説明

フィルタエレメント

【課題】 不織布全体にオイルを塗布し、さらに、フィルタエレメントの上流層から下流層に向かって不織布の平均繊維径を小さくし、密度勾配を形成することで、ダストライフ及び清浄効率を向上し、また、ブロー再生に優れ、さらには、生産性を向上したフィルタエレメントを提供する。
【解決手段】 フィルタエレメントはオイルを塗布した不織布で層状に形成されている。フィルタエレメントの上流層の平均繊維径は4.0dt以上であり、下流層の平均繊維径は3.0dt以下である。フィルタエレメントを形成する不織布はオイルが100g/m以上塗布している。上流層と下流層を合わせた不織布の目付量は250g/mである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、内燃機関などのフィルタエレメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタエレメントとしては、粗層と密層とを有する密度勾配型の不織布からなる濾材を襞折り状又は菊花状に成形し、枠で固定したフィルタエレメントが知られている。また、不織布からなる第1のフィルタ層と、第1のフィルタ層よりも下流に設けられ、第1のフィルタ層の不織布よりも目が細かい不織布からなる第2のフィルタ層とを備え、第1のフィルタ層には、オイルが含浸され、一方、第2のフィルタ層は、オイルをはじく性質を有するフィルタエレメントが下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003―299922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1記載の第2のフィルタ層にはオイルが塗布されていないため、ダストが入り込み清浄効率の悪化を引き起こし易く、また、フィルタ層にオイルの有無の層を設ける作業は、フィルタに一定の厚みでオイルなどを塗布する必要があることから作業が困難であり、生産性を低下する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑み、フィルタエレメントを形成する不織布全体にオイルを塗布することにより、清浄効率の低下を防ぐことができ、また、生産性の向上を図れるなど様々な効果を知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0005】
すなわち、本発明は、オイルを塗布した不織布で形成された層状のエレメントであって、前記不織布の平均繊維径が前記エレメントの上流層では4.0dt以上、下流層では3.0dt以下である密度勾配を形成したものである(請求項1)。また、オイルの塗布量が50g/m以上、150g/m未満にすることもできる(請求項2)。また、不織布の目付量が150g/m以上、500g/m未満にすることもできる(請求項3)。また、前記フィルタエレメントが襞折り状に形成することもできる(請求項4)。
【0006】
本発明のフィルタエレメントは、目付量が150g/m以上、500g/m未満の不織布全体に50g/m以上、150g/m未満のオイルを塗布することで、不織布の繊維一本一本にダストを吸着することができ、清浄効率を向上することができる。例えば、目付量が150g/m以下では、フィルターとしての強度・清浄効率に劣り、500g/m以上になると、濾材の抵抗が高くなる。また、50g/m以下のオイルで塗布することで、脈動流におけるダスト透過に懸念が生じる。150g/m以上でオイルを塗布すると、カーボン試験時にクリーンサイド側へのオイル漏れを発生させる。また、フィルタエレメントを製造する際も、フィルタエレメント全体にオイルを塗布することから、作業性が容易であり、生産効率を向上することができる。また、上流層にオイルを塗布していることで、下流層にダストが溜まることがなく、ダストライフを向上することができる。また、フィルタエレメントの上流層では不織布の平均繊維径が4.0dt以上と大きいことから、吸着したダストをブローにより容易に吹き飛ばすことができ、再度、フィルタエレメントを使用することができる。例えば、上流層を4.0dt以下とするとブローでダストが取り除きにくく、再度ダスト投入してもすぐに目詰まりが起こる。また、下流層が3.0dt以上では清浄効率又は脈動透過率が悪く高効率濾材として成立しない問題が発生する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不織布全体にオイルを塗布し、さらに、フィルタエレメントの上流層から下流層に向かって不織布の平均繊維径を小さくして、密度勾配を形成することで、ダストライフ及び清浄効率を向上し、また、ブロー再生に優れ、さらには、生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のフィルタエレメントについて実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0009】
図1は、本発明のフィルタエレメントを示す一部断面図であり、フィルタエレメント1は上流層11及び下流層12の2層で構成されている。なお、矢印は空気が流れる通気方向を示している。
【0010】
図2は、図1のフィルタエレメント1の襞折り構造を示す断面図である。フィルタエレメント1はプリーツ加工により山部2、谷部3及びこれらに隣接する斜辺部4からなる断面屈曲形状の襞折り構造に形成されている。
【0011】
(実施例1)フィルタエレメント1はポリエチレンテレフタレート(PET)繊維で層状に形成されている。上流層11の不織布の平均繊維径は4.0dt以上である。下流層12の不織布の平均繊維径は3.0dt以下である。上流層11と下流層12を合わせた不織布の目付量は250g/mである。不織布にはオイルが100g/m塗布されている。
【0012】
(比較例1)フィルタエレメント1は濾紙で層状に形成されている。上流層11の濾紙の平均繊維径は2.0dt以下である。下流層12の濾紙の平均繊維径は1.0dt以下である。濾紙にはオイルが100g/m塗布されている。
【0013】
(比較例2)フィルタエレメント1は濾紙で層状に形成されている。上流層11の濾紙の平均繊維径は2.0dt以下である。下流層12の濾紙の平均繊維径は1.0dt以下である。
【0014】
(比較例3)フィルタエレメント1は濾紙で層状に形成されている。上流層11の濾紙の平均繊維径は4.0dt以上である。下流層12の濾紙の平均繊維径は3.0dt以下である。
【0015】
(比較例4)フィルタエレメント1はポリエチレンテレフタレート(PET)繊維で層状に形成されている。上流層11の不織布の平均繊維径は4.0dt以上である。下流層12の不織布の平均繊維径は3.0dt以上である。上流層11と下流層12を合わせた不織布の目付量は250g/mである。不織布にはオイルが100g/m塗布されている。
【0016】
上記実施例1及び比較例1から4のフィルタエレメントについて、初期及びエアブロー後の特性試験を行った。結果を表1に示す。
【0017】
[ダストライフ]JIS D 1612−10のダスト保持量試験に準拠して、2.94Kpaの通気抵抗増加を試験終了条件として測定した。
【0018】
[清浄効率]JIS D 1612−9の清浄効率試験に準拠して、2.94Kpaの通気抵抗増加を試験終了条件として測定した。
【0019】
[脈動透過量]ダストライフ試験及び清浄効率試験終了後、5000rpm相当の脈動条件において、30分間脈動流を流し、その透過量を測定した。
【0020】
[エアブロー]上記試験終了後、JIS D 1612−12復元性試験に準拠して、2.94Kpaの通気抵抗増加を試験終了条件として測定した。
【0021】
【表1】

【0022】
上記表1から、実施例1のフィルタエレメントは、ダストライフ、清浄効率、脈動透過量が良好であり、エアブロー後のダストライフ、清浄効率についても良好であることがわかる。
【0023】
これに対し、比較例1のビスカス濾紙は平均繊維径が小さいため、繊維の隙間にオイルとダストが入り込み、エアブローをしてもダストが抜けにくいことからダストライフが復元していない。
【0024】
比較例2のドライ濾紙は平均繊維径が小さいことから、繊維の隙間にダストが溜まり易く、ダストによる目詰まりにより、ダストライフが他に比べて悪化している。また、オイルを塗布していないことからエアブローにより復元はするが、初期のダストライフが低いため定期的なメンテナンスが必要となる。
【0025】
比較例3のドライ不織布は、平均繊維径が大きくオイルが含浸されていないため、エアブローによる復元性やダストライフも高くなっている。しかしながら、脈動透過量は劣っている。
【0026】
比較例4のビスカス不織布は、平均繊維径が大きいため、エアブローによる復元性が高く、また、ダストライフも高くなっている。しかし、下流層の平均繊維径が大きいため、エアブローによって下流層で保持していたダストがオイルとともに抜けてしまうことから清浄効率が低下している。
【0027】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、図3に示す本発明の他の実施例のフィルタエレメントの一部断面図のように、上流層11と下流層12の間に中流層13を設けた3層のフィルタエレメントのように2層以上に形成することもできる。また、フィルタエレメントを形成する不織布の平均繊維径はフィルタエレメントの上流層から下流層に向かって小さくなればよく、フィルタエレメントを形成する不織布の密度勾配が上流層から下流層に向かって段階的または連続的に変化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のフィルタエレメントを示す一部断面図である。
【図2】図2は、図1のフィルタエレメントの襞折り構造を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施例のフィルタエレメントを示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 フィルタエレメント
2 山部
3 谷部
4 斜辺部
11 上流層
12 下流層
13 中流層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを塗布した不織布で形成された層状のエレメントであって、前記不織布の平均繊維径が前記エレメントの上流層では4.0dt以上、下流層では3.0dt以下である密度勾配を形成したフィルタエレメント。
【請求項2】
オイルの塗布量が50g/m以上、150g/m未満の請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項3】
不織布の目付量が150g/m以上、500g/m未満である請求項1または請求項2記載のフィルタエレメント。
【請求項4】
前記フィルタエレメントが襞折り状に形成されている請求項1、請求項2または、請求項3に記載のフィルタエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−142253(P2006−142253A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338524(P2004−338524)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】