説明

フィラメントワインディング装置

【課題】フープ巻装置において圧縮気体により樹脂を噴射するための装置構成を単純にでき、かつ、装置の製造コストを低減できるフィラメントワインディング装置の提供をする。
【解決手段】フープ巻装置40を備えたフィラメントワインディング装置1であって、フープ巻装置40は、マンドレル1aの周囲を回転する巻掛テーブル41と、巻掛テーブル41とともに回転し、高圧のエアーにより第二繊維束42aに向けて樹脂を噴射し含浸させる第二樹脂含浸装置44と、を具備し、第二樹脂含浸装置44は、巻掛テーブル41とともに回転し、高圧のエアーを貯留するエアー貯留タンク44eを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フープ巻装置を備えたフィラメントワインディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フープ巻装置とヘリカル巻装置とを具備し、フープ巻装置によるフープ巻きとヘリカル巻装置によるヘリカル巻きとをマンドレルに対して交互に繰り返し行うことにより、マンドレルに繊維束を巻き付けて補強層を形成するフィラメントワインディング装置は公知である。
【0003】
上記フープ巻装置によるフープ巻きが行われるとき、マンドレルの周囲で巻掛テーブルを回転させ、さらに、マンドレルに繊維束が巻き付けられる直前で繊維束に樹脂を含浸させる技術が公知であり(例えば、特許文献1)、繊維束に樹脂を含浸させる方法として、高圧のエアー(圧縮気体)を用いて樹脂を繊維束に噴射するものがある。巻掛テーブル上でこの方法を実施するには、巻掛テーブルに高圧のエアーを供給する必要があり、フープ巻きが行われるとき巻掛テーブルは回転しているため、高圧のエアーを供給する方法として例えばロータリージョイントが用いられる。
しかし、ロータリージョイントを用いると、高圧のエアーにより樹脂を噴射するための装置構成が複雑になり、かつ、装置の製造コストがかかるという問題を有する。
【特許文献1】特開2007−260974号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上の如き状況に鑑み、フープ巻装置において圧縮気体により樹脂を噴射するための装置構成をより単純にでき、かつ、装置の製造コストを低減できるフィラメントワインディング装置の提供をするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
請求項1に記載のフィラメントワインディング装置は、フープ巻装置を備え、前記フープ巻装置は、マンドレルの周囲を回転する巻掛テーブルと、前記巻掛テーブルとともに回転し、圧縮気体により繊維束に向けて樹脂を噴射し含浸させる樹脂含浸装置と、を具備し、前記樹脂含浸装置は、前記巻掛テーブルとともに回転し、前記圧縮気体を貯留する気体貯留タンクを具備する。
【0007】
請求項2に記載のフィラメントワインディング装置は、前記気体貯留タンクに前記圧縮気体を供給する気体供給手段を更に具備する。
【0008】
請求項3に記載のフィラメントワインディング装置においては、前記気体供給手段は、前記巻掛テーブルとは別に設けられているとともに、前記気体貯留タンクに接続および分離自在であり、前記巻掛テーブルが静止しているとき、前記気体貯留タンクに接続されて前記圧縮気体を供給し、前記巻掛テーブルが回転しているとき、前記気体貯留タンクから分離される。
【0009】
請求項4に記載のフィラメントワインディング装置においては、前記気体供給手段は、前記巻掛テーブルとともに回転する。
【0010】
請求項5に記載のフィラメントワインディング装置においては、前記気体供給手段は、コンプレッサーまたは気体供給タンクを含む。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のフィラメントワインディング装置によれば、樹脂含浸装置が気体貯留タンクとともに回転するので、圧縮気体を気体貯留タンクから樹脂含浸装置に供給するためにロータリージョイントを用いる必要がない。したがって、フープ巻装置において圧縮気体により樹脂を噴射するための装置構成を単純にでき、かつ、装置の製造コストを低減できる。
【0012】
請求項2に記載のフィラメントワインディング装置によれば、気体供給手段から気体貯留タンクに圧縮気体が供給されるので、樹脂を噴射するために必要な量の圧縮気体を確保できる。
【0013】
請求項3に記載のフィラメントワインディング装置によれば、巻掛テーブルが静止しているときに巻掛テーブルとは別に設けられている気体供給手段が気体貯留タンクに接続されて圧縮気体を供給するので、圧縮気体を気体供給手段から気体貯留タンクに供給するためにロータリージョイントを用いる必要がない。したがって、フープ巻装置において圧縮気体により樹脂を噴射するための装置構成を単純にでき、かつ、装置の製造コストを低減できる。
【0014】
請求項4に記載のフィラメントワインディング装置によれば、気体供給手段が巻掛テーブルとともに回転するので、巻掛テーブルが停止しているときに圧縮気体を気体供給手段で生成させるとともに気体貯留タンクに貯留させ、巻掛テーブルが回転しているときに樹脂の噴射に用いることができる。したがって、圧縮気体を気体供給手段から気体貯留タンクを介さずに直接樹脂の噴射に用いるフープ巻装置に比べ、気体供給手段を小型化しても樹脂の噴射に必要な量の圧縮気体を確保でき、装置の製造コストを低減できる。
【0015】
請求項5に記載のフィラメントワインディング装置によれば、気体供給手段としてコンプレッサーまたは気体供給タンクを用いるので、コンプレッサーまたは気体供給タンクから気体貯留タンクに圧縮気体を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第一実施形態]
以下では、本発明に係るフィラメントワインディング装置の第一実施形態であるフィラメントワインディング装置1の全体構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、フィラメントワインディング装置1は、マンドレル1aに繊維束を巻き付けるものであり、基台10、マンドレル支持部20、ヘリカル巻装置30、およびフープ巻装置40を具備する。マンドレル1aは高強度アルミニウム材、もしくはステンレス材等により成形された金属製容器、またはポリアミド樹脂等により成形された樹脂製容器等からなる。繊維束はガラス繊維、または炭素繊維等の束からなる。
【0018】
基台10はフィラメントワインディング装置1の主たる構造体をなし、基台10にはマンドレル1aを案内する第一レール11・11、およびフープ巻装置40を案内する第二レール12・12が設けられる。第一レール11・11および第二レール12・12は、一方向、かつ、同一方向に延びて形成される。
【0019】
マンドレル支持部20は、マンドレル1aを支持し、ベース21、支持台22・22、チャック23・23、および軸部24・24を具備する。ベース21は、マンドレル支持部20の主たる構造体をなす。支持台22・22は、ベース21にそれぞれ一体的に取り付けられるとともにマンドレル1aを間に挟んで配置される。チャック23・23は、支持台22・22にそれぞれ設けられる。軸部24・24は、一端がチャック23・23に他端がマンドレル1aにそれぞれ取り付けられる。
【0020】
ベース21は第一レール11・11上に配置され、マンドレル支持部20は空圧シリンダ、または油圧シリンダ等からなる第一駆動装置(不図示)により第一レール11・11上を往復して摺動し、さらにマンドレル1aがマンドレル支持部20とともに移動する。一方のチャック23は可変モーター等からなる第二駆動装置(不図示)により回転駆動され、前記第二駆動装置で発生する回転駆動力はチャック23および軸部24を通じてマンドレル1aに伝達されてマンドレル1aが回転する。
【0021】
図1に示すように、ヘリカル巻装置30は、ヘリカル巻きを行うものである。ヘリカル巻きは、マンドレル1aに樹脂が含浸した繊維束をマンドレル1aの軸方向に沿いつつ螺旋状に巻き付けることである。樹脂として、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)が用いられる。ヘリカル巻装置30は、ヘリカル巻装置30の主たる構造体をなす固定部材31、繊維束供給部(不図示)から供給される第一繊維束32aをマンドレル1aに案内するガイド部材(不図示)、および第一繊維束32aに樹脂を噴射し含浸させる第一樹脂含浸装置(不図示)を具備する。固定部材31は前記第一駆動装置によりマンドレル1aが移動されるときのマンドレル1aの軌跡上に固定され、固定部材31にはヘリカル巻きが行われるときにマンドレル1aが通過する貫通孔が形成される。
【0022】
ヘリカル巻装置30によるヘリカル巻きが行われるとき、まず、ヘリカル巻装置30の繊維束供給部からガイド部材を介して引き出される第一繊維束32aが、粘着テープでマンドレル1aに固定される。次に、前記第一駆動装置および前記第二駆動装置が作動(ヘリカル巻装置30が作動)され、マンドレル1aが一定速度で回転されつつ第一レール11・11に沿って移動される。これにより、第一繊維束32aが前記ガイド部材に案内されてマンドレル1aに巻き付けられる。なお、第一繊維束32aがマンドレル1aに巻き付けられる直前で、前記第一樹脂含浸装置が第一繊維束32aに向けて樹脂を噴射し含浸させる。そして、マンドレル1aに樹脂が含浸した第一繊維束32aの層が形成されてヘリカル巻きが完了すると、前記第一駆動装置および前記第二駆動装置が停止(ヘリカル巻装置30が停止)されることによりマンドレル1aの回転および移動が停止される。
【0023】
図1、および図2に示すように、フープ巻装置40は、フープ巻きを行うものである。フープ巻きは、マンドレル1aに樹脂が含浸した繊維束をマンドレル1aの軸方向に対して略垂直に巻き付けることである。フープ巻装置40は、巻掛テーブル41、ボビン42、ホルダー43、第二樹脂含浸装置44、第一ガイドローラー45、第二ガイドローラー46、第三ガイドローラー47、および第三駆動装置48を具備する。
【0024】
図2に示すように、巻掛テーブル41は、中空円盤状に形成され、ボビン42、ホルダー43、第二樹脂含浸装置44、第一ガイドローラー45、第二ガイドローラー46、第三ガイドローラー47、および第三駆動装置48を支持する。ボビン42・42・・・には、第二繊維束42a・42a・・・が巻回される。ホルダー43・43・・・は、ボビン42・42・・・をそれぞれ回転自在に支持する。ボビン42・42・・・およびホルダー43・43・・・は、複数(本実施形態では各四つ)設けられ、巻掛テーブル41の縁部に等間隔に配置される。第二樹脂含浸装置44は、第二繊維束42a・42a・・・に樹脂を噴射し含浸させる。第一ガイドローラー45・45・・・、および第二ガイドローラー46・46・・・は、ボビン42・42・・・に巻回される第二繊維束42a・42a・・・を第二樹脂含浸装置44に案内する。第三ガイドローラー47・47は、第二樹脂含浸装置44に案内された第二繊維束42a・42a・・・をマンドレル1aに案内する。
【0025】
巻掛テーブル41の一方の盤面には、ホルダー43・43・・・、第一ガイドローラー45・45・・・、第二ガイドローラー46・46・・・、および第三ガイドローラー47・47が一体的に移動自在に取り付けられる。
【0026】
図1に示すように、第三駆動装置48は、巻掛テーブル41を回転させるものであり、モーター48a、第一ギア48b、第二ギア48c、筒部48d、フランジ部48e、およびフレーム48fを具備する。
【0027】
モーター48aは、巻掛テーブル41を回転する駆動源となる。第一ギア48b、および第二ギア48cは、モーター48aで発生する回転駆動力を巻掛テーブル41に伝達する。モーター48aには第一ギア48bが接続され、第一ギア48bには第二ギア48cが接続され、第二ギア48cは巻掛テーブル41の他方の盤面に一体的に回転自在に取り付けられる。これにより、モーター48aの回転駆動力は、第一ギア48b→第二ギア48c→巻掛テーブル41の順で伝達され、ひいては巻掛テーブル41が回転する。筒部48dは中空円筒状に形成され、筒部48dの一端には第二ギア48cが、筒部48dの他端には筒部48dより径の大きいフランジ部48eがそれぞれ取り付けられる。フレーム48fには、貫通孔が形成され、前記貫通孔に筒部48dが挿入されることにより筒部48dがフレーム48fに回転自在に取り付けられ、ひいては巻掛テーブル41がフレーム48fに対して相対的に回転する。フレーム48fは第二レール12・12上に配置され、フープ巻装置40は空圧シリンダ、または油圧シリンダ等からなる第四駆動装置(不図示)により第二レール12・12上を往復して摺動する。
【0028】
マンドレル1aは前記第四駆動装置によりフープ巻装置40が移動するときの巻掛テーブル41の軌跡上に配置され、巻掛テーブル41、第二ギア48c、筒部48d、およびフランジ部48eにはフープ巻きが行われるときにマンドレル1aが通過する貫通孔である孔部41aが形成される。
【0029】
図1、および図2に示すように、フープ巻装置40によるフープ巻きが行われるとき、まず、フープ巻装置40のボビン42・42・・・から第一ガイドローラー45・45・・・、第二ガイドローラー46・46・・・、第二樹脂含浸装置44、および第三ガイドローラー47・47を介して引き出される第二繊維束42a・42a・・・が、粘着テープでマンドレル1aに固定される。次に、第三駆動装置48および前記第四駆動装置が作動(フープ巻装置40が作動)され、フープ巻装置40の巻掛テーブル41が一定速度で回転されつつ第二レール12・12に沿って移動される。これにより、ボビン42・42・・・に巻回される第二繊維束42a・42a・・・は、第一ガイドローラー45・45・・・および第二ガイドローラー46・46・・・を通じて第二樹脂含浸装置44に案内され、そして第二樹脂含浸装置44から樹脂が噴射されることにより樹脂を含浸され、そして第三ガイドローラー47・47を通じてマンドレル1aに案内されてマンドレル1aに巻き付けられる。そして、マンドレル1aに樹脂が含浸した第二繊維束42a・42a・・・の層が形成されてフープ巻きが完了すると、第三駆動装置48および前記第四駆動装置が停止(フープ巻装置40が停止)されることにより巻掛テーブル41の回転および移動が停止される。
【0030】
ヘリカル巻装置30によるヘリカル巻きと、フープ巻装置40によるフープ巻きと、が交互に所定回数行われた後、マンドレル1aに巻き付けられた第一繊維束32aおよび第二繊維束42a・42a・・・を樹脂硬化炉等で加熱することにより、第一繊維束32aおよび第二繊維束42a・42a・・・に含浸している樹脂が硬化されて繊維強化複合材料が成形される。このようにして、繊維強化複合材料を用いた高圧タンク等が製造される。
【0031】
以下では、フープ巻装置40の第二樹脂含浸装置44について説明する。
【0032】
図2、および図3に示すように、第二樹脂含浸装置44は、テンサー44a、樹脂供給ノズル44b、付着センサー44c、樹脂が貯留される樹脂タンク(不図示)、第一エアー供給管44d、および高圧のエアー(圧縮気体)が貯留されるエアー貯留タンク(気体貯留タンク)44eを具備する。
【0033】
フープ巻装置40によるフープ巻きが行われているとき、ボビン42から第二樹脂含浸装置44に案内された第二繊維束42aは、以下の(1)〜(3)の過程を経てマンドレル1aに案内される。(1)まず、テンサー44aにより所定の張力を付与され、(2)次に、樹脂供給ノズル44bから樹脂が噴射され、(3)次に、付着センサー44cにより樹脂の付着状態が検知される。
【0034】
前述の(2)における樹脂供給ノズル44bによる樹脂の噴射は、高圧のエアーを用いたスプレー方式により行われる。具体的に説明すると、樹脂供給ノズル44bは前記樹脂タンクに接続され、前記樹脂タンクに接続される樹脂ポンプ(不図示)が駆動されることにより前記樹脂タンクから樹脂供給ノズル44bに樹脂が供給される。樹脂供給ノズル44bは管状の部材である第一エアー供給管44dを介してエアー貯留タンク44eに接続される。第一エアー供給管44dには電磁開閉弁(不図示)が設けられ、前記電磁開閉弁が開かれるときに高圧のエアーがエアー貯留タンク44eから第一エアー供給管44dを通じて樹脂供給ノズル44bに供給され、前記電磁開閉弁が閉じられるときに第一エアー供給管44dが閉塞されて高圧のエアーの樹脂供給ノズル44bへの供給が停止される。前記樹脂ポンプ、および前記電磁開閉弁には制御装置(不図示)が接続され、前記制御装置が前記樹脂ポンプ、および前記電磁開閉弁にそれぞれ信号を送信することにより、前記樹脂ポンプの駆動の有無、および前記電磁開閉弁の開閉が決定される。前記制御装置は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで相互に接続される構成等からなり、前記制御装置には、種々の制御プログラムが格納され、これらのプログラムを展開することができ、これらのプログラムに従って所定の演算を行うことができる。そして、前記制御装置が前記樹脂ポンプを駆動させるとともに前記電磁開閉弁を開かせることにより、樹脂供給ノズル44bに対して、樹脂が前記樹脂タンクから供給されるとともに、高圧のエアーがエアー貯留タンク44eから供給される。これにより、樹脂が高圧のエアーで飛ばされ、樹脂供給ノズル44bから第二繊維束42aに向けて噴射される。なお、本実施形態では取り扱いの容易性あるいはコストを考慮して高圧の空気を用いて樹脂を噴射する構成とするが、他の高圧気体であってもよい。
【0035】
テンサー44a、樹脂供給ノズル44b、付着センサー44c、前記樹脂タンク、およびエアー貯留タンク44eは、巻掛テーブル41の一方の盤面に一体的に移動(回転)自在に取り付けられ、前述の(2)における樹脂供給ノズル44bによる樹脂の噴射、すなわちエアー貯留タンク44eから樹脂供給ノズル44bへの高圧のエアーの供給は、巻掛テーブル41、樹脂供給ノズル44b、エアー貯留タンク44e等が一体的に回転しているときに行われる。
【0036】
このように、樹脂供給ノズル44b、およびエアー貯留タンク44eを、同一の部材(巻掛テーブル41)に一体的に移動自在に取り付けることにより、一体的に移動するエアー貯留タンク44eから樹脂供給ノズル44bに高圧のエアーを供給するためにロータリージョイントを用いる必要がないので、高圧のエアーにより樹脂を噴射するための装置構成を単純にでき(部材数を減少させることができ)、かつ、装置の製造コストを低減できる。なお、前記樹脂タンクに貯留される樹脂の量、およびエアー貯留タンク44eの容量は、マンドレル1aに巻き付けられる第二繊維束42aの量に応じて適宜決定される。
また、エアー貯留タンク44eを一体的に移動自在に取り付ける部材について、本実施形態では巻掛テーブル41に直接取り付けたが、巻掛テーブル41とともに移動する部材であれば巻掛テーブル41とは別部材でもよい。例えば、第三駆動装置48の筒部48dに巻掛テーブル41とともに移動(回転)する同期移動部材を取り付け、前記同期移動部材にエアー貯留タンク44eを取り付けてもよい。
【0037】
[第二実施形態]
以下では、本発明に係るフィラメントワインディング装置の第二実施形態であるフィラメントワインディング装置2について説明する。
【0038】
図4(a)、および図4(b)に示すように、フィラメントワインディング装置2は、高圧のエアーが貯留されるエアー供給タンク(気体供給手段)50、および第二エアー供給管51を具備する。
【0039】
管状の部材である第二エアー供給管51の一端はエアー貯留タンク44eに接続および分離自在であるとともに他端はエアー供給タンク50に接続され、第二エアー供給管51の一端がエアー貯留タンク44eに接続されているときに高圧のエアーがエアー供給タンク50から第二エアー供給管51を通じてエアー貯留タンク44eに供給される。エアー供給タンク50はヘリカル巻装置30の巻掛テーブル41とは別に設けられることにより、第三駆動装置48、および前記第四駆動装置で発生する駆動力が作用せずに静止している。
【0040】
前記制御装置は、前記第一駆動装置、前記第二駆動装置、第三駆動装置48、および前記第四駆動装置に接続され、信号を送信することにより前記第一駆動装置、前記第二駆動装置、第三駆動装置48、および前記第四駆動装置を作動および停止、つまり、ヘリカル巻装置30、およびフープ巻装置40を作動および停止させる。また、前記制御装置は、エアー貯留タンク44eと第二エアー供給管51との接続および分離を行うアクチュエータ(不図示)に接続され、信号を送信することにより前記アクチュエータにエアー貯留タンク44eと第二エアー供給管51との接続および分離をさせる。
【0041】
前記制御装置は、ヘリカル巻装置30を作動させているときにフープ巻装置40を停止させており、フープ巻装置40を作動させているときにヘリカル巻装置30を停止させている。
図4(a)に示すように、前記制御装置は、ヘリカル巻装置30を作動させてフープ巻装置40を停止させるとき、つまり、フープ巻装置40の巻掛テーブル41(エアー貯留タンク44e)が静止されるとき、前記樹脂ポンプを停止させるとともに前記電磁開閉弁を閉じさせ、さらに、前記アクチュエータにエアー貯留タンク44eと第二エアー供給管51とを接続させる。これにより、エアー貯留タンク44eから樹脂供給ノズル44bへの高圧のエアーの供給が停止されるとともに、エアー供給タンク50からエアー貯留タンク44eに高圧のエアーが供給される。
図4(b)に示すように、前記制御装置は、フープ巻装置40を作動させてヘリカル巻装置30を停止させるとき、つまり、エアー貯留タンク44eが回転および移動されるとき、前記アクチュエータにエアー貯留タンク44eと第二エアー供給管51とを分離させ、さらに前記電磁開閉弁を開かせるとともに前記樹脂ポンプを駆動させる。これにより、エアー供給タンク50からエアー貯留タンク44eへの高圧のエアーの供給が停止されるとともに、エアー貯留タンク44eから樹脂供給ノズル44bに高圧のエアーが供給される。
【0042】
このように、フープ巻装置40が停止しているとき、つまりエアー貯留タンク44eが静止しているときにエアー供給タンク50からエアー貯留タンク44eに高圧のエアーが供給されるので、ロータリージョイントを用いずに高圧のエアーをエアー貯留タンク44eに追加(補充)できる。したがって、高圧のエアーにより樹脂を噴射するための装置構成を単純にでき(部材数を減少させることができる)かつ、装置の製造コストを低減できる。さらに、高圧のエアーがエアー貯留タンク44eに適宜補充されるため、樹脂を噴射するために必要な量の高圧のエアーを確保できる。
なお、エアー供給タンク50に代えてエアコンプレッサーを用い、フープ巻装置40が停止しているときに前記エアコンプレッサーからエアー貯留タンク44eに高圧のエアーが供給される構成にしてもよい。
また、前記制御装置に代えて作業者等がヘリカル巻装置30およびフープ巻装置40の作動および停止、ならびにエアー貯留タンク44eと第二エアー供給管51との接続および分離を行ってもよい。
【0043】
[第三実施形態]
以下では、本発明に係るフィラメントワインディング装置の第三実施形態であるフィラメントワインディング装置3について説明する。
【0044】
図5に示すように、フィラメントワインディング装置3は、エアコンプレッサー(気体供給手段)60、および第三エアー供給管61を具備する。エアコンプレッサー60は、巻掛テーブル41の一方の盤面に一体的に移動(回転)自在に取り付けられるとともに、第三エアー供給管61によりエアー貯留タンク44eと連結され、エアコンプレッサー60で生成される高圧のエアーは第三エアー供給管61を通じてエアー貯留タンク44eに供給され、ひいては樹脂供給ノズル44bからの樹脂の噴射に用いられる。
【0045】
このように、高圧のエアーはエアコンプレッサー60から一旦エアー供給タンク50に供給されてその後樹脂の噴射に用いられるので、フープ巻装置40が停止されているときに高圧のエアーをエアコンプレッサー60で生成させるとともにエアー供給タンク50に貯留させ(図5参照)、フープ巻装置40が作動されているときに樹脂の噴射に用いることができる。したがって、高圧のエアーをエアコンプレッサーからエアータンクを介さずに直接樹脂の噴射に用いるフープ巻装置に比べ、エアコンプレッサーを小型化しても樹脂の噴射に必要な量の高圧のエアーを確保でき、装置の製造コストを低減できる。
なお、エアコンプレッサー60が一体的に移動自在に取り付けられる部材について、本実施形態では巻掛テーブル41に取り付けられたが、巻掛テーブル41とともに移動(回転)する部材であれば巻掛テーブル41とは別部材でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るフィラメントワインディング装置の第一実施形態を示す概略構成図。
【図2】フープ巻き装置を示す概略構成図。
【図3】第二樹脂含浸装置を示す概略構成図。
【図4】(a)本発明に係るフィラメントワインディング装置の第二実施形態を示す概略構成図、(b)本発明に係るフィラメントワインディング装置の第二実施形態を示す概略構成図。
【図5】本発明に係るフィラメントワインディング装置の第三実施形態を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0047】
1 フィラメントワインディング装置
1a マンドレル
30 ヘリカル巻装置
40 フープ巻装置
41 巻掛テーブル
42a 第二繊維束
44 第二樹脂含浸装置
44e エアー貯留タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フープ巻装置を備えたフィラメントワインディング装置であって、
前記フープ巻装置は、マンドレルの周囲を回転する巻掛テーブルと、前記巻掛テーブルとともに回転し、圧縮気体により繊維束に向けて樹脂を噴射し含浸させる樹脂含浸装置と、を具備し、
前記樹脂含浸装置は、前記巻掛テーブルとともに回転し、前記圧縮気体を貯留する気体貯留タンクを具備することを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記気体貯留タンクに前記圧縮気体を供給する気体供給手段を更に具備することを特徴とする請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記気体供給手段は、前記巻掛テーブルとは別に設けられているとともに、前記気体貯留タンクに接続および分離自在であり、
前記巻掛テーブルが静止しているとき、前記気体貯留タンクに接続されて前記圧縮気体を供給し、
前記巻掛テーブルが回転しているとき、前記気体貯留タンクから分離されることを特徴とする請求項2に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項4】
前記気体供給手段は、前記巻掛テーブルとともに回転することを特徴とする請求項2に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項5】
前記気体供給手段は、コンプレッサーまたは気体供給タンクを含むことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のフィラメントワインディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−17964(P2010−17964A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181585(P2008−181585)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】