説明

ファミリー44キシログルカナーゼのバリアント

本発明は、親キシログルカナーゼのバリアントに関する。本発明はまた、バリアントキシログルカナーゼをコードするポリヌクレオチドに関し、並びに当該ポリヌクレオチドを含む、核酸コンストラクト、ベクター、及び宿主細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、コンピュータで読み取り可能な形態の配列表を含む。当該コンピュータで読み取り可能な形態は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の技術分野
本発明は、グリコシルヒドロラーゼのファミリー44に属するキシログルカナーゼのバリアント、当該バリアントをコードするポリヌクレオチド、及び当該バリアントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
キシログルカンは、植物の一次(増殖)細胞壁における主要な構造多糖類である。構造的にキシログルカンは、セルロース様のベータ−1,4−結合したグルコースの主鎖から成り、そしてそれは種々の側鎖で高頻度に置換される。キシログルカンは、植物の一次壁において、セルロースミクロフィブリルを架橋し、セルロース−キシログルカン・ネットワークを形成することによって機能すると考えられている。
【0004】
キシログルカナーゼは、キシログルカンオリゴ糖へのキシログルカンの可溶化を触媒することができる。幾つかのキシログルカナーゼはキシログルカナーゼ活性のみを示すが、他のものはキシログルカナーゼ活性とセルラーゼ活性の両方を示す。キシログルカナーゼは、EC3.2.1.4又はEC.3.2.1.151に分類され得る。キシログルカナーゼ活性を有する酵素は、例えば、Vincken他(1997)Carbohydrate Research 298(4):299−310に記載されており、当該文献において、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)(T.リーセイ(reesei)に類似)由来の3つの異なるエンドグルカナーゼ、EndoI、EndoV及びEndoVIが特徴付けされた。EndoI、EndoV及びEndoVIは、グリコシルヒドロラーゼのファミリー5、7及び12にそれぞれ属する。Henrissat,B.(1991)Biochem.J.280:309−316、及びHenrissat,B.and Bairoch,A.(1993)Biochem.J.293:781−788を参照。国際公開第94/14953号は、真菌のアスペルギルス(Aspergillus)・アクレアツス(aculeatus)からクローニングされたファミリー12キシログルカナーゼ(EGII)を開示する。国際公開第99/02663号は、バチルス(Bacillus)・リケニホルミス(licheniformis)及びバチルス・アガラドヘレンス(agaradhaerens)のそれぞれからクローニングされた、ファミリー12及びファミリー5キシログルカナーゼを開示する。国際公開第01/062903号は、ファミリー44キシログルカナーゼを開示する。特に、国際公開第99/02663号及び国際公開第01/062903号は、キシログルカナーゼが洗浄剤において使用され得ることを示唆している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、その親酵素と比較して改善された特性を有する、グリコシルヒドロラーゼのファミリー44に属する、キシログルカナーゼのバリアントを提供することである。
【0006】
発明の概要
本発明は、親キシログルカナーゼの単離されたバリアントであって、位置番号:
【0007】
【化1】

【0008】
から成る群から選択される一つ以上の(幾つかの)位置における変更(alternation)を含み、当該位置は配列番号3のアミノ酸配列における位置に対応し、そして当該変更は、独立して:
i)当該位置を占めるアミノ酸の下流におけるアミノ酸の挿入、
ii)当該位置を占めるアミノ酸の欠失、又は
iii)当該位置を占めるアミノ酸と、異なるアミノ酸との置換
であり;そしてキシログルカナーゼ活性を有する、当該バリアントに関する。
【0009】
本発明はまた、バリアントキシログルカナーゼをコードする又はキシログルカナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含む、核酸コンストラクト、ベクター、及び宿主細胞、並びに親キシログルカナーゼのバリアント、又はキシログルカナーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】コンセンサス配列1は、アラインメントから、所定の位置において最も豊富なアミノ酸を含む配列であり、コンセンサス配列2は、所定の位置において2番目に豊富なアミノ酸を有する配列である、などである。
【図1B】コンセンサス配列1は、アラインメントから、所定の位置において最も豊富なアミノ酸を含む配列であり、コンセンサス配列2は、所定の位置において2番目に豊富なアミノ酸を有する配列である、などである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、親のファミリー44キシログルカナーゼのバリアントであって、好ましくは置換、及び/又は挿入、及び/又は欠失の形態である変更を一つ以上の(幾つかの)位置で含み、ここで当該位置の番号は配列番号3の位置の番号に対応する、当該バリアントに関する。本発明のバリアントは、キシログルカナーゼ活性を有し、そして同様に潜在的にセルロース分解性活性を有する。本発明のバリアントは、親のキシログルカナーゼと比較して改善された特性を有する。一つの態様において当該バリアントは、液体洗剤中で、特に洗濯用液体洗剤組成物中で改善された安定性を有する。
【0012】
定義
キシログルカナーゼ活性:本明細書において用語「キシログルカナーゼ活性」は、キシログルカンの加水分解を触媒する酵素として定義される。当該反応は、キシログルカンの1,4−β−D−グリコシド結合のエンド(endo)加水分解を伴う。本発明の目的のために、キシログルカナーゼ活性は、AZCL−キシログルカン(Megazyme製)を反応基質として用いて決定される。当該アッセイは、幾つかの方法で、例えば本出願の実施例2において記載された方法、又は国際公開第01/62903号に記載された方法で行われ得る。キシログルカナーゼ活性の1ユニット(XyloU)は、国際公開第01/62903号、60ページ、3〜17行目に記載されたアッセイ方法を参照することによって定義される。
【0013】
セルラーゼ活性:本明細書において用語「セルラーゼ活性」は、ベータ−1,4−グルカン(セルロース)における、1,4−ベータ−D−グリコシド結合の加水分解を触媒する酵素として定義される。本発明の目的のために、AZCL−HE−セルロース(Megazyme製)を反応基質として用いてセルラーゼ活性は決定される。
【0014】
バリアント:本明細書において用語「バリアント」は、位置が配列番号3におけるアミノ酸の位置に対応する、一つ以上の(幾つかの)特定の位置における一つ以上の(幾つかの)アミノ酸残基の変更、例えば置換、挿入、及び/又は欠失を含む、キシログルカナーゼ活性を有するポリペプチドとして定義される。本発明のバリアントはまた、セルラーゼ活性を有し得る。変更されたポリペプチド(バリアント)は、親の酵素をコードするポリヌクレオチド配列の修飾による、ヒトの介入を通じて得られる。親の酵素は、配列番号1、配列番号4、又は配列番号6によってコードされ得、或いはこれらの配列の一つと少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であって、そして活性ポリペプチドをコードする配列によってコードされ得る。バリアントポリペプチド配列は、好ましくは天然において発見されないものである。
【0015】
野生型酵素:用語「野生型」キシログルカナーゼは、天然に存在する微生物、例えば天然において見られる細菌、酵母、又は糸状菌によって発現されるキシログルカナーゼを示す。用語「野生型」は、用語「天然に存在する」と交換可能に使用され得る。
【0016】
親酵素:本明細書において使用される用語「親」キシログルカナーゼ又は「親の」キシログルカナーゼは、本発明の酵素バリアントを産生するように、修飾、例えば置換(単数又は複数)、挿入(単数又は複数)、欠失(単数又は複数)、及び/又は切断(単数又は複数)がなされたキシログルカナーゼを意味する。本用語はまた、バリアントが比較され、且つ整列(アラインメント)がなされるポリペプチドのことである。当該親は、天然に存在する(野生型)ポリペプチド、例えば配列番号2、又は配列番号3、又は配列番号5、又は配列番号7の酵素、或いはこれらの配列の一つと少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であるポリペプチドであり得る。親ポリペプチドはまた、アミノ酸配列が修飾又は変更された、天然に存在するポリペプチドのバリアントであり得る。親はまた、アレルのバリアントであり得、そしてそれは、同じ染色体座位を占める遺伝子の、任意の二つ以上の代替形態の遺伝子によってコードされるポリペプチドである。
【0017】
単離されたバリアント又はポリペプチド:本明細書において使用される用語「単離されたバリアント」又は「単離されたポリペプチド」は、源、例えばそれが発現される宿主細胞、又はそれが通常存在する酵素複合体から単離される、バリアント又は酵素複合体のことである。当該ポリペプチドは好ましくは、SDS−PAGEで決定される通り、少なくとも40%純粋、より好ましくは少なくとも60%純粋、さらにより好ましくは少なくとも80%純粋、最も好ましくは少なくとも90%純粋、そしてさらに最も好ましくは少なくとも95%純粋である。
【0018】
実質的に純粋なバリアント又はポリペプチド:本明細書における用語「実質的に純粋なバリアント」又は「実質的に純粋なポリペプチド」は、天然又は組み換えに関連する他のポリペプチド材料を、最大10重量%、好ましくは最大8重量%、より好ましくは最大6重量%、より好ましくは最大5重量%、より好ましくは最大4重量%、より好ましくは最大3重量%、さらにより好ましくは最大2重量%、最も好ましくは最大1重量%、そしてより最も好ましくは最大0.5重量%含むポリペプチド調製物を示す。したがって、実質的に純粋なバリアント又はポリペプチドは、当該調製物中に存在する総ポリペプチド材料が少なくとも92重量%純粋、好ましくは少なくとも94重量%純粋、より好ましくは少なくとも95重量%純粋、より好ましくは少なくとも96重量%純粋、より好ましくは少なくとも97重量%純粋、より好ましくは少なくとも98重量%純粋、さらにより好ましくは少なくとも99重量%純粋、最も好ましくは少なくとも99.5重量%純粋、そしてさらに最も好ましくは少なくとも100重量%純粋であることが好ましい。本発明のバリアント及びポリペプチドは、好ましくは実質的に純粋な形態で存在する。これは例えば、周知の組み換え法により、又は古典的な精製法により、当該バリアント又はポリペプチドを精製することによって達成され得る。
【0019】
成熟ポリペプチド:本明細書において用語「成熟ポリペプチド」は、翻訳及び任意の翻訳後修飾、例えばN末端プロセシング、C末端切断、グリコシル化、リン酸化などを経たその最終形態で存在する、キシログルカナーゼ活性を有するポリペプチドとして定義される。配列番号2によって定義されたポリペプチドに関して、成熟キシログルカナーゼ配列は、理論上配列番号2の位置28で開始し得る。当該成熟配列は、配列番号2の位置551で終了する。理論上の成熟キシログルカナーゼ配列が配列番号3に示される。発現系に依存して、実際の成熟ポリペプチドの長さは理論上の成熟ポリペプチドに基づいて、1〜10個のアミノ酸の長さで変化し得る。成熟ポリペプチドは例えば、配列番号2の位置33で開始し、そして配列番号2の位置551で終了し得る。
【0020】
成熟ポリペプチドコード配列:本明細書において用語「成熟ポリペプチドコード配列」は、キシログルカナーゼ活性を有する成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列として定義される。一つの態様において、成熟ポリペプチドコード配列は、配列番号1のヌクレオチド82〜1653である。当該成熟ポリペプチドコード配列は、発現系に依存して、3〜30個のヌクレオチドの長さで変化し得る。当該成熟ポリペプチドコード配列は例えば、配列番号1のヌクレオチド97〜1653に対応する。
【0021】
同一性:2つのアミノ酸配列間の関連性、又は2つのヌクレオチド配列間の関連性は、パラメータ「同一性」によって記載される。
【0022】
本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、好ましくはバージョン3.0.0以降の、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al,2000,Trends in Genetics 16:276−277;http://emboss.org)のNeedleプログラムに備わった、Needleman−Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443−453)を用いて決定される。使用される任意のパラメータは、10のギャップ・オープン・ペナルティ(gap open penalty)、0.5のギャップ・エクステンション・ペナルティ(gap extension penalty)、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換行列である。(−nobriefオプションを用いて得られる)Needle標識された「最長同一性(longest identity)」のアウトプットは、パーセント同一性として使用され、そして以下のように計算される:
(同一残基×100)/(アラインメントの長さ−アラインメントにおけるギャップの総数)
【0023】
本発明の目的のために、2つのデオキシリボヌクレオチド酸配列間の同一性の程度は、好ましくはバージョン3.0.0以降の、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al,2000,Trends in Genetics 16:276−277;http://emboss.org)のNeedleプログラムに備わった、Needleman−Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443−453)を用いて決定される。使用される任意のパラメータは、10のギャップ・オープン・ペナルティ(gap open penalty)、0.5のギャップ・エクステンション・ペナルティ(gap extension penalty)、及びEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換行列である。(−nobriefオプションを用いて得られる)Needle標識された「最長同一性(longest identity)」のアウトプットは、パーセント同一性として使用され、そして以下のように計算される:
(同一のデオキシリボヌクレオチド×100)/(アラインメントの長さ−アラインメント中のギャップ総数)
【0024】
機能性断片:用語「ポリペプチドの機能性断片」は、より長いポリペプチド、例えば成熟ポリペプチドに由来するポリペプチドを説明するために使用され、そして当該成熟ポリペプチドは、親ポリペプチドの断片を生じるためにN末端領域かC末端領域のいずれかで、又は両方の領域で切断される。機能性ポリペプチドであるために、当該断片は、完全長/成熟ポリペプチドの少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、そしてさらに最も好ましくは少なくとも100%のキシログルカナーゼ活性を維持しなければならない。
【0025】
アレルのバリアント:本明細書における用語「アレルのバリアント」は、同一の染色体座を占める遺伝子の、任意の2つ以上の代替形態を示す。アレルの変化は、天然においては変異を通じて生じ、そして群内において多型をもたらす。遺伝子の変異は、サイレント(コードされたポリペプチドにおいて変化がない)であり得るか、又はアミノ酸配列が変化したポリペプチドをコードし得る。ポリペプチドのアレルのバリアントは、遺伝子のアレルのバリアントによってコードされたポリペプチドである。
【0026】
単離されたポリヌクレオチド:本明細書において使用される用語「単離されたポリヌクレオチド」は、源から単離されるポリヌクレオチドのことである。一つの態様において、単離されたポリヌクレオチドは、アガロース電気泳動によって決定される通り、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも80%、そして最も好ましくは少なくとも90%、そしてさらに最も好ましくは少なくとも95%純粋である。
【0027】
実質的に純粋なポリヌクレオチド:本明細書において使用される用語「実質的に純粋なポリヌクレオチド」は、他の異質の又は不要なヌクレオチドを有しない、遺伝子組み換えがなされたポリペプチド産生系における使用に好適な形態であるポリヌクレオチド調製物のことである。したがって、実質的に純粋なポリヌクレオチドは、天然又は組み換えに関連する他のポリヌクレオチド材料を最大10重量%、好ましくは最大8重量%、好ましくは最大6重量%、より好ましくは最大5重量%、より好ましくは最大4重量%、より好ましくは最大3重量%、さらにより好ましくは最大2重量%、最も好ましくは最大1重量%、そしてさらに最も好ましくは最大0.5重量%含む。しかし、実質的に純粋なポリヌクレオチドは、天然で生じる5’及び3’未翻訳領域、例えばプロモーター及びターミネーターを含み得る。実質的に純粋なポリヌクレオチドは、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも92重量%、より好ましくは少なくとも94重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも96重量%、より好ましくは少なくとも97重量%、さらにより好ましくは少なくとも98重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%、そしてさらに最も好ましくは99.5重量%純粋であることが好ましい。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは実質的に純粋な形態で、すなわち、ポリヌクレオチド調製物が天然又は組み換えに関連する他のポリヌクレオチド材料を実質的に有しない形態で存在する。当該ポリヌクレオチドは、遺伝子、cDNA、RNA、半合成、合成由来のもの、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0028】
コード配列:本明細書において使用されるとき、用語「コード配列」は、そのポリペプチド産物のアミノ酸配列を直接的に特定するポリヌクレオチドを意味する。コード配列の境界は、オープンリーディングフレームによって一般的に決定され、そしてそれはATG開始コドンで、又は代替的開始コドン、例えばGTG及びTTGで通常開始し、そして終止コドン、例えばTAA、TAG、及びTGAで終止する。当該コード配列は、DNA、cDNA、合成又は組み換えポリヌクレオチドであり得る。
【0029】
機能し得るように連結された:本明細書において、用語「機能し得るように連結された」は、コントロール配列がポリペプチドのコード配列の発現を命令するように、ポリヌクレオチド配列のコード配列に対して好適な位置に当該コントロール配列が配置される形態のことを示す。
【0030】
宿主細胞:本明細書において使用される用語「宿主細胞」は、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸コンストラクト又はベクターを用いた形質転換、トランスフェクション、形質導入などを受け易い任意の細胞種を含む。用語「宿主細胞」は、複製時に生じる変異のために親細胞と同一ではない、親細胞の任意の後代を含む。
【0031】
改善された化学安定性:用語「改善された化学安定性」は、親酵素の酵素活性を減少させる、天然由来又は合成性のいずれかである化学物質(単数又は複数)の存在下におけるインキュベーションの後において、バリアント酵素が酵素活性の維持を示すこととして定義される。改善された化学安定性はまた、かかる化学物質の存在下において反応を触媒することが可能な、より優れたバリアントをもたらし得る。本発明の特定の態様において、改善された化学安定性は、洗剤中、特に液体洗剤中における改善された安定性である。改善された洗剤安定性は特に、本発明のキシログルカナーゼバリアントが液体洗剤製剤へと混合され、その後15〜50℃で保管されるときにおける、キシログルカナーゼ活性の改善された安定性である。
【0032】
本発明において、液体洗剤は液体洗濯洗剤として特に有用である。
【0033】
バリアントの命名規則
本発明の目的のために、配列番号3で示されたキシログルカナーゼのアミノ酸配列は、別のキシログルカナーゼにおいて対応するアミノ酸残基を決定するために使用される。別のキシログルカナーゼのアミノ酸配列は、配列番号3に開示されたキシログルカナーゼのアミノ酸配列と整列(アラインメント)がなされ、そして当該アラインメントに基づいて、配列番号3に開示されたキシログルカナーゼのアミノ酸配列における任意のアミノ酸残基に対応するアミノ酸の位置番号が決定され得る。
【0034】
ポリペプチド配列のアラインメントは、例えば、「ClustalW」(Thompson,J.D.,Higgins,D.G.and Gibson,T.J.,1994,CLUSTAL W:Improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting,positions−specific gap penalties and weight matrix choice,Nucleic Acids Research 22:4673−4680)を用いてなされ得る。DNA配列のアラインメントは、鋳型としてポリペプチドアラインメントを用い、当該アミノ酸をDNA配列由来の対応するコドンに置き換えることでなされ得る。
【0035】
本発明の種々のキシログルカナーゼバリアントを説明するときに、参照しやすいように、以下に記載された命名が適用される。全ての場合において、一般に認められているIUPACの一文字又は三文字アミノ酸略記が使用される。
【0036】
置換:アミノ酸の置換に関して、以下の命名が使用される:元のアミノ酸/位置/置換されたアミノ酸。したがって、アラニンを用いた位置226におけるスレオニンの置換は、「Thr226Ala」又は「T226A」と命名される。多重変異は、マーク(「+」)を付加することによって分離され、例えば「G205R+S411F」は、位置205及び411において、アルギニン(R)を用いたグリシン(G)の置換、及びフェニルアラニン(F)を用いたセリン(S)の置換をそれぞれ表す。元のアミノ酸が、ある群から選択されたアミノ酸によって置換され得る場合、それは「K129R,S,A,I,F,Q」と命名され、そしてそれは:アルギニン(R)、セリン(S)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)及びグルタミン(Q)から成る群から選択されるアミノ酸を用いた、位置129におけるリシン(K)の置換を表す。或いは、「K129R,S,A,I,F,Q」は、K129R、又はK129S、又はK129A、又はK129I、又はK129F、又はK129Qと記載され得る。
【0037】
欠失:アミノ酸欠失に関して、以下の命名が使用される:元のアミノ酸/位置/アスタリスク(*)。したがって、位置195におけるグリシンの欠失は、「Gly195*」又は「G195*」と命名される。多重欠失は、例えば「G195*+S411*」のように、マーク(「+」)を付加することによって分離される。
【0038】
挿入:アミノ酸の挿入に関して、以下の命名が使用される:アスタリスク(*)/位置/小文字/挿入されるアミノ酸、ここで小文字は位置番号の下流におけるアミノ酸の付加を示す。したがって、位置10の下流におけるグルタミン酸(E)の挿入は、「*10aE」と命名される。第二のアミノ酸、例えばバリン(V)が、位置10の下流に、グルタミン酸(E)の後に挿入される場合、それは「*10aE+*10bV」と命名される。ポリペプチドのN末端の付加は、0(ゼロ)で示される。ポリペプチドのN末端アミノ酸へ付加される、グルタミン酸(E)及びバリン(V)の付加は、「*0aE+*0bV」と命名される。「下流」への挿入はまた、指定された位置と当該指定された位置の直後の位置との間における一つ以上のアミノ酸の付加として記載され得、例えば位置195の下流への挿入は、位置195と196との間における一つ以上のアミノ酸の挿入をもたらし、それにより新規位置である*195a、*195bなどを生じる。
【0039】
親キシログルカナーゼ
本発明において、親キシログルカナーゼは、(a)ファミリー44キシログルカナーゼとも呼ばれるグリコシルヒドロラーゼのファミリー44に属するキシログルカナーゼであるか;或いは(b)配列番号3、配列番号5、及び配列番号7から成る群から選択されるポリペプチドであるか;或いは(c)配列番号3の成熟ポリペプチドと少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであるか;或いは(d)(i)配列番号1、若しくは配列番号4、若しくは配列番号6の成熟ポリペプチドコード配列、(ii)配列番号1、若しくは配列番号4、若しくは配列番号6の成熟ポリペプチドコード配列を含むゲノムDNA配列、又は(iii)(i)若しくは(ii)の完全長相補鎖、を有する中等度ストリジェンシー条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドであるか;或いは(e)配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドであるかのいずれかである。
【0040】
第一の態様において、親キシログルカナーゼは、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、さらにより好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも98%、又はさらに最も好ましくは少なくとも99%の同一性度を有するアミノ酸配列を含み、そしてそれはキシログルカナーゼ活性を有する(これ以降、「類似(homologous)ポリペプチド」と呼ぶ)。第一の態様において、類似ポリペプチドは、配列番号3の成熟ポリペプチドとは10個の、好ましくは9個の、より好ましくは8個の、より好ましくは7個の、より好ましくは6個の、より好ましくは5個の、より好ましくは4個の、さらにより好ましくは3個の、最も好ましくは2個の、そしてさらに最も好ましくは1個のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する。
【0041】
実質的に類似の親キシログルカナーゼは、一つ以上の(幾つかの)アミノ酸の変更、例えば置換、欠失及び/又は挿入を有し得る。これらの変化は、好ましくは小規模な性質のものであり、そしてそれは保存的アミノ酸置換、及びタンパク質又はポリペプチドの3次元フォールディング又は活性に著しく影響を与えない他の置換;典型的には1〜約9個のアミノ酸の、好ましくは1〜約15個のアミノ酸の、そして最も好ましくは1〜約30個のアミノ酸の小規模の欠失;及び小規模のアミノ若しくはカルボキシル末端の伸長、例えばアミノ末端のメチオニン残基の伸長、約5〜10個の残基の、好ましくは10〜15個の残基の、及び最も好ましくは20〜25個の残基の小さいリンカーペプチド、又は精製を容易にする小規模の伸長(アフィニティタグ)、例えばポリヒスチジンタグ、若しくはプロテインA(Nilsson et al.,1985,EMBO J.4:1075;Nilsson et al.,1991,Methods Enzymol.198:3.同様に、一般的にはFord et al.,1991,Protein Expression and Purification 2:95−107を参照)である。
【0042】
上記の変化は好ましくは小規模な性質のものであるが、かかる変化はまた、実質的な性質のもの、例えばアミノ又はカルボキシル末端の双方の伸長として、300個以上のアミノ酸の、より大きなポリペプチドの融合であり得る。
【0043】
保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン、及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、及びバリン)、芳香族性アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、並びに小さいアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、及びメチオニン)の群の内で存在する。一般的に特異的な活性を変更しないアミノ酸置換は、例えば、Neurath and Hill,1979,In,The Proteins,Academic Press,New Yorkに記載されている。最も一般的に生じる交換は:
【0044】
【化2】

【0045】
である。
【0046】
本発明のキシログルカナーゼポリペプチドにおいて必須のアミノ酸は、当技術分野において既知の手法に従って、例えば部位特異的変異誘発、又はアラニン−スキャニング変異誘発で同定され得る(Cunningham and Wells,Science 244:1081−1085,1989)。後者の技術において、単一のアラニンの変異が分子中の全ての残基に導入され、そして生じた変異分子の生物活性(すなわちキシログルカナーゼ活性)が試験され、当該分子の活性において重要であるアミノ酸残基が同定される。同様に、Hilton et al.,J.Biol.Chem.271:4699−4708,1996を参照。酵素の活性部位又は他の生物学的相互作用がまた、構造の物理学的分析によって、例えば、推定上の接触部位アミノ酸の変異と共に、核磁気共鳴、結晶構造解析、電子回折、又は光アフィニティラベリングのような技術によって決定され得る。例えば、de Vos et al.,Science 255:306−312,1992;Smith et al.,J.Mol.Biol.224:899−904,1992;Wlodaver et al.,FEBS Lett.309:59−64,1992を参照。必須のアミノ酸の特性はまた、本発明のポリペプチドと関連性があるポリペプチドとの相同性の分析から推測され得る。ファミリー44グリコシルヒドロラーゼに属する酵素の結晶構造は、Kitago et.al,J.Biol.Chem.Vol.282:35703−35711,2007に公開されている。この構造に基づいて、親キシログルカナーゼ(配列番号3)の三次元構造をイン・シリコ(in silico)で生じさせることが可能である。公開された構造との比較に基づいて、配列番号3の以下の残基が、酵素機能のために重要であるものとして同定された:E187(触媒性−酸/塩基)、E358(触媒性−求核種)、E56(Ca2+と配位するカルボキシレート基)、及びD154(Ca2+と配位するカルボキシレート基)。したがってこれらの位置は、親酵素中において好ましくは変異されるべきではない。
【0047】
親キシログルカナーゼは好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列又はキシログルカナーゼ活性を有するそのアレルのバリアントを含む。一つの態様において、親キシログルカナーゼは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。別の態様において、親キシログルカナーゼは、配列番号2の成熟ポリペプチドを含む。別の態様において、親キシログルカナーゼは、配列番号3のアミノ酸配列、若しくはそのアレルのバリアント、又はキシログルカナーゼ活性を有するそれらの断片から成る。別の態様において、親キシログルカナーゼは、配列番号5のアミノ酸配列、若しくはそのアレルのバリアント;又はキシログルカナーゼ活性を有するそれらの断片を含む。別の態様において、親キシログルカナーゼは、配列番号7のアミノ酸配列、若しくはそのアレルのバリアント;又はキシログルカナーゼ活性を有するそれらの断片を含む。別の態様において、親キシログルカナーゼは、配列番号2、又は配列番号3、又は配列番号5と、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、同一であるアミノ酸配列を含む。配列番号3の成熟ポリペプチドの断片は、このアミノ酸配列のアミノ及び/又はカルボキシル末端から一つ以上の(幾つかの)アミノ酸が欠失しているが、なおキシログルカナーゼ活性を維持しているポリペプチドである。
【0048】
第二の態様において、親キシログルカナーゼは、非常に低いストリジェンシー条件下で、好ましくは低ストリジェンシー条件下で、好ましくは中等度ストリジェンシー条件下で、より好ましくは中等度〜高ストリジェンシー条件下で、さらにより好ましくは高ストリジェンシー条件下で、そして最も好ましくは非常に高いストリジェンシー条件下で、(i)配列番号1、又は配列番号4、又は配列番号6の、成熟ポリペプチドコード配列(ii)配列番号1、又は配列番号4、又は配列番号6の、成熟ポリペプチドコード配列を含むゲノムDNA配列(iii)(i)若しくは(ii)のサブ配列(subsequence)、又は(iv)(i)、(ii)、若しくは(iii)の完全長相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる(J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd edition,Cold Spring Harbor,New York)。当該サブ配列は、キシログルカナーゼ活性を有するポリペプチド断片をコードし得る。一つの態様において、相補鎖は、配列番号1、又は配列番号4、又は配列番号6の成熟ポリペプチドコード配列の完全長相補鎖である。
【0049】
配列番号1、又は配列番号4、又は配列番号6の、成熟ポリペプチドコード配列のサブ配列、又はその相同体は、一つ以上の(幾つかの)ヌクレオチドが5’及び/又は3’末端から欠失したヌクレオチド配列であり、ここで当該サブ配列によってコードされたポリペプチドはキシログルカナーゼ活性を有する。
【0050】
親酵素はまた、キシログルカナーゼ活性を有するポリペプチドの、アレルのバリアントであり得る。
【0051】
配列番号1、若しくは配列番号4、若しくは配列番号6のポリヌクレオチド;又はそのサブ配列;及び配列番号3、若しくは配列番号5、若しくは配列番号7のアミノ酸配列;又はその断片は、当技術分野において周知の方法に従って、異なる属又は種の株由来の親キシログルカナーゼをコードするDNAを同定且つクローニングするための核酸プローブを設計するために使用され得る。特に、かかるプローブは、対応する遺伝子を同定且つ単離するために、対象の属若しくは種のゲノム又はcDNAとハイブリダイゼーションさせ、その後標準的サザンブロッティング法を行うために使用され得る。かかるプローブは、完全配列よりもかなり短いものであり得るが、少なくとも14、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも35、そして最も好ましくは少なくとも70ヌクレオチド長であるべきである。しかし、核酸プローブは少なくとも100ヌクレオチド長であることが好ましい。例えば、核酸プローブは、少なくとも200ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも300ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも400ヌクレオチド長、又は最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチド長であり得る。さらにより長いプローブが使用され得、例えば好ましくは少なくとも600ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも700ヌクレオチド長、さらにより好ましくは少なくとも800ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも900ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも1000ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも1100ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも1200ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも1300ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも1400ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも1500ヌクレオチド長、又は最も好ましくは少なくとも1600ヌクレオチド長である核酸プローブである。DNAプローブ及びRNAプローブの両方が使用され得る。当該プローブは通常、対応する遺伝子を検出するために(例えば32P、3H、35S、ビオチン、又はアビジンで)標識され得る。かかるプローブは本発明に包含される。
【0052】
他の生命体から調製されたゲノムDNAライブラリーが、上記のプローブとハイブリダイズし、且つ親キシログルカナーゼをコードするDNAのためにスクリーニングされ得る。他の生命体由来のゲノムDNA又は他のDNAは、アガロース若しくはポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、又は他の分離技術によって分離され得る。当該ライブラリ−由来のDNA又は当該分離されたDNAは、ニトロセルロース又は他の好適なキャリア(carrier)材料上に移動且つ固定化される。配列番号1と相同性を有するクローン若しくはDNA、又はそのサブ配列を同定するために、当該キャリア材料はサザンブロットにおいて使用される。本発明の目的のために、ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドが、配列番号1に示されたポリヌクレオチドに相当する標識化ヌクレオチドプローブと、その相補鎖と、又はそれらのサブ配列と、低〜非常に高いストリジェンシー条件下でハイブリダイズすることを示す。当該プローブがハイブリダイズする分子は、例えばX線フィルム、又は当技術分野で既知の他の検出手段を用いて検出され得る。
【0053】
一つの態様において、核酸プローブは、配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列である。別の態様において、核酸プローブは、配列番号1のヌクレオチド82〜1653、又は配列番号1のヌクレオチド97〜1653である。別の態様において、核酸プローブは、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、又はそのサブ配列である。別の態様において、核酸プローブは配列番号1である。
【0054】
少なくとも100ヌクレオチド長の長いプローブのために、非常に低い〜非常に高いストリジェンシー条件が、42℃、5X SSPE、0.3%SDS、200マイクログラム/mlの剪断且つ変性されたサケ精子DNA、並びに非常に低い〜低いストリジェンシーにおいては25%ホルムアミド中における、中程度及び中程度〜高いストリジェンシーにおいては35%ホルムアミド中における、高い〜非常に高いストリジェンシーにおいては50%ホルムアミド中における、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションとして定義され、好ましくはその後に標準的なサザンブロッティング法が12〜24時間かけて行われる。
【0055】
少なくとも100ヌクレオチド長の長いプローブのために、キャリア材料は最終的に、2X SSC、0.2%SDSを用いて、好ましくは45℃で(非常に低いストリジェンシー)、より好ましくは50℃で(低ストリジェンシー)、より好ましくは55℃で(中等度ストリジェンシー)、より好ましくは60℃で(中等度〜高ストリジェンシー)、より好ましくは65℃で(高ストリジェンシー)、そして最も好ましくは70℃で(非常に高いストリジェンシー)3回、各15分間洗浄される。
【0056】
約15ヌクレオチド長〜約70ヌクレオチド長である短いプローブのために、ストリジェンシー条件は、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、及びBolton及びMcCarthy(1962,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 48:1390)に従った計算を使用して計算されたTmよりも約5℃〜約10℃低い温度で、0.9M NaCl、0.09M Tris−HCl pH7.6、6mM EDTA、0.5%NP−40、1X Denhardt’s溶液、1mMピロリン酸ナトリウム、1mMモノリン酸ナトリウム、0.1mM ATP、及び1mlあたり0.2mgの酵母RNAによる、ハイブリダイゼーション後の洗浄、好ましくはその後に標準的なサザンブロッティング法が12〜24時間かけて行われるものとして定義される。
【0057】
約15ヌクレオチド長〜約70ヌクレオチド長である短いプローブのために、キャリア材料は、計算されたTmよりも5〜10℃低い温度で、6X SCCプラス0.1%SDSで15分間かけて1回、及び6X SCCを用いて各15分間で2回洗浄される。
【0058】
第三の態様において、親キシログルカナーゼは、配列番号1の成熟ポリペプチドコード配列と、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、そしてさらに最も好ましくは96%、97%、98%又は99%の同一性度を有するヌクレオチド配列を含む、又はから成り、且つ活性ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドによってコードされる。一つの態様において、成熟ポリペプチドコード配列は、配列番号1のヌクレオチド82〜1653、又は配列番号1のヌクレオチド97〜1653である。
【0059】
親キシログルカナーゼは、任意の属の微生物から得られる。一つの態様において、親キシログルカナーゼは細胞外に分泌される。
【0060】
さらなる態様において、親キシログルカナーゼは、細菌性キシログルカナーゼであり得る。例えば、キシログルカナーゼは、グラム陽性細菌性ポリペプチド、例えばバチルス、好ましくはバチルス/ラクトバチルス(Lactobacillus)サブディビジョン(subdivision)由来、好ましくは,パエニバチルス(Paenibacillus)属由来の種、特にパエニバチルス・ポリミキサ(polymyxa)、例えばパエニバチルス・ポリミキサ、ATCC832であり、好ましくは、キシログルカナーゼはファミリー44キシログルカナーゼ、例えば国際公開第01/62903号に記載されたもの、より好ましくは配列番号5のキシログルカナーゼ、より好ましくは配列番号7のキシログルカナーゼ、そして最も好ましくは配列番号2のキシログルカナーゼ又はその成熟ポリペプチドであり得る。
【0061】
バリアントの生成
親キシログルカナーゼのバリアントは、当技術分野で既知の任意の変異誘発法に従って、例えばランダム及び/又は部位特異的変異誘発、合成遺伝子作成、半合成遺伝子作成、ランダム変異誘発、シャッフリングなどで調製され得る。
【0062】
合成遺伝子作成は、対象のポリペプチド分子をコードする設計されたポリヌクレオチド分子の、インビトロ(in vitro)における合成を必要とする。遺伝子合成は、多くの技術、例えば複合マイクロチップ型技術(Tian,et.al.,Nature 432:1050−1054)、並びに、オリゴヌクレオチドが光プログラム制御可能な(photo−programmable)マイクロ流体チップ上に合成され、及び組み立てられる、同様の技術を利用して行われ得る。
【0063】
半合成遺伝子作成は、合成遺伝子作成、及び/又は部位特異的変異誘発、及び/又はランダム変異誘発、及び/又はシャッフリングの態様を組み合わせることによって達成される。半合成作成は、PCR技術と組み合わせて、合成されるポリヌクレオチド断片を利用する工程によって典型的に表される。したがって、遺伝子の特定の領域は初めから合成され得るが、他の領域は部位特異的変異誘発プライマーを用いて増幅され得、さらに他の領域はエラープローン(error−prone)PCR又は非エラープローンPCR増幅がなされ得る。ポリヌクレオチド断片はその後、シャッフルされ得る。
【0064】
部位特異的変異誘発は、一つ又は幾つかの変異が、親キシログルカナーゼをコードするポリヌクレオチド分子における特定の部位において作成される技術である。当該技術は、インビトロ又はインビボ(in vivo)において行われ得る。
【0065】
部位特異的変異誘発は、所望の変異を含むオリゴヌクレオチドプライマーの使用を伴うPCRによってインビトロにおいて達成され得る。部位特異的変異誘発はまた、親キシログルカナーゼをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドのある部位での制限酵素による切断、及び当該ポリヌクレオチド中において変異を含む、オリゴヌクレオチドのその後のライゲーションを伴うカセット変異誘発によって、インビトロで行われ得る。通常、プラスミド及びオリゴヌクレオチドにおいて消化する制限酵素は同一であり、プラスミドの付着末端を許容し、そして互いをライゲーションするために挿入する。好適な技術のさらなる説明のために、以下が参照される:Sambrook et al.(1989),Molecular cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor lab.,Cold Spring Harbor,NY;Ausubel,F.M.et al.(eds.)”Current protocols in Molecular Biology”.John Wiley and Sons,1995;Harwood,C.R.,and Cutting,S.M.(eds.)”Molecular Biological Methods for Bacillus”.John Wiley and Sons,1990)、及び国際公開第96/34946号;Scherer and Davis,1979,Proc.Natl. Acad.Sci.USA 76:4949−4955;及びBarton et al.,1990,Nucleic Acids Research 18:7349−4966。
【0066】
リガーゼ反応後、ライゲーション混合物は、宿主細胞を形質転換するために使用され得、クローニングの目的のために、Ausubel,F.M.et alに記載された通りにE.コリ(E.coli)細胞が使用される。形質転換がなされたE.コリ細胞は、液体培地中で、又は固体寒天プレート上で増殖され得、プラスミドは当該形質転換された細胞から回収され得、そしてB.サブチリス(subtilis)細胞を形質転換するために使用され得る。好適なコンピテントバチルス細胞、例えばMB1510、168−誘導体(例えばBGSCから受入番号1A1 168trpC2で市販されている)は、国際公開第03/095658号において記載されている通り、形質転換され得る。ライブラリー構築のための、E.コリのプラスミド由来融合カセットが、バチルスの形質転換のために使用され得る。当該方法は、国際公開第03/095658号に詳細に記載されている。或いは、インビトロで増幅されたPCR−SOE−産物(Melnikov and Youngman,Nucleic Acid Research 27,1056)が使用され得る。
【0067】
部位特異的変異誘発は、当技術分野において既知の方法によってインビボで達成され得る。例えば、米国特許出願公開第2004/0171154号明細書;Storici et al.,2001,Nature Biotechnology 19:773−776;Kren et al.,1998,Nat.Med.4:285−290;及びCalissano and Macino,1996,Fungal Genet.Newslett.43:15−16を参照。
【0068】
任意の部位特異的変異誘発法が本発明において使用され得る。親キシログルカナーゼのバリアントを調製するために使用され得る、多くの市販の利用可能なキットが存在する。
【0069】
変異誘発、組み換え、及び/又はシャッフリングの既知の方法を用いて、単一の又は複数のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入がなされ、及び試験され得、その後関連性スクリーニング法、例えばReidhaar−Olson and Sauer,1988,Science 241:53−57;Bowie and Sauer,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152−2156;国際公開第95/17413号;又は国際公開第95/22625号に記載されたものが行われる。使用され得る他の方法は、エラープローンPCR、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,1991,Biochem.30:10832−10837;米国特許第5,223,409号明細書;国際公開第92/06204号)、及び領域特異的変異誘発((Derbyshire et al.,1986,Gene 46:145;Ner et al.,1988,DNA 7:127)を含む。
【0070】
上記の変異誘発/シャッフリングは、宿主細胞、例えばバチルスによって上記の通り発現される、クローン化され、変異誘発されたポリペプチドの活性を検出するための、ハイスループット自動スクリーニング法と組み合わされ得る。キシログルカナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする変異誘発されたDNA分子は、宿主細胞から回収され得、そして当技術分野における標準的手法を使用して速やかにシーケンシングがなされる。
【0071】
バリアント
本発明において、親キシログルカナーゼの単離されたバリアントは、位置番号:
【0072】
【化3】

【0073】
から成る群から選択される、一つ以上の(幾つかの)位置における変更を含み、ここでキシログルカナーゼ活性を有する当該バリアントは、親キシログルカナーゼのアミノ酸配列と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも98%、そしてさらにより好ましくは少なくとも99%の同一性度を有する。位置の番号付けは、配列番号3のアミノ酸配列に対するものである。好ましくは、一つ以上の、上で同定された位置における変更を含むバリアントは、親キシログルカナーゼと比較して、洗剤中、好ましくは液体洗剤中において増大した安定性を有する。
【0074】
好ましい実施形態において、バリアントは、以下の変更の組み合わせを一つ以上(数個)含む:
【0075】
【化4】

【0076】
【化5】

【0077】
【化6】

【0078】
【化7】

【0079】
【化8】

【0080】
【化9】

【0081】
一つの態様において、本発明のバリアント中におけるアミノ酸の変更の数は、好ましくは全部で55個、好ましくは、52個、より好ましくは50個、より好ましくは40個、より好ましくは30個、より好ましくは20個、より好ましくは15個、より好ましくは10個、より好ましくは9個、より好ましくは8個、さらにより好ましくは7個、さらにより好ましくは6個、さらにより好ましくは5個、さらにより好ましくは4個、さらにより好ましくは3個、そして最も好ましくは2個の変更、そして最も好ましくは1個の変更を含む。別の態様において、変更の総数は1個、好ましくは2個、より好ましくは3個、さらにより好ましくは4個、さらにより好ましくは5個、さらにより好ましくは6個、さらにより好ましくは7個、さらにより好ましくは8個、さらにより好ましくは9個、最も好ましくは10個である。変更は、i)当該位置を占めるアミノ酸の下流における、あるアミノ酸の挿入;ii)当該位置を占めるアミノ酸の欠失、又はiii)当該位置を占めるアミノ酸の、異なるアミノ酸を用いた置換、の形態であり得る。当該変更は各々独立してなされ得、例えば、親キシログルカナーゼに対して、一つの位置における挿入が起こり得るが、第二の位置における置換が起こり、そして第三の位置における欠失が起こる。好ましい実施形態において、バリアントは置換のみを含む。
【0082】
本発明の一つの態様において、変異誘発される位置は、コンセンサス配列分析に基づいて同定され得る。当該分析は、配列番号3と、配列番号5及び配列番号7とを、並びに
配列番号3のファミリー44グリコシルヒドロラーゼ領域と30%同一である、uniprotデータベースからの他の配列とをアラインメントすることによって行われる。生じるコンセンサス配列を図1に示す。コンセンサス配列1は、アラインメントから、所定の位置において最も豊富なアミノ酸を含む配列であり、コンセンサス配列2は、所定の位置において2番目に豊富なアミノ酸を有する配列である、などである。本発明の第一の態様において、配列番号3の一つ以上の(幾つかの)残基は、コンセンサス配列1、又はコンセンサス配列2、又はコンセンサス配列3、又はコンセンサス配列4からの対応する残基によって交換される。本発明の一つの態様において、バリアントは、位置番号:
【0083】
【化10】

【0084】
から成る、コンセンサス配列分析によって同定された52個の位置の群から選択される、一つ以上の(幾つかの)位置における変更を含む。好ましい実施形態において、当該変更は:
【0085】
【化11】

【0086】
から成る群から選択される、一つの置換、又は幾つかの置換である。
【0087】
本発明の別の態様において、バリアントは、親ペプチドにおける、正の電荷を有し且つカルシウムイオンから20Å以内に位置するアミノ酸を、中性又は負に荷電したアミノ酸へと変化させることによって生じる。本発明の好ましいバリアントは、カルシウムイオンから20Å以内における総電荷がより負に荷電するバリアントを含む。かかるバリアントにおいて、正に荷電したアミノ酸は、本出願の条件下において、中性又は負に荷電したアミノ酸へと交換され得る。本明細書に従って、好ましいバリアントは、「化学的安定性」又は本出願における条件下において部分的又は完全に正に荷電したアミノ酸残基を有することができ、すなわち、Lys、Arg又はHisは、負に荷電した又は中性のアミノ酸と交換され得る。好ましい置換アミノ酸は、負に荷電したアミノ酸、例えばAsp及びGluであり、又は中性アミノ酸、例えばAla、Asn、Gln、Tyr、Trp及びPheである。本発明の好ましいバリアントは、位置番号49、87、118、129、134、142、156、169及び197から成る群から選択される、一つ以上の位置における変更を含む。好ましい実施形態において、当該変更は、87、118、129、134、142、156、及び169から成る群から選択される、一つ以上の位置における置換である。好ましい実施形態において、当該置換は:
【0088】
【化12】

【0089】
から成る群から選択される。
【0090】
一つの態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置68、又は123、又は156、又は118、又は200、又は129、又は137、又は193、又は92、又は76、又は331に対応する一つ以上の(幾つかの)位置における変更を含む。好ましくは、当該バリアントは、位置68における置換、及び位置番号:
【0091】
【化13】

【0092】
から成る群から選択される、一つ以上のさらなる位置における、一つ以上の置換を含む。
【0093】
別の態様において、バリアントは、位置156における置換、及び位置番号:
【0094】
【化14】

【0095】
から成る群から選択される、一つ以上のさらなる位置における、一つ以上の置換を含む。
【0096】
別の態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置68、又は123、又は156、又は118、又は200、又は129、又は137、又は193、又は92、又は76、又は331に対応する、2つ以上の(幾つかの)位置における変更を含む。好ましくは、バリアントは、位置68、又は123、又は156、又は118、又は200、又は129における置換を含む。さらにより好ましくは、バリアントは、位置129及び位置156における置換を含む。
【0097】
別の態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置68、又は123、又は156、又は118、又は200、又は129、又は137、又は193、又は92、又は76、又は331に対応する、3つ以上の(幾つかの)位置における変更を含む。
【0098】
別の態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置68、又は123、又は156、又は118、又は200、又は129、又は137、又は193、又は92、又は76、又は331に対応する、4つ以上の(幾つかの)位置における変更を含む。
【0099】
別の態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置68、又は123、又は156、又は118、又は200、又は129、又は137、又は193、又は92、又は76、又は331に対応する、5つ以上の(幾つかの)位置における変更を含む。
【0100】
別の態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置68、又は123、又は156、又は118、又は200、又は129、又は137、又は193、又は92、又は76、又は331に対応する、6つ以上の(幾つかの)位置における変更を含む。
【0101】
別の態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置68、又は123、又は156、又は118、又は200、又は129、又は137、又は193、又は92、又は76、又は331に対応する、7つ以上の(幾つかの)位置における変更を含む。
【0102】
別の態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置129、及び156、及び331、及び200、及び118に対応する位置における変更を含む。
【0103】
別の態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置68、位置129、及び156、及び331、及び200、及び118に対応する位置における変更を含む。
【0104】
別の態様において、親キシログルカナーゼのバリアントは、位置68、位置92、位置129、及び156、及び331、及び200、及び118に対応する位置における変更を含む。
【0105】
別の態様において、バリアントは:
【0106】
【化15】

【0107】
から成る群から選択された一つ以上の(幾つかの)置換を含む。好ましくは、当該置換は:
【0108】
【化16】

【0109】
から成る群から選択される。より好ましくは、当該置換は:
【0110】
【化17】

【0111】
から成る群から選択される。より好ましくは、バリアントは、9個の、又は8個の、又は7個の、又は6個の、又は5個の、又は4個の、又は3個の、又は2個の、又は1個の位置(単数又は複数)において置換を含み、ここで当該置換は:
【0112】
【化18】

【0113】
から成る群から選択される。
【0114】
さらなる態様において、バリアントは、以下の置換の組み合わせを、一つ以上(数個)含む:
【0115】
【化19】

【0116】
好ましい実施形態において、上記の全てのバリアントは、グリコシルヒドロラーゼのファミリー44に属する親キシログルカナーゼのバリアントであり、より好ましくは、当該親キシログルカナーゼは、配列番号3と、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有するキシログルカナーゼから選択され、より好ましくは、当該親キシログルカナーゼは、配列番号2、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7から成る群から選択され、そして最も好ましくは、親キシログルカナーゼは配列番号3から成る。
【0117】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明の親キシログルカナーゼのバリアントをコードする、単離されたポリヌクレオチドに関する。特に、上のバリアントの節で記載されたキシログルカナーゼをコードするポリヌクレオチドは、本発明に含まれる。本発明のポリヌクレオチドは、バリアント中において実際のアミノ酸変更に対応する適切な配列変更を有する、配列番号1の位置82〜1653か配列番号1の位置97〜1653のいずれかに対応する完全バリアント配列を含む、変性した二重鎖DNAプローブと、或いは少なくとも約100塩基対の長さを有する、そのバリアントのサブ配列を含む任意のプローブと、少なくとも中等度ストリジェンシー条件で、しかし好ましくは高ストリジェンシー条件でハイブリダイズし得る。本発明のバリアントポリヌクレオチドはまた、上のバリアントの節において記載されたアミノ酸変更を生じる変異に加えて、サイレント変異を含み得る。サイレント変異は、アミノ酸の変化を生じない3文字コードにおける変異、例えばいずれもバリンをコードするGTTからGATの変異である。
【0118】
本発明のキシログルカナーゼバリアントをコードするポリヌクレオチドは、DNA及びRNAを含む。DNA及びRNAを単離するための方法は、当技術分野において周知である。対象の遺伝子をコードするDNA及びRNAは、Gene Bankにおいて、又はDNAライブラリーにおいて、当技術分野で周知の方法によりクローニングされ得る。本発明のキシログルカナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはその後、例えばハブリダイゼーション又はPCRによって、同定及び単離される。
【0119】
発現ベクター
本発明はまた、本発明の核酸コンストラクトを含む発現ベクター、特に組み換え発現ベクターに関する。本発明の核酸コンストラクトは、本発明のバリアントキシログルカナーゼをコードし、好ましくは、コントロール配列と混合可能な条件下において、好適な宿主細胞におけるコード配列の発現を行う一つ以上のコントロール配列に、機能し得るように連結される、単離されたポリヌクレオチドを含む。発現ベクターの製造において、発現のために、コード配列が好適なコントロール配列と機能し得るように連結されるように、当該コード配列はベクター中に配置される。当該コントロール配列は、ベクターによって、又は当該ベクターへと挿入される核酸コンストラクトによってのいずれかで提供され得る。
【0120】
コントロール配列は、好適なプロモーター配列、すなわち本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現のために宿主細胞によって認識されるヌクレオチド配列であり得る。当該プロモーターは、変異プロモーター、短縮(truncated)プロモーター、及びハイブリッドプロモーターを含む、最適な宿主細胞において転写活性を示す任意のヌクレオチド配列であり得、そして宿主細胞に対して同種又は異種のいずれかである、細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。かかるプロモーターは当技術分野で周知である。コントロール配列はまた、好適な転写ターミネーター配列、すなわち転写を終結させるために宿主細胞によって認識される配列である。当該ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’末端と、機能し得るように連結される。最適な宿主細胞中において機能的である任意のターミネーターが、本発明において使用され得、かかるターミネーターは当技術分野において周知である。コントロール配列はまた、好適なリーダー配列、すなわち宿主細胞による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域であり得る。当該リーダー配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5’末端に、機能し得るように連結される。最適な宿主細胞中において機能的である任意のリーダー配列は本発明において使用され得、かかるリーダー配列は当技術分野において周知である。コントロール配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端と連結されたアミノ酸配列をコードするシグナルペプチドコード領域であって、コードされたポリペプチドを細胞の分泌経路へと移動させる。ヌクレオチド配列のコード配列の5’末端は、分泌されるポリペプチドをコードするコード領域の断片と、翻訳リーディングフレームにおいて天然において連結したシグナルペプチドコード領域を本来含み得る。或いは、コード配列の5’末端は、当該コード配列とは異なるシグナルペプチドコード領域を含み得る。当該異なるシグナルペプチドコード領域は、当該コード配列がシグナルペプチドコード領域を天然に含まない場所において必要とされ得る。或いは、ポリペプチドの分泌を向上させるために、当該異なるシグナルペプチドコード領域は、天然のシグナルペプチドコード領域と容易に交換し得る。しかし、発現されたポリペプチドを好適な宿主細胞の分泌経路へ移動させる任意のシグナルペプチドコード領域が、本発明において使用され得る。当該コントロール配列はまた、ポリアデニル化配列、すなわち、ヌクレオチド配列の3’末端に機能し得るように連結され、そして転写時に宿主細胞によってシグナルとして認識されて、転写されるmRNAへポリアデノシン残基を付加する配列であり得る。好適な宿主細胞において機能的である任意のポリアデニル化配列が、本発明において使用され得る。宿主細胞の増殖に関連するポリペプチドの発現の制御を可能とする、制御(regulatory)配列を付加することがまた、所望であり得る。制御系の例は、制御化合物の存在を含む、化学的又は物理学的刺激に応答してオン又はオフにされる遺伝子の発現を引き起こすものである。
【0121】
本発明のバリアントキシログルカナーゼをコードする単離されたポリヌクレオチドは、種々の方法で操作されて、ポリペプチドの発現を提供する。ベクターへの挿入に先立つポリヌクレオチド配列の操作が、発現ベクターに依存して、所望であるか又は必要であり得る。組み換えDNA法を利用する、ポリヌクレオチド配列の修飾のための技術は、当技術分野において周知である。さらに、ポリペプチドの精製又は固定化を補助し得るタグが、ポリペプチドに付加され得る。かかるタグは、例えばポリヒスチジンタグ(Hisタグ)であり得る。好ましくはタグは、ポリペプチドのN末端又はC末端に配置され、そしてベクターによってコードされ得る。或いは当該タグは、ポリペプチドの機能に影響を与えない限り、ポリペプチド内部に配置され得る。
【0122】
組み換え発現ベクターは、組み換えDNA手順に好都合に晒され得、そしてヌクレオチド配列の発現を引き起こし得る任意のベクター(例えばプラスミド、ファージミド、ファージ、又はウィルス)であり得る。ベクターの選択は通常、当該ベクターが導入され得る宿主細胞とのベクターの適合性に依存し得る。
【0123】
ベクターは、線状プラスミド又は環状に近いプラスミドであり得る。当該ベクターは、自発的に複製するベクターであり得、即ち染色体外のものとして存在するベクターであって染色体の複製とは独立した複製を行うもの、例えばプラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、又は人工染色体であり得る。
【0124】
ベクターは、自己複製を保証する任意の手段を含み得る。或いはベクターは、宿主細胞へ導入されるとき、ゲノムへと組み込まれ、そしてそれが組み込まれた染色体(単数又は複数)と共に複製されるものであり得る。さらに、宿主細胞のゲノムへと導入されるべき全DNAを共に含む、単一のベクター若しくはプラスミド、又は2つ以上のベクター若しくはプラスミド、或いはトランスポゾンが使用され得る。
【0125】
本発明のベクターは、好ましくは、形質転換細胞の容易な選択を可能とする、一つ以上の選択マーカーを含む。選択マーカーは、その産物が殺生物剤、若しくはウィルス抵抗性、重金属への抵抗性、栄養要求株への原栄養性(prototrophy)などを提供する遺伝子である。細菌の選択マーカーの例は、バチルス・サブチリス、若しくはバチルス・リケニホルミス由来のdal遺伝子、又は抗生物質抵抗性、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、若しくはテトラサイクリン抵抗性を付与するマーカーである。酵母宿主細胞に好適であるマーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、及びURA3である。真菌糸状宿主細胞における使用のための選択マーカーは、限定されないが、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン−5’−ホスフェートデカルボキシラーゼ)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、trpC(アントラニル酸シンターゼ)、及びそれらの等価体である。アスペルギルス・ニジュランス(nidulans)又はアスペルギルス・オリザエ(oryzae)のamdS及びpyrG遺伝子、及びストレプトミセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子が、アスペルギルス細胞における使用のために好ましい。
【0126】
本発明のベクターは、宿主細胞ゲノムへの当該ベクターの安定な組み込み、又は細胞内における、ゲノムから独立した当該ベクターの自律的複製を可能とする成分(単数又は複数)を含み得る。
【0127】
本発明のヌクレオチド配列の一つ以上のコピーは、宿主細胞へと挿入されて遺伝子産物の産生を増大させる。当該ヌクレオチド配列のコピー数の増大は、当該配列の少なくとも一つの追加のコピーを、宿主細胞ゲノムへ組み込むことによって得られ、或いは増幅可能な選択マーカーを当該ヌクレオチド配列と共に含めることによって得られ、ここで、選択マーカー遺伝子の増幅されたコピーを含み、そしてそれにより当該ヌクレオチド配列の追加のコピーを含む細胞は、好適な選択薬剤の存在下で細胞を培養することによって選択され得る。
【0128】
本発明の組み換え発現ベクターを構築するために、上記の成分を連結するために使用される手順は、当業者に周知である(例えば、Sambrook et al.,1989,同上を参照)。
【0129】
本発明の一つの態様において、プラスミドベクターは、以下の成分を含み得る:
i)シグナルペプチドコード領域(例えば、バチルス NCIB11837マルトース生成(maltogenic)アミラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルス(stearothermophilus)アルファ−アミラーゼ、バチルス・リケニホルミス・サブチリシン、バチルス・リケニホルミス・アルファ−アミラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルス中性プロテアーゼ(nprT,nprS,nprM)、及びバチルス・サブチリスprsAの遺伝子から得られるもの)、並びに、成熟キシログルカナーゼバリアントをコードするポリヌクレオチド配列。この配列は、以下のものに先行され、且つ機能し得るように連結され得る:
ii)mRNA安定化断片を含むDNA配列(例えば、国際公開第99/043835号に開示されている、Cryllla遺伝子由来である);
iii)マーカー遺伝子(例えば、クロラムフェニコール抵抗性遺伝子);並びに
iv)フランキング断片とバチルスのゲノムとの間における相同的組み換えによってゲノムの組み込みを可能とする、ポリヌクレオチドの上流及び下流に各々存在する5’及び3’フランキング断片。
【0130】
上記のベクターはまた、先に記載した変異誘発法を使用するバリアントの生成及びスクリーニングに有用である。
【0131】
宿主細胞
本発明はまた、本発明のバリアントキシログルカナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む組み換え宿主細胞に関し、そしてそれは、ポリペプチドの組み換え体産生に有利に使用される。本発明のポリヌクレオチド配列を含むベクターは、当該ベクターが染色体の組み換え体として、又は先に記載した自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、宿主細胞へと導入される。
【0132】
宿主細胞は、原核生物、例えば細菌細胞、古細菌、又は真核細胞、例えば真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞であり得る。
【0133】
有用な原核生物は、細菌細胞、例えばグラム陽性細菌であり、限定されないが、バチルス細胞、例えばバチルス・アルカロフィルス(alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(brevis)、バチルス・サーキュランス(circulans)、バチルス・クラウシ(clausii)、バチルス・コアグランス(coagulans)、バチルス・ハロデュランス(halodurans)、バチルス・ロータス(lautus)、バチルス・レンタス(lentus)、バチルス・リケニホルミス、バチルス・メガテリウム(megaterium)、バチルス・ステアロサーモフィルス、バチルス・サブチリス、及びバチルス・チューリンゲンシス(thuringiensis);又はストレプトミセス細胞、例えばストレプトミセス・リビダンス(lividans)、若しくはストレプトミセス・ムリヌス(murinus)を含み、或いはグラム陰性細菌であり、例えばE.コリ、及びシュードモナス(Pseudomonas)属を含む。好ましい実施形態において、細菌宿主細胞は、バチルス・レンタス、バチルス・リケニホルミス、バチルス・ステアロサーモフィルス、又はバチルス・サブチリス細胞である。別の好ましい実施形態において、バチルス細胞は好アルカリ性バチルスである。
【0134】
細菌宿主細胞へのベクターの導入は、例えば、プロトプラスト形質転換(例えば、Chang and Cohen,1979,Molecular General Genetics 168:111−115を参照)によって、コンピテント細胞(例えば、Young and Spizizin,1961,Journal of Bacteriology 81:823−829、又はDubnau and Davidoff−Abelson,1971,Journal of Molecular Biology 56:209−221を参照)を使用して、エレクトロポレーション(例えば、Shigekawa and Dower,1988,Biotechniques 6:742−751を参照)によって、又はコンジュゲーション(conjugation)(例えば、Koehler and Thome,1987,Journal of Bacteriology 169:5771−5278を参照)によって達成され得る。
【0135】
好ましい実施形態において、宿主細胞は真菌細胞である。本明細書において使用される「真菌」は、子嚢菌門、担子菌門、ツボカビ門、及び接合菌門(Hawksworth et al,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UKに定義された通りである)、並びに卵菌類(Hawksworth et al.,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UK,171ページに引用された通りである)、並びに全ての栄養胞子形成菌(Hawksworth et al.,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UK)を含む。より好ましい実施形態において、真菌宿主細胞は酵母細胞である。本明細書において使用される「酵母」は、子嚢胞子類の(ascosporogenous)酵母(エンドマイセタレス(Endomycetales))、担子胞子菌類の(basidiosporogenous)酵母、及び不完全菌類(Fungi Imperfecti)に属する酵母(不完全酵母菌類(Blastomycetes))を含む。酵母の分類は将来変化し得るため、この発明の目的のために、酵母は、Biology and Activities of Yeast(Skinner,Passmore,and Davenport,eds,Soc.App.Bacteriol.Symposium Series No.9,1980)に記載された通りに定義されるものとする。
【0136】
さらにより好ましい実施形態において、酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリベロミセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizoサッカロミセス)、又はヤロウイア(Yarrowia)細胞である。最も好ましい実施形態において、酵母宿主細胞は、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ(cerevisiae)、サッカロミセス・ジアスタチクス(diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシ(douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(norbensis)、又はサッカロミセス・オビホルミス(oviformis)細胞である。別の最も好ましい実施形態において、酵母宿主細胞は、クリベロミセス・ラクティス(lactis)細胞である。別の最も好ましい実施形態において、酵母宿主細胞は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)細胞である。
【0137】
別のより好ましい実施形態において、真菌宿主細胞は糸状真菌細胞である。真菌類及び卵菌類のサブディビジョンの全ての糸状形態を含む(Hawksworth et al,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UKに定義された通りである)。糸状菌類は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合多糖から成る菌糸体壁によって特徴付けられる。栄養成長は、菌糸の伸長によって行われ、そして炭素異化は偏性好気性である。対照的に、酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエによる栄養成長は、単細胞性葉状体の出芽によるものであり、そして炭素異化は発酵性であり得る。さらにより好ましい実施形態において、糸状真菌宿主細胞は、限定されないが、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス、フザリウム(Fusarium)、フミコラ(Humicola)、ムコール(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ネウロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、又はトリコデルマ(Trichoderma)属種の細胞である。最も好ましい実施形態において、宿主糸状真菌は、アスペルギルス・アワモリ(awamori)、アスペルギルス・フォティダス(foetidus)、アスペルギルス・ジャポニクス(japonicus)、アスペルギルス・ニジュランス、アスペルギルス・ニゲル(niger)、又はアスペルギルス・オリザエ細胞である。別の最も好ましい実施形態において、糸状真菌宿主細胞は、フザリウム・バクトリジオイデス(bactridioides)、フザリウム・セレアリス(cerealis)、フザリウム・クルックウェレンス(crookwellense)、フザリウム・カルモルム(culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(graminearum)、フザリウム・グラミナム(graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(negundi)、フザリウム・オキシスポラム(oxysporum)、フザリウム・レチクラタム(reticulatum)、フザリウム・ロセウム(roseum)、フザリウム・サムブシウム(sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(sporotrichioides)、フザリウム・サルフレウム(sulphureum)、フザリウム・トルロサム(torulosum)フザリウム・トリコテシオイデス(trichothecioides)、又はフザリウム・ベネナツム(venenatum)細胞である。さらに最も好ましい実施形態において、糸状真菌親細胞は、フザリウム・ベネナツム(Nirenbergsp.nov.)細胞である。別の最も好ましい実施形態において、糸状真菌宿主細胞は、フミコラ・インソレンス(insolens)、フミコラ・ラヌギノサ(lanuginosa)、ムコール・ミエヘイ(miehei)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(thermophila)、ネウロスポラ・クラッサ(crassa)、ペニシリウム・プルプロゲナム(purpurogenum)、チエラビア・テレストリス(terrestris)トリコデルマ・ハルジアナム(harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(koningii)、トリコデルマ・ロンギブラチアタム(longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(reesei)、又はトリコデルマ・ビリデ(viride)細胞である。
【0138】
真菌細胞は、プロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、及び細胞壁の再生成を伴う過程によって、それ自体既知の方法で形質転換され得る。アスペルギルス宿主細胞の形質転換のために好適な手順は、EP238023、及びYelton et al.,1984,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81:1470−1474に記載されている。フザリウム種を形質転換するために好適な方法は、Malardier et al.,1989,Gene 78:147−156、及び国際公開第96/00787号に記載されている。酵母は、Becker and Guarente,In Abelson and Simon,editors,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology,Methods in Enzymology 194:182−187,Academic Press,Inc.,New York;Ito et al.,1983,Journal of Bacteriology 153:163;及びHinnen et al,1978,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75:1920に開示された手順を使用して形質転換され得る。
【0139】
本発明の特定の実施形態は、本発明のバリアントキシログルカナーゼをコードするポリヌクレオチドを用いて形質転換された組み換え宿主細胞である。好ましくはかかる宿主細胞は、先天的にキシログルカナーゼコード遺伝子を含まないか、又はかかる遺伝子が破壊されている。それにより、組み換えバリアントキシログルカナーゼは、本発明の組み換え宿主細胞によって産生される唯一のキシログルカナーゼである。
【0140】
産生方法
本発明はまた、キシログルカナーゼバリアントを産生するための方法であって、以下のステップ:(a)当該バリアントの発現のために好適な条件下で本発明の宿主細胞を培養し;及び(b)培養培地から当該バリアントを回収すること、を含む当該方法に関する。
【0141】
本発明の産生方法において、宿主細胞は、当技術分野で既知の方法を用いて、キシログルカナーゼバリアントの産生に好適な栄養培地中で培養される。例えば当該細胞は、振とうフラスコ培養によって、又は好適な培地中で、及びポリペプチドが発現され及び/又は単離される条件下で行われる、実験室用又は工業用発酵槽中での小スケール若しくは大スケール発酵(連続発酵、回分発酵、流加発酵、又は固体発酵を含む)によって培養され得る。当該培養は、炭素、及び窒素源、並びに無機塩を含む好適な栄養培地中で、当技術分野で既知の手順を用いて行われる。好適な培地は、民間の市販業者から入手可能であり、又は公開されている組成(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ中のもの)に従って調製され得る。ポリペプチドが栄養培地中へと分泌される場合、当該ポリペプチドは当該培地から直接的に回収され得る。当該ポリペプチドが分泌されない場合、それは細胞溶解物から回収され得る。
【0142】
本発明の一つの実施形態は、親キシログルカナーゼのバリアントの産生方法であって、前記バリアントがキシログルカナーゼ活性を有し、以下のステップ:a)当該バリアントの発現のために好適な条件下で細胞を培養し、ここで前記細胞は親キシログルカナーゼのバリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含み、前記バリアントは:
【0143】
【化20】

【0144】
から成る群から選択される一つ以上の(幾つかの)アミノ酸位置(単数又は複数)において変更がなされ、そして前記ポリヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号4、及び配列番号6から成る群から選択される親ポリヌクレオチド配列の変異誘発によって、又は配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する親ポリヌクレオチド配列の変異誘発によって製造され;並びに、b)培養培地からキシログルカナーゼバリアントを回収すること、を含む前記方法である。
【0145】
別の態様において、キシログルカナーゼバリアントは回収されずに、バリアントを発現する本発明の宿主細胞が、当該バリアント源として使用される。
【0146】
キシログルカナーゼバリアントは、発現されたポリペプチドに特異的である、当技術分野で既知の方法を用いて検出され得る。これらの検出方法は、特定の抗体の使用、酵素産物の形成、又は酵素基質の消失を含み得る。例えば酵素アッセイが、実施例において本明細書に記載された通りに、バリアントキシログルカナーゼの活性を決定するために使用され得る。
【0147】
生じるキシログルカナーゼバリアントは、当技術分野で既知の方法によって回収され得る。例えば当該ポリペプチドは、限定されないが、収集、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、エバポレーション、又は沈降を含む従来法によって栄養培地から回収され得る。
【0148】
本発明のキシログルカナーゼバリアントは、限定されないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、疎水性、クロマト分画、及びサイズ排除)、電気泳動的手法(例えば分取等電点電気泳動)、溶解度差(Differential solubility)(例えば、硫酸アンモニウム沈降)、SDS−PAGE、又は抽出(例えば、Protein Purification,J.−C.Janson and Lars Ryden,editors,VCH Publishers,New York,1989を参照)を含む、当技術分野において既知の様々な方法により精製されて、実質的に純粋なキシログルカナーゼバリアントを得る。
【0149】
組成物
本発明はまた、バリアントキシログルカナーゼ、又は本発明のキシログルカナーゼ活性を有するポリペプチドを含む組成物に関する。好ましくは当該組成物は、かかるバリアント又はポリペプチドが豊富である。用語「豊富な」は、当該組成物のキシログルカナーゼ活性が、例えばエンリッチメント・ファクター(enrichment factor)が1.1以上で増大されることを示す。好ましくは、当該組成物は製剤化されて所望の特性、例えば低着色、低臭気、低く且つ許容可能な保管安定性を提供するように製剤化される。
【0150】
当該組成物は、主要酵素成分として本発明のバリアント又はポリペプチドを含み得、例えば、単一成分組成物である。或いは、当該組成物は多数の酵素活性を含み得、例えば、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デコキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、アルファ−ガラクトシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、アルファ−グルコシダーゼ,ベータ−グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、又はキシラナーゼである。
【0151】
当該ポリペプチド組成物は、当技術分野で既知の方法に従って調製され得、そしてそれは液体又は乾燥製剤の形態であり得る。例えば、当該ポリペプチドは、顆粒又は微小顆粒の形態で製剤化され得る。当該組成物中に含まれるバリアント又はポリペプチドは、当技術分野で既知の方法に従って安定化され得る。好ましい実施形態において、バリアントキシログルカナーゼは液体製剤に製剤化される。
【0152】
用途
本発明はまた、キシログルカナーゼバリアントを使用するための方法を対象とする。当該バリアントキシログルカナーゼは、好ましくは洗剤組成物、例えば洗濯洗剤組成物、例えば家庭用洗濯洗剤組成物に、特に液体洗濯洗剤組成物に組み込まれ、及び/又はそれらと共に使用される。洗剤組成物は通常、従来の洗剤成分、例えば界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、両性)、増強剤(builder)、漂白剤、ポリマー、他の酵素及び他の成分、例えば、参照によりそれ全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2007/130562号及び国際公開第2007/149806号に記載されたものを含む。
【0153】
洗剤組成物は、任意の形態で、例えば固体、液体、ゲル、又はそれらの任意の組み合わせで存在し得、好ましくは当該組成物は液体形態で存在し、好ましくは液体洗濯洗剤組成物である。
【0154】
本発明の態様は、ファブリック若しくは衣類における、毛玉除去(depilling)、及び/又はファブリックの柔軟性、及び/又は着色の浄化(colour−clarification)、及び/又は土の除去(soil removal)、及び/又は土の抗再付着(anti−redeposition)、及び/又は染料移動阻害(dye transfer inhibition)の利益を付与するための、キシログルカナーゼバリアントの使用、又は本発明のキシログルカナーゼバリアント組成物及び洗剤組成物の使用である。
【0155】
さらに本発明は、洗剤組成物及び本発明のキシログルカナーゼバリアント又はキシログルカナーゼバリアント組成物を含む洗浄溶液でファブリックを処理することを含む、ファブリックの洗浄方法に関する。洗浄処理は、例えば機械洗浄工程において、又は手動洗浄工程において行われ得る。当該洗浄溶液は、例えば、洗剤組成物を含み、且つpH3〜12である洗浄水溶液であり得る。
【0156】
洗浄及び使用の間に、ファブリック又は衣類の表面は通常、当該ファブリックに色褪せた且つ擦り切れた外観を与え得る、破れた又は緩んだ繊維断片で品質が損なわれるようになる。当該ファブリックからのこれらの表面繊維の除去は、部分的に元の色及びファブリックの外観を回復させ、その結果着色の浄化及び外観の向上をもたらす。本発明のキシログルカナーゼバリアント又はキシログルカナーゼバリアント組成物は、単一又は多数(反復)の洗浄サイクルの使用によって、着色の浄化及び/又は外観の向上を提供するために使用され得る。
【0157】
さらに、布地の表面から突き出ている微小繊維は、集まって小さな玉、いわゆる毛玉又は綿毛となり、そしてそれらは当該表面にくっついて、ファブリックの外観を悪くする。本発明のキシログルカナーゼバリアント又はキシログルカナーゼバリアント組成物は、かかる毛玉を除去するために使用され得、かかる効果を毛玉除去と呼ぶ。
【0158】
着色の浄化及び毛玉除去は、試験群パネルを用いて目視検査によって評価され得る。当該効果はまた、光学的測定を用いて、光反射によって又は綿の綿毛の決定によって測定され得る。これらの方法は当技術分野で一般的に既知であり、そしてEnzymes in Detergency,1997,published by Marcel Dekker,139〜140ページに簡潔に記載されている。
【0159】
特に、洗浄サイクル数の増大と共に、微粒子の土、溶解性の土、染料及び顔料、並びに不溶性の塩を含み得る付着物は、布地の繊維表面上に蓄積する。これは、検出される洗浄処理の洗浄性能の可視的な悪化をもたらし、例えば灰色がかった又は黄色がかったファブリックの外観をもたらす。これは、洗浄サイクルにおいて本発明のキシログルカナーゼバリアント又はキシログルカナーゼバリアント組成物を用いることで防止され得る。この効果は、抗再付着、又は染料移動阻害、又は土の除去と呼ばれ、そして光学的測定によって評価され得る。
【0160】
ファブリックの表面上、及び繊維間に捕捉される土又は不溶性塩粒子は、当該ファブリックの硬化をもたらし得る。洗浄サイクルにおいて本発明のキシログルカナーゼバリアント、又はキシログルカナーゼバリアント組成物を含むことによって、当該ファブリックは軟化され得る。
【0161】
本発明の方法に晒されるファブリックは、従来の洗濯可能な洗濯物、例えば家庭における洗濯物であり得る。好ましくは当該洗濯物の大部分が、綿花、綿との混紡、又は天然若しくは人工のセルロース誘導体(例えば木材パルプ由来)、或いはそれらの混合物から製造されたニット、織物、デニム、毛糸、及びタオル地のものを含む、衣類及びファブリックである。混合の例は、綿、又はレーヨン/ビスコースと、一つ以上の対の材料、例えば羊毛、合成繊維(例えばポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリウレア繊維、アラミド繊維)、及びセルロース含有繊維(例えば、レーヨン/ビスコース、ラミー、フラックス/リネン、ジュート、酢酸セルロース繊維、リヨセル)との混合である。
【0162】
本発明のキシログルカナーゼバリアント又はキシログルカナーゼバリアント組成物を含む洗剤溶液を用いた、ファブリック及び/又は衣類の処理は、例えば新しい繊維、及び/又はファブリック、及び/又は衣類との関連で、並びに使用されたファブリック及び/又は衣類の洗濯中、例えば家庭における洗濯工程の間、又は施設における洗濯工程中において適切であると認識される。
【0163】
本発明のキシログルカナーゼバリアント又はキシログルカナーゼバリアント組成物の用量、並びに洗剤溶液の組成及び濃度を含む、当該組成物が使用される他の条件は、当技術分野で既知の方法に基づいて決定され得る。
【0164】
本発明は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない、以下の実施例によってさらに説明される。
【0165】
キシログルカナーゼバリアントは、本発明の組成物中において使用され得、その結果セルロース又はヘミセルロースの誘導体を含む土の除去を達成し、抗再付着を向上させ、及び土の放出を改善する。キシログルカナーゼはまた、本発明の組成物中に使用され得、後に続く洗濯工程の間において土の放出の利益を綿に付与する。土の放出の利益は、綿ファブリック上で及び/又は相当量の綿を含む全ての種類のファブリック上で、例えば綿−合成繊維(例えばポリエステル、ポリアミド、例えばナイロン(商標)、及びエラステイン)混合物上で観察される。
【実施例】
【0166】
実施例1−キシログルカナーゼバリアントの産生及び精製
本発明のキシログルカナーゼバリアントは標準的手順によって製造され、簡潔に言えば:ランダム及び/又は部位特異的変異誘発を遺伝子へと導入し、変異した遺伝子を用いてバチルス・サブチリス宿主細胞を形質転換し、当該形質転換された宿主細胞を発酵させ、そして当該発酵培養液からキシログルカナーゼバリアントを得た。レファレンスのキシログルカナーゼ(配列番号3)を、バチルス・サブチリス中で組み換えにより同様の方法で産生した。
【0167】
流れを調節された(baffled)500ml三角フラスコ中、CaCO3タブレット(0.5g)を一錠含む100mlのPS−1培地を振盪しながら、振盪フラスコ培養中で、37℃にて4日間発酵を行った。PS−1培地組成物は、100g/Lスクロース、40g/L大豆かすミール(Soymeal Meal)、10g/L Na2HPO4*12H2O、0.1ml/L Dowfax63N10、及び6μg/mlクロラムフェニコールの形態である抗生物質を含む。
【0168】
発酵の後、培養液は遠心分離(26000×g、20分)によって回収された。少量の上清を、0.45μmフィルターを通じてろ過することで無菌化し、そして冷凍保管した。下記の安定性アッセイを開始する以前に、当該試料を速やかに解凍した。
【0169】
幾つかの場合において、酵素試料が安定性試験のために使用される以前に、当該試料を精製した。酵素精製に関して、残余の宿主細胞を除去するために、NALGENE 0.2μmろ過ユニット(カタログ番号569−0020)を通じて上清をろ過した。0.2μmろ液のpHを、20%CH3COOHを用いてpH5.0に調整し、そして当該ろ液を、50mMコハク酸/NaOH、1mM CaCl2、pH5.0で平衡化されたXpressLine ProAカラム(UpFront chromatography A/S)へアプライした。XpressLine ProAカラムを、平衡化バッファーを用いて広範囲に洗浄した後、キシログルカナーゼは50mM Tris/HCl、pH9.0を用いた段階的溶出(step−elution)によって溶出された。溶出中にフラクションを回収した。カラムからのフラクションをキシログルカナーゼ活性に関して分析し(実施例2)、そして活性を有するフラクションを保管した。当該保管物のpHを、3M Tris塩基にてpH9.0に調整し、そして当該保管物を50mM Tris/HCl、pH9.0と同一の(又はより低い)伝導性となるように脱塩された水を用いて希釈した。調整された溶液を、50mM Tris/HCl,pH9.0で平衡化されたSOURCE Qカラム(GE Healthcare)にアプライした。平衡化バッファーを用いて広範囲にSOURCE Qカラムを洗浄した後、同一のバッファー中、NaClの直線的グラジエント(0→0.5M)を用いて5カラム体積超にて当該酵素を希釈した。キシログルカナーゼ活性に関して当該カラムからのフラクションを再度分析し、そして活性のあるフラクションをSDS−PAGEにてさらに分析した。クーマシィーで着色されたSDS−PAGEゲル上で一つのバンドが見られるフラクションを、精製された調製物として保管した。
【0170】
実施例2−キシログルカナーゼアッセイ
酵素試料、例えば精製された酵素試料のキシログルカナーゼ活性を、AZCL−キシログルカンアッセイで測定した。
【0171】
AZCL−キシログルカン(Megazyme)を、キシログルカナーゼと共にインキュベートし、そして遊離した青い呈色を650nmで測定した。適切なブランク値を差引した後における、インキュベーション中における青い呈色の増大としてキシログルカナーゼ活性を計算した。
【0172】
AZCL−キシログルカン基質:攪拌により、0.01% Triton X−100中で均質に懸濁された、4mg/ml AZCL−キシログルカン(Megazyme)
アッセイ温度: 37℃
アッセイバッファー:50mMコハク酸/NaOH,0.01%Triton X−100,pH5.0
【0173】
500μlのAZCL−キシログルカン基質懸濁液をエッペンドルフチューブに入れ、氷上に置いた。500μlアッセイバッファーを添加し、そして当該混合物を氷冷とした。20μlの酵素試料(0.01% Triton X−100で希釈)を加えた。エッペンドルフチューブをエッペンドルフ・サーモミキサー(thermomixer)へと移すことによってアッセイを開始した。当該チューブをエッペンドルフサーモミキサー上で15分間、その最大の振盪速度で(1400rpm)インキュベートした。当該チューブを氷浴へと戻すことによってインキュベーションを停止した。チューブが氷冷となった後、氷冷された遠心分離機中で当該チューブを短時間遠心分離し、未反応の基質を沈澱させた。200μlの上清をマイクロタイタープレートへ移し、そしてA650を読み取った。バッファー・ブランク(酵素の代わりに、20μl,0.01% Triton X−100)は当該アッセイに含まれ、そして酵素試料とバッファー・ブランクとの間のA650の差がキシログルカナーゼ活性の測定値であった。
【0174】
実施例3−キシログルカナーゼバリアントの安定性
本発明のキシログルカナーゼバリアントの洗剤安定性を、液体洗剤中でのインキュベーション後における当該バリアントの活性を測定することによって評価した。
【0175】
酵素試料を液体洗剤へと加え、そしてそれを高温、例えば35℃又は40℃で保管することによって、安定性試験を行った。所定の保管時間の後、酵素活性を決定し、そして約−18℃で同じ時間保管された同等試料の活性と比較した。安定性試験の結果は、低温で保管された試料において見られた活性の%として表現される、高温で保管された試料で見られた活性である。
【0176】
キシログルカナーゼバリアントの結果は、同一条件下で試験した親キシログルカナーゼ(配列番号3)の結果と比較された。これら2つの安定性の結果間における比が、安定性改善係数(Stability Improvement Factor)(SIF)である。
【0177】
SIF>1のバリアントは試験条件下で親キシログルカナーゼよりも安定である。好ましいバリアントは、この試験において高いSIFを有するものである。
【0178】
洗剤
安定性試験のために使用された液体洗剤は、以下の組成を有した。
【0179】
【表1】

【0180】
保管試験
実施例1に従って調製された酵素試料を、保管安定性試験を開始する前に速やかに解凍した。
【0181】
酵素試料を1ml当たり0.25mg酵素タンパク質の濃度で希釈した。
【0182】
液体洗剤を、約12mlの容量でガラス容器へと分注し、各々のガラス容器に1.0±0.05グラムの洗剤を提供した。
【0183】
各々の酵素試料に関して、2つの複製容器を用意した。50μlの希釈された酵素、及び小さいマグネティック・スターラーバーを容器へと加え、そして(保管中における蒸発を防ぐために)それらをしっかりと密閉した。マグネティック・スターラーバーを用いて約5分間内容物を混合した。対の内、一方の容器を約−18℃でフリーザーに置いた。他方の容器を好適なインキュベーター・オーブンに、試験されるべき所定の高温、例えば35℃又は40℃にて置いた。所定の保管時間の後、インキュベーター・オーブン中の容器をフリーザーへと移動した。
【0184】
活性アッセイ
洗剤中における保管後の酵素試料の活性を、以下の手順を用いて測定した。
【0185】
材料及び試薬:
1M リン酸バッファーpH7:
138グラムのNaH2PO4・H2Oを約750mlの水に溶解し、4N NaOHを加え、pH7.0とした。その後、最終容量を1000mlとした。
アッセイバッファー(50mM リン酸バッファーpH7):
950mlの水、50mlの1M リン酸バッファーpH7、及び5mlのBerol537(Akzo Nobelによって提供された、非イオン性界面活性剤)を混合し、最終的なpHを7.00±0.02へと調節した。
基質:
Megazyme International Ireland Ltdにより提供されたCellazyme C錠、カタログ番号T−CCZ。当該錠剤は、架橋され、染色されたHEセルロースを含んだ。
【0186】
手順
アッセイ開始約30分前、容器をフリーザーから約4℃の冷蔵庫へと移した。アッセイを開始する直前に、当該容器を冷蔵庫から取り出し、そしてラボラトリー・ベンチ上に置き、そして開いた。
【0187】
10mlのアッセイバッファー(室温)を各々の開いた容器へと加えた。当該容器をその後、水中マルチポイント・マグネティックスターラーを備えた30℃の水浴へと移した。内容物を約5分間緩やかに攪拌した。
【0188】
各々の容器にCellazyme C錠を一錠加えた。基質粒子が動き続け、且つ沈澱を回避するのに十分なスターラー速度で攪拌を継続した。錠剤の添加から30分後、容器を水浴から除去し、その後攪拌せずに15分間室温で静置した。
【0189】
ピペットを用いて約1mlの実質的に透明な上清を各々の容器の上部から取り、セミミクロ分光光度計キュベットへと移した。その後、好適な分光光度計を用いて590nmにおける吸光度を測定した。全ての測定を15分以内に終了した。ブランク試料、すなわちキシログルカナーゼ酵素を加えられていないこと以外同等な洗剤試料を当該アッセイに含めた。
【0190】
計算
各々の酵素試料に関して、2つのAbs590測定値が存在する:
・A590f:−18℃で保管された試料のAbs590値
・A590w:高温で保管された試料のAbs590値
A590fからブランク値(A590b)を引き(A590f−A590b)、そしてA590wからブランク値を引いた(A590w−A590b)。
【0191】
安定性を以下のように計算した:
【0192】
【数1】

【0193】
各々の酵素に関して、(A590f−A590b)の結果は、0.1〜1.2の範囲あるはずである。当該値がこの範囲外である場合、その酵素に関する結果は信頼できないと見なされ、そして当該試験は当該酵素試料の異なる希釈を用いて反復されるべきである。
【0194】
最終的に、各々の酵素に関する安定性改善係数(SIF)を以下のように計算した:
SIF=酵素試料の%安定性/親酵素(配列番号3)の%安定性
【0195】
結果
以下は、異なる条件下で試験されたキシログルカナーゼバリアントの安定性の結果である。
【0196】
【表2】

【0197】
【表3】

【0198】
【表4】

【0199】
【表5】

【0200】
【表6】

【0201】
【表7】

【0202】
【表8】

【0203】
【表9】

【0204】
実施例4 キシログルカナーゼバリアントの安定性
液体洗剤中にてインキュベーション後、当該バリアントの活性を測定することによって、本実施例のキシログルカナーゼバリアントの洗剤安定性を評価した。
【0205】
酵素試料を液体洗剤へと加え、そしてそれを高温、例えば35℃又は46℃で保管することによって、安定性試験を行った。所定の保管時間の後、酵素活性を決定し、そして同じ時間、約+5℃で低温保管された同等試料の活性と比較した。安定性試験の結果は、低温で保管された試料(ストレスを受けていない試料)において見られた活性の%として表現される、高温で保管された試料(ストレスを受けた試料)で見られた活性である。
【0206】
キシログルカナーゼバリアントの結果は、同一条件下で試験した親キシログルカナーゼ(配列番号3)の結果と比較された。
【0207】
洗剤
安定性試験のために使用された液体洗剤は、以下の組成を有した。
【0208】
【表10】

【0209】
保管試験
実施例1に従って調製された酵素試料を、保管安定性試験を開始する直前に解凍した。
【0210】
さらなる希釈をすることなく酵素試料を使用した。
【0211】
液体洗剤を丸底ポリスチレン96ウェルマイクロタイタープレート(プレート1)へと分注し、1ウェル当たり190μlの洗剤を提供した。
【0212】
10μlの酵素試料、及び小さいマグネティック・スターラーバーを各々のウェルへ加え、そして(蒸発を防ぐために)接着性アルミ箔のフタ(Beckman Coulter)を用いてしっかりと密閉した。マグネティック・スターラーバーを用いて約30分間内容物を混合した。
【0213】
プレート1の各々のウェルから、20μlの洗剤−酵素混合物を新しい空の同一のプレート(プレート2)へとその後移した。両方のプレートをその後密閉した。
【0214】
元のプレート(プレート1)を試験されるべき所定の高温、例えば35℃又は46℃でインキュベーター・オーブン中に置いた。他方のプレート(プレート2)を約5℃で冷蔵庫中に置いた。
【0215】
所定の時間のインキュベーションの後、当該プレートを冷蔵庫及びインキュベーター・オーブンから取り出した。プレートを少なくとも30分間ラボラトリー・ベンチ上に置き、全てのウェルを室温とした。
【0216】
その後、プレート1の各々のプレートから20μlを、新しい空の丸底96ウェルプレート(プレート1a)へと移した。
【0217】
プレート1は、20μlの、ストレスを受けた試料を含み、そしてプレート2は20μlの、ストレスを受けていない試料を含む。
【0218】
活性アッセイ
室温にて以下の手順を用いて、洗剤中における、保管後の酵素試料の活性を測定した。
【0219】
アッセイの原理:
パラ−ニトロフェノール−ベータ−D−セロテトラオシド(pNP−ベータ−D−セロテトラオシド)は、特定のキシログルカナーゼ酵素の触媒作用によって加水分解される合成基質である。
【0220】
基質自体は無色であるが、終端の還元性末端グリコシド結合の加水分解時に、パラ−ニトロフェノールが放出され、そしてそれは405nmにおける強い吸光度のためにpH8のバッファー中において黄色である。
【0221】
pNP−ベータ−D−セロテトラオシド自体は、所定のアッセイ条件下において非常に安定である。したがって、405nmにおける吸光度の増大は、酵素活性の特性である。
【0222】
405nmにおける強い吸光度の増大によって証明される通り、親キシログルカナーゼ(配列番号3)が、pNP−ベータ−D−セロテトラオシドを基質として受容することを我々は発見した。
【0223】
材料及び試薬:
アッセイバッファー:100mM EPPS;0.01% Tween20;pH8.0
pNP−ベータ−D−セロテトラオシド(CAS番号:129411−62−7;Toronto Research Chemicals;カナダ)
基質溶液:1mM pNP−ベータ−D−セロテトラオシドのアッセイバッファー溶液
【0224】
手順
プレート1aは、20μlの、ストレスを受けた試料を含み、そしてプレート2は20μlの、ストレスを受けていない試料を含む。
【0225】
50μlアッセイバッファーをプレート1a及びプレート2の全てのウェルへ加えることによって試料を希釈し、そしてマイクロタイタープレート・シェーカーを用いて1時間混合した。その後、さらに50μlのアッセイバッファーを全てのウェルへ加え、そして振盪をさらに10分間継続した。
【0226】
20μlの6倍希釈試料を透明な384ウェルのポリスチレンマイクロタイタープレートへ移し、そして20μlの基質溶液を全てのウェルへ加えた。当該マイクロタイタープレートを軽く振って、当該試料を混合した。384ウェルの分光光度計リーダーを用いて405nmにおける吸光度の増大速度を観測することによって、酵素活性の動力学測定を速やかに開始した。
【0227】
反応の初期速度(Abs/分)を決定した。反応の初期速度は、適切な酵素濃度内における線形検量線によって確認される、試料中における酵素活性の基準であった。
【0228】
計算:
ストレスを受けた試料における酵素活性を、ストレスを受けていない同等の試料における酵素活性で割ることで%残存活性(residual activity)を計算した。
【0229】
【数2】

【0230】
結果
異なる条件下で試験されたキシログルカナーゼバリアントの安定性の結果を以下に示す。
【0231】
【表11】

【0232】
【表12】

【0233】
【表13】

【0234】
【表14】

【0235】
【表15】

【0236】
【表16】

【0237】
【表17】

【0238】
【表18】

【0239】
【表19】

【0240】
【表20】

【0241】
【表21】

【0242】
【表22】

【0243】
【表23】

【0244】
【表24】

【0245】
【表25】

【0246】
【表26】

【0247】
【表27】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親キシログルカナーゼの単離されたバリアントであって、位置番号:
【化1】

から成る群から選択される一つ以上の位置における前記親キシログルカナーゼの変更を含み、前記位置は配列番号3のアミノ酸配列における位置に対応し、そして、
a)前記変更(単数又は複数)は:
i)前記位置を占めるアミノ酸の下流におけるアミノ酸の挿入、及び/又は
ii)前記位置を占めるアミノ酸の欠失、及び/又は
iii)前記位置を占めるアミノ酸と、異なるアミノ酸との置換
であり;
b)前記親キシログルカナーゼはファミリー44キシログルカナーゼであり;そして
c)前記バリアントはキシログルカナーゼ活性を有する、前記バリアント。
【請求項2】
前記親キシログルカナーゼが、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7から成る群から選択されるか、又は前記親キシログルカナーゼが、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するキシログルカナーゼから選択される、請求項1に記載のバリアント。
【請求項3】
以下の変更の組み合わせ:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

のうち、一つ以上を含む、請求項1又は2に記載のバリアント。
【請求項4】
位置68、又は位置123、又は位置156、又は位置118、又は位置200、又は位置129、又は位置137、又は位置193、又は位置92、又は位置76、又は位置331に対応する、一つ以上の位置における変更を含み、ここで前記位置は、配列番号3のアミノ酸配列における位置に対応する、請求項1又は2に記載のバリアント。
【請求項5】
位置68における置換、及び位置番号:
【化8】

から成る群から選択される、一つ以上のさらなる位置における一つ以上の置換を含む、請求項1又は2に記載のバリアント。
【請求項6】
位置156における置換、及び位置番号:
【化9】

から成る群から選択される、一つ以上のさらなる位置における一つ以上の置換を含む、請求項1又は2に記載のバリアント。
【請求項7】
位置129及び位置156における置換を含む、請求項6に記載のバリアント。
【請求項8】
【化10】

から成る群から選択される一つ以上の置換を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバリアント。
【請求項9】
【化11】

から成る群から選択される一つ以上の置換を含む、請求項8に記載のバリアント。
【請求項10】
以下の置換の組み合わせ:
【化12】

のうち、一つ以上を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバリアント。
【請求項11】
前記バリアント中における変更の総数が2個、好ましくは3個、さらにより好ましくは4個、さらにより好ましくは5個、さらにより好ましくは6個、さらにより好ましくは7個、さらにより好ましくは8個、さらにより好ましくは9個、そして最も好ましくは10個である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のバリアント。
【請求項12】
配列番号3の親キシログルカナーゼのアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のバリアント。
【請求項13】
前記親キシログルカナーゼと比較して改善された化学安定性を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のバリアント。
【請求項14】
前記改善された化学安定性が、改善された洗剤安定性をもたらす、請求項13に記載のバリアント。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のバリアントをコードする、単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項16】
配列番号1に対応する親ポリヌクレオチド配列の変異誘発によって、又は配列番号1のポリヌクレオチド配列と少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド配列の変異誘発によって製造される、請求項15に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む、組み換え宿主細胞。
【請求項18】
親キシログルカナーゼのバリアントの産生方法であって、前記バリアントがキシログルカナーゼ活性を有し、以下のステップ:
a)前記バリアントの発現のために好適な条件下で請求項17に記載の宿主細胞を培養し;及び
b)培養培地から前記バリアントを回収すること
を含む前記方法。
【請求項19】
キシログルカナーゼの洗剤安定性を改善するための方法であって、位置:
【化13】

から成る群から選択される一つ以上の位置を変更することを含み、前記位置は配列番号3のアミノ酸配列における位置に対応し、そして、
a)前記変更(単数又は複数)は:
i)前記位置を占めるアミノ酸の下流におけるアミノ酸の挿入、及び/又は
ii)前記位置を占めるアミノ酸の欠失、及び/又は
iii)前記位置を占めるアミノ酸と、異なるアミノ酸との置換
であり;
b)前記親キシログルカナーゼはファミリー44キシログルカナーゼであり;そして
c)前記バリアントはキシログルカナーゼ活性を有する、前記方法。
【請求項20】
前記親キシログルカナーゼが、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7から成る群から選択されるか、又は前記親キシログルカナーゼが、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するキシログルカナーゼから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記バリアントが、以下の変更の組み合わせ:
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

のうち、一つ以上を含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のバリアントを含む製剤。
【請求項23】
前記製剤が液体製剤である、請求項22に記載の製剤。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2011−521661(P2011−521661A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512126(P2011−512126)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056875
【国際公開番号】WO2009/147210
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】