説明

ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油

ベース非HSDP原油、および高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンの有効量を含むファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油、および、これの作製方法。更に、ファウリングされた原油精製要素をオンライン清浄化するために、原油精製要素におけるファウリングを低減するために、および微粒子またはアスファルテンファウリングに伴われるファウリング条件を経ることが可能なシステムにおいて、これらの非HSDP原油を用いる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全原油、ブレンド、および精油所および石油化学プラントにおける留分の処理、並びに微粒子誘導原油ファウリングおよびアスファルテン誘導原油ファウリングの低減に関する。より詳しくは、本発明は、非HSDP原油のファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果を増大するための、高溶解分散能(HSDP)原油レジンの非HSDP原油への添加に関する。
【背景技術】
【0002】
ファウリングは、一般に、処理機器の表面における望ましくない物質の蓄積として定義される。石油の処理においては、ファウリングは、熱交換器の表面における望ましくない炭化水素ベースのデポジットの蓄積である。それは、精製および石油化学の処理システムの設計および運転における殆ど普遍的な問題として認められており、二つの点で、機器の運転に悪影響を及ぼす。先ず、ファウリング層は、低い熱伝導率を有する。これは、伝熱抵抗を増大し、熱交換器の効率を低減する。第二に、デポジットの沈積が発生すると、断面積が低減される。これは、装置の圧力降下の増大を引起こし、不十分な圧力および流動を、熱交換器内にもたらす。
【0003】
石油タイプのストリームに付随される熱交換器のファウリングは、多数のメカニズムに起因することができる。これには、化学反応、腐食、不溶性物質の沈積、並びに流体および熱交換器壁の間の温度差によって不溶性となる物質の沈積が含まれる。例えば、本発明者らは、低硫黄低アスファルテン(LSLA)原油および高硫黄高アスファルテン(HSHA)原油のブレンドは、酸化鉄(錆)微粒子が存在する場合に、ファウリングが著しく増大しやすいことを示している。
【0004】
急速なファウリングについて、より一般的な原因の一つは、とりわけ、原油のアスファルテンが、加熱装置の管表面の温度に過剰に暴露された場合に生じるコークスの形成である。熱交換器の一方側の液体は、全原油よりはるかに高温であり、相対的に高い表面またはスキン温度をもたらす。アスファルテンは、油から沈澱し、これらの高温の表面へ付着することができる。急速なファウリングの他の普通の原因は、塩および微粒子の存在に起因する。塩/微粒子は、原油から沈澱し、熱交換器の高温表面へ付着することができる。無機汚染物は、全原油およびブレンドのファウリングにおいて、開始および促進の両役割を果たす。酸化鉄、硫化鉄、炭酸カルシウム、シリカ、塩化ナトリウムおよびカルシウムは全て、ファウリングされた加熱装置のロッドの表面へ直接に、およびコークスデポジット全体に亘って付着されることが見出されている。
【0005】
これらの表面温度への長期間の曝露は、特に後列交換器においては、有機物およびアスファルテンのコークスへの熱劣化をもたらす。コークスは、その際、断熱材として機能し、表面が、装置を通過する油を加熱するのを阻害することによって、熱交換器における伝熱効率のロスの原因となる。塩、沈殿物、および微粒子は、予熱列熱交換器、加熱炉、および他の下流装置のファウリングにおいて、主要な役割を果たすことが示されている。脱塩装置は、依然として、製油所がこれらの汚染物を除去しなければならない唯一の機会であり、非効率性は、しばしば、原油原料によるこれらの物質の随伴に起因する。
【0006】
製油所における油のブレンディングは、普通であるが、あるブレンドは、非親和性であり、プロセス機器を急速にファウリングすることができるアスファルテンの沈澱を引起す。原油の不適切な混合は、伝熱効率を低減すると知られるアスファルテンの沈殿をもたらすことができる。未処理原油の殆どのブレンドは、潜在的に非親和性でないものの、非親和性ブレンドが得られると、結果として生じる急速なファウリングおよびコーキングは、通常、精製プロセスの運転停止を、短時間で必要とする。製油所を、より収益性のあるレベルへ戻すためには、ファウリングされた熱交換器は、清浄化される必要がある。これは、典型的には、次に説明されるように、運転から切離すことを必要とする。
【0007】
熱交換器の管内ファウリングは、効率のロス、通油量、および更なるエネルギー消費の点で、石油製油所に、毎年数億ドルを費やさせる。エネルギーコストの増大により、熱交換器のファウリングは、プロセスの収益性に関して、より大きな影響を有する。石油製油所および石油化学プラントはまた、ファウリング(全原油、ブレンド、および留分を、伝熱機器内で熱処理する際に生じる)の結果として必要とされる清浄化により、高い運転コストをこうむる。多くのタイプの製油所機器は、ファウリングによって悪影響を及ぼされるものの、コスト予測は、大部分の収益性ロスが、予熱列交換器における全原油、ブレンド、および留分のファウリングにより生じることを示している。
【0008】
熱交換器のファウリングは、製油所に、清浄化プロセスのための費用を要する運転停止をしばしば用いることを強いる。現在では、殆どの製油所は、熱交換器を運転からはずして、化学的または機械的な清浄化を行うことによって、熱交換器の管束のオフライン清浄化を行なう。清浄化は、計画された時間または使用法に、若しくは実際に監視されたファウリング状態に基づかれることができる。これらの状態は、熱交換効率のロスを評価することによって、決定されることができる。しかし、オフライン清浄化は、運転を中断する。これは、特に、小さな製油所にとっては、非生産期間があるであろうことから負担となることができる。
【0009】
加熱された表面からの微粒子およびアスファルテンの沈澱/付着を、微粒子がファウリングを促進することができ、アスファルテンが熱劣化されるか、またはコーキングされる前に、防止することができる必要性が存在する。コーキングのメカニズムは、温度および時間の両方を必要とする。時間の要因は、微粒子を表面から離して保持することによって、およびアスファルテンを溶液で保持することによって、顕著に低減されることができる。ファウリングのこれらの低減および/または除去は、運転時間の増大(より少ない清浄化)、性能およびエネルギー効率の向上をもたらすであろう。一方、これはまた、費用を要するファウリング軽減の選択肢の必要性を低減する。
【0010】
いくつかの製油所および原油計画者は、現在、ブレンディング指針に従って、アスファルテンの沈澱、および結果として、予熱列機器のファウリングが最小にされる。これらの指針は、ある相関関係を、ブレンドの溶解性ブレンディング数(SBN)および不溶解性数(I)の間に得るように、原油をブレンディングすることを示唆する。SBNは、油と、異なる比率のモデル溶剤混合物(トルエン/n−ヘプタンなど)との親和性に関するパラメーターである。SBNは、I(類似の方法で決定される)に関連性がある。これは、特許文献1に記載され、本明細書に引用して含まれる。いくつかのブレンディング指針は、アスファルテンの沈澱およびファウリングを最小化するのに、SBN/Iブレンド比>1.3、およびΔ(SBN−I)>10を示唆する。しかし、これらのブレンドは、アスファルテンの沈澱を最小化するための受身的な手法として用いるために設計される。
【0011】
潜在的に非親和性である二種以上の石油をブレンドし、一方親和性を、製油所機器のファウリングおよびコーキングを防止するように保持する方法を向上する試みが、なされている。特許文献1は、ブレンディング方法を開示する。これには、各原料ストリームの不溶解性数(I)を決定し、かつ各ストリームの溶解性ブレンディング数(SBN)を決定する工程、および原料ストリームを、混合物のSBNが混合物のいかなる成分のIより大きいように組合わせる工程が含まれる。他の方法においては、特許文献2は、石油が、混合物のSBNを混合物のいかなる油のIの1.4倍より高く保持するために、ある比率で組合わされるブレンディング方法を用いる。
【0012】
より十分に、同時係属中の特許文献3に記載されるように、本発明者らは、ベース原油、および所定量の高溶解分散能(HSDP)原油(全酸価(TAN)少なくとも0.3および溶解性ブレンディング数(SBN)少なくとも95を有する)のブレンドを供給することは、アスファルテンに付随されるファウリング、および微粒子誘導/促進ファウリングを減少するであろうことを見出している。
【0013】
しかし、全世界で生産される数百の原油には、ほんの少数が、HSDP原油(全酸価(TAN)少なくとも0.3および溶解性ブレンディング数(SBN)少なくとも95を必要とする)の現行の基準を満足すると認められている。従って、非HSDPまたは「近HSDP」原油に関して、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果を増大する別の手法を開発する必要性が、引続き存在する。非HSDPまたは「近HSDP」を向上するこれらの手法は、製油所に対して、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果の両方を可能にする選択肢の数を増大するであろう。これは、エネルギーおよび保全コストの節減を可能にするであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,871,634号明細書
【特許文献2】米国特許第5,997,723号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/506,901号明細書
【特許文献4】米国特許出願第12/292,648号明細書
【特許文献5】米国特許出願第11/436,602号明細書
【特許文献6】米国特許出願第11/436,802号明細書
【特許文献7】米国特許出願第11/802,617号明細書
【特許文献8】米国特許出願第11/641,754号明細書
【特許文献9】米国特許出願第11/641,755号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に従って、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油を作製する方法が提供される。方法には、非HSDP原油を提供する工程、高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンを提供する工程、並びに非HSDP原油およびレジンの有効量をブレンドして、ブレンド原油を形成する工程が含まれる。非HSDP原油は、好ましくは、溶解ブレンディング数(SBN)約90未満、より好ましくは約55〜約75を有する。レジンの有効量は、好ましくは、少なくとも約50wppm、より好ましくは約50〜1000wppmである。
【0016】
本発明の他の態様に従って、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油には、ベース非HSDP原油、および高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンの有効量が含まれる。
【0017】
本発明の他の態様に従って、微粒子またはアスファルテンファウリングに伴われるファウリング条件を経ることができるシステムが提供される。システムには、少なくとも一つの原油精製要素、および少なくとも一つの原油精製要素と流体連通するブレンドが含まれる。ブレンドには、ベース原油、およびファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油が含まれる。ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油には、非HSDP原油、および高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンの有効量が含まれる。ベース原油は、全原油または少なくとも二種の原油のブレンドの一つであることができる。原油精製要素は、なかんずく、熱交換器、加熱炉、蒸留カラム、スクラバー、反応器、液体ジャケット付きタンク、パイプスチル、コーカー、またはビスブレーカーであることができる。
【0018】
本発明の他の態様に従って、ファウリングされた原油精製要素をオンライン清浄化するための方法が提供される。方法には、ファウリングされた原油精製要素を運転する工程、およびブレンド原油をファウリングされた原油精製要素へ供給する工程が含まれる。ブレンド原油には、ベース原油、およびファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油が含まれる。ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油には、非HSDP原油、および高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンの有効量が含まれる。
【0019】
本発明の他の態様に従って、原油精製要素におけるファウリングを低減するための方法が提供される。方法には、ベース原油を提供する工程、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油を提供する工程、ベース原油を、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油とブレンドして、ブレンド原油を生成する工程、およびブレンド原油を、原油精製要素へ供給する工程が含まれる。ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油には、非HSDP原油、および高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンの有効量が含まれる。
【0020】
本発明のこれらのまたは他の特徴は、好ましい実施形態の次の詳細な説明から明らかになるであろう。これは、添付の図面と関連して、実施例によって、本発明の原理を例示する。
【0021】
本発明は、ここで、添付の図面と組合せて説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に従って用いられるAlcorファウリングシミュレーターの概略図である。
【図2】本発明の一態様に従って、HSDPレジンを、非HSDP原油へ添加する効果を示すグラフである。
【0023】
図面については、同じ参照番号は、異なる図面において、対応する部分を示す。
【0024】
本発明は、種々の修正および別の形態が可能であるものの、それらの特定の実施形態は、図1〜2に示されるプロセス図表および試験データによって示されており、本明細書に詳細に説明されるであろう。しかし、それは、本発明を、開示される特定の形態に限定するものでなく、反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に入る全ての修正、均等物、および選択肢を包含するものであることは、理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、本発明の種々の態様が、詳細に言及されるであろう。本発明の方法および対応する工程は、構成装置および図面の詳細な説明と関連して説明されるであろう。特定の実施形態が、例証目的で、限定なしに言及されるであろう。
【0026】
一般に、本発明は、非高溶解分散能(非HSDP)原油について、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果を増大することを目的とする。その際、非HSDP原油は、HSDP原油として機能することができる。この目的は、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油を作製する方法によって達成される。非HSDP原油には、ベース非HSDP原油、および高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンの有効量が含まれる。これらの非HSDP原油は、本発明に従って、作製されることができる。これは、非HSDP原油を提供する工程、高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンを提供する工程、並びに非HSDP原油およびレジンの有効量をブレンドして、ブレンド原油が形成される工程による。
【0027】
好ましくは、非HSDP原油は、溶解性ブレンディング数(SBN)約90未満、より好ましくは約55超かつ約75未満を有する。比較的高いSBNを有するこれらの「近原油」の選択は、原油ブレンドにおけるアスファルテンの溶解力全体を、油親和性理論に従って向上するが、HSDP原油の十分なファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果を提供しない。
【0028】
本発明のレジンは、いかなる公知の技術をも用いて、HSDP全原油から分離させることができる。同時係属中の特許文献4(表題「高溶解分散能(HSDP)原油から成分を分離し、それを使用する方法」)に記載されるものなどである。その内容は、その全てが本明細書に含まれる。代わりに、合成レジン分子は、非HSDP原油を、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果に関して、HSDP原油として機能する原油に変えるのに用いられることができる。
【0029】
レジンの有効量は、好ましくは、少なくとも約50wppm、より好ましくは約50〜1000wppmである。HSDPレジンのこれらの低レベルの添加は、「近HSDP」原油の性能を増大する。これは、溶解性および分散剤特性を、これらの「近HSDP」原油が、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果に関して、HSDP原油として機能することが可能なレベルへ増大することによる。
【0030】
本明細書に説明される非HSDP原油は、原油精製要素におけるファウリングを低減するのに、または更に、ファウリングされた原油精製要素をオンライン清浄化するのに用いられることができる。例えば、本発明の一態様に従って、原油精製要素におけるファウリングを低減する方法が提供される。該方法には、ベース原油を提供する工程、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油を提供する工程、ベース原油を、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油とブレンドして、ブレンド原油がもたらされる工程、およびブレンド原油を、原油精製要素へ供給する工程が含まれる。ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油には、非HSDP原油、および高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンの有効量が含まれる。
【0031】
対照的に、別の方法が、ファウリングされた原油精製要素に対して用いられることができる。ファウリングされた原油精製要素のオンライン清浄化により、構成装置が運転から切離される必要がなくなり、および原油を他の製油所構成装置へ別ルートで送る必要もなくなる。オンライン方法には、ファウリングされた原油精製要素を運転する工程、およびブレンド原油を、ファウリングされた原油精製要素へ供給する工程が含まれる。ブレンド原油には、ベース原油、およびファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油が含まれる。ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油には、非HSDP原油、および高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンの有効量が含まれる。
【0032】
特に、また、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油を用いて、既にファウリングされた原油予熱列交換器および他の製油所構成装置のオンライン清浄化が行われ、伝熱効率が向上され、加熱炉のコイル入口温度(CIT)が回復することが発見されている。常圧および減圧パイプスチルの両加熱炉のCITレベルは、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油を運転する場合に、劇的に増大することが見出されている。これは、エネルギー節減、および燃焼加熱の必要性の低減の結果として環境的利点をもたらす。ファウリング軽減のための共ブレンドのように、オンライン熱交換器の清浄化の効率は、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油およびその濃度による。ファウリングされた交換器は、加熱炉(常圧および減圧)のコイル入口温度(CIT)の低減をもたらす。これは、更なる燃焼(エネルギー需要およびコストの増大をもたらす)を必要とする。本発明のファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油は、ファウラントを、既にファウリングされた製油所構成装置から除去することが示されている。ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油の、ファウリングされた熱交換器への添加は、CITレベルの回復をもたらし、それにより加熱炉を燃焼するのに必要とされるエネルギーを低減した。
【0033】
ベース原油と非HSDP原油とのブレンド、およびブレンド原油の原油精製要素への供給は、原油をブレンドする際に標準的である、種々の既知技術のいかなるものにもより、およびそれを用いて行われることができる。タンク設備(外洋原油船などの輸送船のタンク設備を含む)におけるバッチ混合、若しくはパイプラインまたは処理構成装置の上流にある他の適切な容器における連続インライン混合などである。
【0034】
いずれの方法においても、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油の添加は、アスファルテン誘導ファウリングおよび微粒子誘導/促進ファウリングの両方を軽減する。HSDP原油から分離されたレジンと組合せた非HSDP原油のやや高いSBNは、残りの原油および/またはブレンド中のいかなるアスファルテンもの溶解性の増強を可能にする。TANの存在は、原油ブレンド中の微粒子を分散する助けとなると考えられる。これは、微粒子が、加熱された表面に付着するのを防止する。
【0035】
ブレンド原油に必要な、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油の容積は、非HSDP原油のTANおよび/またはSBN値、並びにレジンが分離されるHSDP原油のTANおよび/またはSBN値に基づいて異なるであろう。一般に、非HSDP原油、およびHSDP原油のレジンのTANおよび/またはSBN値が高いほど、製油所構成装置(熱交換器を含むが限定されることはない)におけるアスファルテン誘導ファウリング、および微粒子誘導ファウリングおよび/または促進の両方を低減および/または軽減するであろうブレンド原油を製造するのに必要な、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油の容積は低い。例えば、原油精製要素は、熱交換器、加熱炉、蒸留カラム、スクラバー、反応器、液体ジャケット付きタンク、パイプスチル、コーカー、ビスブレーカー、またはいかなる他の適切な構成装置でもあることができる。
【0036】
ベース原油は、全原油、または少なくとも二種の原油のブレンドであることができる。ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油は、好ましくは、ブレンド原油の全容積の5%〜50%を構成する。
【0037】
ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油を含むブレンド原油は、次いで、製油所内で処理される。このブレンド原油は、ベース原油を超えて向上された特性を示す。特に、ブレンド原油は、微粒子を含むベース原油を超えて、ファウリングの顕著な低減を示す。これは、原油精製要素内の伝熱の向上、および全エネルギー消費量の低減をもたらす。
【0038】
例証目的のために、限定なしに、図1は、Alcor試験配置を示す。これは、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油の添加が、ファウリングの低減および軽減にいかなる影響を有するかを測定するのに用いられる。試験配置には、原油の原料供給物を含む貯蔵器10が含まれる。原油の原料供給物は、ベース原油(全原油、または二種以上の原油を含むブレンド原油を含む)を含むことができる。原料供給物はまた、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油を含むことができるか、または、非HSDP原油は、システム内の下流に、既知の技術を用いて、適切な位置で導入されることができる。原料供給物は、温度凡そ150℃/302°Fへ加熱され、次いで、垂直に配向された加熱ロッド12を含むシェル11に供給される。加熱ロッド12は、炭素鋼から形成されることができる。加熱ロッド12は、熱交換器の管をシミュレートする。加熱ロッド12は、所定温度へ電気加熱され、試験中、これらの所定温度で保持される。典型的には、ロッドの表面温度は、凡そ370℃/698°Fおよび400℃/752°Fである。原料供給物は、流速凡そ3.0mL/分で、加熱ロッド12を横切って圧送される。使用後の原料供給物は、貯蔵器10の頂部に集められる。使用後の原料供給物は、シールされたピストンによって、未処理の原料供給物油から分離され、それによりワンススルー運転が可能にされる。システムは、窒素で加圧(400〜500psig)されて、ガスが、試験中、油に溶解されたままであることが確実にされる。熱電対の読取値が、バルク流体の入口および出口温度、並びにロッド12の表面について記録される。
【0039】
一定の表面温度試験の間、ファウラントは、加熱表面に沈積および蓄積する。ファウラントデポジットは、コークスへ熱劣化される。コークスデポジットは、それを通過する油を加熱する表面の効率および/または能力を低減する断熱効果を引起す。その結果、出口バルク流体温度の低下は、ファウリングが続く間継続する。温度のこの低下は、出口液体のΔTまたはdTと呼ばれ、原油/ブレンドのタイプ、試験条件、および/または他の効果(塩、沈殿物、または他のファウリング促進物質の存在など)によることができる。標準Alcorファウリング試験は、180分間行われる。全ファウリングは、出口液体温度の全低下によって測定されるが、これは、ΔT180またはdT180と呼ばれる。
【0040】
原油中の微粒子の存在は、製油所構成装置または装置のファウリングに影響を有する。ファウリングは、微粒子を含まない類似の原油と比較した場合に、酸化鉄(Fe)粒子の存在下で増大する。本発明は、全ての全原油およびブレンド原油に、並びに製油所構成装置(限定されることなく、熱交換器を含む)においてファウリングを経るか、および/またはそれを生成する類似のものの処方物に適用されるものである。ファウリングの存在は、熱交換器内に含まれる加熱管またはロッドの伝熱を低減する。上記されるように、ファウリングの存在は、熱交換器の性能および効率に有害な影響を有する。
【0041】
ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDPのファウリング原油ブレンドへの添加は、対照グループと比較した場合に、微粒子ファウリングを低減することが示されている。試料試験を行って、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油のベース原油への添加が、ベース油のファウリングに有する影響が決定された。結果を、図2に示す。非HSDP(非ファウリング)原油25%の添加による初期対照ブレンドのファウリングの低減は、凡そ20%である。ファウリングの低減は、非HSDP原油25%とHSDP原油から分離されたレジン250wppmとの添加物がベース原油とブレンドされた場合に、33%へ増大される。
【0042】
結果は、HSDP原油から分離されたレジンppmを、ベース油とブレンドする前に非HSDP原油へ添加することは、非HSDP原油のファウリング軽減の効果を増大することを示す。本発明の利点について、上記の例証例は、本発明を限定するものではない。
【0043】
上記されるように、および本発明の他の態様に従って、微粒子またはアスファルテンファウリングに伴われるファウリング条件を経ることができるシステムが提供される。システムには、一般に、少なくとも一つの原油精製要素、および少なくとも一つの原油精製要素と流体連通するブレンドが含まれる。ブレンドには、ベース原油、およびファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油が含まれる。ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油には、非HSDP原油、および高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンの有効量が含まれる。
【0044】
上記されるように、ベース原油は、全原油、または少なくとも二種の原油のブレンドであることができる。原油精製要素は、熱交換器、加熱炉、蒸留カラム、スクラバー、反応器、液体ジャケット付きタンク、パイプスチル、コーカー、ビスブレーカー、または他の適切な構成装置であることができる。
【0045】
当業者には、種々の修正および/または変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、なされることができることは明らかであろう。添付の明細書に含まれる全ての事項は、単に例証として、および限定する意味なしに、解釈されるべきものである。本発明は、製油所運転における熱交換器に関連して説明されているものの、本発明は、そのように限定されるものではなく、むしろ、本発明は、他の製油所構成装置(限定されることなく、パイプスチル、コーカー、ビスブレーカーなどを含む)において、ファウリングを低減および/または軽減するのに適切であると考慮される。
【0046】
更に、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非HSDP原油の使用は、本発明に関連して説明されるように、ファウリングを低減および/または軽減する他の技術と組合わされることができることが考慮される。これらの技術には、限定されることなく、(i)熱交換器の管における低エネルギー表面および改良鋼表面の提供(特許文献5および特許文献6に記載され、その開示は、本明細書に、明確に引用して含まれる);(ii)制御された機械的振動の使用(特許文献6に記載され、その開示は、本明細書に、明確に引用して含まれる);(iii)流体脈動および/または振動の使用。これは、表面被覆と組合わされることができる(特許文献7(2007年6月19日出願、表題「熱交換器におけるファウリングの低減」)に記載され、その開示は、本明細書に、明確に引用して含まれる);(iv)熱交換器の管の電解研磨、並びに/若しくは表面被覆および/または変性の使用(特許文献8に記載され、その開示は、本明細書に、明確に引用して含まれる);および(v)類似物の組合せ(特許文献9(2006年12月20日出願、表題「製油所における熱交換器のファウリングの低減方法」)に記載され、その開示は、本明細書に、明確に引用して含まれる)が含まれる。従って、本発明は、それらが添付される特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る限り、本明細書の方法の修正および変更を包含するものである。
【0047】
本発明の特定の形態が説明されているものの、当業者には、種々の修正は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされることができることが明らかであろう。
【0048】
従って、本発明は、添付される特許請求の範囲によるものを除いて、限定されるものではない。本発明は、一つ以上の特定の実施形態を参照して説明されているものの、当業者は、多くの変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それに対して為されることができることを、理解するであろう。これらの実施形態のそれぞれ、およびそれらの明らかな変更は、本請求発明の精神および範囲内に入るものとして考慮される。これは、次の特許請求の範囲に述べられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油の作製方法であって、
非HSDP原油を提供する工程;
高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンを提供する工程;および
前記非HSDP原油と、有効量の前記レジンをブレンドして、ブレンド原油を形成する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ファウリングした原油精製要素のオンライン清浄化方法であって、
ファウリングした原油精製要素を運転する工程、および
前記ファウリングした原油精製要素に、ブレンド原油を供給する工程であって、
前記ブレンド原油は、ベース原油およびファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油のブレンドを含み、
ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された前記非HSDP原油は、非HSDP原油および有効量の、高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンを含む工程
を含むことを特徴する方法。
【請求項3】
原油精製要素におけるファウリングの低減方法であって、
ベース原油を提供する工程、
ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油を提供する工程であって、
ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された前記非HSDP原油は、非HSDP原油および有効量の、高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンを含む工程、
前記ベース原油を、ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された前記非HSDP原油とブレンドして、ブレンド原油を生成する工程、および
前記ブレンド原油を、原油精製要素へ供給する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記ベース原油は、全原油または少なくとも二種の原油のブレンドの一つであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記原油精製要素は、熱交換器、加熱炉、蒸留カラム、スクラバー、反応器、液体ジャケット付きタンク、パイプスチル、コーカーおよびビスブレーカーよりなる群から選択されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記非HSDP原油は、溶解ブレンディング数(SBN)90未満を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記非HSDP原油は、55超かつ75未満の溶解ブレンディング数(SBN)を有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記レジンの有効量は、少なくとも50wppmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記レジンの有効量は、50〜1000wppmであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油であって、
ベース非HSDP原油、および
有効量の、高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジン
を含むことを特徴とする非HSDP原油。
【請求項11】
微粒子またはアスファルテンによるファウリングに関連したファウリング条件を経ることができるシステムであって、
少なくとも一つの原油精製要素、および
前記少なくとも一つの原油精製要素と流体連通するブレンド
を含み、
前記ブレンドは、ベース原油およびファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された非高溶解分散能(非HSDP)原油を含み、
ファウリング軽減およびオンライン清浄化の効果が増大された前記非HSDP原油は、非HSDP原油および有効量の、高溶解分散能(HSDP)原油から分離されたレジンを含むことを特徴とするシステム。
【請求項12】
前記少なくとも一つの原油精製要素は、熱交換器、加熱炉、蒸留カラム、スクラバー、反応器、液体ジャケット付きタンク、パイプスチル、コーカーおよびビスブレーカーよりなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも一つの原油精製要素は、熱交換器であることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記レジンの有効量は、少なくとも50wppmであることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の非HSDP原油。
【請求項15】
前記レジンの有効量は、50〜1000wppmであることを特徴とする請求項14に記載の非HSDP原油。
【請求項16】
前記ベース非HSDP原油は、溶解ブレンディング数(SBN)90未満を有することを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載の非HSDP原油。
【請求項17】
前記ベース非HSDP原油は、55超かつ75未満の溶解ブレンディング数(SBN)を有することを特徴とする請求項16に記載の非HSDP原油。
【請求項18】
前記ベース非HSDP原油は、全原油または少なくとも二種の原油のブレンドの一つであることを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載の非HSDP原油。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−511618(P2012−511618A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540696(P2011−540696)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/006477
【国際公開番号】WO2010/068267
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】