説明

フィルタ装置及び塗布装置並びにフィルタ装置のメンテナンス方法

【課題】液体の流路に用いられるフィルタ装置のメンテナンスの最適時期が判断され、好ましいメンテナンス処理が実行される、フィルタ装置及び塗布装置並びにフィルタ装置のメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】ろ過対象の液体が流入する流入口と連通されるハウジング部(22)と、ハウジング部の内部に配置され、中空の筒型形状を有し外周部から中空部へ液を通過させる構造を有するエレメント部(24)と、ハウジング部の外側面、又はハウジング部の外側面に近接する位置に設けられ、ハウジング部内部の液体の濁りの程度を検出する濁度センサ(26)と、を備え、濁度センサの検出結果に基づいて、エレメント部に対するメンテナンス処理必要であるか否かを判断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタ装置及び塗布装置並びにフィルタ装置のメンテナンス方法に係り、特に液体流路に設けられるフィルタ装置の清掃技術に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の処理液を媒体に塗布する塗布装置では、処理液を循環させて処理液の物性を安定させるように構成されている。また、処理液に混入した汚れは、循環流路に設けられたフィルタ装置によって除去される。
【0003】
フィルタ装置は、長時間の使用により目詰まりが発生するために、定期的な清掃や交換が行われることで所定のろ過性能が確保される。
【0004】
特許文献1は、洗浄廃液の処理を行う処理装置において、洗浄廃液が溜められるタンク部の内部に濁度を検出するためのセンサが設けられ、該センサの検出結果に基づいてタンク内の洗浄廃液に対して、成分除去処理を行うか中和処理を行うかを切り換えるように構成された洗浄廃液処理装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−66060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フィルタ装置の清掃やフィルタ装置に具備されるエレメントの交換などのメンテナンスが長期にわたって実施されないと、フィルタ装置のろ過性能が低下してしまい、処理液の所定の物性を確保することが困難になる。
【0007】
一方、フィルタ装置のメンテナンスが頻繁に行われると、好ましい処理液の物性は確保されるものの、フィルタ装置のメンテナンスによる塗布装置の稼働率の低下を招くとともに、過剰なフィルタ装置のメンテナンスに費やす労力や時間の無駄が発生する。
【0008】
特許文献1は、濁度の検出結果に応じて洗浄廃液に対する処理を切り換える旨を開示しているものの、経路にあるフィルタユニットをどのようにメンテナンスするか判定する手法は開示されていない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、液体の流路に用いられるフィルタ装置のメンテナンスの最適時期が判断され、好ましいメンテナンス処理が実行される、フィルタ装置及び塗布装置並びにフィルタ装置のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るフィルタ装置は、ろ過対象の液体が流入する流入口と、前記流入口と連通されるハウジング部と、前記ハウジング部の内部に配置され、中空の筒型形状を有し外周部から中空部へ液を通過させる構造を有するエレメント部と、前記中空部に内挿される排出流路と、前記排出流路の他方の開口と連通する排出口と、前記ハウジング部の外側面、又は前記ハウジング部の外側面に近接する位置に設けられ、前記ハウジング部内部の前記液体の濁りの程度を検出する検出素子を含む検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記エレメント部に対するメンテナンス処理が必要であるか否かを判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エレメント部が収容されるハウジング部の外側面、又はハウジング部の外側面に近接する位置に設けられた検出素子により検出されたハウジング部内の液体の濁度に基づいて、当該エレメント部に対するメンテナンスが必要であるか否かが判断されるので、能力の限界までエレメントを使用することができ、最適な時期にエレメントのメンテナンスを実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るフィルタ装置の概略構成を示す斜視図
【図2】図1に示すフィルタ装置の内部構造を示す断面図
【図3】図1に示すフィルタ装置の底面図
【図4】図1に示すフィルタ装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図5】図1に示すフィルタ装置の濁度判定の説明図
【図6】図1に示すフィルタ装置に適用されるメンテナンス制御の流れを示すフローチャート
【図7】図1に示すフィルタ装置に適用される自動メンテナンス処理の説明図
【図8】本発明に係る塗布装置の概略構成を示す全体構成図
【図9】図8に示す塗布装置の制御系の構成を示すブロック図
【図10】図8に示す塗布装置のメンテナンスモードの流れを示すフローチャート
【図11】図10の自動清掃工程の詳細な流れを示すフローチャート
【図12】図8に示す塗布装置の塗布皿の自動清掃の説明図
【図13】図8に示す塗布装置の制御系の塗布ローラ及びアニロックスローラの自動清掃の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0014】
〔フィルタ装置の説明〕
以下に説明するフィルタ装置10は、フィルタ装置10の内部のろ過前の液体の濁り度を検出し、該濁り度に基づいてメンテナンス処理が必要であるか否かの判断がされ、フィルタ装置10に対してメンテナンス処理が必要な場合には、その旨が報知されるように構成されている。
【0015】
(全体構成)
図1は、本発明に係るフィルタ装置10の概略構成を示す斜視図である。同図に示すフィルタ装置10は、液体に含まれる異物を除去するろ過フィルタであり、流入側チューブ12が接続される流入口14と、排出側チューブ16が接続される排出口18と、流入口14及び排出口18が設けられる蓋部20と、蓋部20と接合可能な構造を有するハウジング部22と、ハウジング部22の内部に配置されるエレメント部24と、を備えている。
【0016】
蓋部20の内側面には、ハウジング部22の外側面22Aにおける上端部に形成されるねじ山部(不図示)と係合されるねじ山部(不図示)が形成されており、蓋部20の内側面に対してハウジング部22をねじ込んで接合するように構成されている。
【0017】
ハウジング部22は、外周面から突出した凸部25が形成されており、凸部25の内部はろ過前の液体が収容される。凸部25の外側には、凸部25の内部(ハウジング部22の内部)の液体の濁度を検出するための濁度センサ26が設けられている。
【0018】
濁度センサ26は、ろ過前の液体の汚れの程度を示す濁度を検出する手段であり、その一形態として光学式センサによる非接触の検出素子を備える形態が挙げられる。すなわち、検出対象の液体に光が照射され、該液体の透過光量に応じた検出電圧が得られる。
【0019】
かかる光学センサを備える形態では、ハウジング部22の少なくとも濁度センサ26の検出範囲は透明又は半透明の光を透過可能な材料から構成される。
【0020】
濁度センサ26は、検出信号が出力される出力端子(不図示)を備え、該出力端子は制御系(図1中不図示、図4参照)と電気的に接続されており、濁度センサ26の検出信号は該制御系へ送られ、制御系において濁度センサ26の出力電圧(検出電圧)に基づき、ハウジング部22内の液体の濁度が把握される。
【0021】
なお、当該フィルタ装置10は、蓋部20が垂直上方向となり、ハウジング部22が垂直下方向となるように流路に設置される。
【0022】
(内部構造の説明)
図2は、フィルタ装置10の構造を示す断面図である。なお、同図に示すフィルタ装置10は、図1に図示した流入側チューブ12及び排出側チューブ16の図示が省略されるとともに、蓋部20やハウジング部22の詳細な形状は簡略化されて図示されている。
【0023】
図2に示すように、蓋部20は、流入口14とハウジング部22とを連通させる開口30が設けられるとともに、排出口18と連通する排出流路32が設けられている。排出流路32は断面形状が略L字であり、垂直下向きの延長管(垂直部)32Aは中空構造を有する円筒形状のエレメント部24の中空部24Bに挿入されており、延長管32Aの下端32Cがハウジング部22の最低水位となる。
【0024】
ハウジング部22の凸部25は、ハウジング部22の蓋部20と係合する円筒形状部分の外側面22Aから外側へ突出するとともに、該円筒部形状部分と同一の高さを有している。
【0025】
エレメント部24は、円筒形状の上面に開口が設けられる一方、底面は非開口形状を有している。この開口は中空部24Bと連通され、該開口から中空部24Bへ排出流路32の延長管32Aが挿入される。
【0026】
また、エレメント部24は、蓋部20がハウジング部22に取り付けられた状態で、下端(底面)24Cがハウジング部22の下端(底面)22Cに達しない高さを有している。
【0027】
ハウジング部22のエレメント部24の外側に液体が流入し、水位が延長管32Aの下端32Cを超えると、エレメント部24の外側面24Aから中空部24Bへ移動するとともに、エレメント部24によって汚れが除去される。符号Aを付して図示した矢印線は、液体の移動方向である。
【0028】
中空部24Bに移動した液体(汚れが除去された液体)は、排出流路32を通って排出口18から排出される。例えば、排出口18にポンプ(不図示)を接続し、該ポンプを動作させてフィルタ装置10の内部から外部へ液体が吸い出される形態がある。
【0029】
図2に示すように、濁度センサ26は、符号Bを付した凸部25のエレメント部24の下端22Cよりも下側に配置される。ハウジング部22内の液体は、上方と比較して下方が濁りやすく、エレメント部24の下端24Cからハウジング部22の下端22Cの間に濁りの原因となる汚れが蓄積される。
【0030】
そうすると、エレメント部24が詰まり始めてろ過性能が低下すると、エレメント部24の下端24Cからハウジング部22の下端22Cの間の濁度が大きくなる。したがって、当該領域の濁度を検出することで、より正確に、かつ、より短時間にエレメント部24の性能低下を把握しうる。
【0031】
図3は、フィルタ装置10を底面側から見た図である。同図に示すように、ハウジング部22の凸部25の円筒形状部分の法線方向の長さは、該円筒形状部分の半径の約1/2であり、凸部25の円筒形状部分の周方向の長さは、該円筒形状部分の半径の約1/10である。
【0032】
図3に示す濁度センサ26は、凸部25をはさんで発光素子26Aと受光素子26Bが対向して配置される光学式センサであり、凸部25の円筒形状部分の法線方向の長さは、発光素子26A及び受光素子26Bのサイズに応じて決められ、凸部25の円筒形状部分の周方向の長さは、受光素子26Bの検出感度に基づいて決められる。
【0033】
図3には、濁度センサ26が凸部25の近接位置に配置される形態を示したが。濁度センサ26は、凸部25の外側面に接触させてもよい。なお、濁度センサ26を凸部25の内部に配設する態様も可能であるが、液体による腐食や電気的な絶縁を考慮する必要がある。
【0034】
本例に示すフィルタ装置10に適用されるエレメント部24の内部構造の一例を挙げると、表面にメッシュが形成された複数の円筒を同心円状に並べた構造が挙げられる。
【0035】
エレメント部24を構成する円筒は樹脂材料が好適に用いられる。異なるサイズのメッシュを具備することで、効率的なろ過処理が実現される。
【0036】
(制御系の説明)
図4は、フィルタ装置10の制御系の構成を示すブロック図である。同図に示すように、フィルタ装置10は、システム制御部40によって全体が統括的に制御される。システム制御部40は、複数のプロセッサーが構成されていてもよい。
【0037】
濁度センサ26(受光素子26B(図3参照))から得られた検出信号は、ノイズ除去、波形整形等の所定の信号処理が施された後に、システム制御部40へ送られる。システム制御部40は、濁度センサ26から得られた濁度情報を濁度判定部42へ送出する。
【0038】
濁度判定部42は、濁度センサ26から得られた濁度情報に基づいてフィルタ装置10内のろ過前の液体の濁度を把握し、フィルタ装置10のメンテナンス処理が必要であるか否かを判断する。
【0039】
フィルタ装置10のメンテナンスには、エレメント部24の清掃、エレメント部24の交換が挙げられる。濁度判定部42による判定処理の詳細は後述する。
【0040】
濁度判定部42による判定処理の結果は、システム制御部40を介して報知部44へ送られる。報知部44は、フィルタ装置10のメンテナンスが必要である旨を報知する。報知部44の形態として、音(音声)による報知、ランプ等の点灯(点滅)による報知、ディスプレイ装置への文字情報による報知などが挙げられる。
【0041】
記憶部46は、フィルタ装置10のメンテナンスの時間間隔(前回のメンテナンスが実行されてからの経過時間)、メンテナンス回数が記憶される。
【0042】
濁度判定部42は、メンテナンス処理を実行するか否かの判断処理の際に、記憶部46に記憶されているメンテナンスの時間間隔の情報、メンテナンス回数の情報を参照する。
【0043】
記憶部46には、記憶されている情報が随時更新可能な半導体メモリ(RAM)が適用される。なお、記憶部46は複数のメモリ(記憶素子)から構成されてもよいし、複数の領域に分割され、異なる情報が記憶されるように構成されていてもよい。
【0044】
〔濁度判定処理の説明〕
次に、本発明に係るフィルタ装置10に適用される濁度判定処理(ろ過対象液体の濁度に基づくメンテナンス処理が必要であるか否かの判定処理)について、詳細に説明する。
【0045】
図5は、フィルタ装置10の濁度判定処理の説明図であり、メンテナンス処理のタイミングと濁度(濁度センサ26の出力電圧)との関係が図示されている。
【0046】
横系列は時間であり、縦系列は濁度である。フィルタ装置10の使用が開始されると、時間経過とともに濁度は上昇する。この濁度が定期的に監視され、濁度が所定の濁度しきい値に達すると、濁度判定部42(図4参照)は、エレメント部24の清掃が必要であると判断し、報知部44はその旨を報知する。
【0047】
エレメント部24の清掃処理が終了すると、使用開始から清掃までの時間(t)、及び清掃回数(1回目)が記憶部46(図4参照)に記憶される。
【0048】
清掃後にフィルタ装置10の稼動が再開されると濁度が定期的に監視され、濁度が所定の濁度しきい値に達すると、濁度判定部42はエレメント部24の清掃が必要であると判断し、報知部44はその旨を報知する。
【0049】
ここで、一回目の使用開始からの清掃までの時間tと、二回目の使用開始から清掃までの時間tの関係は、t>tとなっている。すなわち、エレメント部24の性能は清掃処理では完全に回復させることができず、使用可能期間が清掃処理を重ねるたびに短くなってしまう。
【0050】
したがって、所定回数の清掃処理が行われたエレメント部24は、新品と交換される。図5には、i−1回目の清掃から時間tが経過したタイミングで、エレメント部24が交換される形態が図示されている。
【0051】
なお、前回の清掃処理からの経過時間tが所定時間未満になったことを判断して、エレメント部24の交換タイミングを判断してもよい。かかるエレメント部24の交換がされる清掃回数や、交換となる使用時間のしきい値は、予め実験やシミュレーションなどに手法によって求められる。
【0052】
なお、エレメント部24の交換の際に、ハウジング部22の清掃(交換)、蓋部20の清掃(交換)を行う態様が好ましい。
【0053】
図6は、フィルタ装置10のメンテナンス処理の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、フィルタ装置10の使用が開始されると、濁度センサ26(図1〜4参照)から濁度情報(濁度センサの出力信号)が取得され(ステップS10)、該濁度が所定のしきい値(図5の濁度しきい値)を超えているか否かが判断される(ステップS12))。
【0054】
濁度が所定のしきい値未満であると判断されると(No判定)、濁度の監視が継続される(ステップS10)。一方、ステップ12において、濁度が所定のしきい値以上であると判断されると(Yes判定)、エレメント部24の交換条件を満たすか否かが判断される(ステップS14)。
【0055】
ステップS14において、エレメント部24の交換条件を満たしていないと判断されると(No判定)、エレメント部24の清掃が必要である旨が報知される(ステップ20)。一方、ステップS14において、エレメント部24の交換条件を満たしていると判断されると(Yes判定)、エレメント部24の交換が必要である旨が報知される(ステップ16)。
【0056】
エレメント部24が交換されると、清掃処理間隔、清掃処理回数がリセットされる(ステップS18)。その後、終了処理がなされない場合は(ステップ22のNo判定)、ステップS10に戻り、終了処理がなされると(ステップS22のYes判定)、当該フィルタ装置10のメンテナンス処理は終了される。
【0057】
〔フィルタ装置(エレメント部)の自動清掃の説明〕
上述したメンテナンス制御において、エレメント部24を自動的に清掃することも可能である。
【0058】
図7は、本例に示すフィルタ装置10に適用される自動メンテナンス処理の説明図である。図7(a)は、フィルタ装置10の通常稼動状態を示しており、図7(b)は、フィルタ装置の自動清掃状態を表している。
【0059】
図7(a)に示すように、液供給部50とフィルタ装置10は循環流路52により連通され、フィルタ装置10は、ポンプ54を介してタンク56と連通され、タンク56と液供給部50は供給流路58を介して連通される構成を考える。
【0060】
フィルタ装置10の通常稼動状態(液供給部50からタンク56へ循環させる液体のろ過処理時)は、ポンプ54を正転動作させて、液供給部50からフィルタ装置10、ポンプ54、タンク56、供給流路58を介して液供給部50へ液体を戻す循環をさせる。
【0061】
一方、図7(b)に示す自動清掃状態では、ポンプ54を逆転動作させて、タンク56からフィルタ装置10へ液体を逆流させて、エレメント部24の内部に捕獲されている汚れを取り除く。
【0062】
エレメント部24から取り除かれた汚れは逆流させた液体とともに液供給部50へ送られ、廃液タンク60へ送られる。エレメント部24の清掃を行うときのポンプ54の回転数を、通常稼動状態よりも高くすることで、清掃効率の向上が見込まれる。なお、図7(a),(b)に示すポンプ54はチューブポンプが適用される。
【0063】
上記の如く構成されたフィルタ装置10によれば、ハウジング部22に設けられた濁度センサ26によりフィルタ装置10の内部に収容される、ろ過前の液体の濁度を検出し、検出結果に基づいてフィルタ装置10のメンテナンス時期が判断されるので、性能の低下の限界までフィルタ装置10の使用が可能となり、使用時間などに基づく定期的なメンテナンスと比較してメンテナンスの時期及び回数を最適化することができる。
【0064】
また、エレメント部24の前回の清掃からの経過時間、連続清掃回数に基づいてエレメント部24の交換時期を判断することで、エレメントの交換を最適なタイミングで行うことが可能である。
【0065】
さらに、フィルタ装置10のメンテナンスが必要である旨の判断に基づいて自動メンテナンスが実行されるように構成することで、メンテナンス処理の効率化が見込まれる。
【0066】
本例では、フィルタ装置10の濁り度の指標として「濁度」を例示したが、濁度に代わり「透明度」、「吸光度」など、検出対象の液体の濁りの程度を把握しうる指標を適用することができる。
【0067】
「透明度」とは、液体の透明の程度を表す指標であり、濁度と同様に検出対象の液体に照射された光の透過光量に基づいて把握することができる。例えば、透明度に応じた検出電圧が所定のしきい値未満となったタイミングをメンテナンス実行タイミングとする形態が考えられる。
【0068】
また、「吸光度」とは、液体に照射された光の中で特定の波長領域がどのくらい吸収されているかを表す指標であり、該波長領域に対応する汚染要素による汚染の程度を把握することができる。
【0069】
本例では、非接触式(光学式)の濁度センサ26が設けられる形態を例示したが、ハウジング部22の内部に接触式の濁度センサ26が設けられる形態も可能である。一方、ろ過対象の液体(検出対象の液体)が酸性液又はアルカリ性液の場合は、非接触式の濁度センサ26を具備することで、濁度センサ26の腐食が防止される。
【0070】
〔塗布装置の説明〕
次に、上述したフィルタ装置10及びフィルタ装置10のメンテナンス方法が適用される塗布装置100について詳説する。
【0071】
(全体構成)
図8は、本発明に係る塗布装置100の概略構成を示す全体構成図である。同図に示す塗布装置100は、被塗布媒体(不図示)に液体を塗布する塗布部112と、塗布部112へ液体を供給する液供給部114と、を含んで構成されている。
【0072】
(塗布部の説明)
塗布部112は、被塗布媒体を固定保持して搬送する圧胴120と、被塗布媒体に接触させて塗布液を塗布する塗布ローラ122と、塗布皿124に溜められた塗布液を計量して塗布ローラ122へ転写(供給)するアニロックスローラ(計量ローラ)126と、を備えている。
【0073】
圧胴120は不図示の駆動機構と連結され、該駆動機構の動作に応じて所定方向(図中符号Cを付した反時計回り方向)へ回転動作する。圧胴120の外周面に固定保持被塗布媒体は、圧胴120の回転動作に応じて圧胴120の外周面に沿って搬送される。
【0074】
塗布ローラ122は、不図示の駆動機構と連結され、該駆動機構の動作に応じて所定方向(図中符号Dを付した時計回り方向)へ回転動作する。塗布ローラ122の回転速度は、圧胴120の接触位置における線速度が圧胴120と一致するように決められている。
【0075】
また、塗布ローラ122は、被塗布媒体に対して塗布液の塗布を行う塗布時には、被塗布媒体(圧胴120)を所定の圧力により押圧し、塗布液の塗布を行わない非塗布時には、圧胴120から離間させるように圧胴120との相対位置が制御される。符号Eを付した白抜き矢印線は、圧胴120の押圧方向及び離間方向を表している。
【0076】
塗布皿124は、液供給部114から供給された塗布液が溜められる貯留部124Aと、貯留部124Aから溢れた塗布液が収容される収容部124Bと、貯留部124Aと収容部124Bとを区画する区画壁124Cと、区画壁124Cに設けられた開口部124Dとを有している。
【0077】
液供給部114から供給された塗布液の水面が区画壁124Cの開口部124Dに達すると、貯留部124Aから収容部124Bへ塗布液が溢れ出すので、貯留部124Aに貯留される塗布液の水位が一定に保たれる。貯留部124Aの塗布液の水位を一定に保つことで、アニロックスローラ126による塗布液の計量のばらつきが防止される。
【0078】
収容部124Bへ溢れ出した塗布液は、不図示の排出口と連通される循環流路164を介して液供給部114(サブタンク132)へ戻される。
【0079】
貯留部124Aの底面124Eは、不図示の排出口が設けられており、該排出口を介して貯留部124Aに貯留される塗布液を外部へ排出することができる。
【0080】
アニロックスローラ126は、表面に所定の体積を有するセル(不図示)が多数形成された構造を有し、該セルの中に保持された塗布液が塗布ローラ122へ供給される。アニロックスローラ126を一定速度で回転させることで(符号Fを付した矢印線により回転方向を図示)、塗布皿124内の塗布液を一定量計量しながらくみ上げることができる。
【0081】
(液供給部の説明)
次に、液供給部114について詳述する。図8に示すように、液供給部114は、メインタンク130と、サブタンク132と、液供給路136と、循環流路164と、廃液タンク172と、排出流路174と、を備えている。
【0082】
メインタンク130は塗布液が貯留されており、フィルタ130Aが内蔵されている。メインタンク130は、補充流路133及び補充流路133に設けられた補充ポンプ134を介してサブタンク132と連通している。
【0083】
サブタンク132内の塗布液量が所定量未満になると、補充ポンプ134を動作させてメインタンク130からサブタンク132へ塗布液が補充される。
【0084】
サブタンク132は、液供給路136を介して塗布部112(塗布皿124)と連通されている。サブタンク132は、フィルタ132Aが内蔵されるとともに、収容されている塗布液量を検出するための液量センサ(不図示)が設けられている。
【0085】
液供給路136は、供給バルブ138、供給ポンプ140が設けられている。供給バルブ138が開かれた状態で供給ポンプ140を動作させると、サブタンク132から塗布部112へ塗布液が供給される。
【0086】
液供給路136は、供給バルブ138と供給ポンプ140との間において、フィルタ142Aが内蔵される希釈液タンク142と連通される希釈液流路144が接続されている。希釈液流路144には希釈液流路バルブ146が設けられており、供給バルブ138が閉じられて希釈液流路バルブ146が開かれると、塗布液に代わり希釈液が塗布部112へ供給される。
【0087】
液供給路136は、液供給路136内の塗布液の濃度を検出するための濃度計148と、液供給路136内の塗布液の温度を検出する温度センサ152と、液供給路136内の温度調整を行うヒータ156が設けられている。
【0088】
液供給路136内の塗布液は、濃度計148によって濃度が監視され、所定の濃度範囲が維持されるように管理される。また、温度センサ152によって温度が監視され、所定の温度範囲が維持されるように、温度が管理される。
【0089】
循環流路164は、液供給部114からサブタンク132へ塗布液を循環させるための流路であり、液供給部114(塗布皿124)と連通している循環流路164から分岐されている。
【0090】
塗布皿124と連通する循環流路164は、貯留部124Aの排出口と連通する流路に設けられる第1循環バルブ160と、収容部124Bの底面に設けられる第2循環バルブ162が設けられるとともに、フィルタ装置166、循環ポンプ168が設けられている。
【0091】
第2循環バルブ162が開かれた状態で循環ポンプ168を動作させると、塗布皿124の収容部124Bから循環流路164、フィルタ装置166、循環ポンプ168を介して塗布液がサブタンク132へ戻される。
【0092】
供給ポンプ140の送液量と循環ポンプ168の送液量とは、(供給ポンプの送液量)<(循環ポンプの送液量)の関係を満たしている。すなわち、アニロックスローラ126が浸された貯留部124Aは、塗布液がオーバーフローした状態で使用される。貯留部124Aからオーバーフローした塗布液は、収容部124Bを介して循環ポンプ168により回収され、サブタンク132へ戻され、再使用される。
【0093】
塗布皿124からオーバーフローした塗布液は、一般的な汚れや塗布装置100の後段の処理工程において、被塗布媒体をスタックする際のブロッキングの発生を抑制するためのパウダーなどが混入している。
【0094】
したがって、塗布部112から回収された塗布液は、混入している汚れやパウダーなどがフィルタ装置166によって除去された後に、サブタンク132へ送られる。
【0095】
図8に示すフィルタ装置166は、先に説明したフィルタ装置10が適用されるのでフィルタ装置166の詳細な説明はここでは省略する。
【0096】
フィルタ装置166内の塗布液の濁度が所定のしきい値を超えると、循環流路164の吸い込み圧力(負圧)が上昇してしまい、その結果循環ポンプ168の回収能力が落ち込み、循環ポンプ168の送液量が供給ポンプ140の送液量を下回ってしまう。そうすると、塗布皿124から塗布液が溢れ出してしまうことになる。
【0097】
したがって、フィルタ装置166は濁度センサ(図8中不図示、図9に符号226を付して図示)により塗布液の濁度が検出されるように構成され、フィルタ装置166内の塗布液の濁度が所定のしきい値を超えた場合には、メンテナンス(エレメント部の清掃及び交換)が必要である旨が報知され、ユーザに対してフィルタ装置166のメンテナンスが促される。
【0098】
また、塗布皿124の貯留部124A及び収容部124Bは、排出流路174を介して廃液タンク172と連通される。排出流路174にはドレインバルブ170及び排出ポンプ176が設けられており、ドレインバルブ170が開かれた状態で排出ポンプ176を動作させると、貯留部124A及び収容部124Bの塗布液は、廃液タンク172へ送られる。
【0099】
なお、図8に図示された構成以外の構成を適宜付加してもよいし、図8に図示された構成を適宜削除することも可能である。
【0100】
図9は、図8に示す塗布装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。図9に示す濁度センサ226、システム制御部240、濁度判定部242、報知部244、及び記憶部246は、図4に図示した濁度センサ26、システム制御部40、濁度判定部42、報知部44、及び記憶部46と共通の機能を有しているので、ここでは説明を省略する。また、図8と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0101】
システム制御部40は、塗布装置100を統括的に制御する手段であり、塗布制御部260、バルブ制御部262、ポンプ制御部264、及びヒータ制御部266へ制御指令信号を送出する。
【0102】
塗布制御部260は、塗布部112(塗布ローラ122)の動作を制御する。すなわち、塗布ローラ122の回転制御、押圧制御、アニロックスローラ126の回転制御、圧胴120の回転制御は、塗布制御部260によって行われる。
【0103】
バルブ制御部262は、システム制御部240の制御指令信号に基づいて、供給バルブ138、希釈液流路バルブ146、第1循環バルブ160、第2循環バルブ162、及びドレインバルブ170などのバルブの開閉を制御する。
【0104】
ポンプ制御部264は、システム制御部240の制御指令信号に基づいて、補充ポンプ134、供給ポンプ140、及び循環ポンプ168等のポンプの動作(オンオフ、回転数、回転方向等)を制御する。
【0105】
濃度計148により取得された塗布液の濃度情報は、システム制御部240へ送られる。システム制御部240は、塗布液の濃度情報に基づいて希釈液の供給を制御する。
【0106】
温度センサ152により取得された塗布液の温度情報は、システム制御部240へ送られる。システム制御部240は、塗布液の温度情報に基づいてヒータ156の制御指令信号をヒータ制御部266へ送出する。ヒータ制御部266は、該制御指令信号に基づいてヒータ156の動作を制御する。
【0107】
なお、図9に図示された構成以外の構成を付加することも可能である。例えば、ユーザインターフェイスとして機能する操作部(キーボード、マウス、タッチパネル等)や、各種情報が表示されるモニタ装置を備えることも可能である。
【0108】
また、図8に図示した塗布装置100から、液供給部114の構成を分離させて液供給装置として構成する形態も可能である。
【0109】
(メンテナンス制御の説明)
次に、図8,9に示した塗布装置100(液供給装置)に適用されるフィルタ装置のメンテナンス方法について説明する。
【0110】
図10は、図8に図示したフィルタ装置166をメンテナンスする際のメンテナンスモードの流れを示すフローチャートである。同図に示すように、メンテナンスモードが開始されると、濁度センサ226によってフィルタ装置166内の濁度情報が取得される(ステップS30)。
【0111】
ステップS30において、フィルタ装置166の濁度が所定のしきい値を超えたか否かが判断される。フィルタ装置166の濁度が所定のしきい値を超えていないと判断されると(No判定)、濁度の監視が継続される(ステップS30)。
【0112】
一方、ステップS32において、フィルタ装置166の濁度が所定のしきい値を超えたと判断されると(Yes判定)、エレメント部(図1参照)の交換条件を満たしているか否かが判断される(ステップS34)。
【0113】
ステップS34において、エレメント部の交換条件を満たしていないと判断されると(No判定)、エレメント部を清掃する旨が報知されるとともに、自動清掃が実行される(ステップ40)。
【0114】
一方、ステップS34において、エレメント部の交換条件を満たしていると判断されると(Yes判定)、エレメント部を交換する旨が報知される(ステップ36)。
【0115】
エレメント部が交換されると、清掃処理間隔、清掃処理回数がリセットされる(ステップS38)。その後、終了処理がなされない場合は(ステップ42のNo判定)、ステップS30に戻り、終了処理がなされると(ステップS42のYes判定)、当該フィルタ装置10のメンテナンス処理は終了される。
【0116】
(フィルタ装置の自動清掃処理の説明)
図11は、図10のステップS40に示したフィルタ装置166の自動清掃処理の流れを示すフローチャートである。塗布装置100におけるフィルタ装置166の自動清掃は、循環ポンプ168等の循環系の構成を利用して実行される。
【0117】
すなわち、フィルタ装置166の自動清掃処理が開始されると、供給バルブ138が閉じられ(ステップS50)、第1循環バルブ160が開かれ、第2循環バルブ162が閉じられ(ステップS52)、ドレインバルブ170が開かれる(ステップS54)。
【0118】
次に、循環ポンプ168が逆転動作に切り換えられ(ステップS56)、サブタンク132からフィルタ装置166へ塗布液が供給される。また、排出ポンプ176を動作させて塗布皿124に供給されている液を排出する(ステップS57)。その後、循環ポンプ168の逆転動作開始からの経過時間が計測される(ステップS58)。
【0119】
すなわち、フィルタ装置166内において塗布液を逆流させて、エレメント部に捕獲されている汚れを塗布液とともに塗布皿124へ送り、塗布皿124から排出流路174を介して該汚れを廃液タンク172へ排出させる。
【0120】
循環ポンプ168の逆転動作開始から所定時間が経過していない場合は(No判定)、循環ポンプ168の逆転動作開始からの経過時間の計測が継続され(ステップS58)、循環ポンプ168の逆転動作開始から所定時間が経過した場合は(Yes判定)、循環ポンプ168が正転動作に切り換えられ(ステップS60)、第1循環バルブ160が閉じられるとともに、第2循環バルブ162が開かれ(ステップS61)、ドレインバルブ170が閉められ(ステップS62)、供給バルブ138が開かれ(ステップS64)、通常の液供給状態に復帰させて、当該自動清掃処理は終了される。
【0121】
なお、サブタンク132から塗布部112へ塗布液を逆流させて、フィルタ装置166の清掃を行う態様に代わり、洗浄液をフィルタ装置166へ供給して、フィルタ装置166を清掃する形態も可能である。
【0122】
例えば、循環流路164に洗浄液タンクと連通される流路を接続させ、該流路にバルブを備える形態により、フィルタ装置166の清掃に洗浄液を用いることができる。
【0123】
以上説明した塗布装置100は、記録媒体上で処理液とインクとを反応させて、インクに含まれる色材を凝集又は不溶化させる二液方式のインクジェット記録装置に適用することができる。
【0124】
すなわち、二液方式のインクジェット記録装置における、カラーインクが打滴される前工程として、記録媒体の全面に処理液(酸性液)を均一に塗布する処理塗布部として構成することも可能である。
【0125】
〔応用例〕
次に、上述したフィルタ装置166のメンテナンス方法の応用例を説明する。
【0126】
本応用例に係る塗布装置100のメンテナンス方法では、上述したフィルタ装置166のメンテナンス処理のタイミングで、塗布皿124、塗布部112のメンテナンス処理が自動実行される。
【0127】
図12は、塗布皿124の自動メンテナンス(自動清掃)を実行するための清掃部300の概略構成示す説明図である。
【0128】
同図に示す清掃部300は、塗布皿124の底面に溜まった汚れを払拭するブレード302と、ブレード302を所定方向へ移動させる移動機構304と、を備えている。ブレード302は、移動方向と直交する方向について塗布皿124の全域を払拭できる長さを有し、弾性変形して塗布皿124の底面を押圧するように支持される。ブレード302は、ゴムなどの所定の弾性を有する材料が適用される。
【0129】
移動機構304は、ブレード302を支持するブレード支持部306と、ブレード支持部306を移動可能に支持するガイド部308と、を含んで構成されている。また、図示を省略するが、移動機構の駆動源となるモータ(アクチュエータ)が含まれる。
【0130】
塗布皿124の清掃は、希釈液タンク142から希釈液を供給して、該希釈液を洗浄液として用いることができる。もちろん、洗浄効果を高める機能を有する専用の洗浄液を塗布皿124へ供給する形態も可能である。塗布皿124の洗浄に用いられた希釈液(洗浄液)は、洗浄処理後に廃液タンク172へ送られる。
【0131】
図13は、塗布ローラ122及びアニロックスローラ126を自動的に清掃するための清掃部320を模式的に図示した説明図である。
【0132】
同図に示す清掃部320は、塗布ローラ122を清掃するためのブラシ322と、アニロックスローラ126を清掃すうためのブラシ324と、を備えて構成される。
【0133】
ブラシ322は、塗布ローラ122の軸方向の全長に対応する長さを有しており、ブラシ322を塗布ローラ122と逆方向に回転させながら塗布ローラ122へ接触させて、塗布ローラ122の表面に付着した汚れを除去する。
【0134】
ブラシ324は、アニロックスローラ126の軸方向の長に対応する長さを有しており、ブラシ322をアニロックスローラ126と逆方向に回転させながらアニロックスローラ126へ接触させて、アニロックスローラ126の表面に付着した汚れを除去する。
【0135】
なお、塗布ローラ122及びアニロックスローラ126を洗浄する際に、洗浄液を用いると清掃効率の向上が見込まれる。例えば、塗布皿124の塗布液を排出させた後に、塗布皿124へ希釈液を供給し、塗布ローラ122及びアニロックスローラ126へ希釈液を付着させた状態で、ブラシ322,324による清掃処理を行う形態も可能である。
【0136】
塗布ローラ122及びアニロックスローラ126を清掃する際は、塗布ローラ122を圧胴120から離間させるとともに、塗布ローラ122からアニロックスローラ126を離間させる。
【0137】
ブラシ322,324は、塗布ローラ122及びアニロックスローラ126を清掃する際に所定の退避位置から塗布ローラ122及びアニロックスローラ126を清掃する清掃装置に移動させるように構成する態様が好ましい。
【0138】
すなわち、塗布ローラ122及びアニロックスローラ126の遠方である退避位置と、塗布ローラ122及びアニロックスローラ126に近接する清掃位置との間において、ブラシ322,324を支持しながら移動させる支持移動機構を備える形態が好ましい。
【0139】
本応用例によれば、フィルタ装置166のメンテナンスが実行されるタイミングにおいて、塗布部112のメンテナンスを実行することで、フィルタ装置166の性能回復とともに、好ましいタイミングで塗布部112の状態も回復させることができる。
【0140】
また、塗布部112のメンテナンス(清掃)処理が自動的に実行されるように構成することで、塗布部112のメンテナンスの負荷を低減化しうる。
【0141】
〔塗布液の具体例〕
先に述べたように、塗布装置100は二液凝集方式のインクジェット記録装置における処理液の塗布部に適用可能である。ここで「処理液」とは、インクに含まれる色材を凝集又は不溶化させる機能を有する液体であり、以下の〔表1〕に示す組成例が挙げられる。
【0142】
【表1】

【0143】
上記〔表1〕の組成にて処理液を調整し、得られた液の物性値を測定した結果、粘度4.9(mPa・s)、表面張力24.3(mN/m)、pH値1.5であった。かかる処理液は、インクの凝集性やローラによる塗布性に優れ、かつ、記録媒体の濡れに優れたものであるといえる。
【0144】
かかる処理液を塗布した後に、所定の画像データに基づいて記録媒体に画像が描画されると、濃度ムラや色ずれが発生しない高品質の画像を形成し得る。また、該インクジェット記録装置の構成例として、処理前の記録媒体が収容される給紙部と、上述した処理液を描画前の記録媒体へ塗布する処理液塗布部と、処理液塗布後の記録媒体へ所望を画像を描画する描画部と、描画後の記録媒体へ乾燥処理を施す乾燥処理部と、乾燥処理後の記録媒体へ定着処理を施す定着処理部と、定着処理後の記録媒体を機外へ及び排出部と、を備えた構成が挙げられる。
【0145】
上述した装置構成例では、記録媒体にカラーインクを吐出してカラー画像を記録するインクジェット記録装置における処理液塗布部への適用例を示したが、マスクパターンの形成やプリント配線基板の配線描画など基板に樹脂液等により所定のパターン形状を形成する他の画像形成装置における機能性液の塗布部にも、本発明に係るフィルタ装置を適用可能である。
【0146】
以上、本発明に係るフィルタ装置及び塗布装置並びにメンテナンス方法を詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0147】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0148】
(発明1):ろ過対象の液体が流入する流入口と、前記流入口と連通されるハウジング部と、前記ハウジング部の内部に配置され、中空の筒型形状を有し外周部から中空部へ液を通過させる構造を有するエレメント部と、前記中空部に内挿される排出流路と、前記排出流路の他方の開口と連通する排出口と、前記ハウジング部の外側面、又は前記ハウジング部の外側面に近接する位置に設けられ、前記ハウジング部内部の前記液体の濁りの程度を検出する検出素子を含む検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記エレメント部に対するメンテナンス処理が必要であるか否かを判断する判断手段と、を備えたことを特徴とするフィルタ装置。
【0149】
本発明によれば、エレメント部が収容されるハウジング部の外側面、又はハウジング部の外側面に近接する位置に設けられた検出素子により検出されたハウジング部内の液体の濁りの程度に基づいて、当該エレメント部に対するメンテナンスが必要であるか否かが判断されるので、能力の限界までエレメントを使用することができ、最適な時期にエレメントのメンテナンスを実行することが可能となる。
【0150】
検出手段の具体例として、汚れの程度に応じた出力信号が検出素子から出力される形態が挙げられる。
【0151】
(発明2):発明1に記載のフィルタ装置において、前記判断手段の判断結果を報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0152】
かかる態様によれば、判断手段によってメンテナンスが必要であると判断されると、その旨が報知されるので、好ましいタイミングでメンテナンス処理が実行される。
【0153】
(発明3):発明1又は2に記載のフィルタ装置において、前記判断手段の判断結果に基づいて、前記エレメント部のメンテナンス処理を自動的に実行する自動メンテナンス手段を備えたことを特徴とする。
【0154】
かかる態様によれば、メンテナンスの必要があると判断されると、メンテナンス処理が自動的に実行されるので、メンテナンス性が向上する。
【0155】
(発明4):発明1から3のいずれかに記載のフィルタ装置において、前記検出素子は、前記液体の濁度、透明度、又は吸光度のいずれかを検出することを特徴とする。
【0156】
かかる態様における、濁度及び透明度は液体に照射された光の透過光量に基づき把握される。また、吸光度は、液体に照射された光の波長に基づき把握される。
【0157】
(発明5):発明1から4のいずれかに記載のフィルタ装置において、前記エレメント部は、下側端部が前記ハウジング部の底面に達しないように前記ハウジング部の内部に取り付けられ、前記検出素子は、前記エレメント部の下端よりも前記ハウジング部の底面側に設けられることを特徴とする。
【0158】
かかる態様によれば、ハウジング部内における汚れはエレメント部の下端よりも下側へ移動する傾向があるので、エレメント部の下端よりも下側における液体の汚れの程度を検出することで、より正確にハウジング部内の汚れの程度を把握しうる。
【0159】
(発明6):発明1から5のいずれかに記載のフィルタ装置において、前記ハウジング部は、外周面から外側に突出した凸部を有し、前記検出素子は、前記凸部の外側面又は前記凸部の外側面に近接する位置に設けられることを特徴とする。
【0160】
かかる態様によれば、ハウジング部内の液体の流れの影響が抑制される。
【0161】
(発明7):発明1から6のいずれかに記載のフィルタ装置において、前記判断手段は、前記検出手段から得られる濁度情報に基づいて前記エレメント部に対する清掃が必要であるか否かを判断することを特徴とする。
【0162】
かかる態様によれば、エレメント部の詰まりの程度に応じた好ましいタイミングでエレメント部の清掃が実行される。
【0163】
(発明8):発明1から7のいずれかに記載のフィルタ装置において、前記判断手段は、エレメント部の清掃間隔、又はエレメント部の清掃回数に基づいて、前記エレメント部の交換が必要であるか否かを判断することを特徴とする。
【0164】
かかる態様によれば、エレメント部の性能低下に応じてエレメント部を交換しうる。
【0165】
(発明9):所定の塗布対象物へ液体を塗布する液塗布部と、前記液塗布部から液体を循環させる循環流路と、前記循環流路に設けられ、ろ過対象の液体が流入する流入口、前記流入口と連通されるハウジング部、前記ハウジング部の内部に配置され、中空の筒型形状を有し外周部から中空部へ液を通過させる構造を有するエレメント部、前記中空部に内挿される排出流路、及び前記排出流路の他方の開口と連通する排出口を具備するフィルタ装置と、前記ハウジング部の外側面、又は前記ハウジング部の外側面に近接する位置に設けられ、前記ハウジング部内部の前記液体の濁りの程度を表す濁度を検出する検出素子を含む検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記液塗布部又は前記フィルタ装置に対するメンテナンス処理が必要であるか否かを判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする塗布装置。
【0166】
本発明によれば、塗布部において塗布液に混入された汚れや異物が除去されるフィルタ装置のメンテナンスが、最適なタイミングで実行される。
【0167】
(発明10):発明9に記載の塗布装置において、前記液塗布部又は前記フィルタ装置に対するメンテナンス処理を自動的に実行する自動メンテナンス処理部を備えたことを特徴とする。
【0168】
かかる態様によれば、メンテナンス処理が自動的に実行されることで、メンテナンス性が向上する。
【0169】
(発明11):発明9又は10に記載の塗布装置において、前記液塗布部及び前記フィルタ装置と連通し、前記液塗布部及び前記フィルタ装置のメンテナンスに使用された廃液が収容される廃液収容部を備え、前記メンテナンス処理部は、前記液塗布部又は前記フィルタ装置に対するメンテナンス処理が実行された後に、前記液塗布部及び前記フィルタ装置のメンテナンスに使用された廃液を前記廃液収容部へ送液することを特徴とする。
【0170】
かかる態様によれば、フィルタ装置のメンテナンス後の清浄状態が確保される。
【0171】
(発明12):ろ過対象の液体が流入する流入口、前記流入口と連通されるハウジング部、前記ハウジング部の内部に配置され、中空の筒型形状を有し外周部から中空部へ液を通過させる構造を有するエレメント部、前記中空部に内挿される排出流路、及び前記排出流路の他方の開口と連通する排出口を具備するフィルタ装置の前記ハウジング部内部の前記液体の濁りの程度を表す濁度を検出する検出工程と、前記検出工程における検出結果に基づいて、前記エレメント部に対するメンテナンス処理必要であるか否かを判断する判断工程と、前記判断工程において前記エレメント部に対するメンテナンス処理が必要であると判断されると、前記エレメント部に対するメンテナンス処理が実行されるメンテナンス工程と、を含むことを特徴とするフィルタ装置のメンテナンス方法。
【符号の説明】
【0172】
10,166…フィルタ装置、22…ハウジング部、24…エレメント部、24C…下側端部、25…凸部、26,266…濁度センサ、42,242…濁度判定部、44,244…報知部、50…液供給部、54,168…ポンプ、56,132…タンク、60,172…廃液タンク、160,162…循環バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過対象の液体が流入する流入口と、
前記流入口と連通されるハウジング部と、
前記ハウジング部の内部に配置され、中空の筒型形状を有し外周部から中空部へ液を通過させる構造を有するエレメント部と、
前記中空部に内挿される排出流路と、
前記排出流路の他方の開口と連通する排出口と、
前記ハウジング部の外側面、又は前記ハウジング部の外側面に近接する位置に設けられ、前記ハウジング部内部の前記液体の濁りの程度を検出する検出素子を含む検出手段と、
前記検出手段による検出結果に基づいて、前記エレメント部に対するメンテナンス処理が必要であるか否かを判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記判断手段の判断結果を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置
【請求項3】
前記判断手段の判断結果に基づいて、前記エレメント部のメンテナンス処理を自動的に実行する自動メンテナンス手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記検出素子は、前記液体の濁度、透明度、又は吸光度のいずれかを検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記エレメント部は、下側端部が前記ハウジング部の底面に達しないように前記ハウジング部の内部に取り付けられ、
前記検出素子は、前記エレメント部の下端よりも前記ハウジング部の底面側に設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記ハウジング部は、外周面から外側に突出した凸部を有し、
前記検出素子は、前記凸部の外側面又は前記凸部の外側面に近接する位置に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記判断手段は、前記検出手段から得られる濁度情報に基づいて前記エレメント部に対する清掃が必要であるか否かを判断することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記判断手段は、エレメント部の清掃間隔、又はエレメント部の清掃回数に基づいて、前記エレメント部の交換が必要であるか否かを判断することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
所定の塗布対象物へ液体を塗布する液塗布部と、
前記液塗布部から液体を循環させる循環流路と、
前記循環流路に設けられ、ろ過対象の液体が流入する流入口、前記流入口と連通されるハウジング部、前記ハウジング部の内部に配置され、中空の筒型形状を有し外周部から中空部へ液を通過させる構造を有するエレメント部、前記中空部に内挿される排出流路、及び前記排出流路の他方の開口と連通する排出口を具備するフィルタ装置と、
前記ハウジング部の外側面、又は前記ハウジング部の外側面に近接する位置に設けられ、前記ハウジング部内部の前記液体の濁りの程度を表す濁度を検出する検出素子を含む検出手段と、
前記検出手段による検出結果に基づいて、前記液塗布部又は前記フィルタ装置に対するメンテナンス処理が必要であるか否かを判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項10】
前記液塗布部又は前記フィルタ装置に対するメンテナンス処理を自動的に実行する自動メンテナンス処理部を備えたことを特徴とする請求項9に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記液塗布部及び前記フィルタ装置と連通し、前記液塗布部及び前記フィルタ装置のメンテナンスに使用された廃液が収容される廃液収容部を備え、
前記メンテナンス処理部は、前記液塗布部又は前記フィルタ装置に対するメンテナンス処理が実行された後に、前記液塗布部及び前記フィルタ装置のメンテナンスに使用された廃液を前記廃液収容部へ送液することを特徴とする請求項9又は10に記載の塗布装置。
【請求項12】
ろ過対象の液体が流入する流入口、前記流入口と連通されるハウジング部、前記ハウジング部の内部に配置され、中空の筒型形状を有し外周部から中空部へ液を通過させる構造を有するエレメント部、前記中空部に内挿される排出流路、及び前記排出流路の他方の開口と連通する排出口を具備するフィルタ装置の前記ハウジング部内部の前記液体の濁りの程度を表す濁度を検出する検出工程と、
前記検出工程における検出結果に基づいて、前記エレメント部に対するメンテナンス処理必要であるか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において前記エレメント部に対するメンテナンス処理が必要であると判断されると、前記エレメント部に対するメンテナンス処理が実行されるメンテナンス工程と、
を含むことを特徴とするフィルタ装置のメンテナンス方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−166111(P2012−166111A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26427(P2011−26427)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】