フィトクロムと相互結合作用する新規蛋白質及びこれの用途(NOVELPHYTOCHROME−INTERACTINGPROTEINANDAUSETHEREOF)
本発明はフィトクロムと相互結合する新規蛋白質及びこれの用途に関し、より詳しくは配列番号4で表示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド及びこれの用途に関するものである。本発明で提供するポリペプチドはフィトクロムA及びBと交叉相互結合し、前記相互結合にはそのN−末端に存在するTPRドメインが関与する。さらに、前記ポリペプチドのC−末端には、脱リン酸化酵素活性を担当するPP2A触媒ドメイン(PP2Ac)が存在する。本発明に伴うポリペプチドは脱リン酸化酵素として利用することができ、光信号伝達に敏感な植物体の製造に有用に利用できる。さらに、本発明のポリペプチド内に存在するTPRドメインは矮性植物体の製造に利用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィトクロム光信号伝達機構に関与する新規蛋白質及びこれの用途に関し、より詳しくはフィトクロムと相互結合作用する第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素及びこれの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
植物体等はそれらの光環境の状態を感知する為に、多様な光受容体を発達させてきた。光受容体(未確認UV-B受容体、UV-A/青色光スペクトル部位を感知するクリップトクロムとフォトトロフィン及び赤色光/遠赤色光スペクトル部位を感知するフィトクロム)等は植物の成長と発達を調節する遺伝子等に信号を媒介する(Fankhauser, C. & Chory, J. Curr. Biol., 9:R123-R126,1999; Neff, M. M., et al., Genes Dev., 14:257-271, 2000)。最近分子生物学及び生化学的研究技術と分子遺伝学的研究技術の発展のお陰で光受容体のみならず、光受容体より光反応遺伝子等の光信号の伝達に関与する多様な信号媒介体等に対する遺伝子究明と分子的クローニングがなされた(Quail, P. H.Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002; Gyula, P. et al., Curr. Opin. Plant Biol., 6:446-452, 2003)。
【0003】
フィトクロムは高等植物の成長及び発達の多様な面を調節する、その特性が最も良く研究された光受容体である。フィトクロムに照射される光のスペクトルによって、生物学的に不活性の赤色光吸収型フィトクロム(Pr)と生物学的に活性である遠赤色光吸収型フィトクロム(Pfr)間で相互互換性の光−転換(photo-conversion)が表れる。赤色光処理によるPfr形態への光−転換はフィトクロム自体の細胞質から核への移動(translocation)を開始し、遺伝子発現と発達に多面的効果を誘導する信号伝達経路(signal transduction pathway)を活性化させ、結果的に植物体の成長及び発達を調節するようになる(Quail, P. H. Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002; Fankhauser, C. & Chory, J. Curr. Biol., 9:R123-R126, 1999)。シロイヌナズナではphyA, phyB, phyC, phyD及びphyEで表示される5種のフィトクロムがあるものと報告されている(Neff, M. M., et al., Genes Dev., 14:257-271, 2000; Quail, P. H. Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002)。
【0004】
典型的なフィトクロムは大きさが約116-127kDaのアポプロテイン(apoprotein)とこれに共有結合で連結されるフィトクロモビリン(phytochromobillin)という線形テトラピロル光受容体(tetrapyrrole chromophore)で構成されている(Quail, P. H. Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002; Gyula, P. et al., Curr. Opin. Plant Biol., 6:446-452, 2003)。フィトクロムの光感知活性はPr型とPfr型間で可逆的な光−誘導相互転換(reversible light-induced interconversion)ができるその独特な能力による。フィトクロム分子の単量体(monomer)は光吸収体を固定させる球形のN−末端ドメイン(〜70kDa)、構造的に柔軟性を有するヒンジ部位(hinge region)を通じて連結されたC−末端ドメインで構成されている。前記N−末端ドメインが光を感知する機能を行う。さらに、構造的に開けたC−末端ドメイン(約55kDa)は信号伝達(signal transfer)に関与するものとして知られている(Quail, P. H. Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002; Gyula, P. et al., Curr. Opin. Plant Biol., 6:446-452, 2003)。前記C−末端ドメインは調節中心部位(regulatory core region)の周囲に1対のPer-Ant-Sim(PAS)モチーフを有している。前記PASモチーフは幾つかの感知蛋白質(sensory protein)において、蛋白質−蛋白質相互作用及びドメイン内コミュニケーション(inter-domain communication)に関与するものと知られている。組換え燕麦フィトクロムAを利用した分析を通じてフィトクロムのC−末端ドメインがセリン/トレオニン蛋白質リン酸化酵素(serine/threonine protein kinase)の活性を保有していることが報告されている(Yeh, K. C. & Lagarias, J. C. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13976-13981, 1998; Fankhauser, C. et al., Science, 284:1539-1541, 1999)。さらに、光吸収体により誘導されるフィトクロムの光−異性質化(photo-isomerization)は良く知られた動物の視覚受容体のロドプシン(rhodopsin)(Maeda, T. et al., Prog. Retin. Eye Res., 22:417-434, 2003; Vishnivetskiy, S. A. et al., J. Biol. Chem., 275:41049-41057, 2000)のように分子内でドメイン間コミュニケーションを通じて全体のフィトクロム分子に構造的変化を誘発させていることがスペクトル及び光化学的実験結果等を通じて提示された。さらに、フィトクロムの構造的変化の信号はフィトクロム分子内ドメイン間の相互作用により一層分化することができ、これはヒンジ部位のセリン残基において、可逆的なリン酸化/脱リン酸化(reversible phosphorylation/dephosphorylation)により調節されるものと推定されている。しかしながら、このような多くの信憑性のある結果にも拘らず、フィトクロムの光反応遺伝子等に光信号を伝達する具体的な機構は今までも完全に究明されていない。
【発明の開示】
【0005】
ここに、本発明者等はフィトクロムの光信号の伝達機構及びこれに関与する新たな媒介体分子等を究明する為に、研究を重ねる中フィトクロムと相互作用をする新規蛋白質を見出し、これの機能及び特性を究明することにより本発明を完成した。従って、本発明の目的は、フィトクロム相互結合作用する新規蛋白質及びこれの用途を提供することである。
【0006】
前記のような目的を達成する為に、本発明は配列番号4で表示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と少なくとも70%以上の相同性を有したアミノ酸配列を有する分離されたポリペプチドを提供する。
さらに、本発明は前記ポリペプチドを符号化する塩基配列又は前記塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド及びこれを含む組換えベクターを提供する。
従って、本発明は前記組換えベクターを含む細胞を提供する。
さらに、本発明は前記ポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを植物体内に導入することを含む光信号伝達に敏感な植物体を製造する方法を提供する。
本発明は配列番号4の1-138のアミノ酸配列を符号化するポリヌクレオチドを植物体内に導入することを含む矮性植物体(dwarf plant)を製造する方法を提供する。
さらに、本発明は前記ポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドを利用してフィトクロム信号伝達関連物質を探索する方法を提供する。
本発明は配列番号4の1-138のアミノ酸配列を符号化するポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドを利用して植物の矮小性(dwarfism)誘発物質を探索する方法を提供する。
さらには、本発明は前記ポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを利用して脱リン酸化酵素活性を有する蛋白質を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明はフィトクロムと相互結合作用する新規蛋白質PAPP5を提供する。前記PAPP5は第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP5)の一種であり、そのN-末端には3個のTPR(tetratricopeptide repeats) モチーフが存在し、このTPRはフィトクロムとの相互結合作用に関与する。本発明のPAPP5のC−末端は脱リン酸化酵素活性を表す。前記酵素活性はオカダイック酸(okadaic acid)により抑制され、逆にアラキドン酸(arachidonic acid)により促進される。このようなPAPP5の酵素活性はN−末端に存在するTPRドメインによるアロステリック変化により調節される。さらに、前記PAPP5は自己リン酸化されたフィトクロムを脱リン酸化させる活性を有し、主に、Pfr型のフィトクロムを脱リン酸化させる。
【0008】
本発明によるポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチド及び前記ポリペプチドの機能的同等物を含む。“機能的同等物”とは、アミノ酸の付加、置換又は欠失の結果により、配列番号4で表示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%以上の配列相同性を有し、配列番号4で表示される蛋白質と実質的に同質の生理活性を表すポリペプチドを言う。ここで、“実質的に同質の生理活性”とは、脱リン酸化酵素活性を意味する。前記機能的同等物には例えば、配列番号4で表示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸内の一部が置換されるか又は、欠失或いは付加されたアミノ酸配列変形体が含まれる。この時、アミノ酸の置換は好ましくは保存的置換である。天然に存在するアミノ酸の保存的置換の例は下記の通りである;脂肪族アミノ酸(Gly, Ala, Pro)、疎水性アミノ酸(Ile, Leu, Val)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(His, Lys, Arg, Gln, Asn)及び硫黄含有アミノ酸(Cys, Met)。アミノ酸の欠失は好ましくはPAPP5の生理活性に直接関与しない部分に位置する。本発明のポリペプチドの好ましい機能的同等物は配列番号4の1-138のアミノ酸が欠失されたポリペプチド(配列番号14)の場合もあり得る。前記欠失ポリペプチドとPAPP5は77.8%の相同性を有する。さらに、本発明の機能的同等物の範囲には本発明のポリペプチドの基本骨格及びこれの生理活を維持しながらポリペプチドの一部化学構造が変形されたポリペプチド誘導体も含まれる。例えば、本発明のポリペプチドの安定性、貯蔵性、揮発性又は溶解度等を変形させる為の構造変形がこれに含まれる。
【0009】
本発明のポリペプチドは自然(例えば、植物細胞)から抽出されるか又は本発明のポリペプチドを符号化する組換え核酸の発現により、又は化学的合成により収得できる。好ましくはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)より分離することができる。本発明のポリペプチドは当業界に公知の化学的合成(Creighton, Proteins; Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman and Co., NY, 1983)により容易に製造できる。代表的な方法としてこれらに限定されるものではないものの、液体又は固体状合成、断片凝縮、F-MOC又はT-BOC化合法が含まれる(Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins, Williams et al., Eds., CRC Press, Boca Raton Florida, 1997; A Practical Approach, Athert on & Sheppard, Eds., IRL Press, Oxford, England, 1989)。
【0010】
さらに、本発明のポリペプチドは遺伝工学的方法により作製できる。まず、通常的な方法により前記PAPP5蛋白質又はこれの断片をコーディングするDNA配列を作製する。DNA配列は適切なプライマーを用いてPCR増幅することにより作製できる。他の方法で当業界に公知の標準方法により、例えば、自動DNA合成器(Biosearch又はApplied Biosystems社で販売するもの)を用いてDNA配列を合成することもできる。作製されたDNA配列はこのDNA配列に作動自在に連結され(operably linked)そのDNA配列の発現を調節する一つ又はそれ以上の発現調節配列(expression control sequence)(例:プロモータ、エンハンサー等)を含むベクターに挿入させ、これより形成された組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換させる。生成された形質転換体を前記DNA配列の発現に適切な培地及び条件下で培養して、培養物から前記DNA配列によりコーディングされた実質的に純粋なポリペプチドを回収する。前記の回収は当業界に公知の方法(例えば、クロマトグラフィー)を利用して行える。前記にて“実質的に純粋なポリペプチド”とは、本発明によるポリペプチドが宿主細胞から由来した如何なる他の蛋白質も実質的に含まないことを意味する。本発明のポリペプチド合成の為の遺伝工学的方法は次のような文献を参考にすることができる:Maniatis et al., Molecular Cloning; A laboratory Manual, Cold Spring Harbor laboratory, 1982; Sambrook et al., supra; Gene Expression Technology, Method in Enzymology, Genetics and Molecular Biology, Method in Enzymology, Guthrie & Fink (eds.), Academic Press, San Diego, Calif, 1991;及びHitzeman et al., J. Biol. Chem., 255:12073-12080, 1990。
【0011】
さらに、本発明は前記PAPP5及びこれの機能的同等物を符号化する塩基配列を有するポリヌクレオチドを提供する。前記ポリヌクレオチドはDNA、cDNA及びRNA配列全てを含む。つまり、前記ポリヌクレオチドは配列番号4のアミノ酸配列又はこれと少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を符号化する塩基配列を有するか又は、前記塩基配列に相補的な塩基配列を有することができる。好ましくは、配列番号3又は配列番号15で表示される塩基配列を有する。
【0012】
本発明のポリヌクレオチドは発現調節配列に作動自在に連結することができる。“作動自在に連結する(operably linked)”とは、一つの核酸断片が他の核酸断片と結合され、その機能又は発現が他の核酸断片により影響を受けることを言う。さらに、“発現調節配列(expression control sequence)”とは、特定した宿主細胞において作動自在に連結された核酸配列の発現を調節するDNA配列を意味する。このような調節配列は転写を開始する為のプロモータ(promoter)、転写を調節する為の任意のオペレーター(operator)配列、適切なmRNAリボゾーム結合部位をコーディングする配列及び転写及び翻訳の終結を調節する配列を含む。
【0013】
本発明のポリヌクレオチドは適切な発現ベクター内に挿入することができる。ここで、“発現ベクター”とは、本発明のポリヌクレオチドが挿入できる当業界に公知のプラスミド、ウィルス又はその他の媒介体を意味する。植物細胞内に本発明のポリヌクレオチドを導入させる為のベクターはTi-プラスミド、根誘導性(Ri)-プラスミド及び植物ウィルスベクターがあり、これに限定はされない。好ましくはpNB96ベクターをも利用できる。
【0014】
本発明のポリヌクレオチドを含む組換えベクターは当業界に公知の方法を利用して細胞に導入できる。前記細胞は酵母、植物細胞などの真核細胞又は大腸菌などの原核細胞の場合もあり得る。好ましくは大腸菌細胞又はアグロバクテリウム属微生物細胞である。前記本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入する公知の方法としては、これに限定はされないものの、アグロバクテリウム媒介形質転換法(Agrobacterium-mediated transformation)、粒子銃衝撃法(particle gun bombardment)、シリコン炭化物ウィスカ(Silicon carbide whiskers)、超音波処理(sonication)、電気穿孔法(electroporation)及びPEG(Polyethylenglycol)による沈殿法等を利用できる。本発明は本発明の組換えベクターの形質転換細胞を提供する。前記細胞には酵母、植物細胞などの真核細胞又は大腸菌などの原核細胞が含まれるが、これに限定はされない。
【0015】
本発明は本発明のポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを植物体内で過発現させることにより、光信号伝達に敏感な植物体を製造する方法を提供する。前記方法は下記の段階を含む。
(a)本発明のPAPP5又はこれの機能的同等物を符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入する段階;及び
(b)前記発現ベクターを植物体に導入する段階。
前記ポリヌクレオチドは配列番号3又は配列番号15で表示される塩基配列を有し得る。さらに、前記方法に用いられる発現ベクターは遺伝子の過発現を誘導するプロモータ(例:CaMV 35Sプロモータ)が含まれているベクターが好ましい。その例としてはpNB96ベクターがある。前記“過発現”とは、野生型植物で発現される水準以上に遺伝子が発現されるようにすることを意味する。本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターの植物体への導入方法は前記の通りであり、好ましくはアグロバクテリウム媒介形質転換を利用できる。
【0016】
さらに、本発明は前記方法で製造された形質転換植物体を提供する。前記方法により製造された本発明のポリペプチドを過発現する植物体は光信号伝達に敏感であるとの特徴を有する。つまり、野生型に比べて持続的な短波長赤色光照射反応(continuous red light-high irradiance response; Rc-HIR)及び持続的な短波長遠赤色光照射反応(continuous far-red light-high irradiance response; FRc-HIR)に対し、光に対する敏感性の現象である下胚軸(hypocotyl)が短くなる表現型(de-etiolation)を一層強く表す。さらに、フィトクロムBにより媒介される反応の“End-Of-Day Far-Red(EOD-FR)”反応とフィトクロムAにより媒介される反応のアントシアン(anthocyanin)の蓄積が野生型に比べて強く表れる。前記PAPP5過発現形質転換植物体は光敏感性である為、光が弱かったり光の量が少ない条件においても成長に阻害を受けないので、正常的に成長できる長所がある。さらに、本発明は前記形質転換植物体から由来した植物組織及び種子を提供する。
【0017】
また、本発明は前記ポリペプチドの一部断片を符号化するポリヌクレオチドを植物体内で過発現させることにより、矮性植物体(dwarf plant)を製造する方法を提供する。前記方法は下記の段階を含む:
(a)配列番号4の1-138のアミノ酸配列を符号化するポリヌクレオチドを植物発現ベクターに導入する段階;及び
(b)前記発現ベクターを植物体内に導入する段階。
前記ポリヌクレオチドは本発明のPAPP5のTPRドメインを符号化する。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは配列番号4の1-138に該当するアミノ酸配列を符号化する塩基配列を有する。前記ポリヌクレオチドを導入する為の発現ベクターと、この発現ベクターの植物体への導入方法は、前記光敏感性植物体の製造方法で述べた通りである。好ましくはpNB96ベクターを用いることができ、アグロバクテリウム媒介形質転換法を利用できる。さらに、本発明は前記方法で製造された形質転換植物体及びこれより由来した植物組織と種子を提供する。前記方法で製造されたTPRドメイン過発現形質転換植物体は野生型に比べて短い背丈(shorter height)、多数の新芽(multiple shoots)、花新芽節間(floral shoot internodes)等の矮性表現型(dwarf phenotype)を表す。
【0018】
本発明の方法等が適用できる植物は双子葉植物(dicotyledonous plant)又は単子葉植物(monocotyledonous plant)であることもあり得る。前記双子葉植物は大豆、シロイヌナズナ、煙草、茄子、唐辛子、ペチュニア、馬鈴薯、トマト、白菜、菜種、キャベツ、木綿、チサ、桃、梨、苺、西瓜、まくわ瓜、キュウリ、人参及びセロリを含む。さらに、単子葉植物は稲、大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシ、砂糖黍、燕麦及び玉葱を含む。
【0019】
本発明によるPAPP5はフィトクロム信号伝達に関与する蛋白質であって、フィトクロムA及びフィトクロムBと交叉相互結合作用する。PAPP5とフィトクロム間の相互結合作用にはPAPP5のN−末端に位置するTPRドメインが関与し、PAPP5のC−末端ドメインは脱リン酸化酵素活性を有する。PAPP5は自己リン酸化されたPfr型のフィトクロムにより活性化され、自己リン酸化されたフィトクロムを脱リン酸化させる酵素活性を有している。従って、本発明は前記PAPP5、これの機能的同等物又はこれらを符号化するポリヌクレオチドを利用してフィトクロム信号伝達関連物質を探索する方法を提供する。前記方法により探索されるフィトクロム信号伝達関連物質は本発明のポリペプチド又はこれらを符号化するポリヌクレオチドの活性、発現及び/又は細胞内水準等を増加又は抑制する活性を有するものであることもあり、本発明のポリペプチド間又はポリヌクレオチドと同一であるか、又は類似した活性を有するものであることもあり得る。さらに、本発明のポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドと相互作用して、フィトクロム信号伝達に関与する物質であることもあり得る。前記物質はポリヌクレオチド、ポリペプチド、化学物質(chemical)又は天然抽出物(natural extract)を含み、これに制限はされない。
【0020】
前記方法は本発明のポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドをプローブとして利用して行える。前記“プローブ”とは望む物質を探し出す媒介体を意味する。例えば、前記方法は本発明のポリペプチドやポリヌクレオチドをプローブとしてこれらと候補物質の結合様相を分析することにより行える。さらに、前記方法は本発明のPAPP5を候補物質と接触させ、前記PAPP5の活性を抑制又は活性化する物質を探索することにより行うこともできる。この場合、前記方法は本発明のPAPP5蛋白質を発現する組換え細胞を候補物質と共に培養する段階;及び前記PAPP5の活性又は細胞内水準増加に及ぼす候補物質の効果を測定する段階を含み得る。
【0021】
さらに、前記方法は本発明のポリヌクレオチド又はこれの切片と種々の植物体より抽出したRNA又はmRNAより製造されたcDNAのハイブリダイゼーションを通じて、他の植物体において、本発明の遺伝子と同一であるか又は類似した機能をする遺伝子を探索することにより行うことができる。さらに、前記ポリヌクレオチドと直接的に結合する物質又は前記ポリヌクレオチドの発現を抑制又は活性化する物質等を探索することにより行うことができる。さらに、前記方法は本発明のPAPP5又はこれを符号化するポリヌクレオチドを用いて、当業界に公知の配列相同性検索プログラムを行うことにより、前記PAPP5又はこれを符号化するポリヌクレオチドと高い配列相同性を有する蛋白質又は遺伝子を探索することを含む。
【0022】
前記探索は当業界で一般的に用いられるcDNAライブラリスクリーニング、BAC(bacterial artificial chromosome)スクリーニング、DNAチップ、蛋白質チップ、重合酵素連鎖反応(PCR)、ノーザンブロット、サザンブロット、ウェスタンブロット、酵素免疫反応(ELISA)、2-Dゲル分析、酵母2-ハイブリッドシステム及び試験管内結合アッセイ(in vitro binding assay)を含む多様な方法で行うことができ、これに制限されるものではない。
【0023】
本発明のポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドは探索しようとする物質のスクリーニング及び分離を容易にする為に、放射性同位元素、蛍光色素又は発色酵素等により標識される。好ましくは3H、32P、35S、FITC(Fluorescence Isothiocyanate)、TRITC(Tetrame-thylrhodamine isothiocyanate)、ビオチン(Biotin)、ジゴキシゲニン(Digoxigennin)、HRP(Horse-Radish Peroxidase)、グルコースオキシダーゼ(Glucose Oxidase)、アルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase)等で標識される。標識方法は当業界に公知である。例えば、核酸の標識方法には、ニックトランスレーション(nick translation)、ランダムポリヌクレオチドプライマーを利用した方法などの核酸全体を均一に標識する方法、又はキネーション(kination)やフィリングーイン(filling-in)などの5’末端や3’末端を標識する方法を利用できる。さらに、ポリペプチドの場合には放射性ヨウ素化を通じて標識できる。ポリペプチドのチロシン又はヒスチジンに放射性ヨウ素を直接標識することもでき、クロラミンT法(Chloramine-T)、ヨードゲン法(Iodogen)又はラクト過酸化酵素(lactoperoxidase)を利用して標識することができる。
【0024】
さらに、本発明のPAPP5のTPRドメイン(配列番号4の1-138)は前記記載した通り、PAPP5とフィトクロム間の相互結合作用に関与するのみならず、植物体内で過発現される場合、植物の矮小症(dwarfism)を誘発する。TPRドメインの過発現が植物の矮小症を誘発するということは本発明で最初に究明されたものである。従って、本発明は前記TPRドメイン又はこれを符号化するポリヌクレオチドをプローブとして植物の矮小症誘発物質を探索する方法を提供する。前記方法により本発明のPAPP5のTPRドメインの発現を誘導又は促進するか、前記TPRドメインと相互作用して植物の矮小症を間接的に又は直接的に誘発する物質等が探索できる。探索方法は前記にて記載した通りである。
【0025】
さらには、本発明は本発明のポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドを利用して脱リン酸化酵素活性を有する蛋白質を生産する方法を提供する。前記の方法は下記の段階を含む:
(a)配列番号4のアミノ酸配列又はこれと少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに導入する段階;
(b)前記発現ベクターを細胞に導入する段階;
(c)前記細胞を培養して前記ポリヌクレオチドを発現させる段階;及び
(d)細胞培養液から培養された蛋白質を回収する段階;
前記方法に用いられるポリヌクレオチドは配列番号4で表示されるアミノ酸配列を符号化するポリヌクレオチドのみならず、前記アミノ酸配列と少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを利用できる。好ましくは配列番号4のポリペプチド又は配列番号4の1-138のアミノ酸配列が欠失されたポリペプチド(配列番号14)を符号化するポリヌクレオチドであることもあり得る。より好ましくは配列番号3又は配列番号15の塩基配列を有するポリヌクレオチドであることもあり得る。この方法において、前記細胞は酵母などの真核細胞又は大腸菌などの原核細胞であることもあり得る。
【0026】
本発明の一実施例ではフィトクロムと相互結合する新規の蛋白質を見出だす為に、酵母2-ハイブリッドシステムを利用してシロイヌナズナcDNAライブラリをスクリニングした。この時、ベイト(bait)としてフィトクロムAの全長cDNAを用いた(図1参照)。酵母2-ハイブリッドスクリーニング結果から得たフィトクロムと結合する陽性クローン等の推定されるアミノ酸配列を分析した結果、この内一つのクローンが第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP5)の一種であることが確認できた。PP5はそれのN−末端に蛋白質−蛋白質相互作用に関与する3乃至4個のTPR (tetratricopeptide repeat)を有し、(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)、前記選ばれた陽性クローンのN−末端にも3個のTPRで構成されたドメインが存在した(図2及び図3参照)。さらに、前記クローンのC−末端にはよく保存された脱リン酸化酵素のドメインがあり、セリン/トレオニン脱リン酸化酵素活性に必須のモチーフと、オカダイック酸結合により、脱リン酸化酵素活性が阻害される配列(-SAPNC-)が保存されていた(図3参照)。本発明者等は前記選ばれた陽性クローンを'PAPP5(phytochrome-associated protein phosphatase 5)'と命名した。
【0027】
生体(In vivo)及び試験管内(In vitro)蛋白質−蛋白質相互結合分析の結果、本発明のPAPP5はフィトクロムと特異的な相互結合作用し(図4及び図5参照)、前記相互作用にはPAPP5のN−末端に存在するTPRドメインが関与するものと確認された(図6参照)。さらに、脱リン酸化酵素の一般的な無機基質であるパラ−リン酸ニトロフェノール(ρ-NPP)に対するPAPP5の酵素活性を調査した結果、アロステリックな構造変化(allosteric conformational change)に依存的な活性を有するとの事実を確認することができた。このような構造変化は試験管内でアラキドン酸により誘導され(図7参照)、これは前記TPRドメインが自己抑制(autoinhibitory region)の活性も有していることを提示するものである。
【0028】
さらに、PAPP5は試験管内で自己リン酸化されたフィトクロムを効率的に脱リン酸化させ、前記脱リン酸化酵素活性は光の波長により調節されるものと確認された(図11参照)。特に、PAPP5によるフィトクロムの脱リン酸化現象は主にPfr型において強く表れた。前記生体内及び試験管内結果はPAPP5がフィトクロムにより媒介される光信号経路(phytochrome-mediated light signalling pathways)の調節者であることを提示した。さらに、PAPP5が関与する可逆的なフィトクロムのリン酸化/脱リン酸化がフィトクロムの生物学的活性及びフィトクロムにより媒介される光信号伝達(light signal transduction)の調節に重要な役割をすることを提示した。
【0029】
本発明の他の実施例ではPAPP5のN−末端又はC−末端欠失突然変異の脱リン酸化酵素活性を調査した結果、PAPP5のN−末端欠失突然変異が脱リン酸化酵素活性をそのまま保有していることを確認した(図7のC参照)。
PP5の脱リン酸化酵素活性はアラキドン酸により促進されるものと知られていることから(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)、アラキドン酸によるPAPP5の酵素活性誘導を調査した。その結果、全長PAPP5の脱リン酸化酵素活性もまたアラキドン酸により高い水準に誘導されることが分かった(図7のC参照)。一方、PAPP5のN−末端欠失突然変異はアラキドン酸により誘導されたPAPP5の脱リン酸化酵素活性と同等であるか、若しくはより高い水準の活性を表わし、その活性はアラキドン酸に依存的でなかった。
【0030】
本発明のさらに他の実施例ではPAPP5ノック−アウト変異体とPAPP5過発現植物体を製造し、これらのRc-HIR及びFRc-HIR表現型を調査した。その結果、PAPP5ノック−アウト変異体の場合にはPAPP5過発現植物体とは逆に、長い下胚軸表現型を示し(図9参照)、光-誘導フックオプニング(light-induced hook opening)及び子葉分離(cotyledon separation)の減少率、減少された子葉伸長(cotyledon expansion)と早期開花(early flowering)を観察することができた(図示せず)。一方、PAPP5過発現植物体は野生型に比べて短い下胚軸表現型を表した(図9参照)。また、フィトクロムBにより媒介される反応である“End-Of-Day Far-Red(EOD-FR)”反応と、フィトクロムAにより媒介される反応であるアントシアン(anthocyanin)の蓄積が、野生型の植物体のそれに比較して強く表れた(図示せず)。このような結果は、PAPP5がフィトクロムA及びフィトクロムB信号経路(signalling pathway)で陽性調節者(positive regulator)として機能することを表わす。
【0031】
本発明の他の実施例ではPAPP5のTPRドメインの役割をさらに調査する為に、優性陰性突然変異(dominant negative mutation)の逆遺伝学的(reverse genetics)アプローチを利用した。この為に、PAPP5のTPRドメイン(配列番号4の1-138のアミノ酸配列で構成されたポリペプチド)を野生型植物体で過発現させた。その結果、TPRドメインの過発現植物体はジベレリン欠乏による表現型と類似した表現型を示し、短い背丈(short height)、多数の新芽(multiple shoots)及び花新芽節間(floral shoot internodes)の矮性表現型を表わした。
【実施例】
【0032】
以下本発明を実施例により詳細に説明する。
但し、下記実施例は本発明を例示するものであって、本発明の内容がこれに限定されるものではない。
【0033】
<実施例1> 酵母2-ハイブリッドスクリーニング(yeast two-hybrid screening)
本発明者等はフィトクロムに結合する蛋白質を探索する為に、酵母2-ハイブリッドシステム(DupLEX-ATM, OriGene Technologies)を利用した。まず、当業界に公知の方法により3週令シロイヌナズナからcDNAライブラリを作製した。各cDNA断片をpJG4-5プラスミド(OriGene Technologies)に挿入した(プレイ(prey)製造)。一方、ベイト(bait)はpGilda(OriGene Technologies)のLexA-DNA結合ドメインにフィトクロムAの遺伝子であるPHYAを連結して作製した(図1参照)。この為に米国カリフォルニアサンージエゴ所在のSALK研究所のジョアンコリ博士より提供されたPHYA cDNAクローンから配列番号1及び配列番号2で表示されるプライマーを用いてフィトクロムAの遺伝子をクローニングした。この際PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で2分30秒間の条件を1サイクルにして総35回繰返し行った後、72℃で15分間反応させる条件で行った。以降、pSH18-34リポータープラスミドが導入されたEGY48酵母リポーター菌株(OriGene Technologies)を前記シロイヌナズナcDNA断片を含むプレイとPHYA遺伝子を含むベイトで共同形質転換させた。総7×106個のコロニーをスクリーニングした結果、Leu-とβ-カラクトシターゼに対して陽性反応を示す約150個のコロニーを得た。
【0034】
<実施例2> 陽性クローンの塩基配列分析
前記実施例1の酵母2-ハイブリッドスクリーニングで得た陽性クローンからプラスミドを分離した後、各cDNAクローンの塩基配列を決定した。次に、シロイヌナズナゲノムデーターベースを利用して相同性検索を行った。その結果、cDNAクローンの内一つが 2番染色体のBACクローンF14N22とF7D19上の配列と相同性を示すことが確認できた。前記cDNAクローンを分析した結果、前記cDNAクローンのコーディング領域内に13個のエキソンと12個のイントロンが存在し(図2参照)、484個のアミノ酸を符号化するオープンリーディングフレーム(ORF)が含まれているものと確認された。さらに、その分子量は54kDaと推定された。推定されたアミノ酸配列をNCBI BLASTで分析した結果、前記cDNAクローンから符号化される蛋白質は他の多くの種の第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP5s)と高い相同性を示した。前記蛋白質のアミノ酸配列を他の多くの種のPP5sと双整列(pairwise alignment)した結果(図3参照)、全体相同性(identity)が50-57%であり、C−末端触媒ドメインは若干高い54-62%の相同性を示した。しかしながら、アミノ酸配列の類似性(similarity)は70%以上と極めて高かった。
一方、プロサイト(PROSITE)分析した結果、今まで全てのPP5sで発見されたTPR(tetratricopeptide repeat)が前記蛋白質のN−末端に存在していることが確認できた。さらに、前記蛋白質のC−末端には高く保存された第2A型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP2A)ドメインが存在し、その内部にはセリン/トレオニン脱リン酸化酵素の活性に必須のモチーフ(-GDXHGQ-, -GDXVXRG- 及び-RGNHE-)が含まれていた(図3参照)。前記保存された3個のモチーフ等は触媒作用(catalysis)、基質結合及び金属イオン結合に重要な役割をする(Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998)。さらに、前記蛋白質のC−末端はオカダイック酸が結合して酵素活性を阻害するものとして知られた保存配列(consensus sequence)である“SAPNYC(Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998)”が含まれていた(図3参照)。前記結果から前記cDNAクローンがセリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素を符号化することを確認できた。
本発明者等は前記cDNAクローンを“PAPP5(phytochrome-associated protein phosphatase 5)”と命名した。前記PAPP5の全長cDNA塩基配列とこれより推定されるアミノ酸配列を配列番号3及び配列番号4にそれぞれ記載した。
一方、ノーザンブロット分析結果、前記PAPP5のcDNAは全長が約2kb大の単一転写体と類似したものと確認でき、さらに、サザンブロット分析を通じてPAPP5が単一コピー(single copy)遺伝子であることが確認された(図示せず)。
【0035】
<実施例3> PAPP5とフィトクロム間相互結合作用の分子的特異性調査
pGildaベクターとpJG4-5ベクター(OriGene Technologies)を利用してプレイとベイトをそれぞれ製造した(図4参照)。この際、特異的結合を確認する為の対照区としてC型肝臓炎ウィルス(HCV)の蛋白質であるNS5A(N)(韓国浦項工科大学校生命科学科張承基博士より分譲を受ける)とTPRドメインを有する植物の他の蛋白質であるSPINDLY(SPY)(Jacobsen, S. E., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:9292-9296, 1996)を利用した。さらに、プレイ/ベイトを交互に換えて互恵的な方法(reciprocal method)で蛋白質間結合を観察した。製造されたプレイとベイトをpSH18-34リポータープラスミド(OriGene Technologies)と共にEGY48酵母菌株(OriGene Technologies)に共同導入した。次に、X-gal(5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-galactopyranoside; Rose Scientific Ltd.)を含む培地で形質転換体を選んだ。Leu欠乏培地(Leu-drop out media)及びX-gal培地上でプレート成長分析(plate-growth assay)を行った。
その結果、PAPP5はHCVのNS5A(N)蛋白質とは相互作用をしない反面、シロイヌナズナフィトクロムAと特異的に相互結合作用することを確認できた(図4参照)。さらに、TPRドメインを有している他の植物蛋白質であるSPYはフィトクロムとは相互作用しないことから、PAPP5とフィトクロム間の結合は極めて特異的な結合であることが分かった。
【0036】
<実施例4> 試験管内結合分析(In vitro binding assay)
<4-1> GST-PAPP5 融合蛋白質の発現及び精製
PAPP5とフィトクロム間の試験管内相互作用を調査する為に、pGEX4T-1ベクター(Amersham Pharmacia Biotech.)を利用して全長PAPP5を発現させる為のベクターを製作した。まず、配列番号5及び配列番号6で記載されるプライマーを利用してPCRで全長PAPP5を増幅した。この際、PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルにして総30回繰返し行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。そして、増幅されたPCR産物をpGEX4T-1ベクター(Amersham Pharmacia Biotech.)にクローニングした。PAPP5を含む組換えベクターを大腸菌BL21に導入した。形質転換体を1mM IPTGと共に培養してGST-PAPP5融合蛋白質を発現させた。発現されたGST-PAPP5融合蛋白質をグルタチオンセパロズ4Bビード(Amersham Pharmacia Biotech)を利用して精製した(Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997)。蛋白質を天然の状態で精製する為に、GST-PAPP5融合蛋白質を50mM Tris-HCl pH8.0,4mM MnCl2, 0.1%β-メルカプトエタノール及び10mMグルタチオンを含む緩衝溶液で溶出した。そして、25%グリセロール、1mM EGTA、0.1%β-メルカプトエタノール及び20mM Tris-HCl pH7.6及び4mM MgCl2を溶液として4℃で一夜透析した。透析された蛋白質試料を分析に用いるまで-20℃で保管した。
【0037】
<4-2> PHYA及びPHYB発現ベクター構築
試験管内転写/翻訳システムを利用してシロイヌナズナフィトクロムAとBのアポプロテインであるPHYA及びPHYBを発現させた。
まず、試験管内でPHYAの合成の為、配列番号7及び配列番号2に示されるプライマーを利用して、両側の端にそれぞれBamHI及びXhoIの制限酵素認識配列を含むPHYAの全長cDNAをPCRで増幅した。この際、PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で2分30秒間の条件を1サイクルにして総30回繰返し行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。以降、増幅されたPCR産物をpTriEx-1ベクター(Novagen)のBamHI-XhoI部位に挿入して、PHYAの発現の為の組換え発現ベクターを製造した。一方、PHYBの合成の為、配列番号8及び配列番号9に示されるプライマーを利用して、FbaI-全長PHYB cDNA-Eco52Iの配列を有するPCR産物を増幅させた。このPCR産物をpTriEx-1ベクターのBamHI-XhoI部位に挿入して、PHYBの発現の為の組換え発現ベクターを製造した。符号化された各蛋白質を35S-標識されたメチオニンを利用して、試験管内で合成した。この時、合成は網状赤血球TnT転写/翻訳システム(reticulocyte TnT transcription/translation system; Promega)を利用して製造社の推奨方法により行った。
【0038】
<4-3> 試験管内結合分析
前記実施例4-1で製造したGST-PAPP5融合蛋白質1μgと前記実施例4-2で製造した各TnT蛋白質10μlを蛋白質分解酵素阻害剤(protease inhibitor, Complete, Roche Diagnostics GmbH)と共に、結合緩衝溶液(20mM Tris-HCl, pH7.5, 150mN NaCl, 1mM dithiothreitol, 0.1% Tween 20) 0.3mlに添加した。その後、4℃で弱く回転させながら結合反応を誘導した。10μlのグルタチオンセパローズ4Bビード(Amersham Pharmacia Biotech. AB)を混合物に添加して、同一な条件で1時間多く反応させた。遠心分離後、上澄液部分は別に保管し、ペレット(セパローズビード分画)は1mlの結合緩衝溶液で3回洗浄した。ペレットと上澄液分画(fraction)を10%アクリルアミドが添加されたSDS-PAGEゲルで分析した。次に、富士FLA-2000Rイメージ分析器(Fuji Photo Film)を利用して視覚化した。
その結果、PAPP5がシロイヌナズナのフィトクロムA及びフィトクロムB全てと結合する性質を有していることが確認できた(図5参照)。
【0039】
<実施例5> PAPP5のTPRドメインとフィトクロム間の相互作用調査
本発明のPAPP5を含むPP5sは複数個のTPRsからなる独特なN−末端ドメインを含んでいる点でPP1/PP2群の他のメンバーと区別される。TPRモチーフは両親媒的螺旋(amphipathic helices)を形成するものと推定され、蛋白質−蛋白質相互作用を媒介するものと知られている(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)。従って、本発明のPAPP5とフィトクロム分子間の結合作用にTPRが関与するか否かを調べる為に、プルダウン分析(pull-down assay)と酵母2-ハイブリッド相互作用定量分析を行った。
【0040】
<5-1> プルダウン分析
前記実施例4-1と同一の方法によりpGEX4T-1ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)を利用して、配列番号4の1-138のアミノ酸配列からなるPAPP5のTPRドメイン(N−末端ドメイン;GST-TPR)及び配列番号4の1-138のアミノ酸配列が欠失されたPAPP5のPP2A酵素ドメイン(C−末端ドメイン;GST-PP2Ac)の為の組換え発現ベクターをそれぞれ製作した。
PAPP5のTPRドメインは配列番号5及び配列番号10で表示されるプライマーを利用してPCRで増幅した。PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルにして総30回繰返し行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。一方、PAPP5のPP2A触媒ドメインは配列番号6及び配列番号11に示されるプライマーを利用してPCRで増幅した。PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルにして総30回繰返し行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。その後、前記実施例4-1と同一の方法により大腸菌内で発現させ、精製した各蛋白質を対象に試験管内結合分析を行った。
その結果、図6Aに示す通り、GSTと融合したPAPP5のTPRドメイン(GST-TPR)のみが、フィトクロム分子と相互結合に対する能力を有するものとして確認できた。これは、PAPP5がフィトクロム分子と結合するにおいて、TPRドメインが関与することを示したしたものである。
【0041】
<5-2> 酵母 2-ハイブリッド相互結合作用定量分析(Quantitative yeast two-hybrid interaction assay)
PAPP5のTPRドメインとフィトクロム間の相互結合作用を定量分析する為に、PAPP5のTPRドメイン及びPAPP5のPP2A触媒ドメインの為の組換えベクター(プレイ)をそれぞれ製造した。
PHYA遺伝子又はPHYB遺伝子は前記実施例4-2と同一の方法により、PCRを行い準備し、pGildaベクターに挿入して、その組換えベクターをベイトに用いた。製造されたベイト又はプレイをpSH18-34リポータープラスミドと共に、EGY48酵母菌株に共同導入した。形質転換された菌株をOD600値が約0.7になるまで培養した。培養された細胞をZ-緩衝溶液(60mM Na2HPO4, 40mM NaH2PO4, 10mM KCl, 1mM MgSO4, pH7.0)で1回洗浄後、前記溶液に再懸濁させた。その後、液体N2で凍結させた。凍結された溶液を再溶解後、β-メルカプトエタノール(β-mercaptoethanol)とONPG(o-nitrophenyl-β-D-galactopyranoside)を最終濃度0.2%及び0.67mg/mlでそれぞれ添加した。溶解物を30分間37℃で反応させ、Na2CO3を最終濃度0.3Mで添加して反応を終結した。420nmで吸光度を測定し、β-カラクトシターゼ活性をミラー単位(Miller unit)で決定した(Miller, J. H. Experiments in Molecular Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring harbor, New York, 1972)) 。
その結果、図6Bに示す通り、TPRドメインが欠失されたPAPP5のPP2A触媒ドメイン(B42-PP2Ac)はフィトクロム−相互作用活性を著しく減少させる効果を示した。前記結果はPAPP5のTPRドメインがPAPP5−フィトクロム分子間の相互結合作用の為の特異的な部位であることを再立証するものである。さらに、これは前記プルダウン分析結果と一致するものである。
【0042】
<実施例6> 試験管内脱リン酸化酵素活性分析(In vitro phosphatase assay)
<6-1> 脱リン酸化酵素活性測定
本発明のPAPP5が酵素学的に活性を有するか否かを調べる為に、無機パラ−リン酸ニトロフェノール(ρ-nitrophenyl phosphate; ρNPP)を基質として用いて酵素分析をした。まず、前記実施例4-1で精製されたGST-PAPP5融合蛋白質を30℃で1分間予熱した。予熱された酵素溶液を0-400mM ρNPPを含むリン酸化酵素/脱リン酸化酵素(KP)緩衝溶液(20mM Tris-HCl pH7.5, 30mM MgCl2, 1mM EDTA, 1mM EGTA, 0.1% β-mercaptoethanol, 0.1% ethanol)100μlに添加して反応を開始した。各基質濃度におけるρNPPの自発的な加水分解を調査する為に、対照区にはGST-PAPP5酵素溶液を添加しなかった。30℃で15分間反応させた後、0.25N NaOH 900μlを添加して反応を終結した。410nmで吸光度を測定した。酵素を除いた全ての構成成分を含む対照区反応液の吸光度数値を差引いた後、パラ−ニトロフェノールレート(ρ-nitrophenolate)イオンのmM吸光係数(millimolar extinction coefficient)17.8を利用して比率(rate)を計算した。
その結果、図7Aに示す通り、ρNPPの濃度が増加するにつれて、脱リン酸化酵素活性が増加することが確認できた。これは本発明のPAPP5が脱リン酸化酵素活性を有していることを示すものである。100μMアラキドン酸の存在下で酵素-基質反応をミカエリス-メンテンの式(Michaelis-Menten kinetic)でKm値とVmax値を計算した結果、Km値は160mM ρNPPであり、Vmax値は22μmol Pi released/min/mgであった。
【0043】
<6-2> アラキドン酸によるPAPP5の触媒活性誘導測定
PP5sの最も目立つ特徴はアラキドン酸によりその触媒活性(catalytic activity)が誘導されることである(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; O
llendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers,
M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)。本発明のPAPP5の脱リン酸化酵素活性がアラキドン酸により活性化されるか否かを確認する為に、100mMのρNPPの濃度下で0-300μMアラキドン酸を反応混合物に添加して、前記実施例 6-1と同一の方法により酵素活性を測定した。
その結果、GST-PAPP5の活性がアラキドン酸により、濃度依存的に増加され、アラキドン酸の濃度が約100μM以上において最大効果段階(stationary phase)に到達した(図7B参照)。
さらに、PP5sの触媒活性はオカダイック酸により試験管内で抑制されると報告されている(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:3201132018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)。そこで、GST-PAPP5の脱リン酸化酵素活性に対するオカダイック酸の阻害効果を調査した。その結果、酵素活性が半分に阻害される濃度値であるオカダイック酸のIC50値が5nMであった(図示せず)。
前記結果は本発明のPAPP5がセリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素科(family)でPP5亜科(PP5 subfamily)に属する蛋白質を符号化することを証明するものである。
【0044】
<6-3> アロステリック構造変化に伴う酵素活性調査
他の種より分離されたPP5sに対する以前の研究結果によりTPRモチーフを含むPP5sのN−末端断片がアロステリック構造変化を表わすと言う事実が明かにされている(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocri
nol. Metab., 12:28-32, 2001)。そこで、本発明者等はPAPP5も前記のような特性を有しているか否かを確認する為に、GST-PAPP5、GST-TPR及びGST-PP2Acの脱リン酸化酵素活性を前記実施例6-1と同一の方法により調査した。この時ρNPPの濃度は100mMとした。
その結果、図7Cに示す通り、GST-PAPP5の脱リン酸化酵素活性はアラキドン酸により約5倍程増加するのが確認できた。一方、TPRドメイン(アミノ酸 1-138)が除去されたGST-PP2Acは、アラキドン酸の添加に関係無くアラキドン酸が無い時のGST-PAPP5より5倍高い活性を示した。
前記結果はPAPP5の脱リン酸化酵素活性が他のPP5sと類似してN−末端TPRドメインのアロステリック構造変化により調節されることを示し、一方、前記TPRドメインが自己抑制(autoinhibitory region)の活性も有していることを提示するものである。さらに、前記結果からTPRドメインが欠失されたPAPP5のPP2A触媒ドメインを脱リン酸化酵素として用いられることが確認できた。
【0045】
<実施例7> PAPP5の不活性化又は過発現に伴う植物体の表現型調査
PAPP5が生体内フィトクロム媒介光信号伝達に直接関与するか否かを調べる為に、PAPP5遺伝子に対するノック−アウト変異体及びPAPP5過発現植物体を製造してこれらの表現型を調査した。
【0046】
<7-1> PAPP5遺伝子のノック−アウト変異体探索
PAPP5遺伝子のT-DNA挿入突然変異を探索して2個の突然変異体ライン(papp5-1及びpapp5-2)を構築した。
ある突然変異体のpapp5-1はCol-0野生型で製造された個別的T-DNA突然変異集団(separate T-DNA mutagenized population)(SIGnAL T-DNA Express (http:
//signal.salk.edu/cgi-bin/tdnaexpress), Salk Institute Genomic Analysi
s Laboratory)から得た。前記突然変異体でT-DNAは第1イントロン(1st intron)に挿入されたものと確認でき(図8A参照)、これによりpapp5-1が無機能対立因子(null allele)であることが予測された。さらに、他の突然変異体のpapp5-2はWs-2野生型で製造されたノック−アウト突然変異体集団(Krysan, P. J., et al., Plant Cell, 11:2283-2290, 1999)から分離されたDNA等をスクリーニングして分離した。papp5-2においてT-DNAは第12イントロンに挿入されたものと確認できた(図8A参照)。
薬剤-抵抗性表示(カナマイシン抵抗性遺伝子)に対する分離度を調査した結果、papp5-1とpapp5-2は共に単一のT-DNAがPAPP5遺伝子の上に挿入されたものと確認できた。前記無機能対立因子を有している二つの突然変異ラインに対して多くの薬剤-抵抗性幼苗を増殖させた。その後、各植物体の子孫を対象に薬剤-抵抗性をスクリーニングして相同型ライン(homozygous line)を選抜した。突然変異体ラインの相同性(homozygosity)はサザンブロット分析(Southern blot analysis)とPCRで確認できた(図示せず)。
【0047】
<7-2> PAPP5 過発現植物体製造
配列番号12及び配列番号13で示されるプライマーを利用してPAPP5 cDNAを増幅した。この時、PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させ、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルとして総30回繰返して行い、72℃で10分間反応させる条件で行った。その後、増幅されたPCR産物をこの内の35S CaMVプロモータ(dual 35S pro) とその下流に35S CaMVターミネータ(35S ter)があるpNB96ベクターにクローニングした。前記組換えベクターを電気衝撃法(electroporation)でアグロバクテリウムAGL1に導入した。次に、花卉水浸方法(floral-dip method)(Clough, S. J. & Bent, A. F. Plant J., 16:735-743, 1998)により前記形質転換されたアグロバクテリウムでシロイヌナズナを形質転換させた。25μg/mlのDL-PPT(DL-phosphinothricin, Duchefa Biochemie BV)を利用してPAPP5 が過発現している独立的な形質転換体2個体を選抜した。選抜された2個体をそれぞれ“PAPP5-OX1”及び“PAPP5-OX2”と命名した。
【0048】
<7-3> ノック−アウト変異体及び過発現植物体の確認及び分析
a.ノーザンブロット分析
PAPP5転写体水準を分析する為に、アールエヌイージー植物ミニキット(RNeasy plant mini kits)(Qiagen, Valencia, CA)を利用して前記実施例 7-1及び7-2で得た植物体から全体RNAを分離した。全体RNA10μgをホルムアルデヒドを含む1.0%アガロスゲル状より分離し、ナイロン膜でトランスファーした。前記膜にPAPP5遺伝子に特異的な32P-標識されたプローブ(配列番号3の300-700bpに該当する断片)をハイブリダイズさせた。そして、富士FLA-2000Rイメージ分析器(Fuji photo film)を利用して放射線シグナルを照射した。
その結果図8Bに示した通り、ノック−アウト変異体のpapp5-1及びpapp5-2では放射線シグナル(PAPP5転写体)が検出されなかったが、過発現植物体のPAPP5-0X1及びPAPP5-OX2では放射線シグナルが検出された。
【0049】
b.光反応性調査
ノック−アウト変異体及び過発現植物体種子の表面を30%漂白剤(1.2% sodium hypoghlorite)と0.015%トリトンX-100で10分間消毒した。その後、種子を滅菌水で5回洗浄した。春化処理(vernalization)の為に、3日間暗/冷処理(dark/cold-treatment)後、種子を成長培地(スクローズを含まない0.1×Murashige-Skoog;0.1×MS)を含む0.8%フィトアガー(phytoagar)培地に置床した。その後、プレートを200μmolm-2sec-1の白光(F48T12/CW/VHO, Philips)に12時間持続的に露出させ、22℃の暗条件で12時間培養して発芽を促進させた。下胚軸の長さを測定する前に、4日間多様な条件(暗条件、持続的な短波長赤色光(Rc)及び持続的な短波長遠赤色光(FRc))下でプレートを置いた。光源(light source)は金博士等の論文(Kim, B. C. et al. Plant J., 9:441-456, 1996)に開示された通りに使用し、光度(fluence rate)は分光放射輝度計(spectroradiometer) (Hanbead Optical Power Meter 840, Newport)を利用してモニターリングした。下胚軸の長さはHPスキャンジェット5370Cデジタルスキャナー(HP ScanJet 5370C digital scanner, Hwelett Packard)とサイオンイメージソフトウェア(Scion image software, Beta 4.0.2, Scion Corporation)を利用して測定した。この時、野生型シロイヌナズナ(Col-O)とフィトクロム変異体(phyB-9及びphyA-211)(Arabidopsis Biological Resource Centerで分譲を受ける)を対照区植物体として利用した。
図9はノック−アウト変異体(papp5-1)及びPAPP5過発現植物体(PAPP5 OX-2)の光反応性を調査する為に、Rc及びFRc光度(fluence rate)に対応する下胚軸の長さ成長抑制反応カーブを野生型(Col-0)及びフィトクロム突然変異体(phyB-9)のものと比較して図示したものである。図9に示す通り、ノック−アウト変異体(papp5-1)は低い光度のRc及びFRcに対して鈍感(hyposensitivity)であることを示したが、PAPP5過発現植物体はRc及びFRcに対して過敏(hypersensitivity)であることを示した。さらに、PAPP5過発現植物体ではフィトクロムBにより媒介される反応である“End-Of-Day Far-Red(EOD-FR)”反応とフィトクロムAにより媒介される反応であるアントシアーン(anthocyanin)の蓄積が野生型に比べて強く表れることを確認できた(図示せず)。このような光-依存表現型の強度はPAPP5 転写体水準と相互関連があるものと確認できた。
【0050】
一方、PAPP5遺伝子の崩壊により誘導されたノック−アウト変異体においては長い下胚軸表現型の他、光−誘導フックオープニング及び子葉分離の減少率、減少された子葉伸長及び早期開花(early flowering)が観察された(図示せず)。これより、PAPP5がフィトクロムにより調節される植物の光形態形成(photomorphogenesis)に機能的に関与することが分かった。
【0051】
<実施例8> ノック−アウト変異体及び過発現植物体で光反応遺伝子等の転写体水準分析
フィトクロム媒介光信号伝達に対するPAPP5の関与が遺伝子発現水準で発生するのか否かを確認する為に、ノック−アウト変異体及び過発現植物体において光により発現が調節されるものと知られた3種の遺伝子の発現水準を野生型と比較して調査した。陽性として調節を受けるRBCS遺伝子(GenBank accession No. X15221)、CAB2遺伝子(GenBank accession No. X14564)、CHS遺伝子(GenBank accession No. BT000596)。
各植物体の種子を0.1×MS塩を含む0.8%フィトアガー培地上にそれぞれ置床し、プレートを3日間4℃の暗条件においた。発芽を誘導する為に、プレートを200μmolm-2sec-1の白光に24時間露出させた。次に、幼苗をさらに4日間暗条件で成長させ下記の光条件に移した:
【0052】
Rc:664nm波長、20μmolm-2sec-1光量で2時間露出させた。
FRc:748nm波長、10μmolm-2sec-1光量において2時間露出させた。
緑色安全灯(green safe light)下で組織を採取し、これよりアールエヌイージー植物ミニキット(Qiagen)を利用して全体RNAを分離した。その後、ホルムアルデヒドを含む1%アガロスゲルにおいて、5μgの全体RNAを分離し、前記ゲルをナイロン膜にトランスファーした。各遺伝子に特異的な32P-標識されたプローブを前記膜に処理してハイブリダイズさせた。富士FLA-2000Rイメージ分析器(Fuji Photo Film)でシグナルを照射した。
その結果、図10に示した通り、暗処理時にはRBCS、CAB2及びCHS mRNAが全ての植物体で低い水準で検出された。しかしながら、Rc及びFRc照射の際野生型(Col-0, Ws-2)では前記3つの遺伝子の発現が高い水準で増加した。これは前記遺伝子等の調節にフィトクロムAとフィトクロムBが関与すると言う事実と一致する結果である(Nagy, F. & Schafer, E. Annu. Rev. Plant Biol., 53:329-355, 2002)。一方、PAPP5過発現植物体ではRc及びFRc照射の際前記遺伝子等の発現水準が野生型に比べて増加したことが示した。反対に、ノック−アウト変異体等(papp5-1, papp5-2)では前記遺伝子等の発現が暗処理時より増加はしたものの、その程度が野生型の場合に比べて低かった。これはノック−アウト変異体で RBCS、CAB2及びCHS遺伝子等の光反応性が野生型に比べて敏感でないことを示すものである。前記結果からPAPP5無機能突然変異により光反応性遺伝子等に対するフィトクロムの信号伝達能が低下することが分かった。
【0053】
<実施例9> 自己リン酸化されたフィトクロムのPAPP5による脱リン酸化
可逆的なリン酸化/脱リン酸化反応が信号伝達及び/又はフィトクロム活性調節と関係の有り得ることが生化学的分析を通じて既に報告されている(Yeh, K. C. & Lagarias, J. C. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13976-13981, 1998; Fankhauser, C. et al., Science, 284:1539-1541, 1999)。そこで、本発明者等はフィトクロムと相互結合するPAPP5の分子的性質を確認する為に、自己リン酸化されたフィトクロムAが試験管内でPAPP5により直接的に脱リン酸化されるか否かを調査した。
まず、精製された燕麦フィトクロムA(錦湖生命環境科学研究所より提供を受ける)1μgを含むKP緩衝溶液(20mM Tris-HCl pH7.5, 30mM MgCl2, 1mM EDTA, 1mM EGTA, 0.1% β-mercaptoethanol, 0.1% ethanol)を氷の上において664nmで50μmolS-1m-2の光度を有するRcを5分間照射した。次に、前記反応溶液[γ-32P]ATPを添加して30分間暗条件で反応させた(フィトクロムAの自己リン酸化反応)。その後、前記実施例 4-1及び5-1でそれぞれ製造した融合蛋白質 GST-PAPP5、GST-TPR及びGST-PP2Ac 1μgをそれぞれ添加して30分間反応させた。かすかな緑色の安全灯(dim green safe light)下で12μlの5Xトリス−グリシンSDS試料緩衝溶液(5X Tris-Glycine SDS sample buffer)を添加して反応を終結させた。得られた反応産物に対して、10% SDS-PAGEを行った後、富士FLA-2000Rイメージ分析器(Fuji Photo Film)を利用して自己放射記録分析(autoradiography analysis)を行った。
【0054】
その結果、図11Aに示した通り、GST-PAPP5のみが自己リン酸化された燕麦フィトクロムAのPfr型を約80%程度に脱リン酸化させことを確認した。GST-PP2Acを含む反応混合液においても燕麦フィトクロムAの脱リン酸化が検出されたものの、その活性が極めて低かった。これよりPAPP5が自己リン酸化されたPfrフィトクロムを主ターゲットにして脱リン酸化させ、これを通じてPfrフィトクロムのリン酸化状態を調節するものと思われる。つまり、前記結果は自己リン酸化されたPfr型のフィトクロムAがPAPP5の脱リン酸化酵素活性を誘導し、活性化されたPAPP5は再度自己リン酸化されたPfrフィトクロムAを直接的に脱リン酸化させることを示した。さらに、前記結果はPAPP5のTPRドメイン(GST-TPR)又はPAPP5 の酵素活性ドメイン(GST-PP2Ac)による単純な物理的結合又は非特異的酵素活性が、Pfrフィトクロムのリン酸化状態に影響が及ばないことを示した。
【0055】
次に、本発明者等はPAPP5の脱リン酸化酵素活性がフィトクロム分子の固有特性である分光学的構造変化(Pr⇔Pfr)に依存するか否かを調査した。フィトクロムを含むKP緩衝溶液を氷の上において664nmで50μmolS-1m-2の光度を有するRc(フィトクロムがPfr 型に転換される)又は748nmで50μmolS-1m-2の光度を有するFRc(フィトクロムがPfr 型に転換される)を5分間それぞれ照射した。以降、前記と同一な方法でフィトクロムの自己リン酸化/脱リン酸化実験を行った。
その結果、図11Bに示した通り、Pr型よりはPfr 型でPAPP5による脱リン酸化程度が 著しく高いことが確認できた。
前記結果はフィトクロムに対するPAPP5脱リン酸化酵素活性が光により調節され、これは特に主にリン酸化されたPfr型で効率的に行われることを示唆する。このようなフィトクロムPAPP5複合体形成と脱リン酸化酵素活性の活性化/誘導(activation/stimulation)間の相互関係はPAPP5がフィドバック方式でフィトクロムのリン酸化されたPfrを特異的標的(specific target)にすることを提示する。
【0056】
<実施例11> PAPP5のTPRドメインの過発現植物体製造
PAPP5のTPRドメインの機能を調査する為に、優性陰性突然変異(dominant negative mutation)を通じた逆遺伝的接近(reverse genetic approach)を利用した。TPRドメインコーディング部位(配列番号4の1-138アミノ酸配列)を増幅する為に、配列番号5及び配列番号10で記載されるプライマーを利用してPCRを行った。この時、PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを変性させ、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルにして総30回繰返して行い、72℃で10分間反応させる条件で行った。その後、PCR産物をpNB96ベクターにクローニングした(図12A参照)。製造されたベクターを“pNB96-TPR”と命名した。pNB96-TPRベクターを電気衝撃法でアグロバクテリウムAGL1に導入した。次に、花卉水浸方法(SIGnAL T-DNA Express (http://signal.salk.edu/cgi-bin/tdnaexpress), Salk Institute Genomic Analysis Laboratory)により形質転換されたアグロバクテリウムでシロイヌナズナを形質転換させた。25μg/μlのDL-PPT(Duchefa Biochemie BV)を利用して形質転換植物を選抜した。総25個体のT1ラインを得て、これらを‘PAPP5-DN’と命名した。その後、DL-PPT抵抗性の分離を基にして、相同性T3種子等を分離した。T3植物体を白色光下で培養した結果、前記植物体は野生型に比べて短い背丈、複数の新芽(multiple shoots)及び花新芽節間の矮性化(dwarfing of the floral shoot internodes)を示した(図12B参照)。これはPAPP5のTPRドメインが蛋白質−蛋白質相互作用に関与することから見て、向上した蛋白質−蛋白質相互作用能により誘導されるものと判断される。さらに、これはPAPP5のTPRドメインを植物体に導入して過発現させると植物体に矮性を導入できることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明した通り、本発明では植物の成長及び発達を調節する光信号伝達に関与する新規蛋白質及びそれの機能を究明した。本発明のPAPP5はフィトクロムA及びBと交叉相互結合作用する。本発明のPAPP5はフィトクロムとの相互作用に関与するTPRドメインと脱リン酸化酵素活性を担当するPP2A触媒ドメインを含む。本発明のPAPP5は脱リン酸化酵素として利用することができ、光信号伝達に敏感な植物体の製造に有用に利用できる。さらに、本発明のPAPP5内に存在するTPRドメインは矮性植物体の製造に有用に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1はシロイヌナズナcDNAライブラリでフィトクロムAと相互結合作用する蛋白質を見出だす為に、作製した酵母2-ハイブリッドシステムのベイト(bait)の簡略な構成図。 区画された長方形(partitioned rectangle):クロモフォア(chromophore) PSD:光センサードメイン(photosensory domain) PRD:PAS(Per-Arnt-Sim)-関連ドメイン HKRD:ヒスチジンキナーゼ-関連ドメイン
【図2】図2はシロイヌナズナゲノム内PAPP5遺伝子とそれより符号化されるPAPP5蛋白質の簡略な構成図。
【図3】図3は本発明のPAPP5と多くの種より分離された第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP5)のアミノ酸配列を多重整列(multiple alignment)した結果である。 H.sap PP5:ホモサピエンス(Homo sapiens)のPP5(GenBank accession No. CAA61595) M.mus PP5:ムスムスクルス(Mus musculus)のPP5(GenBank accession No. AAB70573) R.nor PP5:ラトスノルベギクス(Rattus norvegicus)のPP5(GenBank accession No. CAA54454) S.cer PP5:サカロマイセスセレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のPP5(GenBank accession No. CAA58158) D.meg PP5:ドロソフィラメラノガスタ(Drosophila melanogaster)のPP5(GenBank accession No. CAB99478) C.ele PP5:カエノルハブジティスエレガンス(Caenorhabditis elegans)のPP5(GenBank accession No. CAC51076)
【図4】図4は本発明のPAPP5とフィトクロムAとの相互結合作用を知る為の酵母2-ハイブリッド分析に用いられた各ベイト及びプレイ(prey)の構成図及びこれらを利用した酵母2-ハイブリッド分析を行った結果である。
【図5】図5はグルタチオン-S-トランスファラーゼ(GST)とPAPP5の融合蛋白質(GST-PAPP5)とフィトクロムA又はフィトクロムB間の相互結合を知る為に試験管内結合分析を行った結果である。
【図6】図6は本発明のPAPP5におけるフィトクロムと相互結合作用する部位を究明する為にプルダウン分析(A)及びPAPP5の切片を利用した酵母2-ハイブリッド相互結合定量分析(B)を行った結果である。
【図7】図7は本発明に伴うPAPP5の酵素活性を知る為に試験管内脱リン酸化酵素分析を行った結果である。 A:アラキドン酸100μM濃度下でパラ−リン酸ニトロフェノール(ρ-nitrophenol phosphate;ρNPP)を基質として分析した結果 B:100mMのρNPP濃度下でアラキドン酸(arachidonic acid)添加による触媒効果を分析した結果 C:PAPP5及びこれのドメイン切片等を対象にアラキドン酸の添加に伴う酵素活性の触媒効果を分析した結果
【図8】図8はPAPP5遺伝子のノック−アウト変異体(papp5-1及びpapp5-2)においてT-DNAが挿入された部分を示した模式図(A)と前記ノック−アウト変異体等のPAPP5の遺伝子発現水準を野生型(Col-0、Ws-2)及びPAPP5過発現植物体(PAPP5-OX1及びPAPP5-OX2)と比較して示した結果(B)である。
【図9】図9はノック−アウト変異体(papp5-1)と過発現植物体(PAPP5-OX2)の光反応性を野生型(Col-0)及びフィトクロム変異体(phyA-211及びphyB-9)と比較して調査した結果である。 Rc-HIR:赤色光照射 FRc-HIR:遠赤色相照射
【図10】図10は赤色光(Red)又は遠赤色光(Far-red)照射時ノック−アウト変異体(papp5-1及びpapp5-2)及び過発現植物体(PAPP5-OX1及びPAPP5-OX2)等において光反応遺伝子等(CAB2, RBCS及びCHS)の発現水準を野生型(Col-0及びWs-2)と比較して分析した結果である。
【図11】図11は自己リン酸化された燕麦フィトクロムA(phyA)に対するPAPP5の脱リン酸化活性を測定した結果を図示したものである。 A:PAPP5とこれらのドメイン切片等の脱リン酸化活性を測定した結果; 25%グリセロール及びGST:対照区 GST-TPR:GSTとPAPP5のTPRドメインの融合蛋白質 GST-PP2Ac:GSTとPAPP5の第2A型脱リン酸化酵素(PP2A)と類似性を有する触媒ドメインの融合蛋白質 GST-PAPP5:GSTと全長PAPP5の融合蛋白質 B:燕麦フィトクロムAの光吸収形態に対応するPAPP5の脱リン酸化酵素活性を測定した結果
【図12】図12はPAPP5のTPRドメインを過発現するベクターの簡略な構成図(A)と前記ベクターが導入されたTPRドメイン過発現植物体のT1、T2及びT3世代の様子(B)である。
【技術分野】
【0001】
本発明はフィトクロム光信号伝達機構に関与する新規蛋白質及びこれの用途に関し、より詳しくはフィトクロムと相互結合作用する第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素及びこれの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
植物体等はそれらの光環境の状態を感知する為に、多様な光受容体を発達させてきた。光受容体(未確認UV-B受容体、UV-A/青色光スペクトル部位を感知するクリップトクロムとフォトトロフィン及び赤色光/遠赤色光スペクトル部位を感知するフィトクロム)等は植物の成長と発達を調節する遺伝子等に信号を媒介する(Fankhauser, C. & Chory, J. Curr. Biol., 9:R123-R126,1999; Neff, M. M., et al., Genes Dev., 14:257-271, 2000)。最近分子生物学及び生化学的研究技術と分子遺伝学的研究技術の発展のお陰で光受容体のみならず、光受容体より光反応遺伝子等の光信号の伝達に関与する多様な信号媒介体等に対する遺伝子究明と分子的クローニングがなされた(Quail, P. H.Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002; Gyula, P. et al., Curr. Opin. Plant Biol., 6:446-452, 2003)。
【0003】
フィトクロムは高等植物の成長及び発達の多様な面を調節する、その特性が最も良く研究された光受容体である。フィトクロムに照射される光のスペクトルによって、生物学的に不活性の赤色光吸収型フィトクロム(Pr)と生物学的に活性である遠赤色光吸収型フィトクロム(Pfr)間で相互互換性の光−転換(photo-conversion)が表れる。赤色光処理によるPfr形態への光−転換はフィトクロム自体の細胞質から核への移動(translocation)を開始し、遺伝子発現と発達に多面的効果を誘導する信号伝達経路(signal transduction pathway)を活性化させ、結果的に植物体の成長及び発達を調節するようになる(Quail, P. H. Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002; Fankhauser, C. & Chory, J. Curr. Biol., 9:R123-R126, 1999)。シロイヌナズナではphyA, phyB, phyC, phyD及びphyEで表示される5種のフィトクロムがあるものと報告されている(Neff, M. M., et al., Genes Dev., 14:257-271, 2000; Quail, P. H. Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002)。
【0004】
典型的なフィトクロムは大きさが約116-127kDaのアポプロテイン(apoprotein)とこれに共有結合で連結されるフィトクロモビリン(phytochromobillin)という線形テトラピロル光受容体(tetrapyrrole chromophore)で構成されている(Quail, P. H. Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002; Gyula, P. et al., Curr. Opin. Plant Biol., 6:446-452, 2003)。フィトクロムの光感知活性はPr型とPfr型間で可逆的な光−誘導相互転換(reversible light-induced interconversion)ができるその独特な能力による。フィトクロム分子の単量体(monomer)は光吸収体を固定させる球形のN−末端ドメイン(〜70kDa)、構造的に柔軟性を有するヒンジ部位(hinge region)を通じて連結されたC−末端ドメインで構成されている。前記N−末端ドメインが光を感知する機能を行う。さらに、構造的に開けたC−末端ドメイン(約55kDa)は信号伝達(signal transfer)に関与するものとして知られている(Quail, P. H. Curr. Opin. Cell. Biol,. 14:180-188, 2002; Gyula, P. et al., Curr. Opin. Plant Biol., 6:446-452, 2003)。前記C−末端ドメインは調節中心部位(regulatory core region)の周囲に1対のPer-Ant-Sim(PAS)モチーフを有している。前記PASモチーフは幾つかの感知蛋白質(sensory protein)において、蛋白質−蛋白質相互作用及びドメイン内コミュニケーション(inter-domain communication)に関与するものと知られている。組換え燕麦フィトクロムAを利用した分析を通じてフィトクロムのC−末端ドメインがセリン/トレオニン蛋白質リン酸化酵素(serine/threonine protein kinase)の活性を保有していることが報告されている(Yeh, K. C. & Lagarias, J. C. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13976-13981, 1998; Fankhauser, C. et al., Science, 284:1539-1541, 1999)。さらに、光吸収体により誘導されるフィトクロムの光−異性質化(photo-isomerization)は良く知られた動物の視覚受容体のロドプシン(rhodopsin)(Maeda, T. et al., Prog. Retin. Eye Res., 22:417-434, 2003; Vishnivetskiy, S. A. et al., J. Biol. Chem., 275:41049-41057, 2000)のように分子内でドメイン間コミュニケーションを通じて全体のフィトクロム分子に構造的変化を誘発させていることがスペクトル及び光化学的実験結果等を通じて提示された。さらに、フィトクロムの構造的変化の信号はフィトクロム分子内ドメイン間の相互作用により一層分化することができ、これはヒンジ部位のセリン残基において、可逆的なリン酸化/脱リン酸化(reversible phosphorylation/dephosphorylation)により調節されるものと推定されている。しかしながら、このような多くの信憑性のある結果にも拘らず、フィトクロムの光反応遺伝子等に光信号を伝達する具体的な機構は今までも完全に究明されていない。
【発明の開示】
【0005】
ここに、本発明者等はフィトクロムの光信号の伝達機構及びこれに関与する新たな媒介体分子等を究明する為に、研究を重ねる中フィトクロムと相互作用をする新規蛋白質を見出し、これの機能及び特性を究明することにより本発明を完成した。従って、本発明の目的は、フィトクロム相互結合作用する新規蛋白質及びこれの用途を提供することである。
【0006】
前記のような目的を達成する為に、本発明は配列番号4で表示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と少なくとも70%以上の相同性を有したアミノ酸配列を有する分離されたポリペプチドを提供する。
さらに、本発明は前記ポリペプチドを符号化する塩基配列又は前記塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド及びこれを含む組換えベクターを提供する。
従って、本発明は前記組換えベクターを含む細胞を提供する。
さらに、本発明は前記ポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを植物体内に導入することを含む光信号伝達に敏感な植物体を製造する方法を提供する。
本発明は配列番号4の1-138のアミノ酸配列を符号化するポリヌクレオチドを植物体内に導入することを含む矮性植物体(dwarf plant)を製造する方法を提供する。
さらに、本発明は前記ポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドを利用してフィトクロム信号伝達関連物質を探索する方法を提供する。
本発明は配列番号4の1-138のアミノ酸配列を符号化するポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドを利用して植物の矮小性(dwarfism)誘発物質を探索する方法を提供する。
さらには、本発明は前記ポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを利用して脱リン酸化酵素活性を有する蛋白質を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明はフィトクロムと相互結合作用する新規蛋白質PAPP5を提供する。前記PAPP5は第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP5)の一種であり、そのN-末端には3個のTPR(tetratricopeptide repeats) モチーフが存在し、このTPRはフィトクロムとの相互結合作用に関与する。本発明のPAPP5のC−末端は脱リン酸化酵素活性を表す。前記酵素活性はオカダイック酸(okadaic acid)により抑制され、逆にアラキドン酸(arachidonic acid)により促進される。このようなPAPP5の酵素活性はN−末端に存在するTPRドメインによるアロステリック変化により調節される。さらに、前記PAPP5は自己リン酸化されたフィトクロムを脱リン酸化させる活性を有し、主に、Pfr型のフィトクロムを脱リン酸化させる。
【0008】
本発明によるポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチド及び前記ポリペプチドの機能的同等物を含む。“機能的同等物”とは、アミノ酸の付加、置換又は欠失の結果により、配列番号4で表示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%以上の配列相同性を有し、配列番号4で表示される蛋白質と実質的に同質の生理活性を表すポリペプチドを言う。ここで、“実質的に同質の生理活性”とは、脱リン酸化酵素活性を意味する。前記機能的同等物には例えば、配列番号4で表示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸内の一部が置換されるか又は、欠失或いは付加されたアミノ酸配列変形体が含まれる。この時、アミノ酸の置換は好ましくは保存的置換である。天然に存在するアミノ酸の保存的置換の例は下記の通りである;脂肪族アミノ酸(Gly, Ala, Pro)、疎水性アミノ酸(Ile, Leu, Val)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(His, Lys, Arg, Gln, Asn)及び硫黄含有アミノ酸(Cys, Met)。アミノ酸の欠失は好ましくはPAPP5の生理活性に直接関与しない部分に位置する。本発明のポリペプチドの好ましい機能的同等物は配列番号4の1-138のアミノ酸が欠失されたポリペプチド(配列番号14)の場合もあり得る。前記欠失ポリペプチドとPAPP5は77.8%の相同性を有する。さらに、本発明の機能的同等物の範囲には本発明のポリペプチドの基本骨格及びこれの生理活を維持しながらポリペプチドの一部化学構造が変形されたポリペプチド誘導体も含まれる。例えば、本発明のポリペプチドの安定性、貯蔵性、揮発性又は溶解度等を変形させる為の構造変形がこれに含まれる。
【0009】
本発明のポリペプチドは自然(例えば、植物細胞)から抽出されるか又は本発明のポリペプチドを符号化する組換え核酸の発現により、又は化学的合成により収得できる。好ましくはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)より分離することができる。本発明のポリペプチドは当業界に公知の化学的合成(Creighton, Proteins; Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman and Co., NY, 1983)により容易に製造できる。代表的な方法としてこれらに限定されるものではないものの、液体又は固体状合成、断片凝縮、F-MOC又はT-BOC化合法が含まれる(Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins, Williams et al., Eds., CRC Press, Boca Raton Florida, 1997; A Practical Approach, Athert on & Sheppard, Eds., IRL Press, Oxford, England, 1989)。
【0010】
さらに、本発明のポリペプチドは遺伝工学的方法により作製できる。まず、通常的な方法により前記PAPP5蛋白質又はこれの断片をコーディングするDNA配列を作製する。DNA配列は適切なプライマーを用いてPCR増幅することにより作製できる。他の方法で当業界に公知の標準方法により、例えば、自動DNA合成器(Biosearch又はApplied Biosystems社で販売するもの)を用いてDNA配列を合成することもできる。作製されたDNA配列はこのDNA配列に作動自在に連結され(operably linked)そのDNA配列の発現を調節する一つ又はそれ以上の発現調節配列(expression control sequence)(例:プロモータ、エンハンサー等)を含むベクターに挿入させ、これより形成された組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換させる。生成された形質転換体を前記DNA配列の発現に適切な培地及び条件下で培養して、培養物から前記DNA配列によりコーディングされた実質的に純粋なポリペプチドを回収する。前記の回収は当業界に公知の方法(例えば、クロマトグラフィー)を利用して行える。前記にて“実質的に純粋なポリペプチド”とは、本発明によるポリペプチドが宿主細胞から由来した如何なる他の蛋白質も実質的に含まないことを意味する。本発明のポリペプチド合成の為の遺伝工学的方法は次のような文献を参考にすることができる:Maniatis et al., Molecular Cloning; A laboratory Manual, Cold Spring Harbor laboratory, 1982; Sambrook et al., supra; Gene Expression Technology, Method in Enzymology, Genetics and Molecular Biology, Method in Enzymology, Guthrie & Fink (eds.), Academic Press, San Diego, Calif, 1991;及びHitzeman et al., J. Biol. Chem., 255:12073-12080, 1990。
【0011】
さらに、本発明は前記PAPP5及びこれの機能的同等物を符号化する塩基配列を有するポリヌクレオチドを提供する。前記ポリヌクレオチドはDNA、cDNA及びRNA配列全てを含む。つまり、前記ポリヌクレオチドは配列番号4のアミノ酸配列又はこれと少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を符号化する塩基配列を有するか又は、前記塩基配列に相補的な塩基配列を有することができる。好ましくは、配列番号3又は配列番号15で表示される塩基配列を有する。
【0012】
本発明のポリヌクレオチドは発現調節配列に作動自在に連結することができる。“作動自在に連結する(operably linked)”とは、一つの核酸断片が他の核酸断片と結合され、その機能又は発現が他の核酸断片により影響を受けることを言う。さらに、“発現調節配列(expression control sequence)”とは、特定した宿主細胞において作動自在に連結された核酸配列の発現を調節するDNA配列を意味する。このような調節配列は転写を開始する為のプロモータ(promoter)、転写を調節する為の任意のオペレーター(operator)配列、適切なmRNAリボゾーム結合部位をコーディングする配列及び転写及び翻訳の終結を調節する配列を含む。
【0013】
本発明のポリヌクレオチドは適切な発現ベクター内に挿入することができる。ここで、“発現ベクター”とは、本発明のポリヌクレオチドが挿入できる当業界に公知のプラスミド、ウィルス又はその他の媒介体を意味する。植物細胞内に本発明のポリヌクレオチドを導入させる為のベクターはTi-プラスミド、根誘導性(Ri)-プラスミド及び植物ウィルスベクターがあり、これに限定はされない。好ましくはpNB96ベクターをも利用できる。
【0014】
本発明のポリヌクレオチドを含む組換えベクターは当業界に公知の方法を利用して細胞に導入できる。前記細胞は酵母、植物細胞などの真核細胞又は大腸菌などの原核細胞の場合もあり得る。好ましくは大腸菌細胞又はアグロバクテリウム属微生物細胞である。前記本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入する公知の方法としては、これに限定はされないものの、アグロバクテリウム媒介形質転換法(Agrobacterium-mediated transformation)、粒子銃衝撃法(particle gun bombardment)、シリコン炭化物ウィスカ(Silicon carbide whiskers)、超音波処理(sonication)、電気穿孔法(electroporation)及びPEG(Polyethylenglycol)による沈殿法等を利用できる。本発明は本発明の組換えベクターの形質転換細胞を提供する。前記細胞には酵母、植物細胞などの真核細胞又は大腸菌などの原核細胞が含まれるが、これに限定はされない。
【0015】
本発明は本発明のポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを植物体内で過発現させることにより、光信号伝達に敏感な植物体を製造する方法を提供する。前記方法は下記の段階を含む。
(a)本発明のPAPP5又はこれの機能的同等物を符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入する段階;及び
(b)前記発現ベクターを植物体に導入する段階。
前記ポリヌクレオチドは配列番号3又は配列番号15で表示される塩基配列を有し得る。さらに、前記方法に用いられる発現ベクターは遺伝子の過発現を誘導するプロモータ(例:CaMV 35Sプロモータ)が含まれているベクターが好ましい。その例としてはpNB96ベクターがある。前記“過発現”とは、野生型植物で発現される水準以上に遺伝子が発現されるようにすることを意味する。本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターの植物体への導入方法は前記の通りであり、好ましくはアグロバクテリウム媒介形質転換を利用できる。
【0016】
さらに、本発明は前記方法で製造された形質転換植物体を提供する。前記方法により製造された本発明のポリペプチドを過発現する植物体は光信号伝達に敏感であるとの特徴を有する。つまり、野生型に比べて持続的な短波長赤色光照射反応(continuous red light-high irradiance response; Rc-HIR)及び持続的な短波長遠赤色光照射反応(continuous far-red light-high irradiance response; FRc-HIR)に対し、光に対する敏感性の現象である下胚軸(hypocotyl)が短くなる表現型(de-etiolation)を一層強く表す。さらに、フィトクロムBにより媒介される反応の“End-Of-Day Far-Red(EOD-FR)”反応とフィトクロムAにより媒介される反応のアントシアン(anthocyanin)の蓄積が野生型に比べて強く表れる。前記PAPP5過発現形質転換植物体は光敏感性である為、光が弱かったり光の量が少ない条件においても成長に阻害を受けないので、正常的に成長できる長所がある。さらに、本発明は前記形質転換植物体から由来した植物組織及び種子を提供する。
【0017】
また、本発明は前記ポリペプチドの一部断片を符号化するポリヌクレオチドを植物体内で過発現させることにより、矮性植物体(dwarf plant)を製造する方法を提供する。前記方法は下記の段階を含む:
(a)配列番号4の1-138のアミノ酸配列を符号化するポリヌクレオチドを植物発現ベクターに導入する段階;及び
(b)前記発現ベクターを植物体内に導入する段階。
前記ポリヌクレオチドは本発明のPAPP5のTPRドメインを符号化する。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは配列番号4の1-138に該当するアミノ酸配列を符号化する塩基配列を有する。前記ポリヌクレオチドを導入する為の発現ベクターと、この発現ベクターの植物体への導入方法は、前記光敏感性植物体の製造方法で述べた通りである。好ましくはpNB96ベクターを用いることができ、アグロバクテリウム媒介形質転換法を利用できる。さらに、本発明は前記方法で製造された形質転換植物体及びこれより由来した植物組織と種子を提供する。前記方法で製造されたTPRドメイン過発現形質転換植物体は野生型に比べて短い背丈(shorter height)、多数の新芽(multiple shoots)、花新芽節間(floral shoot internodes)等の矮性表現型(dwarf phenotype)を表す。
【0018】
本発明の方法等が適用できる植物は双子葉植物(dicotyledonous plant)又は単子葉植物(monocotyledonous plant)であることもあり得る。前記双子葉植物は大豆、シロイヌナズナ、煙草、茄子、唐辛子、ペチュニア、馬鈴薯、トマト、白菜、菜種、キャベツ、木綿、チサ、桃、梨、苺、西瓜、まくわ瓜、キュウリ、人参及びセロリを含む。さらに、単子葉植物は稲、大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシ、砂糖黍、燕麦及び玉葱を含む。
【0019】
本発明によるPAPP5はフィトクロム信号伝達に関与する蛋白質であって、フィトクロムA及びフィトクロムBと交叉相互結合作用する。PAPP5とフィトクロム間の相互結合作用にはPAPP5のN−末端に位置するTPRドメインが関与し、PAPP5のC−末端ドメインは脱リン酸化酵素活性を有する。PAPP5は自己リン酸化されたPfr型のフィトクロムにより活性化され、自己リン酸化されたフィトクロムを脱リン酸化させる酵素活性を有している。従って、本発明は前記PAPP5、これの機能的同等物又はこれらを符号化するポリヌクレオチドを利用してフィトクロム信号伝達関連物質を探索する方法を提供する。前記方法により探索されるフィトクロム信号伝達関連物質は本発明のポリペプチド又はこれらを符号化するポリヌクレオチドの活性、発現及び/又は細胞内水準等を増加又は抑制する活性を有するものであることもあり、本発明のポリペプチド間又はポリヌクレオチドと同一であるか、又は類似した活性を有するものであることもあり得る。さらに、本発明のポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドと相互作用して、フィトクロム信号伝達に関与する物質であることもあり得る。前記物質はポリヌクレオチド、ポリペプチド、化学物質(chemical)又は天然抽出物(natural extract)を含み、これに制限はされない。
【0020】
前記方法は本発明のポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドをプローブとして利用して行える。前記“プローブ”とは望む物質を探し出す媒介体を意味する。例えば、前記方法は本発明のポリペプチドやポリヌクレオチドをプローブとしてこれらと候補物質の結合様相を分析することにより行える。さらに、前記方法は本発明のPAPP5を候補物質と接触させ、前記PAPP5の活性を抑制又は活性化する物質を探索することにより行うこともできる。この場合、前記方法は本発明のPAPP5蛋白質を発現する組換え細胞を候補物質と共に培養する段階;及び前記PAPP5の活性又は細胞内水準増加に及ぼす候補物質の効果を測定する段階を含み得る。
【0021】
さらに、前記方法は本発明のポリヌクレオチド又はこれの切片と種々の植物体より抽出したRNA又はmRNAより製造されたcDNAのハイブリダイゼーションを通じて、他の植物体において、本発明の遺伝子と同一であるか又は類似した機能をする遺伝子を探索することにより行うことができる。さらに、前記ポリヌクレオチドと直接的に結合する物質又は前記ポリヌクレオチドの発現を抑制又は活性化する物質等を探索することにより行うことができる。さらに、前記方法は本発明のPAPP5又はこれを符号化するポリヌクレオチドを用いて、当業界に公知の配列相同性検索プログラムを行うことにより、前記PAPP5又はこれを符号化するポリヌクレオチドと高い配列相同性を有する蛋白質又は遺伝子を探索することを含む。
【0022】
前記探索は当業界で一般的に用いられるcDNAライブラリスクリーニング、BAC(bacterial artificial chromosome)スクリーニング、DNAチップ、蛋白質チップ、重合酵素連鎖反応(PCR)、ノーザンブロット、サザンブロット、ウェスタンブロット、酵素免疫反応(ELISA)、2-Dゲル分析、酵母2-ハイブリッドシステム及び試験管内結合アッセイ(in vitro binding assay)を含む多様な方法で行うことができ、これに制限されるものではない。
【0023】
本発明のポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドは探索しようとする物質のスクリーニング及び分離を容易にする為に、放射性同位元素、蛍光色素又は発色酵素等により標識される。好ましくは3H、32P、35S、FITC(Fluorescence Isothiocyanate)、TRITC(Tetrame-thylrhodamine isothiocyanate)、ビオチン(Biotin)、ジゴキシゲニン(Digoxigennin)、HRP(Horse-Radish Peroxidase)、グルコースオキシダーゼ(Glucose Oxidase)、アルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase)等で標識される。標識方法は当業界に公知である。例えば、核酸の標識方法には、ニックトランスレーション(nick translation)、ランダムポリヌクレオチドプライマーを利用した方法などの核酸全体を均一に標識する方法、又はキネーション(kination)やフィリングーイン(filling-in)などの5’末端や3’末端を標識する方法を利用できる。さらに、ポリペプチドの場合には放射性ヨウ素化を通じて標識できる。ポリペプチドのチロシン又はヒスチジンに放射性ヨウ素を直接標識することもでき、クロラミンT法(Chloramine-T)、ヨードゲン法(Iodogen)又はラクト過酸化酵素(lactoperoxidase)を利用して標識することができる。
【0024】
さらに、本発明のPAPP5のTPRドメイン(配列番号4の1-138)は前記記載した通り、PAPP5とフィトクロム間の相互結合作用に関与するのみならず、植物体内で過発現される場合、植物の矮小症(dwarfism)を誘発する。TPRドメインの過発現が植物の矮小症を誘発するということは本発明で最初に究明されたものである。従って、本発明は前記TPRドメイン又はこれを符号化するポリヌクレオチドをプローブとして植物の矮小症誘発物質を探索する方法を提供する。前記方法により本発明のPAPP5のTPRドメインの発現を誘導又は促進するか、前記TPRドメインと相互作用して植物の矮小症を間接的に又は直接的に誘発する物質等が探索できる。探索方法は前記にて記載した通りである。
【0025】
さらには、本発明は本発明のポリペプチド又はこれを符号化するポリヌクレオチドを利用して脱リン酸化酵素活性を有する蛋白質を生産する方法を提供する。前記の方法は下記の段階を含む:
(a)配列番号4のアミノ酸配列又はこれと少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに導入する段階;
(b)前記発現ベクターを細胞に導入する段階;
(c)前記細胞を培養して前記ポリヌクレオチドを発現させる段階;及び
(d)細胞培養液から培養された蛋白質を回収する段階;
前記方法に用いられるポリヌクレオチドは配列番号4で表示されるアミノ酸配列を符号化するポリヌクレオチドのみならず、前記アミノ酸配列と少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを利用できる。好ましくは配列番号4のポリペプチド又は配列番号4の1-138のアミノ酸配列が欠失されたポリペプチド(配列番号14)を符号化するポリヌクレオチドであることもあり得る。より好ましくは配列番号3又は配列番号15の塩基配列を有するポリヌクレオチドであることもあり得る。この方法において、前記細胞は酵母などの真核細胞又は大腸菌などの原核細胞であることもあり得る。
【0026】
本発明の一実施例ではフィトクロムと相互結合する新規の蛋白質を見出だす為に、酵母2-ハイブリッドシステムを利用してシロイヌナズナcDNAライブラリをスクリニングした。この時、ベイト(bait)としてフィトクロムAの全長cDNAを用いた(図1参照)。酵母2-ハイブリッドスクリーニング結果から得たフィトクロムと結合する陽性クローン等の推定されるアミノ酸配列を分析した結果、この内一つのクローンが第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP5)の一種であることが確認できた。PP5はそれのN−末端に蛋白質−蛋白質相互作用に関与する3乃至4個のTPR (tetratricopeptide repeat)を有し、(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)、前記選ばれた陽性クローンのN−末端にも3個のTPRで構成されたドメインが存在した(図2及び図3参照)。さらに、前記クローンのC−末端にはよく保存された脱リン酸化酵素のドメインがあり、セリン/トレオニン脱リン酸化酵素活性に必須のモチーフと、オカダイック酸結合により、脱リン酸化酵素活性が阻害される配列(-SAPNC-)が保存されていた(図3参照)。本発明者等は前記選ばれた陽性クローンを'PAPP5(phytochrome-associated protein phosphatase 5)'と命名した。
【0027】
生体(In vivo)及び試験管内(In vitro)蛋白質−蛋白質相互結合分析の結果、本発明のPAPP5はフィトクロムと特異的な相互結合作用し(図4及び図5参照)、前記相互作用にはPAPP5のN−末端に存在するTPRドメインが関与するものと確認された(図6参照)。さらに、脱リン酸化酵素の一般的な無機基質であるパラ−リン酸ニトロフェノール(ρ-NPP)に対するPAPP5の酵素活性を調査した結果、アロステリックな構造変化(allosteric conformational change)に依存的な活性を有するとの事実を確認することができた。このような構造変化は試験管内でアラキドン酸により誘導され(図7参照)、これは前記TPRドメインが自己抑制(autoinhibitory region)の活性も有していることを提示するものである。
【0028】
さらに、PAPP5は試験管内で自己リン酸化されたフィトクロムを効率的に脱リン酸化させ、前記脱リン酸化酵素活性は光の波長により調節されるものと確認された(図11参照)。特に、PAPP5によるフィトクロムの脱リン酸化現象は主にPfr型において強く表れた。前記生体内及び試験管内結果はPAPP5がフィトクロムにより媒介される光信号経路(phytochrome-mediated light signalling pathways)の調節者であることを提示した。さらに、PAPP5が関与する可逆的なフィトクロムのリン酸化/脱リン酸化がフィトクロムの生物学的活性及びフィトクロムにより媒介される光信号伝達(light signal transduction)の調節に重要な役割をすることを提示した。
【0029】
本発明の他の実施例ではPAPP5のN−末端又はC−末端欠失突然変異の脱リン酸化酵素活性を調査した結果、PAPP5のN−末端欠失突然変異が脱リン酸化酵素活性をそのまま保有していることを確認した(図7のC参照)。
PP5の脱リン酸化酵素活性はアラキドン酸により促進されるものと知られていることから(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)、アラキドン酸によるPAPP5の酵素活性誘導を調査した。その結果、全長PAPP5の脱リン酸化酵素活性もまたアラキドン酸により高い水準に誘導されることが分かった(図7のC参照)。一方、PAPP5のN−末端欠失突然変異はアラキドン酸により誘導されたPAPP5の脱リン酸化酵素活性と同等であるか、若しくはより高い水準の活性を表わし、その活性はアラキドン酸に依存的でなかった。
【0030】
本発明のさらに他の実施例ではPAPP5ノック−アウト変異体とPAPP5過発現植物体を製造し、これらのRc-HIR及びFRc-HIR表現型を調査した。その結果、PAPP5ノック−アウト変異体の場合にはPAPP5過発現植物体とは逆に、長い下胚軸表現型を示し(図9参照)、光-誘導フックオプニング(light-induced hook opening)及び子葉分離(cotyledon separation)の減少率、減少された子葉伸長(cotyledon expansion)と早期開花(early flowering)を観察することができた(図示せず)。一方、PAPP5過発現植物体は野生型に比べて短い下胚軸表現型を表した(図9参照)。また、フィトクロムBにより媒介される反応である“End-Of-Day Far-Red(EOD-FR)”反応と、フィトクロムAにより媒介される反応であるアントシアン(anthocyanin)の蓄積が、野生型の植物体のそれに比較して強く表れた(図示せず)。このような結果は、PAPP5がフィトクロムA及びフィトクロムB信号経路(signalling pathway)で陽性調節者(positive regulator)として機能することを表わす。
【0031】
本発明の他の実施例ではPAPP5のTPRドメインの役割をさらに調査する為に、優性陰性突然変異(dominant negative mutation)の逆遺伝学的(reverse genetics)アプローチを利用した。この為に、PAPP5のTPRドメイン(配列番号4の1-138のアミノ酸配列で構成されたポリペプチド)を野生型植物体で過発現させた。その結果、TPRドメインの過発現植物体はジベレリン欠乏による表現型と類似した表現型を示し、短い背丈(short height)、多数の新芽(multiple shoots)及び花新芽節間(floral shoot internodes)の矮性表現型を表わした。
【実施例】
【0032】
以下本発明を実施例により詳細に説明する。
但し、下記実施例は本発明を例示するものであって、本発明の内容がこれに限定されるものではない。
【0033】
<実施例1> 酵母2-ハイブリッドスクリーニング(yeast two-hybrid screening)
本発明者等はフィトクロムに結合する蛋白質を探索する為に、酵母2-ハイブリッドシステム(DupLEX-ATM, OriGene Technologies)を利用した。まず、当業界に公知の方法により3週令シロイヌナズナからcDNAライブラリを作製した。各cDNA断片をpJG4-5プラスミド(OriGene Technologies)に挿入した(プレイ(prey)製造)。一方、ベイト(bait)はpGilda(OriGene Technologies)のLexA-DNA結合ドメインにフィトクロムAの遺伝子であるPHYAを連結して作製した(図1参照)。この為に米国カリフォルニアサンージエゴ所在のSALK研究所のジョアンコリ博士より提供されたPHYA cDNAクローンから配列番号1及び配列番号2で表示されるプライマーを用いてフィトクロムAの遺伝子をクローニングした。この際PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で2分30秒間の条件を1サイクルにして総35回繰返し行った後、72℃で15分間反応させる条件で行った。以降、pSH18-34リポータープラスミドが導入されたEGY48酵母リポーター菌株(OriGene Technologies)を前記シロイヌナズナcDNA断片を含むプレイとPHYA遺伝子を含むベイトで共同形質転換させた。総7×106個のコロニーをスクリーニングした結果、Leu-とβ-カラクトシターゼに対して陽性反応を示す約150個のコロニーを得た。
【0034】
<実施例2> 陽性クローンの塩基配列分析
前記実施例1の酵母2-ハイブリッドスクリーニングで得た陽性クローンからプラスミドを分離した後、各cDNAクローンの塩基配列を決定した。次に、シロイヌナズナゲノムデーターベースを利用して相同性検索を行った。その結果、cDNAクローンの内一つが 2番染色体のBACクローンF14N22とF7D19上の配列と相同性を示すことが確認できた。前記cDNAクローンを分析した結果、前記cDNAクローンのコーディング領域内に13個のエキソンと12個のイントロンが存在し(図2参照)、484個のアミノ酸を符号化するオープンリーディングフレーム(ORF)が含まれているものと確認された。さらに、その分子量は54kDaと推定された。推定されたアミノ酸配列をNCBI BLASTで分析した結果、前記cDNAクローンから符号化される蛋白質は他の多くの種の第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP5s)と高い相同性を示した。前記蛋白質のアミノ酸配列を他の多くの種のPP5sと双整列(pairwise alignment)した結果(図3参照)、全体相同性(identity)が50-57%であり、C−末端触媒ドメインは若干高い54-62%の相同性を示した。しかしながら、アミノ酸配列の類似性(similarity)は70%以上と極めて高かった。
一方、プロサイト(PROSITE)分析した結果、今まで全てのPP5sで発見されたTPR(tetratricopeptide repeat)が前記蛋白質のN−末端に存在していることが確認できた。さらに、前記蛋白質のC−末端には高く保存された第2A型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP2A)ドメインが存在し、その内部にはセリン/トレオニン脱リン酸化酵素の活性に必須のモチーフ(-GDXHGQ-, -GDXVXRG- 及び-RGNHE-)が含まれていた(図3参照)。前記保存された3個のモチーフ等は触媒作用(catalysis)、基質結合及び金属イオン結合に重要な役割をする(Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998)。さらに、前記蛋白質のC−末端はオカダイック酸が結合して酵素活性を阻害するものとして知られた保存配列(consensus sequence)である“SAPNYC(Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998)”が含まれていた(図3参照)。前記結果から前記cDNAクローンがセリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素を符号化することを確認できた。
本発明者等は前記cDNAクローンを“PAPP5(phytochrome-associated protein phosphatase 5)”と命名した。前記PAPP5の全長cDNA塩基配列とこれより推定されるアミノ酸配列を配列番号3及び配列番号4にそれぞれ記載した。
一方、ノーザンブロット分析結果、前記PAPP5のcDNAは全長が約2kb大の単一転写体と類似したものと確認でき、さらに、サザンブロット分析を通じてPAPP5が単一コピー(single copy)遺伝子であることが確認された(図示せず)。
【0035】
<実施例3> PAPP5とフィトクロム間相互結合作用の分子的特異性調査
pGildaベクターとpJG4-5ベクター(OriGene Technologies)を利用してプレイとベイトをそれぞれ製造した(図4参照)。この際、特異的結合を確認する為の対照区としてC型肝臓炎ウィルス(HCV)の蛋白質であるNS5A(N)(韓国浦項工科大学校生命科学科張承基博士より分譲を受ける)とTPRドメインを有する植物の他の蛋白質であるSPINDLY(SPY)(Jacobsen, S. E., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:9292-9296, 1996)を利用した。さらに、プレイ/ベイトを交互に換えて互恵的な方法(reciprocal method)で蛋白質間結合を観察した。製造されたプレイとベイトをpSH18-34リポータープラスミド(OriGene Technologies)と共にEGY48酵母菌株(OriGene Technologies)に共同導入した。次に、X-gal(5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-galactopyranoside; Rose Scientific Ltd.)を含む培地で形質転換体を選んだ。Leu欠乏培地(Leu-drop out media)及びX-gal培地上でプレート成長分析(plate-growth assay)を行った。
その結果、PAPP5はHCVのNS5A(N)蛋白質とは相互作用をしない反面、シロイヌナズナフィトクロムAと特異的に相互結合作用することを確認できた(図4参照)。さらに、TPRドメインを有している他の植物蛋白質であるSPYはフィトクロムとは相互作用しないことから、PAPP5とフィトクロム間の結合は極めて特異的な結合であることが分かった。
【0036】
<実施例4> 試験管内結合分析(In vitro binding assay)
<4-1> GST-PAPP5 融合蛋白質の発現及び精製
PAPP5とフィトクロム間の試験管内相互作用を調査する為に、pGEX4T-1ベクター(Amersham Pharmacia Biotech.)を利用して全長PAPP5を発現させる為のベクターを製作した。まず、配列番号5及び配列番号6で記載されるプライマーを利用してPCRで全長PAPP5を増幅した。この際、PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルにして総30回繰返し行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。そして、増幅されたPCR産物をpGEX4T-1ベクター(Amersham Pharmacia Biotech.)にクローニングした。PAPP5を含む組換えベクターを大腸菌BL21に導入した。形質転換体を1mM IPTGと共に培養してGST-PAPP5融合蛋白質を発現させた。発現されたGST-PAPP5融合蛋白質をグルタチオンセパロズ4Bビード(Amersham Pharmacia Biotech)を利用して精製した(Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997)。蛋白質を天然の状態で精製する為に、GST-PAPP5融合蛋白質を50mM Tris-HCl pH8.0,4mM MnCl2, 0.1%β-メルカプトエタノール及び10mMグルタチオンを含む緩衝溶液で溶出した。そして、25%グリセロール、1mM EGTA、0.1%β-メルカプトエタノール及び20mM Tris-HCl pH7.6及び4mM MgCl2を溶液として4℃で一夜透析した。透析された蛋白質試料を分析に用いるまで-20℃で保管した。
【0037】
<4-2> PHYA及びPHYB発現ベクター構築
試験管内転写/翻訳システムを利用してシロイヌナズナフィトクロムAとBのアポプロテインであるPHYA及びPHYBを発現させた。
まず、試験管内でPHYAの合成の為、配列番号7及び配列番号2に示されるプライマーを利用して、両側の端にそれぞれBamHI及びXhoIの制限酵素認識配列を含むPHYAの全長cDNAをPCRで増幅した。この際、PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で2分30秒間の条件を1サイクルにして総30回繰返し行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。以降、増幅されたPCR産物をpTriEx-1ベクター(Novagen)のBamHI-XhoI部位に挿入して、PHYAの発現の為の組換え発現ベクターを製造した。一方、PHYBの合成の為、配列番号8及び配列番号9に示されるプライマーを利用して、FbaI-全長PHYB cDNA-Eco52Iの配列を有するPCR産物を増幅させた。このPCR産物をpTriEx-1ベクターのBamHI-XhoI部位に挿入して、PHYBの発現の為の組換え発現ベクターを製造した。符号化された各蛋白質を35S-標識されたメチオニンを利用して、試験管内で合成した。この時、合成は網状赤血球TnT転写/翻訳システム(reticulocyte TnT transcription/translation system; Promega)を利用して製造社の推奨方法により行った。
【0038】
<4-3> 試験管内結合分析
前記実施例4-1で製造したGST-PAPP5融合蛋白質1μgと前記実施例4-2で製造した各TnT蛋白質10μlを蛋白質分解酵素阻害剤(protease inhibitor, Complete, Roche Diagnostics GmbH)と共に、結合緩衝溶液(20mM Tris-HCl, pH7.5, 150mN NaCl, 1mM dithiothreitol, 0.1% Tween 20) 0.3mlに添加した。その後、4℃で弱く回転させながら結合反応を誘導した。10μlのグルタチオンセパローズ4Bビード(Amersham Pharmacia Biotech. AB)を混合物に添加して、同一な条件で1時間多く反応させた。遠心分離後、上澄液部分は別に保管し、ペレット(セパローズビード分画)は1mlの結合緩衝溶液で3回洗浄した。ペレットと上澄液分画(fraction)を10%アクリルアミドが添加されたSDS-PAGEゲルで分析した。次に、富士FLA-2000Rイメージ分析器(Fuji Photo Film)を利用して視覚化した。
その結果、PAPP5がシロイヌナズナのフィトクロムA及びフィトクロムB全てと結合する性質を有していることが確認できた(図5参照)。
【0039】
<実施例5> PAPP5のTPRドメインとフィトクロム間の相互作用調査
本発明のPAPP5を含むPP5sは複数個のTPRsからなる独特なN−末端ドメインを含んでいる点でPP1/PP2群の他のメンバーと区別される。TPRモチーフは両親媒的螺旋(amphipathic helices)を形成するものと推定され、蛋白質−蛋白質相互作用を媒介するものと知られている(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)。従って、本発明のPAPP5とフィトクロム分子間の結合作用にTPRが関与するか否かを調べる為に、プルダウン分析(pull-down assay)と酵母2-ハイブリッド相互作用定量分析を行った。
【0040】
<5-1> プルダウン分析
前記実施例4-1と同一の方法によりpGEX4T-1ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)を利用して、配列番号4の1-138のアミノ酸配列からなるPAPP5のTPRドメイン(N−末端ドメイン;GST-TPR)及び配列番号4の1-138のアミノ酸配列が欠失されたPAPP5のPP2A酵素ドメイン(C−末端ドメイン;GST-PP2Ac)の為の組換え発現ベクターをそれぞれ製作した。
PAPP5のTPRドメインは配列番号5及び配列番号10で表示されるプライマーを利用してPCRで増幅した。PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルにして総30回繰返し行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。一方、PAPP5のPP2A触媒ドメインは配列番号6及び配列番号11に示されるプライマーを利用してPCRで増幅した。PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させた後、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルにして総30回繰返し行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。その後、前記実施例4-1と同一の方法により大腸菌内で発現させ、精製した各蛋白質を対象に試験管内結合分析を行った。
その結果、図6Aに示す通り、GSTと融合したPAPP5のTPRドメイン(GST-TPR)のみが、フィトクロム分子と相互結合に対する能力を有するものとして確認できた。これは、PAPP5がフィトクロム分子と結合するにおいて、TPRドメインが関与することを示したしたものである。
【0041】
<5-2> 酵母 2-ハイブリッド相互結合作用定量分析(Quantitative yeast two-hybrid interaction assay)
PAPP5のTPRドメインとフィトクロム間の相互結合作用を定量分析する為に、PAPP5のTPRドメイン及びPAPP5のPP2A触媒ドメインの為の組換えベクター(プレイ)をそれぞれ製造した。
PHYA遺伝子又はPHYB遺伝子は前記実施例4-2と同一の方法により、PCRを行い準備し、pGildaベクターに挿入して、その組換えベクターをベイトに用いた。製造されたベイト又はプレイをpSH18-34リポータープラスミドと共に、EGY48酵母菌株に共同導入した。形質転換された菌株をOD600値が約0.7になるまで培養した。培養された細胞をZ-緩衝溶液(60mM Na2HPO4, 40mM NaH2PO4, 10mM KCl, 1mM MgSO4, pH7.0)で1回洗浄後、前記溶液に再懸濁させた。その後、液体N2で凍結させた。凍結された溶液を再溶解後、β-メルカプトエタノール(β-mercaptoethanol)とONPG(o-nitrophenyl-β-D-galactopyranoside)を最終濃度0.2%及び0.67mg/mlでそれぞれ添加した。溶解物を30分間37℃で反応させ、Na2CO3を最終濃度0.3Mで添加して反応を終結した。420nmで吸光度を測定し、β-カラクトシターゼ活性をミラー単位(Miller unit)で決定した(Miller, J. H. Experiments in Molecular Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring harbor, New York, 1972)) 。
その結果、図6Bに示す通り、TPRドメインが欠失されたPAPP5のPP2A触媒ドメイン(B42-PP2Ac)はフィトクロム−相互作用活性を著しく減少させる効果を示した。前記結果はPAPP5のTPRドメインがPAPP5−フィトクロム分子間の相互結合作用の為の特異的な部位であることを再立証するものである。さらに、これは前記プルダウン分析結果と一致するものである。
【0042】
<実施例6> 試験管内脱リン酸化酵素活性分析(In vitro phosphatase assay)
<6-1> 脱リン酸化酵素活性測定
本発明のPAPP5が酵素学的に活性を有するか否かを調べる為に、無機パラ−リン酸ニトロフェノール(ρ-nitrophenyl phosphate; ρNPP)を基質として用いて酵素分析をした。まず、前記実施例4-1で精製されたGST-PAPP5融合蛋白質を30℃で1分間予熱した。予熱された酵素溶液を0-400mM ρNPPを含むリン酸化酵素/脱リン酸化酵素(KP)緩衝溶液(20mM Tris-HCl pH7.5, 30mM MgCl2, 1mM EDTA, 1mM EGTA, 0.1% β-mercaptoethanol, 0.1% ethanol)100μlに添加して反応を開始した。各基質濃度におけるρNPPの自発的な加水分解を調査する為に、対照区にはGST-PAPP5酵素溶液を添加しなかった。30℃で15分間反応させた後、0.25N NaOH 900μlを添加して反応を終結した。410nmで吸光度を測定した。酵素を除いた全ての構成成分を含む対照区反応液の吸光度数値を差引いた後、パラ−ニトロフェノールレート(ρ-nitrophenolate)イオンのmM吸光係数(millimolar extinction coefficient)17.8を利用して比率(rate)を計算した。
その結果、図7Aに示す通り、ρNPPの濃度が増加するにつれて、脱リン酸化酵素活性が増加することが確認できた。これは本発明のPAPP5が脱リン酸化酵素活性を有していることを示すものである。100μMアラキドン酸の存在下で酵素-基質反応をミカエリス-メンテンの式(Michaelis-Menten kinetic)でKm値とVmax値を計算した結果、Km値は160mM ρNPPであり、Vmax値は22μmol Pi released/min/mgであった。
【0043】
<6-2> アラキドン酸によるPAPP5の触媒活性誘導測定
PP5sの最も目立つ特徴はアラキドン酸によりその触媒活性(catalytic activity)が誘導されることである(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; O
llendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers,
M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)。本発明のPAPP5の脱リン酸化酵素活性がアラキドン酸により活性化されるか否かを確認する為に、100mMのρNPPの濃度下で0-300μMアラキドン酸を反応混合物に添加して、前記実施例 6-1と同一の方法により酵素活性を測定した。
その結果、GST-PAPP5の活性がアラキドン酸により、濃度依存的に増加され、アラキドン酸の濃度が約100μM以上において最大効果段階(stationary phase)に到達した(図7B参照)。
さらに、PP5sの触媒活性はオカダイック酸により試験管内で抑制されると報告されている(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:3201132018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocrinol. Metab., 12:28-32, 2001)。そこで、GST-PAPP5の脱リン酸化酵素活性に対するオカダイック酸の阻害効果を調査した。その結果、酵素活性が半分に阻害される濃度値であるオカダイック酸のIC50値が5nMであった(図示せず)。
前記結果は本発明のPAPP5がセリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素科(family)でPP5亜科(PP5 subfamily)に属する蛋白質を符号化することを証明するものである。
【0044】
<6-3> アロステリック構造変化に伴う酵素活性調査
他の種より分離されたPP5sに対する以前の研究結果によりTPRモチーフを含むPP5sのN−末端断片がアロステリック構造変化を表わすと言う事実が明かにされている(Das, A. K., et al., EMBO J., 17:1192-1199, 1998; Skinner, J. et al., J. Biol. Chem., 272:22464-22471, 1997; Ollendorff, V. et al., J. Biol. Chem., 272:32011-32018, 1998; Chinkers, M. Trends Endocri
nol. Metab., 12:28-32, 2001)。そこで、本発明者等はPAPP5も前記のような特性を有しているか否かを確認する為に、GST-PAPP5、GST-TPR及びGST-PP2Acの脱リン酸化酵素活性を前記実施例6-1と同一の方法により調査した。この時ρNPPの濃度は100mMとした。
その結果、図7Cに示す通り、GST-PAPP5の脱リン酸化酵素活性はアラキドン酸により約5倍程増加するのが確認できた。一方、TPRドメイン(アミノ酸 1-138)が除去されたGST-PP2Acは、アラキドン酸の添加に関係無くアラキドン酸が無い時のGST-PAPP5より5倍高い活性を示した。
前記結果はPAPP5の脱リン酸化酵素活性が他のPP5sと類似してN−末端TPRドメインのアロステリック構造変化により調節されることを示し、一方、前記TPRドメインが自己抑制(autoinhibitory region)の活性も有していることを提示するものである。さらに、前記結果からTPRドメインが欠失されたPAPP5のPP2A触媒ドメインを脱リン酸化酵素として用いられることが確認できた。
【0045】
<実施例7> PAPP5の不活性化又は過発現に伴う植物体の表現型調査
PAPP5が生体内フィトクロム媒介光信号伝達に直接関与するか否かを調べる為に、PAPP5遺伝子に対するノック−アウト変異体及びPAPP5過発現植物体を製造してこれらの表現型を調査した。
【0046】
<7-1> PAPP5遺伝子のノック−アウト変異体探索
PAPP5遺伝子のT-DNA挿入突然変異を探索して2個の突然変異体ライン(papp5-1及びpapp5-2)を構築した。
ある突然変異体のpapp5-1はCol-0野生型で製造された個別的T-DNA突然変異集団(separate T-DNA mutagenized population)(SIGnAL T-DNA Express (http:
//signal.salk.edu/cgi-bin/tdnaexpress), Salk Institute Genomic Analysi
s Laboratory)から得た。前記突然変異体でT-DNAは第1イントロン(1st intron)に挿入されたものと確認でき(図8A参照)、これによりpapp5-1が無機能対立因子(null allele)であることが予測された。さらに、他の突然変異体のpapp5-2はWs-2野生型で製造されたノック−アウト突然変異体集団(Krysan, P. J., et al., Plant Cell, 11:2283-2290, 1999)から分離されたDNA等をスクリーニングして分離した。papp5-2においてT-DNAは第12イントロンに挿入されたものと確認できた(図8A参照)。
薬剤-抵抗性表示(カナマイシン抵抗性遺伝子)に対する分離度を調査した結果、papp5-1とpapp5-2は共に単一のT-DNAがPAPP5遺伝子の上に挿入されたものと確認できた。前記無機能対立因子を有している二つの突然変異ラインに対して多くの薬剤-抵抗性幼苗を増殖させた。その後、各植物体の子孫を対象に薬剤-抵抗性をスクリーニングして相同型ライン(homozygous line)を選抜した。突然変異体ラインの相同性(homozygosity)はサザンブロット分析(Southern blot analysis)とPCRで確認できた(図示せず)。
【0047】
<7-2> PAPP5 過発現植物体製造
配列番号12及び配列番号13で示されるプライマーを利用してPAPP5 cDNAを増幅した。この時、PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを前変性させ、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルとして総30回繰返して行い、72℃で10分間反応させる条件で行った。その後、増幅されたPCR産物をこの内の35S CaMVプロモータ(dual 35S pro) とその下流に35S CaMVターミネータ(35S ter)があるpNB96ベクターにクローニングした。前記組換えベクターを電気衝撃法(electroporation)でアグロバクテリウムAGL1に導入した。次に、花卉水浸方法(floral-dip method)(Clough, S. J. & Bent, A. F. Plant J., 16:735-743, 1998)により前記形質転換されたアグロバクテリウムでシロイヌナズナを形質転換させた。25μg/mlのDL-PPT(DL-phosphinothricin, Duchefa Biochemie BV)を利用してPAPP5 が過発現している独立的な形質転換体2個体を選抜した。選抜された2個体をそれぞれ“PAPP5-OX1”及び“PAPP5-OX2”と命名した。
【0048】
<7-3> ノック−アウト変異体及び過発現植物体の確認及び分析
a.ノーザンブロット分析
PAPP5転写体水準を分析する為に、アールエヌイージー植物ミニキット(RNeasy plant mini kits)(Qiagen, Valencia, CA)を利用して前記実施例 7-1及び7-2で得た植物体から全体RNAを分離した。全体RNA10μgをホルムアルデヒドを含む1.0%アガロスゲル状より分離し、ナイロン膜でトランスファーした。前記膜にPAPP5遺伝子に特異的な32P-標識されたプローブ(配列番号3の300-700bpに該当する断片)をハイブリダイズさせた。そして、富士FLA-2000Rイメージ分析器(Fuji photo film)を利用して放射線シグナルを照射した。
その結果図8Bに示した通り、ノック−アウト変異体のpapp5-1及びpapp5-2では放射線シグナル(PAPP5転写体)が検出されなかったが、過発現植物体のPAPP5-0X1及びPAPP5-OX2では放射線シグナルが検出された。
【0049】
b.光反応性調査
ノック−アウト変異体及び過発現植物体種子の表面を30%漂白剤(1.2% sodium hypoghlorite)と0.015%トリトンX-100で10分間消毒した。その後、種子を滅菌水で5回洗浄した。春化処理(vernalization)の為に、3日間暗/冷処理(dark/cold-treatment)後、種子を成長培地(スクローズを含まない0.1×Murashige-Skoog;0.1×MS)を含む0.8%フィトアガー(phytoagar)培地に置床した。その後、プレートを200μmolm-2sec-1の白光(F48T12/CW/VHO, Philips)に12時間持続的に露出させ、22℃の暗条件で12時間培養して発芽を促進させた。下胚軸の長さを測定する前に、4日間多様な条件(暗条件、持続的な短波長赤色光(Rc)及び持続的な短波長遠赤色光(FRc))下でプレートを置いた。光源(light source)は金博士等の論文(Kim, B. C. et al. Plant J., 9:441-456, 1996)に開示された通りに使用し、光度(fluence rate)は分光放射輝度計(spectroradiometer) (Hanbead Optical Power Meter 840, Newport)を利用してモニターリングした。下胚軸の長さはHPスキャンジェット5370Cデジタルスキャナー(HP ScanJet 5370C digital scanner, Hwelett Packard)とサイオンイメージソフトウェア(Scion image software, Beta 4.0.2, Scion Corporation)を利用して測定した。この時、野生型シロイヌナズナ(Col-O)とフィトクロム変異体(phyB-9及びphyA-211)(Arabidopsis Biological Resource Centerで分譲を受ける)を対照区植物体として利用した。
図9はノック−アウト変異体(papp5-1)及びPAPP5過発現植物体(PAPP5 OX-2)の光反応性を調査する為に、Rc及びFRc光度(fluence rate)に対応する下胚軸の長さ成長抑制反応カーブを野生型(Col-0)及びフィトクロム突然変異体(phyB-9)のものと比較して図示したものである。図9に示す通り、ノック−アウト変異体(papp5-1)は低い光度のRc及びFRcに対して鈍感(hyposensitivity)であることを示したが、PAPP5過発現植物体はRc及びFRcに対して過敏(hypersensitivity)であることを示した。さらに、PAPP5過発現植物体ではフィトクロムBにより媒介される反応である“End-Of-Day Far-Red(EOD-FR)”反応とフィトクロムAにより媒介される反応であるアントシアーン(anthocyanin)の蓄積が野生型に比べて強く表れることを確認できた(図示せず)。このような光-依存表現型の強度はPAPP5 転写体水準と相互関連があるものと確認できた。
【0050】
一方、PAPP5遺伝子の崩壊により誘導されたノック−アウト変異体においては長い下胚軸表現型の他、光−誘導フックオープニング及び子葉分離の減少率、減少された子葉伸長及び早期開花(early flowering)が観察された(図示せず)。これより、PAPP5がフィトクロムにより調節される植物の光形態形成(photomorphogenesis)に機能的に関与することが分かった。
【0051】
<実施例8> ノック−アウト変異体及び過発現植物体で光反応遺伝子等の転写体水準分析
フィトクロム媒介光信号伝達に対するPAPP5の関与が遺伝子発現水準で発生するのか否かを確認する為に、ノック−アウト変異体及び過発現植物体において光により発現が調節されるものと知られた3種の遺伝子の発現水準を野生型と比較して調査した。陽性として調節を受けるRBCS遺伝子(GenBank accession No. X15221)、CAB2遺伝子(GenBank accession No. X14564)、CHS遺伝子(GenBank accession No. BT000596)。
各植物体の種子を0.1×MS塩を含む0.8%フィトアガー培地上にそれぞれ置床し、プレートを3日間4℃の暗条件においた。発芽を誘導する為に、プレートを200μmolm-2sec-1の白光に24時間露出させた。次に、幼苗をさらに4日間暗条件で成長させ下記の光条件に移した:
【0052】
Rc:664nm波長、20μmolm-2sec-1光量で2時間露出させた。
FRc:748nm波長、10μmolm-2sec-1光量において2時間露出させた。
緑色安全灯(green safe light)下で組織を採取し、これよりアールエヌイージー植物ミニキット(Qiagen)を利用して全体RNAを分離した。その後、ホルムアルデヒドを含む1%アガロスゲルにおいて、5μgの全体RNAを分離し、前記ゲルをナイロン膜にトランスファーした。各遺伝子に特異的な32P-標識されたプローブを前記膜に処理してハイブリダイズさせた。富士FLA-2000Rイメージ分析器(Fuji Photo Film)でシグナルを照射した。
その結果、図10に示した通り、暗処理時にはRBCS、CAB2及びCHS mRNAが全ての植物体で低い水準で検出された。しかしながら、Rc及びFRc照射の際野生型(Col-0, Ws-2)では前記3つの遺伝子の発現が高い水準で増加した。これは前記遺伝子等の調節にフィトクロムAとフィトクロムBが関与すると言う事実と一致する結果である(Nagy, F. & Schafer, E. Annu. Rev. Plant Biol., 53:329-355, 2002)。一方、PAPP5過発現植物体ではRc及びFRc照射の際前記遺伝子等の発現水準が野生型に比べて増加したことが示した。反対に、ノック−アウト変異体等(papp5-1, papp5-2)では前記遺伝子等の発現が暗処理時より増加はしたものの、その程度が野生型の場合に比べて低かった。これはノック−アウト変異体で RBCS、CAB2及びCHS遺伝子等の光反応性が野生型に比べて敏感でないことを示すものである。前記結果からPAPP5無機能突然変異により光反応性遺伝子等に対するフィトクロムの信号伝達能が低下することが分かった。
【0053】
<実施例9> 自己リン酸化されたフィトクロムのPAPP5による脱リン酸化
可逆的なリン酸化/脱リン酸化反応が信号伝達及び/又はフィトクロム活性調節と関係の有り得ることが生化学的分析を通じて既に報告されている(Yeh, K. C. & Lagarias, J. C. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13976-13981, 1998; Fankhauser, C. et al., Science, 284:1539-1541, 1999)。そこで、本発明者等はフィトクロムと相互結合するPAPP5の分子的性質を確認する為に、自己リン酸化されたフィトクロムAが試験管内でPAPP5により直接的に脱リン酸化されるか否かを調査した。
まず、精製された燕麦フィトクロムA(錦湖生命環境科学研究所より提供を受ける)1μgを含むKP緩衝溶液(20mM Tris-HCl pH7.5, 30mM MgCl2, 1mM EDTA, 1mM EGTA, 0.1% β-mercaptoethanol, 0.1% ethanol)を氷の上において664nmで50μmolS-1m-2の光度を有するRcを5分間照射した。次に、前記反応溶液[γ-32P]ATPを添加して30分間暗条件で反応させた(フィトクロムAの自己リン酸化反応)。その後、前記実施例 4-1及び5-1でそれぞれ製造した融合蛋白質 GST-PAPP5、GST-TPR及びGST-PP2Ac 1μgをそれぞれ添加して30分間反応させた。かすかな緑色の安全灯(dim green safe light)下で12μlの5Xトリス−グリシンSDS試料緩衝溶液(5X Tris-Glycine SDS sample buffer)を添加して反応を終結させた。得られた反応産物に対して、10% SDS-PAGEを行った後、富士FLA-2000Rイメージ分析器(Fuji Photo Film)を利用して自己放射記録分析(autoradiography analysis)を行った。
【0054】
その結果、図11Aに示した通り、GST-PAPP5のみが自己リン酸化された燕麦フィトクロムAのPfr型を約80%程度に脱リン酸化させことを確認した。GST-PP2Acを含む反応混合液においても燕麦フィトクロムAの脱リン酸化が検出されたものの、その活性が極めて低かった。これよりPAPP5が自己リン酸化されたPfrフィトクロムを主ターゲットにして脱リン酸化させ、これを通じてPfrフィトクロムのリン酸化状態を調節するものと思われる。つまり、前記結果は自己リン酸化されたPfr型のフィトクロムAがPAPP5の脱リン酸化酵素活性を誘導し、活性化されたPAPP5は再度自己リン酸化されたPfrフィトクロムAを直接的に脱リン酸化させることを示した。さらに、前記結果はPAPP5のTPRドメイン(GST-TPR)又はPAPP5 の酵素活性ドメイン(GST-PP2Ac)による単純な物理的結合又は非特異的酵素活性が、Pfrフィトクロムのリン酸化状態に影響が及ばないことを示した。
【0055】
次に、本発明者等はPAPP5の脱リン酸化酵素活性がフィトクロム分子の固有特性である分光学的構造変化(Pr⇔Pfr)に依存するか否かを調査した。フィトクロムを含むKP緩衝溶液を氷の上において664nmで50μmolS-1m-2の光度を有するRc(フィトクロムがPfr 型に転換される)又は748nmで50μmolS-1m-2の光度を有するFRc(フィトクロムがPfr 型に転換される)を5分間それぞれ照射した。以降、前記と同一な方法でフィトクロムの自己リン酸化/脱リン酸化実験を行った。
その結果、図11Bに示した通り、Pr型よりはPfr 型でPAPP5による脱リン酸化程度が 著しく高いことが確認できた。
前記結果はフィトクロムに対するPAPP5脱リン酸化酵素活性が光により調節され、これは特に主にリン酸化されたPfr型で効率的に行われることを示唆する。このようなフィトクロムPAPP5複合体形成と脱リン酸化酵素活性の活性化/誘導(activation/stimulation)間の相互関係はPAPP5がフィドバック方式でフィトクロムのリン酸化されたPfrを特異的標的(specific target)にすることを提示する。
【0056】
<実施例11> PAPP5のTPRドメインの過発現植物体製造
PAPP5のTPRドメインの機能を調査する為に、優性陰性突然変異(dominant negative mutation)を通じた逆遺伝的接近(reverse genetic approach)を利用した。TPRドメインコーディング部位(配列番号4の1-138アミノ酸配列)を増幅する為に、配列番号5及び配列番号10で記載されるプライマーを利用してPCRを行った。この時、PCR反応は94℃で5分間鋳型DNAを変性させ、94℃で30秒;50℃で30秒;及び72℃で1分間の条件を1サイクルにして総30回繰返して行い、72℃で10分間反応させる条件で行った。その後、PCR産物をpNB96ベクターにクローニングした(図12A参照)。製造されたベクターを“pNB96-TPR”と命名した。pNB96-TPRベクターを電気衝撃法でアグロバクテリウムAGL1に導入した。次に、花卉水浸方法(SIGnAL T-DNA Express (http://signal.salk.edu/cgi-bin/tdnaexpress), Salk Institute Genomic Analysis Laboratory)により形質転換されたアグロバクテリウムでシロイヌナズナを形質転換させた。25μg/μlのDL-PPT(Duchefa Biochemie BV)を利用して形質転換植物を選抜した。総25個体のT1ラインを得て、これらを‘PAPP5-DN’と命名した。その後、DL-PPT抵抗性の分離を基にして、相同性T3種子等を分離した。T3植物体を白色光下で培養した結果、前記植物体は野生型に比べて短い背丈、複数の新芽(multiple shoots)及び花新芽節間の矮性化(dwarfing of the floral shoot internodes)を示した(図12B参照)。これはPAPP5のTPRドメインが蛋白質−蛋白質相互作用に関与することから見て、向上した蛋白質−蛋白質相互作用能により誘導されるものと判断される。さらに、これはPAPP5のTPRドメインを植物体に導入して過発現させると植物体に矮性を導入できることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明した通り、本発明では植物の成長及び発達を調節する光信号伝達に関与する新規蛋白質及びそれの機能を究明した。本発明のPAPP5はフィトクロムA及びBと交叉相互結合作用する。本発明のPAPP5はフィトクロムとの相互作用に関与するTPRドメインと脱リン酸化酵素活性を担当するPP2A触媒ドメインを含む。本発明のPAPP5は脱リン酸化酵素として利用することができ、光信号伝達に敏感な植物体の製造に有用に利用できる。さらに、本発明のPAPP5内に存在するTPRドメインは矮性植物体の製造に有用に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1はシロイヌナズナcDNAライブラリでフィトクロムAと相互結合作用する蛋白質を見出だす為に、作製した酵母2-ハイブリッドシステムのベイト(bait)の簡略な構成図。 区画された長方形(partitioned rectangle):クロモフォア(chromophore) PSD:光センサードメイン(photosensory domain) PRD:PAS(Per-Arnt-Sim)-関連ドメイン HKRD:ヒスチジンキナーゼ-関連ドメイン
【図2】図2はシロイヌナズナゲノム内PAPP5遺伝子とそれより符号化されるPAPP5蛋白質の簡略な構成図。
【図3】図3は本発明のPAPP5と多くの種より分離された第5型セリン/トレオニン蛋白質脱リン酸化酵素(PP5)のアミノ酸配列を多重整列(multiple alignment)した結果である。 H.sap PP5:ホモサピエンス(Homo sapiens)のPP5(GenBank accession No. CAA61595) M.mus PP5:ムスムスクルス(Mus musculus)のPP5(GenBank accession No. AAB70573) R.nor PP5:ラトスノルベギクス(Rattus norvegicus)のPP5(GenBank accession No. CAA54454) S.cer PP5:サカロマイセスセレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のPP5(GenBank accession No. CAA58158) D.meg PP5:ドロソフィラメラノガスタ(Drosophila melanogaster)のPP5(GenBank accession No. CAB99478) C.ele PP5:カエノルハブジティスエレガンス(Caenorhabditis elegans)のPP5(GenBank accession No. CAC51076)
【図4】図4は本発明のPAPP5とフィトクロムAとの相互結合作用を知る為の酵母2-ハイブリッド分析に用いられた各ベイト及びプレイ(prey)の構成図及びこれらを利用した酵母2-ハイブリッド分析を行った結果である。
【図5】図5はグルタチオン-S-トランスファラーゼ(GST)とPAPP5の融合蛋白質(GST-PAPP5)とフィトクロムA又はフィトクロムB間の相互結合を知る為に試験管内結合分析を行った結果である。
【図6】図6は本発明のPAPP5におけるフィトクロムと相互結合作用する部位を究明する為にプルダウン分析(A)及びPAPP5の切片を利用した酵母2-ハイブリッド相互結合定量分析(B)を行った結果である。
【図7】図7は本発明に伴うPAPP5の酵素活性を知る為に試験管内脱リン酸化酵素分析を行った結果である。 A:アラキドン酸100μM濃度下でパラ−リン酸ニトロフェノール(ρ-nitrophenol phosphate;ρNPP)を基質として分析した結果 B:100mMのρNPP濃度下でアラキドン酸(arachidonic acid)添加による触媒効果を分析した結果 C:PAPP5及びこれのドメイン切片等を対象にアラキドン酸の添加に伴う酵素活性の触媒効果を分析した結果
【図8】図8はPAPP5遺伝子のノック−アウト変異体(papp5-1及びpapp5-2)においてT-DNAが挿入された部分を示した模式図(A)と前記ノック−アウト変異体等のPAPP5の遺伝子発現水準を野生型(Col-0、Ws-2)及びPAPP5過発現植物体(PAPP5-OX1及びPAPP5-OX2)と比較して示した結果(B)である。
【図9】図9はノック−アウト変異体(papp5-1)と過発現植物体(PAPP5-OX2)の光反応性を野生型(Col-0)及びフィトクロム変異体(phyA-211及びphyB-9)と比較して調査した結果である。 Rc-HIR:赤色光照射 FRc-HIR:遠赤色相照射
【図10】図10は赤色光(Red)又は遠赤色光(Far-red)照射時ノック−アウト変異体(papp5-1及びpapp5-2)及び過発現植物体(PAPP5-OX1及びPAPP5-OX2)等において光反応遺伝子等(CAB2, RBCS及びCHS)の発現水準を野生型(Col-0及びWs-2)と比較して分析した結果である。
【図11】図11は自己リン酸化された燕麦フィトクロムA(phyA)に対するPAPP5の脱リン酸化活性を測定した結果を図示したものである。 A:PAPP5とこれらのドメイン切片等の脱リン酸化活性を測定した結果; 25%グリセロール及びGST:対照区 GST-TPR:GSTとPAPP5のTPRドメインの融合蛋白質 GST-PP2Ac:GSTとPAPP5の第2A型脱リン酸化酵素(PP2A)と類似性を有する触媒ドメインの融合蛋白質 GST-PAPP5:GSTと全長PAPP5の融合蛋白質 B:燕麦フィトクロムAの光吸収形態に対応するPAPP5の脱リン酸化酵素活性を測定した結果
【図12】図12はPAPP5のTPRドメインを過発現するベクターの簡略な構成図(A)と前記ベクターが導入されたTPRドメイン過発現植物体のT1、T2及びT3世代の様子(B)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号4で表示されるアミノ酸配列、又は
(b)前記アミノ酸配列と少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列
を有するポリペプチド。
【請求項2】
第1項に記載の配列番号14で表示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項3】
(a)第1項のポリペプチドを符号化する塩基配列、又は
(b)前記塩基配列と相補的な塩基配列
を有するポリヌクレオチド。
【請求項4】
第3項に記載の配列番号3又は配列番号15で表示される塩基配列を有するポリヌクレオチド。
【請求項5】
第3項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項6】
第5項に記載の配列番号3又は配列番号15に表示される塩基配列を有するポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項7】
第5項の組換えベクターを含む細胞。
【請求項8】
下記の段階を含む光信号伝達に敏感な植物体を製造する方法:
(a)第1項のポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入する段階;及び
(b)前記発現ベクターを植物体内に導入する段階。
【請求項9】
第8項の方法により製造された形質転換植物体。
【請求項10】
第9項の形質転換植物体から由来した植物組織又は種子。
【請求項11】
下記の段階を含む矮性植物体(dwarf plant)を製造する方法:
(a)配列番号4の1-138 のアミノ酸配列を符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入する段階;及び
(b)前記発現ベクターを植物体内に導入する段階。
【請求項12】
第11項に記載の前記植物体は野生型植物体に比べて短い背丈(shorter height)、複数の新芽(multiple shoots)及び花新芽節間(floral shoot internodes)からなる群より選ばれた一つ以上の表現型(phenotypic trait)を示すことを特徴とする方法。
【請求項13】
第11項の方法により製造された形質転換植物体。
【請求項14】
第13項の形質転換植物体から由来したことを特徴とする植物組織又は種子。
【請求項15】
第9項又は第13項に記載の前記植物体は双子葉植物又は単子葉植物であることを特徴とする植物体。
【請求項16】
第1項に記載のポリペプチド又はこのポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを用いて、フィトクロム信号伝達関連物質を探索する方法。
【請求項17】
配列番号4の1-138のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はこのポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを用いて、植物の矮小症(dwarfism)を誘発する物質を探索することを特徴とする方法。
【請求項18】
第16項又は第17項に記載の方法が、cDNAライブラリスクリーニング、BAC(bacterial artificial chromosome)スクリーニング、DNAチップ、蛋白質チップ、重合酵素連鎖反応(PCR)、ノーザンブロット、サザンブロット、ウェスタンブロット、酵素免疫反応(ELISA)、2-Dゲル分析、酵母2-ハイブリッドシステム(yeast two-hybrid system)及び試験管内結合アッセイ(in vitro binding assay)からなる群より選ばれた少なくともいずれか一つを行うものであることを特徴とする方法。
【請求項19】
下記の段階を含むリン酸化酵素活性を有する蛋白質を生産する方法:
(a)第1項のポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに導入する段階;
(b)前記発現ベクターを細胞に導入する段階;
(c)前記細胞を培養して前記ポリヌクレオチドを発現する段階;及び
(d)細胞培養液から発現された蛋白質を回収する段階。
【請求項1】
(a)配列番号4で表示されるアミノ酸配列、又は
(b)前記アミノ酸配列と少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列
を有するポリペプチド。
【請求項2】
第1項に記載の配列番号14で表示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項3】
(a)第1項のポリペプチドを符号化する塩基配列、又は
(b)前記塩基配列と相補的な塩基配列
を有するポリヌクレオチド。
【請求項4】
第3項に記載の配列番号3又は配列番号15で表示される塩基配列を有するポリヌクレオチド。
【請求項5】
第3項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項6】
第5項に記載の配列番号3又は配列番号15に表示される塩基配列を有するポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項7】
第5項の組換えベクターを含む細胞。
【請求項8】
下記の段階を含む光信号伝達に敏感な植物体を製造する方法:
(a)第1項のポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入する段階;及び
(b)前記発現ベクターを植物体内に導入する段階。
【請求項9】
第8項の方法により製造された形質転換植物体。
【請求項10】
第9項の形質転換植物体から由来した植物組織又は種子。
【請求項11】
下記の段階を含む矮性植物体(dwarf plant)を製造する方法:
(a)配列番号4の1-138 のアミノ酸配列を符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入する段階;及び
(b)前記発現ベクターを植物体内に導入する段階。
【請求項12】
第11項に記載の前記植物体は野生型植物体に比べて短い背丈(shorter height)、複数の新芽(multiple shoots)及び花新芽節間(floral shoot internodes)からなる群より選ばれた一つ以上の表現型(phenotypic trait)を示すことを特徴とする方法。
【請求項13】
第11項の方法により製造された形質転換植物体。
【請求項14】
第13項の形質転換植物体から由来したことを特徴とする植物組織又は種子。
【請求項15】
第9項又は第13項に記載の前記植物体は双子葉植物又は単子葉植物であることを特徴とする植物体。
【請求項16】
第1項に記載のポリペプチド又はこのポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを用いて、フィトクロム信号伝達関連物質を探索する方法。
【請求項17】
配列番号4の1-138のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はこのポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを用いて、植物の矮小症(dwarfism)を誘発する物質を探索することを特徴とする方法。
【請求項18】
第16項又は第17項に記載の方法が、cDNAライブラリスクリーニング、BAC(bacterial artificial chromosome)スクリーニング、DNAチップ、蛋白質チップ、重合酵素連鎖反応(PCR)、ノーザンブロット、サザンブロット、ウェスタンブロット、酵素免疫反応(ELISA)、2-Dゲル分析、酵母2-ハイブリッドシステム(yeast two-hybrid system)及び試験管内結合アッセイ(in vitro binding assay)からなる群より選ばれた少なくともいずれか一つを行うものであることを特徴とする方法。
【請求項19】
下記の段階を含むリン酸化酵素活性を有する蛋白質を生産する方法:
(a)第1項のポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを発現ベクターに導入する段階;
(b)前記発現ベクターを細胞に導入する段階;
(c)前記細胞を培養して前記ポリヌクレオチドを発現する段階;及び
(d)細胞培養液から発現された蛋白質を回収する段階。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−500026(P2008−500026A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500691(P2007−500691)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000557
【国際公開番号】WO2005/082931
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506290925)ゼノマイン インク (1)
【出願人】(506290936)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000557
【国際公開番号】WO2005/082931
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506290925)ゼノマイン インク (1)
【出願人】(506290936)
【Fターム(参考)】
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