説明

フィッシャー・トロプシュ触媒の調製およびその使用

触媒前駆体の調製方法は、第1の調製工程において、粒子状触媒担持体にキャリア液体中の有機金属化合物を含浸させることを含む。有機金属化合物の金属は活性触媒成分である。含浸中間生成物が形成され、焼成されて焼成中間生成物が得られる。その後第2の調製工程において、第1の調製工程で得られた焼成中間生成物にキャリア液体中の無機金属塩を含浸させる。無機金属塩の金属は活性触媒成分である。含浸担持体が得られ、焼成されて触媒前駆体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒に関し、特に触媒前駆体の調製方法および触媒の調製方法であって、触媒が例えば炭化水素合成(フィッシャー・トロプシュ(FT)を含む)および水素化反応に用いることができる、触媒前駆体の調製方法および触媒の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な含浸手法を用いて触媒担持体(support)に金属を含浸させることにより触媒前駆体を調製することは当業者に周知である。通常、このようにして得られた含浸担持体をその後乾燥および焼成することにより触媒前駆体が提供される。その後前駆体を還元して最終的に触媒が生成される。
【0003】
特に、本出願人は欧州特許EP0736326 B1号に記載されているように、例えば硝酸コバルト六水和物などのコバルト塩の水性スラリー相をアルミナ担持体に含浸させ、含浸担持体を乾燥させ、その後得られた含浸担持体に直接流動床焼成を行うことによって触媒前駆体を得、その後前駆体を還元することによりフィッシャー・トロプシュ合成触媒を得るという方法により、コバルト含浸アルミナベースのフィッシャー・トロプシュ合成触媒が合成できることを知っている。触媒は担持体に分散したコバルトを含む。コバルト塩を含浸させることにより、あるいは必要に応じてコバルト塩含浸工程を反復することにより、所望の高い触媒活性を得るに十分高いコバルト担持率(loading)を容易に得ることができる。
【0004】
含浸中に有機金属化合物または有機添加物を用いると、担持された金属触媒の触媒活性の上昇が助けられるということが報告されている。例えば米国特許第5,856,260号は、含浸中にポリオールと金属塩との混合物を用いることにより触媒性能が高まることを教示している。
【0005】
Van de Loosdrechtら(Applied Catalysis A:General,第150巻、第2号、1997年3月13日、365〜376頁(12))は、Co−EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはクエン酸アンモニウムコバルトを用いた含浸により低担持率のコバルト触媒(2.5%Co)を調製すると、まず酸化コバルトの微粒子が形成されたことを報告している。これらの酸化微粒子は還元気体流中での熱処理中にアルミナ担持体と反応してアルミン酸コバルトを形成した。アルミン酸コバルトはフィッシャー・トロプシュ合成では不活性であった。2工程の含浸プロセスの両方の工程でクエン酸アンモニウムコバルトを用いることにより、より高い担持率の触媒(5%Co)を調製すると、より大きい酸化コバルト粒子が得られ還元率もより高かった。最終的に適度の活性が得られたが、それでも、硝酸コバルトのみの含浸により調製した参考触媒に比べると活性は低く、コバルト担持率は同様であった。
【0006】
有機含浸化合物を用いた場合、溶解度が限られ且つ含浸溶液の粘度が高いために金属担持率は低くなる傾向がある。多くの触媒反応において、金属担持率が低いと十分に高い活性は得られない。理由は特に、このような触媒の還元率が低いからである。
【0007】
KraumおよびBaem(Applied Catalysis A:General 186(1999)189−200)は、12%コバルトを含むチタニア担持触媒の性能の研究について記載している。上記チタニア触媒は、コバルト(III)アセチルアセトネート、酢酸コバルト、蓚酸コバルトおよびコバルト−EDTAを含む様々な有機コバルト化合物による複数回の含浸によって調製された。複数回の含浸は、1種類の有機コバルト化合物のみを用いて特定の各触媒に対して行われた。この研究では、含浸サイクルを複数回行って有機コバルト化合物の低溶解度を補償することによってのみ、十分に高い金属担持率が達成された。しかし触媒の調製のために複数回の含浸サイクルを用いなければならないことは、経済的に魅力的でない。
【0008】
米国特許第6822008 B2号は、適切な担持体に別々に担持(load)した2種類の異なる金属前駆体を用いることを教示している。この担持は、金属の第1の担持部が金属の第2の担持部よりも容易に還元するように行う。例えば、硝酸コバルト六水和物をまず担持し、その後酢酸コバルトを担持体上に担持する。そのため第2のコバルト前駆体は、酢酸コバルトなどの有機コバルト塩であってもよい。しかし米国特許第6822008 B2号は、コバルトの分散度の上昇もFT合成活性の上昇も示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、上記の欠点のいくつかを克服するか、少なくとも緩和する触媒前駆体及び/または触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って本発明の第1の局面によると、触媒前駆体の調製方法であって、
第1の調製工程において、粒子状触媒担持体にキャリア液体中の有機金属化合物を含浸させることによって含浸中間生成物を形成し、含浸中間生成物を焼成することによって焼成中間生成物を得る工程であって、有機金属化合物の金属は活性触媒成分である工程と、
その後第2の調製工程において、第1の調製工程で得られた焼成中間生成物にキャリア液体中の無機金属塩を含浸させることによって含浸担持体を得、含浸担持体を焼成することによって触媒前駆体を得る工程であって、無機塩の金属は活性触媒成分である工程とを含む方法が提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、第1の調製工程の含浸中間生成物の少なくとも一部を焼成前に乾燥させる。好ましくは、第2の調製工程の含浸担持体の少なくとも一部もまた焼成前に乾燥させる。一部の乾燥は通常、含浸がスラリー相含浸である場合に起こることが理解される。
【0012】
「活性触媒成分」とは、有機金属化合物の金属および無機金属化合物の金属が、触媒前駆体から得られる最終触媒が触媒として用いられる化学反応に対して能動的な触媒作用を提供することを意味する。そのため、上記化学反応に対して最終的に能動的な触媒作用を提供しない化合物による含浸は排除される。このような排除される化合物の例は、シリカ化合物である。シリカ化合物は用いられたとしても、最終触媒が触媒として用いられる化学反応に対して能動的な触媒作用を提供するというよりはむしろ担持体を改質するように働く。
【0013】
従って本発明の特徴は、まず有機金属化合物による含浸を行い、含浸中間生成物を焼成した後に、無機金属塩による含浸を行うというシーケンスを厳密に用いて含浸を行うことである。好ましくは、第2の調製工程で用いた無機金属塩は第1の含浸工程には存在しない。好ましくは、第1の調製工程の有機金属化合物は第2の調製工程には存在しない。
【0014】
従って本発明は、金属ベース、好ましくは、コバルトベースの触媒前駆体であって、上昇した活性を有し得る触媒を得る元となる触媒前駆体の調製方法を提供する。驚くべきことに、クエン酸アンモニウムコバルトなどの有機金属化合物を用いた含浸を含む最初のまたは第1の調製工程を実施した後、次のまたは第2の調製工程で硝酸コバルトなどの無機金属塩をコバルトに含浸させた場合、金属(例えばコバルト)の高分散性が通常得られ、同時に金属(例えばコバルト)の高担持率も達成され得ることが判明した。さらにこの場合、通常、無機コバルト塩のみを用いて2つの連続含浸工程で触媒を調製する標準的な様式に比べて触媒活性も上昇することが判明した。このように上昇した触媒活性は、無機金属塩を用いて2つの連続含浸工程で含浸するという標準的な様式を用いて調製した触媒と同等またはそれよりも低い金属(例えばコバルト)担持率でも達成される。第1の調製または含浸工程後に得られた中間生成物は、有機金属化合物のみを含み、通常の硝酸塩を含まないため、この化合物の発熱分解は非常に良好に制御することができる。
【0015】
触媒活性の上昇は以下の理由によると考えられる。有機金属前駆体による第1の含浸後に、還元率が制限された状態で、金属(例えばコバルト)の高い分散性が通常得られる。無機金属塩による第2の含浸後には驚くべきことに高い分散性が維持されているが、還元率および金属担持率は上昇する。その結果、無機コバルト塩を用いて2つの連続含浸工程で含浸を行うという標準的様式で調製した触媒に比べて高い分散性と同等の担持率と同等の還元率を有する触媒が得られる。従って、妥当な金属担持率および妥当な還元率を有しつつ、より高い金属(例えばコバルト)分散性を有する結果、触媒活性が上昇すると考えられる。
【0016】
本明細書において、用語「有機金属化合物」は、少なくとも1つの金属原子が少なくとも1つの有機基と、結合により、例えば共有結合、金属−リガンド配位またはイオン相互作用により結合している化合物を意味する。金属原子は好ましくは、少なくとも1つの少なくとも1つの有機基の少なくとも1つの非炭素原子、特に有機基の酸素原子に結合している。有機金属化合物はさらに、金属に結合する1以上の無機基を含んでもよい。1以上の無機基は好ましくは、カチオン基である。
【0017】
本明細書において、用語「無機金属塩」は、少なくとも1つの金属原子が1以上の無機基とのみ、結合により、例えば共有結合、金属−リガンド配位またはイオン相互作用により結合している塩を意味する。
【0018】
上記方法は、第1の調製工程において、有機金属化合物による含浸を少なくとも1度反復することを含んでもよい。好ましくはその後、含浸中間生成物の少なくとも一部の乾燥が実行された場合、当該乾燥も反復される。好ましくはその後、含浸中間生成物の焼成も反復される。このようにして、焼成中間生成物中のより高い金属担持率が得られる。
【0019】
同様に、上記方法は、第2の調製工程において、無機金属塩による含浸を少なくとも1度反復することを含んでもよい。好ましくはその後、含浸担持体の少なくとも一部の乾燥が実行された場合、当該乾燥も反復される。好ましくはその後、含浸担持体の焼成も反復される。このようにして、触媒前駆体中の高い金属担持率が得られる。
【0020】
従って本発明の一実施形態では、第1の調製工程は、上記したように有機金属化合物による第1の含浸、少なくとも一部の乾燥(必要に応じて)、および焼成、そして上記したようにこれに続く有機金属化合物による第2の含浸、少なくとも一部の乾燥(必要に応じて)、および焼成を含んでもよい。その後第2の調製工程は、上記したように無機金属塩による1回の含浸、少なくとも一部の乾燥(必要に応じて)、および焼成を含んでもよい。
【0021】
しかし本発明の別の実施形態では、第1の調製段階は、上記したように有機金属化合物による1回の含浸、少なくとも一部の乾燥(必要に応じて)、および焼成を含んでもよい。その後第2の調製工程は、上記したように無機金属塩による第1の含浸、少なくとも一部の乾燥(必要に応じて)、および焼成、そして上記したようにこれに続く無機金属塩による第2の含浸、少なくとも一部の乾燥(必要に応じて)、および焼成を含んでもよい。
【0022】
有機金属化合物の金属と無機金属塩の金属とは、同一であってもよいし異なってもよい。しかし同一であることが好ましい。本発明の目的に適した金属は貴金属のような高値金属である。本発明に最も適した金属はコバルトおよびニッケルである。
【0023】
本発明の第1の実施形態では、触媒前駆体は炭化水素合成触媒前駆体であってもよい。その場合、好ましくはフィッシャー・トロプシュ合成触媒前駆体であってもよい。その場合、より好ましくはスラリー相フィッシャー・トロプシュ合成触媒前駆体であってもよい。有機金属化合物の金属は、コバルトであってもよい。その場合、無機金属塩の金属もコバルトであることが好ましく、従ってコバルトは最終触媒の活性成分である。その場合、触媒前駆体はコバルトベースのフィッシャー・トロプシュ合成触媒前駆体である。
【0024】
上記のコバルトベースのフィッシャー・トロプシュ合成触媒前駆体が還元によってフィッシャー・トロプシュ合成触媒に変換された場合、触媒のフィッシャー・トロプシュ活性は高くかつ安定していることが判明した。さらに驚くべきことに、上記した2段階の調製工程を用いることにより、コバルトの所望の高担持率だけでなくコバルト(金属および/または酸化物)の高分散性も得られ、その結果、上昇したフィッシャー・トロプシュ合成活性を有する触媒が得られることが判明した。
【0025】
第2の調製工程の無機コバルト塩は少なくとも原則的にはいずれの無機コバルト塩でもよいが、硝酸コバルト、特にCo(NO32・6H2Oが好ましい。
【0026】
無機コバルト塩は好ましくは、少なくとも一部がキャリア液体に溶解している。従ってキャリア液体は、いずれの適した液体溶媒でもよい。好ましくは水である。
【0027】
同様に、第1の調製工程の有機コバルト化合物は好ましくは、少なくとも一部がキャリア液体に溶解している。キャリア液体は、いずれの適した液体溶媒でもよい。好ましくは水である。
【0028】
有機コバルト化合物は、必要に応じて少なくとも1つの対イオン源の存在下で、水酸化コバルトなどのコバルト化合物を有機酸と反応させることによって得られたものあってもよい。
【0029】
コバルト化合物は好ましくは、コバルト塩基化合物である。
【0030】
対イオン源がある場合、対イオン源は好ましくは無機源であり、好ましくは1以上のカチオンの源である。本発明の一実施形態では、対イオン源はアンモニアである。
【0031】
有機コバルト化合物はインサイチュで形成することができる。従ってコバルト化合物、例えば水酸化コバルトは有機酸の水溶液中に溶解することができる。
【0032】
有機酸は、クエン酸(C687)、コハク酸(C464)、蓚酸(C224)、酢酸(C242)、グルコン酸(C6127)またはEDTA、すなわちエチレンジアミン四酢酸などのカルボン酸であってもよい。有機酸は好ましくはクエン酸である。
【0033】
有機コバルト化合物溶液において、有機酸に対するコバルトのモル比は、例えば0.1:1から10:1まで大きく変化し得る。しかし有機酸に対するコバルトのモル比は通常0.5:1から2:1の範囲であり、典型的には1:1であると予想される。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、第1の調製工程の有機コバルト化合物は、クエン酸アンモニウムコバルトまたはEDTAアンモニウムコバルトであってもよい。
【0035】
あるいは第1の調製工程の有機コバルト化合物は、コバルト化合物とアセチルアセトン(C582)との反応によって得られたものであってもよい。
【0036】
触媒担持体は粒子状多孔性担持体であってもよい。
【0037】
触媒担持体は、触媒担持体基体と必要に応じて1以上の改質成分とを含んでもよい。触媒担持体基体は、1以上の酸化アルミニウムという形態のアルミナ、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、マグネシア(MgO)および酸化亜鉛(ZnO)、ならびにこれらの混合物からなる群より選択されてもよい。担持体基体は好ましくは、1以上の酸化アルミニウムという形態のアルミナ、チタニア(TiO2)およびシリカ(SiO2)からなる群より選択される。典型的には担持体基体は、1以上の酸化アルミニウムという形態のアルミナである。1以上の酸化アルミニウムは、ガンマアルミナ、デルタアルミナ、シータアルミナおよびこれらのうち2種以上の混合物を含む(好ましくは、これらからなる)群より選択されてもよい。この群は好ましくは、ガンマアルミナ、デルタアルミナおよびガンマアルミナとデルタアルミナとの混合物を含むか、あるいは好ましくは、これらからなる。酸化アルミニウム触媒担持体は、SASOL Germany GmbHから商標Puralox、好ましくは、Puralox SCCa 2/150として入手可能なものであってもよい。Puralox SCCa 2/150(商標)は、ガンマ酸化アルミニウムとデルタ酸化アルミニウムとの混合物からなるスプレードライによる酸化アルミニウム担持体である。
【0038】
酸化アルミニウムは好ましくは、化学式Al23・xH2O(0<x<1)で表される結晶性化合物である。従って用語「酸化アルミニウム」は、Al(OH)3とAlO(OH)とを排除するが、ガンマ、デルタおよびシータアルミナなどの化合物は含む。
【0039】
触媒担持体は好ましくは、1以上の改質成分を含む。これは特に、担持基体が中性および/または酸性の水溶液に可溶な場合、または以下に述べるように担持基体が以下に水熱(hydrothermal)アタックを受けやすい場合である。
【0040】
改質成分は以下のうち1以上を引き起こす成分を含んでもよい。
(i)水性環境において触媒担持体の溶解度を減少させる。
(ii)水熱アタックを受けやすい(特にフィッシャー・トロプシュ合成中)という触媒担持体の性質を抑制する。
(iii)触媒担持体の孔容積を増加させる。
(iv)触媒担持体の強度および/または磨損抵抗および/または磨耗抵抗を増加させる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、改質成分は、水性環境において触媒担持体の溶解度を減少させる、すなわち水性環境において触媒担持体の溶解に対する不活性を増加させる、および/または特にフィッシャー・トロプシュ合成中に水熱アタックを受けやすいという触媒担持体の性質を抑制する。このような水性環境は、酸性水溶液および/または中性水溶液を含み得、特に水相含浸触媒調製工程中に発生する環境を含み得る。水熱アタックは、炭化水素合成中、特にフィッシャー・トロプシュ合成中に触媒担持体(例えば酸化アルミニウム)の焼結、Alイオンの溶解、または触媒粒子の破壊を引き起こし得る。なぜなら担持体が高温と水分とに曝されるからである。
【0042】
改質成分は典型的には、触媒担持体1ナノ平方メートル当たり少なくとも0.06原子というレベルになる量で存在する。
【0043】
改質成分は、Si、Zr、Co、Ti、Cu、Zn、Mn、Ba、Ni、Na、K、Ca、Sn、Cr、Fe、Li、Ti、Sr、Ga、Sb、V、Hf、Th、Ce、Ge、U、Nb、Ta、W、Laおよびこれらのうち2種以上の混合物を含んでもよいか、これらからなってもよい。
【0044】
より特定すると改質成分は、Si、Zr、Cu、Zn、Mn、Ba、La、W、Niおよびこれらのうち1種以上の混合物からなる群より選択されてもよい。改質成分は好ましくは、SiおよびZrからなる群より選択される。本発明の好ましい実施形態では、改質成分はSiである。
【0045】
改質成分がSiである場合、得られる触媒担持体のシリコンのレベルは、触媒担持体1ナノ平方メートル当たり少なくとも0.06Si原子であり、好ましくは、触媒担持体1ナノ平方メートル当たり少なくとも0.13Si原子であり、より好ましくは、触媒担持体1ナノ平方メートル当たり少なくとも0.26Si原子である。
【0046】
上限は好ましくは、触媒担持体1ナノ平方メートル当たり2.8Si原子である。
【0047】
本発明の一実施形態では、1以上の酸化アルミニウムまたはシリカ改質酸化アルミニウムという形態の触媒担持体が、シリカおよびチタニアなどの担持体よりも好ましい。なぜならこれらの担持体はより磨損抵抗の高い触媒を提供すると考えられるからである。1以上の酸化アルミニウムまたはシリカ改質酸化アルミニウムという形態の触媒担持体はさらに、Laを含んでもよい。Laは磨損抵抗を上昇させると考えられる。
【0048】
本発明の別の実施形態では、1以上の酸化アルミニウムまたはシリカ改質酸化アルミニウムという形態の触媒担持体はチタンを含んでもよく、好ましくは、元素として表した場合、少なくとも500重量ppm、好ましくは約1000重量ppmから約2000重量ppmの量で含んでもよい。チタンを添加すると、特にコバルトFT触媒の場合、特に貴金属助触媒がなく、好ましくはRe助触媒もTe助触媒も触媒中に存在しない場合、このような担持体から形成される触媒の活性が上昇すると考えられる。好ましくはチタンは担持体の内部構造に含まれ、担持体上の析出物として存在するチタンはないことが好ましい。担持体内のチタンの存在は、そのチタンを含む触媒の磨損抵抗を高めると考えられる。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態では、触媒担持体は炭素をコーティングした多孔性粒子という形態であってもよい。しかし本発明の別の実施形態では、多孔性粒子はこのような炭素コーティングがなくてもよい。
【0050】
触媒担持体は、上記のように改質成分を含む改質成分前駆体を触媒担持体材料上または触媒担持体材料中に導入することによって改質してもよい。
【0051】
第1および/または第2の調製工程中、好ましくは両方の工程中に乾燥させる場合、乾燥は、無機コバルト塩および有機コバルト化合物が容易に分解しない条件下で行ってもよい。好ましくは、第1および/または第2の調製工程中の乾燥は25℃を超える温度かつ好ましくは大気圧より低い圧力で行う。
【0052】
第1の調製工程の含浸および好ましくはさらに乾燥は25℃を超える温度かつ好ましくは大気圧より低い圧力で行ってもよい。キャリア液体は上記したように好ましくは水であるが、このキャリア液体中の有機コバルト化合物の混合物の十分な量を用いて、混合物の容量が担持体の孔容積を(典型的には約30%)超えるようにしてもよい。担持体を有機コバルト塩とキャリア液体との混合物に接触させた後、濡れた含浸担持体を大気圧より低い圧力で40℃から120℃の範囲の温度、典型的には約100℃でゆっくりと乾燥させてもよい。最終圧力は典型的には50から120ミリバール(mbar(a))の範囲であり、典型的には約80ミリバールである。
【0053】
第1の調製工程では、担持体と有機コバルト化合物の溶液とにより形成したスラリーを用いてスラリー相含浸により含浸を行ってもよい。好ましくは有機コバルト化合物の溶液は水溶液である。
【0054】
第2の調製工程中、第1の調製工程の焼成中間生成物に対して、焼成中間生成物粒子とキャリア液体(好ましくは、水)中の無機コバルト塩の溶液とにより形成したスラリーを用いてスラリー相含浸により含浸を行ってもよい。ここでも概して、含浸および好ましくは乾燥を25℃を超える温度および/または大気圧より低い圧力で行ってもよい。
【0055】
あるいは第1および/または第2の調製工程中の含浸は、担持体または焼成中間生成物粒子の孔を充填するのに十分な含浸溶液を用いて初期湿潤含浸によって行ってもよい。含浸担持体または中間生成物は25℃を超える温度で、必要であれば大気圧より低い圧力で、乾燥させてもよい。空気または窒素などの気体流下では大気圧で乾燥させてもよい。
【0056】
十分な有機コバルト化合物および無機コバルト塩を用いて、得られる触媒前駆体が担持体100g当たり5gのCoと担持体100g当たり70gのCoの間の量のCo、好ましくは、担持体100g当たり15gのCoと担持体100g当たり40gのCoの間の量のCoを含むようにしてもよい。
【0057】
さらに、触媒担持体上または触媒担持体中にドーパントを導入してもよい。ドーパントが存在する場合、ドーパントは活性触媒成分の還元率を高めることができるものであることが好ましい。ドーパントは、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)およびこれらのうち1種以上の混合物からなる群より選択される金属の化合物であるドーパント化合物として導入してもよい。ドーパント化合物は好ましくは無機塩であり、好ましくは水溶性である。ドーパントの金属(特にパラジウムまたはプラチナ)の、活性成分金属(特にコバルト)に対する質量割合は0.01:100から3:100であってもよい。
【0058】
触媒前駆体中の窒素含有率は1質量%未満であってもよく、好ましくは0.5質量%未満である。
【0059】
焼成は好ましくは25℃を超える温度で行う。25℃を超えると、含浸コバルト化合物および塩が分解するか、および/または酸素と反応する。従って焼成は、酸化条件下で行うのが好ましい。例えば硝酸コバルトを、CoO、CoO(OH)、CO34、CO23またはこれらのうち1種以上の混合物から選択された化合物に変換してもよい。
【0060】
第1および第2の調製工程の焼成は典型的には、流動床または回転炉内で行う。第1の調製工程中、少なくとも一部が乾燥した含浸担持体を、空気/窒素混合物を用いて焼成してもよい。この気体混合物の酸素含有率は0.01%から20%(容量比)の範囲であってもよく、好ましくは0.5%から20%(容量比)の範囲である。焼成温度は95℃より高くてもよく、好ましくは120℃よりも高くてもよく、より好ましくは200℃よりも高くてもよいが、400℃を超えないことが好ましい。従って焼成温度は250℃から400℃であってもよく、好ましくは280℃から330℃である。温度は通常、周囲温度、典型的には25℃、から250℃〜400℃の範囲まで、毎分0.1℃から10℃までの速度、好ましくは毎分0.5℃から3℃までの速度で上昇させる。焼成中、酸素濃度を一定に維持してもよいし、低濃度(すなわち0.5〜2容量%)から高濃度(すなわち10〜20容量%)に上昇させてもよい。酸素濃度の上昇は温度上昇中に行ってもよいし、最終温度(250℃〜400℃)でのホールド時間に行ってもよい。焼成中のGHSVは通常100から3000h-1の範囲であり、典型的には約2000h-1である。
【0061】
第2の調製工程中、少なくとも一部が乾燥した含浸担持体を、空気中で焼成してもよい。その場合、焼成中の温度は200℃から350℃であってもよい。温度は通常、周囲温度、典型的には25℃、から200℃〜350℃の範囲まで、毎分0.1℃から10℃までの速度、好ましくは毎分0.5℃から3℃までの速度で上昇させる。焼成中のGHSVは通常100から3000h-1範囲であり、典型的には約2000h-1である。より特定すると、第2の調製工程中の焼成条件は、触媒前駆体において実質的にすべての還元可能コバルトが焼成状態で存在するように選択してもよい。
【0062】
第1および/または第2の調製工程中の焼成は、以下の基準に則した加熱速度および空間速度を用いて実行してもよい。
(i)加熱速度が≦1℃/分であるとき、空間速度は少なくとも0.76mn3/(kgCo(NO32・6H2O)/時であり、
(ii)加熱速度が1℃/分より高いとき、空間速度は以下の関係を満たす:
log(空間速度)≧log0.76+(log20−log0.76)/2 log(加熱速度)
【0063】
さらに上記したように、有機金属化合物の金属と無機金属塩の金属とは同一であってもよく、コバルトまたはニッケルであってもよい。ニッケルは特に、本発明に従って水素化触媒前駆体を調製するのに適している。
【0064】
従って本発明の第2の実施形態では、触媒前駆体は、有機化合物の水素化に適した水素化触媒前駆体であってもよい。その場合、より具体的には、触媒前駆体は芳香族またはアルデヒド水素化触媒前駆体または水素化脱塩素触媒前駆体であってもよい。その場合、例えば触媒前駆体は、アルコール合成触媒前駆体であってもよい。
【0065】
水素処理触媒前駆体がコバルトベースである場合、上記したコバルトベースのフィッシャー・トロプシュ合成触媒前駆体と同じ様式で形成することができる。
【0066】
本発明の第2の局面によると、本発明の第1の局面の方法によって得られた触媒前駆体を還元することにより触媒を得ることを含む、触媒の調製方法が提供される。
【0067】
上記のように触媒前駆体がコバルトベースのフィッシャー・トロプシュ合成触媒前駆体である場合、触媒は必然的にフィッシャー・トロプシュ合成触媒である。
【0068】
上記のように触媒前駆体が水素化触媒前駆体である場合、触媒は必然的に水素化触媒である。その場合、水素化触媒は、油性化学物質(脂肪質材料:油脂、脂肪酸および脂肪ニトリル、アルコールおよびアルデヒドなどの誘導体);留出物、樹脂などの石油留分;ニトロ化合物;オレフィン;ジオレフィン;および芳香族化合物などの有機化合物の水素化に用いることができる。
【0069】
より特定すると水素化触媒は、高い選択性を維持することが重要であるファインケミカルの生成に非常にうまく適用することができる。本発明に従って調製したニッケルベースの触媒が触媒作用を提供することができる反応の例は、水素化、水素化脱塩素などである。
【0070】
水素化脱塩素反応において、本発明の水素化触媒はシステム中の水素の量と水素/HCl分圧とを非常に慎重に制御することを可能にし、それによって反応の選択性を実質的に高める。
【0071】
触媒前駆体は、触媒前駆体を純粋水素または水素含有気体混合物と接触させることにより還元によって活性化させてもよい。気体混合物は、水素および活性触媒に対して不活性な1以上の不活性気体からなってもよい。気体混合物は好ましくは、少なくとも90容量%水素を含む。還元は250℃から550℃、好ましくは、約300℃から約425℃の範囲の温度で、0.5時間から約24時間に亘って周囲圧力から約40気圧の圧力で行ってもよい。
【0072】
本発明の第3の局面によると、本発明の第2の局面の方法を用いて触媒を調製することと、100℃を超える温度かつ少なくとも10バールの圧力で上記調製した触媒を用いて水素を一酸化炭素に接触させることにより、炭化水素および必要に応じて炭化水素の酸素処理物を生成することとを含む炭化水素合成方法が提供される。
【0073】
温度は180℃から250℃であってもよく、より好ましくは210℃から240℃であってもよい。圧力はより好ましくは、10バールから40バールであってもよい。
【0074】
好ましくは炭化水素合成方法は、フィッシャー・トロプシュ方法であり、より好ましくは3相フィッシャー・トロプシュ方法であり、さらに好ましくはワックス生成物を生成するスラリー床フィッシャー・トロプシュ方法である。
【0075】
炭化水素合成方法はさらに、炭化水素および必要に応じて酸素処理物を液体燃料および/または化学物質に変換する水素化処理工程を含んでもよい。
【0076】
本発明はさらに本発明の第3の局面の炭化水素合成方法によって生成された生成物もその範囲に含む。
【0077】
本発明の第4の局面によると、本発明の第2の局面の方法を用いて触媒を調製することと、上記調製した触媒を用いて水素と有機化合物とを接触させることにより有機化合物を水素化することとを含む水素化方法が提供される。
【0078】
本発明はさらに本発明の第4の局面の水素化方法によって生成された生成物もその範囲に含む。
【発明を実施するための形態】
【0079】
(実施例)
本発明を以下の実施例を参照してより詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限られない。
【0080】
(実施例1−比較例触媒Aの調製)
水性スラリー相含浸および乾燥を行い、その後空気中で直接流動床焼成を行うことによって、30g Co/0.075g Pt/100g(1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150)スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒子改質した1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150(商標)予備整形担持体上に調製した。
【0081】
この調製は、2つの含浸・焼成工程により行い、いずれの工程でも無機コバルト化合物を用いた。
【0082】
具体的には、触媒は以下のように調製した。
Co(NO32・6H2O 43.70gを蒸留水40mlに溶解し、得られた溶液にPt(NH34・(NO32 0.024g(蒸留水10mlに溶解)を添加し、その後、1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150で改質した予備整形担持体50.0gを上記溶液に添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.7dm3n/分の連続空気流を用いて流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。この中間生成物焼成材料50.0gに対し、以下の第2のコバルト/プラチナ含浸・焼成工程を行った。Co(NO32・6H2O 23.51gを蒸留水40mlに溶解し、得られた溶液にPt(NH34・(NO32 0.039g(蒸留水10mlに溶解)を添加し、第1のコバルト/プラチナ含浸・焼成後の中間生成物50.0gを添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.7dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0083】
実験室スケールのスラリー相連続攪拌タンクリアクタ(「CSTR」)フィッシャー・トロプシュ合成(FTS)ランの準備のために、この焼成材料を以下の手順で還元し、ワックスでコーティングした。触媒10gを1バールの純粋H2(空間速度=2000mln2/g 触媒/時)中において、温度を25℃から425℃まで毎分1℃の加熱速度で上昇させ、その後425℃で16時間保持しながら還元した。還元した触媒を室温まで冷却し、その段階で水素をアルゴンで置換し、アルゴンブランケットの保護下において、溶解したフィッシャー・トロプシュワックス中に触媒をアンロードした。その後、このワックスコーティングした触媒をスラリーリアクタに移送した。
【0084】
(実施例2−本発明による触媒Bの調製)
連続2工程の水性スラリー相調製と乾燥とを行い、その後空気/窒素混合物中で直接流動床焼成を行うことによって、24g Co/0.011g Pd/0.061g Pt/100g(1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150)スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒子改質した1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150(商標)予備整形担持体上に調製した。
【0085】
この調製は、2調製工程によって行った。第1の調製工程は、有機コバルト化合物による1含浸工程を含み、第2の調製工程は、無機コバルト化合物による1含浸工程を含んだ。
【0086】
具体的には、触媒は以下のように調製した。
(含浸溶液1の調製)
クエン酸溶液中に水酸化コバルトを水/クエン酸/水酸化コバルトの重量比が1/1/0.44となるように溶解することにより、コバルト125g/lを含む濃度1.3g/lのクエン酸アンモニウムコバルト溶液を調製した。水酸化コバルトが完全に溶解した後、アンモニアを用いて溶液のpHを7に調整した。得られた溶液に、硝酸パラジウムテトラミンを添加して、最終溶液のパラジウム:コバルトの重量比を0.0015:1とした。
【0087】
(含浸/焼成工程1)
1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150で改質した予備整形担持体50.0gに含浸溶液1 39.6gを添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。
【0088】
乾燥した含浸担持体は、流動床リアクタ内で、2dm3n/分の窒素流中の1.6%(容量比)酸素中において、毎分2℃の加熱速度で300℃まで加熱することにより焼成した。この条件下で、有機体の燃焼により得られた発熱は約40℃であった。燃焼が開始されるとすぐに気体入口の温度を低下させ300〜310℃の反応温度となるように調整した。燃焼相は3.5時間かかり、その後焼成が完了したとした。
【0089】
(含浸/焼成工程2)
含浸/焼成工程1で得た中間生成物焼成材料50.0gに対して、以下の第2のコバルト/プラチナ含浸・焼成工程を行った。
Co(NO32・6H2O 37.04gを蒸留水25mlに溶解し、得られた溶液にPt(NH34・(NO32 0.056g(蒸留水10mlに溶解)を添加した。その後、第1のコバルト/パラジウム含浸・焼成後の中間生成物50.0gを添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.6dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0090】
触媒前駆体(すなわち第2の含浸・焼成後)を活性化/還元して触媒を得た。この際、実施例1に記載の手順を用いたが、最終還元温度は375℃とした。
【0091】
(実施例3−本発明による触媒Cの調製)
連続2工程の水性スラリー相含浸と乾燥とを行い、その後空気/窒素混合物中で直接流動床焼成を行うことによって、24g Co/0.072g Pt/100g(1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150)スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒子改質した1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150(商標)予備整形担持体上に調製した。
【0092】
この調製は、2調製工程によって行った。第1の調製工程は、有機コバルト化合物による1含浸工程を含み、第2の調製工程は、無機コバルト化合物による1含浸工程を含んだ。
【0093】
触媒Cの調製は、含浸溶液1の調製以外は触媒Bと全く同じに行った。
【0094】
実施例3では含浸溶液1の調製は以下のように行った。
クエン酸溶液中に水酸化コバルトを水/クエン酸/水酸化コバルトの重量比が1/1/0.44となるように溶解することにより、コバルト125g/lを含むクエン酸アンモニウムコバルト溶液を調製した。水酸化コバルトが完全に溶解した後、アンモニアを用いて溶液のpHをpH7に調整した。得られた溶液に、硝酸プラチナテトラミンを添加して、最終溶液のプラチナ:コバルトの重量比を0.0015:1とした。
【0095】
触媒A、BおよびCすべてについて、スラリー相CSTRを用いてフィッシャー・トロプシュ合成性能をテストした。以下のフィッシャー・トロプシュ合成反応条件を維持した。
リアクタ温度:230℃
リアクタ圧力:15バール
触媒インベントリ(inventory):ca.10グラム
(H2+CO)変換:60%
2:CO含有率:1.6:1
アルゴン内部標準:15容量%
【0096】
すべてのFT条件は同じであるため、相対FT活性は各触媒のFT活性を変換されたCOモル/g catalys/sとして計算することにより判定し、触媒Aにする相対FT活性とした。
【0097】
触媒BおよびCは、本発明に従って第1の含浸でクエン酸コバルトを用い、第2の含浸で硝酸コバルトを用いて調製したものであり、第1および第2の含浸共硝酸コバルトを用いて上記の反応条件で調製した比較例触媒Aに比べて、コバルト担持率は15%低く、活性はそれぞれ27%および30%高かった。
【0098】
本発明に従って調製した触媒BおよびCは、従来法により硝酸コバルトのみで含浸して調製した触媒Aに比べて、コバルト結晶子は小さく、その分散率は大幅に高かった。このように改良した分散をXRD結晶子サイズ測定により測定し、結果を表1に示す。
【0099】
(表1)
表1:触媒A、BおよびCのコバルト含有率、酸化コバルト結晶子サイズ、およびフィッシャー・トロプシュ(FT)相対活性

【0100】
XRDによって測定した酸化コバルトの平均結晶子サイズは、触媒Aが15nmであり、触媒BおよびCの酸化コバルトの結晶子は大幅に小さかった。
【0101】
(実施例4−本発明による触媒Dの調製)
連続2工程の水性スラリー相調製と乾燥とを行い、その後空気/窒素混合物中で直接流動床焼成を行うことによって、18g Co/0.011g Pd/0.061g Pt/100g(1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150)スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒子改質した1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150(商標)予備整形担持体上に調製した。
【0102】
この調製は、2調製工程によって行った。第1の調製工程は、有機コバルト化合物による1含浸工程を含み、第2の調製工程は、無機コバルト化合物による1含浸工程を含んだ。
【0103】
具体的には、触媒は以下のように調製した。
【0104】
(含浸溶液1の調製)
EDTA溶液中に水酸化コバルトを水/EDTA/水酸化コバルトの重量比が1/1/0.25となるように溶解することにより、コバルト71.4g/lを含むEDTAアンモニウムコバルト溶液を調製した。水酸化コバルトが完全に溶解した後、アンモニアを用いて溶液のpHを7に調整した。得られた溶液に、硝酸パラジウムテトラミンを添加して、最終溶液のパラジウム:コバルトの重量比を0.0015:1とした。
【0105】
(含浸/焼成工程1)
1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150で改質した予備整形担持体50.0gに含浸溶液1 64.6gを添加し、真空乾燥を行った。
【0106】
乾燥した含浸担持体は、流動床リアクタ内で、2dm3n/分の窒素流中の1.6%(容量比)酸素中において、毎分2℃の加熱速度で330℃まで加熱することにより焼成した。この条件下で、有機体の燃焼により得られた発熱は約20℃であった。燃焼が開始されるとすぐに気体入口の温度を低下させ300〜330℃の反応温度となるように調整した。燃焼相は5時間かかり、その後焼成が完了したとした。
【0107】
(含浸/焼成工程2)
コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物材料に対して、以下の第2のコバルト含浸・焼成工程を行った。
コバルト含有率142.5g/l、Pt含有率0.21g/ml、濃度1.34g/ml、pH2.8(アンモニアによって調整)を有するCo(NO32・6H2OおよびPt(NH34・(NO32の水溶液49.5を、コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物35.0gに添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.6dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0108】
触媒前駆体(すなわち第2の含浸・焼成後)を活性化/還元して触媒を得た。この際、実施例1に記載の手順を用いたが、最終還元温度は375℃とした。
【0109】
(実施例5−本発明による触媒Eの調製)
連続2工程の水性スラリー相調製と乾燥とを行い、その後空気/窒素混合物中で直接流動床焼成を行うことによって、18g Co/0.011g Pd/0.061g Pt/100g(酸化チタン(IV))スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、酸化チタン(IV)担持体上に調製した。
【0110】
この調製は、2調製工程によって行った。第1の調製工程は、有機コバルト化合物による1含浸工程を含み、第2の調製工程は、無機コバルト化合物による1含浸工程を含んだ。
【0111】
具体的には、触媒は以下のように調製した。
【0112】
(含浸溶液1の調製)
クエン酸溶液中に水酸化コバルトを水/クエン酸/水酸化コバルトの重量比が1/1/0.44となるように溶解することにより、コバルト127g/lを含むクエン酸アンモニウムコバルト溶液を調製した。水酸化コバルトが完全に溶解した後、アンモニアを用いて溶液のpHを7に調整した。得られた溶液に、硝酸パラジウムテトラミンを添加して、最終溶液のパラジウム:コバルトの重量比を0.0015:1とした。
(含浸/焼成工程1)
酸化チタン(IV)担持体50.0gに含浸溶液1 39.1gを添加し、真空乾燥を行った。
【0113】
乾燥した含浸担持体は、流動床リアクタ内で、2dm3n/分の窒素流中の1.6%(容量比)酸素中において、毎分2℃の加熱速度で300℃まで加熱することにより焼成した。この条件下で、有機体の燃焼により得られた発熱は約30℃であった。燃焼が開始されるとすぐに気体入口の温度を低下させ300〜310℃の反応温度となるように調整した。燃焼相は3.5時間かかり、その後焼成が完了したとした。
【0114】
(含浸/焼成工程2)
コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物材料に対して、以下の第2のコバルト含浸・焼成工程を行った。
コバルト含有率139.4g/l、Pt含有率0.21g/ml、濃度1.34g/ml、pH2.9(アンモニアによって調整)を有するCo(NO32・6H2OおよびPt(NH34・(NO32の水溶液36.1を、コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物25.0gに添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.6dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0115】
触媒前駆体(すなわち第2の含浸・焼成後)を活性化/還元して触媒を得た。この際、実施例1に記載の手順を用いたが、最終還元温度は375℃とした。
【0116】
(実施例6−比較例触媒Fの調製)
連続2工程の水性スラリー相調製と乾燥とを行い、その後空気中で直接流動床焼成を行うことによって、21g Co/0.075g Pt/100g(酸化チタン(IV))スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、酸化チタン(IV)担持体上に調製した。
【0117】
この調製は、2つの含浸・焼成工程により行い、いずれの工程でも無機コバルト化合物を用いた。
【0118】
具体的には、触媒は以下のように調製した。
【0119】
(含浸/焼成工程1)
コバルト含有率151.5g/l、Pt含有率0.07g/ml、濃度1.37g/ml、pH2.7(アンモニアによって調整)を有するCo(NO32・6H2OおよびPt(NH34・(NO32の水溶液74.1と水10gとを、酸化チタン(IV)50.0gに添加し、真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物担持体に対して、1.6dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0120】
(含浸/焼成工程2)
コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物材料に対して、以下の第2のコバルト含浸・焼成工程を行った。
コバルト含有率140.3g/l、Pt含有率0.21g/ml、濃度1.34g/ml、pH2.6(アンモニアによって調整)を有するCo(NO32・6H2OおよびPt(NH34・(NO32の水溶液30gを、コバルト/プラチナ含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物30.6gに添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.6dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0121】
触媒前駆体(すなわち第2の含浸・焼成後)を活性化/還元して触媒を得た。この際、実施例1に記載の手順を用いたが、最終還元温度は375℃とした。
【0122】
(実施例7−本発明による触媒Gの調製)
連続2工程の水性スラリー相調製と乾燥とを行い、その後空気/窒素混合物中で直接流動床焼成を行うことによって、18g Co/0.011g Pd/0.061g Pt/100g(二酸化シリコン)スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、二酸化シリコン担持体上に調製した。
【0123】
この調製は、2調製工程によって行った。第1の調製工程は、有機コバルト化合物による1含浸工程を含み、第2の調製工程は、無機コバルト化合物による1含浸工程を含んだ。
【0124】
具体的には、触媒は以下のように調製した。
【0125】
(含浸/焼成工程1)
実施例5で得られた含浸溶液1(触媒E)39.1gと水40gとを、二酸化シリコン担持体50.0gに添加し、真空乾燥を行った。
【0126】
乾燥した含浸担持体は、流動床リアクタ内で、2dm3n/分の窒素流中の1.6%(容量比)酸素中において、毎分2℃の加熱速度で300℃まで加熱することにより焼成した。この条件下で、有機体の燃焼により得られた発熱は約30℃であった。燃焼が開始されるとすぐに気体入口の温度を低下させ300〜310℃の反応温度となるように調整した。燃焼相は3.5時間かかり、その後焼成が完了したとした。
【0127】
(含浸/焼成工程2)
コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物材料に対して、以下の第2のコバルト含浸・焼成工程を行った。
コバルト含有率139.4g/l、Pt含有率0.21g/ml、濃度1.34g/ml、pH2.9(アンモニアによって調整)を有するCo(NO32・6H2OおよびPt(NH34・(NO32の水溶液28.9gと水10gとを、コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物20.0gに添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.6dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0128】
触媒前駆体(すなわち第2の含浸・焼成後)を活性化/還元して触媒を得た。この際、実施例1に記載の手順を用いたが、最終還元温度は375℃とした。
【0129】
触媒D、E、FおよびGについて、コバルト含有率および酸化コバルト結晶子サイズを分析した。結果を表2に示す。
【0130】
(表2)
表2:触媒D、E、FおよびGのコバルト含有率および酸化コバルト結晶子サイズ

【0131】
触媒Dは第1の含浸工程で、触媒Bの調製で用いたもの(クエン酸コバルト)とは異なる有機前駆体(EDTAコバルト)を用いて調製したが、触媒Dも従来法により硝酸コバルトのみで含浸して調製した触媒Aに比べて、コバルト結晶子の良好な分散を示した。
【0132】
触媒EおよびGは本発明に従って、異なる担持体(TiO2、SiO2)上に調製したが、従来法により硝酸コバルトのみで含浸して調製した比較例触媒Fに比べて、コバルト結晶子は小さく、その分散率は大幅に高かった。このように改良した分散をXRD結晶子サイズ測定により測定し、結果を表2に示す。
【0133】
(実施例8−本発明による触媒Hの調製)
連続工程の水性スラリー相調製と乾燥とを行い、その後空気/窒素混合物中で直接流動床焼成を行うことによって、23g Co/0.00375g Pd/0.075g Pt/100g(1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150)スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒子改質した1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150(商標)予備整形担持体上に調製した。
【0134】
この調製は、2調製工程によって行った。第1の調製工程は有機コバルト化合物を用い、第2の調製工程は無機コバルト化合物を用いた。第2の調製工程における無機コバルト化合物による含浸は1度反復した(すなわち含浸2aおよび2b)。
【0135】
具体的には、触媒は以下のように調製した。
【0136】
(含浸溶液1の調製)
クエン酸溶液中に水酸化コバルトを水/クエン酸/水酸化コバルトの重量比が1/1/0.44となるように溶解することにより、コバルト125g/lを含むクエン酸アンモニウムコバルト溶液を調製した。水酸化コバルトが完全に溶解した後、アンモニアを用いて溶液のpHを7に調整した。得られた溶液に、硝酸パラジウムテトラミンを添加して、最終溶液のパラジウム:コバルトの重量比を0.0015:1とした。
【0137】
(含浸/焼成工程1)
1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150で改質した予備整形担持体50.0gに含浸溶液1 13.0gと水40gとを添加し、真空乾燥を行った。
【0138】
乾燥した含浸担持体は、流動床リアクタ内で、2dm3n/分の窒素流中の1.6%(容量比)酸素中において、毎分2℃の加熱速度で300℃まで加熱することにより焼成した。この条件下で、有機体の燃焼により得られた発熱は約30℃であった。燃焼が開始されるとすぐに気体入口の温度を低下させ300〜310℃の反応温度となるように調整した。燃焼相は2時間かかり、その後焼成が完了したとした。
【0139】
(含浸/焼成工程2a)
コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物材料に対して、以下の第2のコバルト含浸・焼成工程を行った。
コバルト含有率151g/l、Pt含有率0.21g/ml、濃度1.37g/ml、pH2.7(アンモニアによって調整)を有するCo(NO32・6H2OおよびPt(NH34・(NO32の水溶液59.4gを、コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物40.0gに添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.6dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0140】
(含浸/焼成工程2b)
コバルト/パラジウム/プラチナ含浸・焼成を行った工程2a後の中間生成物材料に対して、以下のコバルト含浸・焼成工程を行った。
コバルト含有率139g/l、Pt含有率0.53g/ml、濃度1.34g/ml、pH2.9(アンモニアによって調整)を有するCo(NO32・6H2OおよびPt(NH34・(NO32の水溶液40.9gを、コバルト/パラジウム/プラチナ含浸・焼成を行った工程2a後の中間生成物40.0gに添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.6dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0141】
触媒前駆体(すなわち最終の含浸・焼成後)を活性化/還元して触媒を得た。この際、実施例1に記載の手順を用いたが、最終還元温度は375℃とした。
【0142】
(実施例9−本発明による触媒Iの調製)
連続3工程の水性スラリー相調製と乾燥とを行い、その後空気/窒素混合物中で直接流動床焼成を行うことによって、18g Co/0.011g Pd/0.023g Pt/100g(1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150)スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒子改質した1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150(商標)予備整形担持体上に調製した。
【0143】
この調製は、2調製工程によって行った。第1の調製工程は有機コバルト化合物を用い、第2の調製工程は無機コバルト化合物を用いた。第1の調製工程における有機コバルト化合物による含浸は1度反復した(すなわち含浸1aおよび1b)。
【0144】
具体的には、触媒は以下のように調製した。
【0145】
(含浸溶液1の調製)
クエン酸溶液中に水酸化コバルトを水/クエン酸/水酸化コバルトの重量比が1/1/0.44となるように溶解することにより、コバルト125g/lを含むクエン酸アンモニウムコバルト溶液を調製した。水酸化コバルトが完全に溶解した後、アンモニアを用いて溶液のpHを7に調整した。得られた溶液に、硝酸パラジウムテトラミンを添加して、最終溶液のパラジウム:コバルトの重量比を0.0015:1とした。
【0146】
(含浸/焼成工程1a)
1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150で改質した予備整形担持体50.0gに含浸溶液1 13.0gと水40gとを添加し、真空乾燥を行った。
【0147】
乾燥した含浸担持体は、流動床リアクタ内で、2dm3n/分の窒素流中の1.6%(容量比)酸素中において、毎分2℃の加熱速度で300℃まで加熱することにより焼成した。この条件下で、有機体の燃焼により得られた発熱は約30℃であった。燃焼が開始されるとすぐに気体入口の温度を低下させ300〜310℃の反応温度となるように調整した。燃焼相は2時間かかり、その後焼成が完了したとした。
【0148】
(含浸/焼成工程1b)
コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物40.0gに、含浸溶液1 20.8gを添加し、真空乾燥を行った。
【0149】
乾燥した含浸担持体は、流動床リアクタ内で、2dm3n/分の窒素流中の1.6%(容量比)酸素中において、毎分2℃の加熱速度で300℃まで加熱することにより焼成した。この条件下で、有機体の燃焼により得られた発熱は約30℃であった。燃焼が開始されるとすぐに気体入口の温度を低下させ300〜310℃の反応温度となるように調整した。燃焼相は3.5時間かかり、その後焼成が完了したとした。
【0150】
(含浸/焼成工程2)
コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程2後の中間生成物材料に対して、以下の第3のコバルト含浸・焼成工程を行った。
コバルト含有率143g/l、Pt含有率0.54g/ml、濃度1.34g/ml、pH2.8(アンモニアによって調整)を有するCo(NO32・6H2OおよびPt(NH34・(NO32の水溶液42.4gを、コバルト/パラジウム含浸・焼成を行った工程2後の中間生成物30.0gに添加した。
【0151】
水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.6dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0152】
触媒前駆体(すなわち最終の含浸・焼成後)を活性化/還元して触媒を得た。この際、実施例1に記載の手順を用いたが、最終還元温度は375℃とした。
【0153】
触媒HおよびIについて、上記の触媒A、BおよびCと全く同じベースでフィッシャー・トロプシュ合成性能をテストした。結果を表3に示す。
【0154】
(表3)
表3:触媒A、HおよびIのコバルト含有率、酸化コバルト結晶子サイズ、およびフィッシャー・トロプシュ(FT)相対活性

【0155】
驚くべきことに、第1の調製工程で有機コバルト化合物/錯体を用いて、その後第2の調製工程でコバルト塩を用いて含浸を行った場合、上昇したフィッシャー・トロプシュ活性を有する触媒が得られることが判明した。これは、コバルト(金属および/または酸化物)の高分散化および同時に望ましいコバルトの高担持率化(loading)によるものであると考えるのが最も妥当である。
【0156】
従って本発明は、フィッシャー・トロプシュ触媒を調製する公知の方法に関連する問題点を克服する。他方、多くのフィッシャー・トロプシュ合成反応ではコバルト担持率が低いと所望の高活性は提供されないが、本発明では低金属担持率を用いた場合に触媒担持体上でのコバルトの高分散性を達成することができる。これまでコバルト担持率の上昇を試みた場合、金属の分散性は許容できないレベルまで低下するすることが多かった。本発明の方法では驚くべきことにこの問題が回避された。
【0157】
(実施例10−本発明による触媒Jの調製)
連続2工程のスラリー相調製と乾燥とを行い、その後空気中で直接流動床焼成を行うことによって、26g Co/0.075Pt/100g(1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150)スラリー相フィッシャー・トロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒子改質した1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150(商標)予備整形担持体上に調製した。
【0158】
この調製は、2調製工程によって行った。第1の調製工程は、有機コバルト化合物と有機溶媒とによる1含浸工程を含み、第2の調製工程は、無機コバルト化合物と溶媒としての水とによる1含浸工程を含んだ。
【0159】
具体的には、触媒は以下のように調製した。
【0160】
(含浸/焼成工程1)
Co(acac)2(すなわちコバルトアセチルアセトネート;Co(C5722) 43gとPt(NH34・(NO32 0.049gとを、トルエン120mlに溶解した。その後、得られた溶液に、1.5g Si/100g Puralox SCCa 2/150で改質した予備整形担持体100グラムを添加した。有機スラリー相含浸および真空乾燥を行った。
【0161】
この真空乾燥中間生成物に対して、1.7dm3n/分の連続空気流を用いて流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0162】
(含浸/焼成工程2)
中間生成物焼成材料100gに対して、以下の第2のコバルト/プラチナ含浸・焼成工程を行った。Co(NO32・6H2O 69.5gを蒸留水100mlに溶解し、得られた溶液にPt(NH34・(NO32 0.087g(蒸留水10mlに溶解)を添加し、その後コバルト/プラチナ含浸・焼成を行った工程1後の中間生成物100gを添加した。水性スラリー相含浸および真空乾燥を行った。この真空乾燥中間生成物に対して、1.7dm3n/分の連続空気流を用い、以下の手順で流動床焼成工程を直接行った。この間、温度を25℃から250℃まで毎分1℃ずつ上昇させ、250℃で6時間保持した。
【0163】
触媒前駆体(すなわち第2の含浸・焼成後)を活性化/還元して触媒を得た。この際、実施例1に記載の手順と同じ手順を用いた。
【0164】
(表4)
表4:触媒A、B、CおよびJのコバルト含有率および酸化コバルト結晶子サイズ

【0165】
(実施例11)
(脂肪酸の水素化)
油脂性脂肪酸(ヨウ素価50.6)150gを水素化することにより、触媒Bの水素化性能を判定した。予備還元したコバルト触媒約830mgを用い、リアクタ中のコバルト含有率が0.1重量%となるように、300mlオートクレーブ内で触媒ランを行った。反応は、水素圧20バール、温度200℃、攪拌速度1600rpmで行った。
【0166】
水素の消費を4時間に亘ってモニタリングした。さらに、A.O.C.S.Official Method Cd1−25(1990)に記載のWijs法を用いて最終ヨウ素価を測定した。
【0167】
触媒は4時間後、脂肪酸サンプルの56%を変換することができた。その結果、最終ヨウ素価は22.5となった。
【0168】
結果を表4に示す。
【0169】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒前駆体の調製方法であって、
第1の調製工程において、粒子状触媒担持体にキャリア液体中の有機金属化合物を含浸させることによって含浸中間生成物を形成し、前記含浸中間生成物を焼成することによって焼成中間生成物を得る工程であって、前記有機金属化合物の金属は活性触媒成分である工程と、
その後第2の調製工程において、前記第1の調製工程で得られた前記焼成中間生成物にキャリア液体中の無機金属塩を含浸させることによって含浸担持体を得、前記含浸担持体を焼成することによって前記触媒前駆体を得る工程であって、前記無機金属塩の金属は活性触媒成分である工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記第2の調製工程で用いた前記無機金属塩は第1の含浸工程には存在せず、前記第1の調製工程の前記有機金属化合物は前記第2の調製工程には存在しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の調製工程の前記含浸中間生成物の少なくとも一部を、前記焼成前に乾燥させ、および/または前記第2の調製工程の前記含浸担持体の少なくとも一部を、前記焼成前に乾燥させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の調製工程において、前記有機金属化合物による前記含浸、前記含浸中間生成物の前記少なくとも一部の乾燥、および前記少なくとも一部乾燥した含浸中間生成物の焼成を少なくとも1度反復することにより、前記焼成中間生成物中の金属担持率を高めることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の調製工程において、前記無機金属塩による前記含浸、前記含浸担持体の前記少なくとも一部の乾燥、および前記少なくとも一部乾燥した含浸担持体の焼成を少なくとも1度反復することにより、前記触媒前駆体中の金属担持率を高めることを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機金属化合物の前記金属および前記無機金属塩の前記金属はコバルトである、請求項1から5のいずれかひとつに記載の方法。
【請求項7】
前記第2の調製工程の前記無機コバルト塩はCo(NO32・6H2Oであり、前記Co(NO32・6H2Oは前記キャリア液体としての水中に溶解している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の調製工程の前記有機コバルト化合物は、必要に応じて対イオン源の存在下でコバルト化合物を有機酸と反応させることによって得られたものである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の調製工程の前記有機コバルト化合物に関して、前記有機酸は、クエン酸(C687)、コハク酸(C464)、蓚酸(C224)、酢酸(C242)、グルコン酸(C6127)およびEDTAから選択され、前記コバルト化合物は水酸化コバルトであり、前記対イオン源が存在するとき前記対イオン源はアンモニアである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の調製工程の前記有機コバルト化合物は、コバルト化合物とアセチルアセトン(C582)との反応によって得られたものである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の調製工程の前記有機コバルト化合物は、クエン酸アンモニウムコバルトである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項12】
前記有機コバルト化合物は、前記キャリア液体としての水中に溶解している、請求項6から11のいずれかひとつに記載の方法。
【請求項13】
前記第1および第2の調製工程中の前記含浸および乾燥を、25℃を超える温度かつ大気圧より低い圧力で行い、それによって前記無機コバルト塩および前記有機コバルト化合物が容易に分解しない条件を提供する、請求項6から12のいずれかひとつに記載の方法。
【請求項14】
前記触媒前駆体は、コバルトベースのフィッシャー・トロプシュ合成触媒前駆体である、請求項6から13のいずれかひとつに記載の方法。
【請求項15】
前記触媒前駆体は、コバルトベースの水素化触媒前駆体である、請求項6から13のいずれかひとつに記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかひとつに記載の方法によって得られた触媒前駆体を還元することにより触媒を得ることを含む、触媒の調製方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法を用いて触媒を調製することと、100℃を超える温度かつ少なくとも10バールの圧力で前記調製した触媒を用いて水素を一酸化炭素に接触させることにより、炭化水素および必要に応じて炭化水素の酸素処理物を生成することとを含む、炭化水素合成方法。
【請求項18】
ワックス生成物を生成するスラリー床フィッシャー・トロプシュ方法である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記炭化水素および必要に応じて酸素処理物を液体燃料および/または化学物質に変換する水素化処理工程を含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17から19のいずれかひとつに記載の炭化水素合成方法によって生成された生成物。
【請求項21】
請求項16に記載の方法を用いて触媒を調製することと、前記調製した触媒を用いて水素と有機化合物とを接触させることにより前記有機化合物を水素化することとを含む、水素化方法。
【請求項22】
請求項21に記載の水素化方法によって生成された生成物。

【公表番号】特表2012−519063(P2012−519063A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551559(P2011−551559)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050783
【国際公開番号】WO2010/097754
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(500159211)サソール テクノロジー(プロプライエタリー)リミテッド (25)
【Fターム(参考)】