フィルタ素子
【課題】広い帯域で良好なノイズ減衰効果を実現し得るコモンモード型のフィルタ素子を提供する。
【解決手段】帯状絶縁体5の一面に帯状導電体6を配設した帯状体7が複数積層された積層体8を所定方向に巻回して筒状に形成されたコイル部2と、積層体8を所定方向とは逆方向に巻回して筒状に形成されたコイル部3とを備え、両コイル部2,3は、筒状に形成された状態における内周部に位置する所定部位において各々の帯状導電体6が互いに接続されると共に、各々の帯状導電体6のうちの筒状に形成された状態における最外周に位置する帯状導電体6が接地用の帯状導電体6として機能し、かつ接地用の帯状導電体6を除く他の帯状導電体6のうちの帯状絶縁体5を挟んで隣接する複数の帯状導電体6が信号用の帯状導電体6として機能するように構成されている。
【解決手段】帯状絶縁体5の一面に帯状導電体6を配設した帯状体7が複数積層された積層体8を所定方向に巻回して筒状に形成されたコイル部2と、積層体8を所定方向とは逆方向に巻回して筒状に形成されたコイル部3とを備え、両コイル部2,3は、筒状に形成された状態における内周部に位置する所定部位において各々の帯状導電体6が互いに接続されると共に、各々の帯状導電体6のうちの筒状に形成された状態における最外周に位置する帯状導電体6が接地用の帯状導電体6として機能し、かつ接地用の帯状導電体6を除く他の帯状導電体6のうちの帯状絶縁体5を挟んで隣接する複数の帯状導電体6が信号用の帯状導電体6として機能するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状絶縁体の一面に帯状導電体を配設した帯状体が複数積層された積層体を巻回して形成された第1のコイル部および第2のコイル部を備えたフィルタ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルタ素子として、特許第3125179号公報において開示されたフィルタ素子が知られている。このフィルタ素子は、外縁が絶縁され、かつ断面が長方形状の絶縁平角導電線の複数を重ね合わせたものを渦巻き状に巻回して1層目のコイル体(第1のコイル部)および2層目のコイル体(第2のコイル部)を形成し、1層目のコイル体の最も中心側の絶縁平角導電線が2層目のコイル体(第2のコイル部)の最も中心側の絶縁平角導電線に繋がるようにして2層コイルとして構成されている。この場合、複数の絶縁平角導電線の少なくとも2本が通電導体(通常は、信号用導電体および接地用導電体)として使用される。このフィルタ素子では、2層コイルとして構成したことにより、一層当たりの巻回数を少なくしたとしても、インダクタンスとキャパシタンスとを十分に大きくすることができるため、良好なノイズ減衰効果を広い帯域で得ることが可能となっている。また、このフィルタ素子では、各層のコイル体における絶縁平角導電線の先端が最も外周から繰り出されるため、リード端子の取付けなどの作業を容易に行える結果、量産性を向上させることが可能となっている。
【特許文献1】特許第3125179号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の従来のフィルタ素子には、次のような課題が存在する。すなわち、このフィルタ素子では、2つのコイル体を備えた2層コイルに構成し、複数の絶縁平角導電線のうちの少なくとも2本を通電導体として使用することで、良好なノイズ減衰効果を広い帯域で得ることを可能としている。ここで、例えば、このフィルタ素子における複数の絶縁平角導電線のうちの1本を接地用導電体として使用すると共に2本を信号用導電体として使用して、このフィルタ素子を5端子型ノイズフィルタ(コモンモードフィルタ)として用いたときには、各絶縁平角導電線のうちのいずれを接地用導電体として使用するかによって特性が異なることを、発明者は実験結果から見出している。しかしながら、上記のフィルタ素子では、各絶縁平角導電線のうちのどの絶縁平角導電線を接地用導電体として使用すべきかが明確に示されていないため、このフィルタ素子を5端子型ノイズフィルタとして用いたときに良好なノイズ減衰効果を得ることができる構成が不明確であり、この点の明確化が求められている。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、広い帯域で良好なノイズ減衰効果を実現し得るコモンモード型のフィルタ素子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載のフィルタ素子は、帯状絶縁体の一面に帯状導電体を配設した帯状体が複数積層された積層体を所定方向に巻回して筒状に形成された第1のコイル部と、前記積層体を前記所定方向とは逆方向に巻回して筒状に形成された第2のコイル部とを備えたフィルタ素子であって、前記第1のコイル部および前記第2のコイル部は、前記筒状に形成された状態における内周部に位置する所定部位において各々の前記各帯状導電体が互いに接続されると共に、各々の前記各帯状導電体のうちの前記筒状に形成された状態における最外周に位置する帯状導電体が接地用の帯状導電体として機能し、かつ前記接地用の帯状導電体を除く他の前記帯状導電体のうちの前記帯状絶縁体を挟んで隣接する複数の帯状導電体が信号用の帯状導電体として機能するように構成されている。
【0006】
また、請求項2記載のフィルタ素子は、請求項1記載のフィルタ素子において、前記第1のコイル部は、前記積層体における一端側の半分を当該積層体における他端側の半分との境界部位を中心とし所定方向に巻回して形成され、前記第2のコイル部は、前記当該積層体における前記他端側の半分を前記境界部位を中心として前記所定方向とは逆方向に巻回して形成されている。
【0007】
また、請求項3記載のフィルタ素子は、請求項1または2記載のフィルタ素子において、前記第1のコイル部および前記第2のコイル部における各々の中心軸を通る仮想平面によって区画される当該両コイル部における2つの区画部位の一方において前記接地用の帯状導電体に接地線が接続され、前記2つの区画部位の他方において前記信号用の帯状導電体に入力線および出力線が接続されている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のフィルタ素子によれば、筒状に形成された状態における最外周に位置する帯状導電体が接地用の帯状導電体として機能し、かつ接地用の帯状導電体を除く他の帯状導電体のうちの帯状絶縁体を挟んで隣接する複数の帯状導電体が信号用の帯状導電体として機能するように第1のコイル部および第2のコイル部を構成したことにより、最外周に位置する帯状導電体を信号用の帯状導電体として機能させる構成、つまり最外周に位置する帯状導電体を接地用の帯状導電体として機能させない構成と比較して、より広い帯域において良好なノイズ減衰効果を実現することができる。
【0009】
また、請求項2記載のフィルタ素子によれば、積層体における一端側の半分を他端側の半分との境界部位を中心とし所定方向に巻回して第1のコイル部を形成すると共に、積層体における他端側の半分を境界部位を中心として所定方向とは逆方向に巻回して第2のコイル部を形成したことにより、例えば、2つの積層体をそれぞれ巻回して第1のコイル部および第2のコイル部を別個に形成した後に両コイル部における各帯状導電体をその中心部で接続する構成とは異なり、各帯状導電体の接続作業を省略できる分、生産効率を十分に向上させることができる。
【0010】
また、請求項3記載のフィルタ素子によれば、中心軸を通る仮想平面によって区画される第1のコイル部および第2のコイル部における2つの区画部位の一方において接地用の帯状導電体に接地線を接続し、2つの区画部位の他方において信号用の帯状導電体に入力線および出力線を接続したことにより、例えば、接地線、入力線および出力線の全てを2つの区画部位の一方または他方において帯状導電体に接続する構成と比較して、高周波数帯域におけるノイズ減衰量を十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフィルタ素子について説明する。
【0012】
最初に、フィルタ素子1について、図面を参照して説明する。
【0013】
フィルタ素子1は、図1に示すように、第1のコイル部2(以下、「コイル部2」ともいう)、第2のコイル部3(以下、「コイル部3」ともいう)、および磁性体(一例として柱状(同図では円柱状)の磁性コア)4を備え、分布定数型の5端子ノイズフィルタノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)に構成されている。
【0014】
コイル部2,3は、図1に示すように、帯状絶縁体5および帯状導電体6を有する帯状体7を3枚(本発明における複数の一例)積層した積層体8(図2も参照)を巻回してそれぞれ形成されている。帯状絶縁体5は、一例として、誘電性および電気的絶縁性を有する材料を用いて、図2に示すように、帯状に形成されている。帯状導電体6は、一例として、導電性を有する材料を用いて、同図に示すように、帯状絶縁体5よりもやや幅狭で、帯状絶縁体5よりもやや短い長さの帯状に形成されると共に、帯状絶縁体5の一面に配設(貼付)されている。この場合、例えば、表面に各帯状導電体6として機能する導体パターンがパターンニングされたフレキシブル基板を3枚積層して積層体8を構成することもできる。
【0015】
コイル部2は、図2,3に示すように、積層体8をその中心部位A(本発明における一端側の半分と他端側の半分との境界部位)で1ターンだけ捻り(または折り曲げ)、この積層体8の一端側の半分(図2では、一例として中心部位Aを基準とした左端側の半分)を中心部位Aを中心として矢印B方向(図3では反時計方向)に巻回することにより、図1に示すように、筒状に形成されている。
【0016】
この場合、積層体8における各帯状導電体6のうちの、コイル部2を形成した状態において最外周に位置する帯状導電体6(以下、この帯状導電体6を「帯状導電体6a」ともいう)は、接地用の帯状導電体6として機能し、この帯状導電体6aには、図1に示すように、接地線11が接続される。また、積層体8における帯状導電体6aを除く他の帯状導電体6のうちの帯状絶縁体5を挟んで隣接する2つの帯状導電体6(以下、これらの帯状導電体6をそれぞれ「帯状導電体6b,6c」ともいう)は、信号用の帯状導電体6としてそれぞれ機能し、各帯状導電体6b,6cには、同図に示すように、入力線12がそれぞれ接続される。ここで、接地線11の接続位置は、図4に示すように、コイル部2の中心軸Oを通る仮想平面Lによって仮想的に区画される2つの区画部位(以下、この2つの区画部位をそれぞれ「半体P1,P2」ともいう)の一方(この場合、半体P1)における外周側部位に規定されている。また、入力線12の接続位置は、半体P1,P2の他方(この場合、半体P2)における外周側部位に規定されている。
【0017】
コイル部3は、図2,3に示すように、積層体8の他端側の半分(図2では、一例として中心部位Aを基準とした右端側の半分)を中心部位Aを中心としてコイル部2の巻回方向(矢印B方向)とは逆方向の矢印C方向(図3では時計方向)に巻回することにより、図1に示すように、コイル部2とほぼ同一径の筒状に形成されている。また、コイル部3は、例えば、プリント基板に取り付けられた状態では、図1,3に示すように、コイル部2の側方(図1における右側、図3では下側)において、コイル部2,3の中心軸Oが一致(またはほぼ一致)するようにして並設される。したがって、各コイル部2,3の中心部に形成されている各空隙Hが互いに連通した状態にあり、この各空隙Hに磁性コア4が装着(挿通)されている。
【0018】
この場合、このフィルタ素子1では、上記したように、1つの連続した積層体8における一端側の半分および他端側の半分をそれぞれ巻回してコイル部2,3が形成されている。このため、コイル部2,3は、各々の中心部(本発明における内周部に位置する所定部位)において各帯状導電体6が互いに1対1で接続される構成となっている。また、このフィルタ素子1では、積層体8を中心部位Aで1ターンだけ捻ると共に、コイル部2の巻回方向とは逆方向に巻回してコイル部3を形成されている。このため、コイル部3を形成した状態において、積層体8の帯状導電体6aは、図1に示すように、コイル部3の最外周に位置し、帯状導電体6b,6cは、帯状導電体6aの内側(内周側)に位置している。また、各帯状導電体6b,6cには、同図に示すように、出力線13がそれぞれ接続される。ここで、出力線13の接続位置は、図4に示すように、上記の仮想平面Lによって仮想的に区画されるコイル部3における2つの区画部位(以下、この2つの区画部位をそれぞれ「半体P3,P4」ともいう)のうちの、コイル部2の半体P2に隣接する一方(この場合、半体P4)における外周側部位に規定されている。
【0019】
このフィルタ素子1では、接地線11、入力線12および出力線13と帯状導電体6との接続位置が、コイル部2またはコイル部3の外周側部位にそれぞれ規定されている。このため、各線11,12,13と帯状導電体6との接続作業を容易に行える結果、生産効率の向上が可能となっている。また、このフィルタ素子1では、各々の中心部において各帯状導電体6が互いに接続された2つのコイル部2,3を備えている。このため、一層当たりの巻回数を少なくしたとしても、インダクタンスとキャパシタンスとを十分に大きくすることが可能となっている。さらに、このフィルタ素子1では、1つの連続した積層体8を用いてコイル部2,3を形成することで、コイル部2,3における各々の中心部において各帯状導電体6が互いに接続された構成を実現している。したがって、このフィルタ素子1では、例えば、2つの積層体をそれぞれ巻回してコイル部2,3を別個に形成した後に、両コイル部2,3における各帯状導電体6をその中心部で接続する構成とは異なり、各帯状導電体6の接続作業を省略できる分、生産効率の一層の向上が可能となっている。
【0020】
なお、発明者は、フィルタ素子1の特性を検証するため、次のような実験を行った。この実験では、まず、実験対象としてのフィルタ素子1を作製すると共に、比較用のフィルタ素子(以下、このフィルタ素子を「フィルタ素子101」ともいう)を作製した。この場合、このフィルタ素子1では、各コイル部2,3における積層体8の巻回数を15ターンとし、各々の中心軸Oが一致するように両コイル部2,3を並設させた状態で各空隙Hに磁性コア4を装着した構成(15ターン×2の構成)とした。一方、フィルタ素子101では、積層体8における3つの帯状導電体6のうちの、コイル部2,3を形成した状態における最外周から2番目に位置する帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させるために、この帯状導電体6に接地線11を接続した。また、このフィルタ素子101では、接地用として機能させた帯状導電体6を除く他の2つの帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させるために、入力線12および出力線13をそれぞれ接続した。さらに、このフィルタ素子101では、フィルタ素子1と同様にして、コイル部2,3の空隙Hに磁性コア4を装着した15ターン×2の構成とした。次いで、ネットワークアナライザを用いて、実験対象のフィルタ素子1および比較対象のフィルタ素子101に対して4ポート平衡測定を行い、両フィルタ素子1,101についてのノイズ減衰量の周波数特性を測定した。この結果、図5に示すように、このフィルタ素子1では、フィルタ素子101と比較して、400kHz〜36MHzの周波数帯域におけるノイズ減衰量が最大で30dB程度向上するのが明らかである。次に、他の比較用のフィルタ素子(以下、このフィルタ素子を「フィルタ素子102」ともいう)を作製した。この場合、フィルタ素子102では、コイル部2における半体P1の外周側部位において接地線11および入力線12を帯状導電体6に接続し、コイル部3における半体P3の外周側部位において出力線13を帯状導電体6に接続した。また、このフィルタ素子102では、フィルタ素子1と同様にして、コイル部2,3の空隙Hに磁性コア4を装着した15ターン×2の構成とした。次いで、ネットワークアナライザを用いて、実験対象のフィルタ素子1および比較対象のフィルタ素子102に対して4ポート平衡測定を行い、両フィルタ素子1,102についてのノイズ減衰量の周波数特性を測定した。この結果、図6に示すように、このフィルタ素子1では、フィルタ素子102と比較して、400kHz〜36MHzの周波数帯域におけるノイズ減衰量が最大で25dB程度向上するのが明らかである。
【0021】
このように、このフィルタ素子1によれば、積層体8における各帯状導電体6のうちの、コイル部2,3を形成した状態において最外周に位置する帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させると共に、この帯状導電体6を除く他の帯状導電体6のうちの帯状絶縁体5を挟んで隣接する2つの帯状導電体6を信号用の帯状導電体6としてそれぞれ機能させることにより、最外周に位置する帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させる構成、つまり最外周に位置する帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させない構成と比較して、より広い帯域において良好なノイズ減衰効果を実現することができる。
【0022】
また、このフィルタ素子1によれば、積層体8における一端側の半分を中心部位Aを中心とし所定方向に巻回してコイル部2を形成すると共に、積層体8における他端側の半分を中心部位Aを中心として所定方向とは逆方向に巻回してコイル部3を形成したことにより、例えば、2つの積層体をそれぞれ巻回してコイル部2,3を別個に形成した後に両コイル部2,3における各帯状導電体6をその中心部で接続する構成とは異なり、各帯状導電体6の接続作業を省略できる分、生産効率を十分に向上させることができる。
【0023】
また、中心軸Oを通る仮想平面Lによって区画されるコイル部2における2つの半体P1,P2のうちの半体P1において接地用の帯状導電体6に接地線11を接続し、半体P1,P2のうちの半体P2において信号用の帯状導電体6に入力線12を接続し、仮想平面Lによって区画されるコイル部3における2つの半体P3,P4のうちの半体P2に隣接する半体P4において信号用の帯状導電体6に出力線13を接続したことにより、例えば、接地線11および入力線12の全てを半体P1において帯状導電体6に接続し、半体P1に隣接する半体P3において出力線13を帯状導電体6に接続する構成と比較して、高周波数帯域におけるノイズ減衰量を十分に向上させることができる。
【0024】
なお、本発明は、上記した構成に限定されない。例えば、上記の構成では、1つの積層体8を用いてコイル部2,3を形成した例について上記したが、図7に示すように、2つの積層体81,82を用いて2つのコイル部を別個に形成し、これら2つのコイル部の中心部位において各々の帯状導電体6同士を1対1で接続したフィルタ素子に本発明を適用することもできる。
【0025】
また、3枚の帯状体7を積層した積層体8を用いてコイル部2,3を形成した例について上記したが、4枚以上の帯状体7を積層した積層体8(一例として、図8〜図11に示す積層体83〜86)を用いてコイル部2,3を形成することもできる。この場合、図8に示すように、積層体83を巻回してコイル部2,3を形成した状態における最外周に位置する帯状導電体6を含む2つの帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させたり、図9,10に示すように、最外周に位置する帯状導電体6を含む3つの帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させることができる。また、図11に示すように、最外周に位置する帯状導電体6を含む3つの帯状導電体6と、内周側に位置する2つの帯状導電体6とを接地用の帯状導電体6として機能させることもできる。つまり、積層体8を巻回してコイル部2,3を形成した状態における最外周に位置する帯状導電体6を含む任意の複数の帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させることができる。
【0026】
また、図9,11に示すように、帯状絶縁体5を挟んで隣接する3つの帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させたり、図10に示すように、帯状絶縁体5を挟んで隣接する5つの帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させることができる。つまり、帯状絶縁体5を挟んで隣接している限り、任意の数の帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させることができる。また、帯状絶縁体5の一面に1つの帯状導電体6を配設した例について上記したが、図12に示すように、帯状絶縁体5の一面における幅方向に沿った2つの領域に2つの帯状導電体41,42を互いに離間させてそれぞれ配設(並設)した帯状体7Aを積層して積層体87を構成し、その積層体87を巻回して形成したコイル部2A,3Aを備えたフィルタ素子1Aに本発明を適用することもできる。
【0027】
また、各フィルタ素子1を単体で用いる例について上記したが、これに限定されない。例えば、図13に示すように、各々の空隙Hが連通した状態で上記のフィルタ素子1を複数個並設すると共に1つの磁性コア4を各空隙Hに装着して、図示しない接続線を用いて各フィルタ素子1を直列に接続して用いることもできる。この構成によれば、フィルタ素子1を単体で用いる構成と比較して、コモンモードノイズを一層大きく減衰させることができる。なお、図示はしないが、フィルタ素子1Aについてもフィルタ素子1と同様にして複数個を直列に接続することにより、コモンモードノイズを一層大きく減衰させることができる。また、上記の各フィルタ素子1では、2つの帯状導電体6b,6cを信号用の帯状導電体6として用いることにより、各フィルタ素子1をコモンモード用のノイズフィルタに構成しているが、帯状導電体6b,6cのうちのいずれか一方のみを用いることにより、ノーマルモード用のノイズフィルタに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】積層体8の両端部を巻き解いた状態のフィルタ素子1の斜視図である。
【図2】積層体8の構成を示す斜視図である。
【図3】各コイル部2,3を形成する方法を説明するための説明図である。
【図4】フィルタ素子1をコイル部2の端面側から見た平面図である。
【図5】フィルタ素子1,101のノイズ減衰特性を示すノイズ減衰特性図である。
【図6】フィルタ素子1,102のノイズ減衰特性を示すノイズ減衰特性図である。
【図7】積層体81,82の構成を示す斜視図である。
【図8】積層体83の構成を示す断面図である。
【図9】積層体84の構成を示す断面図である。
【図10】積層体85の構成を示す断面図である。
【図11】積層体86の構成を示す断面図である。
【図12】フィルタ素子1Aの構成を示す斜視図である。
【図13】3個のフィルタ素子1を直列に接続した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1,1A フィルタ素子
2,2A コイル部
3,3A コイル部
5 帯状絶縁体
6,6a,6b,6c,41,42 帯状導電体
7,7A 帯状体
8,81〜87 積層体
11 接地線
12 入力線
13 出力線
A 中心部位
B 矢印
C 矢印
L 仮想平面
O 中心軸
P1〜P4 半体
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状絶縁体の一面に帯状導電体を配設した帯状体が複数積層された積層体を巻回して形成された第1のコイル部および第2のコイル部を備えたフィルタ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルタ素子として、特許第3125179号公報において開示されたフィルタ素子が知られている。このフィルタ素子は、外縁が絶縁され、かつ断面が長方形状の絶縁平角導電線の複数を重ね合わせたものを渦巻き状に巻回して1層目のコイル体(第1のコイル部)および2層目のコイル体(第2のコイル部)を形成し、1層目のコイル体の最も中心側の絶縁平角導電線が2層目のコイル体(第2のコイル部)の最も中心側の絶縁平角導電線に繋がるようにして2層コイルとして構成されている。この場合、複数の絶縁平角導電線の少なくとも2本が通電導体(通常は、信号用導電体および接地用導電体)として使用される。このフィルタ素子では、2層コイルとして構成したことにより、一層当たりの巻回数を少なくしたとしても、インダクタンスとキャパシタンスとを十分に大きくすることができるため、良好なノイズ減衰効果を広い帯域で得ることが可能となっている。また、このフィルタ素子では、各層のコイル体における絶縁平角導電線の先端が最も外周から繰り出されるため、リード端子の取付けなどの作業を容易に行える結果、量産性を向上させることが可能となっている。
【特許文献1】特許第3125179号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の従来のフィルタ素子には、次のような課題が存在する。すなわち、このフィルタ素子では、2つのコイル体を備えた2層コイルに構成し、複数の絶縁平角導電線のうちの少なくとも2本を通電導体として使用することで、良好なノイズ減衰効果を広い帯域で得ることを可能としている。ここで、例えば、このフィルタ素子における複数の絶縁平角導電線のうちの1本を接地用導電体として使用すると共に2本を信号用導電体として使用して、このフィルタ素子を5端子型ノイズフィルタ(コモンモードフィルタ)として用いたときには、各絶縁平角導電線のうちのいずれを接地用導電体として使用するかによって特性が異なることを、発明者は実験結果から見出している。しかしながら、上記のフィルタ素子では、各絶縁平角導電線のうちのどの絶縁平角導電線を接地用導電体として使用すべきかが明確に示されていないため、このフィルタ素子を5端子型ノイズフィルタとして用いたときに良好なノイズ減衰効果を得ることができる構成が不明確であり、この点の明確化が求められている。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、広い帯域で良好なノイズ減衰効果を実現し得るコモンモード型のフィルタ素子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載のフィルタ素子は、帯状絶縁体の一面に帯状導電体を配設した帯状体が複数積層された積層体を所定方向に巻回して筒状に形成された第1のコイル部と、前記積層体を前記所定方向とは逆方向に巻回して筒状に形成された第2のコイル部とを備えたフィルタ素子であって、前記第1のコイル部および前記第2のコイル部は、前記筒状に形成された状態における内周部に位置する所定部位において各々の前記各帯状導電体が互いに接続されると共に、各々の前記各帯状導電体のうちの前記筒状に形成された状態における最外周に位置する帯状導電体が接地用の帯状導電体として機能し、かつ前記接地用の帯状導電体を除く他の前記帯状導電体のうちの前記帯状絶縁体を挟んで隣接する複数の帯状導電体が信号用の帯状導電体として機能するように構成されている。
【0006】
また、請求項2記載のフィルタ素子は、請求項1記載のフィルタ素子において、前記第1のコイル部は、前記積層体における一端側の半分を当該積層体における他端側の半分との境界部位を中心とし所定方向に巻回して形成され、前記第2のコイル部は、前記当該積層体における前記他端側の半分を前記境界部位を中心として前記所定方向とは逆方向に巻回して形成されている。
【0007】
また、請求項3記載のフィルタ素子は、請求項1または2記載のフィルタ素子において、前記第1のコイル部および前記第2のコイル部における各々の中心軸を通る仮想平面によって区画される当該両コイル部における2つの区画部位の一方において前記接地用の帯状導電体に接地線が接続され、前記2つの区画部位の他方において前記信号用の帯状導電体に入力線および出力線が接続されている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のフィルタ素子によれば、筒状に形成された状態における最外周に位置する帯状導電体が接地用の帯状導電体として機能し、かつ接地用の帯状導電体を除く他の帯状導電体のうちの帯状絶縁体を挟んで隣接する複数の帯状導電体が信号用の帯状導電体として機能するように第1のコイル部および第2のコイル部を構成したことにより、最外周に位置する帯状導電体を信号用の帯状導電体として機能させる構成、つまり最外周に位置する帯状導電体を接地用の帯状導電体として機能させない構成と比較して、より広い帯域において良好なノイズ減衰効果を実現することができる。
【0009】
また、請求項2記載のフィルタ素子によれば、積層体における一端側の半分を他端側の半分との境界部位を中心とし所定方向に巻回して第1のコイル部を形成すると共に、積層体における他端側の半分を境界部位を中心として所定方向とは逆方向に巻回して第2のコイル部を形成したことにより、例えば、2つの積層体をそれぞれ巻回して第1のコイル部および第2のコイル部を別個に形成した後に両コイル部における各帯状導電体をその中心部で接続する構成とは異なり、各帯状導電体の接続作業を省略できる分、生産効率を十分に向上させることができる。
【0010】
また、請求項3記載のフィルタ素子によれば、中心軸を通る仮想平面によって区画される第1のコイル部および第2のコイル部における2つの区画部位の一方において接地用の帯状導電体に接地線を接続し、2つの区画部位の他方において信号用の帯状導電体に入力線および出力線を接続したことにより、例えば、接地線、入力線および出力線の全てを2つの区画部位の一方または他方において帯状導電体に接続する構成と比較して、高周波数帯域におけるノイズ減衰量を十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフィルタ素子について説明する。
【0012】
最初に、フィルタ素子1について、図面を参照して説明する。
【0013】
フィルタ素子1は、図1に示すように、第1のコイル部2(以下、「コイル部2」ともいう)、第2のコイル部3(以下、「コイル部3」ともいう)、および磁性体(一例として柱状(同図では円柱状)の磁性コア)4を備え、分布定数型の5端子ノイズフィルタノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)に構成されている。
【0014】
コイル部2,3は、図1に示すように、帯状絶縁体5および帯状導電体6を有する帯状体7を3枚(本発明における複数の一例)積層した積層体8(図2も参照)を巻回してそれぞれ形成されている。帯状絶縁体5は、一例として、誘電性および電気的絶縁性を有する材料を用いて、図2に示すように、帯状に形成されている。帯状導電体6は、一例として、導電性を有する材料を用いて、同図に示すように、帯状絶縁体5よりもやや幅狭で、帯状絶縁体5よりもやや短い長さの帯状に形成されると共に、帯状絶縁体5の一面に配設(貼付)されている。この場合、例えば、表面に各帯状導電体6として機能する導体パターンがパターンニングされたフレキシブル基板を3枚積層して積層体8を構成することもできる。
【0015】
コイル部2は、図2,3に示すように、積層体8をその中心部位A(本発明における一端側の半分と他端側の半分との境界部位)で1ターンだけ捻り(または折り曲げ)、この積層体8の一端側の半分(図2では、一例として中心部位Aを基準とした左端側の半分)を中心部位Aを中心として矢印B方向(図3では反時計方向)に巻回することにより、図1に示すように、筒状に形成されている。
【0016】
この場合、積層体8における各帯状導電体6のうちの、コイル部2を形成した状態において最外周に位置する帯状導電体6(以下、この帯状導電体6を「帯状導電体6a」ともいう)は、接地用の帯状導電体6として機能し、この帯状導電体6aには、図1に示すように、接地線11が接続される。また、積層体8における帯状導電体6aを除く他の帯状導電体6のうちの帯状絶縁体5を挟んで隣接する2つの帯状導電体6(以下、これらの帯状導電体6をそれぞれ「帯状導電体6b,6c」ともいう)は、信号用の帯状導電体6としてそれぞれ機能し、各帯状導電体6b,6cには、同図に示すように、入力線12がそれぞれ接続される。ここで、接地線11の接続位置は、図4に示すように、コイル部2の中心軸Oを通る仮想平面Lによって仮想的に区画される2つの区画部位(以下、この2つの区画部位をそれぞれ「半体P1,P2」ともいう)の一方(この場合、半体P1)における外周側部位に規定されている。また、入力線12の接続位置は、半体P1,P2の他方(この場合、半体P2)における外周側部位に規定されている。
【0017】
コイル部3は、図2,3に示すように、積層体8の他端側の半分(図2では、一例として中心部位Aを基準とした右端側の半分)を中心部位Aを中心としてコイル部2の巻回方向(矢印B方向)とは逆方向の矢印C方向(図3では時計方向)に巻回することにより、図1に示すように、コイル部2とほぼ同一径の筒状に形成されている。また、コイル部3は、例えば、プリント基板に取り付けられた状態では、図1,3に示すように、コイル部2の側方(図1における右側、図3では下側)において、コイル部2,3の中心軸Oが一致(またはほぼ一致)するようにして並設される。したがって、各コイル部2,3の中心部に形成されている各空隙Hが互いに連通した状態にあり、この各空隙Hに磁性コア4が装着(挿通)されている。
【0018】
この場合、このフィルタ素子1では、上記したように、1つの連続した積層体8における一端側の半分および他端側の半分をそれぞれ巻回してコイル部2,3が形成されている。このため、コイル部2,3は、各々の中心部(本発明における内周部に位置する所定部位)において各帯状導電体6が互いに1対1で接続される構成となっている。また、このフィルタ素子1では、積層体8を中心部位Aで1ターンだけ捻ると共に、コイル部2の巻回方向とは逆方向に巻回してコイル部3を形成されている。このため、コイル部3を形成した状態において、積層体8の帯状導電体6aは、図1に示すように、コイル部3の最外周に位置し、帯状導電体6b,6cは、帯状導電体6aの内側(内周側)に位置している。また、各帯状導電体6b,6cには、同図に示すように、出力線13がそれぞれ接続される。ここで、出力線13の接続位置は、図4に示すように、上記の仮想平面Lによって仮想的に区画されるコイル部3における2つの区画部位(以下、この2つの区画部位をそれぞれ「半体P3,P4」ともいう)のうちの、コイル部2の半体P2に隣接する一方(この場合、半体P4)における外周側部位に規定されている。
【0019】
このフィルタ素子1では、接地線11、入力線12および出力線13と帯状導電体6との接続位置が、コイル部2またはコイル部3の外周側部位にそれぞれ規定されている。このため、各線11,12,13と帯状導電体6との接続作業を容易に行える結果、生産効率の向上が可能となっている。また、このフィルタ素子1では、各々の中心部において各帯状導電体6が互いに接続された2つのコイル部2,3を備えている。このため、一層当たりの巻回数を少なくしたとしても、インダクタンスとキャパシタンスとを十分に大きくすることが可能となっている。さらに、このフィルタ素子1では、1つの連続した積層体8を用いてコイル部2,3を形成することで、コイル部2,3における各々の中心部において各帯状導電体6が互いに接続された構成を実現している。したがって、このフィルタ素子1では、例えば、2つの積層体をそれぞれ巻回してコイル部2,3を別個に形成した後に、両コイル部2,3における各帯状導電体6をその中心部で接続する構成とは異なり、各帯状導電体6の接続作業を省略できる分、生産効率の一層の向上が可能となっている。
【0020】
なお、発明者は、フィルタ素子1の特性を検証するため、次のような実験を行った。この実験では、まず、実験対象としてのフィルタ素子1を作製すると共に、比較用のフィルタ素子(以下、このフィルタ素子を「フィルタ素子101」ともいう)を作製した。この場合、このフィルタ素子1では、各コイル部2,3における積層体8の巻回数を15ターンとし、各々の中心軸Oが一致するように両コイル部2,3を並設させた状態で各空隙Hに磁性コア4を装着した構成(15ターン×2の構成)とした。一方、フィルタ素子101では、積層体8における3つの帯状導電体6のうちの、コイル部2,3を形成した状態における最外周から2番目に位置する帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させるために、この帯状導電体6に接地線11を接続した。また、このフィルタ素子101では、接地用として機能させた帯状導電体6を除く他の2つの帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させるために、入力線12および出力線13をそれぞれ接続した。さらに、このフィルタ素子101では、フィルタ素子1と同様にして、コイル部2,3の空隙Hに磁性コア4を装着した15ターン×2の構成とした。次いで、ネットワークアナライザを用いて、実験対象のフィルタ素子1および比較対象のフィルタ素子101に対して4ポート平衡測定を行い、両フィルタ素子1,101についてのノイズ減衰量の周波数特性を測定した。この結果、図5に示すように、このフィルタ素子1では、フィルタ素子101と比較して、400kHz〜36MHzの周波数帯域におけるノイズ減衰量が最大で30dB程度向上するのが明らかである。次に、他の比較用のフィルタ素子(以下、このフィルタ素子を「フィルタ素子102」ともいう)を作製した。この場合、フィルタ素子102では、コイル部2における半体P1の外周側部位において接地線11および入力線12を帯状導電体6に接続し、コイル部3における半体P3の外周側部位において出力線13を帯状導電体6に接続した。また、このフィルタ素子102では、フィルタ素子1と同様にして、コイル部2,3の空隙Hに磁性コア4を装着した15ターン×2の構成とした。次いで、ネットワークアナライザを用いて、実験対象のフィルタ素子1および比較対象のフィルタ素子102に対して4ポート平衡測定を行い、両フィルタ素子1,102についてのノイズ減衰量の周波数特性を測定した。この結果、図6に示すように、このフィルタ素子1では、フィルタ素子102と比較して、400kHz〜36MHzの周波数帯域におけるノイズ減衰量が最大で25dB程度向上するのが明らかである。
【0021】
このように、このフィルタ素子1によれば、積層体8における各帯状導電体6のうちの、コイル部2,3を形成した状態において最外周に位置する帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させると共に、この帯状導電体6を除く他の帯状導電体6のうちの帯状絶縁体5を挟んで隣接する2つの帯状導電体6を信号用の帯状導電体6としてそれぞれ機能させることにより、最外周に位置する帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させる構成、つまり最外周に位置する帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させない構成と比較して、より広い帯域において良好なノイズ減衰効果を実現することができる。
【0022】
また、このフィルタ素子1によれば、積層体8における一端側の半分を中心部位Aを中心とし所定方向に巻回してコイル部2を形成すると共に、積層体8における他端側の半分を中心部位Aを中心として所定方向とは逆方向に巻回してコイル部3を形成したことにより、例えば、2つの積層体をそれぞれ巻回してコイル部2,3を別個に形成した後に両コイル部2,3における各帯状導電体6をその中心部で接続する構成とは異なり、各帯状導電体6の接続作業を省略できる分、生産効率を十分に向上させることができる。
【0023】
また、中心軸Oを通る仮想平面Lによって区画されるコイル部2における2つの半体P1,P2のうちの半体P1において接地用の帯状導電体6に接地線11を接続し、半体P1,P2のうちの半体P2において信号用の帯状導電体6に入力線12を接続し、仮想平面Lによって区画されるコイル部3における2つの半体P3,P4のうちの半体P2に隣接する半体P4において信号用の帯状導電体6に出力線13を接続したことにより、例えば、接地線11および入力線12の全てを半体P1において帯状導電体6に接続し、半体P1に隣接する半体P3において出力線13を帯状導電体6に接続する構成と比較して、高周波数帯域におけるノイズ減衰量を十分に向上させることができる。
【0024】
なお、本発明は、上記した構成に限定されない。例えば、上記の構成では、1つの積層体8を用いてコイル部2,3を形成した例について上記したが、図7に示すように、2つの積層体81,82を用いて2つのコイル部を別個に形成し、これら2つのコイル部の中心部位において各々の帯状導電体6同士を1対1で接続したフィルタ素子に本発明を適用することもできる。
【0025】
また、3枚の帯状体7を積層した積層体8を用いてコイル部2,3を形成した例について上記したが、4枚以上の帯状体7を積層した積層体8(一例として、図8〜図11に示す積層体83〜86)を用いてコイル部2,3を形成することもできる。この場合、図8に示すように、積層体83を巻回してコイル部2,3を形成した状態における最外周に位置する帯状導電体6を含む2つの帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させたり、図9,10に示すように、最外周に位置する帯状導電体6を含む3つの帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させることができる。また、図11に示すように、最外周に位置する帯状導電体6を含む3つの帯状導電体6と、内周側に位置する2つの帯状導電体6とを接地用の帯状導電体6として機能させることもできる。つまり、積層体8を巻回してコイル部2,3を形成した状態における最外周に位置する帯状導電体6を含む任意の複数の帯状導電体6を接地用の帯状導電体6として機能させることができる。
【0026】
また、図9,11に示すように、帯状絶縁体5を挟んで隣接する3つの帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させたり、図10に示すように、帯状絶縁体5を挟んで隣接する5つの帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させることができる。つまり、帯状絶縁体5を挟んで隣接している限り、任意の数の帯状導電体6を信号用の帯状導電体6として機能させることができる。また、帯状絶縁体5の一面に1つの帯状導電体6を配設した例について上記したが、図12に示すように、帯状絶縁体5の一面における幅方向に沿った2つの領域に2つの帯状導電体41,42を互いに離間させてそれぞれ配設(並設)した帯状体7Aを積層して積層体87を構成し、その積層体87を巻回して形成したコイル部2A,3Aを備えたフィルタ素子1Aに本発明を適用することもできる。
【0027】
また、各フィルタ素子1を単体で用いる例について上記したが、これに限定されない。例えば、図13に示すように、各々の空隙Hが連通した状態で上記のフィルタ素子1を複数個並設すると共に1つの磁性コア4を各空隙Hに装着して、図示しない接続線を用いて各フィルタ素子1を直列に接続して用いることもできる。この構成によれば、フィルタ素子1を単体で用いる構成と比較して、コモンモードノイズを一層大きく減衰させることができる。なお、図示はしないが、フィルタ素子1Aについてもフィルタ素子1と同様にして複数個を直列に接続することにより、コモンモードノイズを一層大きく減衰させることができる。また、上記の各フィルタ素子1では、2つの帯状導電体6b,6cを信号用の帯状導電体6として用いることにより、各フィルタ素子1をコモンモード用のノイズフィルタに構成しているが、帯状導電体6b,6cのうちのいずれか一方のみを用いることにより、ノーマルモード用のノイズフィルタに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】積層体8の両端部を巻き解いた状態のフィルタ素子1の斜視図である。
【図2】積層体8の構成を示す斜視図である。
【図3】各コイル部2,3を形成する方法を説明するための説明図である。
【図4】フィルタ素子1をコイル部2の端面側から見た平面図である。
【図5】フィルタ素子1,101のノイズ減衰特性を示すノイズ減衰特性図である。
【図6】フィルタ素子1,102のノイズ減衰特性を示すノイズ減衰特性図である。
【図7】積層体81,82の構成を示す斜視図である。
【図8】積層体83の構成を示す断面図である。
【図9】積層体84の構成を示す断面図である。
【図10】積層体85の構成を示す断面図である。
【図11】積層体86の構成を示す断面図である。
【図12】フィルタ素子1Aの構成を示す斜視図である。
【図13】3個のフィルタ素子1を直列に接続した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1,1A フィルタ素子
2,2A コイル部
3,3A コイル部
5 帯状絶縁体
6,6a,6b,6c,41,42 帯状導電体
7,7A 帯状体
8,81〜87 積層体
11 接地線
12 入力線
13 出力線
A 中心部位
B 矢印
C 矢印
L 仮想平面
O 中心軸
P1〜P4 半体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状絶縁体の一面に帯状導電体を配設した帯状体が複数積層された積層体を所定方向に巻回して筒状に形成された第1のコイル部と、前記積層体を前記所定方向とは逆方向に巻回して筒状に形成された第2のコイル部とを備えたフィルタ素子であって、
前記第1のコイル部および前記第2のコイル部は、前記筒状に形成された状態における内周部に位置する所定部位において各々の前記各帯状導電体が互いに接続されると共に、各々の前記各帯状導電体のうちの前記筒状に形成された状態における最外周に位置する帯状導電体が接地用の帯状導電体として機能し、かつ前記接地用の帯状導電体を除く他の前記帯状導電体のうちの前記帯状絶縁体を挟んで隣接する複数の帯状導電体が信号用の帯状導電体として機能するように構成されているフィルタ素子。
【請求項2】
前記第1のコイル部は、前記積層体における一端側の半分を当該積層体における他端側の半分との境界部位を中心とし所定方向に巻回して形成され、
前記第2のコイル部は、前記当該積層体における前記他端側の半分を前記境界部位を中心として前記所定方向とは逆方向に巻回して形成されている請求項1記載のフィルタ素子。
【請求項3】
前記第1のコイル部および前記第2のコイル部における各々の中心軸を通る仮想平面によって区画される当該両コイル部における2つの区画部位の一方において前記接地用の帯状導電体に接地線が接続され、前記2つの区画部位の他方において前記信号用の帯状導電体に入力線および出力線が接続されている請求項1または2記載のフィルタ素子。
【請求項1】
帯状絶縁体の一面に帯状導電体を配設した帯状体が複数積層された積層体を所定方向に巻回して筒状に形成された第1のコイル部と、前記積層体を前記所定方向とは逆方向に巻回して筒状に形成された第2のコイル部とを備えたフィルタ素子であって、
前記第1のコイル部および前記第2のコイル部は、前記筒状に形成された状態における内周部に位置する所定部位において各々の前記各帯状導電体が互いに接続されると共に、各々の前記各帯状導電体のうちの前記筒状に形成された状態における最外周に位置する帯状導電体が接地用の帯状導電体として機能し、かつ前記接地用の帯状導電体を除く他の前記帯状導電体のうちの前記帯状絶縁体を挟んで隣接する複数の帯状導電体が信号用の帯状導電体として機能するように構成されているフィルタ素子。
【請求項2】
前記第1のコイル部は、前記積層体における一端側の半分を当該積層体における他端側の半分との境界部位を中心とし所定方向に巻回して形成され、
前記第2のコイル部は、前記当該積層体における前記他端側の半分を前記境界部位を中心として前記所定方向とは逆方向に巻回して形成されている請求項1記載のフィルタ素子。
【請求項3】
前記第1のコイル部および前記第2のコイル部における各々の中心軸を通る仮想平面によって区画される当該両コイル部における2つの区画部位の一方において前記接地用の帯状導電体に接地線が接続され、前記2つの区画部位の他方において前記信号用の帯状導電体に入力線および出力線が接続されている請求項1または2記載のフィルタ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−88559(P2007−88559A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271747(P2005−271747)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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