説明

フィッシャートロプシュ法における高速停止

本発明は、フィッシャートロプシュ法における高速停止を行うための方法であって、フィッシャー−トロプシュ触媒を含む固定床反応器の入口セクションにCOおよびHを含む供給物を提供する工程であって、この反応器が、反応温度および圧力にある工程、および反応器の出口セクションから排出液を取り出す工程を含み、高速停止が、反応器へのCOおよびHの提供をブロックし、反応器からのガス状反応器内容物を取り出すことによって行われ、ガス状の反応器内容物は、反応器の入口セクションから少なくとも一部が取り出される方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッシャートロプシュ法に関し、特に固定床反応器において行われるフィッシャートロプシュ法における高速停止を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャートロプシュ法は、炭化水素質供給原料を通常は液体および/または固体炭化水素に転化するために使用できる(0℃、1bar)。供給原料(例えば、天然ガス、付随ガス、炭層メタン、残油画分、バイオマスおよび/または石炭)を、第1の工程において水素および一酸化炭素の混合物に転化する。この混合物は、合成ガスまたはシンガスと称されることが多い。合成ガスは、好適な触媒の下で高温および高圧にて、メタンから200個までの炭素原子、または特定の状況下ではさらにこれ以上を含む高分子量モジュールに及ぶパラフィン系化合物に転化される反応器に供給される。
【0003】
フィッシャー−トロプシュ反応を行うために多数のタイプの反応器システムが開発されている。例えば、フィッシャー−トロプシュ反応器システムとしては、固定床反応器、特に多管式固定床反応器、流動床反応器、例えば同伴流動床反応器および固定流動床反応器、およびスラリー床反応器、例えば3相スラリーバブル塔および沸騰床反応器が挙げられる。
【0004】
フィッシャー−トロプシュ反応は、非常に発熱性であり、温度感応性である。結果として、最適な操作条件および所望の炭化水素生成物選択性を維持するためには、注意深い温度制御が必要とされる。
【0005】
反応が非常に発熱性であるという事実はまた、温度制御が適切でない場合に、反応器の温度が非常に急速に上昇する場合があり、これは反応器が急騰する危険性をもたらし、結果として触媒の局所的な不活性化を生じ得るという結果を招く。
【0006】
フィッシャー−トロプシュ固定床反応器において高活性触媒の使用を望む場合は、触媒活性が増大するにつれて、反応器の反応器急騰に対する感受性が増大するので、この状況はさらにより困難になる。反応器の急騰は触媒の不活性化をもたらす場合があり、これにより触媒の早期の交換が必要になり、反応器の停止時間を生じるとともに、触媒のコストが増すことになるので、最も望ましくない現象である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
故に、フィッシャー−トロプシュ反応器における高速停止を行うための方法が必要とされている。高速停止は、例えばフィッシャー−トロプシュ反応器における温度が、局所的または反応器全体にわたって受容できない値にまで上昇する場合、ガスフローにおいて妨害がある場合、または他の予期しない状況の場合に必要とされる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、フィッシャートロプシュ法における高速停止を行うための方法に関し、フィッシャー−トロプシュ触媒を含む固定床反応器の入口セクションにCOおよびHを含む供給物を提供する工程であって、この反応器が、反応温度および圧力にある工程、および反応器の出口セクションから排出液を取り出す工程を含み、高速停止が、反応器へのCOおよびHの提供をブロックし、反応器からガス状反応器内容物を取り出すことによって行われ、ガス状の反応器内容物は、反応器の入口セクションから少なくとも一部が取り出される方法に関する。
【0009】
方法の構成に応じて、フィッシャー−トロプシュ反応器における高速停止の実行により、温度の上昇を伴うことが多く、方法サイドでの温度ピークに至る。これは、ガスの時間あたりの空間速度の低下により生じ、これが転化を増大させるとともに、熱形成の増大を伴い、同時に熱除去能の低下を生じる。
【0010】
ガス状反応器内容物が少なくとも部分的に反応器の入口セクションから取り出される本発明に従う高速停止により、結果としてピーク温度における上昇が、反応器の出口セクションから排他的に反応器内容物を取り出す場合に得られるピーク温度の上昇よりも実質的に低くなることを見出した。本発明に従う手順は結果として実質的な触媒の不活性化を生じないことも見出した。
【0011】
フィッシャー−トロプシュ反応器は、反応器の入口セクションと反応器の出口セクションとの間に位置する触媒セクションを含む。反応器の入口セクションは、ガス状反応体、つまり水素およびCOのための入口、および場合により反応中または高速停止中に添加されるべき不活性ガスのための入口を備える。当業者には明らかなように、種々の構成成分は、反応器の構成に応じて、同じまたは異なる入口を通して反応器に添加できる。反応器の出口セクションは、液体生成物のための出口およびガス状反応器内容物のための出口を備える。反応器の構成に応じて、これらの出口は、組み合わせてもよく、または別々に提供されてもよい。反応器の出口セクションは、液体生成物のための複数の出口および/またはガス状反応器内容物のための複数の出口を有していてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の内容において、反応器の底部という文言は、触媒が位置する反応器の部分よりも下方の反応器部分を指す。反応器の上部という文言は、触媒が位置する反応器の部分よりも上方の反応器部分を指す。本発明に従うフィッシャートロプシュ法において、入口セクションは、一般に反応器の上部に提供される。出口セクションは、一般に反応器の底部に提供される。しかし、反応器の底部に入口セクション、および上部に出口セクションを有することも可能である。
【0013】
本発明を以下でより詳細に説明する。
【0014】
高速停止中、ガス状反応器内容物は、反応器から取り出される。この反応器内容物は、ガス状反応体、ガス状生成物、および反応器中または高速停止中に反応器に添加されるいずれかの不活性ガスを含む。反応器の構成に応じて、ユニットにおいて存在する液体反応生成物は、高速の安全停止中に反応器から取り出されてもよく、または取り出されなくてもよい。以下により詳細に説明するように、ガス状反応器内容物は、反応器の入口セクションから少なくとも部分的に取り出される。液体反応性生成物が高速停止中に取り出される場合、これは一般に出口セクションから行われる。これは、入口セクションが反応器の上部にあり、出口セクションが反応器の底物にある場合に特にあてはまる。
【0015】
本発明の実施形態の1つにおいて、ガス状反応器内容物は、反応器の入口セクションからのみ取り出され、出口セクションからは取り出されない。この実施形態において、高速停止中、反応器におけるガスフローは、操作中のガスフローに対して反転する、即ち入口セクションから出口セクションとは逆方向の出口セクションから入口セクションに反転する。これは、入口セクションに存在する未反応構成成分が触媒と実質的に接触しないという利点を有する。出口セクションに存在するガス状反応器内容物が触媒セクションを通過するが、この物質は、H/CO比が低いので入口セクションの内容物よりも反応性が低く、不活性ガスの含有量が高い可能性がある。結果として、この実施形態において、触媒セクションを通過する反応性構成成分の量が低下し、結果として発熱の発生が低減される。
【0016】
この実施形態において、反応器の設計は、触媒セクションを通るガスフローの反転に適応できるようにすべきである。特に、触媒が高速停止中に押し上げられることがないよう保護する必要がある場合がある。
【0017】
この実施形態において、反応器に存在する液体生成物は、反応器において保持されてもよく、または反応器から、一般に出口セクションを通して取り出されてもよい。反応器に液体生成物を保持するのが好ましい場合がある。
【0018】
本発明の別の実施形態において、高速停止中、ガス状反応器内容物は、反応器の入口セクションおよび反応器の出口セクションの両方から取り出される。この場合、反応器の入口セクションから取り出されたガス状反応器内容物のパーセンテージは、取り出されたガス状反応器内容物の総量に基づいて計算される場合に、広い範囲、例えば1から99体積%、より具体的には10から90体積%で変動し得る。30%を超える値が、特に興味深い場合がある。
【0019】
入口セクションから取り出されるガス状反応器内容物のパーセンテージに応じて、高速停止中の触媒セクションにおけるガスフローは、操作中のガスフローと同一の方向であってもよく、または反対の方向であってもよい。ガスフローの方向が商業的操作とは逆方向に反転されている場合、反応器の設計は、このガスフローの反転に適合できるようにすべきである。
【0020】
高速停止中のガス状反応器内容物の取り出しは、結果として反応器における圧力の低下を招く。得られた最終圧力は、一般に15bar未満、より具体的には1から10barの範囲、例えば2から8barの範囲である。
【0021】
反応器は、一般に、高速の温度停止の前に、一般に5から150bar、好ましくは20から80bar、より具体的には30から70barの範囲である操作圧力にて操作される。
【0022】
本発明の方法において、COおよびHの反応器への提供が停止される。一実施形態において、不活性ガスが高速停止中に添加される。不活性ガスの添加は、発熱の発生を制御するのに役立つように作用し得る。本明細書内において、不活性ガスという文言は、フィッシャー−トロプシュ反応条件の下で不活性であるガスを指す。適切な不活性ガスの例としては、窒素および低硫黄天然ガス、例えば脱硫天然ガスを含む。
【0023】
使用される場合、不活性ガスは、例えば少なくとも5 Nl/l/h、より具体的には少なくとも10 Nl/l/h、さらにより具体的には少なくとも20 Nl/l/hの量で添加されてもよい。不活性ガスの量は、添加される場合、例えば最大80 Nl/l/h、より具体的には少なくとも70 Nl/l/h、さらにより具体的には少なくとも60 Nl/l/hであってもよい。
【0024】
不活性ガスの添加は、反応器内のガスフローが出口セクションから入口セクションに至る場合には好ましくない。これは、こうした場合に、不活性ガスが、触媒と接触する前にユニットから取り出される場合があるからである。不活性ガスの添加は、反応器内のガスフローが入口セクションから出口セクションに至る実施形態においては望ましい場合がある。
【0025】
このように所望される場合、反応器は、高速停止中または高速停止後に冷却されてもよい。高速停止中に反応器を冷却するのが好ましい。冷却工程の最終温度は、さらなる所望の作用に依存する。一般に、反応器は、周囲温度から200℃までの範囲の温度に冷却される。反応器が、反応器の即時再開を目的として冷却される場合は、一般に100℃から190℃の範囲の温度、特に160℃から180℃の値に冷却される。
【0026】
冷却速度は、反応器のサイズおよびさらなる状況に依存する。例えば、これは毎時10℃から100℃の範囲であってもよい。
【0027】
フィッシャートロプシュ法の操作中、COおよびHを含む供給物は、反応器の入口セクションに提供される。排出液は、反応器の出口セクションから取り出される。
【0028】
反応器の設計に応じして、フィッシャートロプシュ法の操作中の反応器からの排出液は、単一ガス状相、多相排出液または2つ以上の排出液ストリームであることができ、2つ以上の排出液の1つ以上は、主にガス状であり、1つ以上が主に液相である。
【0029】
本発明に従う方法は、固定床反応器に適している。好ましい実施形態において、反応器は、少なくとも5、特に少なくとも50の長さと直径との比を有する反応管である。上限として最大1000の比を挙げることができる。
【0030】
一実施形態では、反応器管は、熱伝導媒体によって少なくとも部分的に囲まれる複数の反応器管を含む多管式反応器における管である。
【0031】
多管式反応器における管は、一般に0.5から20cmの範囲、より具体的には1から15cmの範囲の直径を有する。これらは、一般に3から30mの範囲の長さを有する。多管式反応器における管の数は、本発明にとって重要ではなく、広い範囲、例えば4から50000の範囲、より具体的には100から40000の範囲で変動してもよい。
【0032】
多管式反応器およびフィッシャートロプシュ法におけるこれらの使用は、当分野において既知であり、さらなる説明は本明細書において必要でない。
【0033】
一実施形態において、触媒は粒子状触媒、即ち粒子の形態の触媒である。触媒の形状は、規則的または不規則的であってもよい。寸法は、適切には3方向すべてにおいて0.1から30mm、好ましくは3方向すべてにおいて0.1から20mm、より具体的には0.1から6mmであってもよい。適切な形状は球状であり、特に押出成型品である。押出成型品は、適切には0.5から30mm、好ましくは1から6mmの長さを有する。押出成型品は、円筒状、多葉状であってもよく、または他のいずれかの形状を有していてもよい。これらの有効な直径、即ち内部体積比にわたって同じ外側表面を有する球体の直径は、適切には0.1から10mmの範囲、より具体的には0.2から6mmの範囲である。
【0034】
フィッシャー−トロプシュ触媒の開発におけるごく最近の傾向は、拡散制限が低下した触媒粒子の開発である。拡散制限が低下した触媒は、フィッシャートロプシュ法において非常に活性であることが見出された。しかし、この高い活性およびこの高い活性化エネルギーのために、これらの使用により、反応器の急騰の危険性が増大することになる。さらに、拡散制限が低下した触媒は特に、高速停止を行う方法に対して感受性であることも見出された。より具体的には、拡散制限が低下した触媒に関して、反応器へのCOおよびHフローをブロックし、底部を介して反応器を減圧することによって行われる高速停止は、約100℃の温度ピークの形成をもたらす場合があり、これは商業的な操作において対処するのが困難であることが見出された。一方、拡散制限が低下した同じ触媒に関して、本発明に従う高速停止が行われた場合、これは結果として、約23℃のピーク温度の上昇をもたらす。故に、本発明に従う方法は、拡散制限が低下した触媒、特に有効直径が最大2mm、より具体的には最大1.6mm、さらにより具体的には最大1.5mmである触媒を含む反応器に対して特に興味深い。拡散制限が低下した触媒は、例えばWO2003/013725、WO2008/087149、WO2003/103833、およびWO2004/041430に記載されている。
【0035】
フィッシャー−トロプシュ反応は、好ましくは125℃から400℃、より好ましくは175℃から300℃、最も好ましくは200℃から260℃の範囲の温度にて行われる。ガスの毎時空間速度は、広い範囲で変動してもよく、通常500から10000 Nl/l/hの範囲、好ましくは1500から4000 Nl/l/hの範囲である。触媒床に供給される場合の供給物の水素とCOとの比は、一般に0.5:1から2:1の範囲である。
【0036】
フィッシャー−トロプシュ合成の生成物は、メタンから重炭化水素の範囲であってもよい。好ましくは、メタンの生成は最小限にされ、生成された炭化水素のかなりの部分は、少なくとも5つの炭素原子を有する炭素鎖長を有する。好ましくは、C5+炭化水素の量は総生成物の少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも85重量%である。方法全体のCO転化は、好ましくは少なくとも50%である。
【0037】
本発明に従う方法を介して得られた生成物は、当分野において既知の炭化水素転化および分離方法を通して処理して特定の炭化水素画分を得ることができる。適切な方法は、例えば水素化分解法、水素化異性化法、水素化および触媒脱ろうである。特定の炭化水素画分は、例えばLPG、ナフサ、洗剤原料、溶媒、掘削流体、ケロセン、ガスオイル、基油およびワックスである。
【0038】
フィッシャー−トロプシュ触媒は当分野において既知である。これらは、通常、VIII族金属成分、好ましくはコバルト、鉄および/またはルテニウム、より好ましくはコバルトを含む。通常、触媒は触媒キャリアを含む。触媒キャリアは、好ましくは多孔質、例えば多孔質無機耐火性酸化物、より好ましくはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアまたはこれらの組み合わせである。周期表および本明細書で使用されるこれらの族については、the Periodic Table of Elementsの以前のIUPACバージョン、例えば68th Edition of the Handbook of Chemistry and Physics(CPC Press)に記載されるものを参照されたい。
【0039】
キャリア上に存在する触媒として活性な金属の最適な量は、特に特定の触媒として活性な金属に依存する。通常、触媒に存在するコバルトの量は、キャリア物質100重量部に対して1から100重量部、好ましくはキャリア物質100重量部に対して10から50重量部の範囲であってもよい。
【0040】
触媒として活性な金属は、1つ以上の金属プロモーターまたは共触媒と共に触媒中に存在してもよい。プロモーターは、想定される特定のプロモーターに応じて、金属または金属酸化物として存在してもよい。適切なプロモーターとしては、周期表のIA、IB、IVB、VB、VIBおよび/またはVIIB族の金属の酸化物、ランタニドおよび/またはアクチニドの酸化物が挙げられる。好ましくは、触媒は、周期表のIVB、VBおよび/またはVIIB族の元素の少なくとも1つ、特にチタン、ジルコニウム、マンガンおよび/またはバナジウムを含む。金属酸化物プロモーターの代替としてまたはそれに加えて、触媒は、周期表のVIIBおよび/またはVIII族から選択される金属プロモーターを含んでいてもよい。好ましい金属プロモーターとしては、レニウム、白金およびパラジウムが挙げられる。
【0041】
最も適切な触媒は、触媒として活性な金属としてコバルトおよびプロモーターとしてジルコニウムを含む。別の最も適切な触媒は、触媒として活性な金属としてコバルトならびにプロモーターとしてマンガンおよび/またはバナジウムを含む。触媒中に存在する場合に、プロモーターは、通常キャリア物質の100重量部に対して0.1から60重量部の量で存在する。しかし、プロモーターの最適な量は、プロモーターとして作用するそれぞれの元素ごとに変動してもよいことが理解されよう。触媒が触媒として活性な金属としてコバルト、ならびにプロモーターとしてマンガンおよび/またはバナジウムを含む場合、コバルト:(マンガン+バナジウム)原子比は、有利には少なくとも12:1である。
【0042】
特定の反応器構成および反応レジメンに関して最も適切な条件を決定および選択することは当業者の範囲内であることが理解されよう。
【0043】
本発明は、次の実施例によって例示されるが、これらに、またはこれらによって限定されることはない。
【0044】
(比較例)
フィッシャートロプシュ法を、触媒を含有する固定床反応器において約220℃の温度および約40barの圧力にて操作した。
【0045】
高速停止は、反応器へのCOおよびHのフローをブロックすると同時に、窒素供給をLHSV 50 Nl/l/hに維持することによって行った。反応器を、6分で20bargの圧力にて底部を介して減圧し、次いでさらに14分で6bargの圧力に減圧した。反応器温度は高速停止中に測定されたが、高速停止の前の最大反応温度を超えて+100℃のピーク温度が測定された。
【0046】
反応器の再開時に、触媒の不活性化は生じていなかったことを認めた。
【0047】
(本発明に従う実施例)
フィッシャートロプシュ法は、触媒を含有する固定床反応器中にて約220℃の温度および約40barの圧力にて操作した。
【0048】
高速停止は、反応器へのCOおよびHのフローをブロックすることによって行ったが、LHSV 50 Nl/l/hでの窒素供給を維持した。反応器は上部および底部を介して、取り出されたガス状反応器内容物の総量に基づいて計算される場合、30体積%のガスを上部を介して放出させて減圧した。減圧は、6分で20bargの圧力に、次いでさらに14分で6bargの圧力にて行った。反応器の温度は、高速停止中に測定されたが、高速停止の前の最大反応温度を超えて36℃のピーク温度が測定された。
【0049】
反応器の再開時に、触媒の不活性化は生じなかったことを認めた。
【0050】
上記の比較例1での手順に比べて、本発明に従う手順が実質的に低いピーク温度をもたらすことは明らかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャートロプシュ法における高速停止を行うための方法であって、フィッシャー−トロプシュ触媒を含む固定床反応器の入口セクションにCOおよびHを含む供給物を提供する工程であって、この反応器が、反応温度および圧力にある工程、および反応器の出口セクションから排出液を取り出す工程を含み、高速停止が、反応器へのCOおよびHの提供をブロックし、反応器からのガス状反応器内容物を取り出すことによって行われ、ガス状の反応器内容物は、反応器の入口セクションから少なくとも一部が取り出される、方法。
【請求項2】
ガス状反応器内容物が除かれ、15bar未満の値に反応器圧力を低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高速停止において、ガス状反応器内容物が、出口セクションからではなく、反応器の入口セクションから取り出される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
高速停止において、ガス状反応器内容物が、反応器の入口セクションから、および反応器の出口セクションから取り出される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
反応器の入口セクションから取り出されるガス状反応器内容物のパーセンテージが、取り出されたガス状反応器内容物の総量に基づいて計算される場合に、10から90体積%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
入口セクションが反応器の上部に提供され、出口セクションが反応器の底部に提供される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応器が、少なくとも50:1の長さと直径との比を有する反応器管である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
反応器管が、熱伝導媒体によって少なくとも部分的に囲まれる複数の反応器管を含む多管式反応器における管である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
触媒が、最大1.6mm、特に最大1.5mmの有効直径を有する粒子状触媒である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512228(P2012−512228A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541380(P2011−541380)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067091
【国際公開番号】WO2010/069927
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】