説明

フィルタボックス、フィルタ装置、及び露光装置

【課題】フィルタの交換を効率的に、かつ高い位置決め精度で行う。
【解決手段】ケミカルフィルタ51を保持するフィルタボックス38であって、ケミカルフィルタ51を保持するフレーム50と、フレーム50の側面50cに形成された案内溝52と、側面50cに交差する背面50bに設けられた凹部39A,39Bと、を備える。案内溝52は、側面50cの上端と下端との間に配置され、かつフレーム50の側面50cの側端に連通する第1溝部52aと、第1溝部52aに連通し、かつフレーム50の上端に向かって延びる第2溝部52bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば気体中の不純物等を除去するためのフィルタを保持するフィルタボックス、このフィルタボックスを備える露光装置、及びこの露光装置を用いて例えば半導体素子、液晶表示素子、又は撮像素子等を製造するためのデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィー工程で使用される露光装置において、高い露光精度(解像度及び位置決め精度等)を得るためには、照明光学系の照明特性及び投影光学系の結像特性を所定の状態に維持し、かつレチクル(又はフォトマスク等)、投影光学系、及びウエハ(又はガラスプレート等)が設置される空間を所定の環境に維持する必要がある。そのため、従来より、露光装置の照明光学系の一部、レチクルステージ、投影光学系、及びウエハステージ等を含む露光本体部は、箱型のチャンバ内に設置され、このチャンバ内に、所定温度に制御されて、かつ防塵フィルタを通過した清浄な気体(例えば空気)をダウンフロー方式及びサイドフロー方式で供給する空調装置が備えられている。
【0003】
また、露光装置では、近年の回路パターンの著しい微細化要求に対応すべく、露光光の短波長化が進められており、最近では、露光光としてKrFエキシマレーザ(波長248nm)、及びさらにほぼ真空紫外域のArFエキシマレーザ(波長193nm)が使用されている。このような短波長の露光光を用いる場合、露光光が通過する空間(例えば、鏡筒の内部空間)内に微量な有機物のガス(有機系ガス)が存在すると、露光光の透過率が低下するとともに、露光光と有機系ガスとの反応によって、レンズエレメント等の光学素子の表面に曇り物質を生ずる恐れがある。さらに、チャンバ内に供給する気体からは、ウエハに塗布されたフォトレジスト(感光材料)と反応するアルカリ性物質のガス(アルカリ系ガス)等も除去することが望ましい。
【0004】
そこで、従来より、露光装置の空調装置の気体の取り込み部には、チャンバ内に供給される気体から有機系ガス及び/又はアルカリ系ガス等を除去するための複数のケミカルフィルタが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/108252号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の露光装置においては、複数のケミカルフィルタをケーシング内に位置決めしながら積み重ねていた。そのため、それらのケミカルフィルタを交換する際には、使用済みのケミカルフィルタを順次搬出してから、未使用のケミカルフィルタを互いに位置合わせしながら積み重ねて設置する必要があった。そのため、ケミカルフィルタの交換時間が長くなったり、複数のケミカルフィルタ間で位置ずれが生じ、ケミカルフィルタ間の気密性が低下したりする恐れがあった。
【0007】
さらに、露光装置においては、要求される露光精度の一層の向上に対応して、設置するケミカルフィルタの段数が増加しているため、ケミカルフィルタの交換を効率的に行う必要がある。
本発明は、このような事情に鑑み、フィルタの交換を効率的に、又は容易に位置決めできるように行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、フィルタを保持するフィルタボックスが提供される。このフィルタボックスは、そのフィルタを保持するフレームと、そのフレームの少なくとも一方の側面に設けられた凹凸形成部と、そのフレームのその凹凸形成部が形成された側面に交差する交差面に設けられた陥没部と、を備え、その凹凸形成部は、そのフレームのその少なくとも一方の側面の上端と下端との間に配置され、かつその少なくとも一方の側面のうちその交差面側の側端に連通する第1凹部と、その第1凹部に連通し、かつそのフレームの上端に向かって延びる第2凹部と、を有するものである。
【0009】
また、第2の態様によれば、フィルタを保持するフィルタボックスを収納するフィルタ装置が提供される。このフィルタ装置は、本発明のフィルタボックスと、前記フィルタボックスを収納するケースと、前記ケースに設けられて、前記フィルタボックスの前記フレームの前記交差面に設けられた前記陥没部に係合する凸の位置決め部材と、前記ケースの一部に設けられて、前記フィルタボックスの前記フレームの少なくとも一方の側面に形成された前記凹凸形成部に係合する案内部材と、を備えるものである。
【0010】
また、第3の態様によれば、露光光でパターンを介して基板を露光する露光装置が提供される。この露光装置は、その基板を露光する露光本体部を収納するチャンバと、本発明の少なくとも一つのフィルタボックスと、そのチャンバの外部から取り込まれた気体をそのフィルタボックスを介してそのチャンバ内に送風する空調装置と、を備えるものである。
【0011】
また、第4の態様によれば、本発明の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、その露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばフィルタボックスを収納する容器側に凸部及び位置決め部材を設けておき、フレームの側面に設けられた凹凸形成部の凹部に沿ってその凸部が凹部に対して相対的に移動するように、そのフレームを移動し、かつそのフレームの陥没部とその位置決め部材との係合及び離脱を行うことによって、そのフィルタボックスのその容器に対する設置及びその容器からの搬出を効率的に、又は正確に行うことができる。従って、フィルタボックス、ひいてはその中のフィルタの交換を効率的に、又は容易に位置決めできるように行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の露光装置の構成を示す一部が切り欠かれた図である。
【図2】図1のフィルタ装置26を示す斜視図である。
【図3】図2のフィルタ装置26を示す一部が切り欠かれた正面図である。
【図4】(A)は図3中のフィルタボックス38を示す斜視図、(B)はフィルタボックス38を示す側面図、(C)は図3中のフィルタボックス40を示す斜視図、(D)はフィルタボックス40を示す側面図である。
【図5】(A)、(B)、(C)、及び(D)はそれぞれフィルタボックス38とケーシング28との相対位置の変化を示す斜視図である。
【図6】(A)、(B)、(C)、及び(D)はそれぞれフィルタボックス40とケーシング28との相対位置の変化を示す斜視図である。
【図7】(A)は変形例のフィルタボックス38Aを示す斜視図、(B)はフィルタボックス38Aを示す側面図、(C)は変形例のフィルタボックス40Aを示す斜視図、(D)はフィルタボックス40Aを示す側面図である。
【図8】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態の一例につき図1〜図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態の露光装置EXを示す。露光装置EXは、一例としてスキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査露光型の露光装置(投影露光装置)である。図1において、露光装置EXは、露光光(露光用の照明光)ELを発生する光源部2と、露光光ELでレチクルR(マスク)を照明する照明光学系ILSと、レチクルRを保持して移動するレチクルステージRSTと、レチクルRのパターンの像をフォトレジスト(感光材料)が塗布されたウエハW(基板)の表面に投影する投影光学系PLとを備えている。さらに、露光装置EXは、ウエハWを保持して移動するウエハステージWSTと、その他の駆動機構及びセンサ類等と、複数枚のレチクルを保管するレチクルライブラリ9と、複数枚の未露光及び/又は露光済みのウエハを保管するウエハカセット7と、露光装置EXの動作を統括的に制御する主制御装置(不図示)とを備えている。これらの光源部2から主制御装置(不図示)までの部材は、例えば半導体デバイス製造工場のクリーンルーム内の第1の床FL1の上面に設置されている。
【0015】
また、露光装置EXは、床FL1上に設置された箱状の気密性の高いチャンバ10を備え、チャンバ10の内部は、例えばシャッタ24R及び24Wで開閉される2つの開口を有する仕切り部材10dによって、露光室10aとローダ室10bとに区画されている。そして、露光室10a内に、照明光学系ILS、レチクルステージRST、投影光学系PL、及びウエハステージWSTを含む露光本体部4が設置され、ローダ室10b内に、レチクルライブラリ9及びウエハカセット7をそれぞれ含むレチクルローダ系及びウエハローダ系が設置されている。
【0016】
また、露光装置EXは、チャンバ10の内部全体の空調を行うための全体空調システムを備えている。この全体空調システムは、第1の床FL1の階下の機械室の第2の床FL2の上面に設置されて、積み重ねられた複数のケミカルフィルタを有するフィルタ装置26と、床FL2の上面に設置された空調本体部31を有する空調装置30と、露光室10aの上部に設置された大型の吹き出し口18と、照明光学系ILSを収納するサブチャンバ22の底面に配置された小型の吹き出し口19Rと、投影光学系PLの近傍に配置された小型の吹き出し口19Wとを備えている。フィルタ装置26は、配管25を介して供給される空調用の気体である空気ARから所定の不純物を除去し、不純物を除去した空気を矢印A1で示すように第1ダクト32を介して空調本体部31に供給する(詳細後述)。
【0017】
空調装置30は、第1ダクト32と、空調本体部31と、空調本体部31とチャンバ10の内部とを床FL1に設けられた開口を通して連結する第2ダクト35と、例えば第2ダクト35の途中に配置されて、内部を流れる空気から微小な粒子(パーティクル)を除去するULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air-filter)等の防塵フィルタ36とを備えている。ダクト32,35及び配管25は、例えばステンレス鋼又はフッ素樹脂など、汚染物質の発生量の少ない材料を用いて形成されている。
【0018】
空調本体部31は、第1ダクト32を介して供給される空気の温度を制御する温度制御部33Aと、その空気の湿度を制御する湿度制御部33Bと、その空気を第2ダクト35側に送風するファンモータ34とを備えている。その空気は、温度が20℃〜30℃の範囲内の例えば23℃に制御されて、第2ダクト35及び吹き出し口18を介して露光室10aの内部にダウンフロー方式で供給される。チャンバ10の内部は、この空気の供給によって陽圧状態に設定される。また、第2ダクト35内の空気は、分岐管35a及び35bと、対応する吹き出し口19W及び吹き出し口19Rとを介して露光室10a内に供給される。露光室10a内の空気の一部はローダ室10bにも流入する。
【0019】
一例として、チャンバ10の内部(露光室10a)を流れた空気は、チャンバ10の底面に設けられた多数の開口45a及び床FL1に設けられた多数の開口45bを通して床下の排気ダクト44内に流れ、排気ダクト44内の空気は、不図示のフィルタを介して清浄化された後、排気される。なお、排気ダクト44に流れた空気の全部又は一部を配管25側に戻して再利用することも可能である。
【0020】
以下、図1において、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面(本実施形態ではほぼ水平面に平行である)内で図1の紙面に垂直にX軸を、図1の紙面に平行にY軸を取って説明する。本実施形態では、走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向はY方向である。また、X軸、Y軸、Z軸の回りの回転方向をθx、θy、θz方向とも呼ぶ。
【0021】
先ず、チャンバ10の外側の床FL1上に設置された光源部2は、露光光ELとしてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を発生する露光光源と、その露光光ELを照明光学系ILSに導くビーム送光光学系とを備えている。光源部2の露光光ELの射出端は、チャンバ10の+Y方向の側面上部の開口を通して露光室10a内に配置されている。なお、露光光源としては、KrFエキシマレーザ光源(波長248nm)などの紫外パルスレーザ光源、YAGレーザの高調波発生光源、固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波発生装置、又は水銀ランプ(i線等)なども使用できる。
【0022】
また、チャンバ10内の上部に配置された照明光学系ILSは、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、レチクルブラインド、及びコンデンサ光学系等を備えている。照明光学系ILSは、レチクルブラインドで規定されたレチクルRのパターン面のX方向に細長いスリット状の照明領域を露光光ELによりほぼ均一な照度で照明する。
【0023】
レチクルRに形成されたパターン領域のうち、照明領域内のパターンの像は、両側テレセントリックで投影倍率βが縮小倍率(例えば1/4)の投影光学系PLを介してウエハWの表面に結像投影される。
また、チャンバ10の露光室10a内の床FL1上に、複数の台座11を介して下部フレーム12が設置され、下部フレーム12の中央部に平板状のベース部材13が固定され、ベース部材13上に例えば3箇所の防振台14を介して平板状のウエハベースWBが支持され、ウエハベースWBのXY平面に平行な上面にエアベアリングを介してウエハステージWSTがX方向、Y方向に移動可能に、かつθz方向に回転可能に載置されている。また、下部フレーム12の上端に、ウエハベースWBを囲むように配置された例えば3箇所の防振台15を介して光学系フレーム16が支持されている。光学系フレーム16の中央部の開口に投影光学系PLが配置され、光学系フレーム16上に投影光学系PLを囲むように上部フレーム17が固定されている。
【0024】
また、光学系フレーム16の底面の+Y方向の端部にY軸のレーザ干渉計21WYが固定され、その底面の+X方向の端部にX軸のレーザ干渉計(不図示)が固定されている。これらの干渉計よりなるウエハ干渉計は、それぞれウエハステージWSTの側面の反射面(又は移動鏡)に複数軸の計測用ビームを照射して、例えば投影光学系PLの側面の参照鏡(不図示)を基準として、ウエハステージWSTのX方向、Y方向の位置、及びθx、θy、θz方向の回転角を計測し、計測値を主制御装置(不図示)に供給する。
【0025】
主制御装置(不図示)内のステージ制御系が、上記のウエハ干渉計の計測値及びオートフォーカスセンサ(不図示)の計測値等に基づいて、リニアモータ等を含む駆動機構(不図示)を介してウエハステージWSTのX方向、Y方向の位置及び速度とθz方向の回転角とを制御するとともに、ウエハWの表面が投影光学系PLの像面に合焦されるように、ウエハステージWST内のZステージ(不図示)を制御する。また、レチクルR及びウエハWのアライメントを行うためのアライメント系ALG等も設けられている。
【0026】
一方、上部フレーム17の+Y方向の上部に、照明光学系ILSを収納するサブチャンバ22が固定されている。さらに、上部フレーム17のXY平面に平行な上面にエアベアリングを介して、レチクルステージRSTがY方向に定速移動可能に、かつX方向への移動及びθzへの回転が可能に載置されている。
また、上部フレーム17の上面の+Y方向の端部にY軸のレーザ干渉計21RYが固定され、その上面の+X方向の端部にX軸のレーザ干渉計(不図示)が固定されている。これらの干渉計よりなるレチクル干渉計は、それぞれレチクルステージRSTに設けられた移動鏡21MY等に複数軸の計測用ビームを照射して、例えば投影光学系PLの側面の参照鏡(不図示)を基準として、レチクルステージRSTのX方向、Y方向の位置、及びθz、θx、θy方向の回転角を計測し、計測値を主制御装置(不図示)に供給する。
【0027】
主制御装置(不図示)内のステージ制御系は、そのレチクル干渉計の計測値等に基づいてリニアモータ等を含む駆動機構(不図示)を介してレチクルステージRSTのY方向の速度及び位置、X方向の位置、並びにθz方向の回転角等を制御する。
また、本実施形態の露光装置EXが液浸型である場合には、投影光学系PLの下端の光学部材の下面に配置される例えばリング状のノズルヘッドを含む局所液浸機構(不図示)から、投影光学系PLの先端の光学部材とウエハWとの間の局所的な液浸領域に所定の液体(純水等)が供給される。その局所液浸機構としては、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書等に開示されている液浸機構を使用できる。なお、露光装置EXがドライ型である場合には、その液浸機構を備える必要はない。
【0028】
また、ローダ室10bの内部において、上方の支持台67の上面にレチクルライブラリ9及び水平多関節型ロボットであるレチクルローダ8が設置されている。レチクルローダ8は、仕切り部材10dのシャッタ24Rで開閉される開口を通して、レチクルライブラリ9とレチクルステージRSTとの間でレチクルRの交換を行う。
また、ローダ室10bの内部において、下方の支持台68の上面にウエハカセット7と、ウエハカセット7との間でウエハの出し入れを行う水平多関節型ロボット6aとが設置されている。水平多関節型ロボット6aの上方には、水平多関節型ロボット6aとともにウエハローダ6を構成するウエハ搬送装置6bが設置されている。ウエハ搬送装置6bは、仕切り部材10dのシャッタ24Wで開閉される開口を通して、水平多関節型ロボット6aとウエハステージWSTとの間でウエハWを搬送する。
【0029】
そして、露光装置EXの露光時には、先ずレチクルR及びウエハWのアライメントが行われる。その後、レチクルRへの露光光ELの照射を開始して、投影光学系PLを介してレチクルRのパターンの一部の像をウエハWの表面の一つのショット領域に投影しつつ、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを投影光学系PLの投影倍率βを速度比としてY方向に同期して移動(同期走査)する走査露光動作によって、そのショット領域にレチクルRのパターン像が転写される。その後、ウエハステージWSTを介してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作と、上記の走査露光動作とを繰り返すことによって、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの全部のショット領域にレチクルRのパターン像が転写される。
【0030】
次に、本実施形態の露光装置EXは、照明光学系ILSの照明特性(照度均一性等)及び投影光学系の結像特性(解像度等)を所定の状態に維持し、かつレチクルR、投影光学系PL、及びウエハWが設置される雰囲気(空間)を所定の環境に維持して高い露光精度(解像度、位置決め精度等)で露光を行うために、上述のように、チャンバ10の内部に温度制御された清浄な空気をダウンフロー方式で供給する空調装置30を含む全体空調システムを備えている。
【0031】
また、その全体空調システムは局所空調部を備えている。即ち、第2ダクト35の分岐管35b及び35aからそれぞれサブチャンバ22の底面の吹き出し部19R、及び光学系フレーム16の底面の吹き出し部19Wに温度制御された清浄な空気が供給されている。この場合、吹き出し部19R及び19Wは、それぞれレチクルステージRST用のY軸のレーザ干渉計21RY及びウエハステージWST用のY軸のレーザ干渉計21WYの計測用ビームの光路上に配置されている。吹き出し部19R,19Wは、それぞれ温度制御された空気を、ほぼ均一な風速分布で計測用ビームの光路上にダウンフロー方式(又はサイドフロー方式でもよい)で吹き出す。同様に、X軸のレーザ干渉計の計測用ビームの光路にも温度制御された空気が局所的に供給される。これによって、レチクル干渉計21R及びウエハ干渉計21W等によってレチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置を高精度に計測できる。
【0032】
また、ローダ室10b内に局所空調装置60が設置されている。局所空調装置60は、支持台68の底面に配置された小型のファンモータ61と、ファンモータ61で送風された空気を上部に供給するダクト62と、レチクルライブラリ9及びウエハカセット7の上方に配置された吹き出し口65及び66とを備えている。ダクト62の先端部はそれぞれ吹き出し口65及び66に空気を供給する分岐管62R及び62Wに分かれている。また、吹き出し口65及び66の空気の流入口の近傍にそれぞれULPAフィルタ等の防塵フィルタが設置され、ファンモータ61の近傍のダクト62内に、所定の不純物を除去するケミカルフィルタを収納するフィルタボックス63,64が設置されている。一例として、フィルタボックス63のケミカルフィルタは、有機系ガス(有機物のガス)を除去し、フィルタボックス64のケミカルフィルタは、アルカリ系ガス(アルカリ性物質のガス)及び酸性ガス(酸性物質のガス)を除去する。
【0033】
ローダ室10b内で局所空調装置60を動作させると、ファンモータ61から送風された空気は、フィルタボックス63,64及びダクト62を介して吹き出し口65及び66からそれぞれダウンフロー方式でレチクルライブラリ9及びウエハカセット7が配置された空間に供給される。そして、レチクルライブラリ9の周囲を流れた空気は、支持台67の周囲、支持台67の下方のウエハカセット7の周囲、及び支持台68の周囲を経てファンモータ61に戻される。また、吹き出し口66からウエハカセット7の周囲に供給された空気は、支持台68の周囲を経てファンモータ61に戻される。そして、ファンモータ61に戻された空気は、再びフィルタボックス63,64及び防塵フィルタを介して吹き出し口65,66からローダ室10b内に供給される。このように、局所空調装置60によって、ローダ室10d内の空気は清浄な状態に保たれる。
【0034】
次に、本実施形態の全体空調システムにおいて、空調装置30に連結されるフィルタ装置26の構成及び作用につき説明する。フィルタ装置26は、細長い箱状のケーシング28と、ケーシング28内の空間を4個の空間に分ける仕切り板42A,42B,42Cと、仕切り板42Aの上面に積み重ねて設置される3段の第1のフィルタボックス38と、仕切り板42Bの上面に積み重ねて設置される3段の第2のフィルタボックス40と、仕切り板42Cの上面に積み重ねて設置される3段の第1のフィルタボックス38とを有する。
【0035】
図2は、図1中のケーシング28のドア29を開いた状態のフィルタ装置26を示す。また、図3は、図2のケーシング28を正面(前面)から見て、かつ一部を切り欠いた図である。図2において、説明の便宜上、ケーシング28及びドア29は2点鎖線で表している。図2において、本実施形態におけるケーシング28は、Z方向(鉛直方向)に細長い形状をしており、ケーシング28内の空間は、Z方向に4個の空間、すなわち、ケーシング28の上板28iと仕切り板42Cとで挟まれた第1空間28c、仕切り板42B及び42Cで挟まれた第2空間28d、仕切り板42A及び42Bで挟まれた第3空間28e及び仕切り板42Aとケーシング28の底板28hで挟まれた第4空間28fに分けられている。さらに、フィルタ装置26は、フィルタボックス38,40の交換時に、フィルタボックス38,40を出し入れするための窓部を開くために、ケーシング28に複数箇所のヒンジ機構(不図示)を介して開閉可能に装着されたドア29を有する。ドア29により閉鎖されるケーシング28の窓部側をケーシングの前面28kと称し、ケーシング28の窓部とは反対側(奥行側)をケーシングの背面28jと称し、ケーシング28の前面28kと背面28jを側方から接続している2つの面を側面28m、28nと称する。ケーシング28の上板28iには、開口28aが形成されており、この上板28iに空調用の空気ARを取り込む図1の配管25の端部が固定され、ケーシング28の最下部の第4空間28fに図1の第1ダクト32が連結されている。なお、説明の便宜上、図2では、第1ダクト32の方向を−X方向としている。
【0036】
また、図2のケーシング28の内部において、最下段の仕切り板42Aの上面に積み重ねられた3段のフィルタボックス38、及び最上段の仕切り板42Cの上面に積み重ねられた3段のフィルタボックス38は、それぞれ上下が開口とされた箱状(矩形の枠状)のフレーム50内に有機系ガス(有機物のガス)を除去するケミカルフィルタ51を保持したものである。また、中段の仕切り板42Bの上面に積み重ねられた3段のフィルタボックス40は、それぞれ上下が開口とされた箱状(矩形の枠状)のフレーム55内にアンモニアやアミン等のアルカリ系ガス(アルカリ性物質のガス)及び酸性ガス(酸性物質のガス)を除去するケミカルフィルタ56を保持したものである。
【0037】
各フィルタボックス38,40の高さは例えば200〜400mmであり、各フィルタボックス38,40の重量は10〜20kg程度である。
有機系ガス除去用のケミカルフィルタ51としては、例えば活性炭型フィルタ又はセラミックス型フィルタ等が使用可能である。また、アルカリ系ガス及び酸性ガス除去用のケミカルフィルタ56としては、添着剤活性炭型フィルタ、イオン交換樹脂型フィルタ、イオン交換繊維型フィルタ、又は添着剤セラミックス型フィルタ等を使用することができる。また、フレーム50,55、仕切り板42A〜42C、ケーシング28、及びドア29は、それぞれ耐食性があり脱ガス等の少ない材料、例えば表面に酸化皮膜(酸化アルミニウム等)が形成されたアルミニウム(アルマイト処理されたアルミニウム)、又はステンレス鋼等から形成されている。なお、フレーム50,55等は、耐食性があり脱ガスの少ない樹脂材料を含む材料(ポリエチレンで覆った合板、又はフッ素系樹脂等)等で形成することも可能である。
【0038】
なお、有機系ガスを除去することで、チャンバ10の露光室10a内で露光光ELの透過率が向上し、かつ有機系ガスと露光光ELとの相互作用によって光学素子に表面に形成される曇り物質の発生が抑制される。また、アルカリ系ガス及び酸性ガスを除去することによって、ウエハWのフォトレジストの特性の変化等が抑制される。特に、フォトレジストが化学増幅型フォトレジストである場合には、空気中にアンモニアやアミン等のアルカリ系ガスがあると、発生した酸が反応してフォトレジスト表面に難溶化層ができる恐れがある。従って、特にアンモニアやアミン等のアルカリ系ガスの除去が有効である。
【0039】
なお、図1のローダ室10b内のフィルタボックス63,64内のケミカルフィルタの構成は、ケミカルフィルタ51,56の構成と同様である。ただし、フィルタボックス63,64はフィルタボックス38,40よりも小型である。
また、図2において、仕切り板42A及び42C上の全部で6個のフィルタボックス38,40のフレーム50,55の長手方向(Y方向)の両方の側面には、案内溝52,53によって凹凸が形成される。
【0040】
本実施形態において、この案内溝52,53は、フレーム50,55の側面に直接形成されているため、フレーム50の側面がフィルタボックス38をケーシング28内の所定位置に搬入するための案内ガイド面として機能する。フレーム50,55の両方の側面には、案内溝52,53の上部に作業者が手を掛けるための凹部よりなる取っ手部70,71が取り付けられている。フレーム50,55の前面にも、作業者が手を掛けることが可能な凹部よりなる取っ手部72が設けられている。
【0041】
そして、各フィルタボックス38,40の一方の側面の案内溝52にそれぞれケーシング28の内面に固定された円柱状の互いに同じ形状の軸部材(ガイド)48A,48B,48C,48D,48E,48F,48G,48H,48Iの先端部が係合し、各フィルタボックス38,40の他方の側面の案内溝53にそれぞれケーシング28の内面に固定された軸部材48Aと同じ形状の円柱状の軸部材49A,49B,49C,49D,49E,49F,49G,49H,49Iの先端部が係合している。軸部材48A〜48I, 49A〜49Iによって、フィルタボックス38,40のフレーム50,55のそれぞれがX方向(移動方向)に位置決めされるとともに、Y方向におおまかに位置決めされる。なお、下段のフィルタボックス38,40のフレーム50,55は、仕切り板42A,42B及び42Cの上面に対し、位置決めされた状態でかつ自重によって固定されている。また、中段のフィルタボックス38,40のフレーム50,55は、下段のフィルタボックス38,40の上端面に対し、位置決めされ、かつ自重によって固定されている。さらに上段のフィルタボックス38,40のフレーム50,55は、中段のフィルタボックス38,40の上端面に対し、位置決めされ、かつ自重によって固定されている。
【0042】
この場合、軸部材48A〜48I及び49A〜49Iの前面28kからの距離は、互いに等しく設定されている。なお、フレーム50,55の移動を円滑にするために、軸部材48A〜48I及び49A〜49Iの先端部に回転軸受けを設けてもよい。
また、仕切り板42A,42C上の最上段のフィルタボックス38で示すように、フィルタボックス38のフレーム50の背面のY方向の2箇所に底面に続く長穴よりなる第1凹部39A及び第2凹部39Bが形成されている。また、凹部39A,39Bに対応するケーシング28の背面28mにそれぞれ棒状の位置決めピン75C,76C及び75F,76Fが着脱可能に配置されている。実際には、図3に示すように、全部のフィルタボックス38のフレーム50にそれぞれ凹部39A,39Bが形成されている。そして、全部のフィルタボックス38の凹部39A及び39Bに対応して、ケーシング28の背面28jにそれぞれ第1の位置決めピン75A,75B,75C,75D,75E,75F及び第2の位置決めピン76A,76B,76C,76D,76E,76Fが固定されている。
【0043】
また、図2の仕切り板42B上の最上段のフィルタボックス40で示すように、フィルタボックス40のフレーム55の背面のY方向の2箇所に底面に続く長穴よりなる第1凹部41A及び第2凹部41Bが形成されている。また、凹部41A,41Bに対応するケーシング28の背面28mにそれぞれ棒状の位置決めピン77C,77Cが着脱可能に配置されている。実際には、図3に示すように、全部のフィルタボックス40のフレーム55にそれぞれ凹部41A,41Bが形成されている。そして、全部のフィルタボックス40の凹部41A及び41Bに対応して、ケーシング28の背面28jにそれぞれ第1の位置決めピン77A,77B,77C及び第2の位置決めピン78A,78B,78Cが固定されている。フレーム50の凹部39A,39Bに位置決めピン75A〜75F,76A〜76Fが収まり、フレーム55の凹部41A,41Bに位置決めピン77A〜77C,78A〜78Cが収まるように、フィルタボックス38,40をケーシング28内に収納することによって、フィルタボックス38,40のY方向の位置決めを高精度に行うことができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、フレーム50に形成された凹部39A,39BのY方向の間隔は、フレーム55に形成された凹部41A,41BのY方向の間隔よりも広く設定されている。また、ケーシング28の背面28jに配置された位置決めピン75A〜75Fと位置決めピン76A〜76FとのY方向の間隔は凹部39A,39BのY方向の間隔と等しく、背面28jに配置された位置決めピン77A〜77Cと位置決めピン78A〜78CとのY方向の間隔は凹部41A,41BのY方向の間隔と等しく設定されている。これによって、これによって、仕切り板42A,42C上にアルカリ系ガス及び酸性ガスを除去するためのケミカルフィルタ56を有するフィルタボックス40を設置することが防止され、逆に仕切り板42B上に有機系ガスを除去するためのケミカルフィルタ51を有するフィルタボックス38を設置することが防止されている。
【0045】
また、図2において、ケーシング28の前面28kにフィルタボックス38及び40を出し入れするための矩形の窓部28bが形成され、ドア29には、ドア29でケーシング28の窓部28bを閉じたときに、窓部28bの周辺及び仕切り板42B,42Cの端部とドア29との間を密閉するためのガスケット46が固定されている。ガスケット46は、耐食性に優れ、かつ脱ガスの少ない材料、例えばテフロン(デュポン社の登録商標)のシート、又はシリコンゴムのシート等から形成できる。
【0046】
次に、図3において、仕切り板42A〜42Cにはそれぞれフィルタボックス38,40を通過した空気ARを通す開口42Aa,42Ba,42Caが形成されている。なお、図3では、説明の便宜上、1段目及び2段目のフィルタボックス38,40は2点鎖線で表されている。また、フィルタボックス38のフレーム50、及びフィルタボックス40のフレーム55の底面にはそれぞれ載置面との間の気密性を高めるための矩形の枠状のガスケット54が固定されている。ガスケット54の材料は、耐食性に優れ、かつ脱ガスの少ない材料、例えばテフロン(デュポン社の登録商標)のシート、又はシリコンゴムのシート等から形成できる。なお、ガスケット54の材料は、ガスケット46の材料と同様であってもよい。この結果、ケーシング28の開口28aが形成された上板と仕切り板42Cとで挟まれた第1空間28c内の気体は、3段のフィルタボックス38のケミカルフィルタ51を通過した後、開口42Caを通って、仕切り板42B及び42Cで挟まれた第2空間28dに流入する。同様に、空間28d内の気体は、必ず3段のフィルタボックス40のケミカルフィルタ56を通過した後、開口42Baを通って、仕切り板42A及び42Bで挟まれた第3空間28eに流入する。同様に、空間28e内の気体は、3段のフィルタボックス38のケミカルフィルタ51を通過した後、開口42Aa、仕切り板42Aとケーシングの底面で挟まれた第4空間28f、及びケーシング28の背面(底面)の開口28gを通って、図2の第1ダクト32に流れる。従って、ケーシング28の上部の開口28aから流入する空気ARは、必ず3段の有機系ガス除去用のフィルタボックス38、3段のアルカリ系ガス及び酸性ガス除去用のフィルタボックス40、及び3段の有機系ガス除去用のフィルタボックス38を通過して図1の空調装置30に供給されるため、チャンバ10内には不純物を高度に除去した空気が供給される。
【0047】
また、仕切り板42Aの上面の開口42Aaの周囲に、金属よりも滑りやすい材料よりなる矩形の枠状のシート状のカバー部材TF2が接着等で固定されている。実際には、仕切り板42B,42Cの上面にもカバー部材TF2と同様のカバー部材(不図示)が固定されている。さらに、フィルタボックス38,40のフレーム50,55の上面にも、ケミカルフィルタ51,56を囲むように、それぞれ滑りやすい材料よりなる矩形の枠状のシート状のカバー部材TF1が接着等で固定されている。カバー部材TF1,TF2は、例えば合成樹脂から形成され、具体的には例えばテフロン(デュポン社の登録商標)から形成されている。
【0048】
これにより、フィルタボックス38,40のガスケット54は下段のフィルタボックス38,40の上面のカバー部材TF1又は仕切り板42A〜42Cに固定されたカバー部材TF2に密着する。そして、フィルタボックス38,40の交換時には、フィルタボックス38,40を容易に下段のフィルタボックス38,40又は仕切り板42A〜42Cから離すことができる。なお、カバー部材TF1,TF2は必ずしも設けなくともよい。
【0049】
また、図3において、軸部材48A〜48I,49A〜49Iは、代表的に軸部材48C,49Cで示すように、ケーシング28の側面(内側)にそれぞれネジ部48Ca,49Caによって固定されている。
さらに、代表的に位置決めピン75A,76Aで示すように、ケーシング28の背面28jには、フレーム50の凹部39A,39Bと同じY方向の間隔の2箇所のネジ穴(不図示)とともに、フレーム55の凹部41A,41Bと同じY方向の間隔の2箇所のネジ穴81,82も形成されている。これによって、位置決めピン75A,76Aは、フレーム55の凹部41A,41Bと同じ間隔にも設定可能である。これは、他の位置決めピン75B〜75F,76B〜76Fも同様である。さらに、位置決めピン77A〜77C,78A〜78Cについては、フレーム50の凹部39A,39Bと同じ間隔にも設定可能である。この構成により、仕切り板42A,42C上にフィルタボックス40を設置することも可能であり、仕切り板42B上にフィルタボックス38を設置することも可能である。
【0050】
また、図3において、ケーシング28の両側面とフィルタボックス38,40のY方向の内側の側面との間には、作業者が手を差し込むことが可能なスペースが確保されている。これによって、フィルタボックス38,40の搬入時及び搬出時に、作業者は図2のケーシング28内で、フィルタボックス38,40の側面の取っ手部70,71に手を掛けてフィルタボックス38,40を移動できる。
【0051】
次に、フィルタボックス38,40のフレーム50,55の案内溝52,53及び凹部39A,39B,41A,41Bの形状につき図4(A)〜図4(D)を参照して説明する。ここで、図4(A)のフィルタボックス38のフレーム50について、ケーシング28に挿入されたときにケーシング28の前面28kに面する面をフレーム50の前面50a(第1面)、ケーシング28の背面28jに面する面をフレーム50の背面50b(第2面)、ケーシング28の側面28m,28nに面する面をフレーム50の側面50c,50d(第3及び第4面)と称する。なお、本実施形態では、フレーム50の側面50c,50dは、フレームの前面50a及び背面50bに対して直交しているが、直交に限定されない。例えば、フレーム50の側面50c,50dに対して、フレームの前面50a又は背面50bの少なくとも一方が、交差(90度に対して傾斜)していてもよい。フレーム50の前面50aと背面50bに対して上側の面を上面50f、フレーム50の前面50aと背面50bに対して下側(気体が排気される方向)の面を底面50eと称する。後述するフィルタボックス40のフレーム55の各面についても、フィルタボックス38のフレーム50と同様にして特定する。
【0052】
図4(A)に示すように、フィルタボックス38のフレーム50の長手方向の一対の側面50c,50dには、案内溝52,53が形成されている。案内溝52は、フレーム50の側面50cの上端150と下端152との間に配置され、かつフレーム50の後側端154または背面50bに連通する第1溝部52aと、第1溝部52aに連通し、かつフレーム50の上端150(上面50fの方向)に向かって延びる第2溝部52bとを有する。案内溝52により側面50cを上側部52eと下側部52fに分割している。第1溝部(横凹部)52aはフレーム50の底面50eと上面50fとの間にそれらの面に沿って横方向(X方向)に延在するように形成され、第2溝部(縦凹部)52bはフレーム50の前側端156と後側端154の間に、すなわち、前面50aと背面50bとの間にそれらの面に沿って縦方向(Z方向)に延在するように形成されている。
【0053】
さらに、案内溝52は、第1溝部52aと第2溝部52bとが連通する位置に形成されて、フレーム50の前面50a側からフレーム50の後側端154側または背面50b側に向かって次第に幅が狭くなる第1テーパ部52cと、第1溝部52aの背面50bに連通する部分に形成されて、フレーム50の前面50a側から背面50b側に向かって次第に幅が広くなる第2テーパ部52dとを有する。第1溝部52aの上面側のエッジ部50ae(案内溝53により分割された側面50dの上側部52eの下端)と第2溝部52bの背面50b側のエッジ部50be(案内溝53により分割された側面50dの上側部52eの側端)とは第1テーパ部52cで接続されている。
【0054】
また、図4(B)の側面図で示すように、第1溝部52a及び第2溝部52bの幅は、図2のケーシング28内に設けられている軸部材48Aの直径よりも或る程度またはわずかに広く設定されている。これによって、軸部材48Aは、案内溝52に沿ってフレーム50の背面50bと上面50fとの間に円滑にフレーム50に対して相対移動可能(スライド移動可能)である。
【0055】
なお、フレーム50の他方の側面50dの案内溝53の形状は案内溝52とフレーム50の前後方向の中心線(不図示)に対して対称(本文中で単に「対称」という)または同一形状であるため、その説明を省略する。
また、フレーム50の背面50bの2箇所に底面50eに開放された細長い(フレーム50の厚さ方向に細長い形状の)凹部39A,39Bが形成されている。さらに、フレーム50の底面50eには図3のガスケット54が設けられ、上面50fには図3のカバー部材TF1が設けられる。
【0056】
また、図4(C)に示すように、フィルタボックス40のフレーム55の長手方向の一対の側面55c,55dにも、フレーム50と同様に背面55bから上面55fにかけて案内溝52,53が形成されている。さらに、フレーム55の背面55bの2箇所に底面55eに開放された細長い(フレーム55の厚さ方向に細長い形状の)凹部41A,41Bが形成されている。凹部41A,41Bの間隔はフレーム50側の凹部39A,39Bの間隔よりも狭く設定されている。さらに、フレーム55の底面55eには図3のガスケット54が設けられ、上面55fには図3のカバー部材TF1が設けられる。
【0057】
また、図4(D)の側面図で示すように、第1溝部57a及び第2溝部57bの幅は、図2のケーシング28内に設けられている軸部材48Dの直径よりも或る程度またはわずかに広く設定されている。これによって、軸部材48Dは、案内溝57に沿ってフレーム55の背面55bと上面55fとの間に円滑にフレーム55に対して相対移動可能(スライド移動可能)である。なお、フレーム50,55は、例えばモールド成形等によって製造可能である。
【0058】
次に、図4(A)のフィルタボックス38を図2のケーシング28の仕切り板42Aの上面に設置する場合には、図5(A)に示すように、作業者はフレーム50の取っ手部70,71を介してフィルタボックス38を保持した状態で、ケーシング28の1対の軸部材48A,49Aの前方にフィルタボックス38(フレーム50)の案内溝52,53の第1溝部52a等を移動する。
【0059】
なお、未使用のフィルタボックス38には、フレーム50の第1溝部52aの入り口に薄いフィルム59Aが剥離可能に張設されている。そして、矢印B1で示すように、フィルタボックス38を窓部28bを通してケーシング28内に押し込み、図5(B)に矢印B2で示すように、第1溝部52aに沿って軸部材48Aがスライド可能にフレーム50に対して相対移動するように、フィルタボックス38をさらに押し込む。これによって、フィルム59Aが剥離するため、次にフィルタボックス38を搬出する際に、このフィルタボックス38が使用済みであることが確認できる。
【0060】
その後、さらにフレーム50を押し込むと、ケーシング28の位置決めピン75A,76Aにフレーム50の凹部39A,39Bが係合する。さらに、図5(C)に示すように、フィルタボックス38の第2溝部52bが軸部材48Aに達した後、フィルタボックス38の自重によって第2溝部52bに沿って軸部材48Aがフレーム50に対して相対移動するように、矢印B3で示すように、フィルタボックス38を仕切り板42Aの上面に載置する。この結果、図5(D)に示すように、フィルタボックス38は、案内溝52,53の第2溝部52b等の中間の位置に軸部材48A,49Aが停止した状態で、かつ位置決めピン75A,76Aが凹部39A,39B内に係合した状態で仕切り板42A上に載置される。これによって、フィルタボックス38は、仕切り板42Aの開口42Aaを覆うように正確にX方向、Y方向に位置決めされた状態で、かつ安定に載置される。
【0061】
さらに、第2テーパ部52dがあるため、第1溝部52aを軸部材48Aに容易に案内して係合可能である。また、第1テーパ部52cがあるため、案内溝52の第1溝部52aの次に第2溝部52bを容易に軸部材48Aに係合可能である。第1テーパ部52cにより、操作者は、第2溝部52bの位置、ひいては、フィルタボックス38の挿入方向(X方向)の設置位置の把握が容易となる。
【0062】
図2の他のフィルタボックス38も同様にフィルタボックス38の上面又は仕切り板42Cの上面に載置できる。なお、フレーム50を押し込むときに取っ手部72を使用してもよい。
同様に、図4(C)のフィルタボックス40を図2のケーシング28の仕切り板42Bの上面に設置する場合には、図6(A)に示すように、作業者はフレーム55の取っ手部70,71を介してフィルタボックス40を保持した状態で、ケーシング28の1対の軸部材48D,49Dの前方にフィルタボックス40(フレーム55)の案内溝52,53の第1溝部52a等を移動する。未使用のフィルタボックス40には、第1溝部52aの入り口に薄いフィルム59Bが剥離可能に張設されている。そして、矢印B5で示すように、フィルタボックス40を窓部28bを通してケーシング28内に押し込み、第1溝部52aを軸部材48Dに係合させることで、フィルム59Bが剥離する。
【0063】
続いて、図6(B)に矢印B6で示すように、フィルタボックス40をさらにスライド可能に押し込むことによって、図6(C)に示すように、ケーシング28側の位置決めピン77A,78Aがフレーム55の凹部41A,41Bに係合し、フィルタボックス40の第2溝部52bが軸部材48Dに達する。その後、第2溝部52bに沿って軸部材48Dがフレーム55に対して相対移動するように、矢印B7で示すように、フィルタボックス40を仕切り板42Bの上面に載置する。この結果、図6(D)に示すように、フィルタボックス40は、案内溝52,53の第2溝部52b等の中間に軸部材48D,49Dが位置した状態で、かつ凹部41A,41Bに位置決めピン77A,78Aが係合した状態で仕切り板42B上に載置される。これによって、フィルタボックス40は、仕切り板42Bの開口42Baを覆うように正確にX方向、Y方向に位置決めされた状態で、かつ安定に載置される。
【0064】
図2の他のフィルタボックス40も同様に別のフィルタボックス40の上面に載置できる。その後、図2のドア29を閉じることによって、フィルタ装置26が使用可能となり、フィルタ装置26を通過した清浄な空気を露光装置EXのチャンバ10内に供給できる。
次に、フィルタ装置26のフィルタボックス38,40を交換する場合には、ケーシング28のドア29が開かれる。そして、上段のフィルタボックス38を中段のフィルタボックス38上から搬出する。その後、中段のフィルタボックス38を下段のフィルタボックス上から搬出し、最後に、下段のフィルタボックス38を仕切り板42A上から搬出する。上段、中段、下段のフィルタボックスの搬出動作は同じ動作なので、以下、具体的な搬出動作について、下段のフィルタボックス38を仕切り板から搬出する場合を例に説明する。上段のフィルタボックス38、中段のフィルタボックス38が搬出された後、次に説明する搬出法に従って下段のフィルタボックス38を搬出する。仕切り板42Aから下段のフィルタボックス38を搬出する際には、作業者はフィルタボックス38の取っ手部70,71に手を掛けて、図5(C)に矢印C1で示すように、案内溝52の第2溝部52bに沿って軸部材48Aがスライド可能にフレーム50に対して相対移動するように、フィルタボックス38を上方に持ち上げる。その後、案内溝52の第1テーパ部52cが軸部材48Aに達した後、図5(B)に矢印C2で示すように、第1溝部52aに沿って軸部材48Aがスライド可能にフレーム50に対して相対移動するように、フィルタボックス38を前方(フィルタボックス38の前面側)に引く抜く。その後、図5(A)に矢印C3で示すように、さらにフィルタボックス38をケーシング28の前方に引き抜くことで、フィルタボックス38を搬出できる。この際に、案内溝52の第1テーパ部52cがあるため、軸部材48Aに沿って案内溝52の第2溝部52bから第1溝部52aまでを円滑に移動できる。
【0065】
同様に他のフィルタボックス38も容易に搬出できる。その後、未使用のフィルタボックス38をケーシング28に設置する際には、図5(A)〜図5(D)までの動作を繰り返せばよい。
また、例えば仕切り板42Bの上面からフィルタボックス40を搬出する際には、作業者はフィルタボックス40の取っ手部70,71に手を掛けて、図6(C)に矢印C5で示すように、案内溝52の第2溝部52bに沿って軸部材48Dがスライド可能にフレーム55に対して相対移動するように、フィルタボックス40を持ち上げる。その後、案内溝52の第1テーパ部52cが軸部材48Dに達した後、図6(B)に矢印C6で示すように、第1溝部52aに沿って軸部材48Dがスライド可能にフレーム55に対して相対移動するように、フィルタボックス40を前方に引く抜く。その後、図6(A)に矢印C7で示すように、さらにフィルタボックス40をケーシング28の前方に引き抜くことで、フィルタボックス40を搬出できる。
【0066】
同様に他のフィルタボックス40も容易に搬出できる。その後、未使用のフィルタボックス40をケーシング28内に設置する際には、図6(A)〜図6(D)までの動作を繰り返せばよい。
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の露光装置EXは、フィルタ装置26及び空調装置30を含む全体空調システムを備え、フィルタ装置26は6段の第1のフィルタボックス38及び3段の第2のフィルタボックス40を収納する。
【0067】
そして、第1のフィルタボックス38は、ケミカルフィルタ51を保持する箱状(筒状)のフレーム50と、フレーム50の一対の側面50c,50dに対称に形成された案内溝(凹凸形成部)52,53と、側面50c,50dに交差する背面(交差面)50bに、側面50c,50dの方向に離れて形成された長穴状の第1凹部(陥没部)39A及び第2凹部39Bと、を備えている。一方の案内溝52は、フレーム50の側面50cの上端と下端との間に配置され、かつフレーム50の背面50bに連通する第1溝部(横凹部)52aと、第1溝部52aに連通し、かつフレーム50の上端(上面50f側の端部)に向かって延びる第2溝部(縦凹部)52bとを有する。
【0068】
また、フィルタ装置26は、フィルタボックス38と、フィルタボックス38を収納するケーシング28と、ケーシング28に設けられて、フィルタボックス38のフレーム50の背面50bに設けられた凹部39A,39B係合する凸の位置決めピン75A,76Aと、ケーシング28の一部に設けられて、フレーム50の側面50c,50dに形成された案内溝52,53に係合する軸部材(案内部材)48A,49Aと、を備えている。
【0069】
本実施形態によれば、フレーム50の側面の案内溝52,53に沿ってケーシング28の軸部材48A,49Aがフレーム50に対して相対的に移動するように、フレーム50をガイドしながら移動することによって、フィルタボックス38のケーシング28に対する設置及びケーシング28からの搬出を効率的に、かつ正確に行うことができる。さらに、フィルタボックス38を設置する際に、フレーム50の凹部39A,39Bをケーシング28の位置決めピン75A,76Aに係合させることによって、フィルタボックス38の横方向(実施形態では、フィルタボックス38の移動方向に直交する方向)の位置決めを容易に行うことができる。従って、フィルタボックス38、ひいてはその中のケミカルフィルタ51の交換を効率的に、かつ容易に位置決めできるように行うことができる。
【0070】
(2)また、第2のフィルタボックス40も同様に構成されているが、フィルタボックス40のフレーム55に形成されている凹部41A,41Bの間隔はフレーム50に形成された凹部39A,39Bの間隔と異なっている。また、ケーシング28のフィルタボックス40が設置される位置には、凹部41A,41Bと同じ間隔の位置決めピン77A,78Aが配置されている。従って、フィルタボックス40の交換も、効率的に、かつ容易に位置決めできるように行うことができる。さらに、フィルタボックス38,40を互いに誤った位置に設置することが確実に防止される。
【0071】
なお、フィルタボックス38,40の案内溝52及び53はほぼ対称またはほぼ同一形状に形成されていればよい。
また、フレーム50,55に対して一方の側面(例えば側面50c,55c)にのみ案内溝52を形成しておいてもよい。この場合には他方の側面50d,55dはほぼ平面(平坦)となる。また、一方の案内溝52が軸部材48A,48Dに沿って軸部材48A,48Dに対して相対移動するようにフィルタボックス38,40を移動することで、フィルタボックス38,40を比較的容易にケーシング28内に設定できるとともに、フィルタボックス38,40をケーシング28から容易に搬出可能である。
【0072】
(3)また、フレーム50,55にはガスケット54及びカバー部材TF1が設けられているため、フィルタボックス38,40を仕切り板42A〜42C上に重ねて設置した場合の気密性を高く維持できる。さらに、フィルタボックス38,40の搬出時にはガスケット54を容易に離すことができる。
なお、ガスケット54及びカバー部材TF1は省略可能である。
【0073】
(4)本実施形態では、フレーム50,55の2箇所にそれぞれ凹部39A,39B及び凹部41A,41Bが形成されているため、フレーム50,55を目標とする位置に容易に設置できる。なお、フレーム50,55の少なくとも一方で、例えば凹部39A又は凹部41Aのみを形成しておいてもよい。この場合には、ケーシング28側でも位置決めピン75A〜75F又は77A〜77Cのみを配置しておけばよい。このように、凹部及び位置決めピンが1箇所でもフィルタボックス38,40の横方向の位置決めを容易に行うことができ、かつフィルタボックス38,40の誤挿入を防止できる。
【0074】
なお、例えばケミカルフィルタ51,56に識別可能なラベルを付すること等によって、フィルタボックス38,40の凹部39A,39B及び凹部41A,41Bの位置を同じ位置としてもよい。
(5)また、フィルタボックス38の案内溝52は、第1溝部52aと第2溝部52bとが連通する位置に形成されて、フレーム50の背面50bに向かって次第に幅が狭くなる第1テーパ部52cを有する。第1テーパ部52cによって、操作者は第2溝部52bの位置を把握し易くなるので、案内溝52に対する軸部材49Aの相対的な移動を円滑に行うことができる。
【0075】
なお、第1テーパ部52cは必ずしも設けなくともよい。
(6)また、案内溝52は、第1溝部52aの背面50bに連通する部分に形成され、背面50bに向かって次第に幅が広くなる第2テーパ部52dを有する。従って、第1溝部52aを容易に軸部材48Aにガイドしながら係合できる。なお、第2テーパ部52dも省略可能である。
【0076】
(7)また、フィルタボックス38の第1溝部52a等とフレーム50の上端との間に取っ手部70,71が設けられ、フレーム50の前面50aにも取っ手部72が設けられているため、作業者が容易にフィルタボックス38を搬送できる。なお、取っ手部70,71は一方に設けるだけでもよく、取っ手部72は省略可能である。また、例えばフレーム50の側面50c,50dを粗面としておくことによって、取っ手部70,71を省略することも可能である。
【0077】
(8)また、フィルタボックス38の第1溝部52aの入り口に剥離可能にフィルム59Aが設けられているため、フィルタボックス38が使用済みか未使用かを容易に確認できる。
なお、フィルム59Aは、第1溝部52a及び第2溝部52bのうちのどの部分に設けておいてもよい。また、フィルタボックス38にはフィルム59Aを設けることなく、他の方法(例えば作業者がラベルを剥離する等の方法)でフィルタボックス38の使用の有無を確認してもよい。
【0078】
(9)また、フィルタボックス38のケミカルフィルタ51(濾材)は、その中を通過する気体中の有機系ガス(有機物)を除去し、フィルタボックス40のケミカルフィルタ56(濾材)は、その中を通過する気体中のアルカリ性ガス及び酸性ガスを除去しているため、露光本体部4が収納されるチャンバ10内に不純物が高度に除去された空気を供給できる。
【0079】
さらに、本実施形態のフィルタ装置26には、6段のフィルタボックス38及び3段のフィルタボックス40が設置されているが、フィルタボックス38の個数は任意であり、フィルタボックス40の個数も任意である。また、フィルタ装置26には、一つ若しくは複数段のフィルタボックス38、又は一つ若しくは複数段のフィルタボックス40を設置するのみでもよい。
【0080】
また、フィルタ装置26のケーシング28は仕切り板42A〜42Cで複数の空間に仕切られているが、ケーシング28内を仕切り板42A〜42Cで仕切ることなく、単にフィルタボックス38及び40を例えば交互に積み重ねることも可能である。
なお、フィルタボックス40内のフィルタは、例えばその中を通過する気体中のアルカリ性物質及び酸性物質の少なくとも一方を除去するフィルタでもよい。
【0081】
さらに、フィルタボックス38,40内のフィルタは、ケミカルフィルタ以外の任意のフィルタ(濾材)を使用できる。例えば、フィルタボックス38,40のフィルタとしては、HEPAフィルタ又はULPAフィルタのような微小な粒子(パーティクル)を除去するための防塵フィルタを用いることも可能である。
(10)また、本実施形態の露光装置EXは、露光光ELでレチクルRのパターン及び投影光学系PLを介してウエハW(基板)を露光する露光装置において、ウエハWを露光する露光本体部4を収納するチャンバ10と、本実施形態のフィルタ装置26と、チャンバ10の外部から取り込まれた空気をフィルタ装置26を介してチャンバ10内に送風する空調装置30と、を備えている。
【0082】
本実施形態によれば、フィルタ装置26のフィルタボックス38,40の交換を効率的に行うことができ、フィルタボックス38,40間の位置決めを高精度に行うことができるため、露光装置のメンテナンスを効率的に行うことができ、かつチャンバ10内の空気の不純物を高精度に除去できる。
なお、本実施形態において、ローダ室10b内の局所空調装置60のフィルタボックス63,64のフレームとしても、フィルタボックス38,40のフレーム50,55と同様の案内溝及び凹部39A,39B,41A,41Bに対応する凹部が形成されたフレームを使用し、フィルタボックス63,64をケーシング28と同様に軸部材48A,48B及び位置決めピン75A,76A等を備えたケーシングに収納してもよい。
【0083】
また、本実施形態において、フレーム50の側面に、案内溝を形成しているが、フレーム50を2つの部材に分けて形成してもよい。例えば、フレーム50は、側面が平坦に形成され、かつフィルタを保持するフレーム本体と、フレーム本体の側面に取り付けられ、かつ案内溝が形成された凹凸形成部材とを備える構成で形成してもよい。
次に、本実施形態の変形例につき図7を参照して説明する。この変形例は、フィルタボックスのフレームの側面(凹凸形成部)の案内溝及び背面の凹部(陥没部)の形状を変えたものであり、その他の部分は上記の実施形態と同様である。以下、図7(A)〜(D)において、図4(A)〜(D)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0084】
図7(A)はケミカルフィルタ51を保持する変形例のフィルタボックス38Aを示す斜視図、図7(C)はケミカルフィルタ56を保持する変形例のフィルタボックス40Aを示す斜視図である。フィルタボックス38A,40Aは、それぞれ図2のフィルタボックス38,40の代わりにケーシング28内に設置可能である。
また、図7(A)に示すように、フィルタボックス38Aのフレーム50の長手方向の一対の側面50c,50dには、案内溝52A,53Aが形成されている。案内溝52Aは、フレーム50の側面50cの上端と下端との間に配置され、フレーム50の背面50bに連通するとともに、フレーム50の下端まで広がる第1溝部(横凹部)52Aaと、第1溝部52Aaに連通し、かつフレーム50の上端に向かって延びるとともに、フレーム50の前面50aまで広がる第2溝部(縦凹部)52Abとを有する。
【0085】
なお、本実施形態では、第1溝部52Aaは、フレーム50の側面50cに対して、凹んで形成された部分であるため、第1溝部52Aaを凹形成部と称し、フレーム50の側面50cの案内溝52A以外の部分520を凸形成部と称することもできる。
さらに、案内溝52Aは、第1溝部52Aaと第2溝部52Abとが連通する位置に形成されて、背面50bに向かって次第に幅が狭くなる第1テーパ部52Acと、第1溝部52Aaの背面50bに連通する部分に形成されて、背面50bに向かって次第に幅が広くなる第2テーパ部52Adとを有する。第1溝部52Aaの上面側のエッジ部50aeと第2溝部52Abの背面50b側のエッジ部50beとは第1テーパ部52Acで接続されている。
【0086】
この場合、図8(B)の側面図で示すように、第1溝部52Aa及び第2溝部52Abの幅は、図2のケーシング28内に設けられている軸部材48Aの直径よりも広く設定されている。なお、フレーム50の他方の側面50dの案内溝53Aの形状は案内溝52Aと対称(または同一)であるため、その説明を省略する。
また、フレーム50の背面50bに横方向に離れて長穴状(フレーム50の厚さ方向に細長い楕円状)の凹部39C,39Dが形成されている。この凹部39C,39Dは、例えば図3のケーシング28の位置決めピン75A,76Aと係合可能である。さらに、フレーム50の底面50eには図3のガスケット54が設けられ、上面50fには図3のカバー部材TF1が設けられる。
【0087】
また、図8(C)に示すように、フィルタボックス40Aのフレーム55の一対の側面55c,55dにも、フレーム50と同様に案内溝(凹凸形成部)52A,53Aが形成されている。また、フレーム55の背面55bに横方向に離れて長穴状(フレーム55の厚さ方向に細長い楕円状)の凹部41C,41Dが形成されている。この凹部41C,41Dの間隔はフレーム50側の凹部39C,39Dの間隔よりも狭く、凹部41C,41Dは、例えば図3のケーシング28の位置決めピン77A,78Aと係合可能である。さらに、フレーム55の底面55eには図3のガスケット54が設けられ、上面55fには図3のカバー部材TF1が設けられる。なお、ガスケット54及びカバー部材TF1は省略可能である。
【0088】
この変形例のフィルタボックス38A,40Aは、上記の実施形態のフィルタボックス38,40と同様に、ケーシング28内に容易に位置決め可能な状態で設置できるとともに、容易に交換できる。さらに、凹部39C,39Dの間隔と凹部41C,41Dの間隔とが異なるため、フィルタボックス38A,40Aの誤挿入を防止できる。
なお、この変形例においても、フレーム50,55には案内溝52A,53Aの一方を設けるのみでもよく、フレーム50,55には凹部39C,39D及び凹部41C,41Dの一方を設けるのみでもよい。
【0089】
また、上記の実施形態及びその変形例では、フレーム50,55の側面に案内溝52,53(又は52A,53A、以下同様。)を直接形成する構成を説明したが、フレーム50とは別の部材に、案内溝52,53を形成した後、その部材をフレーム50の側面に取り付ける構成であっても良い。
また、上記実施形態及びその変形例では、第2溝部52b等がフレーム50,55の上端まで貫通して形成されている例を示したが、第2溝部52b等がフレーム50,55の上端に至る前にとどまっていてもよい(第2溝部の上端が係止部を有する)。こうすることで、使用者がフィルタボックス38,40等の上下方向の装着位置を誤った場合に、第2溝部の上端の係止部の存在により操作者の手に急な負荷がかかることが防止される。
【0090】
また、上記実施形態及びその変形例において、特定の形状の溝及び凹凸形成部を図面により示したが、それらの形状に限定されず、凹凸形成部及び陥没部は任意の形状にし得る。軸部材及び位置決めピンについても、実施形態で示した円柱形状に限らず、四角柱状などの種々の形状の軸部材を使用しうる。
また、上記の変形例では、フレーム50,55の側面50cを凸形成部とした場合、この凸形成部を別部材で形成してもよい。
【0091】
さらに、上記実施形態では、フィルタボックスの使用有無を薄いフィルムの剥離によって識別していたが、この構成に限らず、フィルムに切れ目が入ったかどうかで識別してもよい。
また、上記実施形態において、フィルタボックス38,40を一つずつ、ケーシング28中の適切な位置に装填したが、2個または3個のような複数のフィルタボックスを重ねて同時にケーシング28中に装填してもよい。この場合には、例えば、2個(または3個)のフィルタボックスのうち最も下に位置するフィルタボックスに対してその上に残りのフィルタボックスを予め位置合わせして設置した後、それらのフィルタボックスをケーシング28中に装填すればよい。こうすることで、積み重ねられたフィルタボックスのうち最も下に位置するフィルタボックスだけを、対応する軸部材に係合させてケーシング中の適切な位置に装填すれば、重ね合わせられた全てのフィルタボックスが自動的に位置合わせされることになる。それゆえ、そのような場合には、積み重ねられたフィルタボックスのうち最も下に位置するフィルタボックスに対応する軸部材だけがあれば足り、他の軸部材を設けなくてもよい。例えば、ケーシング28の第1空間28cに3つのフィルタボックス38を重ね合わせて一度に装填する場合には、軸部材48G及び/または49Gだけを設けて、48H,48I,49H,49Iを用いなくてもよい。この場合、中段及び上段のフィルタボックス38のフレーム50の両側面には、第1溝及び第2溝を形成しなくてもよい。
【0092】
本発明を添付の請求の範囲に表したが、それとは別に次のような概念も本願には含まれている。すなわち、本発明のフィルタボックスと、そのフィルタ装置を収容するとともに横凹部、縦凹部、及び第1凹部、第2凹部に係合する部材を有するケーシングまたはチャンバとを備えるフィルタボックスシステムもまた本願で意図している創作概念である。
また、上記の実施形態の露光装置EXを用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図8に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光装置によりマスクのパターンを基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0093】
従って、このデバイス製造方法は、上記の実施形態の露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、そのパターンが形成された基板を処理すること(ステップ224)とを含んでいる。その露光装置によれば、メンテナンスコストを低減でき、露光精度を向上できるため、電子デバイスを安価に高精度に製造できる。
なお、上記の実施形態では、空調用の気体として空気が使用されているが、その代わりに窒素ガス若しくは希ガス(ヘリウム、ネオン等)、又はこれらの気体の混合気体等を使用してもよい。
【0094】
また、本発明は、走査露光型の投影露光装置のみならず、一括露光型(ステッパー型)の投影露光装置を用いて露光する場合にも適用することが可能である。
また、本発明は、投影光学系を使用しないプロキシミティ方式やコンタクト方式の露光装置等で露光を行う際にも適用できる。
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置の製造プロセスや、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスの製造プロセスにも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、製造工程にも適用することができる。
【0095】
このように、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
EX…露光装置、R…レチクル、PL…投影光学系、W…ウエハ、4…露光本体部、10…チャンバ、26…フィルタ装置、28…ケーシング、30…主空調装置、38,40…フィルタボックス、39A,39B,41A,41B…凹部、42A〜42C…仕切り板、48A〜48I,49A〜49I…軸部材48A〜48I、50,55…フレーム、51,56…ケミカルフィルタ、52,53…案内溝、59A,59B…フィルム、60…局所空調装置、70〜72…取っ手部、75A〜78A…位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタを保持するフィルタボックスであって、
前記フィルタを保持するフレームと、
前記フレームの少なくとも一方の側面に形成された凹凸形成部と、
前記フレームの前記凹凸形成部が形成された側面に交差する交差面に設けられた陥没部と、を備え、
前記凹凸形成部は、前記フレームの前記少なくとも一方の側面の上端と下端との間に配置され、かつ前記少なくとも一方の側面のうち前記交差面側の側端に連通する第1凹部と、
前記第1凹部に連通し、かつ前記フレームの上端に向かって延びる第2凹部と、を有することを特徴とするフィルタボックス。
【請求項2】
前記陥没部は、前記フレームの上端に向かって細長く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタボックス。
【請求項3】
前記陥没部は、前記交差面において互いに離れた2箇所に設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルタボックス。
【請求項4】
前記フレームの前記下端側の面に設けられたシール部材と、
前記フレームの前記上端側の面に設けられて、前記シール部材との粘着性が前記フレームよりも低いシート状部材と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項5】
前記フィルタに関して前記フレームの前記交差面とは反対側の面に設けられた取っ手部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項6】
前記第1凹部は、前記フレームの前記下端まで広がって形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項7】
前記第2凹部は、前記少なくとも一方の側面の前記側端と反対側の側端まで広がって形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項8】
前記第1凹部は、前記フレームの側面に形成された第1溝部であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタボックス。
【請求項9】
前記第2凹部は、前記フレームの側面に形成された第2溝部であることを特徴とする請求項1又は請求項8に記載のフィルタボックス。
【請求項10】
前記第1凹部と前記第2凹部とが連通する位置に、前記少なくとも一方の側面の側端に向かって次第に幅が狭くなる第1テーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項11】
前記第1凹部の前記少なくとも一方の側面の側端に連通する部分に、前記少なくとも一方の側面の側端に向かって次第に幅が広くなる第2テーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項12】
前記凹凸形成部は、前記フレームの一対の側面にほぼ同一形状で設けられていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項13】
前記フレームの少なくとも一方の側面の前記第1凹部と前記フレームの上端との間に設けられる第3凹部を有することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項14】
前記フィルタは、前記フィルタを通過する気体中の有機物を除去することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項15】
前記フィルタは、前記フィルタを通過する気体中のアルカリ性物質及び酸性物質の少なくとも一方を除去することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のフィルタボックス。
【請求項16】
フィルタを保持するフィルタボックスを収納するフィルタ装置であって、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のフィルタボックスと、
前記フィルタボックスを収納するケースと、
前記ケースに設けられて、前記フィルタボックスの前記フレームの前記交差面に設けられた前記陥没部に係合する凸の位置決め部材と、
前記ケースの一部に設けられて、前記フィルタボックスの前記フレームの少なくとも一方の側面に形成された前記凹凸形成部に係合する案内部材と、
を備えることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項17】
露光光でパターンを介して基板を露光する露光装置において、
前記基板を露光する露光本体部を収納するチャンバと、
請求項16に記載のフィルタ装置と、
前記チャンバの外部から取り込まれた気体を前記フィルタ装置を介して前記チャンバ内に送風する空調装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項18】
請求項17に記載の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、
前記露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−238682(P2012−238682A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105906(P2011−105906)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】