説明

フィラメントワインディング装置

【課題】フープ巻装置の含浸装置に圧縮気体、及び樹脂の供給を容易に行うことができ、樹脂含浸部の機構を簡略化したフィラメントワインディング装置を提供する。
【解決手段】フープ巻装置7を備えたフィラメントワインディング装置1であって、フープ巻装置7は、ライナー4に対して繊維束80を回転させ、ライナー4に繊維束80を巻き付ける巻掛テーブル17(巻付部)と、ライナー4と巻掛テーブル17(巻付部)との間で繊維束80が通過する領域に向けて樹脂を噴射する含浸装置70(樹脂含浸部)と、を具備するフィラメントワインディング装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ライナーの周面に繊維束を巻き付けるフープ巻装置を備えたフィラメントワインディング装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィラメントワインディング法により圧力容器等を形成する場合には、樹脂が塗布された繊維束をライナーの軸方向に対して略直交するようにライナーの周面に巻き付けるフープ巻と、ライナーの軸方向に対して所定の角度でライナーの周面に巻き付けるヘリカル巻と、を併用して補強層を形成する。このような、フープ巻、及びヘリカル巻を併用したフィラメントワインディング装置の技術については従来から公知である(例えば、特許文献1)。
【0003】
フープ巻を行うフープ巻装置として、巻掛テーブルをライナーの周囲で回転させながら、当該巻掛テーブル上に設けた複数のボビンから供給される繊維束をライナーへ巻き付ける構成が知られている。ボビンから供給される繊維束には、ライナーへ巻き付けられる前に含浸装置により樹脂が含浸される。繊維束に樹脂を含浸させる含浸装置として、高圧のエアー(圧縮気体)を用いて樹脂を繊維束に噴射するものがある。このような樹脂を噴射する含浸装置は、回転する巻掛テーブルの一箇所に集約して配置される。
【特許文献1】特開2002−283467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂を噴射する含浸装置を具備するフィラメントワインディング装置では、回転する巻掛テーブル上に含浸装置が配置されているため、回転している含浸装置に対して外部から高圧のエアー(圧縮気体)、及び樹脂を供給しなければならず、圧縮気体、及び樹脂の供給機構が複雑になる等、含浸装置が複雑になるという問題点があった。
【0005】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、フープ巻装置の含浸装置に圧縮気体、及び樹脂の供給を容易に行うことができ、樹脂含浸部の機構を簡略化したフィラメントワインディング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
第1の発明に係るフィラメントワインディング装置は、
フープ巻装置を備えたフィラメントワインディング装置であって、
前記フープ巻装置は、
ライナーに対して繊維束を回転させ、前記ライナーに前記繊維束を巻き付ける巻付部と、
前記ライナーと前記巻付部との間で前記繊維束が通過する領域に向けて樹脂を噴射する樹脂含浸部と、
を具備するものである。
【0008】
第2の発明に係るフィラメントワインディング装置は、第1の発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記樹脂含浸部は、複数の樹脂噴射部を具備し、前記繊維束の巻付け地点に応じて、前記複数の樹脂噴射部のうち、最適な樹脂噴射部を選択して樹脂を噴射させるものである。
【0009】
第3の発明に係るフィラメントワインディング装置は、第1又は第2の発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記樹脂噴射部は、前記繊維束の巻付け地点が前記ライナーの軸方向へ移動することに応じて、前記ライナーの軸方向に移動するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
第1発明においては、フープ巻装置を備えたフィラメントワインディング装置であって、フープ巻装置は、ライナーに対して繊維束を回転させ、ライナーに繊維束を巻き付ける巻付部と、ライナーと巻付部との間で繊維束が通過する領域に向けて樹脂を噴射する樹脂含浸部と、を具備することから、樹脂含浸部を巻付部とは別個に設けることができる。このため、樹脂含浸部を回転させる必要がなく、樹脂含浸部に対する圧縮気体、及び、樹脂の供給が容易となり、フープ巻装置における樹脂含浸装置の構造を簡略化させることができる。
【0012】
第2発明においては、樹脂含浸部は、複数の樹脂噴射部を具備し、繊維束の巻付け地点に応じて、複数の樹脂噴射部のうち、最適な樹脂噴射部を選択して樹脂を噴射させることから、繊維束の巻付け地点の変化に応じて樹脂の噴射位置を変化させ、繊維束へ的確に樹脂を噴射し含浸することができる。
【0013】
第3発明においては、樹脂噴射部は、繊維束の巻付け地点がライナーの軸方向へ移動することに応じて、ライナーの軸方向に移動することから、繊維束の巻付け地点の変化に応じて樹脂の噴射位置を変化させ、繊維束へ的確に樹脂を噴射し含浸することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置1(以下、FW装置1と称す)について図面に基づいて説明する。図1はFW装置1における巻取装置2の側面図、図2はFW装置1における巻取装置2の正面図、図3は、巻掛テーブル17の断面図である。
【0015】
FW装置1は、繊維束供給装置(図示略)と、巻取装置2と、から構成されている。図1に示すように、巻取装置2は、支持台5と、ヘリカル巻装置6と、フープ巻装置7と、を具備する。支持台5、及びフープ巻装置7は、それぞれ駆動機構(図示略)により基台3の長手方向に沿って往復駆動できる。
【0016】
支持台5は、左右に長い基台3の上部に配置されてライナー4を支持する。支持台5は、ベース8と、支持腕9・9と、回転支持部10・10と、から構成されている。
【0017】
ベース8は、支持台5の基盤となる部分であり、基台3上の前後一対のレール11で移行案内される。支持腕9・9は、回転支持部10・10を介してライナー4の端部を支持する部分であり、ベース8の両側端に立設される。支持腕9・9は、ライナー4の交換を容易化するために、ベース8に対して起立した姿勢から横に倒した姿勢へ変化できるように組み付けてある。
【0018】
回転支持部10・10は、ヘリカル巻装置6により繊維束80を巻き付ける際に、ライナー4を回転させるものである。回転支持部10・10は、固定治具12・12と、チャック13・13と、を具備する。固定治具12・12は、ライナー4の長手方向の両端部に取り外し可能に固定され、ライナー4を回転させる際の回転軸となる。チャック13・13は、支持腕9・9のそれぞれの上端に対向するように設けられ、固定治具12・12を掴み固定する。チャック13・13は、固定治具12・12を掴み固定することでライナー4を支持腕9・9の間に支持する。そして、チャック13・13が回転することで固定治具12・12が回転し、その回転に従ってライナー4が回転する。
【0019】
ヘリカル巻装置6は、ライナー4に対して繊維束80のヘリカル巻を行う装置である。ヘリカル巻装置6は、基台3の中央位置に固定してあり、前記繊維束供給装置(図示略)で支持された一群のクリールから供給される繊維束80をライナー4へ巻き付ける。ヘリカル巻装置6は、基台3に立設される固定フレーム14と、固定フレーム14で支持されるヘリカル巻ヘッド15と、を具備する。固定フレーム14の横面中央には、ライナー4が挿通可能な円形の開口14aが形成されている。前記繊維束供給装置(図示略)から供給される繊維束80は、固定フレーム14の前後両側に配置した変向ローラー(図示略)で案内されたのち、ヘリカル巻ヘッド15へ送られる。ヘリカル巻ヘッド15は、周方向に沿って等間隔おきに一群のガイド筒(図示略)が配置され、ヘリカル巻ヘッド15に送られた繊維束80をガイド筒へ案内し、ライナー4へ巻き付ける。
【0020】
フープ巻装置7は、ライナー4に対して繊維束80のフープ巻を行う装置である。フープ巻装置7は、基台3上のレール90で移動可能に案内されるフレーム16と、フレーム16で回転自在に支持される円盤状の巻掛テーブル17と、巻掛テーブル17を回転駆動する駆動機構18と、繊維束80に樹脂を含浸させる含浸装置70を具備する。
【0021】
フレーム16は、台座16aと、支持部16bと、から構成されている。台座16aはレール90によって移動可能に案内される構成となっている。支持部16bは、上方中央部に、ライナー4の挿通可能な孔16c(図3)が形成されている。
【0022】
巻掛テーブル17は、ライナー4に対して繊維束80を回転させ、ライナー4に繊維束80を巻き付ける巻付部である。図2に示すように、巻掛テーブル17は、円形の板状部材であり、板面中央に、ライナー4の挿通可能な円形の開口17aが形成されている。フープ巻装置7は、開口17aの開口面とライナー4とが直交する状態で、巻掛テーブル17を回転駆動しながらフープ巻装置7の全体を往復移動させることにより、ライナー4の周面にフープ巻層を形成することができる。
【0023】
図3に示すように、巻掛テーブル17は、回転駆動の際に回転体となる外輪19と、回転駆動の際に回転軸となる内輪20と、から構成されている。
【0024】
外輪19は、テーブル部19aと、ベルト受部19bと、から構成されている。図2に示すように、テーブル部19aは、フープ巻時に繊維束80を供給するボビン22と、ボビン22から供給される繊維束80に所定の張力を付与するためのテンサー23と、繊維束80を案内するガイドローラ27と、を側面に設置するための台座部分である。図2に示すように、テーブル部19aには、周縁に沿って等間隔おきにボビン22が複数配置されている。また、テーブル部19aには、ボビン22の数と同数のテンサー23が、ボビン22とライナー4との間のガイドローラ27により案内される繊維束80の経路であって、テーブル部19a上の一箇所に集約して配置されている。図3に示すように、テーブル部19aは、中央に、開口17aの一部を形成する孔19cが形成されている。孔19cは、ライナー4が挿通可能な径で形成されている。
【0025】
ベルト受部19bは、後述する駆動機構18のベルト30を受ける部分である。図3に示すように、ベルト受部19bは、テーブル部19aから突出して設けられている。ベルト受部19bは、外周面にベルト30を受けるベルト受け19dを具備する。ベルト受部19bは、中央に開口17aの一部を形成する孔19eが形成されている。孔19eは、ライナー4が挿通可能であるとともに、内輪20の第1端部20aが装着可能な径で形成されている。
【0026】
図2、及び図3に示すように、内輪20は、円筒形状の部材であり、第1端部20aがベルト受部19bの孔19eに装着され、第2端部20bがフレーム16に固定される。すなわち、内輪20の外径は外輪19の孔19eの径と略同一である。内輪20は、中央に開口17aの一部を形成する孔19eが形成されている。内輪20は第1端部20a側の孔20cに樹脂噴射ノズル24が複数設けられている。
【0027】
上述のように、内輪20の第1端部20aが外輪19の孔19eに挿入されることで、内輪20が外輪19に装着される。内輪20の第1端部20aと、外輪19の孔19eとの間にはベアリングが装着されており、内輪20が外輪19に装着されることで、外輪19が内輪20に対して回転自在に支持される。
【0028】
図1に示すように、駆動機構18は、巻掛テーブル17を回転させるものであり、モーター28、ギア29、ベルト30を具備する。モーター28は、巻掛テーブル17を回転する駆動源となる。ギア29、ベルト30は、モーター28で発生する回転駆動力を巻掛テーブル17に伝達する。モーター28にはギア29が接続され、ギア29にはベルト30が接続され、ベルト30は巻掛テーブル17の外輪19のベルト受部19bに取り付けられる。モーター28が駆動することで、モーター28の回転駆動力がギア29を介してベルト30に伝達される。ベルト30が駆動されることで、ベルト30の駆動力がベルト受部19bに伝わり、それにより外輪19全体が回転する。このように、モーター28の回転駆動力がギア29、ベルト30、ベルト受部19bの順で伝達されることで、巻掛テーブル17が回転する。
【0029】
図4は、含浸装置70の概略図である。含浸装置70は、ライナー4と外輪19との間で繊維束80が通過する領域に向けて樹脂を噴射する樹脂含浸部である。含浸装置70は、樹脂噴射ノズル24と、コンプレッサー73と、電磁開閉弁74と、制御部75と、樹脂タンク76と、バルブ77と、を具備する。
【0030】
樹脂噴射ノズル24は、繊維束80に向けて樹脂を噴射するための樹脂噴射部である。図2、及び図3に示すように、樹脂噴射ノズル24は、内輪20の第1端部20aの外周面から内周面に向けて装着され、ライナー4の周囲に向けて等間隔に複数配設されている。樹脂噴射ノズル24の噴射口は、回転移動しながらライナー4に巻き付けられる繊維束80のガイド出口25と、巻付け地点26との間を狙って樹脂を噴射可能な方向に向けられている。ここで、繊維束80のガイド出口25とは、外輪19に配置されるガイドローラ27のうち繊維束80の走行経路の最下流側にあるガイドローラ27aの下流側領域をいう。また、巻付け地点26とは、ガイドローラ27aから案内される繊維束80が最初にライナー4と接する位置をいう。
【0031】
樹脂噴射ノズル24による樹脂の噴射は、高圧のエアー(圧縮気体)を用いたスプレー方式により行われる。図4に示すように、樹脂噴射ノズル24は、エアー供給管71を通じてエアーが導入され、樹脂供給管72を通じて樹脂が供給される。
【0032】
エアー供給管71はコンプレッサー73に接続され、コンプレッサー73からエアーが供給される。エアー供給管71には電磁開閉弁74が設けられ、電磁開閉弁74が開かれると、エアーがエアー供給管71を通じて樹脂噴射ノズル24に供給される。また、電磁開閉弁74が閉じられると、エアー供給管71が閉塞されてエアーの樹脂噴射ノズル24への供給が停止される。電磁開閉弁74は、制御部75に接続され、制御部75により弁の開閉が制御されている。コンプレッサー73、及び電磁開閉弁74は、樹脂噴射ノズル24が固定された内輪20に設けられて回転しないため、巻掛テーブル17に付設する必要はない。そのため、コンプレッサー73、及び電磁開閉弁74は、巻掛テーブル17から離れた位置に独立して設けられている。尚、コンプレッサー73、及び電磁開閉弁74は、巻掛テーブル17に付設することも可能である。
【0033】
樹脂供給管72は樹脂タンク76に接続され、樹脂タンク76から樹脂が供給される。樹脂供給管72には、バルブ77が設けられ、バルブ77により樹脂の流量が制御される。樹脂タンク76、及びバルブ77は、樹脂噴射ノズル24が固定された内輪20に設けられて回転しないため、巻掛テーブル17に付設する必要はない。そのため、樹脂タンク76、及びバルブ77は、巻掛テーブル17から離れた位置に独立して設けられている。尚、樹脂タンク76、及びバルブ77は、巻掛テーブル17に付設することも可能である。
【0034】
このように、樹脂噴射ノズル24は、コンプレッサー73により高圧のエアーが供給され、樹脂タンク76から樹脂が供給されることで、樹脂を繊維束80へ噴射する。また、樹脂噴射ノズル24は、固定された内輪20に設けられて回転しないため、コンプレッサー73、電磁開閉弁74、及び樹脂タンク76を巻掛テーブル17から離れた位置に独立して設けられている。そのため、含浸装置70は、回転している樹脂噴射ノズル24に対して高圧のエアー、及び樹脂を供給する構成とはなっていないため、エアー、及び樹脂の供給が容易であり、含浸装置70の機構を簡素化することができる。
【0035】
次に、FW装置1の巻き付け動作について説明する。ヘリカル巻を行う場合には、ヘリカル巻ヘッド15を回転操作するとともに、支持台5を移動操作し、ライナー4の一端部をヘリカル巻ヘッド15の内面に臨ませ、ヘリカル巻ヘッド15の各ガイド筒(図示略)から引き出された繊維束80を粘着テープでライナー4の一端部の周面に固定する。固定後、チャック13およびライナー4を回転駆動しながら支持台5を一定速度で移動させる。ライナー4の全体がヘリカル巻ヘッド15をくぐり抜けることで、ライナー4にヘリカル巻層が形成される。引き続き、支持台5をそれまでとは逆向きに移動させながらヘリカル巻を行うことにより、先のヘリカル巻層の外面に二層目のへリカル巻層が形成される。さらにヘリカル巻層を形成する場合には、支持台5を往復運動させることにより巻付処理を必要回数行う。
【0036】
フープ巻を行う場合には、巻掛テーブル17をライナー4の円筒部の一側端に位置させ、各ボビン22から繰り出された繊維束80を、粘着テープでライナー4の表面に固定する。この時、複数本の繊維束80を、ライナー4の周面に沿って隙間なく平行に配置する。この状態で、巻掛テーブル17を回転駆動しながら、フレーム16をライナー4の一端部へ向かって移動させ、一層目のフープ巻層を形成する。引き続き、フレーム16をライナー4の他端部へ反転移動させることにより、先のフープ巻層の外面に二層目のフープ巻層を形成する。さらにフープ巻層を形成する場合には、フレーム16を往復移動させることにより巻付処理を必要回数行う。
【0037】
次に、フープ巻装置7における繊維束80の走行経路について説明する。フープ巻の際に用いられる繊維束80は、巻掛テーブル17上に設けた複数のボビン22・22・・から供給される。ボビン22・22・・から供給される繊維束80は、巻掛テーブル17上の所定の位置に配置されたガイドローラ27・27・・によってテンサー23まで案内される。テンサー23まで案内された繊維束80は、テンサー23によって所定の張力が付与される。張力を付与された繊維束80は、繊維束80の走行経路の最下流側にあるガイドローラ27aまで案内され、ガイドローラ27aの下流側領域にあるガイド出口25から繊維束80の巻付け地点26へ供給される。
【0038】
次に、樹脂噴射ノズル24の樹脂の噴射について説明する。図5、及び図6は樹脂噴射ノズル24の樹脂の噴射タイミングを経時的に示す概略図である。
【0039】
樹脂噴射ノズル24は、ガイド出口25と、繊維束80の巻付け地点26との間を走行する繊維束80を狙って樹脂を噴射する。ここで、図5、及び図6に示すように、ガイド出口25、及び繊維束80の巻付け地点26は、外輪19が回転するにつれて、外輪19の回転方向に移動する。このため、樹脂が噴射される際には、繊維束80の巻付け地点26に応じて、複数の樹脂噴射ノズル24のうち、最適な樹脂噴射ノズル24が制御部75(図4)によって選択される。ここで、最適な樹脂噴射ノズル24とは、ガイド出口25と、繊維束80の巻付け地点26との間を走行する繊維束80に対して、樹脂の噴射が可能な位置にある樹脂噴射ノズルのことである。
【0040】
図5に示すように、例えば、繊維束80の巻付け地点26がライナー4の図示下方にある場合は、繊維束80の巻付け地点26への樹脂の噴射が可能な範囲に存在する樹脂噴射ノズル24aから樹脂が噴射される。そして、図6に示すように、外輪19が図示時計回りに回転することで繊維束80の巻付け地点26も図示時計回りに移動する。繊維束80の巻付け地点26が図示時計回りに移動することで、樹脂噴射ノズル24aからの樹脂の噴射が樹脂噴射ノズル24bからの噴射へ移行する。この時、繊維束80の巻付け地点26の移動速度に応じて、樹脂噴射ノズル24aから樹脂噴射ノズル24bへの移行タイミングが決められる。例えば、繊維束80の巻付け地点26の移動速度が遅い場合は、繊維束80の巻付け地点26が樹脂噴射ノズル24aの前を通過するタイミングで、樹脂噴射ノズル24aからの噴射を停止し、樹脂噴射ノズル24bからの噴射へ移行しても構わない。また、繊維束80の巻付け地点26の移動速度が速い場合は、繊維束80の巻付け地点26が樹脂噴射ノズル24aの前を通過するタイミングで、樹脂噴射ノズル24bからも樹脂を噴射し、樹脂噴射ノズル24bからの噴射のみで樹脂の含浸が可能な位置に繊維束80の巻付け地点26が移動したタイミングで樹脂噴射ノズル24aからの噴射を停止しても構わない。
【0041】
さらに、外輪19が図示時計回りに回転することで繊維束80の巻付け地点26が図示時計回りに移動し、それに伴い、樹脂噴射ノズル24bからの樹脂の噴射が、樹脂噴射ノズル24bと図示時計回りに隣接する樹脂噴射ノズル24cからの噴射へ移行する。すなわち、外輪19が回転することで繊維束80の巻付け地点26が外輪19の回転方向に移行するため、移行する繊維束80の巻付け地点26に応じて、外輪19の回転方向に隣接する樹脂噴射ノズル24が制御部75により順次選択されて、樹脂を噴射する。このように、外輪19が回転することで、樹脂を噴射するために最適な位置に存在する樹脂噴射ノズル24が制御部75により順次選択される。
【0042】
フープ巻において、繊維束80の巻付け地点26は、上述のように外輪19が回転することで、外輪19の回転方向に移動する一方で、フレーム16が基台3上のレール90で移行案内されてライナー4の軸方向に移動することで、ライナー4の軸方向へ移動する。このため、樹脂噴射ノズル24もライナー4の軸方向へ移動する必要がある。ここで樹脂噴射ノズル24は、上述のように、巻掛テーブル17の内輪20に設けられている。内輪20はフレーム16に固定されており、フレーム16がライナー4の軸方向に移動することで、ライナー4の軸方向に移動する。従って、フレーム16がライナー4の軸方向に移動することで、繊維束80の巻付け地点26、及び樹脂噴射ノズル24も同様にライナー4の軸方向に移動する。以上のことから、樹脂噴射ノズル24は、繊維束80の巻付け地点26がライナー4の軸方向へ移動することに応じて、ライナー4の軸方向に移動することができる。
【0043】
このように、FW装置1は、フープ巻装置7を備えたフィラメントワインディング装置1であって、フープ巻装置7は、ライナー4に対して繊維束80を回転させ、ライナー4に繊維束80を巻き付ける巻掛テーブル17(巻付部)と、ライナー4と巻掛テーブル17(巻付部)との間で繊維束80が通過する領域に向けて樹脂を噴射する含浸装置70(樹脂含浸部)と、を具備することから、含浸装置70(樹脂含浸部)を巻掛テーブル17(巻付部)とは別個に設けることができる。このため、含浸装置70(樹脂含浸部)を回転させる必要がなく、含浸装置70(樹脂含浸部)に対する圧縮気体、及び、樹脂の供給が容易となり、フープ巻装置7における含浸装置70(樹脂含浸部)の構造を簡略化させることができる。
【0044】
また、FW装置1は、含浸装置70(樹脂含浸部)が、複数の樹脂噴射ノズル24(樹脂噴射部)を具備し、繊維束80の巻付け地点26に応じて、複数の樹脂噴射ノズル24(樹脂噴射部)のうち、最適な樹脂噴射ノズル24(樹脂噴射部)を選択して樹脂を噴射させることから、繊維束80の巻付け地点26の変化に応じて樹脂の噴射位置を変化させ、繊維束80へ的確に樹脂を噴射し含浸することができる。
【0045】
さらに、FW装置1は、樹脂噴射ノズル24(樹脂噴射部)が、繊維束80の巻付け地点26がライナー4の軸方向へ移動することに応じて、ライナー4の軸方向に移動することから、繊維束80の巻付け地点26の変化に応じて樹脂の噴射位置を変化させ、繊維束80へ的確に樹脂を噴射し含浸することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】FW装置1における巻取装置2の側面図。
【図2】FW装置1における巻取装置2の平面図。
【図3】巻掛テーブル17の断面図。
【図4】含浸装置70の概略図
【図5】樹脂噴射ノズル24の樹脂の噴射タイミングを経時的に示す概略図。
【図6】樹脂噴射ノズル24の樹脂の噴射タイミングを経時的に示す概略図。
【符号の説明】
【0047】
1 FW装置
4 ライナー
7 フープ巻装置
17 巻掛テーブル(巻付部)
24 樹脂噴射ノズル(樹脂噴射部)
70 含浸装置(樹脂含浸部)
80 繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フープ巻装置を備えたフィラメントワインディング装置であって、
前記フープ巻装置は、
ライナーに対して繊維束を回転させ、前記ライナーに前記繊維束を巻き付ける巻付部と、
前記ライナーと前記巻付部との間で前記繊維束が通過する領域に向けて樹脂を噴射する樹脂含浸部と、
を具備する、
ことを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記樹脂含浸部は、複数の樹脂噴射部を具備し、前記繊維束の巻付け地点に応じて、前記複数の樹脂噴射部のうち、最適な樹脂噴射部を選択して樹脂を噴射させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記樹脂噴射部は、前記繊維束の巻付け地点が前記ライナーの軸方向へ移動することに応じて、前記ライナーの軸方向に移動する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィラメントワインディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−30063(P2010−30063A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191998(P2008−191998)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】