説明

フィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法およびフィスカルプリンター

【課題】電源が切断された場合でも、不揮発性メモリーへのフィスカル情報の書き込みを完了できるフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法を提案すること。
【解決手段】ワークメモリー43上に生成されたフィスカル情報は(ステップST1)、蓄電池44によりバックアップされているバックアップメモリー45に書き込まれ(ステップST2)、バックアップメモリー45からフィスカルメモリー41に書き込まれる(ステップST3〜ST5)。フィスカル情報がフィスカルメモリー41へ転送されている途中で電源が切断されると、電源が投入された後に、バックアップメモリー45上に残っているフィスカル情報を、再び最初からフィスカルメモリー41に書き込む(ステップST11〜ST14)。従って、フィスカルメモリー41へのフィスカル情報の書き込みを完了させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシート等の印刷と共に、販売取引に関するフィスカル情報を不揮発性メモリーに記憶保持する機能を備えたフィスカルプリンターに関する。より詳細には、フィスカル情報を不揮発性メモリーに記憶保持する途中で電源が切断された場合でも、フィスカル情報の不揮発性メモリーへの書き込みを完了させることができるフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法およびフィスカルプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
フィスカルプリンターはPOSシステムなどにおいてキャッシュレジスターのプリンターとして用いられており、レシート等を印刷すると共に、商品等の販売取引に関する売上金額や課税額等の決済情報(フィスカル情報)を不揮発性メモリーに記憶保持する機能を備えている。フィスカルプリンターが記憶するべきフィスカル情報は各国の法律で定められており、不揮発性メモリーに記憶保持されたフィスカル情報は税務監査用データなどとして用いられる。特許文献1には、このようなフィスカルプリンターが記載されている。
【0003】
ここで、フィスカル情報を不揮発性メモリーに書き込んでいる途中でフィスカルプリンターの電源が切断されてしまうと、フィスカル情報の全てを不揮発性メモリーに書き込むことができずに、一部の情報が欠落した不完全なフィスカル情報が不揮発性メモリー上に記憶保持されてしまうという事態が発生する。このような事態を回避するためには、フィスカル情報を不揮発性メモリーに書き込んでいる途中で電源が切断されたことが検出されると、電源を補助電源に切り替え、この補助電源から供給される電力によってフィスカル情報の書き込み動作を継続させて、不揮発性メモリーへのフィスカル情報の書き込みを完了させることが考えられる。補助電源を利用して不揮発性メモリーへの書き込み動作を継続させる技術は、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−276593号公報
【特許文献2】特開2009−301093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、補助電源を利用して不揮発性メモリーへの書き込み動作を継続させるためには、予め、フィスカルプリンターに補助電源を搭載しておかなければならない。また、主電源と補助電源とを切り替える制御回路を搭載しておかなければならない。このため、フィスカルプリンターの製造コストが増加してしまうという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、この点に鑑みて、電源が切断されたときに補助電源に切り替えて書き込み動作を継続しなくても、不揮発性メモリーへのフィスカル情報の書き込みを完了させることができるフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法、および、フィスカルプリンターを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、
ワークメモリー上に生成されたフィスカル情報を不揮発性メモリーに書き込むフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法において、
前記ワークメモリー上の前記フィスカル情報を、前記不揮発性メモリーよりも高速な書き込みが可能で蓄電池によりバックアップされているバックアップメモリーに書き込むバックアップ工程と、
前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を所定のデータ単位毎に転送して前記不揮発性メモリーに書き込み、前記フィスカル情報の書き込みが全て終了すると前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を消去する書き込み工程とを含み、
前記書き込み工程の途中で電源の切断が検出された場合には、前記フィスカル情報の次の前記データ単位の転送を停止し、
前記電源が投入された後に、前記バックアップメモリーに前記フィスカル情報が存在しているか否かを確認して、前記フィスカル情報が存在している場合には、前記書き込み工程を最初から行うことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ワークメモリー上に生成されたフィスカル情報は、一旦、蓄電池によりバックアップされている高速なバックアップメモリーに書き込まれる。従って、これ以降、フィスカルプリンターの電源が切断されてもフィスカル情報が消失してしまうことを回避できる。また、バックアップメモリー上のフィスカル情報が不揮発性メモリーへ転送されて書き込まれている途中で電源が切断された場合には、バックアップメモリー上にフィスカル情報が残っているので、電源が投入された後に、このバックアップメモリー上のフィスカル情報を再び最初から不揮発性メモリーへ転送して書き込む。この結果、電源が切断されたときに補助電源に切り替えて書き込み動作を継続しなくても、不揮発性メモリーへのフィスカル情報の書き込みを完了させることができる。
【0009】
本発明において、前記データ単位のデータ量は、前記電源の切断が検出された後に前記書き込み工程が継続して作動可能な一定時間の間に前記不揮発性メモリーに対する転送および書き込みが可能なデータ量以下であることが望ましい。フィスカルプリンターのような情報機器では、電源の切断が検出された後の一定時間、制御回路に含まれているコンデンサーなどからのキャパシタ電流が流れる。従って、データ単位のデータ量を、このような電流が流れている間に転送および書き込みが可能なデータ量以下としておけば、電源の切断が検出された時点で転送が始まった所定のデータ単位の情報が確実に不揮発性メモリーに書き込まれる。すなわち、電源の切断が検出された時点で転送が行われている情報が、転送途中または書き込み途中に消失或いは破壊されることを防止できる。
【0010】
この場合において、前記データ単位は、前記不揮発性メモリーに対して同時に書き込みが可能な最小のデータ単位とすることができる。
【0011】
本発明において、前記電源が投入された後の前記書き込み工程において、既に前記不揮発性メモリーに書き込まれている情報と同一の情報を転送した場合には、当該情報の前記不揮発性メモリーへの書き込みをスキップすることが望ましい。このようにすれば、電源が投入された後の書き込み工程の時間を短縮することが可能となる。また、フィスカルメモリーとして上書きや書き換えが許可されていないOTP−ROM(One Time Programmable Read Only Memory)が用いられている場合においても、不具合を発生させることなく、書き込み工程を再開できる。
【0012】
本発明において、前記書き込み工程よりも前に、前記バックアップメモリーの所定のメモリー領域に予め設定した設定情報を書き込む設定情報書き込み工程を含み、前記電源が投入された直後に、前記設定情報が変化しているか否かを確認して、前記設定情報が変化している場合には、電源が投入された後の書き込み工程を行わないことが望ましい。電源が切断される前にバックアップメモリーの所定のメモリー領域に書き込まれた設定情報が、電源再投入後に変化している場合には、電源の切断によってバックアップメモリーの状態が不安定となり、その結果、バックアップメモリー上のフィスカル情報が破壊されている可能性がある。従って、電源再投入後に行われる処理を停止すれば、破壊されている可能性があるフィスカル情報を不揮発性メモリーに記憶保持してしまうことを防止できる。
【0013】
次に、本発明のフィスカルプリンターは、
ワークメモリーと、
不揮発性メモリーと、
前記不揮発性メモリーよりも高速な書き込みが可能で蓄電池によりバックアップされているバックアップメモリーと、
フィスカル情報を前記ワークメモリー上に生成するフィスカル情報生成部と、
前記ワークメモリー上に前記フィスカル情報が生成されると、前記バックアップメモリーに前記フィスカル情報を書き込むバックアップ部と、
前記フィスカル情報のバックアップメモリーへの書き込みが終了すると、前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を所定のデータ単位毎に転送して前記不揮発性メモリーに書き込む書き込み部と、
前記不揮発性メモリーへの前記フィスカル情報の書き込みが全て終了すると前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を消去するバックアップメモリー消去部と、
電源の切断を検出する電源切断検出部と、
前記電源が投入されると、前記バックアップメモリーに前記フィスカル情報が存在しているか否かを確認するバックアップメモリー監視部とを有し、
前記書き込み部は、前記電源の切断が検出された場合には、その後の前記データ単位の転送を停止し、前記バックアップメモリーに前記フィスカル情報が存在していることが確認された場合には、前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を最初から前記データ単位毎に転送して前記不揮発性メモリーに書き込むことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ワークメモリー上に生成されたフィスカル情報は、バックアップ部により、一旦、蓄電池によりバックアップされている高速なバックアップメモリーに書き込まれる。従って、これ以降、フィスカルプリンターの電源が切断されてもフィスカル情報が消失してしまうことを回避できる。また、バックアップメモリー上のフィスカル情報が不揮発性メモリーへ転送されて書き込まれている途中で電源が切断された場合には、バックアップメモリー上にフィスカル情報が残っているので、電源が投入された後に、書き込み部が、このバックアップメモリー上のフィスカル情報を再び最初から不揮発性メモリーへ転送して書き込む。この結果、電源が切断されたときに補助電源に切り替えて書き込み動作を継続しなくても、不揮発性メモリーへのフィスカル情報の書き込みを完了させることができる。
【0015】
本発明において、前記データ単位のデータ量は、前記電源の切断が検出された後に前記書き込み部が継続して動作可能な一定時間の間に前記不揮発性メモリーに対する転送および書き込みが可能なデータ量以下であることが望ましい。フィスカルプリンターのような情報機器では、電源の切断が検出された後の一定時間、制御回路に含まれているコンデンサーなどからのキャパシタ電流が流れる。従って、データ単位のデータ量を、このような電流が流れている間に転送および書き込みが可能なデータ量以下としておけば、電源の切断が検出された時点で転送が始まった所定のデータ単位の情報が確実に不揮発性メモリーに書き込まれる。すなわち、電源の切断が検出された時点で転送が行われている情報が、転送途中または書き込み途中に消失或いは破壊されることを防止できる。
【0016】
この場合において、前記データ単位は、前記不揮発性メモリーに対して同時に書き込みが可能な最小のデータ単位とすることができる。
【0017】
本発明において、前記書き込み部は、既に前記不揮発性メモリーに書き込まれている情報と同一の情報を転送した場合には、当該情報の前記不揮発性メモリーへの書き込みをスキップすることが望ましい。このようにすれば、電源が投入された後の書き込み部による書き込み時間を短縮することが可能となる。また、フィスカルメモリーとして上書きや書き換えが許可されていないOTP−ROMが用いられている場合においても、不具合を発生させることなく、フィスカル情報を書き込むことができる。
【0018】
本発明において、予め、前記バックアップメモリーの所定のメモリー領域に予め設定した設定情報を書き込む設定情報書き込み部を有し、前記バックアップメモリー監視部は、前記電源が投入された直後に前記設定情報が変化しているか否かを確認し、前記書き込み部は、前記設定情報が変化していることが確認された場合には、前記バックアップメモリーからの前記フィスカル情報の転送を行わないことが望ましい。電源が切断される前にバックアップメモリーの所定のメモリー領域に書き込まれた設定情報が電源再投入後に変化している場合には、電源の切断によってバックアップメモリーの状態が不安定となり、その結果、バックアップメモリー上のフィスカル情報が破壊されている可能性がある。従って、このような場合に、バックアップメモリーからのフィスカル情報の転送を行わないこととすれば、破壊されている可能性があるフィスカル情報を不揮発性メモリーに記憶保持してしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワークメモリー上に生成されたフィスカル情報は、一旦、蓄電池によりバックアップされている高速なバックアップメモリーに書き込まれる。従って、これ以降、フィスカルプリンターの電源が切断されてもフィスカル情報が消失してしまうことを回避できる。また、バックアップメモリー上のフィスカル情報が不揮発性メモリーへ転送されて書き込まれている途中で電源が切断された場合には、バックアップメモリー上にフィスカル情報が残っているので、電源が投入された後に、このバックアップメモリー上のフィスカル情報を再び最初から不揮発性メモリーへ転送して書き込む。この結果、電源が切断されたときに補助電源に切り替えて書き込み動作を継続しなくても、不揮発性メモリーへのフィスカル情報の書き込みを完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】フィスカルプリンターの制御系の主要部分を示す概略ブロック図である。
【図2】フィスカル情報保存動作を示す概略フローチャートである。
【図3】電源再投入後のフィスカル情報保存動作を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したフィスカルプリンターの実施の形態を説明する。
【0022】
図1は本実施の形態に係るフィスカルプリンターの制御系の主要部分を示す概略ブロック図である。フィスカルプリンター1は、POSシステムのホスト側のコンピューター2に接続して用いられ、コンピューター2の側から供給される販売取引に関する情報を印刷してレシートとして発行する。また、一日の販売取引が終了したときなどに、販売取引に関する情報から課税額の総計などを算出したフィスカル情報を生成するとともに、このフィスカル情報を記憶保持する機能を備えている。
【0023】
フィスカルプリンター1は、プリンター制御回路基板3およびフィスカル制御回路基板4を備えている。プリンター制御回路基板3には、印刷動作を行うために、一般のプリンターと同様なプリンター制御機能を備えたプリンター制御用CPU31および印刷制御用のファームウェア等が記憶されている書き替え可能な不揮発性メモリーであるフラッシュメモリー32が搭載されている。
【0024】
フィスカル制御回路基板4には、フィスカル情報を記憶保持するためのフィスカルメモリー41と、フィスカル情報を生成するとともに、生成したフィスカル情報をフィスカルメモリー41に記憶保持させるフィスカル制御用CPU42が搭載されている。フィスカル制御用CPU42には、フィスカル情報を生成する際に使用されるワークメモリー43と、蓄電池44によってバックアップされたバックアップメモリー45が接続されている。フィスカルメモリー41は、追記型の不揮発性メモリーであり、例えば、OTP−ROM(One Time Programmable Read Only Memory)などが用いられている。ワークメモリー43はSDRAMであり、バックアップメモリー45はSRAMであり、いずれのメモリーもフィスカルメモリー41より高速な読み書きが可能である。
【0025】
フィスカル制御用CPU42は、ホスト側のコンピューター2との間で情報の送受信を行うためのインターフェース機能およびプリンター制御用CPU31との間で情報の送受信を行うためのインターフェース機能を備えている。また、フィスカル制御用CPU42は、フィスカル情報生成部421、バックアップ部422、書き込み部423、バックアップメモリー消去部424、電源切断検出部425、設定情報書き込み部426、バックアップメモリー監視部427を備えている。
【0026】
フィスカル情報生成部421は、販売取引に関する情報からワークメモリー43上にフィスカル情報を生成する。生成されるフィスカル情報には、フィスカル情報そのもののデータと、フィスカルメモリー41に対する書き込みアドレス、フィスカル情報のデータサイズなどが含まれている。
【0027】
バックアップ部422は、ワークメモリー43上にフィスカル情報が生成されると、このフィスカル情報をバックアップメモリー45に書き込む。
【0028】
書き込み部423は、フィスカル情報のバックアップメモリー45への書き込みが終了すると、バックアップメモリー45上のフィスカル情報を所定のデータ単位毎に転送してフィスカルメモリー41に書き込む。書き込み部423がフィスカル情報を転送する各データ単位のデータ量は、電源の切断が検出された後に書き込み部423が継続して動作可能な一定時間の間にフィスカルメモリー41に対する転送および書き込みが可能なデータ量以下となっている。すなわち、フィスカルプリンター1のような情報機器では、電源の切断が検出された後の一定時間、制御回路に含まれているコンデンサーなどからのキャパシタ電流が流れるので、この一定時間は書き込み部423が継続して動作可能である。従って、書き込み部423が継続して動作可能な一定時間の間にバックアップメモリー45からフィスカルメモリー41への転送および書き込みが完了するデータ量となっている。本例では、データ単位はフィスカルメモリー41に対して同時に書き込みが可能な最小のデータ単位とされており、例えばフィスカルメモリー41が1ワード8ビット構成のメモリーの場合は、このデータ単位は8ビットとなっている。
【0029】
バックアップメモリー消去部424は、書き込み部423によるフィスカル情報の転送および書き込みを監視しており、フィスカルメモリー41へのフィスカル情報の書き込みが全て終了すると、バックアップメモリー45上のフィスカル情報を消去する。
【0030】
電源切断検出部425は、電源電圧を監視しており、電源電圧の降下によって電源の切断を検出する。また、電源切断検出部425は、電源スイッチの操作を監視することによって、電源の切断を検出する。
【0031】
設定情報書き込み部426は、フィスカルプリンター1に最初に電源が投入されたときに、バックアップメモリー45の所定のメモリー領域451に予め設定した所定長の文字列からなる設定情報を書き込む。なお、設定情報書き込み部426は、バックアップメモリー45上の情報が更新されるたびにチェックサムなどを作成し、この値を設定情報として所定のメモリー領域451に書き込んでもよい。
【0032】
バックアップメモリー監視部427は、電源が投入された直後にバックアップメモリー45に書き込まれている設定情報が変化しているか否かを確認する。また、設定情報が変化していない場合には、バックアップメモリー45にフィスカル情報が存在しているか否かを確認する。
【0033】
ここで、書き込み部423は、電源切断検出部425によって電源の切断が検出された場合には、電源切断検出時点以降のフィスカル情報のデータ単位の転送を停止する。また、書き込み部423は、バックアップメモリー監視部427によって電源投入直後に設定情報が変化していないことが確認され、かつ、バックアップメモリー45にフィスカル情報が存在していることが確認された場合には、バックアップメモリー45上のフィスカル情報を最初からデータ単位毎に転送してフィスカルメモリー41に書き込む。さらに、書き込み部423は、既に前記フィスカルメモリー41に書き込まれている情報と同一の情報を転送した場合には、当該情報のフィスカルメモリー41への書き込みをスキップする。
【0034】
なお、電源投入直後に設定情報が変化していることが確認された場合には、バックアップメモリー消去部424は、バックアップメモリー45上のフィスカル情報を消去する。また、電源投入直後に設定情報が変化していることが確認された場合には、書き込み部423は、電源投入後におけるバックアップメモリー45からフィスカルメモリー41へのフィスカル情報の転送を行わない。
【0035】
次に、フィスカル制御回路基板4には、レシート内容を記憶保持するためのEJ(電子ジャーナル)メモリー46およびEJメモリー制御用CPU47が搭載されている。EJメモリー制御用CPU47はフィスカル制御用CPU42との間で通信を行い、フィスカルプリンター1によるレシート発行毎に、レシート内容に関する情報を受け取り、受け取った情報をEJメモリー46に記憶保持する。
【0036】
ここで、フィスカル制御回路基板4は、プリンター本体から取り外し可能な状態に取り付けられており、プリンター制御回路基板3に対しては着脱可能なコネクター48を介して電気的に接続されている。コネクター48は、プリンター制御回路基板3に搭載されているプリンター側コネクター端子部33と、フィスカル制御回路基板4に搭載されているフィスカル側コネクター端子部481とを備え、これらが取り外し可能な状態で接続されている。従って、正当な権限のある担当者が、フィスカルプリンター1からフィスカル制御回路基板4を取り外し、そこに搭載されているフィスカルメモリー41の記憶データを取得することが可能である。
【0037】
(フィスカル情報保存動作)
図2はフィスカルプリンター1におけるフィスカル情報保存動作を示す概略フローチャートである。図3は電源再投入後のフィスカル情報保存動作を示す概略フローチャートである。図2に示すように、フィスカル情報生成部421が、フィスカル情報のデータ、フィスカルメモリー41に対する書き込みアドレス、フィスカル情報のデータサイズなどを含むフィスカル情報をワークメモリー43上に生成すると(ステップST1)、バックアップ部422はこのフィスカル情報をバックアップメモリー45に書き込む(ステップST2)。
【0038】
フィスカル情報がバックアップメモリー45上に書き込まれると、電源切断検出部425は電源の切断を監視し(ステップST3)、電源の切断が検出されない間、書き込み部423によるフィスカル情報のフィスカルメモリー41への書き込みが行われる。
【0039】
すなわち、書き込み部423は、バックアップメモリー45上のフィスカル情報のデータを、フィスカルメモリー41に対して同時に書き込み可能な最小のデータ単位毎に転送して、フィスカルメモリー41に書き込む(ステップST4)。
【0040】
その後、フィスカル情報のフィスカルメモリー41へのデータの書き込みが全て終了すると(ステップST5)、バックアップメモリー消去部424は、バックアップメモリー45上のフィスカル情報を消去する(ステップST6)。フィスカル情報が消去されると、フィスカル制御用CPU42は、フィスカル情報のフィスカルメモリー41への書き込みが正常に終了したものと判断する。
【0041】
ステップST3において、電源の切断が検出された場合には、書き込み部423はフィスカル情報の次のデータ単位の転送を停止し(ステップST7)、この状態で、電源が完全に遮断されるのを待つ。
【0042】
図3に示すように、電源が再投入されると、電源投入直後にバックアップメモリー監視部427によって設定情報が変化しているか否かが確認される(ステップST11)。設定情報が変化していない場合には、更に、バックアップメモリー45にフィスカル情報が存在しているか否かが確認される(ステップST12)。
【0043】
ここで、バックアップメモリー45にフィスカル情報が存在している場合には、書き込み部423は、バックアップメモリー45上のフィスカル情報のデータを、最初からデータ単位毎に転送してフィスカルメモリー41に書き込む(ステップST13)。ステップST13において、書き込み部423は、既にフィスカルメモリー41に書き込まれている情報と同一の情報を転送した場合には、当該情報のフィスカルメモリー41への書き込みをスキップする。
【0044】
しかる後に、フィスカル情報のデータの書き込みが全て終了すると(ステップST14)、バックアップメモリー消去部424は、バックアップメモリー45上のフィスカル情報を消去する(ステップST15)。書き込み部423による書き込み動作の後にフィスカル情報が消去されると、フィスカル制御用CPU42は、フィスカル情報のフィスカルメモリー41への書き込みが正常に終了したものと判断する。
【0045】
ステップST11において、設定情報が変化していることが確認された場合には、バックアップメモリー消去部424は、バックアップメモリー45上のフィスカル情報を消去する(ステップST15)。従って、書き込み部423はフィスカル情報のフィスカルメモリー41への転送および書き込みを行わない。
【0046】
なお、ステップST11において設定情報が変化していることが確認された場合には、バックアップメモリー監視部427は、フィスカルプリンター1に搭載されているブザーを鳴動させたり、フィスカルプリンター1の表示ランプを点滅させたりして、バックアップメモリー45に不具合が発生したことを報知するようにしてもよい。
【0047】
また、ステップST13、ST14において、バックアップメモリー45上のフィスカル情報のデータをフィスカルメモリー41に書き込む動作を繰り返す間に、電源切断検出部425が電源の切断を監視するようにして、電源の切断が検出された場合には、図2のステップST7と同様に、書き込み部423はフィスカル情報の次のデータ単位の転送を停止し、この状態で、電源が完全に遮断されるのを待つようにしてもよい。
【0048】
(作用効果)
本例によれば、ワークメモリー43上に生成されたフィスカル情報は、一旦、蓄電池44によりバックアップされている高速なバックアップメモリー45に書き込まれる。従って、これ以降、電源が切断されてもフィスカル情報が消失してしまうことを回避できる。
【0049】
また、本例によれば、バックアップメモリー45上のフィスカル情報がフィスカルメモリー41へ転送されて書き込まれている途中で電源が切断された場合には、バックアップメモリー45上に残っているフィスカル情報を利用して、電源が投入された後に、このバックアップメモリー45上のフィスカル情報を再び最初からフィスカルメモリー41へ転送して書き込む。この結果、電源が切断されたときに補助電源に切り替えて書き込み動作を継続しなくても、フィスカルメモリー41へのフィスカル情報の書き込みを完了させることができる。
【0050】
さらに、本例によれば、書き込み部423がフィスカル情報を転送するデータ単位のデータ量は、電源の切断が検出された後に書き込み部423が継続して動作可能な一定時間の間にフィスカルメモリー41に対する転送および書き込みが可能なデータ量以下であり、フィスカルメモリー41に対して同時に書き込みが可能な最小のデータ単位となっている。従って、電源の切断が検出された時点で転送が始まったデータ単位の情報が確実にフィスカルメモリー41に書き込まれる。よって、電源の切断が検出された時点で転送が行われている情報が、転送途中または書き込み途中に消失或いは破壊されることを防止できる。
【0051】
また、本例によれば、電源が投入された後に、既にフィスカルメモリー41に書き込まれている情報と同一の情報が転送された場合には、当該情報の前記フィスカルメモリー41への書き込みがスキップされる。従って、フィスカル情報の書き込み時間を短縮することができる。また、フィスカルメモリー41として上書きや書き換えが許可されていないOTP−ROM(One Time Programmable Read Only Memory)が用いられている場合においても、不具合を発生させることなく、フィスカル情報の書き込みを再開できる。
【0052】
さらに、本例では、電源再投入後に設定情報が変化している場合には、書き込み部423はフィスカル情報のフィスカルメモリー41への転送および書き込みを行わない。すなわち、設定情報が変化している場合には、電源の切断によってバックアップメモリー45の状態が不安定となり、その結果、バックアップメモリー45上のフィスカル情報が破壊されている可能性があるので、フィルカル情報の転送を止めることによって、破壊されている可能性があるフィスカル情報をフィスカルメモリー41に記憶保持してしまうことが防止される。
【符号の説明】
【0053】
1・フィスカルプリンター、2・コンピューター、3・プリンター制御回路基板、4・フィスカル制御回路基板、31・プリンター制御用CPU、32・フラッシュメモリー、33・プリンター側コネクター端子部、41・フィスカルメモリー(不揮発性メモリー)、42・フィスカル制御用CPU、43・ワークメモリー、44・蓄電池、45・バックアップメモリー、46・EJメモリー、47・EJメモリー制御用CPU、48・コネクター、421・フィスカル情報生成部、422・バックアップ部、423・書き込み部、424・バックアップメモリー消去部、425・電源切断検出部、426・設定情報書き込み部、427・バックアップメモリー監視部、451・メモリー領域、481・フィスカル側コネクター端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークメモリー上に生成されたフィスカル情報を不揮発性メモリーに書き込むフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法において、
前記ワークメモリー上の前記フィスカル情報を、前記不揮発性メモリーよりも高速な書き込みが可能で蓄電池によりバックアップされているバックアップメモリーに書き込むバックアップ工程と、
前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を所定のデータ単位毎に転送して前記不揮発性メモリーに書き込み、前記フィスカル情報の書き込みが全て終了すると前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を消去する書き込み工程とを含み、
前記書き込み工程の途中で電源の切断が検出された場合には、前記フィスカル情報の次の前記データ単位の転送を停止し、
前記電源が投入された後に、前記バックアップメモリーに前記フィスカル情報が存在しているか否かを確認して、前記フィスカル情報が存在している場合には、前記書き込み工程を最初から行うことを特徴とするフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記データ単位のデータ量は、前記電源の切断が検出された後に前記書き込み工程が継続して作動可能な一定時間の間に前記不揮発性メモリーに対する転送および書き込みが可能なデータ量以下であることを特徴とするフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記データ単位は、前記不揮発性メモリーに対して同時に書き込みが可能な最小のデータ単位であることを特徴とするフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記電源が投入された後の前記書き込み工程において、既に前記不揮発性メモリーに書き込まれている情報と同一の情報を転送した場合には、当該情報の前記不揮発性メモリーへの書き込みをスキップすることを特徴とするフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記書き込み工程よりも前に、前記バックアップメモリーの所定のメモリー領域に予め設定した設定情報を書き込む設定情報書き込み工程を含み、
前記電源が投入された直後に、前記設定情報が変化しているか否かを確認して、前記設定情報が変化している場合には、電源が投入された後の書き込み工程を行わないことを特徴とするフィスカルプリンターのフィスカル情報保存方法。
【請求項6】
ワークメモリーと、
不揮発性メモリーと、
前記不揮発性メモリーよりも高速な書き込みが可能で蓄電池によりバックアップされているバックアップメモリーと、
フィスカル情報を前記ワークメモリー上に生成するフィスカル情報生成部と、
前記ワークメモリー上に前記フィスカル情報が生成されると、前記バックアップメモリーに前記フィスカル情報を書き込むバックアップ部と、
前記フィスカル情報のバックアップメモリーへの書き込みが終了すると、前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を所定のデータ単位毎に転送して前記不揮発性メモリーに書き込む書き込み部と、
前記不揮発性メモリーへの前記フィスカル情報の書き込みが全て終了すると前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を消去するバックアップメモリー消去部と、
電源の切断を検出する電源切断検出部と、
前記電源が投入されると、前記バックアップメモリーに前記フィスカル情報が存在しているか否かを確認するバックアップメモリー監視部とを有し、
前記書き込み部は、前記電源の切断が検出された場合には、その後の前記データ単位の転送を停止し、前記バックアップメモリーに前記フィスカル情報が存在していることが確認された場合には、前記バックアップメモリー上の前記フィスカル情報を最初から前記データ単位毎に転送して前記不揮発性メモリーに書き込むことを特徴とするフィスカルプリンター。
【請求項7】
請求項6において、
前記データ単位のデータ量は、前記電源の切断が検出された後に前記書き込み部が継続して動作可能な一定時間の間に前記不揮発性メモリーに対する転送および書き込みが可能なデータ量以下であることを特徴とするフィスカルプリンター。
【請求項8】
請求項7において、
前記データ単位は、前記不揮発性メモリーに対して同時に書き込みが可能な最小のデータ単位であることを特徴とするフィスカルプリンター。
【請求項9】
請求項6ないし8のうちのいずれかの項において、
前記書き込み部は、既に前記不揮発性メモリーに書き込まれている情報と同一の情報を転送した場合には、当該情報の前記不揮発性メモリーへの書き込みをスキップすることを特徴とするフィスカルプリンター。
【請求項10】
請求項6ないし9のうちのいずれかの項において、
予め、前記バックアップメモリーの所定のメモリー領域に予め設定した設定情報を書き込む設定情報書き込み部を有し、
前記バックアップメモリー監視部は、前記電源が投入された直後に前記設定情報が変化しているか否かを確認し、
前記書き込み部は、前記設定情報が変化していることが確認された場合には、前記バックアップメモリーからの前記フィスカル情報の転送を行わないことを特徴とするフィスカルプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−101378(P2012−101378A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249454(P2010−249454)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】