ファルネセン合成酵素
新規ファルネセン合成酵素をトマトから単離した。前記ファルネセン合成酵素は、形成される最終生成物に関して驚くべき特性を示し、かつ、その遺伝子は、他の起源からの既知のファルネセン合成酵素とは低い配列同一性をヌクレオチドレベルで有する。本発明は、単離したポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、遺伝子構築物、ベクター、そのポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び遺伝子構築物を有する宿主、特に植物、並びにその植物由来の種子に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新規ファルネセン合成酵素をトマトから単離した。前記ファルネセン合成酵素は、形成される最終生成物に関して驚くべき特性を有し、かつ、その遺伝子は、他の起源に由来する既知のファルネセン合成酵素遺伝子とは低い配列同一性をヌクレオチドレベルで有する。本発明は、単離したポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド、遺伝子構築物、ベクター、そのポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び遺伝子構築物を有する宿主、特に植物、並びにその植物由来の種子に関する。
【0002】
本発明は、ファルネセン合成酵素、特に、α−ファルネセン合成酵素及び/又はβ−ファルネセン合成酵素に関する。本発明は、その酵素をコードするポリヌクレオチド配列にも関する。本発明は、核酸(又は遺伝子)構築物、ベクター、及び前記ポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞にも関する。本発明は、さらに、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの生産並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ファルネセンという用語は、全てセスキテルペンである、一連の6つの密接に関連する化合物を指す。α−ファルネセン及びβ−ファルネセンは異性体であり、1つの二重結合の位置が異なる。α−ファルネセンは、3,7,11−トリメチル−1,3,6,10−ドデカテトラエンであり、β−ファルネセンは、7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエンである。α−ファルネセンは、その3つの内部の二重結合のうちの2つの配置が異なる(立体異性体の第三の内部二重結合は同一である)4つの立体異性体として存在し得る。β−ファルネセンは、その中央の二重結合の配置における2つの立体異性体として存在する。異性体の特定の機能について、α−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方の各種の異性体の間の差異に関しての理解は限られている。
【0004】
α−ファルネセンは、広範な種において構成的に存在しているか又は誘導される(Gapper et al., Postharvest Biology and Technology 42: (2006) 225-233)。α−ファルネセンは、カルボカチオン中間体を経て進行する反応においてファルネシルジホスフェート(FDP)から合成されると解されており、酵素であるα−ファルネセン合成酵素によって触媒されると報告されている(Rupasinghe, et al. , J. Am. Soc. Hortic. Sci. 123,882-886 (1998))。
【0005】
β−ファルネセンは、植物及び動物の分類群において広範囲に存在する。この天然物の存在及び化学コミュニケーションにおける重要な伝達因子としてのその展開について、各種の論文が公開されている。β−ファルネセンは、カモミラ・レクティタ、ビニフェラ種、トウモロコシ、及びコショウを含む、裸子植物及び被子植物の双方の多数の種の精油において認められる。(E)−β−ファルネセン合成酵素は、トウモロコシの葉鞘及び葉の組織においてエジプト綿葉寄生虫(Egyptian cotton leafworm)(spodoptera littoralis)の植食によって誘導されるが、根組織では誘導されない(Schnee et al., Plant Physiol., 2002, 130: 2049-2060)。WO 1999/18118に開示されているとおり、β−ファルネセンは、ジホスフェートエステルの二価金属イオンに支援されたイオン化及び得られたカルボカチオンのC−3メチルからの脱プロトン化を含む反応において、FDPから合成されると解されている
【0006】
その機能の中で、α−ファルネセンは、昆虫誘引物質として開示され、マウス及び昆虫における性フェロモンとして働く。α−ファルネセンは、Prorhinotermes canalifronsにおいて警報フェロモンとして働く(Sobotnfk et al. (2008) J. Chem. Ecol. 34(4):478-86)。α−ファルネセン及びその誘導体の他の使用は、強力な癌の予防剤としての使用及びプラスチックフィルム合成における使用である(US20060137032)。Hernandez-ceruelos(Toxicol. Lett. 135: 103-110, 2005)らは、変異原性処理後のマウス骨髄細胞に対する、カモミール精油の主要成分であるβ−ファルネセンの抗変異原性効果について報告している。
【0007】
β−ファルネセンは、キバナルピナスにおける花粉の臭気の主要成分として開示されており、マルハナバチの受粉行動を刺激する(Dobson et al. (1996) Am. J. Bot. 83, 877- 885)。より重要なことに、例えばワタアブラムシ(cotton aphid)(Jianwei et al., 2006, J. Econ. Entomol. 99 (5): 1636-1640; Kislow and Edwards, 1972, Nature 235: 108-109; Pickett and Griffiths, 1980, J. Chem. Ecol. 6: 349-360)及びモモアカアブラムシ(green peach aphid)(Edwards, LJ. , 1973, Nature 241 : 126-127)について、警報フェロモンとしてのアブラムシ種によるβ−ファルネセンの使用が開示されている。β−ファルネセンに曝露されたアブラムシは、扇動され、その宿主植物から散り散りに分散する(Wohlers (1981) Z Angew. Entomol. 92, 329-336)。β−ファルネセンは、100ng/アブラムシの用量でアブラムシに対して急性毒性である(van Oosten et al. (1990) Acta Phytopathol. Entomol. Hung. 25, 331-342)。また、興味深いことに、β−ファルネセンの蒸気はコナジラミに対しても毒性である(Klijnstra et al. (1992) Meded Fac. Landbouwwet. 57, 485-491)。残念なことに、β−ファルネセンの作物に対する局所適用によってアブラムシの行動を制御する試みは、揮発性のため及び空気中ですぐに酸化によって不活性化されるため、あまり成功していない(Dawson et al. (1988) Pest. Sci. 22, 17-30)。
【0008】
Schneeら(Plant Physiology Vol. 130, pp 2049 (2002))は、(E)−β−ファルネセンの形成を触媒するテルペン合成酵素を開示している。WO 2004/035791は、リンゴ(Malus domestica)由来のα−ファルネセン合成酵素を開示している。WO 99/18118は、セイヨウハッカ(Mentha piperita)由来の(E)−βファルネセン合成酵素を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 1999/18118
【特許文献2】US20060137032
【特許文献3】WO 2004/035791
【特許文献4】WO 99/18118
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Gapper et al., Postharvest Biology and Technology 42: (2006) 225-233
【非特許文献2】Rupasinghe, et al. , J. Am. Soc. Hortic. Sci. 123,882-886 (1998)
【非特許文献3】Schnee et al., Plant Physiol., 2002, 130: 2049-2060
【非特許文献4】Sobotnfk et al. (2008) J. Chem. Ecol. 34(4):478-86
【非特許文献5】Hernandez-ceruelos, Toxicol. Lett. 135: 103-110, 2005
【非特許文献6】Dobson et al. (1996) Am. J. Bot. 83, 877- 885
【非特許文献7】Jianwei et al., 2006, J. Econ. Entomol. 99 (5): 1636-1640
【非特許文献8】Kislow and Edwards, 1972, Nature 235: 108-109
【非特許文献9】Pickett and Griffiths, 1980, J. Chem. Ecol. 6: 349-360
【非特許文献10】Edwards, LJ. , 1973, Nature 241 : 126-127
【非特許文献11】Wohlers (1981) Z Angew. Entomol. 92, 329-336
【非特許文献12】van Oosten et al. (1990) Acta Phytopathol. Entomol. Hung. 25, 331-342
【非特許文献13】Klijnstra et al. (1992) Meded Fac. Landbouwwet. 57, 485-491
【非特許文献14】Dawson et al. (1988) Pest. Sci. 22, 17-30
【非特許文献15】Plant Physiology Vol. 130, pp 2049 (2002)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の態様では、配列番号1のポリヌクレオチド及びその相同物を提供する。前記ヌクレオチドは、ファルネセン合成酵素活性、特に、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有するポリペプチドをコードし得る。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、配列番号2のポリペプチド及びその相同物を提供する。前記ポリペプチドは、ファルネセン合成酵素活性、特に、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有し得る。
【0013】
他のさらなる態様では、本発明は、遺伝子構築物、その遺伝子構築物を含むベクター、及びその遺伝子構築物を含む宿主細胞であって、前記遺伝子構築物が本発明に係るポリヌクレオチドを含むものを提供する。
【0014】
他のさらなる態様では、本発明は、その遺伝子構築物を含むトランスジェニック植物又は植物細胞、及びその植物又は植物細胞由来の種子を提供する。
【0015】
他のさらなる態様では、本発明に係るポリヌクレオチドの使用を含む、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの製造方法を提供する。
【0016】
他のさらなる態様では、本発明にかかるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの発現レベルの制御を含む、植物のα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセン生産を調節するための方法を提供する。
【0017】
本発明のさらなる態様及び他の利点は、その説明を本明細書及び実施例に記載している添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な記載及び実施例を参照することによってよりよく理解され、より容易に解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、SISST3の配列と全てのプライマーの位置を示す。
【図2】図2は、発現ベクターのマップを示す。
【図3】図3は、SISST3及びMYB転写因子を含むプラスミドを有する誘導及び非誘導細胞由来の全タンパク質のアクリルアミドゲルをクマシーブリリアントブルーで染色したゲルをスキャンしたものを示す。
【図4】図4は、SISST3を含むプラスミドを有する誘導及び非誘導細胞の全タンパク質及び可溶性タンパク質画分についての、ケモルミネッセンスの図を示す。
【図5】図5は、402秒から436秒までの保持時間について拡大した、FPPでアッセイしたNi−精製SISST3及びMyb転写因子タンパク質のイオン69のGC−MSスペクトルを示す。
【図6】純粋な(E)α−ファルネセンは、Dr.W.Boland教授から頂いた。このセスキテルペンのマススペクトル及びピーク1のマススペクトルを図6aに示す。(Z,E)αファルネセン及び(E,E)α−ファルネセンの混合物をSigma社から得た。(Z,E)αファルネセン及びピーク2のマススペクトルは図6bに示され、図6cは、(E,E)α−ファルネセン及びピーク3のマススペクトルを示す。(E)ネロリドールはSigmaから得た。このセスキテルペン及びピーク4のマススペクトルを図6dに示す。
【図7】図7は、FPPでアッセイしたトマトファルネセン合成酵素を発現するE.coli細胞由来のタンパク質抽出物のさらなるGC−MCクロマトグラムを示す。
【図8】図8では、定量RT−PCRで測定し、Solanum lycopersicumの異なる組織由来のcDNA上の構成的なRCE1の発現で修正した、Solanum lycopersicumのファルネセン合成酵素(本発明)の空間的発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明及び実施例において、幾つかの用語を使用している。その様な用語の範囲を含む、明細書及び特許請求の範囲の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義を提供する。そうではないと本明細書で定義されない限り、使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同一の意味を有する。全ての文献、特許出願、特許、及び他の参考文献の開示は、それらの全体を参照によって本明細書に取り込む。
【0020】
「ファルネセン合成酵素」は、ファルネシルジホスフェートをα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンに変換することができる酵素である。
【0021】
「ファルネセン合成酵素活性」は、α−ファルネセン、β−ファルネセン、又は双方のファルネシルジホスフェートからの形成を触媒する本発明のファルネセン合成酵素の能力である。活性は、酵素活性アッセイ、例えば、実施例に記載のアッセイにおいて測定する。本発明のファルネセン合成酵素のアミノ酸配列バリアントが、例えば、変化した反応速度、基質利用、生成物分布、又は立体化学などの他の特性を含む所望の変化した生物学的活性を有してよい。
【0022】
「遺伝子構築物」は、cDNA分子などであるがそれらに限らない他のポリヌクレオチド分子(挿入ポリヌクレオチド)が挿入されている可能性がある、ポリヌクレオチド分子、通常は二本鎖DNAである。遺伝子構築物は、挿入ポリヌクレオチド分子の転写及び場合によっては転写物からポリペプチドへの翻訳を可能にする必要な因子を含んでよい。前記挿入ポリヌクレオチド分子は、宿主細胞に由来するか又は異なる細胞若しくは生物に由来してよく、及び/又は組換えポリヌクレオチドであってよい。宿主細胞の内部に入った時点で、前記遺伝子構築物は、宿主の染色体DNAに組み込まれてよい。前記遺伝子構築物は、ベクターに関係してよい。
【0023】
用語「遺伝子」は、作動可能に適切な調節領域(例えば、プロモーター)に連結した、細胞中でRNA分子(例えば、mRNA)に転写される領域(転写領域)を含むDNA配列を意味する。かくして、遺伝子は、プロモーター、例えば翻訳開始に関与する配列を含む5’リーダー配列、(タンパク質)コード領域(cDNA又はゲノムDNA)、及び例えば転写終結部位を含む3’−非翻訳配列などの幾つかの作動可能に連結した配列を含んでよい。
【0024】
「宿主細胞」は、原核又は有核細胞である。典型的な宿主原核細胞は、E.coliの各種の株を含む。典型的な宿主真核細胞は、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は動物細胞である。
【0025】
「配列同一性%」は、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列を並ばせてアラインメントする際に、同一の相対位置を占めるアミノ酸又はヌクレオチドの割合を意味する。核酸について比較する配列の長さは、一般的には、少なくとも120ヌクレオチド、好ましくは200ヌクレオチド、より好ましくは300ヌクレオチドであり、ポリペプチドについて比較する配列の長さは、一般的には、40アミノ酸残基、好ましくは65アミノ酸残基、より好ましくは100アミノ酸残基である。好ましくは、「配列同一性%」は、Clustal Wアラインメントを使用して決定される。vClustalWアラインメントは、CLC Bio社(Cambridge,MA,USA)の「CLC Free Workbench 3」というソフトウェアプログラムを使用して実施した。このプログラムは、ウェブサイトhttp://www.clcbio.comから自由に入手可能である。ヌクレオチド及びアミノ酸アラインメントの双方に使用するパラメータは、10のギャップオープンペナルティ及び1のギャップエクステンションペナルティである。ギャップエンドは、全ての他のギャップとして解した。
【0026】
本明細書で使用する「ポリヌクレオチオド」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖ポリマーを意味し、DNA及びセンス及びアンチセンス配向の双方の対応するRNA分子を含み、また、cDNA、ゲノムDNA、及び組換えDNA、並びに全体又は部分的に合成されたポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、遺伝子全体又はその任意の一部からなってよい。動作可能なアンチセンスポリヌクレオチドは、対応するポリヌクレオチドの断片を含んでよく、したがって、「ポリヌクレオチド」の定義は、その様な全ての動作可能なアンチセンス断片を含む。
【0027】
「単離されたポリヌクレオチド」は、同定され、かつ、通常は付随している少なくとも1つの混入タンパク質から分離されているヌクレオチド分子である。
【0028】
本明細書で使用する「ポリペプチド」は、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質を含む。
【0029】
「単離されたポリペプチド」は、同定され、かつ、分離又は回収されて、天然の環境の成分をほとんど含まないポリペプチドである。単離されたポリペプチドは、組換え細胞内のインサイチュポリペプチドを含む。しかしながら、一般的には、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0030】
用語「遺伝子マーカー」又は「多型マーカー」又は「分子マーカー」は、染色体上の特定の位置を「標識」するために使用することができるゲノムDNA上の領域である。遺伝子マーカーが遺伝子に密接に関係する場合又は遺伝子マーカーが遺伝子「内」にある場合は、前記マーカーは、遺伝子が認められるDNAを「標識」し、そのため、例えばマーカー育種/選抜技術(MAS)において、遺伝子の存在を肯定的又は否定的に選択するための(分子)マーカーアッセイ(下述参照)において使用することができる。遺伝子マーカーの例は、AFLP(増幅断片長多型)、マイクロサテライト、RFLP(制限断片長多型)、STS(配列タグ部位)、SNP(単一ヌクレオチド多型)、SFP(単一特徴多型(single feature polymorphism);Borevitz et al. 2003, Genome Research 13: 513-523を参照のこと)、SCAR(配列決定型増幅領域(sequence characterized amplified region))、及びCAPSマーカー(開裂増幅多型配列)などである。マーカーが遺伝子から離れるほど、マーカーと遺伝子との間で組換え(交差)が生じ、それによって関連(及びマーカーと遺伝子との同時分離)が失われる可能性が高い。遺伝子座間の距離は、組換え頻度で測定され、cM(センチモルガン;1cMは、2つのマーカーの間の減数分裂組換え頻度が1%であることを示す)で与えられる。ゲノムサイズが種ごとで大きく変化し、組換えが発生する分布がゲノム全体にわたってランダムではないため、1cMで表わされる実際の物理的距離(すなわち、キロベース、kb、2つのマーカーの間)は、種の間又は種の内で大きく変化する。マーカー及び「結合した」マーカーを参照する際は、遺伝子自体の「内部」におけるマーカーも包含すると解される。
【0031】
「分子マーカーアッセイ」(又は試験)は、植物又は植物の一部における本発明に係るポリヌクレオチドの存在又は非存在を(直接的又は間接的に)示す(DNAに基づく)アッセイである。
【0032】
本発明の1つの主題は、ファルネセン合成酵素をコードする新規ポリヌクレオチド配列、そのヌクレオチドにコードされる酵素、α−ファルネセン及び/若しくはβ−ファルネセンのインビトロ合成方法、並びに/又はα−ファルネセン及び/若しくはβ−ファルネセン活性のレベルを変化するために植物を遺伝子操作することを提供することであり、並びに利用可能な酵素における有用な選択肢を公衆に提供することである。
【0033】
驚くべきことに、上述の課題は、配列番号1の単離されたポリヌクレオチド、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを提供することによって解決できることを見出した。好ましくは、前記ポリヌクレオチドはファルネセン合成酵素、すなわち、適切な基質からα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを合成することができる酵素をコードする。したがって、他の実施態様では、ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、本発明に係るポリヌクレオチドを提供する。
【0034】
配列番号1の本発明のヌクレオチドは、方法の項目で詳細に記載しているとおり、植物であるトマト、すなわち、Solanum lycopersicon cultivar Money Makerから得られたファルネセン合成酵素をコードするファルネセン合成酵素遺伝子のコード配列である。以下により詳細に説明しているとおり、本発明のファルネセン合成酵素は、ポリヌクレオチドの配列同一性における差異に関してのみならず、重要なことには、そのようなポリヌクレオチドによってコードされるファルネセン合成酵素の活性に関して、当該技術分野において既知のファルネセン合成酵素と比較して驚くべき特性を有する。
【0035】
当業者によって理解されるとおり、配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドも提供する。
【0036】
本発明の背景において、配列同一性は、ClustalWアラインメントを使用して決定することができ、かつ、決定した。ClustalWアラインメントは、CLC Bio社(Cambridge,MA,USA)の「CLC Free Workbench 3」というソフトウェアプログラムを使用して実施した。このプログラムは、ウェブサイトhttp://www.clcbio.comから自由に入手することができる。ヌクレオチド及びアミノ酸アラインメントの双方に使用するパラメータは、ギャップオープンペナルティが10であり、ギャップエクステンションペナルティが1である。ギャップエンドは、全ての他のギャップと見なした。
【0037】
前記ClustalWアラインメントを使用して、配列番号1のポリヌクレオチドが、トウモロコシから単離された既知のE−β−ファルネセン合成酵素(Schee et al.2002)に対して36%の同一性、リンゴから単離された既知のα−ファルネセン合成酵素(WO 2004/035791)に対して46%の同一性、及びセイヨウハッカ由来の既知のE−β−ファルネセン合成酵素(WO 99/18118)に対して48%の同一性(のみ)を示すことを算出した。
【0038】
他の実施態様では、本発明は、配列番号1のポリヌクレオチド配列における挿入、欠失、又は置換によって、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1のヌクレオチドに関して配列番号1のポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドも提供する。そのような挿入、欠失、又は置換は、隣接ヌクレオチドに対してのものであってよいが、配列番号1のポリヌクレオチドの内部の、例えば、2、3、4、又は5つの異なる位置において存在してもよい。例えば、第一の位置のヌクレオチドが欠失され、第二の位置の2つのヌクレオチドが置換され、配列番号1のポリペプチドの内部の第三の位置で、1又は複数のヌクレオチドが挿入されてよい。
【0039】
(単離された)本発明のポリヌクレオチドは、cDNA、対応するRNA、又は合成ポリヌクレオチドの形態であってよいが、イントロン及びエキソンの双方を含むポリヌクレオチドも含む。当業者によって理解されるとおり、本発明のポリヌクレオチドは、さらに、本発明のファルネセン合成酵素をコードする領域に加えて、プロモーター領域、好ましくは本発明のファルネセン合成酵素のプロモーター領域を含む調節配列を含んでよい。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドの断片がファルネセン活性を有するポリペプチドをコードする限りにおいて、本発明のポリヌクレオチドの断片も提供する。ファルネセン活性は、当該技術分野において既知の各種の方法によって測定され得るが、好ましくは、下記の実施例に詳細に記載するとおりに測定される。
【0041】
上述のとおり、本発明のポリヌクレオチド、例えば、配列番号1のポリヌクレオチドは、ファルネセン活性を備えたポリヌクレオチドをコードすることが認められた。特に、本発明のポリペプチドは、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを形成することができるポリペプチドをコードすることが認められた。当該実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、かくして、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを形成するために使用することができる。
【0042】
加えて、結果は、(+)−バレンセンの存在を示し、本発明のポリペプチドは、(+)−バレンセンを形成するためにも使用できることを示唆した。したがって、本明細書において、本発明のポリペプチドを記載する場合は、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性に加えて、本発明のポリペプチドは、(+)−バレンセン合成酵素活性も示す、すなわち、(+)−バレンセンを形成するであろう。
【0043】
α−ファルネセンは、4つの異なる立体異性体:(Z,E)−α−ファルネセン、(Z,Z)−α−ファルネセン、(E,Z)−α−ファルネセン、及び(E,E)−α−ファルネセンの形態で存在し得る。β−ファルネセンは、2つの異なる立体異性体:(E)−β−ファルネセン及び(Z)−β−ファルネセンで存在し得る。
【0044】
さらなる実施態様では、α−ファルネセン合成酵素活性及びβ−ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、本発明のポリヌクレオチドを提供する。
【0045】
驚くべきことに、本発明のポリヌクレオチドが、実施例で示すとおり、α−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方を合成することができる本発明のポリヌクレオチドをコードし得ることを見出した。対照的に、出願人に既知の他のファルネセン合成酵素、例えば、WO 2004/035791及びWO 99/18118に開示されているものは、α−ファルネセン又はβ−ファルネセンのいずれかを形成するものとしてのみ開示されている。例えば、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、(E)−β−ファルネセン、(Z,E)−α−ファルネセン、(E,E)−α−ファルネセン、及び(Z,Z)−α−ファルネセンを合成することができる本発明のポリヌクレオチドをコードし得る。
【0046】
例えば、配列番号1のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、α−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方(特に、(E)−β−ファルネセン、(Z,E)−α−ファルネセン、(E,E)−α−ファルネセン、及び(Z,Z)−α−ファルネセン)の合成に対して活性を有する。本発明のポリヌクレオチド、例えば、植物であるトマトSolanum lycopersicon cultivar Money Maker)から単離された本発明のポリヌクレオチドがα−ファルネセン及びβ−ファルネセンの異なる立体異性体の双方を合成する特性を有するポリペプチドをコードすることは、ここで初めて見出された。事実、そのような植物であるトマト、例えば、Solanum lycopersicon cultivar Money Makerにおけるα−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方の合成は、以前には開示されておらず、驚くべきことである。
【0047】
これによって、α−ファルネセン、β−ファルネセン、又はそれらの双方の形成に使用することができる本発明のポリヌクレオチドをここで初めて提供することが可能になった。加えて、これによって、ポリヌクレオチドとコードされるポリペプチドとの間の関係及び異なるファルネセンの合成に関するインビボ及びインビトロのその活性をさらに解明するためにそのようなポリヌクレオチド及びコードされるポリペプチドを使用することが初めて可能になった。例えば、(増大した)β−ファルネセン合成酵素活性を有するが、α−ファルネセン合成酵素活性を有しない(又は同活性が低減した)変異体を得ることができると解することができる。本発明のファルネセン合成酵素のアミノ酸配列バリアントが、例えば、変化した反応速度、基質利用、生成物分布、又は他の特徴、例えば、立体化学を含む、所望の変化した生物学的活性を有してもよい。
【0048】
加えて、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドによって、単独のポリヌクレオチド又はポリペプチドを使用して、インビボ及びインビトロの双方で、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの特定の混合物又はブレンドを合成することが可能になった。例えば、本発明のポリヌクレオチドを植物又は細菌に導入することができ、又はα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを合成するためのインビトロ系で本発明のポリペプチドを使用することができる。
【0049】
例えば感受性植物の遺伝子型を形質転換して、異なるタイプのファルネセンの合成が変化した、遺伝的に形質転換された植物を生産するために使用することができるため、本発明のポリヌクレオチドによって、以下により詳細に説明するとおり、異なるファルネセンの合成を制御する効果的な手段を有することになる。
【0050】
本発明のポリヌクレオチドの好ましい実施態様では、配列番号2のポリペプチド、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0051】
特に、配列番号2のポリペプチド、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本発明の背景において有利に使用することができることが認められた。
【0052】
他の実施態様では、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性を備えたポリペプチドをコードする、好ましくは、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドの断片を提供する。
【0053】
本発明の範囲を逸脱すること無く、上述のポリヌクレオチドに加えて、修飾ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性が実質的に悪化されることなく、本発明のポリヌクレオチドに対して数個の修飾が可能であると解されるであろう。例えば、既に説明したとおり、本発明のポリヌクレオチドは、コードされるポリペプチドの活性を実質的に妨げることなく、欠失、置換、及び挿入などの修飾を含むことができる。したがって、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性(好ましくは、双方)を示すポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドの断片も、本発明で提供される。そのような断片は、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性(好ましくは、双方)を有する限りにおいて、本発明のポリペプチドの特定のサイズ又は部分に制限されない。当業者は、実施例に記載の方法を適用するか又は当該技術分野で既知の任意の他の適切な方法によって、本発明のポリヌクレオチドのそのような断片が必要な活性を有するか否か容易に確立することができる。
【0054】
他の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに関する。特に、配列番号2のポリペプチド、又は上述のClustalWアラインメントによって決定できる、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドを提供する。
【0055】
他の実施態様では、本発明は、配列番号2のポリペプチド配列における挿入、欠失、又は置換によって、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1アミノ酸に関して、配列番号2のポリペプチドと異なるポリペプチドも提供する。そのような挿入、欠失、又は置換は、隣接するアミノ酸に対してのものであってよいが、配列番号2のポリペプチドの内部の異なる、例えば、2、3、4、又は5の位置に存在してもよい。例えば、第一の位置の1つのアミノ酸が欠失されてよく、第二の位置の1つのアミノ酸が置換されてよく、配列番号2のポリペプチドの内部の第三の位置において、1又は複数のヌクレオチドが挿入されてよい。
【0056】
好ましい実施態様では、本発明のそのようなポリペプチドは、ファルネセン合成酵素活性、好ましくは、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性、より好ましくは、α−ファルネセン活性及びβ−ファルネセン合成酵素活性を有する。しかしながら、このことは、双方の活性を欠いている本発明のポリペプチド(変異体)を除外することは意図しない。
【0057】
他の実施態様では、単離されたα−ファルネセン及びβ−ファルネセン合成酵素ポリペプチドを提供する。そのような本発明のポリペプチドは、例えば実施例に記載のとおり測定できるように、α−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方の合成に対して活性である。上述のとおり、そのようなポリペプチドを(植物であるトマト(Solanum lycopersicon cultivar Money Maker)から)単離したことは今回が初めてであり、そのポリペプチドは本明細書に記載のとおり有利に使用できる。
【0058】
他の実施態様では、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性、好ましくは、α−ファルネセン及びβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、本発明のポリペプチドの断片を提供する。
【0059】
本発明の範囲を逸脱すること無く、上述のポリペプチドに加えて、前記ポリペプチドに対する数個の修飾が、その様な修飾がポリペプチドの活性を実質的に悪化すること無く、可能である。例えば、既に説明しているように、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの活性を実質的に妨げること無く、アミノ酸の欠失、置換、及び挿入などの修飾を含むことができる。したがって、α−ファルネセン活性及び/又は(好ましくは、及び)β−ファルネセン合成酵素活性を有する、本発明のポリペプチドの断片も本発明によって提供される。そのような断片は、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有する限りにおいて、本発明のポリペプチドの特定のサイズ及び部分に制限されない。当業者は、実施例に記載の方法を適用するか又は当該技術分野において既知の任意の他の適切な方法によって、そのような本発明の断片が必要な活性を有するか否かを容易に確立することができる。
【0060】
本発明のポリペプチド又はその断片は、ファルネセン合成活性に加えて、例えば、それに対する抗体をもたらすために使用することができ、その抗体は、例えば植物中の、本発明のポリペプチドの検出に使用することができる。
【0061】
本発明の他の態様では、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドのDNA配列、好ましくは、配列番号1のポリヌクレオチド配列又はその一部の一本鎖に対して相補的であり、かつ、相同遺伝子についてゲノムDNA又はcDNAライブラリーをスクリーニングするための、検出可能なように標識されている、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができるオリゴヌクレオチドを設計するために使用することができる。高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でプローブにハイブリダイズすることができ、かつ、ファルネセン合成酵素に関する、好ましくは、α−ファルネセン合成酵素及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有する遺伝子産物をコードする相同配列が、本発明の範囲内に含まれる。
【0062】
一般的には、高ストリンジェントな条件は、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは約200以上のヌクレオチドの核酸配列を、特定の配列に、約65℃で約1Mの塩を含む溶液、好ましくは6×SSC又は同等のイオン強度を有する任意の他の溶液中で特定の配列にハイブリダイズさせ、約0.1M以下の塩を含む溶液、好ましくは0.2×SSC又は同等のイオン強度を有する任意の他の溶液で65℃において洗浄する、(サザン)ハイブリダイゼーション条件である(Sambrook, Maniatis, Fritsch, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, CSHL Press, USA, 1987))。これらの条件によって、約90%以上の配列同一性を有する配列の検出が可能である。
【0063】
本発明の他の態様では、本発明のポリヌクレオチドに基づいて、サザン分析におけるハイブリダイゼーションプローブとして使用できるようにオリゴヌクレオチドを設計する。これらのプローブは、本発明のファルネセン合成酵素を有する植物の遺伝子型と、そのようなファルネセン合成酵素を有しない植物の遺伝子型とを区別する分子マーカーとして使用することができる。そのようなプローブは、セレクションにおける追加のツールとして使用することができる。
【0064】
例えば、それらは、
a.植物組織サンプル又は核酸サンプルを得る工程;
b.配列番号1の配列、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を検出する、本発明のポリペプチドに関係する1又は複数のマーカーの存在又は非存在についての分子マーカーアッセイを使用して、前記サンプルを分析する工程
を含む、植物組織又はその核酸サンプルにおける本発明のポリペプチドをコードする本発明のヌクレオチド配列の存在又は非存在を検出する方法において使用することができる。
【0065】
本発明の好ましい実施態様では、増幅反応、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においてプライマーとして使用でき、それによる増幅産物の形成が、ある植物の遺伝子型におけるファルネセン合成酵素、好ましくは、本発明のファルネセン合成酵素の存在を示すように、本発明のポリヌクレオチドに基づいてオリゴヌクレオチドを設計する。
【0066】
好ましい実施態様では、前記プライマーは、本発明のファルネセン合成酵素遺伝子に密接に関係する、AFLPマーカーを同定するために選択的制限断片増幅において使用する。事実、非常に有用な技術が、AFLP技術であり、Vos, P. et al., in Nucleic Acids Research, 1995, Vol. 23, No. 21 : 4407-4414に開示されている。
【0067】
分子マーカーは、事実、本発明のポリヌクレオチドに由来してよい。事実、提供されるヌクレオチド配列は、分子育種方法並びに遺伝資源スクリーニング及び/又は特性決定において使用するための遺伝子マーカーとして適用することができる。そのようなマーカーは、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドを有する又は有しない植物のマーカー利用選抜に使用することができる。
【0068】
したがって、配列番号1の少なくとも15の連続したヌクレオチド又はそれに対して少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する配列の分子マーカーとして、好ましくは配列番号1の単離されたポリヌクレオチド、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドのための分子マーカーとして;又は好ましくはα−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、請求項7から10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドのための分子マーカーとしての使用を提供する。
【0069】
配列番号1のポリヌクレオチド;又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドの、本発明のヌクレオチド配列に関係する分子(DNA)マーカーのマッピングのための使用も提供する。
【0070】
当業者に解されるとおり、遺伝子(又は分子)マーカーが、染色体上の既知の位置にあり、かつ、特定の遺伝子又は形質遺伝子と関連する、遺伝子又はDNA配列である。それは、観察することができるゲノムの遺伝子座における変異又は変化によって生じる可能性がある変化として説明され得る。遺伝子マーカーは、短いDNA配列、例えば、1つの塩基対の変化(一塩基多型、SNP)の周囲の配列、又は長いもの、例えばミニサテライトであってよい。
【0071】
本発明では、マーカーは、配列番号1のポリヌクレオチド(の断片)、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド(の断片)であってよい。
【0072】
遺伝子中又はその近辺における遺伝子マーカーのマッピングは、分子生物学の分野の当業者には極めて容易に実施され得る手法であり、例えば、Lefebvre, V. & A. M. Chevre . Tools for marking plant disease and pest resistance genes: a review. Agronomie 15, 1995 (1): 3-19; Michelmore, R.W. Molecular approaches to manipulation of disease resistance genes. Annual Review of Phytopathology 33 (1995): 393-427; Michelmore, R.W., R.V. Kesseli & E.J. Ryder. Genetic mapping in lettuce. In: R. L. Phillips & I. K. Vasil (eds.) DNA-based markers in plants, Kluwer Acad. Publishers, Dordrecht, 1994, pp. 223-239; Winter.P. & G. Kahl. Molecular marker technologies for plant improvement. World Journal of Microbiology & Biotechnology, 1995, 11 (4): 438-448に開示されている。
【0073】
本発明は、試験中の遺伝子型における本発明のファルネセン合成酵素遺伝子の存在又は非存在の検出のための、本発明のオリゴヌクレオチドを含む、診断キットにも関する。そのような診断キットは、例えば、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを形成するか否かについて遺伝子型をスクリーニングするための労力を要するアッセイを回避する。
【0074】
さらに、本発明は、好ましくは本発明のファルネセン合成酵素、例えば、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性を有するファルネセン合成酵素をコードする、本発明のポリヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物に関する。そのような遺伝子構築物は、好ましくは、植物細胞中で機能的な調節配列を含み、プロモーターなどの前記調節配列は、ポリヌクレオチド、例えば、本発明の配列番号1のポリヌクレオチドのコード配列と同種又は異種である。
【0075】
他の実施態様では、本発明のポリペプチドをコードする、オープンリーディングフレームポリヌクレオチドを5’−3’の方向に含む。さらなる実施態様では、前記遺伝子構築物は、好ましくはストリンジェントな条件で、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを5’−3’の方向に含む。
【0076】
本発明は、本発明のDNA構築物を含むDNAベクターにも関する。適切なベクターは、クローニングベクター、形質転換ベクター、及び発現ベクターなどであってよく、当業者によく知られている。
【0077】
さらに、上述の遺伝子構築物を含む、例えば、配列番号1のポリヌクレオチド若しくはその一部又はその相同物を含むベクターを有する細胞が本発明の範囲内である。さらに、本発明の遺伝子構築物を有する細胞は本発明の範囲内である。
【0078】
本発明の1つの好ましい実施態様では、遺伝的に形質転換された植物は、標準的な形質転換技術を使用して、本発明のポリヌクレオチドを前記植物のゲノムに導入することによって得られる。好ましくは、前記遺伝的に形質転換された植物は、本発明のファルネセン合成酵素、例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有するファルネセン合成酵素を機能的に発現する。
【0079】
本発明の他の実施態様では、一般的に知られた形質転換技術を使用して、本発明のポリヌクレオチドを異種系、例えば、メロン、タバコ、シロイヌナズナ、ジャガイモ、サトウダイコン、菜種、キュウリ、コショウ、ナス、綿、トウモロコシ、カボチャ、スイカ、及びレタスに移すが、それらに限らない。細菌及び酵母などの系も含まれる。その様な系に本発明のポリヌクレオチドを導入することは、例えば、本発明のポリペプチドの生産及びファルネセン、好ましくはα−ファルネセン及びβ−ファルネセンの生産のための、そのようなペプチドのインビボ又はインビトロにおける利用を可能にする。
【0080】
本発明の他の実施態様では、本発明のトランスジェニック植物又は植物細胞に由来し、かつ、例えば、本発明、例えば配列番号1のポリヌクレオチドを含む、種子を提供する。
【0081】
他の態様では、増大したα−ファルネセン合成酵素及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を提供する、本発明のポリヌクレオチドを用いて遺伝子操作された細胞を培養する工程;場合によってファルネシルジホスフェートを細胞に提供する工程;及び生成したα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを分離する工程を含む、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの製造方法を提供する。当該方法は、トマト、特に実施例で使用したトマト由来の細胞を培養する工程も含む。
【0082】
さらなる実施態様では、本発明のポリペプチド配列を有するファルネセン合成酵素の発現を増大又は低減する工程を含む、植物のα−ファルネセン及びβ−ファルネセン生産を調節するための方法であって、前記増大又は低減する工程が、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を変化する遺伝子操作によって達成される、方法を提供する。
【0083】
本明細書に記載のとおり、好ましくはファルネセン合成酵素活性、好ましくはα−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン活性をコードするか又は有する、ポリヌクレオチド及びポリペプチド並びにそれらの断片には、その幾つかを本明細書に記載したが、それらに限らない各種の用途がある。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のファルネセン合成酵素を(過剰)発現する植物を作製するために使用することができ、アブラムシの行動の制御及び草食昆虫、例えば、コナジラミの撃退の改善を与えることができる。
【0084】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドの単離の観点から実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を実施するための現在企図される最良の対応を示すのみであり、本発明を限定すると解されるべきではない。
【実施例】
【0085】
植物材料及び毛状突起、RNA及びmRNA単離
23℃から18℃の日中/夜間の温度において、16/8時間の光/暗闇の体制で、4週間にわたって、植物であるトマト(Solanum lycopersicon cultivar Money Maker)を温室の土壌で育てた。同植物の分裂組織を有する茎を切断し、土壌に置いて、さらに3週間再び育てた。液体窒素中で凍結させた葉柄及び茎の部分をボルテックスすることによって、茎の毛状組織及び葉柄を50ml試験管の底に回収した。
【0086】
Qiagen RNeasy plant Mini kit(Dusseldorf,Germany)を使用して、植物細胞及び組織についての製造業者のプロトコールにしたがって、毛状突起のRNAを単離した。添付されていたRLTバッファーを使用して溶解を実施した。製造業者のプロトコールにしたがって、Promega’s(Madison,Wisconsin,USA) PolyAtract mRNA isolation system IIIを使用して、全RNAのプールからメッセンジャーRNAを単離した。0.71%の効率でmRNAを全RNAから単離した。
【0087】
mRNA増幅及び二本鎖cDNA合成
Ambion社(Austin,Texas,USA)製のMessageAmp II a RNA amplification kitを使用して、毛状突起のmRNAを増幅した。増幅のための材料として、100ngのmRNAを使用した。製造業者のプロトコールにしたがって、増幅を実施した。増幅したRNAの収量は171μgであり、サイズ分布は期待されたとおり〜400から3,000塩基の範囲であった。
【0088】
ランダムヘキサマープライマー(MWG Operon社(Ebersberg,Germany)に注文)を使用して、20μlの反応において10μgのRNAを使用するバッチにおいて、この増幅RNAから第一の鎖のcDNAを合成した。終濃度が62.5nMであるランダムプライマーを増幅したRNAと組み合わせて、70℃で5分間インキュベートし、その後に氷上に保存した。Fermentas Life Sciences社(St.Leon−Rot,Germany)製のRevertAid M−MuIV逆転写酵素(200単位)を添付のバッファーと組み合わせて添加した。ヌクレオチドを1mMの終濃度まで添加した。cDNA合成を42℃で90分間にわたって実施した。その直後に、試験管を氷に移して、第二の鎖の合成をFermentas RNase H及びE.coli由来のDNAポリメラーゼIを使用して実施した。各20μlの反応管に対して、8μlの添付のDNAポリメラーゼI反応バッファーを、1単位のRNase H及び30単位のDNAポリメラーゼIとともに添加した。反応容量は水で100μlまで増加させた。全ての成分を添加して、第二の鎖の合成反応を15℃で2時間にわたって実施した。
【0089】
大規模同時パイロ配列決定及びデータ分析
ds−cDNAの剪断、ライブラリーの調製、454−配列決定、及びコンティグアラインメントを、当該技術分野において開示されており、かつ、当業者に既知の方法にしたがって実施した。その処理には、5つの変異体の各々が個別のバーコードを有する、バーコードを付した454−配列決定アダプターを利用した(個別のバーコードがタグ又は識別子として開示されている、WO2007073165、WO2007037678、又はWO2007073165を参照のこと)。パイロ配列決定自体は、当該技術分野において既知であり、とりわけ、www.biotagebio.com;www.pyrosequencing.com / section technologyに開示されている。その技術は、例えば、参照によって本明細書に取込む、WO 03/004690、WO 03/054142、WO 2004/069849、WO 2004/070005、WO 2004/070007、及びWO 2005/003375 (全て454 Life Sciences名義の出願である)においても適用されている。比較を目的とする配列のアラインメント方法は、当該技術分野においてよく知られている。各種のプログラム及びアラインメントアルゴリズムが、参照によって本明細書に取込む、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl . Math. 2:482; Needleman and Wunsch (1970) J. MoI. Biol. 48:443; Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444; Higgins and Sharp (1988) Gene 73:237-244; Higgins and Sharp (1989) CABIOS 5:151-153; Corpet et al. (1988) Nucl. Acids Res. 16:10881-90; Huang et al . (1992) Computer Appl. in the Biosci. 8:155-65; 及びPearson et al . (1994) Meth. MoI. Biol. 24:307-31に開示されている。Altschul et al . (1994) Nature Genet. 6:119-29 (参照によって本明細書に取込む)は、配列アラインメント方法及び相同性の計算についての詳細な検討を提示している。
【0090】
トマトセスキテルペン合成酵素SISTS3の同定及びクローニング
793bpの長さを有する、454−配列の読み取りから得られたコンティグの1つ(lcl−CL117コンティグ1)は、とりわけ、ファビアナ(Fabiana imbricata)セスキテルペン合成酵素(機能未知)mRNA(AY860847)に対して高度の同一性を有していた。このトマトcDNAの全長クローンを得るために、トマト毛状突起由来のmRNAで構築したcDNAライブラリーに対してPCR増幅を実施した。Stratagene社(Cedar Creek,Texas,USA)製のHybriZAP−2.1 XRライブラリー構築キット及びHybriZAP−2.1 XR cDNA合成キットを製造業者のプロトコールにしたがって使用した。プライマリーcDNAライブラリーのサイズは、2.5×106プラーク形成単位(PFU)/μgファージアームであった。プライマリーライブラリーを製造業者のプロトコールにしたがって増幅した。増幅したcDNAライブラリーは、製造業者によるMass Excision Protocolを使用して切断した。この切断したライブラリーを使用して、プライマー1−6(下表1のプライマーリストを参照のこと)を用いたcDNAの3’及び5’部位のPCR増幅を実施した。
【0091】
【表1】
【0092】
このcDNAの5’部位については、プライマー6R5E及びpActF(プライマーリストを参照のこと)を使用してPCRを実施した。このcDNAの3’部位については、プライマー6F4E及びT7longを使用した。25μlの反応容量において、付属のバッファーとFinnzymes社(Espoo,Finland)製の0.25単位のPhusion Hot Startポリメラーゼ、0.4mMの濃度の各プライマー、及び0.2mMの濃度のdNTPとともに、切断したcDNAライブラリーを鋳型として使用した。0.3mMの終濃度でMgCl2をPCRミックスに添加した。Biometra社(Gottingen,Germany)製のT1サーモサイクラーを、以下のプログラムで使用した:
ステップ1.98℃、1分間
ステップ2.98℃、10秒間
ステップ3.56℃、30秒間
ステップ4.72℃、45秒間
ステップ5.ステップ2に戻る;これを34回繰り返す
ステップ6.72℃、5分間
ステップ7.サーモサイクラーから取り出すまで4℃
【0093】
反応産物を水で20倍に希釈して、再増幅のための鋳型として使用した。プライマー6R4E及びpActFを使用して5’部位の再増幅を実施し、プライマー6F3E及びT7longを使用して3’部位の再増幅を実施した。PCR条件は、プライマリPCRと同じであった。
【0094】
再増幅反応のPCR産物をゲルから切り出して、製造業者のプロトコールにしたがってQIAGEN社製のGel Extraction Kitを使用して単離した。ABI Prism BigDye Terminator v1.1 Cycle Squencing Kitを使用してPCR産物の配列決定を実施した。
【0095】
新しく配列決定したcDNA断片とともに、オーバーラップ断片を集めることによって、454−配列から得られたコンティグを完全なコード配列にまで拡張できるであろう。切断したcDNAライブラリーからの完全なコード配列のPCR増幅に使用する新しいプライマーを設計した(プライマーE6flR2及びE6flF、プライマーリストを参照のこと)。上述のFinnzymes社製のPhusion Hot Startポリメラーゼを使用して全長の増幅を実施した。
【0096】
このPCR反応で得られたPCR断片をゲルから切り出し、製造業者のプロトコールにしたがってQIAGEN社製のGel Extraction Kitを使用して単離した。その後に、製造業者のプロトコールにしたがってInvitrogen社(Carlsbad,California,USA)製のTAクローニングキットを使用して、この精製した断片をpCR2.1クローニングベクターにクローニングした。プラスミドをOne Shot TOP10化学的コンピテントE.coli細胞(キットに同梱)に移した。液体培養を開始し、製造業者のプロトコールにしたがってFermentas社製のGeneJET Plasmid Miniprep Kitを使用してプラスミドをそこから単離し、プラスミド挿入断片の配列決定を実施した。図1は、この配列と全てのプライマーの位置を示す。
【0097】
全長のコード配列を、上述のPhusion Taq Polymeraseを使用して、プライマーE6TopoF及びE6TopoRでプラスミドから増幅した。PCR断片を上述のとおりにゲルから単離した。製造業者のプロトコールにしたがってInvitrogen社製のChampion pET200 Directional TOPO Expression Kitを使用して、この全長cDNAをpET TOPOベクターにクローニングした。発現ベクターのマップを図2に示す。
【0098】
その後に、キットに同梱されていたOne Shot TOP10化学的コンピテントE.coli細胞にプラスミドを移した。配列は、pCR2.1クローニングベクターから配列決定した第一の全長cDNAと同一であった。SISST3のコード配列を配列番号1に示す。配列番号2は、推定されるアミノ酸配列を示す。
【0099】
E.coliにおけるSISST3タンパク質の発現
SISST3を含むpET200プラスミドをBL21 Star(DE3) One Shot化学的コンピテントE.coli細胞に移した。液体培養を37℃で一晩実施した。翌日、50mlの培地に2.5mlの一晩培養したものを植菌して、0.5の600nmにおける光学密度になるまで増殖させた。培養物を室温に移し、1mMの終濃度のRoche社(Basel,Switzerland)製のイソプロピルベータ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を使用して誘導した。ネガティブコントロールとして、pET200でダミーの挿入断片(テルペン合成酵素活性を有しないR2R3タイプMYB転写因子(Genbank 受入番号AY705977))を使用した培養物を用いた。双方の培養物の非誘導コントロールも回収した。3時間の誘導の後に、1mlの2つの一定分量を各培養物から回収して、残りの細胞は15分間にわたる2000gの4℃における遠心分離及びその後の培地の吸引によって回収した。細胞ペレットを液体窒素で凍結して、酵素アッセイを実施するまで−80℃で保存した。
【0100】
1mlの一定分量の光学密度を600nmで測定した。細胞は、10分間にわたる4℃の2000gの遠心分離及び培地の吸引によって回収した。誘導したものの一定分量及び誘導していないものの一定分量の細胞を、OD単位あたり50μlのテルペン合成酵素バッファー(Van Schie et al. Plant MoI Biol. 2007 Jun;64(3):251-63に記載されている)に再懸濁した。30分間にわたる氷上における1μgのリソザイムとのインキュベート及び超音波処理によって細胞を破壊した後に、4℃の30分間にわたる12,000gの遠心分離によって可溶性タンパク質画分を回収した。他の誘導又は非誘導細胞ペレットは、OD単位あたり50μlのPBST(0.8% NaCI (w/v), 0.02% KCI (w/v), 0.144% Na2HPO4 (w/v), 0.02% KH2PO4 (w/v), 及び0.02% (v/v) Tween-20)に再懸濁した。全タンパク質及び可溶性タンパク質画分の双方に対して、三分の一容量の4×サンプルバッファー(8% SDS (w/v), 40% グリセロール(w/v), 20% β−メルカプトエタノール (v/v) 240 mM Tris-HCI pH 6.8, 及び0.08% ブロモフェノールブルー (w/v))を添加して、サンプルを沸騰した水に5分間入れた。15μlのタンパク質サンプルを10%アクリルアミドゲルで電気泳動した。SISST3及びMYB転写因子を含むプラスミドを有する誘導及び非誘導細胞由来の全タンパク質のアクリルアミドゲルをクマシーブリリアントブルー(0.25% CBB (w/v), 30% メタノール(v/v), 及び10% 酢酸)で染色した。この染色したゲルをスキャンしたものを図3に示す。
【0101】
SISST3を含むプラスミドを有する誘導及び非誘導細胞の全タンパク質及び可溶性タンパク質画分を10%アクリルアミドゲルに流した。サンプルの電気泳動の後に、タンパク質をニトロセルロースにブロットした。ブロットしたものを5%粉末ミルクのPBST溶液で1時間にわたってブロッキングした。QIAGEN社製のペンタHis抗体(カタログ番号34660、バッチ番号130167450)とともに5%粉末ミルクを含む10mlPBST中で、ブロットしたものを一晩にわたってインキュベートした。ブロットしたものをPBSTで三回洗浄し、その後に1時間にわたって5%(w/v)粉末ミルク及びPierce社(Rockford,IL,USA)製のセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIGG抗体を含むPBST中でインキュベートし、その後、PBSTで3回洗浄した。高感度ケミルミネッセンス(Amersham,Buckinghamshire,UK)を使用して、ペルオキシダーゼ活性を検出した。ケモルミネッセンスの図は図4において確認できる。
【0102】
SISST3タンパク質の機能分析
培養物の残りの細胞ペレットは、セスキテルペン合成酵素活性についてアッセイした。セスキテルペン合成酵素アッセイは、参照によって本明細書に取込むVan Schie et al. Plant MoI Biol. 2007 Jun;64(3):251-63に開示されているとおりに実施した。
【0103】
反応産物の分析は、参照によって本明細書に取込むVan Schie et al. Plant MoI Biol. 2007 Jun;64(3):251-63又はAment et al (2004) Plant Physiol. 135:2025-2037に開示されているとおりに、DB−5カラムを備えるGC−MS TOFでNi−精製タンパク質を使用して実施した。
【0104】
図5は、402秒から436秒までの保持時間について拡大した、FPPでアッセイしたNi−精製SISST3及びMyb転写因子タンパク質のイオン69のGC−MSスペクトルを示す。真正の標準物質を使用し、イオンスペクトル及び保持時間を比較することによって、ピーク1、2、3、及び4の産物は、(E)β−ファルネセン(ピーク1)、(Z,E)α−ファルネセン(ピーク2)、(E,E)α−ファルネセン及び(Z,Z)α−ファルネセン(ともにピーク3)、及び(E)−ネロリドール(ピーク4)として同定した。
【0105】
図7は、FPPでアッセイしたトマトファルネセン合成酵素を発現するE.coli細胞由来のタンパク質抽出物のさらなるGC−MCクロマトグラムを示す。ピーク1:β−エレメン(*)、ピーク2:(E)β−ファルネセン、ピーク3:未知のセスキテルペン(*)、ピーク4:(Z,E)α−ファルネセン、ピーク5:(+)−バレンセン(*)、ピーク6:(E,E)α−ファルネセン、ピーク7:未知のセスキテルペン(*)、(*)を付して示したピークはマススペクトルに基づいて同定し、他の全ては、マススペクトル及び純粋な標準物質の保持時間の比較に基づく。
【0106】
純粋な(E)α−ファルネセンは、Dr.W.Boland教授から頂いた。このセスキテルペンのマススペクトル及びピーク1のマススペクトルを図6aに示す。(Z,E)αファルネセン及び(E,E)α−ファルネセンの混合物をSigma社から得た。(Z,E)α−ファルネセン及びピーク2のマススペクトルは図6bに示され、図6cは、(E,E)α−ファルネセン及びピーク3のマススペクトルを示す。(E)ネロリドールはSigma社から得た。このセスキテルペン及びピーク4のマススペクトルを図6dに示す。
【0107】
これらの結果は、トマト毛状突起cDNAからクローニングしたSISST3が、(主に)β−ファルネセン合成酵素活性、及び、加えて、α−ファルネセン活性を有する、ファルネセン合成酵素をコードすることを示す。
【0108】
各種の組織及び器官におけるトマトファルネセン合成酵素の相対的な発現レベル
図8では、定量RT−PCRで測定し、Solanum lycopersicumの異なる組織由来のcDNA上の構成的なRCE1の発現で修正した、Solanum lycopersicumのファルネセン合成酵素(本発明)の空間的発現を示す。棒グラフによって、2つの独立した値の平均を表わす。最大値はエラーバーで示す。cDNAは1.根、2.つぼみ、3.雄しべ、4.花弁、5.萼片、6.未熟な青い果実、7.ブレーカー(breaker)果実、8.ターニング(turning)果実、9.赤い果実、10.葉柄、11.茎、12.植物先端、13.若い葉、14.成熟葉、15.老化葉から単離されたRNAから合成する。
【技術分野】
【0001】
新規ファルネセン合成酵素をトマトから単離した。前記ファルネセン合成酵素は、形成される最終生成物に関して驚くべき特性を有し、かつ、その遺伝子は、他の起源に由来する既知のファルネセン合成酵素遺伝子とは低い配列同一性をヌクレオチドレベルで有する。本発明は、単離したポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド、遺伝子構築物、ベクター、そのポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び遺伝子構築物を有する宿主、特に植物、並びにその植物由来の種子に関する。
【0002】
本発明は、ファルネセン合成酵素、特に、α−ファルネセン合成酵素及び/又はβ−ファルネセン合成酵素に関する。本発明は、その酵素をコードするポリヌクレオチド配列にも関する。本発明は、核酸(又は遺伝子)構築物、ベクター、及び前記ポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞にも関する。本発明は、さらに、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの生産並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ファルネセンという用語は、全てセスキテルペンである、一連の6つの密接に関連する化合物を指す。α−ファルネセン及びβ−ファルネセンは異性体であり、1つの二重結合の位置が異なる。α−ファルネセンは、3,7,11−トリメチル−1,3,6,10−ドデカテトラエンであり、β−ファルネセンは、7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエンである。α−ファルネセンは、その3つの内部の二重結合のうちの2つの配置が異なる(立体異性体の第三の内部二重結合は同一である)4つの立体異性体として存在し得る。β−ファルネセンは、その中央の二重結合の配置における2つの立体異性体として存在する。異性体の特定の機能について、α−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方の各種の異性体の間の差異に関しての理解は限られている。
【0004】
α−ファルネセンは、広範な種において構成的に存在しているか又は誘導される(Gapper et al., Postharvest Biology and Technology 42: (2006) 225-233)。α−ファルネセンは、カルボカチオン中間体を経て進行する反応においてファルネシルジホスフェート(FDP)から合成されると解されており、酵素であるα−ファルネセン合成酵素によって触媒されると報告されている(Rupasinghe, et al. , J. Am. Soc. Hortic. Sci. 123,882-886 (1998))。
【0005】
β−ファルネセンは、植物及び動物の分類群において広範囲に存在する。この天然物の存在及び化学コミュニケーションにおける重要な伝達因子としてのその展開について、各種の論文が公開されている。β−ファルネセンは、カモミラ・レクティタ、ビニフェラ種、トウモロコシ、及びコショウを含む、裸子植物及び被子植物の双方の多数の種の精油において認められる。(E)−β−ファルネセン合成酵素は、トウモロコシの葉鞘及び葉の組織においてエジプト綿葉寄生虫(Egyptian cotton leafworm)(spodoptera littoralis)の植食によって誘導されるが、根組織では誘導されない(Schnee et al., Plant Physiol., 2002, 130: 2049-2060)。WO 1999/18118に開示されているとおり、β−ファルネセンは、ジホスフェートエステルの二価金属イオンに支援されたイオン化及び得られたカルボカチオンのC−3メチルからの脱プロトン化を含む反応において、FDPから合成されると解されている
【0006】
その機能の中で、α−ファルネセンは、昆虫誘引物質として開示され、マウス及び昆虫における性フェロモンとして働く。α−ファルネセンは、Prorhinotermes canalifronsにおいて警報フェロモンとして働く(Sobotnfk et al. (2008) J. Chem. Ecol. 34(4):478-86)。α−ファルネセン及びその誘導体の他の使用は、強力な癌の予防剤としての使用及びプラスチックフィルム合成における使用である(US20060137032)。Hernandez-ceruelos(Toxicol. Lett. 135: 103-110, 2005)らは、変異原性処理後のマウス骨髄細胞に対する、カモミール精油の主要成分であるβ−ファルネセンの抗変異原性効果について報告している。
【0007】
β−ファルネセンは、キバナルピナスにおける花粉の臭気の主要成分として開示されており、マルハナバチの受粉行動を刺激する(Dobson et al. (1996) Am. J. Bot. 83, 877- 885)。より重要なことに、例えばワタアブラムシ(cotton aphid)(Jianwei et al., 2006, J. Econ. Entomol. 99 (5): 1636-1640; Kislow and Edwards, 1972, Nature 235: 108-109; Pickett and Griffiths, 1980, J. Chem. Ecol. 6: 349-360)及びモモアカアブラムシ(green peach aphid)(Edwards, LJ. , 1973, Nature 241 : 126-127)について、警報フェロモンとしてのアブラムシ種によるβ−ファルネセンの使用が開示されている。β−ファルネセンに曝露されたアブラムシは、扇動され、その宿主植物から散り散りに分散する(Wohlers (1981) Z Angew. Entomol. 92, 329-336)。β−ファルネセンは、100ng/アブラムシの用量でアブラムシに対して急性毒性である(van Oosten et al. (1990) Acta Phytopathol. Entomol. Hung. 25, 331-342)。また、興味深いことに、β−ファルネセンの蒸気はコナジラミに対しても毒性である(Klijnstra et al. (1992) Meded Fac. Landbouwwet. 57, 485-491)。残念なことに、β−ファルネセンの作物に対する局所適用によってアブラムシの行動を制御する試みは、揮発性のため及び空気中ですぐに酸化によって不活性化されるため、あまり成功していない(Dawson et al. (1988) Pest. Sci. 22, 17-30)。
【0008】
Schneeら(Plant Physiology Vol. 130, pp 2049 (2002))は、(E)−β−ファルネセンの形成を触媒するテルペン合成酵素を開示している。WO 2004/035791は、リンゴ(Malus domestica)由来のα−ファルネセン合成酵素を開示している。WO 99/18118は、セイヨウハッカ(Mentha piperita)由来の(E)−βファルネセン合成酵素を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 1999/18118
【特許文献2】US20060137032
【特許文献3】WO 2004/035791
【特許文献4】WO 99/18118
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Gapper et al., Postharvest Biology and Technology 42: (2006) 225-233
【非特許文献2】Rupasinghe, et al. , J. Am. Soc. Hortic. Sci. 123,882-886 (1998)
【非特許文献3】Schnee et al., Plant Physiol., 2002, 130: 2049-2060
【非特許文献4】Sobotnfk et al. (2008) J. Chem. Ecol. 34(4):478-86
【非特許文献5】Hernandez-ceruelos, Toxicol. Lett. 135: 103-110, 2005
【非特許文献6】Dobson et al. (1996) Am. J. Bot. 83, 877- 885
【非特許文献7】Jianwei et al., 2006, J. Econ. Entomol. 99 (5): 1636-1640
【非特許文献8】Kislow and Edwards, 1972, Nature 235: 108-109
【非特許文献9】Pickett and Griffiths, 1980, J. Chem. Ecol. 6: 349-360
【非特許文献10】Edwards, LJ. , 1973, Nature 241 : 126-127
【非特許文献11】Wohlers (1981) Z Angew. Entomol. 92, 329-336
【非特許文献12】van Oosten et al. (1990) Acta Phytopathol. Entomol. Hung. 25, 331-342
【非特許文献13】Klijnstra et al. (1992) Meded Fac. Landbouwwet. 57, 485-491
【非特許文献14】Dawson et al. (1988) Pest. Sci. 22, 17-30
【非特許文献15】Plant Physiology Vol. 130, pp 2049 (2002)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の態様では、配列番号1のポリヌクレオチド及びその相同物を提供する。前記ヌクレオチドは、ファルネセン合成酵素活性、特に、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有するポリペプチドをコードし得る。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、配列番号2のポリペプチド及びその相同物を提供する。前記ポリペプチドは、ファルネセン合成酵素活性、特に、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有し得る。
【0013】
他のさらなる態様では、本発明は、遺伝子構築物、その遺伝子構築物を含むベクター、及びその遺伝子構築物を含む宿主細胞であって、前記遺伝子構築物が本発明に係るポリヌクレオチドを含むものを提供する。
【0014】
他のさらなる態様では、本発明は、その遺伝子構築物を含むトランスジェニック植物又は植物細胞、及びその植物又は植物細胞由来の種子を提供する。
【0015】
他のさらなる態様では、本発明に係るポリヌクレオチドの使用を含む、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの製造方法を提供する。
【0016】
他のさらなる態様では、本発明にかかるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの発現レベルの制御を含む、植物のα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセン生産を調節するための方法を提供する。
【0017】
本発明のさらなる態様及び他の利点は、その説明を本明細書及び実施例に記載している添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な記載及び実施例を参照することによってよりよく理解され、より容易に解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、SISST3の配列と全てのプライマーの位置を示す。
【図2】図2は、発現ベクターのマップを示す。
【図3】図3は、SISST3及びMYB転写因子を含むプラスミドを有する誘導及び非誘導細胞由来の全タンパク質のアクリルアミドゲルをクマシーブリリアントブルーで染色したゲルをスキャンしたものを示す。
【図4】図4は、SISST3を含むプラスミドを有する誘導及び非誘導細胞の全タンパク質及び可溶性タンパク質画分についての、ケモルミネッセンスの図を示す。
【図5】図5は、402秒から436秒までの保持時間について拡大した、FPPでアッセイしたNi−精製SISST3及びMyb転写因子タンパク質のイオン69のGC−MSスペクトルを示す。
【図6】純粋な(E)α−ファルネセンは、Dr.W.Boland教授から頂いた。このセスキテルペンのマススペクトル及びピーク1のマススペクトルを図6aに示す。(Z,E)αファルネセン及び(E,E)α−ファルネセンの混合物をSigma社から得た。(Z,E)αファルネセン及びピーク2のマススペクトルは図6bに示され、図6cは、(E,E)α−ファルネセン及びピーク3のマススペクトルを示す。(E)ネロリドールはSigmaから得た。このセスキテルペン及びピーク4のマススペクトルを図6dに示す。
【図7】図7は、FPPでアッセイしたトマトファルネセン合成酵素を発現するE.coli細胞由来のタンパク質抽出物のさらなるGC−MCクロマトグラムを示す。
【図8】図8では、定量RT−PCRで測定し、Solanum lycopersicumの異なる組織由来のcDNA上の構成的なRCE1の発現で修正した、Solanum lycopersicumのファルネセン合成酵素(本発明)の空間的発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明及び実施例において、幾つかの用語を使用している。その様な用語の範囲を含む、明細書及び特許請求の範囲の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義を提供する。そうではないと本明細書で定義されない限り、使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同一の意味を有する。全ての文献、特許出願、特許、及び他の参考文献の開示は、それらの全体を参照によって本明細書に取り込む。
【0020】
「ファルネセン合成酵素」は、ファルネシルジホスフェートをα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンに変換することができる酵素である。
【0021】
「ファルネセン合成酵素活性」は、α−ファルネセン、β−ファルネセン、又は双方のファルネシルジホスフェートからの形成を触媒する本発明のファルネセン合成酵素の能力である。活性は、酵素活性アッセイ、例えば、実施例に記載のアッセイにおいて測定する。本発明のファルネセン合成酵素のアミノ酸配列バリアントが、例えば、変化した反応速度、基質利用、生成物分布、又は立体化学などの他の特性を含む所望の変化した生物学的活性を有してよい。
【0022】
「遺伝子構築物」は、cDNA分子などであるがそれらに限らない他のポリヌクレオチド分子(挿入ポリヌクレオチド)が挿入されている可能性がある、ポリヌクレオチド分子、通常は二本鎖DNAである。遺伝子構築物は、挿入ポリヌクレオチド分子の転写及び場合によっては転写物からポリペプチドへの翻訳を可能にする必要な因子を含んでよい。前記挿入ポリヌクレオチド分子は、宿主細胞に由来するか又は異なる細胞若しくは生物に由来してよく、及び/又は組換えポリヌクレオチドであってよい。宿主細胞の内部に入った時点で、前記遺伝子構築物は、宿主の染色体DNAに組み込まれてよい。前記遺伝子構築物は、ベクターに関係してよい。
【0023】
用語「遺伝子」は、作動可能に適切な調節領域(例えば、プロモーター)に連結した、細胞中でRNA分子(例えば、mRNA)に転写される領域(転写領域)を含むDNA配列を意味する。かくして、遺伝子は、プロモーター、例えば翻訳開始に関与する配列を含む5’リーダー配列、(タンパク質)コード領域(cDNA又はゲノムDNA)、及び例えば転写終結部位を含む3’−非翻訳配列などの幾つかの作動可能に連結した配列を含んでよい。
【0024】
「宿主細胞」は、原核又は有核細胞である。典型的な宿主原核細胞は、E.coliの各種の株を含む。典型的な宿主真核細胞は、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は動物細胞である。
【0025】
「配列同一性%」は、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列を並ばせてアラインメントする際に、同一の相対位置を占めるアミノ酸又はヌクレオチドの割合を意味する。核酸について比較する配列の長さは、一般的には、少なくとも120ヌクレオチド、好ましくは200ヌクレオチド、より好ましくは300ヌクレオチドであり、ポリペプチドについて比較する配列の長さは、一般的には、40アミノ酸残基、好ましくは65アミノ酸残基、より好ましくは100アミノ酸残基である。好ましくは、「配列同一性%」は、Clustal Wアラインメントを使用して決定される。vClustalWアラインメントは、CLC Bio社(Cambridge,MA,USA)の「CLC Free Workbench 3」というソフトウェアプログラムを使用して実施した。このプログラムは、ウェブサイトhttp://www.clcbio.comから自由に入手可能である。ヌクレオチド及びアミノ酸アラインメントの双方に使用するパラメータは、10のギャップオープンペナルティ及び1のギャップエクステンションペナルティである。ギャップエンドは、全ての他のギャップとして解した。
【0026】
本明細書で使用する「ポリヌクレオチオド」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖ポリマーを意味し、DNA及びセンス及びアンチセンス配向の双方の対応するRNA分子を含み、また、cDNA、ゲノムDNA、及び組換えDNA、並びに全体又は部分的に合成されたポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、遺伝子全体又はその任意の一部からなってよい。動作可能なアンチセンスポリヌクレオチドは、対応するポリヌクレオチドの断片を含んでよく、したがって、「ポリヌクレオチド」の定義は、その様な全ての動作可能なアンチセンス断片を含む。
【0027】
「単離されたポリヌクレオチド」は、同定され、かつ、通常は付随している少なくとも1つの混入タンパク質から分離されているヌクレオチド分子である。
【0028】
本明細書で使用する「ポリペプチド」は、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質を含む。
【0029】
「単離されたポリペプチド」は、同定され、かつ、分離又は回収されて、天然の環境の成分をほとんど含まないポリペプチドである。単離されたポリペプチドは、組換え細胞内のインサイチュポリペプチドを含む。しかしながら、一般的には、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0030】
用語「遺伝子マーカー」又は「多型マーカー」又は「分子マーカー」は、染色体上の特定の位置を「標識」するために使用することができるゲノムDNA上の領域である。遺伝子マーカーが遺伝子に密接に関係する場合又は遺伝子マーカーが遺伝子「内」にある場合は、前記マーカーは、遺伝子が認められるDNAを「標識」し、そのため、例えばマーカー育種/選抜技術(MAS)において、遺伝子の存在を肯定的又は否定的に選択するための(分子)マーカーアッセイ(下述参照)において使用することができる。遺伝子マーカーの例は、AFLP(増幅断片長多型)、マイクロサテライト、RFLP(制限断片長多型)、STS(配列タグ部位)、SNP(単一ヌクレオチド多型)、SFP(単一特徴多型(single feature polymorphism);Borevitz et al. 2003, Genome Research 13: 513-523を参照のこと)、SCAR(配列決定型増幅領域(sequence characterized amplified region))、及びCAPSマーカー(開裂増幅多型配列)などである。マーカーが遺伝子から離れるほど、マーカーと遺伝子との間で組換え(交差)が生じ、それによって関連(及びマーカーと遺伝子との同時分離)が失われる可能性が高い。遺伝子座間の距離は、組換え頻度で測定され、cM(センチモルガン;1cMは、2つのマーカーの間の減数分裂組換え頻度が1%であることを示す)で与えられる。ゲノムサイズが種ごとで大きく変化し、組換えが発生する分布がゲノム全体にわたってランダムではないため、1cMで表わされる実際の物理的距離(すなわち、キロベース、kb、2つのマーカーの間)は、種の間又は種の内で大きく変化する。マーカー及び「結合した」マーカーを参照する際は、遺伝子自体の「内部」におけるマーカーも包含すると解される。
【0031】
「分子マーカーアッセイ」(又は試験)は、植物又は植物の一部における本発明に係るポリヌクレオチドの存在又は非存在を(直接的又は間接的に)示す(DNAに基づく)アッセイである。
【0032】
本発明の1つの主題は、ファルネセン合成酵素をコードする新規ポリヌクレオチド配列、そのヌクレオチドにコードされる酵素、α−ファルネセン及び/若しくはβ−ファルネセンのインビトロ合成方法、並びに/又はα−ファルネセン及び/若しくはβ−ファルネセン活性のレベルを変化するために植物を遺伝子操作することを提供することであり、並びに利用可能な酵素における有用な選択肢を公衆に提供することである。
【0033】
驚くべきことに、上述の課題は、配列番号1の単離されたポリヌクレオチド、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを提供することによって解決できることを見出した。好ましくは、前記ポリヌクレオチドはファルネセン合成酵素、すなわち、適切な基質からα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを合成することができる酵素をコードする。したがって、他の実施態様では、ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、本発明に係るポリヌクレオチドを提供する。
【0034】
配列番号1の本発明のヌクレオチドは、方法の項目で詳細に記載しているとおり、植物であるトマト、すなわち、Solanum lycopersicon cultivar Money Makerから得られたファルネセン合成酵素をコードするファルネセン合成酵素遺伝子のコード配列である。以下により詳細に説明しているとおり、本発明のファルネセン合成酵素は、ポリヌクレオチドの配列同一性における差異に関してのみならず、重要なことには、そのようなポリヌクレオチドによってコードされるファルネセン合成酵素の活性に関して、当該技術分野において既知のファルネセン合成酵素と比較して驚くべき特性を有する。
【0035】
当業者によって理解されるとおり、配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドも提供する。
【0036】
本発明の背景において、配列同一性は、ClustalWアラインメントを使用して決定することができ、かつ、決定した。ClustalWアラインメントは、CLC Bio社(Cambridge,MA,USA)の「CLC Free Workbench 3」というソフトウェアプログラムを使用して実施した。このプログラムは、ウェブサイトhttp://www.clcbio.comから自由に入手することができる。ヌクレオチド及びアミノ酸アラインメントの双方に使用するパラメータは、ギャップオープンペナルティが10であり、ギャップエクステンションペナルティが1である。ギャップエンドは、全ての他のギャップと見なした。
【0037】
前記ClustalWアラインメントを使用して、配列番号1のポリヌクレオチドが、トウモロコシから単離された既知のE−β−ファルネセン合成酵素(Schee et al.2002)に対して36%の同一性、リンゴから単離された既知のα−ファルネセン合成酵素(WO 2004/035791)に対して46%の同一性、及びセイヨウハッカ由来の既知のE−β−ファルネセン合成酵素(WO 99/18118)に対して48%の同一性(のみ)を示すことを算出した。
【0038】
他の実施態様では、本発明は、配列番号1のポリヌクレオチド配列における挿入、欠失、又は置換によって、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1のヌクレオチドに関して配列番号1のポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドも提供する。そのような挿入、欠失、又は置換は、隣接ヌクレオチドに対してのものであってよいが、配列番号1のポリヌクレオチドの内部の、例えば、2、3、4、又は5つの異なる位置において存在してもよい。例えば、第一の位置のヌクレオチドが欠失され、第二の位置の2つのヌクレオチドが置換され、配列番号1のポリペプチドの内部の第三の位置で、1又は複数のヌクレオチドが挿入されてよい。
【0039】
(単離された)本発明のポリヌクレオチドは、cDNA、対応するRNA、又は合成ポリヌクレオチドの形態であってよいが、イントロン及びエキソンの双方を含むポリヌクレオチドも含む。当業者によって理解されるとおり、本発明のポリヌクレオチドは、さらに、本発明のファルネセン合成酵素をコードする領域に加えて、プロモーター領域、好ましくは本発明のファルネセン合成酵素のプロモーター領域を含む調節配列を含んでよい。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドの断片がファルネセン活性を有するポリペプチドをコードする限りにおいて、本発明のポリヌクレオチドの断片も提供する。ファルネセン活性は、当該技術分野において既知の各種の方法によって測定され得るが、好ましくは、下記の実施例に詳細に記載するとおりに測定される。
【0041】
上述のとおり、本発明のポリヌクレオチド、例えば、配列番号1のポリヌクレオチドは、ファルネセン活性を備えたポリヌクレオチドをコードすることが認められた。特に、本発明のポリペプチドは、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを形成することができるポリペプチドをコードすることが認められた。当該実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、かくして、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを形成するために使用することができる。
【0042】
加えて、結果は、(+)−バレンセンの存在を示し、本発明のポリペプチドは、(+)−バレンセンを形成するためにも使用できることを示唆した。したがって、本明細書において、本発明のポリペプチドを記載する場合は、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性に加えて、本発明のポリペプチドは、(+)−バレンセン合成酵素活性も示す、すなわち、(+)−バレンセンを形成するであろう。
【0043】
α−ファルネセンは、4つの異なる立体異性体:(Z,E)−α−ファルネセン、(Z,Z)−α−ファルネセン、(E,Z)−α−ファルネセン、及び(E,E)−α−ファルネセンの形態で存在し得る。β−ファルネセンは、2つの異なる立体異性体:(E)−β−ファルネセン及び(Z)−β−ファルネセンで存在し得る。
【0044】
さらなる実施態様では、α−ファルネセン合成酵素活性及びβ−ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、本発明のポリヌクレオチドを提供する。
【0045】
驚くべきことに、本発明のポリヌクレオチドが、実施例で示すとおり、α−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方を合成することができる本発明のポリヌクレオチドをコードし得ることを見出した。対照的に、出願人に既知の他のファルネセン合成酵素、例えば、WO 2004/035791及びWO 99/18118に開示されているものは、α−ファルネセン又はβ−ファルネセンのいずれかを形成するものとしてのみ開示されている。例えば、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、(E)−β−ファルネセン、(Z,E)−α−ファルネセン、(E,E)−α−ファルネセン、及び(Z,Z)−α−ファルネセンを合成することができる本発明のポリヌクレオチドをコードし得る。
【0046】
例えば、配列番号1のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、α−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方(特に、(E)−β−ファルネセン、(Z,E)−α−ファルネセン、(E,E)−α−ファルネセン、及び(Z,Z)−α−ファルネセン)の合成に対して活性を有する。本発明のポリヌクレオチド、例えば、植物であるトマトSolanum lycopersicon cultivar Money Maker)から単離された本発明のポリヌクレオチドがα−ファルネセン及びβ−ファルネセンの異なる立体異性体の双方を合成する特性を有するポリペプチドをコードすることは、ここで初めて見出された。事実、そのような植物であるトマト、例えば、Solanum lycopersicon cultivar Money Makerにおけるα−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方の合成は、以前には開示されておらず、驚くべきことである。
【0047】
これによって、α−ファルネセン、β−ファルネセン、又はそれらの双方の形成に使用することができる本発明のポリヌクレオチドをここで初めて提供することが可能になった。加えて、これによって、ポリヌクレオチドとコードされるポリペプチドとの間の関係及び異なるファルネセンの合成に関するインビボ及びインビトロのその活性をさらに解明するためにそのようなポリヌクレオチド及びコードされるポリペプチドを使用することが初めて可能になった。例えば、(増大した)β−ファルネセン合成酵素活性を有するが、α−ファルネセン合成酵素活性を有しない(又は同活性が低減した)変異体を得ることができると解することができる。本発明のファルネセン合成酵素のアミノ酸配列バリアントが、例えば、変化した反応速度、基質利用、生成物分布、又は他の特徴、例えば、立体化学を含む、所望の変化した生物学的活性を有してもよい。
【0048】
加えて、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドによって、単独のポリヌクレオチド又はポリペプチドを使用して、インビボ及びインビトロの双方で、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの特定の混合物又はブレンドを合成することが可能になった。例えば、本発明のポリヌクレオチドを植物又は細菌に導入することができ、又はα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを合成するためのインビトロ系で本発明のポリペプチドを使用することができる。
【0049】
例えば感受性植物の遺伝子型を形質転換して、異なるタイプのファルネセンの合成が変化した、遺伝的に形質転換された植物を生産するために使用することができるため、本発明のポリヌクレオチドによって、以下により詳細に説明するとおり、異なるファルネセンの合成を制御する効果的な手段を有することになる。
【0050】
本発明のポリヌクレオチドの好ましい実施態様では、配列番号2のポリペプチド、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0051】
特に、配列番号2のポリペプチド、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本発明の背景において有利に使用することができることが認められた。
【0052】
他の実施態様では、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性を備えたポリペプチドをコードする、好ましくは、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドの断片を提供する。
【0053】
本発明の範囲を逸脱すること無く、上述のポリヌクレオチドに加えて、修飾ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性が実質的に悪化されることなく、本発明のポリヌクレオチドに対して数個の修飾が可能であると解されるであろう。例えば、既に説明したとおり、本発明のポリヌクレオチドは、コードされるポリペプチドの活性を実質的に妨げることなく、欠失、置換、及び挿入などの修飾を含むことができる。したがって、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性(好ましくは、双方)を示すポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドの断片も、本発明で提供される。そのような断片は、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性(好ましくは、双方)を有する限りにおいて、本発明のポリペプチドの特定のサイズ又は部分に制限されない。当業者は、実施例に記載の方法を適用するか又は当該技術分野で既知の任意の他の適切な方法によって、本発明のポリヌクレオチドのそのような断片が必要な活性を有するか否か容易に確立することができる。
【0054】
他の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに関する。特に、配列番号2のポリペプチド、又は上述のClustalWアラインメントによって決定できる、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドを提供する。
【0055】
他の実施態様では、本発明は、配列番号2のポリペプチド配列における挿入、欠失、又は置換によって、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1アミノ酸に関して、配列番号2のポリペプチドと異なるポリペプチドも提供する。そのような挿入、欠失、又は置換は、隣接するアミノ酸に対してのものであってよいが、配列番号2のポリペプチドの内部の異なる、例えば、2、3、4、又は5の位置に存在してもよい。例えば、第一の位置の1つのアミノ酸が欠失されてよく、第二の位置の1つのアミノ酸が置換されてよく、配列番号2のポリペプチドの内部の第三の位置において、1又は複数のヌクレオチドが挿入されてよい。
【0056】
好ましい実施態様では、本発明のそのようなポリペプチドは、ファルネセン合成酵素活性、好ましくは、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性、より好ましくは、α−ファルネセン活性及びβ−ファルネセン合成酵素活性を有する。しかしながら、このことは、双方の活性を欠いている本発明のポリペプチド(変異体)を除外することは意図しない。
【0057】
他の実施態様では、単離されたα−ファルネセン及びβ−ファルネセン合成酵素ポリペプチドを提供する。そのような本発明のポリペプチドは、例えば実施例に記載のとおり測定できるように、α−ファルネセン及びβ−ファルネセンの双方の合成に対して活性である。上述のとおり、そのようなポリペプチドを(植物であるトマト(Solanum lycopersicon cultivar Money Maker)から)単離したことは今回が初めてであり、そのポリペプチドは本明細書に記載のとおり有利に使用できる。
【0058】
他の実施態様では、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性、好ましくは、α−ファルネセン及びβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、本発明のポリペプチドの断片を提供する。
【0059】
本発明の範囲を逸脱すること無く、上述のポリペプチドに加えて、前記ポリペプチドに対する数個の修飾が、その様な修飾がポリペプチドの活性を実質的に悪化すること無く、可能である。例えば、既に説明しているように、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの活性を実質的に妨げること無く、アミノ酸の欠失、置換、及び挿入などの修飾を含むことができる。したがって、α−ファルネセン活性及び/又は(好ましくは、及び)β−ファルネセン合成酵素活性を有する、本発明のポリペプチドの断片も本発明によって提供される。そのような断片は、α−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有する限りにおいて、本発明のポリペプチドの特定のサイズ及び部分に制限されない。当業者は、実施例に記載の方法を適用するか又は当該技術分野において既知の任意の他の適切な方法によって、そのような本発明の断片が必要な活性を有するか否かを容易に確立することができる。
【0060】
本発明のポリペプチド又はその断片は、ファルネセン合成活性に加えて、例えば、それに対する抗体をもたらすために使用することができ、その抗体は、例えば植物中の、本発明のポリペプチドの検出に使用することができる。
【0061】
本発明の他の態様では、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドのDNA配列、好ましくは、配列番号1のポリヌクレオチド配列又はその一部の一本鎖に対して相補的であり、かつ、相同遺伝子についてゲノムDNA又はcDNAライブラリーをスクリーニングするための、検出可能なように標識されている、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができるオリゴヌクレオチドを設計するために使用することができる。高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でプローブにハイブリダイズすることができ、かつ、ファルネセン合成酵素に関する、好ましくは、α−ファルネセン合成酵素及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有する遺伝子産物をコードする相同配列が、本発明の範囲内に含まれる。
【0062】
一般的には、高ストリンジェントな条件は、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは約200以上のヌクレオチドの核酸配列を、特定の配列に、約65℃で約1Mの塩を含む溶液、好ましくは6×SSC又は同等のイオン強度を有する任意の他の溶液中で特定の配列にハイブリダイズさせ、約0.1M以下の塩を含む溶液、好ましくは0.2×SSC又は同等のイオン強度を有する任意の他の溶液で65℃において洗浄する、(サザン)ハイブリダイゼーション条件である(Sambrook, Maniatis, Fritsch, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, CSHL Press, USA, 1987))。これらの条件によって、約90%以上の配列同一性を有する配列の検出が可能である。
【0063】
本発明の他の態様では、本発明のポリヌクレオチドに基づいて、サザン分析におけるハイブリダイゼーションプローブとして使用できるようにオリゴヌクレオチドを設計する。これらのプローブは、本発明のファルネセン合成酵素を有する植物の遺伝子型と、そのようなファルネセン合成酵素を有しない植物の遺伝子型とを区別する分子マーカーとして使用することができる。そのようなプローブは、セレクションにおける追加のツールとして使用することができる。
【0064】
例えば、それらは、
a.植物組織サンプル又は核酸サンプルを得る工程;
b.配列番号1の配列、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を検出する、本発明のポリペプチドに関係する1又は複数のマーカーの存在又は非存在についての分子マーカーアッセイを使用して、前記サンプルを分析する工程
を含む、植物組織又はその核酸サンプルにおける本発明のポリペプチドをコードする本発明のヌクレオチド配列の存在又は非存在を検出する方法において使用することができる。
【0065】
本発明の好ましい実施態様では、増幅反応、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においてプライマーとして使用でき、それによる増幅産物の形成が、ある植物の遺伝子型におけるファルネセン合成酵素、好ましくは、本発明のファルネセン合成酵素の存在を示すように、本発明のポリヌクレオチドに基づいてオリゴヌクレオチドを設計する。
【0066】
好ましい実施態様では、前記プライマーは、本発明のファルネセン合成酵素遺伝子に密接に関係する、AFLPマーカーを同定するために選択的制限断片増幅において使用する。事実、非常に有用な技術が、AFLP技術であり、Vos, P. et al., in Nucleic Acids Research, 1995, Vol. 23, No. 21 : 4407-4414に開示されている。
【0067】
分子マーカーは、事実、本発明のポリヌクレオチドに由来してよい。事実、提供されるヌクレオチド配列は、分子育種方法並びに遺伝資源スクリーニング及び/又は特性決定において使用するための遺伝子マーカーとして適用することができる。そのようなマーカーは、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドを有する又は有しない植物のマーカー利用選抜に使用することができる。
【0068】
したがって、配列番号1の少なくとも15の連続したヌクレオチド又はそれに対して少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する配列の分子マーカーとして、好ましくは配列番号1の単離されたポリヌクレオチド、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドのための分子マーカーとして;又は好ましくはα−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、請求項7から10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドのための分子マーカーとしての使用を提供する。
【0069】
配列番号1のポリヌクレオチド;又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドの、本発明のヌクレオチド配列に関係する分子(DNA)マーカーのマッピングのための使用も提供する。
【0070】
当業者に解されるとおり、遺伝子(又は分子)マーカーが、染色体上の既知の位置にあり、かつ、特定の遺伝子又は形質遺伝子と関連する、遺伝子又はDNA配列である。それは、観察することができるゲノムの遺伝子座における変異又は変化によって生じる可能性がある変化として説明され得る。遺伝子マーカーは、短いDNA配列、例えば、1つの塩基対の変化(一塩基多型、SNP)の周囲の配列、又は長いもの、例えばミニサテライトであってよい。
【0071】
本発明では、マーカーは、配列番号1のポリヌクレオチド(の断片)、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド(の断片)であってよい。
【0072】
遺伝子中又はその近辺における遺伝子マーカーのマッピングは、分子生物学の分野の当業者には極めて容易に実施され得る手法であり、例えば、Lefebvre, V. & A. M. Chevre . Tools for marking plant disease and pest resistance genes: a review. Agronomie 15, 1995 (1): 3-19; Michelmore, R.W. Molecular approaches to manipulation of disease resistance genes. Annual Review of Phytopathology 33 (1995): 393-427; Michelmore, R.W., R.V. Kesseli & E.J. Ryder. Genetic mapping in lettuce. In: R. L. Phillips & I. K. Vasil (eds.) DNA-based markers in plants, Kluwer Acad. Publishers, Dordrecht, 1994, pp. 223-239; Winter.P. & G. Kahl. Molecular marker technologies for plant improvement. World Journal of Microbiology & Biotechnology, 1995, 11 (4): 438-448に開示されている。
【0073】
本発明は、試験中の遺伝子型における本発明のファルネセン合成酵素遺伝子の存在又は非存在の検出のための、本発明のオリゴヌクレオチドを含む、診断キットにも関する。そのような診断キットは、例えば、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを形成するか否かについて遺伝子型をスクリーニングするための労力を要するアッセイを回避する。
【0074】
さらに、本発明は、好ましくは本発明のファルネセン合成酵素、例えば、α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性を有するファルネセン合成酵素をコードする、本発明のポリヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物に関する。そのような遺伝子構築物は、好ましくは、植物細胞中で機能的な調節配列を含み、プロモーターなどの前記調節配列は、ポリヌクレオチド、例えば、本発明の配列番号1のポリヌクレオチドのコード配列と同種又は異種である。
【0075】
他の実施態様では、本発明のポリペプチドをコードする、オープンリーディングフレームポリヌクレオチドを5’−3’の方向に含む。さらなる実施態様では、前記遺伝子構築物は、好ましくはストリンジェントな条件で、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを5’−3’の方向に含む。
【0076】
本発明は、本発明のDNA構築物を含むDNAベクターにも関する。適切なベクターは、クローニングベクター、形質転換ベクター、及び発現ベクターなどであってよく、当業者によく知られている。
【0077】
さらに、上述の遺伝子構築物を含む、例えば、配列番号1のポリヌクレオチド若しくはその一部又はその相同物を含むベクターを有する細胞が本発明の範囲内である。さらに、本発明の遺伝子構築物を有する細胞は本発明の範囲内である。
【0078】
本発明の1つの好ましい実施態様では、遺伝的に形質転換された植物は、標準的な形質転換技術を使用して、本発明のポリヌクレオチドを前記植物のゲノムに導入することによって得られる。好ましくは、前記遺伝的に形質転換された植物は、本発明のファルネセン合成酵素、例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有するファルネセン合成酵素を機能的に発現する。
【0079】
本発明の他の実施態様では、一般的に知られた形質転換技術を使用して、本発明のポリヌクレオチドを異種系、例えば、メロン、タバコ、シロイヌナズナ、ジャガイモ、サトウダイコン、菜種、キュウリ、コショウ、ナス、綿、トウモロコシ、カボチャ、スイカ、及びレタスに移すが、それらに限らない。細菌及び酵母などの系も含まれる。その様な系に本発明のポリヌクレオチドを導入することは、例えば、本発明のポリペプチドの生産及びファルネセン、好ましくはα−ファルネセン及びβ−ファルネセンの生産のための、そのようなペプチドのインビボ又はインビトロにおける利用を可能にする。
【0080】
本発明の他の実施態様では、本発明のトランスジェニック植物又は植物細胞に由来し、かつ、例えば、本発明、例えば配列番号1のポリヌクレオチドを含む、種子を提供する。
【0081】
他の態様では、増大したα−ファルネセン合成酵素及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を提供する、本発明のポリヌクレオチドを用いて遺伝子操作された細胞を培養する工程;場合によってファルネシルジホスフェートを細胞に提供する工程;及び生成したα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを分離する工程を含む、α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの製造方法を提供する。当該方法は、トマト、特に実施例で使用したトマト由来の細胞を培養する工程も含む。
【0082】
さらなる実施態様では、本発明のポリペプチド配列を有するファルネセン合成酵素の発現を増大又は低減する工程を含む、植物のα−ファルネセン及びβ−ファルネセン生産を調節するための方法であって、前記増大又は低減する工程が、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を変化する遺伝子操作によって達成される、方法を提供する。
【0083】
本明細書に記載のとおり、好ましくはファルネセン合成酵素活性、好ましくはα−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン活性をコードするか又は有する、ポリヌクレオチド及びポリペプチド並びにそれらの断片には、その幾つかを本明細書に記載したが、それらに限らない各種の用途がある。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のファルネセン合成酵素を(過剰)発現する植物を作製するために使用することができ、アブラムシの行動の制御及び草食昆虫、例えば、コナジラミの撃退の改善を与えることができる。
【0084】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドの単離の観点から実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を実施するための現在企図される最良の対応を示すのみであり、本発明を限定すると解されるべきではない。
【実施例】
【0085】
植物材料及び毛状突起、RNA及びmRNA単離
23℃から18℃の日中/夜間の温度において、16/8時間の光/暗闇の体制で、4週間にわたって、植物であるトマト(Solanum lycopersicon cultivar Money Maker)を温室の土壌で育てた。同植物の分裂組織を有する茎を切断し、土壌に置いて、さらに3週間再び育てた。液体窒素中で凍結させた葉柄及び茎の部分をボルテックスすることによって、茎の毛状組織及び葉柄を50ml試験管の底に回収した。
【0086】
Qiagen RNeasy plant Mini kit(Dusseldorf,Germany)を使用して、植物細胞及び組織についての製造業者のプロトコールにしたがって、毛状突起のRNAを単離した。添付されていたRLTバッファーを使用して溶解を実施した。製造業者のプロトコールにしたがって、Promega’s(Madison,Wisconsin,USA) PolyAtract mRNA isolation system IIIを使用して、全RNAのプールからメッセンジャーRNAを単離した。0.71%の効率でmRNAを全RNAから単離した。
【0087】
mRNA増幅及び二本鎖cDNA合成
Ambion社(Austin,Texas,USA)製のMessageAmp II a RNA amplification kitを使用して、毛状突起のmRNAを増幅した。増幅のための材料として、100ngのmRNAを使用した。製造業者のプロトコールにしたがって、増幅を実施した。増幅したRNAの収量は171μgであり、サイズ分布は期待されたとおり〜400から3,000塩基の範囲であった。
【0088】
ランダムヘキサマープライマー(MWG Operon社(Ebersberg,Germany)に注文)を使用して、20μlの反応において10μgのRNAを使用するバッチにおいて、この増幅RNAから第一の鎖のcDNAを合成した。終濃度が62.5nMであるランダムプライマーを増幅したRNAと組み合わせて、70℃で5分間インキュベートし、その後に氷上に保存した。Fermentas Life Sciences社(St.Leon−Rot,Germany)製のRevertAid M−MuIV逆転写酵素(200単位)を添付のバッファーと組み合わせて添加した。ヌクレオチドを1mMの終濃度まで添加した。cDNA合成を42℃で90分間にわたって実施した。その直後に、試験管を氷に移して、第二の鎖の合成をFermentas RNase H及びE.coli由来のDNAポリメラーゼIを使用して実施した。各20μlの反応管に対して、8μlの添付のDNAポリメラーゼI反応バッファーを、1単位のRNase H及び30単位のDNAポリメラーゼIとともに添加した。反応容量は水で100μlまで増加させた。全ての成分を添加して、第二の鎖の合成反応を15℃で2時間にわたって実施した。
【0089】
大規模同時パイロ配列決定及びデータ分析
ds−cDNAの剪断、ライブラリーの調製、454−配列決定、及びコンティグアラインメントを、当該技術分野において開示されており、かつ、当業者に既知の方法にしたがって実施した。その処理には、5つの変異体の各々が個別のバーコードを有する、バーコードを付した454−配列決定アダプターを利用した(個別のバーコードがタグ又は識別子として開示されている、WO2007073165、WO2007037678、又はWO2007073165を参照のこと)。パイロ配列決定自体は、当該技術分野において既知であり、とりわけ、www.biotagebio.com;www.pyrosequencing.com / section technologyに開示されている。その技術は、例えば、参照によって本明細書に取込む、WO 03/004690、WO 03/054142、WO 2004/069849、WO 2004/070005、WO 2004/070007、及びWO 2005/003375 (全て454 Life Sciences名義の出願である)においても適用されている。比較を目的とする配列のアラインメント方法は、当該技術分野においてよく知られている。各種のプログラム及びアラインメントアルゴリズムが、参照によって本明細書に取込む、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl . Math. 2:482; Needleman and Wunsch (1970) J. MoI. Biol. 48:443; Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444; Higgins and Sharp (1988) Gene 73:237-244; Higgins and Sharp (1989) CABIOS 5:151-153; Corpet et al. (1988) Nucl. Acids Res. 16:10881-90; Huang et al . (1992) Computer Appl. in the Biosci. 8:155-65; 及びPearson et al . (1994) Meth. MoI. Biol. 24:307-31に開示されている。Altschul et al . (1994) Nature Genet. 6:119-29 (参照によって本明細書に取込む)は、配列アラインメント方法及び相同性の計算についての詳細な検討を提示している。
【0090】
トマトセスキテルペン合成酵素SISTS3の同定及びクローニング
793bpの長さを有する、454−配列の読み取りから得られたコンティグの1つ(lcl−CL117コンティグ1)は、とりわけ、ファビアナ(Fabiana imbricata)セスキテルペン合成酵素(機能未知)mRNA(AY860847)に対して高度の同一性を有していた。このトマトcDNAの全長クローンを得るために、トマト毛状突起由来のmRNAで構築したcDNAライブラリーに対してPCR増幅を実施した。Stratagene社(Cedar Creek,Texas,USA)製のHybriZAP−2.1 XRライブラリー構築キット及びHybriZAP−2.1 XR cDNA合成キットを製造業者のプロトコールにしたがって使用した。プライマリーcDNAライブラリーのサイズは、2.5×106プラーク形成単位(PFU)/μgファージアームであった。プライマリーライブラリーを製造業者のプロトコールにしたがって増幅した。増幅したcDNAライブラリーは、製造業者によるMass Excision Protocolを使用して切断した。この切断したライブラリーを使用して、プライマー1−6(下表1のプライマーリストを参照のこと)を用いたcDNAの3’及び5’部位のPCR増幅を実施した。
【0091】
【表1】
【0092】
このcDNAの5’部位については、プライマー6R5E及びpActF(プライマーリストを参照のこと)を使用してPCRを実施した。このcDNAの3’部位については、プライマー6F4E及びT7longを使用した。25μlの反応容量において、付属のバッファーとFinnzymes社(Espoo,Finland)製の0.25単位のPhusion Hot Startポリメラーゼ、0.4mMの濃度の各プライマー、及び0.2mMの濃度のdNTPとともに、切断したcDNAライブラリーを鋳型として使用した。0.3mMの終濃度でMgCl2をPCRミックスに添加した。Biometra社(Gottingen,Germany)製のT1サーモサイクラーを、以下のプログラムで使用した:
ステップ1.98℃、1分間
ステップ2.98℃、10秒間
ステップ3.56℃、30秒間
ステップ4.72℃、45秒間
ステップ5.ステップ2に戻る;これを34回繰り返す
ステップ6.72℃、5分間
ステップ7.サーモサイクラーから取り出すまで4℃
【0093】
反応産物を水で20倍に希釈して、再増幅のための鋳型として使用した。プライマー6R4E及びpActFを使用して5’部位の再増幅を実施し、プライマー6F3E及びT7longを使用して3’部位の再増幅を実施した。PCR条件は、プライマリPCRと同じであった。
【0094】
再増幅反応のPCR産物をゲルから切り出して、製造業者のプロトコールにしたがってQIAGEN社製のGel Extraction Kitを使用して単離した。ABI Prism BigDye Terminator v1.1 Cycle Squencing Kitを使用してPCR産物の配列決定を実施した。
【0095】
新しく配列決定したcDNA断片とともに、オーバーラップ断片を集めることによって、454−配列から得られたコンティグを完全なコード配列にまで拡張できるであろう。切断したcDNAライブラリーからの完全なコード配列のPCR増幅に使用する新しいプライマーを設計した(プライマーE6flR2及びE6flF、プライマーリストを参照のこと)。上述のFinnzymes社製のPhusion Hot Startポリメラーゼを使用して全長の増幅を実施した。
【0096】
このPCR反応で得られたPCR断片をゲルから切り出し、製造業者のプロトコールにしたがってQIAGEN社製のGel Extraction Kitを使用して単離した。その後に、製造業者のプロトコールにしたがってInvitrogen社(Carlsbad,California,USA)製のTAクローニングキットを使用して、この精製した断片をpCR2.1クローニングベクターにクローニングした。プラスミドをOne Shot TOP10化学的コンピテントE.coli細胞(キットに同梱)に移した。液体培養を開始し、製造業者のプロトコールにしたがってFermentas社製のGeneJET Plasmid Miniprep Kitを使用してプラスミドをそこから単離し、プラスミド挿入断片の配列決定を実施した。図1は、この配列と全てのプライマーの位置を示す。
【0097】
全長のコード配列を、上述のPhusion Taq Polymeraseを使用して、プライマーE6TopoF及びE6TopoRでプラスミドから増幅した。PCR断片を上述のとおりにゲルから単離した。製造業者のプロトコールにしたがってInvitrogen社製のChampion pET200 Directional TOPO Expression Kitを使用して、この全長cDNAをpET TOPOベクターにクローニングした。発現ベクターのマップを図2に示す。
【0098】
その後に、キットに同梱されていたOne Shot TOP10化学的コンピテントE.coli細胞にプラスミドを移した。配列は、pCR2.1クローニングベクターから配列決定した第一の全長cDNAと同一であった。SISST3のコード配列を配列番号1に示す。配列番号2は、推定されるアミノ酸配列を示す。
【0099】
E.coliにおけるSISST3タンパク質の発現
SISST3を含むpET200プラスミドをBL21 Star(DE3) One Shot化学的コンピテントE.coli細胞に移した。液体培養を37℃で一晩実施した。翌日、50mlの培地に2.5mlの一晩培養したものを植菌して、0.5の600nmにおける光学密度になるまで増殖させた。培養物を室温に移し、1mMの終濃度のRoche社(Basel,Switzerland)製のイソプロピルベータ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を使用して誘導した。ネガティブコントロールとして、pET200でダミーの挿入断片(テルペン合成酵素活性を有しないR2R3タイプMYB転写因子(Genbank 受入番号AY705977))を使用した培養物を用いた。双方の培養物の非誘導コントロールも回収した。3時間の誘導の後に、1mlの2つの一定分量を各培養物から回収して、残りの細胞は15分間にわたる2000gの4℃における遠心分離及びその後の培地の吸引によって回収した。細胞ペレットを液体窒素で凍結して、酵素アッセイを実施するまで−80℃で保存した。
【0100】
1mlの一定分量の光学密度を600nmで測定した。細胞は、10分間にわたる4℃の2000gの遠心分離及び培地の吸引によって回収した。誘導したものの一定分量及び誘導していないものの一定分量の細胞を、OD単位あたり50μlのテルペン合成酵素バッファー(Van Schie et al. Plant MoI Biol. 2007 Jun;64(3):251-63に記載されている)に再懸濁した。30分間にわたる氷上における1μgのリソザイムとのインキュベート及び超音波処理によって細胞を破壊した後に、4℃の30分間にわたる12,000gの遠心分離によって可溶性タンパク質画分を回収した。他の誘導又は非誘導細胞ペレットは、OD単位あたり50μlのPBST(0.8% NaCI (w/v), 0.02% KCI (w/v), 0.144% Na2HPO4 (w/v), 0.02% KH2PO4 (w/v), 及び0.02% (v/v) Tween-20)に再懸濁した。全タンパク質及び可溶性タンパク質画分の双方に対して、三分の一容量の4×サンプルバッファー(8% SDS (w/v), 40% グリセロール(w/v), 20% β−メルカプトエタノール (v/v) 240 mM Tris-HCI pH 6.8, 及び0.08% ブロモフェノールブルー (w/v))を添加して、サンプルを沸騰した水に5分間入れた。15μlのタンパク質サンプルを10%アクリルアミドゲルで電気泳動した。SISST3及びMYB転写因子を含むプラスミドを有する誘導及び非誘導細胞由来の全タンパク質のアクリルアミドゲルをクマシーブリリアントブルー(0.25% CBB (w/v), 30% メタノール(v/v), 及び10% 酢酸)で染色した。この染色したゲルをスキャンしたものを図3に示す。
【0101】
SISST3を含むプラスミドを有する誘導及び非誘導細胞の全タンパク質及び可溶性タンパク質画分を10%アクリルアミドゲルに流した。サンプルの電気泳動の後に、タンパク質をニトロセルロースにブロットした。ブロットしたものを5%粉末ミルクのPBST溶液で1時間にわたってブロッキングした。QIAGEN社製のペンタHis抗体(カタログ番号34660、バッチ番号130167450)とともに5%粉末ミルクを含む10mlPBST中で、ブロットしたものを一晩にわたってインキュベートした。ブロットしたものをPBSTで三回洗浄し、その後に1時間にわたって5%(w/v)粉末ミルク及びPierce社(Rockford,IL,USA)製のセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIGG抗体を含むPBST中でインキュベートし、その後、PBSTで3回洗浄した。高感度ケミルミネッセンス(Amersham,Buckinghamshire,UK)を使用して、ペルオキシダーゼ活性を検出した。ケモルミネッセンスの図は図4において確認できる。
【0102】
SISST3タンパク質の機能分析
培養物の残りの細胞ペレットは、セスキテルペン合成酵素活性についてアッセイした。セスキテルペン合成酵素アッセイは、参照によって本明細書に取込むVan Schie et al. Plant MoI Biol. 2007 Jun;64(3):251-63に開示されているとおりに実施した。
【0103】
反応産物の分析は、参照によって本明細書に取込むVan Schie et al. Plant MoI Biol. 2007 Jun;64(3):251-63又はAment et al (2004) Plant Physiol. 135:2025-2037に開示されているとおりに、DB−5カラムを備えるGC−MS TOFでNi−精製タンパク質を使用して実施した。
【0104】
図5は、402秒から436秒までの保持時間について拡大した、FPPでアッセイしたNi−精製SISST3及びMyb転写因子タンパク質のイオン69のGC−MSスペクトルを示す。真正の標準物質を使用し、イオンスペクトル及び保持時間を比較することによって、ピーク1、2、3、及び4の産物は、(E)β−ファルネセン(ピーク1)、(Z,E)α−ファルネセン(ピーク2)、(E,E)α−ファルネセン及び(Z,Z)α−ファルネセン(ともにピーク3)、及び(E)−ネロリドール(ピーク4)として同定した。
【0105】
図7は、FPPでアッセイしたトマトファルネセン合成酵素を発現するE.coli細胞由来のタンパク質抽出物のさらなるGC−MCクロマトグラムを示す。ピーク1:β−エレメン(*)、ピーク2:(E)β−ファルネセン、ピーク3:未知のセスキテルペン(*)、ピーク4:(Z,E)α−ファルネセン、ピーク5:(+)−バレンセン(*)、ピーク6:(E,E)α−ファルネセン、ピーク7:未知のセスキテルペン(*)、(*)を付して示したピークはマススペクトルに基づいて同定し、他の全ては、マススペクトル及び純粋な標準物質の保持時間の比較に基づく。
【0106】
純粋な(E)α−ファルネセンは、Dr.W.Boland教授から頂いた。このセスキテルペンのマススペクトル及びピーク1のマススペクトルを図6aに示す。(Z,E)αファルネセン及び(E,E)α−ファルネセンの混合物をSigma社から得た。(Z,E)α−ファルネセン及びピーク2のマススペクトルは図6bに示され、図6cは、(E,E)α−ファルネセン及びピーク3のマススペクトルを示す。(E)ネロリドールはSigma社から得た。このセスキテルペン及びピーク4のマススペクトルを図6dに示す。
【0107】
これらの結果は、トマト毛状突起cDNAからクローニングしたSISST3が、(主に)β−ファルネセン合成酵素活性、及び、加えて、α−ファルネセン活性を有する、ファルネセン合成酵素をコードすることを示す。
【0108】
各種の組織及び器官におけるトマトファルネセン合成酵素の相対的な発現レベル
図8では、定量RT−PCRで測定し、Solanum lycopersicumの異なる組織由来のcDNA上の構成的なRCE1の発現で修正した、Solanum lycopersicumのファルネセン合成酵素(本発明)の空間的発現を示す。棒グラフによって、2つの独立した値の平均を表わす。最大値はエラーバーで示す。cDNAは1.根、2.つぼみ、3.雄しべ、4.花弁、5.萼片、6.未熟な青い果実、7.ブレーカー(breaker)果実、8.ターニング(turning)果実、9.赤い果実、10.葉柄、11.茎、12.植物先端、13.若い葉、14.成熟葉、15.老化葉から単離されたRNAから合成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の単離されたポリヌクレオチド、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
【請求項2】
ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
α−ファルネセン活性及びβ−ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、請求項1又は2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号2のポリペプチド、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性を備えたポリペプチド、好ましくはα−ファルネセン活性及びβ−ファルネセン合成活性を備えたポリペプチドをコードする、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの断片。
【請求項7】
配列番号2のポリペプチド、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド。
【請求項8】
ファルネセン合成酵素活性、好ましくはα−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性、より好ましくはα−ファルネセン活性及びβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
単離されたα−ファルネセン及びβ−ファルネセン合成酵素ポリペプチド。
【請求項10】
α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性、好ましくはα−ファルネセン及びβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、請求項7から9のいずれか一項に記載のポリペプチドの断片。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物。
【請求項12】
請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームポリヌクレオチドを5’−3’方向に含む、遺伝子構築物。
【請求項13】
請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを5’−3’方向に含む、遺伝子構築物。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む、ベクター。
【請求項15】
請求項11から13のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項11から13のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む、トランスジェニック植物又は植物細胞。
【請求項17】
請求項16に記載のトランスジェニック植物又は植物細胞由来の種子。
【請求項18】
α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの製造方法であって、増大したα−ファルネセン合成酵素及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を提供するために、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを用いて遺伝子操作した細胞を培養する工程;場合によって、ファルネシルジホスフェートを細胞に提供する工程;及び生成したα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを分離する工程を含む、方法。
【請求項19】
請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチド配列を有するファルネセン合成酵素の発現を増大又は低減する工程を含む、植物のα−ファルネセン及びβ−ファルネセン生産を調節するための方法であって、前記増大又は低減が、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を変化させる遺伝子操作によって達成される、方法。
【請求項20】
植物組織又はその核酸サンプルにおける請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列の存在又は非存在を検出する方法であって、
a.植物組織サンプル又は核酸サンプルを得る工程、
b.請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチドに結合する1又は複数のマーカーの存在又は非存在について、分子マーカーアッセイを使用してサンプルを分析する工程であって、前記マーカーアッセイが、配列番号1の配列、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を検出する、工程
を含む、方法。
【請求項21】
本発明のヌクレオチド配列に関係する分子(DNA)マーカーのマッピングのための、配列番号1のポリヌクレオチド、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドの使用。
【請求項22】
分子マーカー、好ましくは配列番号1の単離されたポリヌクレオチド又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドのための分子マーカーとしての;又は好ましくはα−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、請求項7から10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドのための分子マーカーとしての、配列番号1の少なくとも15の連続したヌクレオチド又はそれに対して少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する配列の使用。
【請求項1】
配列番号1の単離されたポリヌクレオチド、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
【請求項2】
ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
α−ファルネセン活性及びβ−ファルネセン合成酵素活性を備えたポリペプチドをコードする、請求項1又は2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号2のポリペプチド、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性を備えたポリペプチド、好ましくはα−ファルネセン活性及びβ−ファルネセン合成活性を備えたポリペプチドをコードする、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの断片。
【請求項7】
配列番号2のポリペプチド、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド。
【請求項8】
ファルネセン合成酵素活性、好ましくはα−ファルネセン活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性、より好ましくはα−ファルネセン活性及びβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
単離されたα−ファルネセン及びβ−ファルネセン合成酵素ポリペプチド。
【請求項10】
α−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン活性、好ましくはα−ファルネセン及びβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、請求項7から9のいずれか一項に記載のポリペプチドの断片。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物。
【請求項12】
請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームポリヌクレオチドを5’−3’方向に含む、遺伝子構築物。
【請求項13】
請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを5’−3’方向に含む、遺伝子構築物。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む、ベクター。
【請求項15】
請求項11から13のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項11から13のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む、トランスジェニック植物又は植物細胞。
【請求項17】
請求項16に記載のトランスジェニック植物又は植物細胞由来の種子。
【請求項18】
α−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンの製造方法であって、増大したα−ファルネセン合成酵素及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を提供するために、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを用いて遺伝子操作した細胞を培養する工程;場合によって、ファルネシルジホスフェートを細胞に提供する工程;及び生成したα−ファルネセン及び/又はβ−ファルネセンを分離する工程を含む、方法。
【請求項19】
請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチド配列を有するファルネセン合成酵素の発現を増大又は低減する工程を含む、植物のα−ファルネセン及びβ−ファルネセン生産を調節するための方法であって、前記増大又は低減が、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を変化させる遺伝子操作によって達成される、方法。
【請求項20】
植物組織又はその核酸サンプルにおける請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列の存在又は非存在を検出する方法であって、
a.植物組織サンプル又は核酸サンプルを得る工程、
b.請求項7から10のいずれか一項に記載のポリペプチドに結合する1又は複数のマーカーの存在又は非存在について、分子マーカーアッセイを使用してサンプルを分析する工程であって、前記マーカーアッセイが、配列番号1の配列、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を検出する、工程
を含む、方法。
【請求項21】
本発明のヌクレオチド配列に関係する分子(DNA)マーカーのマッピングのための、配列番号1のポリヌクレオチド、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドの使用。
【請求項22】
分子マーカー、好ましくは配列番号1の単離されたポリヌクレオチド又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドのための分子マーカーとしての;又は好ましくはα−ファルネセン合成酵素活性及び/又はβ−ファルネセン合成酵素活性を有する、請求項7から10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドのための分子マーカーとしての、配列番号1の少なくとも15の連続したヌクレオチド又はそれに対して少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する配列の使用。
【図2】
【図3】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8】
【図1】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8】
【図1】
【図4】
【公表番号】特表2012−510811(P2012−510811A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539461(P2011−539461)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/NL2009/000244
【国際公開番号】WO2010/064897
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(509351340)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/NL2009/000244
【国際公開番号】WO2010/064897
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(509351340)
【Fターム(参考)】
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