説明

フィルタ装置

流体から不純物を除くフィルタ装置は、流体を通す複数のスクリーン部分(18,20)を含み、上記複数のスクリーン部分は、第1スクリーン部分(18)と、第1スクリーン部分からあらかじめ決められた距離だけに離れた第2スクリーン部分(20)とを含む。この距離はしきい粒子長を基に決められる。1例ではフィルタ装置(10)はハウジング(16)の中に取り付けられ、このハウジングは入れ子構造の2つのフィルタ素子(18,20)を収容する。このフィルタを用いる粒子検出器が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れの中に同伴された粒子を除くときに使用されるフィルタ装置と、フィルタなどを用いた粒子検出器に関する。好ましい実施形態は、煙検出器によるサンプル流れの解析の前に、サンプルの流れから細長い粒子を除去することに関連して説明される。しかし、本発明は、例示の用途に限定されると考えられるべきではない。
【背景技術】
【0002】
光学的粒子検出器において、粒子の存在は、空気サンプルの中で、サンプルを通る電磁気的放射のビームから散乱の程度を監視することにより、検出できる。ときどき、ちり、糸くず、昆虫などの望ましくない不純物(夾雑物)が、検出がされる検出室に入ることがある。そのような不純物は、もし電磁気的放射のビームに当たるならば、典型的には、検出室内で相当な散乱を起こし、不純物を粒子と誤って検出する「偽陽性(false positive)」検出イベントを起すことがある。これは、特に、電磁気的検出器に見えるビームの部分(典型的には「関心領域」という)に望ましくない不純物が入る場合である。
【0003】
望ましくない不純物が検出室の中に入るのに対して守るために、フィルタを備えた多くの粒子検出器が流路の中に配置され、サンプルが検出室に入るまえにサンプルを濾過する。
【0004】
煙検出システムの入口で濾過する方法は、煙検出器を吸引するときに主に使用されているが、フォーム(foam)、紙などの「バルク」のフィルタを用いた濾過である。そのようなフィルタは、大きなちり粒子や糸くずなどの細長い粒子の両方を除くのに有効であるが、検出されるべき煙粒子も除いてしまう傾向があるのが欠点である。
【0005】
バルクのフィルタによる空気流からの、捜している粒子(たとえば煙)の除去は、フィルタ材料がつまるにつれて、しだいにきびしくなる。しかし、このつまりは、空気流をとおる煙粒子の除去への影響に比べて、システムを通る空気流への影響はよりきびしくないことがわかった。したがって、フィルタを通るときの圧力低下へのその結果として起こる影響は比較的小さい。さらに、そのようなフィルタは、一般的に、全システムの圧力低下の小部分にのみ寄与するように設計され、したがって、許容できない感度減少の信号へのつまりの影響は信頼できない。
【0006】
バルクのフィルタの使用の代わりに、検出器の入口に配置されるメッシュスクリーンが使用される。そのようなスクリーンは、メッシュスクリーンの穴径より大きなすべての粒子が検出室に入るのを効果的に防止する。しかし、より小さな粒子は、なお通っていく。また、細長い粒子も、メッシュスクリーンフィルタの1つの問題を提示する。なぜなら、粒子は、メッシュスクリーンの口径より十分に長くても、スクリーンに整列されると、スクリーンを通過するのに十分な小さい断面をもつことがある。
【0007】
さらに、いくつかの細長い粒子は、はじめメッシュスクリーンにより止められても、スクリーンに対する向きが変わると、スクリーンを通り、したがって、ゆれ動いて通り抜ける。従来は、この問題に対する機械的解決を見出すことは不可能であり、ソフトウェアを基にした解決が必要であると考えられていた。
【0008】
ある範囲の技法により、煙検出器は、フィルタを使用せずに、ちり粒子の影響を許容できることが知られている。しかし、細長い粒子は、なお、煙検出器の検出エリア内でつまるにつれ、実質的に永久の誤った煙検出応答を生じるという問題を提示する。
【0009】
実際に、いくつかの細長い粒子は、関心領域を比較的速く移動し、短時間の偽陽性の読みを生じる。典型的には、そのようなイベントは、検出器のソフトウェアにおける適当なアルゴリズムを用いて処理できる。しかし、永久的な誤った警報は、検出器の内部に、関心領域の中にとどまらせる位置に、収容または付着された粒子により生じる。そのような誤った警報を引き起こさせる粒子の長さは、煙検出器の内部構成に依存する。この観点で、付着している表面から関心領域にまで十分長い粒子が検出器に脅威を生じる。より短い細長い粒子は、関心領域まで届かないので、したがって、こうして脅威を生じない。
【0010】
なお、上述の従来技術の説明は、従来技術または従来技術から発明者により得られた結論が、本出願の優先日に当業者の共通の一般的知識の一部であったということを認めたものではない。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の観点では、流体から不純物を除去するフィルタ装置は、流体を通す複数のスクリーン部分を含み、上記複数のスクリーン部分は、第1スクリーン部分と、第1スクリーン部分からあらかじめ決められた距離だけ離れた第2スクリーン部分とを含む。
【0012】
好ましくは、あらかじめ決められた上記距離は、流体から除去されるべき粒子のしきい粒子長に基づいて決められる。
【0013】
上記フィルタ装置の好ましい実施形態では、フィルタ装置は、粒子検出器により処理されるべき流体から不純物を除去するように適合される。この場合、好ましくは、第1と第2のスクリーン部分は、その粒子検出器の臨界的粒子長以下の距離だけ互いに離れている。
【0014】
好ましくは、複数のスクリーン部分の間隔は、上記粒子検出器の上記臨界的粒子長の90%より小さい。複数のスクリーン部分の間隔は、たとえば、上記粒子検出器の上記臨界的粒子長の80%と50%の間である。他の間隔もまたうまくいく。
【0015】
1つの実施形態では、好ましい上記しきい粒子長は0.25mmと10mmの間である。
【0016】
ある具体例では、フィルタ装置の上記第1と第2のスクリーン部分の間隔は、150リットル/分より低い流体の流速での作業に最適化されている。
【0017】
本発明の第2の観点では、流体から粒子を除去するフィルタ装置が提供される。フィルタ装置は、重なる複数のスクリーン部分を含み、上記複数のスクリーン部分は、流体により直列に通り抜けられるように配置される。ここで、上記複数のスクリーン部分の中の第1のスクリーン部分は、その次に通り抜けられるスクリーン部分からスペーサー手段により離れている。
【0018】
本発明の第3の観点では、流体から細長い粒子を除去するフィルタ装置が提供される。このフィルタ装置は、流体により直列に通り抜けられるように配置された複数のスクリーン部分を含む。ここで、その中の1つの下流スクリーン部分は、1つの上流スクリーン部分の粒子未整列ゾーン内に位置される。ここで、上記上流スクリーン部分を通る粒子は、上記粒子未整列ゾーン内において上流スクリーン部分による流れの方向と整列されない。
【0019】
本発明の上述の複数の観点では、複数の上記スクリーン部分は複数の異なるスクリーンであって、上記流体が続けて通るように配置される。好ましくは、上記第1及び第2のスクリーン部分は実質的に平行である。複数の上記スクリーン部分はたとえばメッシュ材料から作られる。
【0020】
ある実施形態では、フィルタ装置は、内部に室を区画する少なくとも1つの壁を備えるハウジングと、上記ハウジング内に配置される複数のフィルタ素子とを含む。ここで、上記ハウジングは、さらに、流体が上記室に入ってくる少なくとも1つの入口開口と、流体が上記室から出ていく少なくとも1つの出口開口とを備え、各々の上記フィルタ素子は、上記室の入口から出口への流路を横切る少なくとも1つのスクリーン部分を含む。
【0021】
上記フィルタ素子は、ある範囲の複数の形状の中のいずれかを有し、その形状範囲はかご状の形状を含む。かご状のフィルタ素子を用いた1つの実施形態において、第1のかご状フィルタ素子は、第2のかご状フィルタ素子の中に入れ子状に収容できる。
【0022】
第1と第2の上記スクリーン部分は、実質的に同じ穴径をもつメッシュ材料で形成できる。または、第1と第2の上記スクリーン部分は、異なる穴径をもつメッシュ材料で形成できる。
【0023】
上記フィルタ装置は、重なる複数のスクリーン部分の間に位置されるスペーサー手段を含んでもよい。上記スペーサー手段は、たとえば、重なる複数のスクリーン部分の間に少なくとも1つのあらかじめ決められた間隔を維持する。上記スペーサー手段は、たとえば、スクリーンを含む。上記スペーサー手段は、たとえば、1以上のモールド成形された素子を含む。上記スペーサー手段は、たとえば、重なる複数のスクリーン部分の間にあらかじめ決められた間隔に等しい厚さのメッシュを含む。
【0024】
1つの好ましい形では、複数の上記スクリーン部分は円筒形状であり、互いに実質的に同心に配置される。
【0025】
本発明の第4の観点では、流体から不純物を除去するフィルタ装置は、流体が通る複数のスクリーン部分を含む。ここで、複数の上記スクリーン部分は、スクリーン相互作用領域を備える第1スクリーン部分と、第1スクリーン部分から離れ第1スクリーン部分の上記スクリーン相互作用領域内に位置される第2スクリーン部分とを含む。
【0026】
本発明の第5の観点では、本発明の1つの観点の実施形態によるフィルタ装置を含む粒子検出器が提供される。粒子検出器は、好ましくは、煙を検知する煙検出器である。
【0027】
本発明の他の観点では、流体サンプルのなかで粒子を検出する粒子検出器は、流体サンプルを受け取る入口と、上記入口と連通している、上記サンプル室は、上記流体サンプルの少なくとも一部を受け取るサンプル室を区画する少なくとも1つの壁を含むハウジングと、上記サンプル室の中で1つの関心領域の中の粒子を測定するように配置される粒子検出手段と、上記入口から入る流体サンプルから不純物を除去するフィルタ装置とを含む。フィルタ装置は、流体が通る複数のスクリーン部分を含み、その中の第1と第2の上記スクリーン部分は、互いにあらかじめ決められた間隔だけ離れている。
【0028】
あらかじめ決められた上記距離は、流体から除かれるべき粒子のしきい粒子長を基に決定される。
【0029】
上記しきい粒子長は、好ましくは、上記サンプル室の少なくとも一部を区画する壁と、上記粒子検出手段の関心領域との間の最小間隔に等しい。複数のスクリーン部分の間の上記間隔は、好ましくは、上記しきい粒子長より小さい。
【0030】
本発明の他の観点では、粒子検出システムは、流体の流れのなかにある粒子の存在を検出する粒子検出器と、上記粒子検出器による粒子の検出の前に流体の少なくとも一部を濾波するフィルタ装置とを含む。ここで、上記フィルタ装置は、上述のいずれかの観点の1実施形態によるフィルタ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】流速と、流体を横切るスクリーン部分とを示し、上記スクリーン部分のスクリーン相互作用領域が描かれる。
【図1B】本発明の1実施形態のフィルタ素子とともに使用可能な粒子検出器を示す。
【図2】本発明の第1実施形態によるフィルタ装置の分解図である。
【図3】本発明の1つの実施形態において使用可能な第1のフィルタ素子を示す。
【図4】本発明の1つの実施形態において使用可能な第2のフィルタ素子を示す。
【図5】本発明の1つの実施形態におけるフィルタハウジングの断面図とCおよびDの部分拡大図である。
【図6】本発明の上記実施形態による組み立てられたフィルタ装置の断面図を示す。
【図7A】本発明の1つの実施形態によるフィルタ装置の1部を示す。
【図7B】図7Aに示されるフィルタ装置の断面図である。
【図8】本発明の別の実施形態のフィルタ装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照して発明の実施の形態を説明する。
発明者は、流体の流れの中に、比較的短い距離だけ相互に離れている複数のスクリーン部分を配置することにより、細長い粒子の捕獲における有効性を大きく増加できることを見出した。
【0033】
第1スクリーン部分は、その穴径より大きなすべての寸法をもつすべての粒子を捕え、かつ、スクリーンにおける穴径より小さい断面積をもつ細長い粒子の一部を捕えることが期待される。しかし、発明者が見出したように、いくつかの種類の粒子では、もし第1スクリーンの下流に少なくとも1つの追加のスクリーンが適当な位置に置かれるならば、第1スクリーン(及びそれに続くスクリーン)を出る粒子径分布がわかっているとすると、複数のスクリーンに捕えられる粒子の割合が予想より大きくなる。
【0034】
第2スクリーンにより提供される改良された濾過は、以下の複数の効果の1つまたは両方の結果であると、発明者は仮定する。
【0035】
1.隣り合うスクリーン部分の間隔より長い粒子は、もしフィルタ装置を同時に通過するべきならば、典型的には2つのスクリーンに同時に接触し、スクリーンの2層を同時に進まねばならない。しかし、2つのスクリーンに同時に接触することにより粒子の運動の自由度は減り、その結果、2つのスクリーンを通って揺り動く(wiggle)能力を低くする。
【0036】
2.第1スクリーンを通る細長い粒子は、スクリーンにより流れの方向にほぼ整列される。この場合、発明者は以下を仮定する。すなわち、フィルタ装置の上流スクリーン部分は、その下流に乱流のゾーンを生じ、これは、スクリーンの間隔より短い細長い粒子を、はじめの整列状態から回転させる。もし第2スクリーン部分がこの乱流ゾーンの中またはそのすぐ後に置かれるならば、第2スクリーン部分の粒子捕獲効率は、細長い粒子が下流スクリーン部分の穴と整列されにくくなるにつれて増加しうる。
【0037】
明細書及び特許請求の範囲において、「スクリーン相互作用領域」の用語は、第1スクリーン部分の下流の領域をいう。スクリーン相互作用領域の中に第2スクリーン部分を置くことができ、また、この第2スクリーン部分は、第1スクリーン部分が存在せず、かつ、第2スクリーン部分が同じ流速で同じ粒子径分布に曝されている場合の第2スクリーン部分の性能に比べて、細長い粒子のスクリーン性能を向上する。なお、ここでいう粒子径分布は、第1スクリーン部分を通った後の流体の流れに残っている粒子径分布である。また、複数のスクリーン部分は、ある長さの1つの粒子を、その粒子の長さ以下の間隔で置かれているときにともに作用して、捕獲できる。
【0038】
図1Aは、検出室102に置かれたスクリーン100のスクリーン相互作用の1例を示す。流体は、検出室102のなかで、矢印104で示される方向に流れている。スクリーン100にすぐに続いて、より乱れた流れの領域106がスクリーンの存在により生じる。細長い粒子はスクリーンを通るときに流れの方向に整列しようとするので、領域106における増加した乱れは、細長い粒子を回転させる。いくつかの例では、領域108において示されるように、粒子は、ある期間、流れの方向に再配列しない。スクリーン相互作用領域は、これらの2つの領域の組み合わせである。
【0039】
明細書と特許請求の範囲において、1つの検出器についての「臨界的粒子長」は、粒子検出器の関心領域に入り検出器の一部に付くことがある粒子の最小長さである。いくつかの場合(たとえば流体の流れの決められた方向に、吸引された粒子の検出器)、検出器の臨界的粒子長を考えるとき、粒子検出器の関心領域から「上流」での表面のみを考えれば十分である。
【0040】
図1Bは、煙検出器2を示し、煙検出器の臨界的粒子長の概念を説明するために用いられる。煙検出器2は、光散乱型であり、筒状の検出室を含む。この検出室は、一端に、検出室をとおる集束光線1を生成するための光源6とレンズ8を備える。検出器の光源6は、図示された例ではレーザーであるが、その代わりに、他の形態の光源も使用できる。光線1は、検出室4の他端にある光吸収器3の中にすすむ。入口5と出口7は、光吸収器3のちかくの位置で、光線1の光路を横切って流体の流れを斜めに向けるように配置される。散乱光を受け取る光検出器9は、光吸収器3の近くで囲い11の中に設置される。光検出器9は、視角13の中で光線から散乱された光を受け取る。こうして、もし粒子が光検出器9により見られる光線の部分すなわち関心領域に入れば、光を光検出器9のほうに強く散乱する。
【0041】
上に述べたように、細長い粒子は十分に長いため、関心領域15に永久的に(または繰り返し)入るように、検出器2の内壁の1つの位置に付くことが可能であり、これにより誤った警報を生じる。そのような問題を生じる粒子の最小の長さ、すなわち、臨界的粒子長は、関心領域と検出室の内壁の間の最小距離により決められる。この例では、関心領域と検出室の内壁の間の最小距離は、参照数字21により示され、検出器の臨界的粒子長を定義する。
【0042】
検出器2の検出室4に入る流体の流れから細長い粒子を除くために、その入口5は、2つのフィルタ素子118,120を備える。これらは、流体の流れの方向に測定されたときに検出器2の臨界的粒子長21より小さい間隔をあけて平行な方向に設置される。それらは、好ましくは、入口5の軸に対して1つの角度をなして置かれて、(流体の流れに直交して置かれたスクリーンに比べて)比較的大きな表面を提供する。
【0043】
いくつかの用途では、臨界的長さ以上のすべての細長い粒子を除くのが望ましい。しかし、他の例では、すべてのそのような粒子を濾過するのが必須ではない。たとえば、いくつかの状況では、予想された粒子分布は、臨界的長さより長いが、しきい粒子長より短いような粒子をほとんど生じない。これらの状況では、このしきい長より短い粒子を濾過しようとしなくても、許容可能な信頼性が達成できる。
【0044】
図2は、粒子検出装置14の入力ポートに結合されて粒子検出システムを構成するフィルタ装置10の分解図をしめす。この例では、粒子検出装置は、Xtralis社により商標VESDAのもとで市販された吸引煙検出器である。フィルタ装置10は、流路にサンプリング用パイプネットワーク(図示しない)と煙検出器14の入力ポート12の間に取り付けられる。フィルタ装置10は、2つのフィルタ装置18,20を収容するように構成されたハウジング16を備える。このハウジング16は、カバー22により閉じられ、カバー22とハウジング16の間でシール24によりもれに対して封じられる。使用においては、フィルタ素子18,20は、入れ子構造に配置され、フィルタ素子20の内部にフィルタ素子18が位置される。フィルタ素子18,20は、第1のフィルタ素子18のフィルタ用スクリーンと第2のフィルタ素子20のフィルタ用スクリーンが実質的に全表面にわたって互いにあらかじめ決められた間隔に維持されるような形状を備える。
【0045】
使用において、サンプリング用ネットワークからの流体の流れは、入口ポート26によりフィルタハウジング16に入り、次に第1フィルタ素子18のフィルタ用スクリーンを通り、第2フィルタ素子20のフィルタ用スクリーンを通り、さらに、フィルタハウジング16の出口ポートを通り、煙検出器14の入口ポート12に入る。
【0046】
図3は、図2に描かれた内側フィルタ素子18の斜視図である。フィルタ素子は、上板200と底板202からなり、それらの間に、筒状の網であるフィルタ媒体204がある。上板200は、空気をフィルタ素子18に入るようにするための開口210を備える。好ましい実施形態では、フィルタ媒体204は、ステンレス鋼のメッシュである。フィルタ素子18の上板200は、フィルタ装置10のハウジング16の中に収容される形状を備え、また、ハウジング16からフィルタバスケット18を容易に移動するためのグラブ(つかみ部)206を備える。下側の板202の上に形成される位置決めピン208を用いて、フィルタバスケット18を第2のフィルタバスケット20と整列して、内側バスケット18のフィルタ素子204と外側バスケット20のフィルタ素子304(図4参照)の間の間隔を維持する。
【0047】
図4は、この好ましい実施形態において用いられる外側フィルタバスケット20を示す。フィルタバスケット20は、全体の構成において内側フィルタバスケット18と同様であり、上板300,底板302およびそれらの間の筒状網である濾過素子304である。上板300は、そこに区画された開口306を備え、その寸法は、内側の濾過素子18がその中に挿入できるように決められる。図4に示されないけれども、底板302は、内側バスケットの位置決めピン208を受け入れられる凹部(または他の位置決め装置)を備える。この位置決めピン208により、内側と外側の濾過バスケット18、20の濾過素子204,206の間で実質的に一様な間隔が維持されるように両バスケット(18と20)を整列する。
【0048】
図5は、この好ましい実施形態のフィルタ装置10のハウジング16を通る断面図を示す。ハウジング16は、箱状の囲みを備え、その中に2つのフィルタ素子18,20が挿入される。ハウジング16は、入口ポート26と出口ポート28を備える。入口ポート26は、段状の開口を備え、この開口の寸法は、入口管と気密に係合する。出口ポート28は、テーパー状の壁を備え、煙検出器の入口ポートすなわち管の中に気密に挿入される。ハウジング16の内側壁は、案内装置404を備える。案内装置404は、フィルタバスケット18,20の上板200,300を受け入れて、ハウジング室406の中に適所に保持するように構成される。ハウジング408の開いた側は、カバー22で閉じられシール24で封じられるように構成される。
【0049】
図6は、組み立てられたフィルタ装置10の断面図である。図に示されているように、フィルタバスケット18は、外側フィルタバスケット20の中に入れ子であり、それらはともに、ハウジング16により区画される空隙406の中に位置される。ハウジングは、カバー22で閉じられ、シール24で封じされる。
【0050】
使用において、同伴された粒子を伴う流体の流れがハウジング16の入口ポート26に矢印500の方向に入り、内側のフィルタ用素子18の内側中空部にすすむ。次に、矢印504で示されるように、内側濾過バスケット18の濾過材料をとおり、内側と外側の濾過バスケット18,20の間の空間502を通り、外側濾過バスケット20のフィルタ用材料を通る。濾過された流れは、次に矢印508により示されるように外側濾過用バスケットの外側をとおり、出口ポート28から出ていく。
【0051】
この好ましい実施形態において、内側と外側の濾過用バスケット18,20の濾過材料は、サイズ100/42のステンレス鋼で編んだメッシュである。このメッシュのサイズは、xx/yyの形で特定される。ここで、xxは、インペリアル(imperial)メッシュサイズ(インチ当たりの穴の数)であり、yyは、メッシュを形成するワイヤの近似的な標準ワイヤゲージである。
【0052】
この実施形態において、2つのメッシュスクリーンは、同じ仕様のメッシュからなるが、いくつかの場合では、好ましくは異なるメッシュサイズが使用できる。第1と第2のバスケット18,20の間のメッシュ層の間隔は、4mmである。したがって、この実施形態は、上述の第1の捕獲機構を用いて、4mmより長い粒子を捕らえることができ、第2の捕獲機構により4mmより短い粒子の捕獲を増加できる。
【0053】
以上に説明した測定とメッシュサイズは、吸引煙検出器(たとえば、Xtralis社により製造されるVESDA(商標)LaserPLUS煙検出器)についてサンプルの流れから細長い粒子を除く用途に最適であることがわかった。他の検出器を使う場合、流速および/または粒子径が上述の用途とは異なる場合、または、濾過されるべき流体が空気でさえない場合などの他の状況において、最適なスクリーンの大きさとスクリーン部分の間隔は、上述の場合とは異なる。
【0054】
図7Aと図7Bは、本発明の1実施形態のフィルタ装置の1部を示す。このフィルタ装置は、3つの互いに重なるスクリーン部分を含む。図7Aは、フィルタ装置700の
斜視図であり、図7Bは、その断面図である。このフィルタ装置700は、比較的小さなサイズの穴を有する外側スクリーン部分702,704を含む。スペーサー706は、外側層702,704の間に挟まれる。この実施形態におけるスペーサー706は、外側スクリーン部分702,704より大きな径の穴を有するスクリーンである。この実施形態において、外側スクリーン部分702,704は、内側スクリーン部分層706の対向する2つの面にあたり、フィルタ装置700の1次濾過の役割を行う。図7Bの断面図でわかるように、スペーサー706は、外側スクリーン部分702,704の間であらかじめ決められた間隔を維持し、また、フィルタ装置に力学的強度を提供するが、フィルタ装置をとおる流体の流れに最小限の影響を与えるのみである。
【0055】
1つの実施形態において、外側スクリーン部分702,704は、1組の寸法をもつワイヤのメッシュである。内側スクリーン部分706は、同様にワイヤのメッシュであるが、その寸法は、外側スクリーン部分702,704との間隔を維持するように選択される。別の実施形態では、スペーサー706は、他の材料から作られる。たとえば、スペーサーは、モールドで成形されたプラスチックスクリーンである。
【0056】
図8は、フィルタ装置800の1例の実施形態を示す。このフィルタ装置800は、同心に配置された円筒状のフィルタ素子802,804を備える。そのような実施形態は、多くの点煙検出器におけるように検出器がハウジングのほぼ円筒状の部分の側面を通る1以上の入口を備える用途において、便利に使用できる。
【0057】
さらに、スペーサーは、メッシュ状の構造でなくてもよく、スクリーンの外側層の間の間隔を維持しかつ流れをそれらの外側スクリーン部分に通す(複数の別々のスペーサーを含むスペーサー層を含む)いずれかのスペーサー装置であってもよい。
【0058】
また、理解されるように、本発明のある実施形態では、フィルタ装置を通る粒子の数をさらに減らすために2より多いスクリーン部分が使用できる。この場合、スクリーン部分の中の2つのみが、その一方が他方のスクリーン相互作用領域の中にあるように位置されねばならない。しかし、第1のスクリーン部分の下流にあるすべて(または一部)のスクリーン部分も、1以上の上流のスクリーン部分の相互作用領域の中に位置されてもよい。
【0059】
いくつかの例では、上述のスクリーン相互作用効果は、スクリーンの一部が他方に重なるように折りたたまれたスクリーン部分を備えるように構成された1つのスクリーンのみを用いて達成できる。たとえば、スクリーン材料のU字形状の網を備えたスクリーンや、流体の流れを横切るように設けられ、また、流体が一方の側から他方の側へ(たとえば円筒の直径方向に)通るような筒状のスクリーン構成が用いられる。
【0060】
スクリーン部分における穴は、任意の適当な形状であればよく、形状が一様である必要はなく、複数のスクリーン部分の間でまたは1つのスクリーン部分の中で変化してもよい。
【0061】
また、複数層のメッシュは、フォームや他のバルクフィルタと同じ煙粒子透過のゆるやかな劣化の欠点を持たないだろうとの仮説が設けられた。しかしむしろ、流速は煙粒子の透過の減少のはじまりと同時に低下して、煙検出性能の検出不可能な減少が起こる前に、よい時に故障条件が検出または報告されるのを可能にする。この「フェールセーフ」機構は、実験により実質的に実証されている。
【0062】
理解されるように、この明細書に記載され定義された発明は、明細書及び図面に記載されまたは明らかな2以上の特徴のすべての組み合わせに及ぶ。これらの異なる組み合わせのすべては、発明の種々の別々の観点を構成する。
【0063】
また、理解されるように、本明細書における「からなる」(またはその文法的変形)の用語は、「含む」の用語と同等であり、他の要素や特徴の存在を排除するものと解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0064】
10 フィルタ装置、 16 ハウジング、 18 第1スクリーン部分、 20 第2スクリーン部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体から不純物を除去するフィルタ装置であって、
流体を通す複数のスクリーン部分を含み、上記複数のスクリーン部分は、あらかじめ決められた距離だけ互いに離れた第1スクリーン部分と第2スクリーン部分を含む、
フィルタ装置。
【請求項2】
あらかじめ決められた上記距離は、流体から除去されるべき粒子のしきい粒子長に基づいて決められる、請求項1に記載されたフィルタ装置。
【請求項3】
粒子検出器により処理されるべき流体から不純物を除去するため、第1スクリーン部分と第2スクリーン部分が、上記粒子検出器の臨界的粒子長以下の距離だけ互いに離れている、請求項2に記載されたフィルタ装置。
【請求項4】
複数のスクリーン部分の上記間隔は、上記粒子検出器の上記臨界的粒子長の90%より小さい、請求項3に記載されたフィルタ装置。
【請求項5】
複数のスクリーン部分の上記間隔は、上記粒子検出器の上記臨界的粒子長の80%と50%の間である、請求項3に記載されたフィルタ装置。
【請求項6】
上記しきい粒子長は0.25mmと10mmの間である、請求項1〜4のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項7】
上記第1と第2のスクリーン部分の間隔は、流体の150リットル/分より低い流速での処理に最適化されている、請求項1〜5のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項8】
流体から粒子を除去するフィルタ装置であって、
重なる複数のスクリーン部分を含み、上記複数のスクリーン部分は、流体により直列に通り抜けられるように配置され、
上記複数のスクリーン部分の中の第1のスクリーン部分は、その次に通り抜けられるスクリーン部分からスペーサー手段により離れている、フィルタ装置。
【請求項9】
流体から細長い粒子を除去するフィルタ装置であって、
流体により直列に通り抜けられるように配置された複数のスクリーン部分を含み、
上記複数のスクリーン部分の中の1つの下流スクリーン部分は、1つの上流スクリーン部分の粒子未整列ゾーン内に位置され、上記上流スクリーン部分を通る粒子は、上記粒子未整列ゾーン内で上流スクリーン部分による流れの方向と整列されない、
フィルタ装置。
【請求項10】
複数の上記スクリーン部分は複数の異なるスクリーンであって、上記流体が続けて通るように配置される、請求項1〜9のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項11】
上記第1及び第2のスクリーン部分は実質的に平行である、請求項1〜10のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項12】
複数の上記スクリーン部分はメッシュ材料から作られる、請求項1〜11のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載されたフィルタ装置であって、
内部に室を区画する少なくとも1つの壁を備えるハウジングと、
上記ハウジング内に配置される複数のフィルタ素子とを含み、
上記ハウジングは、さらに、流体が上記室に入ってくる少なくとも1つの入口開口と、流体が上記室から出ていく少なくとも1つの出口開口とを備え、
各々の上記フィルタ素子は、上記室の入口から出口への流路を横切る少なくとも1つのスクリーン部分を含む、
フィルタ装置。
【請求項14】
第1と第2の上記スクリーン部分は、実質的に同じ穴径をもつメッシュ材料で形成される、請求項1〜13のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項15】
第1と第2の上記スクリーン部分は、異なる穴径をもつメッシュ材料で形成される、請求項1〜13のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項16】
重なる上記複数のスクリーン部分の間に位置されるスペーサー手段を含む、請求項7〜14のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項17】
上記スペーサー手段は、重なる上記複数のスクリーン部分の間に少なくともあらかじめ決められた間隔を維持する、請求項15に記載されたフィルタ装置。
【請求項18】
上記スペーサー手段はスクリーンを含む、請求項14または15に記載されたフィルタ装置。
【請求項19】
上記スペーサー手段は、重なる複数のスクリーン部分の間にあらかじめ決められた上記間隔に等しい厚さのメッシュを含む、請求項15〜17のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項20】
上記スペーサー手段は1以上のモールドで成形された素子を含む、請求項15〜18のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項21】
複数の上記スクリーン部分は円筒形状であり、互いに実質的に同心に配置される、請求項1〜20のいずれかに記載されたフィルタ装置。
【請求項22】
流体から不純物を除去するフィルタ装置であって、
流体が通る複数のスクリーン部分を含み、
上記複数のスクリーン部分は、スクリーン相互作用領域を備える第1スクリーン部分と、第1スクリーン部分から離れ第1スクリーン部分の上記スクリーン相互作用領域内に位置される第2スクリーン部分とを含む、
フィルタ装置。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載されたフィルタ装置を含む粒子検出器。
【請求項24】
煙を検知する、請求項23に記載された粒子検出器。
【請求項25】
流体サンプルのなかで粒子を検出する粒子検出器であって、
流体サンプルを受け取る入口と、
上記入口と連通していて上記流体サンプルの少なくとも一部を受け取るサンプル室を区画する少なくとも1つの壁を含むハウジングと、
上記サンプル室の中で1つの関心領域の中で粒子を測定する粒子検出手段と、
上記入口から入る流体サンプルから不純物を除去するフィルタ装置であって、流体が通る複数のスクリーン部分を含み、その中の第1と第2の上記スクリーン部分は、互いにあらかじめ決められた間隔だけ離れている、フィルタ装置と
を含む粒子検出器。
【請求項26】
あらかじめ決められた上記距離は、流体から除かれるべき粒子のしきい粒子長を基に決定される、請求項24に記載された粒子検出器。
【請求項27】
上記しきい粒子長は、上記サンプル室の少なくとも一部を区画する壁と上記粒子検出手段の関心領域との間の最小間隔に等しい、請求項25に記載された粒子検出器。
【請求項28】
スクリーン部分の間の上記間隔は、上記しきい粒子長より短い、請求項25または26に記載された粒子検出器。
【請求項29】
流体の流れのなかにある粒子の存在を検出する粒子検出器と、
請求項1〜21のいずれかに記載されたフィルタ装置であって、上記粒子検出器による粒子の検出の前に上記流体の少なくとも一部を濾過するフィルタ装置と
を含む粒子検出システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−510053(P2010−510053A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537451(P2009−537451)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001805
【国際公開番号】WO2008/061317
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(507191599)エックストラリス・テクノロジーズ・リミテッド (9)
【Fターム(参考)】