得る。また、光ファイバーコネクタデバイスは、挿入及び接合する光ファイバー対の数に応じて複数のファイバー導管を有することができる。ファイバー導管の直径は光ファイバーの径よりも僅かに小さい。光ファイバーコネクタデバイスのファイバー導管を用いて光ファイバーを保持(即ち、拘束、圧縮、包囲)することによって、接合が形成されるファイバー接合部を覆い隠して保護すると共に、コネクタが2個の光ファイバーとごく僅かな距離で接しているだけに過ぎなくても、この2個の隣接する光ファイバーを十分に強く把持する。一実施態様においては、本発明のコネクタ本体(「支持体」)は、コネクタ本体の主長手方向軸に沿って第1の端から第2の端に延在すると共にコネクタ本体の外表面からファイバー導管へ径方向内側に向かって延在する少なくとも1個の軸長手方向スロットを有する。この長手方向スロット(又は「拡張スロット」)によって、ファイバー導管を拡張させて光ファイバーをファイバー導管内に挿入することができる。しかし、光ファイバーを導管内に保持するために光ファイバーコネクタデバイスが如何なる好適な設計も採り得ることは理解されよう。また、採り得る設計の種類は、例えば、上述の米国特許第7,066,656号、米国特許第7,121,731号、国際公開第2005/040876号(2005年5月6日公開)及び同時係属の米国特許出願第60/943,965号に示されているが、これらの内容全てを本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。当然のことながら、当業者であれば、多くの軽微な変更や改良も予想し得ることは理解されよう。
【0016】
従って、当業者であれば、上述のデバイスを本明細書に記載の光ファイバーデバイスコネクタとしてより良く使用するために必要となる如何なる機械的変更も行えることが分かるであろう。
【0017】
図2は、垂直上向きの拡張スロットに対し、如何にして垂直下方向に楔力を加えて拡張スロットを開裂する(即ち、拡張する)ことができるかを示す。この楔力によってファイバー導管が拡張し、光ファイバーを挿入することができる。コネクタ本体には、拡張スロットに対して垂直に延在してコネクタ本体を2個の別々の作動可能部分に分割する分割スリット(図示せず)を設けることができる。分割スリットを用いた場合、コネクタ本体の2個の異なる分割部分を連続的又は逐次的に作動させ、分割された拡張スロットと分割されたファイバー導管を拡張させた後、互いに個々に(独立して)収縮させることができる。
【0018】
本発明の主な実施態様に係る光ファイバーコネクタデバイスは、SMM、特に形状記憶合金(SMA)(例えば、米国特許第7,066,656号、米国特許第7,121,731号、国際公開第2005/040876号(2005年5月6日公開)及び同時係属の米国特許出願第60/943,965号に記載の種類の光ファイバーコネクタデバイスの製造に用いることができる材料)から形成されている(該特許文献の内容全てを本明細書の一部を構成するものとして、ここに援用する)。しかし、当業者であれば、本発明の新規なデバイスに対して、出力や温度に適した材料、及びファイバーレーザー(例えば、高出力レーザー)に伴う条件が用いられることは理解されよう。
【0019】
本明細書の目的のために、SMM又はSMAに関して、AFNOR規格「Alliages a memore de forme−Vocabulaire et Mesures」A 51080−1990を参照することができるが、この内容全てを本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0020】
上述の特許及び特許出願に記載の光ファイバーコネクタに適した材料は、非常に低いヤング率(弾性率)及び/又は擬弾性効果を示す。擬弾性効果はSMMに見られる。形状記憶効果に関しては、材料が温度(MF)(特定のSMMに依存する特性)より低い場合、用いる特定のSMMに応じて材料を約10分の数パーセントから約8パーセント超の割合で歪ませる(変形する)ことが可能である。SMMを第2の温度(AF)(これも、特定のSMM及び印加応力に依存する)を超えて加熱する場合、SMMはその所望の形状を回復する傾向にある。応力を受けない場合、SMMはその元の形状を完全に回復する傾向にある。応力が維持される場合、SMMは特にその元の形状を回復する傾向にある。擬弾性効果に関し、SMMがその(AF)より高い温度にある場合、特に高い割合で歪ませることができるが、これは弾性が用いられていないことを示し、形状記憶特性に起因している。最初、SMMが応力を受けると、用いる弾性材料と同様に歪みが直線的に増大する。しかし、応力の閾値量(特定のSMM及び温度に依存する)においては、応力に対する歪みの比がもはや直線的ではなくなり、即ち、応力が低い割合で増大するのに対し、歪みは高い割合で増大する。特に高いレベルの応力においては、歪みの増大は低くなる傾向にある。上述の温度(AF)でSMMによって示されるこの非直線的効果は、ヒステリシス様効果として示され得るが、応力の解放又は低下時には、歪みの低下は、ヒステリシス様ループのように、応力が増大した際の様子とは異なる曲線に従う。
【0021】
上述の材料の一例としては、形状記憶合金(SMA)が挙げられる。SMAにおける形状記憶エレメントの活性化に関する例としては、D.E.ムントゲス(Muntges)ら、「プロシーディンスグオブSPIE(Proceedings of SPIE)」、4327巻(2001年)、193〜200頁、及びビョン−ホ・パーク(Byong-Ho Park)ら、「プロシーディンスグオブSPIE(Proceedings of SPIE)」、4327巻(2001年)、79〜87頁が挙げられる。SMA製の小型部品は、レーザー照射加工によって製造することができる。例えば、H.ヘイファー・カンプ(Hafer Kamp)ら、「レーザー・ツェントルム・ハノーバーe.v.(Laser Zentrum Hannover e.v.)」、ドイツ、ハノーバー[出版]を参照のこと。上述の参考文献の全てを本明細書の一部を構成するものとして、ここに援用する。
【0022】
本発明の光ファイバーコネクタデバイスは、例えば、アイソタクチックポリブテン等のポリマー材料や、セリウム、ベリリウム又はモリブデンを少量添加したジルコニウム等のセラミック体、銅−アルミニウム合金、銅−亜鉛合金、銅−アルミニウム−ベリリウム合金、銅−アルミニウム−亜鉛合金及び銅−アルミニウム−ニッケル合金等の二元合金及び三元合金を含む銅合金、ニッケル−チタン合金及びニッケル−チタン−コバルト合金等のニッケル合金、鉄−マンガン合金、鉄−マンガン−ケイ素合金、鉄−クロム−マンガン合金及び鉄−クロム−ケイ素合金等の鉄合金、アルミニウム合金、並びに、必要に応じて金属又はポリマー補強剤を有し得る高弾性複合物から形成することができる。
【0023】
本発明の光ファイバーコネクタデバイスを用いて2個の光ファイバーの端同士を接続するため、好適ないずれかの方法を用いて変形させることによって、コネクタのファイバー導管を拡大(拡張)させる。制限されることなく、本発明を実施する目的のために、上述の米国特許第7,066,656号、米国特許第7,121,731号、国際公開第2005/040876号(2005年5月6日公開)及び同時係属の米国特許出願第60/943,965号(これらの内容全てを本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)に記載のいずれかの方法で、コネクタ(支持体)に2個の光ファイバーを挿入し、配置してもよい。例えば、光ファイバーコネクタのコネクタ本体の外表面に外力や圧力(「歪み」)を加えて、ファイバー導管を拡張させる。こうして、光ファイバーを拡張した導管内に挿入することができる。一旦、光ファイバー端がコネクタ内に十分に挿入され、その端同士が当接すると、上述の力や圧力を取り除く(即ち、歪みを解放する)ことによって、コネクタ本体は元の(最初の)形状に戻る。コネクタ本体の外表面への力を解放する際に、ファイバー導管が収縮してコネクタ(支持体)のファイバー導管内に光ファイバーを保持する。導管の寸法は入念に設定し、導管が元の形状に収縮した際に光ファイバーの外円筒表面に沿って径方向の圧力が導管に均一に加わるようにする。この光ファイバーコネクタによって、光ファイバーを当接位置で保持するには十分に強いが、過剰圧縮で光ファイバーを破壊又は損傷しない程度に小さくなるように制御された圧縮力が、光ファイバーに加わる。
【0024】
このファイバーレーザー用機械的光ファイバーコネクタを用いた場合、例えば、標準的なファイバー溶融接続と比べて多くの利点がある。この新規の機械的光ファイバーコネクタは、より容易に製造される。また、該コネクタを用いて、組成や熱膨張係数の異なる(或いは組成や熱膨張係数が同一又は同様の)2個の光ファイバーを接合することができる。この特性については、コザック(Kozak)ら(シリカ及びフッ化物ファイバーを接続するための低損失接着剤接合方法、エレクトロニクス・レターズ、2005年、vol.41(16):p21−22)に更に詳述されているが、該文献を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0025】
ファイバー溶融接続の場合、通常、光ファイバー同士が同様の組成、従って同様の溶融温度を有することを示している。しかし、ある種の光ファイバーの場合には、光学的損失を生じさせずに(即ち、<0.01dBの損失)溶融させることは困難である。例えば、フッ化物ガラス光ファイバー(例えば、Z BLAN)を溶融接続させるのは容易ではなく、通常、0.1dB〜0.5dBの範囲の光学的損失を伴う。これについては、スリニヴァサン(Srinivasan)ら(安定な熱源を用いた低融点(フッ化物)光ファイバーの再現可能な溶融接合、OFC’97 テクニカルダイジェスト、TuBl、1997年)、リヴォアラン(Rivoallan)及びギロー(Guilloux)(CO2レーザーを用いたフッ化物ガラス光ファイバーの溶融接合、エレクトロニクス・レターズ、1988年、vol.24(12):p756−757)、及びハービソン(Harbison)ら(重金属フッ化物ガラス光ファイバーの溶融接合、エレクトロニクス・レターズ、1989、vol.25(18):1214−1216)によって更に詳述されている。上述の参考文献の全てを本明細書の一部を構成するものとして、ここに援用する。従って、光ファイバーを接合するために形状記憶材料で形成された機械的コネクタを使用することは、先行技術に比べて多くの利益をもたらす革新である。
【0026】
光ファイバーが高出力レベルを受ける、即ちかなりの熱に曝露される際のファイバー接合部での光ファイバー間の光学的損失を最小限に抑えるため、本発明の光ファイバーコネクタデバイスにおいては、高温に曝されて熱膨張が生じても、光ファイバー間の位置合わせを維持する必要がある。重要なのは、この位置合わせがファイバー導管内の少なくとも1mmの僅かな距離で維持されるということである。当業者であれば、このことは特に、効率良く熱放散を促進する上で利益をもたらすことを理解するであろう。実際、ある材料が高温に晒されると、その体積が熱膨張係数に応じて温度上昇に比例して増加することは、当該技術分野において知られている。従って、ファイバー接続では、コネクタ本体内の光ファイバーの熱膨張(「拡張」)及び収縮を考慮する必要がある。換言すれば、コネクタは、光ファイバーの熱膨張に適応して、圧縮力が過剰になった際にファイバーの破壊や破断を招き得るファイバーの過剰圧縮を防止する必要がある。更に、コネクタ内部で接続された2個の光ファイバーの正確な位置合わせを維持して光学的損失を常に最小限に抑えるため、該2個の光ファイバーの熱膨張(拡張)を常時慎重に制御し、十分に均一にする必要がある。
【0027】
光ファイバー用機械的コネクタの技術分野で知られているように、光ファイバーを位置合わせするカナルと光ファイバー自身との間には、常に微少なギャップが存在する。このギャップ(通常1又は2ミクロン)は光ファイバーをこのカナル内に挿入するのに必要である。従って、光ファイバー間の位置合わせを安定させるには、このギャップを接着剤で充填する必要がある。しかし、この接着剤は、通常主に熱放散を阻害する断熱材となる。また、光ファイバーと光ファイバーを位置合わせするカナルとの間に均一な接着剤膜を形成するのは困難であるため、得られる膜は、通常異方性膜である。このように、接着剤膜が不均一であると、2個の隣接する光ファイバー間で熱膨張に差異が生じる。こうして、接続部の破壊を招くことが多くなる。
【0028】
これに対し、本発明においては、接着剤や粘着剤を必要としない。本発明の新規な光ファイバーコネクタは無接着剤型であり、即ち、粘着剤が存在しない。本発明の新規な光ファイバーコネクタにおいては、隣接するファイバー端間、又は光ファイバーと導管との間で接着剤、粘着剤又はその等価物を用いることなく、2個の光ファイバーを接合させることができる。コネクタ本体の形状記憶合金又は他の形状記憶材料の弾力性及び超弾性のみによって、ファイバー導管内で光ファイバーが堅固に保持される。コネクタ内で接着剤や粘着剤を用いないため、コネクタは高温に耐えることができる。接着剤を用いないので、コネクタは完全に再利用可能である。また、コネクタ内で接着剤を用いないので、接着剤を用いた接続の場合には問題となり得る微調整を接合ファイバーに対して行うことができる。形状記憶材料をコネクタの新規な構造(geometry)と組み合わせることによって、ファイバー導管内に光ファイバーを容易に挿入し、当接させ、正確に位置合わせすることができる。また、このような本発明の光ファイバーコネクタの特性によって、熱膨張とは関係なく、光ファイバー間の位置合わせを維持することもできる。本発明の光ファイバーコネクタの他の重要な特徴は、コネクタが常に光ファイバーと完全に直接接触していることである。また、多くの実施態様においては、コネクタ本体は導電性金属、例えば形状記憶合金で形成されている。従って、コネクタ本体は、接合部(接続部)で生じた熱を効率良く放散させる特性を有する。さらに、本発明の光ファイバーコネクタは上述の構造を有するため、光ファイバーの非常に広い表面積に亘ってコネクタと光ファイバーとが接触する。従って、この構造によって、コネクタと光ファイバーとの接触が改善される。例えば、V型溝を用いたフジクラEZスプライス/FMS EZ-02等の機械的コネクタと比べて、本発明のコネクタデバイスではコネクタとファイバーとの間の接触面積が実質的に広くなり、より効率良く熱放散することができる。
【0029】
上述のように、コネクタ本体は、(熱放散を効率良くするために)熱伝導性の高い高弾性材料(例えば、形状記憶材料)で形成し得ることが明らかであろう。コネクタ本体用に選択される材料の熱膨張係数によっては、光ファイバーの熱膨張と調和させてコネクタ本体を膨張させることも可能である。換言すれば、接合したファイバーの把持を緩めることがある場合には、コネクタ本体の熱膨張が過度であってはならないし、光ファイバーを導管内で過剰に圧縮することがある場合には、コネクタ本体の熱膨張が少な過ぎてはならない。形状記憶合金は優れた熱特性(適切な熱膨張係数及び適切な熱伝導率)を示すため、このようなコネクタ本体には理想的である一方、その超弾性挙動によって、容易に繰り返し開閉させて光ファイバーを把持(接合)し得る無接着剤型コネクタとして作動することが分かった。
【実施例】
【0030】
本発明の光ファイバーコネクタが2個の光ファイバー同士を接合させながら高出力レベルで作動する能力について試験した結果、非常に良く機能することが分かった。この新規な技術によって、ファイバー接合部での光学的損失が最小限に抑えられる。例示としての実施例においては、シリカSMF−28(コーニング)の2個の光ファイバー同士を接合させた。光ファイバーの特性は下表のように再現される。
【0031】
【表1】

【0032】
SMF−28光ファイバーを、切断角度1°未満、平均角度0.5°の高品質フィテルS325Aダイヤモンドブレードカッターで切断した。接合損失の測定は、安定性の高い1550nmレーザーダイオードの光をファイバーセグメントに投入し、出力値を光パワーメータで測定して行った。次いで接合ファイバーセグメントを追加した後、この測定を繰り返した。図5は、入力値を増大させた際の2個のSMF−28ファイバー間で伝達された力を示す。曲線の直線性によって、入力値が増大した際における損失が安定であることが分かる。この実験から、2個のファイバーは接合箇所での光学的損失によって熱膨張するが、デバイスは該ファイバーの位置合わせを維持し得ることが分かる。このような測定を100回行った後の接合損失の棒グラフ(ヒストグラム)を図6に示す。測定精度は0.1dBであった。この結果から、屈折率整合ゲルを用いず、接続前にファイバーの研磨を行わなかったため、2個の光ファイバー間の位置合わせは非常に良好であることが分かる。
【0033】
他の例としては、本技術の適用が他の特定の合金や材料に限定されることなく、ニッケル−チタン形状記憶合金が挙げられるが、そのオーステナイト相での熱伝導係数は18W/m・℃、マルテンサイト相での熱伝導係数は10W/m・℃である。熱伝導率はオーステナイト相で11.0×10-6/℃、マルテンサイト相で6.6×10-6/℃である。他の例として、Ni−Ti−Nb合金は熱膨張係数(CTE)が11.4×10-6/℃である。例えば、コーニング社のSMF28等の光ファイバーは、通常CTEが約6×10-6/℃〜約9×10-6/℃の範囲であるが、この値は変動し得る。形状記憶合金は、熱膨張ファイバーの位置合わせを維持するのに十分に適すると考えられる熱膨張係数を有することが見出された。同様に、形状記憶合金の熱伝導特性は、コネクタによって形成される接合部(接続部)での光学的損失で生じた熱を効果的に放散する点で優れている。形状記憶合金は、熱膨張係数が6×10-6/℃〜約12×10-6/℃の範囲であることが好ましい。コネクタ本体のCTEは、ファイバーのCTEと釣り合わせて、全作動温度域において堅固で損傷を与えない把持がファイバー上で確実に維持されるようにする必要がある。
【0034】
新規なファイバーコネクタを組み込んだファイバーレーザー
上述の新規なコネクタをファイバーレーザーに組み込むことができる。該ファイバーレーザーは、光ポンプ(単に「ポンプ」とも称する)と、少なくとも1個の上述の光ファイバーコネクタを有するドープファイバーと、発生したレーザー光を放射するレーザー出力装置とを有する。簡易なファイバーレーザーにおいては、ポンプ光がポンプからダイクロイックミラーを介してドープファイバーのコアに投入される。発生したレーザー光は、出力装置において他のダイクロイックミラーを介して抽出される。他の実施態様においては、ポンプとドープファイバーとの間、及びドープファイバーと出力装置との間にファイバーブラッグ格子(FBG)を接合することができる。
【0035】
本明細書が対象とする当業者によって理解されるように、上述の実施態様の記載は、単に説明や典型例に過ぎないことを意図する。本明細書に記載の実施態様及び実施例は、単に本発明を説明するためのものである。従って、このような本発明の具体的な実施は、添付した特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく、修正、改良又は変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバーレーザーにおいて複数の光ファイバーの端同士を接合させるための光ファイバーコネクタであって、
複数の光ファイバーを接合させる寸法としたファイバー導管と、
コネクタ本体とを有し、コネクタ本体は、コネクタ本体の主長手方向軸に沿って第1の端から第2の端へ延在すると共にコネクタ本体の外表面からファイバー導管へ径方向内側に向かって延在する軸長手方向スロットを有し、拡張スロットに楔力が加わると該スロットと導管が拡張し、楔力が取り除かれると該スロットと導管が収縮して光ファイバーを把持し、かつコネクタ本体は熱伝導性が高い高弾性材料で形成されている光ファイバーコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタ本体は熱膨張して光ファイバーの正確な位置合わせを維持する、請求項1に記載の光ファイバー接続デバイス。
【請求項3】
前記光ファイバーコネクタは少なくとも1mmの距離で位置合わせを維持する、請求項2に記載の光ファイバーコネクタデバイス。
【請求項4】
前記複数の光ファイバーは同一の熱膨張係数を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバーコネクタ。
【請求項5】
前記複数の光ファイバーは異なる熱膨張係数を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバーコネクタ。
【請求項6】
前記コネクタ本体は形状記憶合金で形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ファイバー接続デバイス。
【請求項7】
光を供給するためのポンプと、
ポンプに接続されており、ポンプからの光が内部に投入されるドープ光ファイバーと、
ドープ光ファイバーの下流に接続されており、レーザー光を抽出するアウトレットと、
光ファイバーを接合させる寸法とした少なくとも1種の光ファイバーコネクタとを有するファイバーレーザーであって、該コネクタはコネクタ本体を有し、コネクタ本体は、コネクタ本体の主長手方向軸に沿って第1の端から第2の端へ延在すると共にコネクタ本体の外表面からファイバー導管へ径方向内側に向かって延在する軸長手方向スロットを有し、拡張スロットに力が加わると該スロットと導管が拡張し、力が取り除かれると該スロットと導管が収縮して光ファイバーを把持し、かつコネクタ本体は、光ファイバーを接合し、光ファイバーの接合部における光学的損失によって生じる熱を放散させるために、高弾性で熱伝導性の材料で形成されているファイバーレーザー。
【請求項8】
前記力は拡張スロットに作用する楔力である、請求項7に記載のファイバーレーザー。
【請求項9】
コネクタ本体は形状記憶合金で形成されている、請求項7に記載のファイバーレーザー。
【請求項10】
ファイバーレーザーにおいて光ファイバーを接合する方法であって、
高弾性で熱伝導性の材料で形成されているコネクタ本体を有する光ファイバーコネクタであって、コネクタ本体は、第1の端及び第2の端と第1の端から第2の端に長手方向に延在するファイバー導管とを有し、コネクタ本体は更に、第1の端から第2の端へ長手方向に延在すると共にコネクタ本体の外表面からファイバー導管へ径方向内側に向かって延在する拡張スロットを有する光ファイバーコネクタを用意することと、
光ファイバーコネクタのコネクタ本体に力を加えて拡張スロットとファイバー導管を拡張させることと、
ファイバー導管内に2個の光ファイバーを挿入することと、
力を解放し、該スロットと導管を収縮させて光ファイバーをファイバーレーザーの一部として接合することとを含む方法。
【請求項11】
前記力は拡張スロットに加えられる楔力である、請求項10に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−523717(P2011−523717A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510796(P2011−510796)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000761
【国際公開番号】WO2009/143632
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(509343367)フェースオプティクス インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】PHASOPTX INC.
【Fターム(参考)】