説明

フィブリンのD二量体断片に特異的なDD−3B6/22から誘導されるヒト化抗体

【課題】
血塊に特異的な抗体であって、ヒトや非ネズミ動物において免疫原性を示さない抗体を提供すること。
【解決手段】
架橋結合したフィブリンを認識するがフィブリノゲンを認識しない、ヒトD二量体上のエピトープに特異的な抗体であって、(i)該抗体の可変(v)領域の一以上のアミノ酸残基をMHCクラスII分子と結合する該v領域のぺプチド断片を消失若しくは減少させるように変異させた脱免疫化抗体、(ii)該ヒト化抗体のv領域の相補性決定領域(CDR)の少なくとも一つがD二量体特異的なモノクローナル抗体に由来し且つ該ヒト化抗体分子の残りの免疫グロブリン由来部分がヒト免疫グロブリンに由来するものであり、そして該ヒト化抗体が可溶性D二量体を用いて選択されるものであるヒト化抗体、及び(iii)架橋結合したフィブリンを認識するがフィブリノゲンを認識しない、(i)又は(ii)の抗体の断片、から選択される抗体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の詳細な説明]
本発明は一般に、ある動物又は鳥類の種若しくは系統に由来し且つ別の動物又は鳥類の種若しくは系統に由来する免疫系に曝した場合に実質的に非免疫原性である担体分子に関する。より具体的には、本発明は脱免疫化した免疫相互作用分子、更に具体的にいうと診断目的及び治療目的に用いられる脱免疫化した抗体を提供する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で言及する文献の詳細は明細書の末尾にまとめてある。
【0003】
本明細書における先行技術への参照は、その先行技術がどの国においても共通する一般知識の一部を形成することを認識、又は示唆するものではなく、そのように解釈されるべきでもない。
【0004】
フィブリノゲンは通常は血漿中に溶解した状態で循環する大きなタンパク質分子である。フィブリノゲン分子は、トロンビンの存在下で、血塊の主な成分であるフィブリンと呼ばれる長い糸状の重合体又は網状組織を形成する。
【0005】
プラスミンで消化すると、フィブリノゲンはA〜Eと呼ばれる断片を形成する。断片D及びEは優勢な断片であり、Eの存在量の約2倍の量のDが存在する。フィブリノゲンは、E断片が中央の成分でD断片が末端の成分の場合には三結節の形状を有する。
【0006】
フィブリン及びフィブリノゲンのプラスミン消化物をポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて互いに区別することができる。フィブリンとXIIIa因子との架橋結合によりD二量体と呼ばれるD断片の二量体を形成する。Xa因子はフィブリン中で隣接する単量体の間に共有結合を導入する酵素である(非特許文献1)。XIIIa因子は、血漿及び血小板中の前駆体からトロンビンにより触媒されるペプチドの除去により活性化される。D二量体は、フィブリノゲンのγ鎖残存物の間の架橋結合により共有結合した異なるフィブリン分子から誘導される本質的に二つのD断片部分からなる約189,000ダルトンの分子である。フィブリノゲンそれ自体はα鎖、β鎖及びγ鎖を2組持つ6鎖を含む。
【0007】
もう一つの複合体(DD)Eは架橋結合したヒトフィブリンのプラスミン分解により形成され、D断片2つとE断片の組み合せを一つ含む。
【0008】
他の架橋結合した誘導体はグレーフとハーファー(非特許文献2)に記載されており、DY、YY、XD、XY、DXD及びYXDなどの高分子量の架橋結合誘導体を含む。
【0009】
血液の通常の止血又は凝固は、血管内成分を液相又は懸濁液中に維持し、同時に血管損傷の部位で固相血管成分を局所的に沈着させる工程を含む。健康体では、フィブリンの低度の血管内沈着と線溶若しくは細胞の食作用によるその除去との間に平衡が存在すると仮定されてきたが、未だ実験的には立証されていない。
【0010】
初期の臨床的観察から、一部の重症患者は出血及び激しい挫傷の兆候を示し、凝固時間が長引き、血小板減少を伴うことが明らかになった。死後、一部の症例ではフィブリントロンビンが微小血管系で立証された。トロンビンの拡散性は、消耗性凝固傷害(consumptive coagulopathy)としても知られる播種性血管内血液凝固(DIC)を生じた。続いてトロンビンは深部静脈血栓(DVT)及び肺塞栓症(PE)などの状態と関連した。
【0011】
DIC、DVT及びPEなどの状態には、血小板の消耗、トロンビン生成、フィブリン沈着及び二次的線溶を結果としてもたらす凝固系の活性化が含まれる。この工程の正味の生物学的効果はフィブリン沈着とフィブリン浄化の間の均衡を反映する。もたらされる臨床的徴候は、凝固因子の欠乏が優勢な場合には出血であったり、又は他の症状の中でも血管閉塞効果による虚血組織損傷であったりする。
【0012】
DIC、DVT及びPEは多種多様の傷害、特にショック、アシドーシス及び低酸素血の組み合せを伴う傷害における二次的な現象であると報告されてきた。よく認識されている臨床的な関連症は、敗血症、主要な外傷、悪性腫瘍及び分娩障害である。最近、DVTが長時間の飛行機旅行中や他の長時間動かないでいる間に生ずる特有の問題であると認識されてきた。いずれにしても、凝固の系列の活性化が凝固タンパク質と血小板の消費を結果として生じ、微小循環におけるフィブリン沈着をもたらす。
【0013】
DIC、DVT及びPEなどの症状の決定的な診断には、拡散性フィブリン沈着が求められるのが理想的である。局在的フィブリン形成と全身的フィブリン形成を区別するために複数の生検的な直接証拠を得ることが実際上困難であるため、診断終点として置き換えられる間接テストが開発されてきた。しかしながら、これらのテストは血管内フィブリン沈着症候群に特異的ではない。これらのテストの特異性は、フィブリノゲンをフィブリンに変換することはできないが血栓症に関与する他の凝固因子に対しトロンビンへと同様な変化を惹起できる他の酵素の作用によって更に減少する。間接テストは全て、トロンビンが哺乳動物においてフィブリノゲンをフィブリンに変換できる唯一の酵素(ヘビ毒を除く)であるという原理に基づいている。
【0014】
また、循環している可溶性フィブリン単量体複合体の存在を検知する凝固に基づくテストは別にして、これらのフィブリンが関連する状態の診断において直ちに臨床適用するために容易に入手可能で若しくは有用で且つトロンビン特異的テストよりも更に特異的なテストは全く存在しない。。これらのテストはFPA(フィブリノペプチドA)テストを含む。このテストではFPAは特異的なRIA法、フィブリン単量体検定、フィブリノゲンゲル排除クロマトグラフィー、及びFPB(フィブリノペプチドB)若しくはトロンビン増加性FPBに対するテストによって測定される。
【0015】
トロンビンに特異的でない生化学物質作用によるテストには、プロトロンビン時間(PT)テスト、トロンボプラスチン時間(APTT)テスト及びトロンビン凝固時間(TCT)テストが含まれる。実施上しばしば有用ではあるが、これらのテストで得られる情報は本質的には非特異的であり、病因にかかわらず凝固因子の消耗の尺度として作用することを認識しなければならない。
【0016】
凝固因子検定はまた、比較的非特異的であることも分かっており、これらの検定は補助因子V及びVIIIに対する検定、並びにフィブリノゲンレベルのテストも含む。
【0017】
フィブリン・フィブリノゲン分解産物のテストはこれまでのところフィブリンに対するプラスミンの作用に特異的であることが証明されておらず、フィブリノゲン分子に対するトロンビン作用が先に行なわれなくてもフィブリノゲン溶解現象があった場合には陽性の結果を与えることがある。これらのテストには断片D及び断片Eに対するテストが含まれる。
【0018】
トロンビンに媒介された血小板の相互作用又は放出に対するテストは本質的に非特異的であることが分かっている。これらのテストには、血小板総数、血小板寿命、及び血小板放出テストが含まれる。
【0019】
凝固因子の同定に関連する放射標識フィブリノゲンの使用も試みられてきたが、時間がかかり実行するのが困難であることが分かっている。
【0020】
こうして、診断テストの有効性は、疾病の有無を示すその能力に存する。感度、特異性、正の予測値及び負の予測値の4つの指標の測定を可能にする診断テストの有効性を判断する研究に対して、よく認識された本質的な設計原則がある。第一の要件は診断に適した基準の採用である。理想的には、この基準は臨床的な定義を僅かに上回っているべきであり、疾病の実体に対して可能な限り特異的であるべきである。特にDVT及びPEに関する固有の困難は、日常的に利用できる実験室テストの多くが診断的特異性を欠いているということである。血小板総数が低いことはこれらの症状の蓋然性を支持するが、感染症に二次的な無関係な所見として起こることもある。同様の制限が凝固検定の多くに当てはまる。低フィブリノゲン血症は、プラスミン若しくはエラスターゼいずれかの作用による一次的線溶と、トロンビンにより媒介されたフィブリノゲンのフィブリンへの変換に続く二次的線溶の間を区別しない。また、トロンビン作用についての感度の高いテストも利用できるが、その臨床的な使用には明らかな弱点がある。一例はFPA検定である。これはトロンビン作用に特異的ではあるが、極めて感度が良く、局所的血管内凝固を検出して単純な血管血栓症で陽性反応を生ずる場合がある。FPAレベルが高いことの臨床的意義は、凝固に基づくテストが陽性の場合であっても、特に血小板総数、グローバル凝固テスト及びフィブリノゲンレベルが正常である場合には、問題となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】バドツィンスキーら,Blood 54(4): 794-804, 1979。
【非特許文献2】グレーフとハーファー,「血液中の架橋結合フィブリン誘導体の検出と関連性」、Seminars in Thrombosis and Hemostatis 8(1),1982。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
これらの理由から、感度、特異性及び予測値は標準的なやり方では測定できない。これらの障害の臨床症状は複雑で予測不可能である。従って、診断に利用できるテストの適用は血管内凝固の臨床症候群が異なる場合に最も検討される。
【0023】
ネズミのモノクローナル抗体3B6が開示された。(米国特許第4,758,524)。この抗体はD二量体に特異的であり、最初の血塊特異的抗体を表す。しかしながら、ヒトにおいてこの抗体を全身的診断薬として使用することは、この分子の免疫原性のために制限される。従って、非ネズミ動物及びヒトにおいてその免疫原性を減少させるために3B6抗体を改変する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明の概要
本明細書を通じて、論旨が別意を要求しない限り、語「含む(comprise)」、又はその変化形である「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などは、述べられた要素若しくは整数又は要素若しくは整数の群を含むことを意味するが他の如何なる要素若しくは整数又は要素若しくは整数の群を排除することを意味するものではないと解する。
【0025】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、その冠詞の文法的な目的語が一つ又は一つ以上(即ち、少なくとも一つ)であることを指すのに用いられる。例として、「要素(anelement)」は一つの要素又は一つ以上の要素を意味する。
【0026】
本発明に至る研究では、3B6抗体の免疫原性を減少させるために脱免疫化技術が用いられていた。これはヒトに用いる血栓症画像診断技術の発達を可能にした。更に、3B6抗体の脱免疫化した形は、抗凝血剤などの血塊溶解剤又は血塊成長防止剤などを血塊部位に送達するための血塊を標的とする物質として使用することを可能にする。従って本発明の脱免疫化した分子は、血塊などの標的部位への診断用薬及び治療薬の担体として作用する。この分子はまた、それ自体診断的又は治療的特性を有してもよい。3B6抗体の脱免疫化形の開発はDVT及びPEなどの様々な状態に対して適用される。更に、脱免疫化3B6抗体はCT、MRI又は超音波などのコンピュータ援用断層撮影核医学又は平面画像形成技術と組み合わせて使用できる。
【0027】
従って本発明は、一般的に免疫相互作用分子の形の担体分子、とりわけその抗体がヒトなどの標的宿主中で免疫原性に対する能力の減少を示すよう親分子と比較してキメラ化され及び/又は突然変異させられたモノクローナル抗体を提供する。キメラ化又は突然変異の工程を本明細書では脱免疫化と言う。特に好ましい実施態様では、モノクローナル抗体などの免疫相互作用分子をヒト化し、ヒトにおけるその免疫原性を減少させる。脱免疫化は様々な方法で行われ得るが、好ましい実施態様ではモノクローナル抗体の可変(v)領域の一つ以上のアミノ酸を突然変異(例えば、置換)させ、この領域から誘導されたペプチドのMHCII認識を減少させる。言い換えれば、脱免疫方法は抗体に対するT細胞エピトープ媒介性免疫反応を低減させることを目的とする。本発明の最も好ましい抗体は、D二量体に特異性を示すネズミモノクローナル抗体3B6の脱免疫化された形である。3B6の脱免疫形の形成は、とりわけヒトにおける血塊に対する血塊を標的とする全身性薬物の開発を可能にする。この薬物は、造影剤として並びに血塊の部位などに血塊溶解剤又は血塊成長防止剤を送達するビークルとしての使用を可能にする。
【0028】
従って脱免疫化抗体は、単独でも作用し、又は様々な診断用薬及び/又は治療薬の担体としても作用する。
【0029】
従って、本発明の一つの側面は、架橋結合したフィブリン誘導体に特異性を有部分で且つ一つの動物又は鳥類生物から得られ得る免疫相互作用分子から誘導される部分を含む免疫相互作用分子の変異体であって、該同じ種又は別の種の別の動物又は鳥類生物において免疫原性の低減を示すものである、免疫相互作用分子の変異体を提供する。
【0030】
この免疫相互作用分子は、架橋結合したフィブリン誘導体に特異性を有する部分を含むモノクローナル抗体変異体であることが好ましい。
【0031】
このモノクローナル抗体は、ヒト由来のD二量体及びその他の架橋結合したフィブリン誘導体に対して特異性を有し且つフィブリノゲン又はD断片並びにE断片を含むフィブリノゲンの分解産物に反応しないネズミ由来のモノクローナル抗体の変異体であり、このマウス由来のモノクローナル抗体変異体が実質的にヒトにおいて非免疫原性であることが、更に好ましい。
【0032】
この抗体は、モノクローナル抗体3B6により認識されるエピトープに特異的な脱免疫化抗体分子であり且つ3B6モノクローナル抗体由来の可変領域の相補性決定領域を少なくとも一つ含むものであり、そして脱免疫化抗体分子の免疫グロブリンに由来する残りの部分が、抗体が脱免疫化される宿主由来の免疫グロブリン若しくはその類似体から誘導されるものであることが好ましい。
【0033】
従って本発明は、モノクローナル抗体3B6によって認識されるエピトープに特異性を有する脱免疫化抗体分子であって、該脱免疫化抗体の可変領域の相補性決定領域(CDR)の少なくとも一つが3B6モノクローナル抗体に由来するものであり、該3B6抗体の可変領域にある一つ以上のアミノ酸が突然変異してこの領域に由来するペプチドのMHCクラスII認識を低減させるものである脱免疫化抗体を提供する。
【0034】
本発明は更に、MHCクラスII分子と関連するv領域のペプチド断片を除去又は減少させるよう設計された3B6抗体のv領域に一つ以上のアミノ酸突然変異を含むヒトに用いる脱免疫化されたネズミモノクローナル抗体3B6の変異体を提供する。
【0035】
脱免疫化免疫相互作用分子は単独で有用であり、又は血塊などの標的部位への診断用薬及び/又は治療薬の担体として有用である。
【0036】
従って本発明は、循環系全体に標識化抗体を拡散させるネズミモノクローナル抗体3B6の脱免疫形又はレポーター分子で標識されたその抗原結合断片を患者に導入する工程、次いで患者をレポーター分子検出処理にかけて血塊内の抗体の場所を同定する工程により、ヒト患者中の血塊を検出する方法を意図する。
【0037】
別の実施態様では3B6の脱免疫形を標識しないが、抗免疫グロブリン特異性を有する第二抗体が標識される。この抗体は上記の第一抗体と標識された複合体を形成する。
【0038】
脱免疫化担体は、担体として、他の診断用薬又は治療薬だけでなく如何なる血塊結合分子をも血塊の部位に送達しうる。
【0039】
従って本発明は、血塊造影剤の製造におけるD二量体又は他の架橋結合したフィブリン誘導体に特異的な脱免疫化ネズミモノクローナル抗体の使用を意図する。
【0040】
本発明の更に別の一側面では、ヒトにおける血塊の溶解又は除去を容易にする方法であって、ヒト由来のD二量体及び他の架橋結合フィブリン誘導体に特異性を有し且つフィブリノゲン若しくはD断片及びE断片を含むフィブリノゲン分解産物に反応しないネズミ由来のモノクローナル抗体変異体の血塊溶解若しくは血塊成長防止に効果的な量を該ヒトに投与する工程を含み、該ネズミ由来のモノクローナル抗体変異体が実質的にヒトにおいて非免疫原性であり、該モノクローナル抗体がそれに融合、結合又はその他の方法で結合した血塊溶解剤若しくは血塊成長防止剤を更に含むものである方法を意図する。
【0041】
本発明のまた別の一側面は、ヒトにおける血塊の溶解用薬物の製造における、D二量体及び他の架橋結合フィブリン誘導体に特異性を有し且つフィブリノゲン若しくはD断片及びE断片を含むフィブリノゲン分解産物に反応性を持たないネズミ由来のモノクローナル抗体変異体の使用であって、該ネズミ由来モノクローナル抗体変異体が実質的にヒトにおいて非免疫原性であり、且つ、該抗体がそれに融合、結合又はその他の方法で結び付いた血塊溶解剤若しくは血塊成長防止剤を更に含むものである使用に向けられる。
【0042】
好ましい分子は、ヒトに使用するため脱免疫化したネズミモノクローナル抗体3B6の変異体であって、配列番号:7/配列番号:10、配列番号:8/配列番号:10、配列番号:9/配列番号:10、配列番号:7/配列番号:12、配列番号:8/配列番号:12、配列番号:8/配列番号:11、配列番号:9/配列番号:11、配列番号:9/配列番号:12、及び配列番号:7/配列番号:11から選択されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列、又は上に挙げた各対のアミノ酸の一方又は両方と少なくとも70%の類似性を有するヌクレオチド配列又は上に挙げたそれぞれの対の一方又は両方のヌクレオチド配列若しくはその相補形と低ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成できるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の組み合せを含む、重鎖及び軽鎖のv領域の組み合せを含むネズミモノクローナル抗体3B6の変異体である。
【0043】
使用のため脱免疫化した変異3B6抗体は、配列番号:1/配列番号:4、配列番号:2/配列番号:4、配列番号:3/配列番号:4、配列番号:1/配列番号:6、配列番号:2/配列番号:6、配列番号:2/配列番号:5、配列番号:3/配列番号:5、配列番号:3/配列番号:6及び配列番号:1/配列番号:5から選択されるアミノ酸配列又は上に挙げたそれぞれの対の一方又は両方のアミノ酸配列と少なくとも70%の類似性を有するアミノ酸配列の組み合せを含む、重鎖及び軽鎖のv領域の組み合せを含むことが好ましい。
【0044】
別の好ましい3B6変異体は、VHv5/VKv1、VHv6/VKv1、VHv7/VKv1、VHv5/Vkv7、VHv6/VKv7、VHv6/VKv4、VHv7/VKv4、VHv7/VKv7及びVHv5/VKv4から選択される重鎖及び軽鎖のv領域の組み合せを含む。
【0045】
本発明の別の一側面は、循環系全体に標識化した抗体の拡散を可能とするレポーター分子で標識したネズミモノクローナル抗体3B6の脱免疫形又はその抗原結合断片を患者に導入し、次いで患者をコンピュータ支援断層撮影核医薬スキャンにかけて血塊を可視化することにより、ヒト患者中の血塊を検出する方法を意図する。
【0046】
本発明のまた別の一側面は、循環系全体に標識化抗体の拡散を可能とするレポーター分子で標識したネズミモノクローナル抗体3B6の脱免疫化形又はその抗原結合断片を患者に導入し、次いで該患者を平面血塊画像形成(planar clot imaging)にかけて血塊を可視化することにより、ヒト患者中の血塊を検出する方法を意図する。
【0047】
本発明の脱免疫化した免疫相互作用分子はまた、抗凝固剤を特定部位に固定するのにも有用である。従ってこの側面は、診断用薬又は治療薬の例えば血塊への組織特異的な固定を提供する。更に、この免疫相互作用分子は複数の特異性を持つように工学処理しても良い。例えば二つの特異性を持つ脱免疫化抗体であって、血塊に対する一つの特異性と血塊部位への(例えば、細胞受容体への)もう一つの特異性を含むものが意図される。これにより抗体が血塊部位に留まることが可能になる。
【0048】
また、例えば脱免疫化した3B6又は抗凝固剤に結合した他の相互作用分子を血塊を標的として投与し、複合体を形成し、次いで第一抗体及び/又は抗凝固剤に対する第二抗体を投与して最初の複合体を増強し又は監視するような多段階治療が意図される。
【0049】
脱免疫化免疫相互作用分子はまた、血塊散逸又は血塊消滅の動力学を求めるのにも用いられる。これは血塊の出現又は消滅を更に早い時期に予測するのに有用であり、従って抗凝固治療などの二次治療を開始する際の動力学の測定の助けとなる。
【0050】
本発明は更に、脱免疫化した免疫相互作用分子及び造影標識及び/又は治療用の標識を含む複合体を提供する。造影標識の例には、MRI、超音波及びCTの標識が含まれる。治療用標識の例には、放射性同位元素、抗凝血剤及びサイトカインが含まれる。
【0051】
本明細書を通して用いる配列同定子のリストを表1に挙げる。
【0052】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】図1Aは3B6モノクローナル抗体の略図を示す表示である。
【図1B】図1Bは血塊に結合する3B6の写真(×4,2000拡大図)である。
【図2】図2は、核標識(99mTc)で標識された3B6抗体の略図である。
【図3A】図3Aは、ヒトの循環系への3B699mTcの投与を示す図式表示である。
【図3B】図3Bは、99mTcからの放射が血塊部位に集中する前大腿の血塊を可視化したものを示す写真である。
【図4A】図4Aは、脱免疫化3B6モノクローナル抗体を用いたD二量体捕獲検定を示すグラフである。
【図4B】図4Bは、脱免疫化3B6モノクローナル抗体を用いたD二量体捕獲検定を示すグラフである。
【図4C】図4Cは、脱免疫化3B6モノクローナル抗体を用いたD二量体捕獲検定を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、一つの動物又は鳥類生物に由来する免疫相互作用分子を、該同一種又は別の種の別の動物又は鳥類生物において実質的に非免疫原性とするための生化学技術の適用に部分的に基づいている。この生化学的工程を本明細書では「脱免疫化」と言う。本明細書で言う「脱免疫化」には、相補性決定領域(CDR)移植、免疫相互作用分子のフレームワーク領域の「再形成」及び可変領域突然変異などの工程が含まれ、これらは全てある特定の宿主中での免疫相互作用分子の免疫原性の低減を目的とするものであった。本発明の場合には、好ましい免疫相互作用分子はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体などの抗体である。最も好ましい実施態様では、免疫相互作用分子は一つの動物又は鳥類生物に由来し且つ同種又は別の種の別の動物若しくは鳥類生物において免疫原性の低減を示すモノクローナル抗体である。
【0055】
本発明は一般的に、一つの動物若しくは鳥の種又は系統に由来し且つ別の動物若しくは鳥類生物の種又は系統由来の免疫システムに曝した場合に実質的に非免疫原性である担体分子に関する。この担体分子は、それ自体有用な診断的特性又は治療的特性を示すものであっても良く、又は標的部位に活性化合物(例えば、抗凝固剤、放射性同位元素)を送達するのに用いられても良い。概してこの担体分子は免疫相互作用分子である。より具体的には、本発明は非ネズミ哺乳動物特にヒトにおいて実質的にそれ自体に対する免疫反応を誘発することができないネズミ由来のモノクローナル抗体の非ネズミ哺乳動物化形を含む脱免疫化形に向けられている。更に具体的には、本発明はヒトに投与した場合にそれ自体又はその誘導体に対して実質的な免疫反応を誘発できないか又は誘発するその能力の減少を示すような、ネズミモノクローナル抗体3B6の脱免疫化形を提供する。脱免疫化相互作用分子及び特に本発明の抗体は、ヒトの循環系内の血塊の検出などにおいて、及び抗凝血剤などの血塊溶解剤や血塊成長防止剤を送達するための血塊を標的とする薬物として、様々な診断的治療的に有用な適用性がある。
【0056】
このモノクローナル抗体のヒト化形を含む脱免疫化抗体は、深部静脈血栓症及び肺塞栓症などの症状の診断及び治療において特に有用である。本発明の分子は特に、標的部位に活性化合物を送達する物質として有益である。このような活性化合物には、血塊結合性分子が含まれる。
【0057】
従って、本発明の一つの側面では、免疫相互作用分子の変異体であって、該変異体が架橋結合フィブリン誘導体に対する特異性を有する部分を含み、その部分が一つの動物又は鳥類生物から得られ得る免疫相互作用分子から誘導されるものであり、該変異体が同種の又は別の種の別の動物若しくは鳥類生物において免疫原性の低減を示す変異体を提供する。
【0058】
上で述べたように、免疫相互作用分子の好ましい形態は抗体であり、特にモノクローナル抗体である。
【0059】
従って、本発明の別の一側面は、架橋結合フィブリン誘導体に特異性を有する部分を含むモノクローナル抗体変異体であって、その部分が第一の動物若しくは鳥類生物から得られ得るモノクローナル抗体に由来するものであり、該変異体が同種又は別種の第二の動物若しくは鳥類生物において免疫原性の減少を示す変異体を提供する。
【0060】
特に好ましい実施態様では、モノクローナル抗体はネズミ動物から得られ、別のネズミ動物又はヒトなどの異なる種の動物に関して脱免疫化される。ネズミモノクローナル抗体は、ネズミ動物において、フィブリノゲンから誘導される非変性D二量体に対して生産される。後者の分子はプラスミンによって分解され、断片AからEと命名された様々な分画を生ずる。フィブリンとXIIIa因子の架橋結合は、「D二量体」と呼ばれる断片Dの二量体を形成する。このD二量体は約189,000ダルトンの分子であり、フィブリノゲンの残りのγ鎖の間の架橋結合により結合した二つの断片D部分を含む。
【0061】
従って本発明の別の一側面は、ヒト由来D二量体及び他の架橋結合フィブリン誘導体に対する特異性を有し且つフィブリノゲン又はD断片及びE断片を含むフィブリノゲン分解産物に反応しないネズミ由来モノクローナル抗体変異体であって、該ネズミ由来モノクローナル抗体変異体が実質的にヒトにおいて非免疫原性である変異体に向けられる。
【0062】
「実質的に非免疫原性」と言うときは、親抗体、即ち脱免疫化工程にかける前の抗体と比較した場合の免疫原性の減少が含まれる。用語「免疫原性」は、宿主動物において液性及び/又はT細胞が媒介する反応を引き起こし、誘発し又そうでなければ容易にする能力を含む。特に便利な免疫原性の基準には、抗体の可変領域(v)から誘導されるアミノ酸配列がMHCクラスII分子と相互作用しそれによりT細胞により支援される液性反応を含むT細胞により媒介される反応を刺激又は促進する能力が含まれる。本発明で意図する免疫相互作用分子、特にモノクローナル抗体は血塊を標的とする物質への言及を含む。
【0063】
好ましいネズミ由来モノクローナル抗体は、本明細書ではモノクローナル抗体3B6と呼び、米国特許第4,758,524に記載されている。
【0064】
従って、特に好ましい実施態様では、本発明はモノクローナル抗体3B6の脱免疫化形であって、実質的にヒトにおいては非免疫原性である脱免疫化3B6を提供する。
【0065】
ここでも、この文脈における「実質的に非免疫原性」は、脱免疫化前のネズミモノクローナル抗体3B6と比較して、ヒトにおいてそれ自体に対する免疫反応(最初の投与又はその後の投与の後における)を誘発又は促進する脱免疫化3B6モノクローナル抗体の能力の減少を意味する。
【0066】
好ましい発明は特にヒトに関する3B6の脱免疫化形に向けられるが、本発明は他の任意の動物又は鳥類向けに脱免疫化したD二量体及び/又は他の架橋結合フィブリン誘導体に同様の特異性を持つこの抗体又は他の抗体にまで及ぶ。
【0067】
他の架橋結合フィブリン誘導体と本明細書で言及するときは、例えば、D二量体に加えてD二量体の誘導体及びD断片及びE断片を含む複合体が含まれる。後者は(DD)Eを含み、架橋結合ヒトフィブリンのプラスミン分解により形成され、D断片二つとE断片の組み合せを含む。他の架橋結合誘導体には、DY、YY、XD、XY、DXD及びYXDが含まれるが、これらの文字はプラスミンによる分解の後に形成されるフィブリノゲンの断片を示しており、XとYは別のものであり、断片AからC及び断片Eから選択される。本発明の脱免疫化抗体は、D二量体及び他の架橋結合フィブリン誘導体に特異的ではあるがフィブリノゲン、断片D及び断片Eを含むフィブリノゲン分解産物と交差反応しない抗体から誘導されるのが好ましい。これらの抗体を生産するクローンは固定化D二量体よりむしろ溶液相のD二量体分子を用いて選択されるのが好ましいが、いずれの形のD二量体で選択されたクローンも本発明により意図される。
【0068】
脱免疫化抗体は、その標的抗原に対し、ネズミモノクローナル抗体3B6が示す親和性と同様の親和性を示すのが好ましい。
【0069】
抗原結合分子の個々の抗原結合部位とその抗原上のそれに相当する部位との間の相互作用に関する「親和性」は、この相互作用の強さを含む。
【0070】
「抗体」とは、抗原と結合、相互作用、又はその他の方法で結び付くことができる免疫グロブリンファミリーのタンパク質を意味する。従って抗体は抗原結合分子である。「抗体」は免疫相互作用分子の一例であり、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を含む。本発明の好ましい免疫相互作用分子はモノクローナル抗体である。抗体はFab部分及び抗原結合決定基などのその部分を含む。
【0071】
用語「抗原」は、本明細書では最も広義に用いられ、免疫応答で反応できる及び/又は免疫応答を誘発できる物質を指す。「抗原」への言及は、抗原決定基又はエピトープを含む。この文脈における抗原は、免疫相互作用分子、より具体的にはモノクローナル抗体とみなされる。
【0072】
標的の抗原に結合親和性を有する如何なる分子も「抗原結合分子」と呼ぶ。この用語が免疫グロブリン(例えば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体)、免疫グロブリン断片及び抗原結合活性を示す非免疫グロブリン由来のタンパク質フレームワークにまで及ぶことを理解されたい。用語「抗体」及び「抗原結合分子」はこれらの分子の脱免疫化形を含む。
【0073】
それに対して特定の免疫応答がなされる抗原性分子のその部分は「抗原決定基」又は「エピトープ」と呼ばれ、ハプテンを含む。典型的に動物に置いては、抗原は同時に幾つかの抗原決定基又は多数の抗原決定基さえも提示する。「ハプテン」は抗体と特異的に結合できるが、単体と結合しない限り免疫応答を誘発できないか又はわずかしか誘発しない物質である。ハプテンは通常は単一の抗原決定基又はエピトープを含む。
【0074】
上で述べたように、本発明の好ましい抗体はヒトに使用するネズミモノクローナル抗体の脱免疫化形であるが、本発明は任意の供給源由来の如何なる宿主での使用のために脱免疫化された抗体にまでも及ぶ。動物及び鳥類の供給源及び宿主の例には、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ロバ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)、家禽鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ)及び狩猟鳥(例えば、キジ)が含まれる。脱免疫化抗体又はその部分はまた、植物などの非動物組織中で形成させても良い。植物は特に単鎖抗体の供給源として有用である。
【0075】
本発明の別の一側面は、ヒトD二量体又は他の架橋結合フィブリン誘導体上の抗原決定基に特異性を有する脱免疫化モノクローナル抗体を作成する方法であって、
(i) ヒト由来のものと同じものを含む架橋結合フィブリンの誘導体又は抽出物を得る工程、
(ii) 非ヒト動物で該架橋結合フィブリン誘導体に特異的であるが断片Dと交差反応しない抗体を作成する工程、及び
(iii) 該非ヒト由来の抗体を脱免疫化処理する工程
を含む方法を意図する。
【0076】
架橋結合フィブリン誘導体はプラスミンに媒介されるフィブリン血塊の分解を含む任意の適切な抗原抽出物から誘導しても良く、又は一時的な血塊の形成及びそれに続く血塊の溶解を伴うフィブリノゲンに対するトロンビン、XIIIa因子及びプラスミンの同時作用により誘導しても良い。後者の方法では、フィブリノゲンはトロンビンとXIIIa因子の作用によりフィブリンに変換され、続いてプラスミンで消化される。フィブリン誘導体又は同じものを含む抽出物がヒト以外の動物供給源から得られても良いということは、当然認められることである。抗原供給源は、生体試料由来であるのが都合が良い。
【0077】
動物から抽出し、処理しなかったり、処理したり、希釈したり又は濃縮したりすることがある試料は、「生体試料」という用語に含まれる。
【0078】
粗製の抗原画分を得る上述の方法は、インビトロ法である。適切なインビボ法は、ヒトを含む動物から血清又は架橋結合フィブリン誘導体を含む他の体液を取得する工程、及びこの体液をPAGE法にかけて実質的に純粋な架橋結合フィブリン誘導体を単離すれ工程を含む。
【0079】
また、架橋結合フィブリン誘導体は、ウィルナーら、Biochemistry 21: 2687-2692,1982により記載されたようにイオン交換クロマトグラフィーと組み合わせたゲル濾過を用いた技術に基づき、重度の血栓障害を患う患者から得た血清から精製しても良い。
【0080】
該抗原(即ち、D二量体又は他の架橋結合フィブリン誘導体)は任意の適切な手段により生体試料から分離することができる。例えば、この分離は抗体の表面電荷特性、大きさ、密度、生物活性及び他の実体(例えば、それが結合又は他の方法で結び付く別のタンパク質又は化学的化合物)に対するその親和性のいずれか一つ以上を利用して良い。従って、例えば生体液からの抗原の分離は、超遠心分離、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー)、電気泳動(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動)、サイズ分離(例えば、ゲル濾過、限外濾過)及び親和性による分離(例えば、Dynabead(商標)分離などの磁気ビーズ分離、免疫クロマトグラフィー、免疫沈澱などを含むがこれらに限定されない免疫親和性分離)のいずれか一つ以上により行われ得る。採用する分離技術(単数又は複数)の選択は、特定の抗原の生物学的活性又は物理学的特性に依存して良い。
【0081】
この生体液からの抗体の分離は、抗原表面に存在するエピトープの立体構造を保存すること、それ故に抗原の変性を惹起する技術を適切に避けることが好ましい。当業者らは、動物に曝される抗原決定基又は抗原の活性部位(単数又は複数)が構造的に天然の抗原のものと同一であることを確実にするために、抗原に固有な生理的状態(例えば、抗原がそれから得られる生体液)に可能な限り近く維持するか又は模倣することの重要性を認識するはずである。これは天然の抗原を認識するであろう免疫化した動物中の適切な抗体の形成を確実にする。この種の好ましい実施態様では、抗原は親和性分離、ゲル濾過及び超限界濾過のいずれか一つ以上を用いて生体液から分離される。
【0082】
免疫化及びその後のモノクローナル抗体の生産は、例えばケーラーとミルシュタイン(Nature 256: 495-499,1975、ケーラーとミルシュタイン,Eur.J.Immunol.6(7): 511-519,1976)、コリガンら(免疫学の現代のプロトコル,ジョンワイリーアンドサンズ インコーポレイテッド,1991-1997)又はトーヤマら(「モノクローナル抗体、実験マニュアル」コーダンシャ・サイエンティフィックより出版,1997)に記載されたような標準的プロトコルを用いて実施できる。本質的に、抗体生産細胞、特に抗体生産体細胞(例えば、Bリンパ球)を生産する標準的な方法により、動物を抗原を含む生体液又はその画分で免疫化する。これらの細胞を次いで免疫化した動物から取り出し不死化の処理を行なうことができる。上記の抗原は最初により大きな分子と混ぜる必要があることがある。この大きな分子は通常、これに免疫源性のない又は弱い物質(例えば、ハプテン)を自然に又は人工的に結合させるとその免疫原性が増大するような任意の高分子量の物質である。
【0083】
抗体生産細胞の不死化は当分野で良く知られている方法を用いて実施して良い。例えば、この不死化はエプスタイン・バーウイルス(EVB)を用いた形質転換法で実施されうる(コズボーら、Methods in Enzymology 121:140,1986)。好ましい実施態様では、抗体生産細胞はモノクローナル抗体の生産に広く採用されている細胞融合法(コリガンら、1991-1997、上掲)を用いて不死化する。この方法では、抗体を生産する潜在能力を持つ抗体生産性体細胞、特にB細胞を骨髄腫細胞株と融合させる。これらの体細胞は、初回抗原刺激を受けた(primed)動物、好ましくはマウスやラットなどの齧歯動物のリンパ節、脾臓、抹消血から誘導されうる。本発明のマウスの模範的な実施態様では脾臓細胞を用いる。しかしながら、代わりにラット、ウサギ、ヒツジ又はヤギの使用、又は他の動物種からの細胞を使用することも可能であろう。
【0084】
特殊化した骨髄腫細胞株は、ハイブリドーマを形成する融合法で用いられるリンパ腫から開発された(ケーラーとミルシュタイン, 1976, 上掲、シャルマンら, Nature 276: 269-270, 1978、フォルクら,J. Virol. 42(1): 220-227, 1982)。これらの細胞株が開発されたのは少なくとも三つの理由による。一つ目は、未融合で同様に無限に自己増殖する骨髄腫細胞から融合したハイブリドーマを選択することが容易だからである。通常、この選択は酵素を欠損したためハイブリドーマの増殖を支持する一定の選択培地で増殖できなくされた骨髄腫を用いて行なわれる。二つ目の理由はリンパ球腫瘍細胞が自分自身の抗体を生産する固有の能力から生じる。ハイブリドーマによる腫瘍細胞抗体の生産を排除するため、内因性の免疫グロブリン軽鎖若しくは重鎖を生産できない骨髄腫細胞株を用いる。これらの細胞株を選択する三つ目の理由は、その融合への適合性と効果である。
【0085】
多くの骨髄腫細胞株が、例えばP3X63−Ag8、P3X63−AG8.653、P3/NS1−Ag4−1(NS−1)、Sp2/0−Ag14及びS194/5.XXO.Bu.1を含む融合した細胞ハイブリッドの生産に用いられることがある。P3X63−Ag8及びNS−1細胞株は、ケーラーとミルシュタイン(1976,上掲)に記載されている。シャルマン(1978,上掲)はSp2/0−Ag14骨髄腫株を開発した。S194/5.XXO.Bu.1株はトローブリッジ(J. Exp. Med. 148(1): 313-323, 1978)により報告された。
【0086】
抗体生産性の脾臓細胞若しくはリンパ節細胞と骨髄腫細胞のハイブリッドを形成させる方法には、通常、細胞膜の融合を促進する一つの物質又は複数の物質(化学的、ウイルス性、又は電気的物質)の存在下で体細胞と骨髄腫細胞をそれぞれ10:1の比率(この比率は約20:1から約1:1まで変わることがあるが)で混合する工程が含まれる。融合法は記載されている(ケーラーとミルシュタイン,1975,上掲、フォルクら,1982,上掲)。これらの発明者らが用いた融合促進物質は、センダイウイルス及びポリエチレングリコール(PEG)であった。
【0087】
融合工程は生存可能なハイブリッドを極めて低い頻度で生産する(例えば、脾臓が体細胞の供給源として用いられた場合、だいたい脾臓細胞1×105ごとにハイブリッドが一つだけ得られる)ため、融合した細胞ハイブリッドを残りの未融合の細胞、特に未融合の骨髄腫細胞から選択する手段を持つことが好ましい。所望の抗体生産性ハイブリドーマを他の結果的に融合した細胞ハイブリッドから検出する手段も必要である。概して融合細胞の選択は、ハイブリドーマの成長を助けるが通常は無限に分裂を続けるであろう未融合の骨髄腫細胞の成長を阻害する培地で細胞を培養することにより実施される。この融合に用いられる体細胞はインビトロ培養では生存能力を長期間維持せず、従って問題は起こらない。本発明の例では、ヒポキサンチン・ホススホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT−陰性)を欠く骨髄腫細胞を用いた。これらの細胞に対する選択は、融合した細胞ハイブリッドが脾臓細胞のHPRT−陽性遺伝子型のお蔭で生存する培地である、ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT)培地で行う。
【0088】
遺伝子型的に能力を持つハイブリッドの成長を助ける培地において排除選択できる別の遺伝子欠損(薬物感受性など)を持つ骨髄腫細胞の使用もまた可能である。
【0089】
融合細胞ハイブリッドを選択的に培養するには数週間が必要である。この期間の初期には、続いてクローニングし増殖できるように、所望の抗体を生産するハイブリッドを同定することが必要である。一般に、得られたハイブリッドの約10%が所望の抗体を生産するが、約1%から約30%までの範囲も希ではない。抗体生産性ハイブリッドの検出は、例えばケネットら((編)Monoclonal Antibodies and Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, 376-384, プレナムプレス,ニューヨーク,1980)に記載されているような酵素結合免疫測定法及び放射性免疫測定技術を含む、幾つかの標準的な検定法のいずれか一つにより実施できる。特に好ましい実施態様では、液相D二量体を用い、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を実施して抗体生産性クローンを選択する。
【0090】
所望の融合細胞ハイブリッドが選択され個々の抗体生産性細胞株にクローニングされると、それぞれの細胞株は二つの標準的な方法のいずれかで増殖して良い。ハイブリドーマ細胞の懸濁液を組織が適合する動物に注射することができる。この注射された動物では、その後融合細胞ハイブリッドにより生産された特異的なモノクローナル抗体を分泌する腫瘍が発生する。この動物の血清や腹水などの体液を、穿刺して高濃度のモノクローナル抗体を得ることができる。また、個々の細胞株を実験培養容器でインビトロで増殖させても良い。この単一の特異的なモノクローナル抗体を高濃度で含む培養培地は、デカンテーション、濾過又は遠心分離で収穫でき、その後精製できる。
【0091】
細胞株は、任意の適切な免疫検出法で目的の抗原を検出するためにその特異性をテストする。例えば、細胞株を多数のウェルに分注し、培養することができ、それぞれのウェルの上清を酵素結合免疫吸着法(ELISA)、間接的蛍光抗体技術などにより分析する。標的の抗体を認識できるが標的でないエピトープを認識しないモノクローナル抗体を生産する細胞株(単数又は複数)は同定し、次いでインビトロで直接培養するか又は組織適合性の動物に注射して腫瘍を形成させ、必要な抗体を生産し、採取し、そして精製する。
【0092】
従って本発明は第一工程で、D二量体又は他の架橋結合フィブリン誘導体と特異的に相互作用するモノクローナル抗体を提供する。
【0093】
上で記したように、植物細胞、酵母細胞及び/又は微生物細胞などの非動物細胞は通常は単鎖の抗体を形成するのに用いられることがある。この実施態様では、このような細胞は抗体の鎖をコードする核酸分子を発現するよう工学処理する。
【0094】
モノクローナル抗体は、次いで脱免疫化処理に付される。このような工程は、本発明に従って調製されたモノクローナル抗体と同じか又は類似の特異性を有するキメラ抗体の調製を含む様々な形のいずれを用いても良い。キメラ抗体は、その軽鎖及び重鎖遺伝子が通常は遺伝子操作によって別の種に属する免疫グロブリンの可変領域及び定常領域から構築された抗体である。従って、本発明に基づき、所望のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマが得られると、技術を用いて、一つの種の結合領域が別の種の抗体の非結合領域と結合している異種間のモノクローナル抗体(リューら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443, 1987)を生産する。例えば、非ヒト(例えば、ネズミ)のモノクローナル抗体由来のCDRはヒト抗体に移植でき、それによりネズミ抗体を「ヒト化」する(ヨーロッパ特許第0239400号、ジョーンズら,Nature 321: 522-525,1986、バーホイェンら,Science 239: 1534-1536, 1988、リーヒマンら,Nature 332: 323-327, 1988)。この場合、脱免疫化処理はヒトに特異的なものである。より具体的には、CDRはヒト定常領域を持つか又は持たないヒト抗体可変領域に移植できる。このCDRを提供する非ヒト抗体は通常「供与体」と呼ばれ、このフレームワークを提供するヒト抗体は通常「受容体」と呼ばれる。定常領域は存在する必要はないが、もし存在するのであれば、これらは実質的にヒト免疫グロブリン定常領域と同一、即ち、少なくとも約85〜90%、好ましくは約95%又はそれ以上の同一でなければならない。従って、おそらくCDRを除きヒト化抗体の全ての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応部分と実質的に同一である。従って、「ヒト化抗体」はヒト化した軽鎖及びヒト化した重鎖の免疫グロブリンを含む抗体である。供与体抗体は「ヒト化」処理により「ヒト化」されると言われる。これは、その結果物であるヒト化抗体がCDRを提供する供与体抗体と同じ抗原に結合することが予測されるからである。本明細書で「ヒト化される」と言うときは、特定の宿主、この場合はヒト宿主に対し脱免疫化された抗体への言及を含む。
【0095】
脱免疫化抗体が、抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に実質的に何の影響も与えない、更なるアミノ酸同類置換を有する場合があるということが理解される。典型的な同類置換は、表2に基づいてなされうる。
【0096】
【表2】

【0097】
本発明の脱免疫化抗体を生産するために採用されうる典型的な方法は、例えば、ライヒマンら,1998,上掲、米国特許第6,056,957号、6,180,370号及び6,180,377号及びコーシアら、J. Mol. Biol.196:901, 1987に記載されている。
【0098】
従って、一つの実施態様では、本発明はモノクローナル抗体3B6により認識されるエピトープに特異性を有する脱免疫化抗体分子であって、該脱免疫化抗体の可変領域の少なくとも一つ又は少なくとも二つ又は少なくとも三つ又は少なくとも四つ又は少なくとも五つの相補性決定領域(CDR)が該3B6モノクローナル抗体に由来するものであり且つ脱免疫化抗体分子の残りの免疫グロブリンに由来する部分が抗体がそれに対して脱免疫化された宿主由来の免疫グロブリン又はその類似体に由来するものである脱免疫化抗体分子を意図する。
【0099】
本発明のこの側面は、非ヒト抗体のフレームワーク領域の操作を含む。
【0100】
脱免疫化抗体は、ネズミ3B6のヒト化形であることが好ましい。
【0101】
好ましい脱免疫化処理の一つは、本明細書では可変(v)領域移植と呼ばれ、キメラ抗体を結果として生ずるものである。この結果得られる抗体は、本発明の(例えば、ネズミ)抗体と比較した場合、v領域内に一つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0102】
v領域変化を起こさせる根拠は、意図する宿主(例えば、ヒト)において誘発された免疫応答の能力を強めることである。脱免疫化の根拠は、部分的には導入された抗体に対する本質的な免疫応答がT細胞媒介性応答を要求するという仮定に基づいている。T細胞応答の引き金は、抗原提示細胞(APC)の表面の導入された抗体が出す処理されたペプチドの提示である。APCは表面のMHCクラスII分子と結合したこのようなペプチドを提示する。従って、脱免疫化手法は
(i) MHCクラスII分子と結合できるペプチド配列を予測する工程、及び
(ii) 戦略的な残基を変化させてペプチドのMHCクラスII分子と結合する能力を消失させる工程、
に基づく。
【0103】
従って、本発明の別の一側面は、ヒトで用いるために脱免疫化したネズミモノクローナル抗体3B6の変異体であって、MHCクラスII分子と結合する該v領域のペプチド断片を排除又は減少させるために該3B6抗体のv領域に一つ以上のアミノ酸突然変異を含む変異体を提供する。
【0104】
一つ以上のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失、又は一つ以上のヌクレオチドの置換、付加及び/又は欠失は、用語「突然変異(単数形)」又は「突然変異(複数形)」で包含される。
【0105】
特に好ましい実施態様では、脱免疫化抗体は三つの脱免疫化H鎖遺伝子及び三つの脱免疫化L鎖遺伝子の異なる組み合せを共トランスフェクトさせることにより作成する。その結果得られる複数の変異体は、H鎖遺伝子及びL鎖遺伝子によりコードされる異なる組み合せから誘導される。好ましいH鎖はHv5、Hv6及びHv7である。これらは本明細書では3B6DIVHv5(配列番号:1)、3B6DIVHv6(配列番号:2)及び3B6DIVHv7(配列番号:3)と呼ぶ。好ましいL鎖はKv1、Kv4及びKv7である。これらは本明細書では3B6DIVKv1(配列番号:4)、3B6DIVKv4(配列番号:5)及び3B6DIVKv7(配列番号:6)と呼ぶ。特に有用な組み合せには、VHv5/VKv1、VHv6/VKv1、VHv7/VKv1、VHv5/VKv7、VHv6/VKv7、VHv6/VKv4、VHv7/VKv4、VHv7/VKv7及びVHv5/VKv4が含まれる。括弧内の配列識別番号(配列番号:)は特定の鎖のアミノ酸配列を表す。配列番号:1〜6のそれぞれをコードする対応するヌクレオチド配列は配列番号:7〜12で表される。
【0106】
H鎖及びL鎖のこのような組み合せは全て、本発明により包含される。
【0107】
従って本発明は、ヒトに使用するために脱免疫化されたネズミモノクローナル抗体3B6変異体であって、配列番号:7/配列番号:10、配列番号:8/配列番号:10、配列番号:9/配列番号:10、配列番号:7/配列番号:12、配列番号:8/配列番号:12、配列番号:8/配列番号:11、配列番号:9/配列番号:11、配列番号:9/配列番号:12及び配列番号:7/配列番号:11からから選択されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列、又は上に挙げた対のそれぞれの一方又は両方のアミノ酸配列と少なくとも70%の類似性を有するヌクレオチド配列か又は上に挙げた対のそれぞれの一方又は両方のヌクレオチド配列又はその相補形と低ストリンジェンシー条件下でへハイブリッド形成できるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の組み合せを含む重鎖v領域及び軽鎖v領域の組み合せを含む変異体を提供する。
【0108】
H鎖及びL鎖のこのような組み合せは全て、本発明により包含される。
【0109】
従って、本発明はヒトに使用するために脱免疫化したネズミモノクローナル抗体3B6変異体であって、配列番号:1/配列番号:4、配列番号:2/配列番号:4、配列番号:3/配列番号:4、配列番号:1/配列番号:6、配列番号:2/配列番号:6、配列番号:2/配列番号:5、配列番号:3/配列番号:5、配列番号:3/配列番号:6及び配列番号:1/配列番号:5から選択されるアミノ酸配列、又は上に挙げた対のそれぞれの一方又は両方と少なくとも70%の類似性を有するヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の組み合せを含む重鎖v領域及び軽鎖v領域の組み合せを含む変異体を提供する。
【0110】
より具体的には、本発明はヒトに使用するために脱免疫化したネズミモノクローナル抗体3B6の変異体であって、VHv5/VKv1、VHv6/VKv1、VHv7/VKv1、VHv5/VKv7、VHv6/VKv7、VHv6/VKv4、VHv7/VKv4、VHv7/VKv7及びVHv5/VKv4から選択される重鎖v領域及び軽鎖v領域の組み合せを含む変異体を提供する。
【0111】
本明細書で用いる用語「類似性」は、ヌクレオチドレベル又はアミノ酸レベルで比較される配列の間の完全な同一性を含む。ヌクレオチドレベルで同一でない場合、「類似性」は、異なるアミノ酸をもたらすがそれにも関わらず構造的、機能的、生化学的及び/又は立体構造的なレベルで互いに関連する配列の間の違いを含む。アミノ酸レベルで同一性がない場合は、「類似性」はそれにも関わらず構造的、機能的、生化学的及び/又は立体構造的なレベルで互いに関連するアミノ酸を含む。特に好ましい実施例では、ヌクレオチド及び配列の比較は類似性ではなく同一性のレベルで行われる。
【0112】
二つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド間の配列の関係を記述するのに用いられる用語には、「参照配列」、「比較窓」、「配列類似性」、「配列同一性」、「配列類似性のパーセンテージ」、「配列同一性のパーセンテージ」、「実質的に類似する」及び「実質的な同一」が含まれる。「参照配列」は長さが少なくとも12であるが15から18であることもよくあり、頻繁に30などの少なくとも25以上のモノマー単位で、ヌクレオチド及びアミノ酸残基を含む。二つのポリヌクレオチドはそれぞれ(1)二つのポリヌクレオチド間で類似する配列(即ち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、及び(2)二つのポリヌクレオチド間で異なる配列を含む場合があるので、二つ(以上)のポリヌクレオチドの配列比較は、通常は配列類似性の局所領域を同定し比較するために「比較窓」上で二つのポリヌクレオチドの配列を比較して行われる。「比較窓」とは参照配列と比較される通常は12の連続した残基の概念的セグメントを指す。比較窓は、二つの配列の最適な整列について、参照配列(付加や欠失を含まない)と比較して約20%以下の付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含む場合がある。比較窓を並べるための配列の最適な整列化は、アルゴリズムのコンピュータ化実行(GAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA、ウィスコンシン・ジェネティクス・ソフトウェア・パッケージリリース7.0、ジェネティクスコンピュータグループ、575サイエンス・ドライブ、マディソン、ウィスコンシン州、米国)又は観察により及び選択された様々な任意の方法によって作成された最適整列(即ち、比較窓上で最高の相同性パーセンテージをもたらす)によって行って良い。例えば、アルチュルら(Nucl. Acids Res.25: 3389-3402, 1997)により開示されたプログラムのBLASTファミリーを参照しても良い。配列分析の詳細な議論は、アウスベルら("Current Protocols in Molecular Biology"ジョンワイリーアンドサンズインコーポレイテッド、1994-1998,15章)の19.3にある。
【0113】
本明細書で使用する用語「配列類似性」及び「配列同一性」は、配列が比較窓上でヌクレオチド毎、又はアミノ酸毎に同一であるか又は機能的若しくは構造的に類似する程度を指す。従って、例えば「配列同一性のパーセンテージ」は、比較窓上で最適に配置された二つの配列を比較し、両方の配列で同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Ghr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys及びMet)が発生する位置の数を決定して適合位置の数を求め、適合位置の数を比較窓内の位置の総数(即ち、窓のサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。本発明の目的では、「配列同一性」はDNASISコンピュータプログラム(ウィンドウズ(登録商標)用バージョン2.5、ヒタチソフトウェアエンジニアリングCo.,Ltd.,サウスサンフランシスコ,カリフォルニア州,米国で入手可能)により、ソフトに添付のリファレンスマニュアルで用いられている標準的なデフォルト値を用いて計算する「適合パーセンテージ」を意味すると理解される。配列類似性に関しても同様のコメントを適用する。
【0114】
本発明が意図する突然変異及び誘導体には、アミノ酸配列における変化を生じないヌクレオチド配列における縮重突然変異が含まれる。
【0115】
本明細書で言う低ストリンジェンシーは、ハイブリッド形成条件として少なくとも約0から少なくとも約15%v/vまでのホルムアミド及び少なくとも約1Mから少なくとも約2Mまでの塩、及び洗浄条件として少なくとも約1Mから少なくとも約2Mまでの塩を含み包含する。一般に、低ストリンジェンシーは少なくとも約25℃〜30℃から約42℃である。温度は変えても良く、ホルムアミドを補うため及び/又は別のストリンジェンシー条件を得るためにより高い温度を用いても良い。必要な場合には、ハイブリッド形成条件として少なくとも約16%v/vから少なくとも約30%v/vまでのホルムアミド及び少なくとも約0.5Mから少なくとも約0.9Mまでの塩、及び洗浄条件として少なくとも約0.5Mから少なくとも約0.9Mまでの塩を含み包含する中ストリンジェンシー、ハイブリッド形成条件として少なくとも約31%v/vから少なくとも約50%v/vまでのホルムアミド及び少なくとも約0.01Mから少なくとも約0.15Mまでの塩、及び洗浄条件はして少なくとも約0.01Mから少なくとも約0.15Mまでの塩を含み包含する高ストリンジェンシーなどの、別のストリンジェンシー条件を適用しても良い。一般に、洗浄はTm=69.3+0.41(G+C)%(マーマーとドーティー、J. Mol. Biol.5:109, 1962)で実施する。しかしながら、二本鎖DNAのTmは適合しない塩基対の数が1%増える毎に1℃低下する(ボナーとラスキー、J. Mol. Biol.5: 109, 1962)。ホルムアミドはこれらのハイブリッド形成条件では任意選択的である。従って、特に好ましいストリンジェンシーの程度は次のように定義される。即ち、低ストリンジェンシーは6×SSC緩衝液、25〜42℃の0.1%w/vSDS。中ストリンジェンシー条件は2×SSC緩衝液、20℃〜65℃の範囲の温度で0.1%w/vSDS。高ストリンジェンシーは0.1×SSC緩衝液、少なくとも65℃の温度で0.1%w/vSDSである。
【0116】
本明細書で用いられる用語「CDR」は、分子の結合部位のβ鎖を橋掛けする抗体フレームワーク領域の可変部にある三つの軽鎖領域と三つの重鎖領域をカバーするCDR構造ループ(複数)を含む。これらのループは特徴的な規定構造を有する(コーシアら,J.Mol. Biol.227: 799, 1992、カバットら,"Sequences of Proteins of Immunological Interest", 米国デパートメントオブヘルスアンドヒューマンサービス,1983)。
【0117】
CDRとも呼ばれる三つの高頻度可変領域で分断される免疫グロブリンの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、本明細書では「フレームワーク領域」と呼ぶ。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、正確に定義されている(例えば、クレベルら,J. Immunol. Methods 201(1): 35-55,19を参照)。異なる軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域の配列は、種の範囲内で比較的保存されている。本明細書で用いるとき、「ヒトフレームワーク領域」は、天然に生ずるヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に同一(約85%以上、通常は90〜95%以上)のフレームワーク領域である。構成的軽鎖及び重鎖の組み合わせフレームワーク領域である抗体のフレームワーク領域は、CDRを配置及び整列するのに役立つ。このCDRは主に、抗原のエピトープとの結合を担う。
【0118】
本明細書で用いるとき、用語「重鎖可変領域」は、約110から125までの長さのアミノ酸残基で、そのアミノ酸配列が本発明のモノクローナル抗体の重鎖のアミノ酸配列に相当し、該重鎖のアミノ末端(N末端)アミノ酸残基から始まるポリペプチドを意味する。同様に用語「軽鎖可変領域」は、約95から130までの長さのアミノ酸残基で、そのアミノ酸配列が本発明のモノクローナル抗体の軽鎖のアミノ酸配列に相当し、該軽鎖のN末端アミノ酸残基から始まるポリペプチドを意味する。完全長の免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kd又は214アミノ酸)はNH2末端(約110アミノ酸)の可変領域遺伝子、及びCOOH末端のκ若しくはλ定常領域遺伝子によりコードされる。完全長の免疫グロブリン「重鎖」(約50Kd又は446アミノ酸)は、同様に可変領域遺伝子(約116アミノ酸)及び他の上述の定常領域遺伝子、例えばγ(約330のアミノ酸をコードする)の一つによりコードされる。
【0119】
用語「免疫原性」は本明細書ではその最も広い意味に用いられ、器官内での免疫応答を誘発する特性を含む。免疫原性は通常は部分的には問題の物質のサイズに依存し、部分的には宿主分子がそれとどの程度異なるかに依存する。一般的に、高度に保存されたタンパク質は免疫原性がかなり低い傾向があると考えられる。
【0120】
用語「免疫グロブリン」は本明細書では実質的に免疫グロブリン遺伝子によりコードされる一つ以上のポリペプチドから成るタンパク質を指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、ε及びμ定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。免疫グロブリンの一つの形は抗体の基本的構造単位を構成する。この形は4量体であり、免疫グロブリン鎖の同一な二つの対から成り、それぞれの対が一つの軽鎖と一つの重鎖を持つ。それぞれの対において、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は一緒に抗原への結合を担い、定常領域は抗体エフェクター機能を担う。抗体に加えて、免疫グロブリンは例えばFv、Fab、Fab’及び(Fab’)2を含む様々な他の形で存在しうる。
【0121】
本明細書で言う「免疫相互作用性」には、分子の間の、特に分子の一方が免疫系の成分であるか若しくはその模倣体である場合の分子間の何らかの相互作用、反応又は他の形の関わりへの言及が含まれる。「免疫相互作用分子」は、抗体、抗体断片、合成抗体又はT細胞関連結合分子(TABM)を含む。
【0122】
「単離された」とは、その本来の状態では通常それに付随する構成成分を実質的に又は完全に含まない物質を意味する。
【0123】
宿主の特定の供給源から単離又は誘導された生体液の試料は「から得られた」と記載する。
【0124】
本発明は、本発明の方法で生産したモノクローナル抗体の断片、例えばFv、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片を含む、の使用及び作成をも意図する。このような断片は例えばコリガンら(1991-1997、上掲)により記載されたような標準的な方法で調製しても良い。
【0125】
本発明はまた、本発明のモノクローナル抗体と同じ又は類似した特異性を有する合成若しくは組換え抗原結合分子をも意図する。この種の抗原結合分子には合成的に安定化されたFv断片が含まれる。この種の典型的な断片には、ペプチドリンカーがVH領域のN末端又はC末端をそれぞれVL領域のC末端又はN末端と結合するために用いられる単鎖Fv断片(sFv、しばしばscFvと呼ばれる)が含まれる。ScFvは抗体全体の全ての定常部分を欠いており、補体を活性化することができない。VH及びVL領域の連結に適したペプチドリンカーは、Fvフラグメントがそれから由来した全抗体の抗原結合部位の三次元構造と類似した三次元構造を持つ抗原結合部位を有するポリペプチド単鎖にVH及びVL領域を折り畳ませるぺプチドリンカーである。所望の特性を有するリンカーは米国特許第4,946,778号に記載された方法で得ても良い。ScFvsは、例えば、クレベルら(1997、上掲)で概説された方法に基づいて調製しても良い。また、これらは米国特許第5,091,513号、ヨーロッパ特許第239,400号又はウィンターとミルシュタイン(Nature 349: 293,1991)及びプリュックサンら(Antibodynengineering: Apractical approach 203-252, 1996)による論文に記載された方法で調製しても良い。
【0126】
また、合成的に安定化されたFv断片には、完全に折り畳まれたFv分子において二つのシステイン残基残基がその二つの間でジスルフィド結合を形成するようにVH及びVL領域にシステイン残基が導入された、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)が含まれる。dsFvを生産するのに適した方法は、例えば、(グロックシューバーら,Biochem. 29: 1363-1367,1990、ライターら,J.Biol.Chem. 269: 18327-18331, 1994、ライターら,Biochem. 33: 5451-5459, 1994、ライターら,CancerRes. 54:2714-2718, 1994、ウェバーら,Mol. Immunol. 32: 249-258)に記載されている。
【0127】
合成又は組換えの抗原結合分子としては、例えば(ウォードら,Nature 341: 544-546、1989、ハマーズ−キャスターマンら,Nature 363: 446-448, 1993、デイヴィーズとリーヒマン、FEBS Lett. 339: 285-290, 1994)に記載されているような単一の可変領域(dAbsと呼ばれる)も意図される。
【0128】
また、合成又は組換えの抗原結合分子は「ミニボディ」を含んでも良い。これについて、ミニボディは全抗体のミニ版であるが、これは単鎖において全抗体の必須要素をコードする。ミニボディは、例えば米国特許第5,837,821号で開示されたように、ヒンジ領域に融合した天然の抗体のVH領域とVL領域、及び免疫グロブリン分子のCH3領域から構成されるのが適切である。
【0129】
別の実施態様では、合成又は組換えの抗原結合分子は、非免疫グロブリン由来のタンパク質フレームワークを含むことがある。例えば、抗原結合をすることで選択された相補性決定領域(CDR)を作成するためにランダム化した二つのループを有する四重らせん束のタンパク質チトクロームb562を開示するクーとシュッツ(Proc. Natl. Acad.Sci. USA92: 6552-6556, 1995)を参照しうる。
【0130】
合成又は組換えの抗原結合分子は多価(即ち、一つ以上の抗原結合部位を有する)であって良い。このような多価分子は一つ以上の抗原に対して特異的である場合がある。この種の多価分子は、例えば(アダムスら,Cancer Res.53: 4026-4034, 1993、カンバーら,J.Immunol. 149: 120-126, 1992)により開示された、二つの抗体断片をシステインを含むペプチドを介して二量体化することにより調製されることがある。また二量体化は、自然に二量体化する両親媒性のらせん体に抗体を融合する(プリュックサン、Biochem.31: 1579-1584, 1992)ことにより、又は優先的にヘテロ二量体化する領域(ロイシンジッパー,jun及びfosなど)の使用(コステルニーら、J.Immunol. 148: 1547-1553, 1992)により促進しても良い。更なる実施態様では、まず脱免疫化抗体を投与し、次いで例えばレポーター分子を含む抗−抗体を投与するなどの複数工程のプロセスを採用する。
【0131】
本発明は更に、抗体変異体のアミノ酸の化学的類似体を包含する。アミノ酸の化学的類似体の使用は、とりわけ被験体に投与した際に分子を安定化させるのに有用である。本明細書で意図するアミノ酸の類似体は、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の合成の間における非天然アミノ酸及び/又はその誘導体の組み込み、及び架橋剤及びタンパク質性分子若しくはその類似体に立体構造上の制約を課すその他の方法の使用を含むが、これらに限定されない。
【0132】
本発明で意図する側鎖修飾の例には、アルデヒドとの反応に続くNaBH4での還元による還元的アルキル化、メチルアセチミデートによるアミジン化、無水酢酸によるアシル化、シアン酸によるアミノ基のカルバモイル化、2、4、6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化、無水コハク酸及び無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化、及びピリドキサル−5−リン酸によるリジンのピリドキシ化に続くNaBH4での還元などによるアミノ基の修飾が含まれる。
【0133】
アルギニン残基のグアニジン基は、2、3−ブタンジオン、フェニルグリオキサール及びグリオキサールなどの試薬による複素環式縮合生成物の形成によって修飾しても良い。
【0134】
カルボキシル基はO−アシルイソ尿素形成を介するカルボジイミド活性化に続く、例えば対応するアミドへの誘導化により修飾しても良い。
【0135】
スルフヒドリル基は、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドでのカルボキシメチル化、システイン酸への過ギ酸酸化、他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成、マレイミド、無水マレイン酸又は他の置換マレイミドとの反応、4−クロロメルクリ安息香酸、4−クロロメルクリフェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール及び他の水銀化合物を用いた水銀誘導体の形成、アルカリ性pHでのシアン酸によるカルバモイル化などの方法により修飾しても良い。
【0136】
トリプトファン残基は、例えばN−ブロモスクシンイミドによる酸化又は2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミド又はハロゲン化スルフェニルなどによって修飾しても良い。一方チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化により改変して3−ニトロチロシン誘導体を形成しても良い。
【0137】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体又はピロカルボン酸ジエチルによるN−カルベトキシル化によって行って良い。
【0138】
ペプチド合成の間に非天然アミノ酸及び誘導体を組込む例としては、ノルロイシン、4−アミノ酪酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、t−ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、2−チエニルアラニン及び/又はアミノ酸のD異性体が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で意図する非天然アミノ酸の一覧は表3に示す。
【0139】
【表3】

【0140】
【表3−1】

【0141】
【表3−2】

【0142】
例えば、n=1からn=6の(CH2nスペーサー基を有する二官能性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどのホモ二官能性架橋剤、及び通常N−ヒドロキシスクシンイミドなどのアミノ反応性部分及びマレイミドやジチオ部分(SH)やカルボジイミド(COOH)などの他の基に特異的に反応する部分を含むヘテロ二官能性試薬を用いて3D立体構造を安定化させるために、架橋剤を用いることができる。加えて、ペプチドは例えばCαとNα−メチルアミノ酸の組み込み、アミノ酸のCα原子とCβ原子の間に2重結合の導入、及びN末端とC末端の間、二つの側鎖の間、又は側鎖とN若しくはC末端の間にアミド結合を形成するなどの共有結合の導入による環状ペプチド又は類似体の形成により、立体構造的に制約を加えることができる。
【0143】
脱免疫化前に得られたモノクローナル抗体は、下記の工程、即ち
(a)架橋結合フィブリンの誘導体から又は同じもの若しくはフィブリノゲン分解産物を含む抽出物から選択される抗原で表面をコーティングする工程、
(b)工程(a)の抗原を、上に記載したように調製したフィブリン架橋結合誘導体から誘導したモノクローナル抗体と接触させる工程、及び
(c)工程(b)で形成した複合体をシグナル増幅工程にかける工程、
を含む多数の手段により同定しうる。
【0144】
工程(a)では、D二量体及び/又はフィブリノゲン分解産物(フィブリノゲンが適切にトロンビンで消化されて断片D、断片E及び任意選択的に断片X及び断片Yが得られる工程から得られるのが好ましい)などの架橋結合フィブリン誘導体が個々のウェルに適用されたウェルプレートを利用することが好ましい。
【0145】
続いて、架橋結合フィブリン誘導体から誘導したモノクローナル抗体をそれぞれのウェルに添加した。適用され得る適切なシグナル増幅工程は、適切な酵素結合物を複合体と結合させ、続いて基質を添加するEIA工程である。または、RIA、FIA、凝集、付着又は化学発光が適切なシグナル増幅工程として使用しうる。
【0146】
上述のスクリーニング検定手順の目的は、テスト対象の細胞が、関連する架橋結合フィブリン誘導体に特異的であるが断片Dには特異的でない抗体を生産していることを確実にすることである。
【0147】
フィブリノゲン又はフィブリノゲン分解産物との反応は最小であるべきでありそして誘導体との反応は陽性であるべきである。用語「最小」は無反応を含むがフィブリノゲン自体に対して形成された抗体と比べた場合などの基底レベルにまで及ぶ。従って、最小反応はフィブリノゲンに特異的な抗体と比べて最適以下の反応性を含む。
【0148】
本発明はまた、その範囲内に下記の工程、即ち
(1)架橋結合フィブリン誘導体に特異的であるが断片Dには特異的でないモノクローナル抗体を架橋結合フィブリン誘導体から誘導された抗原を含むか架橋結合フィブリン誘導体自体を含むと思われる生体試料と接触させる工程、及び
(2)工程(1)で形成した複合体をシグナル増幅工程にかける工程、
を含む連結フィブリン誘導体を検出するための検定法をも含む。
【0149】
上述の検定法では、架橋結合フィブリン誘導体は、D二量体、D2E、又は上述の高分子量の性質の他の任意の誘導体であるのが適切である。検定される特定の架橋結合フィブリン誘導体に関するモノクローナル抗体は、既に記載したように調製する。
【0150】
架橋結合フィブリン誘導体の存在は、血栓の前症状、血栓症状又はフィブリンの形成及び溶解を含むその他の状態の適切な診断補助として用いうる。
【0151】
本発明の脱免疫化モノクローナル抗体は特に、血塊造影に、並びに血塊を全体的に又は部分的に溶解できる酵素又は他の化学物質と血塊を接触させるために血塊を標的化するのに有用である。
【0152】
血塊造影に関しては、レポーター分子を、脱免疫化モノクローナル抗体に、又は脱免疫化抗体に特異性を有する抗体若しくはその一部若しくはその結合物に付着させ、次いでこれをヒトなどの宿主に導入する。このレポーター分子を検出することにより、血塊が可視化できる。レポーター分子の一つの特に有用な形は核標識である。本発明での使用が意図される核標識は二官能性金属イオンキレートを含むが、これに限定されない。このキレートは抗体自体に付着し、またデンドリマーを介して複数のキレートがタンパク質に付着しても良い。特に好ましい核標識は99mTc、18F、64Cu、67Ga、68Ga、77Br、97Ru、111In、123I、124I、131I及び188Reである。最も好ましい核標識は99Tcである。宿主はヒトであることが好ましく、従って3B6ネズミモノクローナル抗体は脱免疫化する必要がある。
【0153】
免疫シンチグラフの別の形は、68Ga又は124I又は他のPET同位元素などの同位元素を用いて得て良い。このような技術は「免疫PET」と表されることがある。この技術にはγカメラシンチグラフに勝る利点があり、特に肺やふくらはぎの小さな血塊や骨盤などのような従来の診断法を受け入れにくい身体の部分において、高解像度の血塊像を得られることがある。
【0154】
従って本発明は、脱免疫化抗体などの脱免疫化した免疫相互作用分子、及び造影標識又は治療薬の一方又は両方を含む複合体分子を提供する。
【0155】
造影標識は、99mTc、18F、64Cu、67Ga、68Ga、77Br、97Ru、111In、123I、124I、131I及び188ReなどのMRIタイプ、超音波タイプ、及び/又はCTタイプの標識であるが、これらに限定されない。
【0156】
好ましい治療用標識はサイトカイン、抗凝固薬、傷治療薬、及び抗感染薬を含む。
【0157】
本発明の別の一側面は、ヒトで患者の血塊を検出する方法であって、ネズミモノクローナル抗体3B6の脱免疫化形又は循環系全体に標識化した抗体を拡散させるリポーター分子で標識したその抗原結合断片を該患者に導入する工程、次いで該患者をレポーター分子検出処理にかけて血塊中の抗体の位置を同定する工程を含む方法を意図する。
【0158】
レポーター分子は核標識であることが好ましい。
【0159】
核標識は、99mTc、18F、64Cu、67Ga、68Ga、77Br、97Ru、111In、123I、124I、131I及び188Reであることが好ましい。
【0160】
核標識は99mTcであることが好ましい。
【0161】
本発明は更に、血塊造影剤の製造におけるD二量体又は他の架橋結合フィブリン誘導体に特異的な脱免疫化ネズミモノクローナル抗体の使用を意図する。
【0162】
ネズミモノクローナル抗体は3B6又はその同族体であることが好ましい。
【0163】
血塊造影標識はヒト用であることが好ましい。
【0164】
同じ抗体はまた、複数の抗凝固物質及び/又は複数のレポーター分子などの複数の標識を保持しても良い。または、或いはそれに加えて、それぞれが異なる標識を保持する複数の抗抗体を投与しても良い。
【0165】
本発明の血塊を標的とする抗体は、単独でまたは他の造影手段と組み合せて用いても良い。このような手段の一つは、CT、MRI又は超音波などの平面画像形成法であるがこれらに限定されない。
【0166】
従って、本発明の別の一側面は、ヒト患者における血塊を検出する方法であって、ネズミモノクローナル抗体3B6の脱免疫化形又は循環系の全体に標識化した抗体を拡散させるリポーター分子で標識したその抗原結合断片を該患者に導入する工程,次いで該患者を平面血塊画像形成法にかける工程を含む方法を意図する。
【0167】
平面画像形成法はMRI又はCTスキャンであることが好ましい。超音波を画像形成工程で用いても良い。
【0168】
従って、本発明の別の一側面は、ヒト患者における血塊を検出する方法であって、循環系全体に標識化した抗体を拡散させるネズミモノクローナル抗体3B6の脱免疫化形又はレポーター分子で標識したその抗原結合断片を該患者に導入する工程、次いで該患者をコンピュータ支援断層撮影核医学スキャンにかけて血塊を可視化する工程を含む方法を意図する。
【0169】
レポーター分子は核標識であることが好ましい。
【0170】
核標識は、99mTc、18F、64Cu、67Ga、68Ga、77Br、97Ru、111In、123I、124I、131I及び188Reであることが好ましい。
【0171】
核標識は99mTcであることが好ましい。
【0172】
本発明の血塊造影物質は治療用物質としても有用である。とりわけ、血塊を標的とする物質は、抗凝血分子などの血塊溶解物質又は血塊成長防止物質と融合、結合又はその他の方法で結び付けられる。
【0173】
従って、本発明の別の一側面は、ヒトにおける血塊の溶解又は除去を促進する方法であって、該ヒトにヒト由来D二量体及びその他の架橋結合フィブリン誘導体に特異性を有し且つフィブリノゲン又は断片D及び断片Eを含むフィブリノゲン分解産物に反応しないネズミ由来モノクローナル抗体変異体を血塊の溶解又は血塊の成長防止に効果的な量で投与する工程を含み、該ネズミ由来モノクローナル抗体変異体がヒトで実質的に非免疫原性であり、該モノクローナル抗体がこの抗体に融合、結合又はその他の方法で結び付いた血塊溶解物質又は血塊成長防止物質を更に含むものである方法を意図する。
【0174】
本発明のまた別の一側面は、ヒトにおける血塊の溶解物質の製造における、ヒト由来のD二量体及び他の架橋結合フィブリン誘導体に特異性を有し且つフィブリノゲン又は断片D及び断片Eを含むフィブリノゲン分解産物に反応しないネズミ由来モノクローナル抗体変異体の使用であって、該ネズミ由来モノクローナル抗体変異体がヒトにおいて実質的に非免疫原性であり、該抗体が該抗体に融合、結合又はその他の方法で付着した血塊溶解物質若しくは血塊成長防止物質を更に含むものである、該ネズミ由来モノクローナル抗体変異体の使用に向けられている。
【0175】
別の実施態様では、複数の脱免疫化抗体を用いても良い。一つの例では、脱免疫化3B6抗体を単独で投与し、次いでそれぞれが血塊−3B6複合体を標的とする診断用物質又は治療物質などの物質を一つ保持する抗免疫グロブリン抗体を脱免疫化する。また別の例は、複数(例えば二つ)の特異性を有する抗体を設計することである。この場合、一つの特異性が血塊に対するものであり、もう一つが血塊の部位(例えば、細胞受容体)に対するものであっても良い。これは複数の抗体を用いて達成しうる。
【0176】
本発明は更に、本発明の血塊を標的とする物質及び一つ以上の薬学的に許容されうる担体及び/又は希釈剤を含む組成物を意図する。
【0177】
注射用に適した薬学的な剤形には、無菌の水溶液、並びに糖、タンパク質などの安定剤又は放射標識化工程を容易にするその他の化合物若しくは分子と共に抗体標品を凍結乾燥した剤形が含まれる。これは製造条件及び保存条件の下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び植物油を含む溶剤又は希釈培体であり得る。その適当な流動性は、例えば、界面活性剤(superfactant)の使用により維持できる。微生物の作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌剤及び抗真菌剤によって実施できる。多くの場合、例えば糖や塩化ナトリウムなどの等張性物質を含むことが好ましい。注射可能組成物の長期的な吸収は、例えばアルミニウムモノステアレート及びゼラチンなどの吸収を遅延する物質を組成物中に使用することによりもたらされる。
【0178】
無菌の注射可能溶液は必要量の活性化合物を、活性成分及び必要に応じて任意選択的に他の活性成分と共に適切な溶剤に混合し、続いて濾過滅菌又は滅菌に適した他の方法で滅菌して調製する。
【0179】
薬学的に許容されうる担体及び/又は希釈剤には、溶剤、分散媒体、被覆剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張性物質及び吸収遅延剤などのいずれか又は全てを含む。薬学的に活性な物質のためにこのような媒体及び物質を使用することは、当分野では周知であり、従来からの媒体又は物質が活性成分と配合禁忌である場合に限りそれを除き、治療用組成物におけるそれらの使用が意図される。補助的な活性成分も該組成物中に組み込むことができる。
【0180】
本発明の血塊を標的とする物質は、DVT、PE及びDICなどのトロンビン関連症状の診断及び/又は治療に有用である。
【0181】
本発明のまた別の一側面は、フィブリンと関連する癌を持つ被験体を治療する方法を意図する。この実施態様では、D二量体エピトープに対する抗体を用いて、β波又はγ波、又はその組合わせを放射する同位元素などの細胞障害性物質を送達しうる。このような同位元素には131I、イットリウム−90、レニウム−186、レニウム−188、ルテチウム−117及び銅−67が含まれるがこれらに限定されない。癌と関連するフィブリンにはフィブリン被包性腫瘍が含まれる。
【0182】
従って、本発明の脱免疫化免疫相互作用分子は、何らかの血塊結合物質又は血塊溶解物質、又は有用な診断特性若しくは治療特性を有する何らかの物質のための担体である。本発明の脱免疫化免疫相互作用分子はまた、血塊の溶解、消散、及び/又は消滅の動力学を決定するのにも有益である。この情報が入手できれば、血塊溶解剤又は血塊造影剤は極めて迅速に投与できる。
【0183】
本発明は以下の限定的でない実施例により更に説明する。
【実施例1】
【0184】
細胞融合とハイブリッドの選択
脾臓はD二量体の注射の三日後に頸部転位により殺した2匹の免疫化したマウスから無菌の状態で摘出した。マウスは事前に前述のグレーフとハーファーの引用文献で報告されたようにタンパク質分解酵素トロンビンとプラスミンで消化したフィブリン溶解物を三回注射して免疫化した。この二つの脾臓を5mlの完全培地(85%のRPMI1640、15%w/vのウシ胎児血清、100I.U./mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン及び2×10-3Mのグルタミン。ギブコ、グランドアイランド、ニューヨーク)を含む60mmペトリ皿(ファルコン、3001、オックスナード、カリフォルニア)に入れた。細胞懸濁液は、60℃の角度で最後の1センチを曲げた3mlの使い捨て注射器に接続した2×18ゲージの注射針で膵臓の皮膜を剥離して調製した。この細胞懸濁液を次に22ゲージの注射針に取り付けた10mlの注射器に吸い取り、中程度の圧力で射出した。この操作を2回行なった後、細かいメッシュのステンレススチールのスクリーンを通してファルコン2001管中に細胞を濾過して大き目の細胞の塊及び細胞破砕物を除去した。
【0185】
この細胞懸濁液を室温で5分間静置させて、小さ目の凝集塊及び膜の断片を沈殿させた後、この細胞懸濁液を新しいファルコン2001管に移した。これらの細胞を350Gで5分間、室温で遠心分離し、その上清を第1の細胞ペレットから新しい管にデカントし、700Gで5分間回転させて第2の細胞ペレットを得て、この二つのペレットはプールして5mlの完全培地に再懸濁した。この脾臓白血球(SWBC)は次いでタークス染色でカウントし、その生存度をトリパンブルー染色で評価し、100×106の生存可能なSWBCを総量5mlの完全培地を含む別々のファルコン2001管に入れた。融合に用いるNS−1骨髄腫細胞は、380Gで15分間、室温での遠心分離によって一度洗浄し、完全培地中で5×106の生細胞/mlになるように調整した。
【0186】
25×106のNS−1と100×105の免疫SWBCは混合し、350Gで5分間、室温で回転させた。その上清をデカントし、残りの培地をパスツールピペット及び2mlの42%w/vポリエチレングリコール溶液(PEG、MW1540)(ベーカーケミカル・カンパニー、ニュージャージー)で注意深く取り除いた。37℃の15%v/vジメチルスルホキシド(DMSO)を含むPRMI1640の中に、5mlのガラス製使い捨てピペット(コーニンググラス、コーニング、ニューヨーク)で添加し、これらの細胞を同じ5mlピペットで30秒間、電気ピペッタ(ピペットエイド・ドラモンドサイエンティフィックカンパニー、ブルーマル、ペンシルバニア)で補助して再懸濁した。このPEG細胞懸濁液を室温でさらに30秒間静置した後、粘性のPEG溶液との完全な混合を確実にするのに十分なように90秒以上継続して管を指ではじきながら、5mlの完全培地をパスツールピペットで滴下して添加した。更に5mlの完全培地を直ぐに添加し、逆さまにして混合し、この細胞懸濁液を室温で更に150秒間静置させた後350Gで5分間、室温で遠心分離にかけた。この上清をデカントし、細胞ペレットを電気ピペッタ付きの5mlピペットを用いて5mlの完全培地中に穏やかに再懸濁した。全ての細胞集団を崩さないよう、細心の注意を払った。トリダックステッパー(ベルコグラス社、バインランド、ニュージャージー)を用いて、0.05mlの細胞懸濁液を、10-4Mのヒポキサンチン(シグマ)、4×10-7Mのアミノプテリン(シグマ)、1.6×10-5Mのチミジン(シグマ)及び4×10-5Mの2−メルカプトエタノール(HATミディアム)を含む1mlの完全培地中にフィーダー細胞として1×106の正常なBALB/cマウスSWBCを含む4つのコスター24穴プレート(コスター3524、ケンブリッジ、マサチューセッツ)(以降1°融合プレートと呼ぶ)の各ウェルに添加した。
【0187】
この1°融合プレートを、次に37℃の加湿したCO25%、空気95%の雰囲気中に置いた。これらの細胞は、まず5日目又は7日目のいずれか、その後は必要なときに0.5mlの新鮮なHAT培地で養分を与える。一般的に、10日目にクリーニング検定のため0.5mlの培地をスハイブリドーマの増殖を示す各ウェルから採取し、0.5mlの新鮮なHAT培地を補充した。スクリーニング検定に基づき最強の増殖を示した幾つかのウェルを維持のため選択した。これらの選択されたウェルは元のウェル(1°ウェル)でコンフルーエンシーまで増殖させ、次いで各ウェルを半分に分割しての24穴コスタープレート(2°プレート)の新しいウェル(2°ウェル)に移した。これらのウェルは毎日点検し、必要な場合、2°コスタープレートの第二、第三、第四のウェルに広げた。14〜28日目から、細胞にHT培地を給餌した。2°プレートの少なくとも二つのウェルで強い増殖があった場合には、再スクリーニング用に各クローン型の一つのウェルから上清を選択し、希釈制限により細胞株を分泌するモノクローナル抗体を生産する2回目のスクリーニング検定の結果から特異的抗体を生産する幾つかのクローン型を選択した。
【実施例2】
【0188】
ハイブリドーマのクローニング
選択された各クローン型の2°ウェルの一つを再懸濁し、ウェルごとの生細胞の数をトリパンブルー排除によって測定した。各クローン型を播種する直前に、HT培地又は完全培地(細胞が融合後28日より多く経過している場合)で妥当な一連の希釈を行い、0.5細胞/0.05mlの頻度とした。次にこの容量を、0.1mlのHT培地又は完全培地に1×105正常なマウス脾臓フィーダー細胞を含む96穴平底組織培養プレート(フローラボラトリーズ、ミシサーガ、オンタリオ、カナダ)(LDプレート)の各ウェルにトリダク・ステッパーで添加した。このLDプレートは次いで37℃の加湿した5%CO2、95%空気の雰囲気中に置き、7〜10日後にクローンの増殖をスクリーニングした。陽性の増殖を示した各ウェルから、スクリーニング用に0.1mlの上清を採取し、これらのウェルに初めて0.1〜0.15mlのHT又は完全培地で養分を与えた。このLDスクリーニング検定に基づき、最小限の二つの「より良い」特異的抗体生産性クローンを最終的に大量培養に拡大するために選択した。
【0189】
また、大量のMabを得ることが望まれているの場合は、雌のBALB/cマウスに2×106の生ハイブリドーマ細胞を注射した14日後に、0、5mlの2,5,10,14−テトラメチルペンタデカン(プリスタン、アルドリッヒケミカルコーポレーション、ミルウォーキー、ウィスコンシン(Wisonsin))を腹腔内注射し、細胞の注射後12〜14日のマウスから腹水液を採取した。この腹水液を、遠心分離及び45%の硫酸アンモニウムで沈殿させ、MAbを45%硫酸アンモニウムによる沈殿で回収し、0.01%のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝化食塩水(PBS)中で4℃又は−70℃のいずれかで貯蔵した。
【実施例3】
【0190】
モノクローナル抗体スクリーニング検定
96穴U底マイクロテストプレート(ディスポーザブルプロダクツ社、アデレード、サウスオーストラリア)のウェルに50μlのD二量体(5μg/ml)又はフィブリノゲン分解産物(5μg/mlPBS、室温(25℃)中で1時間)を加えて被覆した。過剰な抗原は、プレートを逆さまにしプレートを叩いて除去した。このプレートを次に0.05%w/vのトゥイーン20(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ)を含むPBSで3回洗浄した。D二量体又はフィブリノゲン分解産物に対するMAbを分泌するクローンは、次いで各ウェルに50μlの組織培養上清を添加し、1時間室温で培養することにより検出した。非結合のMAbはプレートを逆さまにして叩いて除去し、プレートはPBS/トゥイーンで3回洗浄した。PBS/トゥイーンで1000倍希釈したウサギ抗マウス免疫グロブリン(ダコパッツ、コペンハーゲン、デンマーク)に結合したペルオキシダーゼの100μlを添加し、室温で更に1時間インキュベートした。このプレートを再度逆さまにし、PBS/トゥイーンで3回洗浄し、100μlの活性化された基質(使用直前に、50mMのクエン酸、2.5mMの0−トリジン二塩酸塩(0−トリジン、シグマケミカルコーポレーション、希釈HCIから再結晶化)、0.025mMEDTA,pH4.5を含む10mlの基質溶液に3%過酸化水素溶液の10μlを添加)を各ウェルに添加した。青色から黄色への色変化を起こした呈色反応を3MのHCIを50μl添加して10分後に停止させ、吸収はティテルテック・ムルティスカン上で450nmで記録した。
【実施例4】
【0191】
3B6可変領域配列の同定
ネズミハイブリドーマ3B6を、15%w/vのウシ胎児血清を補充したRPMI1640培地で増殖させた。総RNAは107ハイブリドーマ細胞から調製した。VH及びVKcDNAは逆転写酵素とマウスκ定常領域プライマー及びマウスIgG定常領域プライマーを用いて調製した。第一鎖のcDNAは、様々なマウスシグナル配列プライマー(VHに対し6セット、VKに対し7セット)を用いて増幅した。この増幅したDNAをゲル精製し、ベクターpGem(登録商標)ティーイージー(プロメガ)中にクローニングした。得られたVHとVKクローンを、予測された大きさの挿入断片についてPCRでスクリーニングし、選択されたクローンのDNA配列をジデオキシチェインターミネーター法で決定した。
【0192】
有意義なVH及びVK遺伝子は配列分析により同定した。相補性決定領域(CDR)の位置は他の抗体配列(43)を参照して決定した。3B6VHはマウス重鎖下位グループIAに割り当てることができる。3B6VKはマウスκ鎖下位グループIに割り当てることができる。
【実施例5】
【0193】
潜在的T細胞エピトープを持つ3B6可変(v)領域配列の分析
3B6VH及びVKの配列は、既に記載された手順(カーら、国際特許公開番号WO98/52976)を用いて潜在的T細胞エピトープの存在について分析した。潜在的T細胞エピトープとして同定されたペプチド(MHCクラスII結合ペプチド)を、コンピュータ内で改変し、改変された配列が潜在的MHCクラスII結合の喪失していることを確実にするためそして更なるMHCクラスII結合モチーフが周囲の配列で形成されなかったことを検証するために再分析した。またこの配列を、MHCクラスII結合モチーフをヒト生殖細胞系列で見られるモチーフに変換するよう改変した。単一の概して保存性のアミノ酸置換基を試し、全体的な抗体構造に注意を払って置換した。多数の様々な配列が、それぞれが異なった数の置換基を含むVH及びVK用にコンパイルされる。
【実施例6】
【0194】
潜在的T細胞エピトープが減少した3B6可変(v)領域配列のデザイナー変異体
実施例5のスキームに従って設計された重及び軽(v)領域は、(ドーアティら,Nucleic Acids Research 19:2471-2476,1991)に記載の重複PCR組換え法によりインビトロで構築した。クローニングしたネズミVH及びVK遺伝子を、フレームワーク領域を所望のヒト化配列へ突然変異誘発させるためのテンプレートとして用いた。変異原性プライマーの対の組みを、改変対象の領域を覆うように合成した。隣接するプライマーは15bpの同族配列を含んでいた。これらのプライマーを用いた1回目のPCRは、所望の(v)領域遺伝子を包含する5〜8個の重複するDNA断片を形成した。鋳型としてベクターVH−PCR1及びVK−PCR1(オーランディら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837, 1989)を用いて、リーダーシグナルペプチド、リーダーイントロン及びネズミ免疫グロブリンプロモーターを含む5’フランキング配列、及び、スプライス部位及びイントロン配列を含む3’フランキング配列、並びに更に二つの重複する断片を導入した。生産されたこれらのDNA断片を、外側に隣接するプライマーを用いた2回目のPCRで結合させて所望の全長PCR産物を得た。DNA配列決定のためこれらのPCR産物をベクターpUC19にクローニングした。予測した配列改変を含むクローンを選択し、DNA配列全体がそれぞれ正確に所望のVH及びVKであることを確認した。重鎖及び軽鎖遺伝子を、(Tempestら,Biotechnology 9: 266-271, 1991)に記載のようにヒトIgG1又はκ定常領域を有する発現ベクターpSVgpt及びpSVhygに転位させた。ベクターVH−PCR1及びVK−PCR1(オーランディら,1989,上記)をテンプレートとして用いて、リーダーシグナルペプチド、リーダーイントロン及びネズミ免疫グロブリンプロモーターを含む5’フランキング配列、並びにスプライス部位及びイントロン部位を含む3’フランキング配列を導入した。
【実施例7】
【0195】
3B6抗体変異体の発現及び精製
3B6変異体の重鎖並びに軽鎖発現ベクターを、NS0、即ち非免疫グロブリンを生産するマウス骨髄腫(ヨーロピアンコレクションオブアニマルセルカルチャー、ポートン、英国(ECACCNo85110505)から得られる)中に電気穿孔法により異なる組み合わせで共トランスフェクトさせた。gpt遺伝子を発現するコロニーを、0.8μg/mlのミコフェノール酸及び250μg/mlのキサンチンを補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で選択した。トランスフェクトした細胞クローンによるヒト抗体の生産はヒトIgG(48)についてELISAで測定した。抗体を分泌する細胞株を選択して増殖させた。3B6抗体変異体はProsep(登録商標)−A(バイオプロセシング社、コンセット、英国)を用いて精製した。
【実施例8】
【0196】
3B6抗体変異体の機能テスト
抗体変異体は、実施例3に大まかに記載したELISA系検定を用いてD二量体結合をテストした。結合特異性はヒトフィブリノゲン結合検定を用いて確認した。しかしながら、好ましい実施態様では、D二量体は液相で用いた。この検定では、溶液中のD二量体を捕捉するために3B6抗体をELISAプレート上に0.5μg/ウェルで被覆した。D二量体は10μg/ml(500ng/ウェル)で及び2倍の希釈で適用した。表れた抗体はHRPO結合マウスモノクローナル抗D(ダイマーテストEIAタグ、エイジェン社)であった、その結果物はOPD基質で発色させ、492nmで読み取った。脱免疫化3B6抗体をネズミ及びキメラ3B6抗体、及び前述の脱免疫化抗体3B6DIVH1/DIVK1と比較する。その結果は図4A、4B及び4Cに示す。液相D二量体の使用はクローンの選択という点で固相D二量体よりも良好であることが分かった。液相D二量体の使用は本発明の好ましい側面である。
【実施例9】
【0197】
3B6−99mTcを用いた血栓の可視化
マウス由来の3B6モノクローナル抗体及びヒト用の脱免疫化形は図1Aに示すが、これは血塊の主要部分であるフィブリンに対し特異性を示す(図1B)。血塊造影の概念は3B6モノクローナル抗体を核標識、この場合は99mTcで標識することににり展開される(図2)。ヒトにおける標識化した3B6脱免疫化モノクローナル抗体の投与(図3A)。前大腿における血塊などの循環系における塊の可視化(図3B)は、フィブリンにモノクローナル抗体が結合しその結果血塊部位で照射の集中が生ずることにより発生する。
【実施例10】
【0198】
3B6−99mTcを用いた血栓の可視化
大腿の血管内に入れたバルーンカテーテルを通してトロンビンとヒトフィブリノゲンを注入することにより予め形成させた血栓を塞栓形成術により、麻酔したイヌの中に肺塞栓(0.1〜0.5g)を形成させた。フィブリンに特異的なモノクローナル抗体のキメラ(ヒト/マウス)誘導体の精製したFab’断片(0.35mg)を、15mCiの99mTcで標識化した。塞栓形成の1時間後に、放射標識した抗体標品を抹消静脈カテーテルを通して注入した。抗体の注入の8時間後に、画像形成走査を行い、塞栓を可視化した。
【0199】
99mTcで標識化した抗体断片は、両方の対象において1時間のt1/2で循環中から消失した。対象1では、右下葉内に二つの小塞栓(結合集団、0.187g)が見えた。血塊/血液の放射性比率は38:1であった。対象2では、右下葉中に一つの塞栓(塊、0.449g)が見えた。血塊/血液放射性比率は27:2であった。一つの小塞栓(0.091g)は、対象1の右心室で発見された。血塊/血液放射性比率は45:1であった。抗体投与又はスキャニング方法のいずれからも害作用は見られなかった。
【0200】
放射標識した抗フィブリン抗体断片の注入の後の画像形成は、肺抹消の塞栓、比較的小さな塞栓の画像さえも形成する。この画像は信頼性が高く、解釈するのにトレーニングは殆ど必要ない。この技術は同じ設定で深部静脈の血栓の画像形成にも利用できる。この物質に対する対象の耐性は良い。息こらえや心臓ゲートの必要がない。これは腎毒性のある静脈内造影色素を使用しない。放射線量は換気/血流スキャンに用いられる線量と同様である。この技術は、殆どの医療センターで利用できる技術を用いて、PE及びDVTの診断を簡単にし明確にしうる。
【0201】
当業者らは、本明細書に記載の発明が具体的に記載されたもの以外のものに変化や修正を行い易いことを認めるであろう。本発明はこのような変化及び修正を全て含むものと理解される。本発明はまた、本明細書で個々に又は集合的に言及し又は示した全ての工程、特性、組成物、及び化合物、及び該工程や特性の任意の二つ以上の組合せのいずれか又は全てをも含む。
【0202】
引用文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫相互作用分子の変異体であって、架橋結合したフィブリン誘導体に特異性を有し且つ一つの動物又は鳥類生物から得られうる免疫相互作用分子から誘導される部位を含み、同じ種又は異なる種の別の動物又は鳥類生物においては免疫原性の減少を示す変異体。
【請求項2】
免疫相互作用分子が抗体である、請求項1記載の免疫相互作用分子変異体。
【請求項3】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項2記載の免疫相互作用分子変異体。
【請求項4】
ネズミ動物由来のモノクローナル抗体が別のネズミ動物又はネズミ以外の動物について脱免疫化(deimmunized)されていものである、請求項3記載の免疫相互作用分子変異体。
【請求項5】
ネズミ以外の種の動物がヒトである、請求項4記載の免疫相互作用分子変異体。
【請求項6】
ネズミモノクローナル抗体がネズミ動物において非変性D二量体に対して生産されるものである、請求項4又は請求項5記載の非免疫相互作用分子変異体。
【請求項7】
D二量体がヒト起源のものである、請求項6記載の免疫相互作用分子変異体。
【請求項8】
ヒト由来D二量体及び他の架橋結合フィブリン誘導体に特異性を有し且つフィブリノゲン又は断片D及び断片Eを含むフィブリノゲン分解産物には反応しないネズミ由来モノクローナル抗体変異体であって、ヒトにおいては実質的に非免疫原性である変異体。
【請求項9】
該変異体がネズミモノクローナル3B6のものである、請求項1から請求項7いずれか1項に記載の免疫相互作用分子変異体又は請求項8記載のネズミモノクローナル抗体変異体。
【請求項10】
モノクローナル抗体3B6の脱免疫化形であって、ヒトにおいては実質的に非免疫原性である脱免疫化3B6。
【請求項11】
ヒトD二量体又は他の架橋結合フィブリン誘導体の抗原決定基に対して特異性を有する脱免疫化モノクローナル抗体を作成する方法であって、
(i)ヒトから架橋結合フィブリン誘導体又は同じものを含む抽出物を取得する工程、
(ii)非ヒト動物において、該架橋結合フィブリン誘導体に対して特異的ではあるが断片Dとは交差反応しない抗体を作成する工程、そして
(iii)該非ヒト由来の抗体を脱免疫化処理にかける工程
を含む方法。
【請求項12】
モノクローナル抗体3B6に認識されるエピトープに特異性を有する脱免疫化抗体分子であって、該脱免疫化抗体の可変領域の相補性決定領域(CDR)の少なくとも一つが該3B6モノクローナル抗体に由来するものであり、この脱免疫化抗体分子の残りの免疫グロブリンに由来する部分が宿主由来の免疫グロブリン又はその類似体に由来するものであり、この宿主に対して抗体が脱免疫化されるものである脱免疫化抗体分子。
【請求項13】
該抗体がネズミモノクローナル抗体3B6のヒト化形である、請求項12記載の脱免疫化抗体。
【請求項14】
MHクラスII分子と結合する該v領域のペプチド断片を消失又は減少させるために該3B6抗体の該v領域に一つ以上のアミノ酸突然変異を含む、請求項13記載の脱免疫化抗体。
【請求項15】
H鎖遺伝子及びL鎖遺伝子の異なる組み合せから誘導される、請求項13又は請求項14記載の脱免疫化抗体。
【請求項16】
H鎖がHv5(3B6DIVHv5、配列番号:1)、Hv6(3B6DIVHv6、配列番号:2)及びHv7(3B6DVIHv7、配列番号:3)から選択されるものである、請求項15記載の脱免疫化抗体。
【請求項17】
L鎖がKv1(3B6DIVKv1、配列番号:4)、Kv4(3B6DIVKv、配列番号:5)及びKv7(3B6DIVKv7、配列番号:6)から選択されるものである、請求項15記載の脱免疫化抗体。
【請求項18】
変異体がVHv5/VKv1、VHv6/VKv1、VHv7/VKv1、VHv5/VK7、VHv6/VKv7、VHv6/VKv4、VHv7/VKv4、VHv7/VKv7及びVHv5/VKv4から選択されたH鎖及びL鎖の組み合せを含む、請求項16又は請求項17記載の脱免疫化抗体。
【請求項19】
ヒトに用いるために脱免疫化したネズミモノクローナル抗体3B6変異体であって、配列番号:7/配列番号:10、配列番号:8/配列番号:10、配列番号:9/配列番号:10、配列番号:7/配列番号:12、配列番号:8/配列番号:12、配列番号:8/配列番号:11、配列番号:9/配列番号:11、配列番号:9/配列番号:12、及び配列番号:7/配列番号:11から選択されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む重鎖v領域及び軽鎖v領域の組み合わせ、又は上に列挙した各対の一方又は両方のアミノ酸配列と少なくとも70%の類似性を有するヌクレオチド配列又は低ストリージェンシー条件で上に列挙した各対の一方又は両方のヌクレオチド配列又はその相補形とハイブリッド形成できるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の組み合わせを含む変異体。
【請求項20】
ヒトに用いるために脱免疫化したネズミモノクローナル抗体3B6変異体であって、配列番号:1/配列番号:4、配列番号:2/配列番号:4、配列番号:3/配列番号:4、配列番号:1/配列番号:6、配列番号:2/配列番号:6、配列番号:2/配列番号:5、配列番号:3/配列番号:5、配列番号:3/配列番号:6及び配列番号:1/配列番号:5から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖v領域及び軽鎖v領域の組み合せ、又は上に列挙した各対の一方又は両方のアミノ酸配列と少なくとも70%の類似性を有するアミノ酸配列の組み合せを含む変異体。
【請求項21】
ヒト患者における血塊を検出する方法であって、該患者にネズミモノクローナル抗体3B6脱免疫化形又は循環系の全体に標識化した抗体を拡散させるレポーター分子で標識化したその抗原結合断片を導入する工程、次いで該患者をコンピュータ支援断層撮影核医学スキャンにかけて血塊を可視化する工程を含む方法。
【請求項22】
レポーター分子が核標識である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
核標識が99mTc、18F、64Cu、67Ga、68Ga、77Br、97Ru、111In、123I、124I、131I及び188Reである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
核標識が99mTcである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ネズミモノクローナル抗体が3B6又はその同族体である、請求項21記載の方法。
【請求項26】
血塊又は循環系の全体に抗体を拡散させるその抗原結合断片を検出する方法であって、最初に述べた該抗体に特異的でレポーター分子で標識された第2抗体を投与し、次いで該患者をコンピュータ支援断層撮影核医学スキャンにかけて血塊を可視化する方法。
【請求項27】
レポーター分子が核標識である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
核標識が、99mTc、18F、64Cu、67Ga、68Ga、77Br、97Ru、111In、123I、124I、131I及び188Reである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
核標識が99mTcである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ネズミモノクローナル抗体が3B6又はその同族体である、請求項26記載の方法。
【請求項31】
ヒト患者において血塊を検出する方法であって、該患者にネズミモノクローナル抗体3B6の脱免疫化形又は循環系の全体に標識化抗体を拡散させるレポーター分子で標識したその抗原結合断片を導入する工程、次いで該患者を平面血塊画像形成法にかける工程を含む方法。
【請求項32】
平面画像形成法がMRI、CTスキャン又は超音波である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ヒトである患者において血塊を検出する方法であって、該患者にマウスモノクローナル抗体3B6又は循環器系の至る所に標識化抗体を拡散させるレポーター分子で標識したその抗原結合フラグメントの非免疫化形を投与し、次いで患者をコンピュータ支援断層核医学スキャンにかけて血塊を可視化する工程を含む方法。
【請求項34】
レポーター分子が核標識である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
核標識が99mTc、18F、64Cu、67Ga、68Ga、77Br、97Ru、111In、123I、124I、131I及び188Reである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
核標識が99mTcである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
ネズミモノクローナル抗体が3B6又はその同族体である、請求項33記載の方法。
【請求項38】
血塊又は循環系の全体に抗体を拡散させるその抗原結合断片を検出する方法であって、最初に述べた該抗体に特異的でかつレポーター分子で標識された第二抗体を投与し、次いで該患者をコンピュータ支援断層撮影核医学スキャンにかけて血塊を可視化する方法。
【請求項39】
レポーター分子が核標識である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
核標識が99mTcである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
ネズミモノクローナル抗体が3B6又はその同族体である、請求項38記載の方法。
【請求項42】
ヒトにおいて、血塊の溶解又は除去を容易にする方法であって、該方法がヒト由来D二量体及び他の架橋結合フィブリン誘導体に特異性を有し且つフィブリノゲン又は断片D及び断片Eを含むフィブリノゲン分解産物に反応しないネズミ由来モノクローナル抗体変異体を、血塊を溶解させ又は血塊の成長を阻害するのに効果的な量で該ヒトに投与する工程を含み、該ネズミ由来モノクローナル抗体変異体が実質的にヒトにおいて非免疫原性であり、該モノクローナル抗体がそれに融合、結合又はその他の方法で結び付いた血塊溶解物質又は血塊成長防止物質を更に含むものである方法。
【請求項43】
ヒトにおいて血塊を溶解させるための医薬の製造における、ヒト由来のD二量体及び他の架橋結合フィブリン誘導体に特異性を有し且つフィブリノゲン又は断片D並びに断片Eを含むフィブリノゲン分解産物には反応しないネズミ由来モノクローナル抗体変異体の使用であって、該ネズミ由来モノクローナル抗体変異体がヒトに置いて実質的に非免疫原性であり、該抗体がそれに融解、結合又はその他の方法で付着した血塊融解物質または血塊成長防止物質を更に含むものである使用。
【請求項44】
免疫相互作用分子及び画像形成標識及び/又は治療用物質の一方または両方を含む抱合体(conjugate)。
【請求項45】
画像形成標識がMRI標識、超音波標識またはCT型標識である、請求項44記載の抱合体。
【請求項46】
画像形成標識が99mTc、18F、64Cu、67Ga、68Ga、77Br、97Ru、111In、123I、124I、131I及び188Reから選択されるものである、請求項45記載の抱合体。
【請求項47】
画像形成標識が99mTcである、請求項46記載の抱合体。
【請求項48】
治療用物質が抗凝血性物質である、請求項44記載の抱合体。
【請求項49】
治療用物質がサイトカインである、請求項44記載の抱合体。
【請求項50】
免疫相互作用分子が抗体である、請求項44から49いずれか1項に記載の抱合体。
【請求項51】
抗体が脱免疫化3B6である、請求項50記載の抱合体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2009−149686(P2009−149686A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67335(P2009−67335)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【分割の表示】特願2003−507139(P2003−507139)の分割
【原出願日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【出願人】(503469980)エイジェン バイオメディカル リミティッド (1)
【Fターム(参考)】