説明

フィルタ装置

【課題】 通過帯域の低域側において、十分な減衰量があり、インピーダンスの高いフィルタ装置を提供する。
【解決手段】 積層体1の下面に配置された接地電極2と、積層体1の第1の層間において平面視で横並びに整列された2つの共振器電極3・3と、積層体1の第1の層間と接地電極2との間の第2の層間において互いに側面で容量結合するように平面視で横並びに整列されて接地電極2に対向するとともに、接続導体6を介して2つの共振器電極3・3のそれぞれの開放端に接続された2つの短縮容量電極4・4と、2つの共振器電極3・3の間に共振器電極3・3の長さ方向にわたって配置された、少なくとも第1の層間の上下の層を貫通して形成されるとともに接地電極2に電気的に接続されているシールド電極5とを有するフィルタ装置である。移相ラインを設けなくても、り、インピーダンスが高く、通過帯域の低域側において十分な減衰量がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話,無線LAN(Local Area Network),WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)等の無線通信機器その他の各種通信機器等において使用されるフィルタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、目的や用途に応じて携帯電話機や無線LAN等の様々な無線通信システムが用いられている。このような状況の中で、一つの装置で複数の無線通信システムに対応可能なマルチバンド対応の通信機器が望まれている。このマルチバンド対応の通信機器には、一つのアンテナを複数の無線通信システムで共用するために、それぞれの無線通信システムに使用される周波数帯に応じて信号を分波する役割を持つトリプレクサやダイプレクサなどが搭載されている。トリプレクサやダイプレクサは、特定の周波数帯を通過させるローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタなどの個々のフィルタ装置を組み合わせて構成されている。
【0003】
このようなトリプレクサやダイプレクサに用いられるフィルタ装置には、使用する(目的とする)周波数帯(以下、通過帯域)の信号を損失少なく通過させるとともに、組み合わされる他のフィルタ装置の通過帯域の信号に対して十分な減衰特性を有することが求められる。このような減衰特性が良好なフィルタ装置としては、例えば、2つのアース電極の間に設けられた誘電体層と、誘電体層内に近接して設けられた片側短絡型の2つの共振素子と、アース電極と共振素子との間の誘電体層内に設けられた結合調整電極と、共振素子の開放端側に対向する内層アース電極とを有するフィルタ装置がある。このフィルタ装置によれば、共振素子間の誘導結合度を調整可能として、所望の帯域幅が得られるというものである(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−120703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のフィルタ装置は、通過帯域の低域側に良好な減衰特性を有するものの、トリプレクサやダイプレクサの高域側のフィルタ装置として用いようとした場合には、通過帯域の低域側のインピーダンスが考慮されていないためインピーダンスが十分に高くなく、組み合わされる他のフィルタ装置へ流れるはずの通過帯域の信号を短絡してしまい、他のフィルタ装置へ信号が流れなくなってしまうというものであった。
【0006】
そこで、このようなフィルタ装置には、一般的に、フィルタ装置よりアンテナ端子側へ移相ラインを挿入し、インピーダンスを変換する方法が用いられる。移相ラインを挿入し、フィルタ装置の位相を回転させることにより、通過帯域の低域側のインピーダンスを高インピーダンス(オープン側)とすることができ、トリプレクサやダイプレクサに組み合わせることが可能となる。
【0007】
しかしながら、この移相ラインによる位相の調整は、波長に応じて移相ラインの長さを変えることで行なわれることから、1つの長さの移相ラインでは1つの周波数の位相の調整しかできないので、広帯域の周波数の位相を調整することが難しく、また低い周波数帯の位相を調整するには、長い移相ラインが必要となり、フィルタ装置が大きくなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフィルタ装置は、複数の誘電体層が積層されてなる積層体と、該積層体の下面に配置された接地電極と、前記積層体の第1の層間において平面視で横並びに整列された、それぞれ一方端が短絡端で他方端が開放端である2つの共振器電極と、前記積層体の第1の層間と前記接地電極との間の第2の層間において互いに側面で容量結合するように平面視で横並びに整列されて前記接地電極に対向するとともに、接続導体を介して2つの前記共振器電極のそれぞれの開放端に接続された2つの短縮容量電極と、2つの前記共振器電極の間に前記共振器電極の長さ方向にわたって配置された、少なくとも前記第1の層間の上下の層を貫通して形成されるとともに前記接地電極に電気的に接続されているシールド電極とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィルタ装置によれば、2つの共振器電極の間に共振器電極の長さ方向にわたって配置された、少なくとも第1の層間の上下の層を貫通して形成されるとともに接地電極に電気的に接続されているシールド電極とを備えることから、シールド電極により2つの共振器電極が直接結合することを阻止して、共振器電極と短縮容量とから成る2つの共振器回路間の結合を、短縮容量電極によるエッジ結合だけにすることができ、共振器間が容量性で結合したものとなるので、通過帯域の低域側の減衰域のインピーダンスをオープン側に設定できる(高インピーダンスとすることができる)ようになる。移相ラインを設けることがないので、通過帯域の低域側の広い周波数域において減衰域の減衰量および減衰の急峻度を増すことができ、小型で、ダイプレクサのハイバンド側のフィルタ装置に適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のフィルタ装置の実施の形態の一例を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示すフィルタ装置の共振器電極、短縮容量電極、シールド電極および結合電極の位置を示す平面図であり、(b)は、側面図である。
【図3】本発明のフィルタ装置の実施の形態の他の一例を模式的に示す分解斜視図である。
【図4】(a)は、図3に示すフィルタ装置の共振器電極、短縮容量電極、シールド電極および結合電極の位置を示す平面図であり、(b)は、側面図である。
【図5】図1および図3に示すフィルタ装置を表す等価回路図である。
【図6】本発明のフィルタ装置の伝送特性およびインピーダンス特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】シールド電極がないフィルタ装置のインピーダンス特性のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフィルタ装置について、添付の図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。図1〜図4において、1aは誘電体層、1は誘電体層1aが積層されてなる積層体、2は接地電極、3は共振器電極、4は短縮容量電極、5はシールド電極、5aは平面シールド電極層、5bは貫通シールド電極、6は共振器電極3と短縮容量電極4とを接続する接続導体、7は入力電極、7aは入力端子電極、8は出力電極、8aは出力端子電極である。
【0012】
図1および図3において、共振器電極3と短縮容量電極4とを接続する接続導体6を破線で示しているが、その他の貫通導体(例えば、入力電極7と入力端子電極7aとを接続する導体)も同様に破線で示している。図2および図4は、本発明のフィルタ装置の共振器電極3、接地容量電極4、シールド電極5、接続導体6の位置関係ついて、(a)は平面視した場合を示し、(b)は側面視した場合を示すものであり、いずれも入力電極7、入力端子電極7a、出力電極8および出力端子電極8aは省略し、誘電体層1aを透視して示している。
【0013】
本発明のフィルタ装置は、図1〜図4に示す例のように、複数の誘電体層1aが積層されてなる積層体1と、この積層体1の下面に配置された接地電極2と、積層体1の第1の層間において平面視で横並びに整列された、それぞれ一方端が短絡端で他方端が開放端である2つの共振器電極3・3と、積層体1の第1の層間と接地電極2との間の第2の層間において互いに側面で容量結合するように平面視で横並びに整列されて接地電極2に対向するとともに、接続導体6を介して2つの共振器電極3・3のそれぞれの開放端に接続された2つの短縮容量電極4・4と、2つの共振器電極3・3の間に共振器電極3・3の長さ方向にわたって配置された、少なくとも第1の層間の上下の誘電体層1a・1aを貫通して形成されるとともに接地電極2に電気的に接続されているシールド電極5とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
図1および図3に示す例では、積層体1の下面に接地電極2が形成され、下側の誘電体層1a・1a間に順次、短縮容量電極4、入力電極7および出力電極8、共振器電極3が形成され、積層体1の上面に入力端子電極7aおよび出力端子電極8aが形成されている。また、シールド電極5は入力電極7および出力電極8が形成された層間より、積層体1の上面まで形成されている。また、共振器電極3と短縮容量電極4は貫通導体6で接続され共振器回路を構成している。
【0015】
図5は、図1および図3に示すフィルタ装置を簡易的に表す等価回路図である。図5において、11は共振器電極3から成る共振器、12は短縮容量電極4が接地電極2と対向することによって生じる短縮容量を表しており、13は短縮容量電極4が互いに側面でエッジ結合することによって生じる結合容量、14は入力電極7と共振器電極3が対向することによって生じる入力容量、15は出力電極8と共振器電極3が対向することにより生じる出力容量、16は入力端子電極7aである入力端子、17は出力端子電極8aである出力端子、18は共振器11と短縮容量12が接続されることにより形成される共振器回路である。
【0016】
本発明のフィルタ装置によれば、2つの共振器電極3・3の間に共振器電極3・3の長さ方向にわたって配置された、少なくとも第1の層間の上下の誘電体層1a・1aを貫通して形成されるとともに接地電極2に電気的に接続されているシールド電極5とを備えることから、シールド電極5により2つの共振器電極3・3が直接結合することを阻止して、共振器電極3と短縮容量4とからなる共振器回路18・18間の結合を、2つの短縮容量電極4によるエッジ結合だけにすることができ、共振器11・11間が容量性で結合したものとなるので、通過帯域の低域側の減衰域のインピーダンスをオープン側に設定できる(高インピーダンスとすることができる)ようになる。通過帯域の低域側の減衰域のインピーダンスをオープン側に設定するのに移相ラインを設けることがないので、通過帯域の低域側の広い周波数域において減衰域の減衰量および減衰の急峻度を増すことができ、小型で、ダイプレクサのハイバンド側のフィルタ装置に適したものとなる。
【0017】
積層体1は、図1に示す例では、4層の誘電体層1aが積層されて構成されているが、誘電体層1aの層数は、各誘電体層1aの厚みや比誘電率、接地電極2、共振器電極3、短縮容量電極4、シールド電極5、入力電極7および出力電極8といった各電極の配置等によって適宜変えることができる。例えば厚みの厚い誘電体層1aとして、厚みの薄い誘電体層1aを複数枚積層したものを用いてもよい。このようにすると、他の誘電体層1aと同じ厚みのものを用いることが可能となり、使用する誘電体層1aの厚みの種類を減らすことができるので、製造効率がよくなる。
【0018】
接地電極2は、積層体1の下面の全面に形成され、共振器電極3・3の短絡端等と電気的に接続するための、積層体1の側面に形成される端面接地電極(図示しない)と接続される。
【0019】
共振器電極3は、積層体1の1つの誘電体層1a・1a間に2つ形成されて、平面視で横並びに整列されており、それぞれ一方端が短絡端で他方端が開放端である。短絡端は、上記の端面接地電極で接地電極2に接続される。共振器電極3は、要求される特性(通過帯域周波数や通過帯域幅)に応じてその長さが適宜設定され、2つの長さは同じにする。例えば、通過周波数が2.4GHzである場合には、小型化の観点より共振器電極3・3の長さは波長の1/4以下(電気長で31mm以下)とすればよい。共振器電極3・3の形状は特に制限はなく、長方形あるいは楕円形状や長円形状等の細長い帯状であり、通常は図1〜図4に示す例のような長方形状である。2つの共振器電極3・3の間隔は、その間にシールド電極5を形成することができる間隔であればよい。
【0020】
短縮容量電極4は、接地電極2と対向し短縮容量12を形成するとともに、短縮容量電極4同士がエッジ結合し結合容量13が得られるような形状になるように適宜配置される。短縮容量電極4を共振器電極3の長さ方向に長くすると大きなエッジ結合が得られ、大きな結合容量13が得られるものとなる。安定したエッジ結合を得るには、2つの短縮容量電極4・4の互いに対向する部分が平行な辺であるものがよく、大きなエッジ結合を得るためには、細長い帯状の形状であるのがよい。2つの短縮容量電極4・4間の距離は、これらの間に必要なエッジ結合量に応じて、また2つの短縮容量電極4・4の長さによって適宜設定される。2つの短縮容量電極4・4間の距離が小さい方が、フィルタ装置をより小型にすることができ、また短い短縮容量電極4でも大きなエッジ結合が得られるが、短縮容量電極4・4間の距離は、形成性を考慮すると0.05mm程度以上であるのがよい。
【0021】
短縮容量電極4と共振器電極3との接続は、その間に位置する誘電体層1aを貫通する貫通導体で形成される接続導体6によって行なわれる。このとき、例えば、図1〜図4に示す例のように、短縮容量電極4が長方形状であるときには、エッジ結合する側の辺と対向する辺に近い側に接続導体6を接続すると、2つの短縮容量電極4・4をより近づけて配置することができ、フィルタ装置を小型にしてもより大きなエッジ結合を得ることができるのでよい。この場合は、図2および図4に示す例のように、短縮容量電極4のエッジ結合する部分は、平面視してシールド電極5と重なって下側に位置するようになる。
【0022】
シールド電極5は、2つの共振器電極3・3同士の磁界結合を妨げるように、平面視して共振器電極3・3間に、共振器電極3・3の長さ方向にわたって配置され、接地電極2に電気的に接続されている。共振器電極3・3の長さ方向にわたってとは、2つの共振器電極3・3の間にはシールド電極5が位置するようにということであり、より具体的には、共振器電極3の長さ以上の長さを有するシールド電極5が、その長さ方向の端部が、2つの共振器電極3・3の間の長さ方向の端部と同じか、共振器電極3・3の端部から突出するように配置するということである。図1〜図4に示す例では、共振器電極3・3の短絡端側では、シールド電極5は共振器電極3・3とともに同じ端面接地電極に接続されるので、シールド電極5の長さ方向の端部は共振器電極3・3の端部と揃った位置にある。一方、共振器電極3・3の開放端側では、シールド電極5の長さ方向の端部は、平面視で共振器電極3・3の端部より突出している。このように、シールド電極5の長さ方向の端部が平面視で共振器電極3・3の端部より突出していると、2つの共振器電極3・3同士の磁界結合を妨げる効果がより大きくなるので好ましいが、この突出を大きくするとフィルタ装置が大型化してしまう。2つの共振器電極3・3同士の磁界結合は、シールド電極5の平面視での共振器電極3・3の端部からの突出長さが共振器電極3・3の幅以上であれば、ほとんど妨げることができる。
【0023】
また、シールド電極5は、誘電体層1aの積層方向には、2つの共振器電極3・3が配置された誘電体層1a・1a間の上下の誘電体層1a・1aを貫通して形成される。図1に示す例では、2つの共振器電極3・3が配置された誘電体層1a・1a間の上下1層の誘電体層1a・1aを貫通して形成されており、図3に示す例では、2つの共振器電極3・3が配置された誘電体層1a・1a間の上1層、および下2層の誘電体層1a・1aを貫通して形成されている。2つの共振器電極3・3同士の磁界結合を妨げるためには、2つの共振器電極3・3が配置された誘電体層1a・1a間から上方および下方への長さが長いのが好ましいが、シールド電極5の誘電体層1aの積層方向の長さを大きくするとフィルタ装置が大型化してしまう。2つの共振器電極3・3同士の磁界結合は、シールド電極5が、2つの共振器電極3・3が配置された誘電体層1a・1a間から上下方向へ、共振器電極3・3間の距離以上の長さ延びていればよい。図1および図3に示す例では、シールド電極5は、2つの共振器電極3・3が配置された誘電体層1a・1a間より上方は、いずれも積層体1の上面まで形成されている。このとき、積層体1の上面より上には誘電体層1aがなく、そこの比誘電率は小さい(通常は空気なので比誘電率は1)ことから、シールド電極5の上方で2つの共振器電極3・3同士が結合し難くなるので、2つの共振器電極3・3が配置された誘電体層1a・1a間より上方のシールド電極5の長さが共振器電極3・3間の距離より短くても構わない。
【0024】
シールド電極5の幅(2つの共振器電極3・3を結ぶ方向の長さ)は、大きくなると2つの共振器電極3・3間の距離が大きくなってこれらの間の結合が小さくなるが、上記のような大きさのシールド電極5が接地電極2に接続された導体が2つの共振器電極3・3間にあれば効果は得られるので、フィルタ装置を小型化するためにはより小さい方が好ましい。
【0025】
シールド電極5は、図1に示す例のように、板状のものであってもよいし、図3に示す例のように、誘電体層1a・1a間に形成された平面シールド電極5aと複数の平面シールド電極層5a・5a間の誘電体層1aを貫通して平面シールド電極層5a・5a間を接続する貫通シールド電極5bとから成るものであってもよい。シールド電極5が平面シールド電極層5a・5aと貫通シールド電極5bとから成る場合は、上下2つの平面シールド電極層5a・5a間に複数の貫通シールド電極5bが並べて形成される。この貫通シールド電極5bの間隔が、シールド効果を得たい周波数の波長の長さの1/4以下であれば、貫通シールド電極5b・5b間を通って2つの共振器電極3・3が磁界結合することがない。フィルタ装置による通過周波数の奇数倍の周波数で共振器回路18の結合が強くなるため、シールド効果を得たい周波数は通過周波数の奇数倍に設定するとよく、通常は通過周波数の3倍に設定すれば十分なシールド効果が得られる。具体的には、フィルタ装置による通過周波数が2.4GHzである場合には、シールド効果を得たい周波数は7.2GHzであり、貫通シールド電極5b・5bの間隔をその波長の1/4以下(電気長で10.4mm以下)とすればよい。
【0026】
入力電極7および出力電極8は、図1および図3に示す例では、共振器電極3と短縮容量電極4との間に配置され、共振器電極3と対向することにより、それぞれ入力容量14、出力容量15を形成している。共振器電極3より上で誘電体層1aを挟んで共振器電極3と対向することにより、入力容量14、出力容量15を形成してもよい。あるいは、入力電極7および出力電極8は、共振器電極3と対向せずに、短縮容量電極4と対向し、入力容量14、出力容量15を形成してもよい。入力電極7、出力電極8の形状や大きさは、誘電体層1aの厚みおよび比誘電率によって、必要な入力容量14および出力容量15に応じて適宜設定される。
【0027】
誘電体層1aとしては、例えば、アルミナ,ムライト,窒化アルミニウム,BaO−TiO系,CaO−TiO系,MgO−TiO系およびガラスセラミックス等のセラミック材料、あるいは四ふっ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE),四ふっ化エチレン−エチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合樹脂:ETFE),四ふっ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルテロアルキルビニルエーテル共重合樹脂:PFA)等のフッ素樹脂やガラスエポキシ樹脂,ポリイミド等の有機樹脂材料が用いられる。これらの材料による誘電体層1aの形状や寸法(厚みや幅,長さ)は、使用される周波数や用途等に応じて設定される。セラミック材料の場合は、より高周波の信号を伝送することが可能な、Au,Ag,Cu等の低抵抗金属からなる導体材料と同時焼成が可能な低温焼成セラミックスが好ましい。
【0028】
接地電極2,共振器電極3,短縮容量電極4,平面シールド電極5a,入力電極7,出力電極8,入力端子電極7aおよび出力端子電極8aは、誘電体層1aがセラミック材料からなる場合は、W,Mo,Mo−Mn,Au,Ag,Cu等の金属を主成分とするメタライズ層により形成される。また、誘電体層1aが樹脂系材料からなる場合は、厚膜印刷法,各種の薄膜形成方法,めっき法あるいは箔転写法等によって形成した金属層や、このような金属層上にめっき層を形成したもの、例えばCu層,Cr−Cu合金層またはCr−Cu合金層上にNiめっき層およびAuめっき層を被着させたもの,TaN層上にNi−Cr合金層およびAuめっき層を被着させたもの,Ti層上にPt層およびAuめっき層を被着させたもの,Ni−Cr合金層上にPt層およびAuめっき層を被着させたもの等が挙げられる。その厚みや幅は、伝送される高周波信号の周波数や用途等に応じて設定される。
【0029】
接地電極2,共振器電極3,短縮容量電極4,平面シールド電極5a,入力電極7,出力電極8,入力端子電極7aおよび出力端子電極8aの形成は、周知の方法を用いればよい。例えば誘電体層1aがガラスセラミックスから成る場合であれば、まずそれら誘電体層1aとなるガラスセラミックスのグリーンシートを準備し、グリーンシート上にスクリーン印刷法によってAg等の導体ペーストを所定形状で印刷塗布して、接地電極2、共振器電極3、短縮容量電極4、シールド電極5、入力電極7、出力電極8、入力端子電極7aおよび出力端子電極8aの各電極パターンを形成する。次に、これらの電極パターンが形成されたグリーンシートを重ねて圧着するなどして積層体を作製し、この積層体を850〜1000℃で焼成することによって形成する。その後、外表面に露出している電極上には、NiめっきおよびAuめっき等のめっき皮膜を形成する。誘電体層1aが有機樹脂材料から成る場合であれば、例えば有機樹脂シート上に接地電極2,共振器電極3,短縮容量電極4,平面シールド電極5a,入力電極7,出力電極8,入力端子電極7aおよび出力端子電極8aの各電極パターン形状に加工したCu箔を転写し、Cu箔が転写された有機樹脂シートを積層して接着剤で接着することによって形成する。
【0030】
接続導体6,貫通シールド電極5bおよびその他の貫通導体は、誘電体層1aがガラスセラミックス等のセラミックスから成る場合には、例えば前述の製造方法において接地電極2,共振器電極3,短縮容量電極4,平面シールド電極5a,接続導体6,入力電極7,出力電極8,入力端子電極7aおよび出力端子電極8aの各電極パターンを形成する前に、グリーンシートに金型加工やレーザー加工によってあらかじめ形成しておいた貫通孔内に同様の導体ペーストを印刷法等によって充填することで形成することがでる。誘電体層1aが樹脂系材料から成る場合も同様に、グリーンシートに代えて有機樹脂シートを用い、導体ペーストの印刷やめっきによって貫通孔内に貫通導体を形成したりすればよい。
【0031】
シールド電極5が図1および図2に示す例のような、複数の誘電体層1aを貫通する板状のものである場合は、金型加工やレーザー加工によってグリーンシートにシールド電極5の平面視の形状の貫通孔を設けておき、貫通孔内に同様の導体ペーストを印刷法等によって充填することで形成することがでる。貫通孔を充填せずに貫通孔の内面に導体ペーストを塗布して中空の板状としてもシールド電極5として機能する。あるいは、この貫通孔に金属製の板材を嵌め込んでもよい。金属製の板材は積層体の貫通孔に嵌め込んでもよいし、焼成後の貫通孔に嵌め込んでもよい。接着剤やろう材で貫通孔内に固定するようにする。そのため、ろう材で接続できるように貫通孔の内面に積層体の貫通孔の内面に導体ペーストを塗布して導体層を形成しておくのがよい。
【0032】
端面導体は、例えば接地電極2,共振器電極3・3およびシールド電極5を端面に露出させたグリーンシート積層体を形成した後、同様の導体ペーストをグリーンシート積層体の側面に印刷することによって形成することができる。また、端面導体は、グリーンシートに貫通孔を形成しておき、接地電極2,共振器電極3・3およびシールド電極5をこの貫通孔に接するように形成した後、グリーンシートの積層前または積層後に導体ペーストを貫通孔の内面に印刷し、または貫通孔に充填して、貫通孔の部分で切断することによっても形成することができる。誘電体層1aが樹脂系材料から成る場合も同様に、グリーンシートに代えて有機樹脂シートを用い、導体ペーストの印刷やめっきによって貫通孔内に貫通導体を形成したり、薄膜法等によって側面導体を形成したりすればよい。
【0033】
このような本発明のフィルタ装置は、具体的には、無線LANのIEEE802.11.b/g(2.4〜2.45GHz)のシステムと、携帯電話(0.88〜2.2GHz)のダイプレクサのハイバンド側(無線LANのIEEE802.11.b/gのシステム)側に用いられるフィルタ装置であれば、図3に示すような形態の場合は、例えば誘電体層1aとして比誘電率が9.4のガラスセラミックスを用い、接地電極2,共振器電極3,短縮容量電極4,シールド電極5,接続導体6,入力電極7,出力電極8,入力端子電極7aおよび出力端子電極8aにAgメタライズを用いることにより得られる。比誘電率が9.4のガラスセラミックスは、例えば、ガラス成分としてPbO,B,SiO,Al,ZnOおよびアルカリ土類金属酸化物を主成分とする結晶化ガラスが50質量%と、フィラー成分としてアルミナが50質量%とからなるものを用いればよい。
【0034】
このとき、誘電体層1aは、積層体1の下面の接地電極2より上面に向かって順次、0.1mm、0.4mm、0.4mm、0.025mm、0.075mmの順で積層される。接地電極2の寸法は、3.8mm×1.5mmとし、積層体1の1側面の全面に形成される端面導体と接続される。共振器電極3の寸法は3.6mm×1.5mmでシールド電極5から幅方向へ0.2mm離れた位置に配置され(0.55mmの間隔を設けて配置され)短絡端側が端面接地電極に接続されており、短縮容量電極4の寸法は2.29mm×0.4mmで間隔は0.07mmであり、直径0.1mmの接続導体6にて共振器電極3の開放端側で接続される。シールド電極5を構成する4つの平面シールド電極5aの寸法は3.8mm×0.15mmであり、それぞれの間は、平面シールド電極5aの一端から0.1mmの位置から他端へ0.6mmの間隔で6つの直径0.1mmの貫通シールド電極5bを配置して接続される。入力電極7および出力電極8は、0.8mm×0.125mmの主導体部に0.15mm×0.15mmの接続導体部を接続したものであり、主導体部が共振器電極3の開放端側から0.25mmの位置に対向するように配置され、それぞれの接続導体部は積層体1の上面に配置された入力端子電極7aおよび出力端子電極8aに直径0.1mmの貫通導体でそれぞれ接続される。
【0035】
このような例の本発明のフィルタ装置のフィルタ特性は、図6の線図に示すようなものとなる。図6(a)は伝送特性を示し、縦軸は挿入損失(単位:dB)を、横軸は周波数(単位:GHz)を示す。図6(b)は、フィルタ装置の0.88GHz〜2.2GHzまでの入力インピーダンス特性を50Ωで正規化したスミスチャート上に示すものである。また、図7は、本発明のフィルタ装置に対してシールド電極5がない例の入力インピーダンス特性を同様のスミスチャート上に示したものである。
【0036】
図6(a)より、ダイプレクサのハイバンド側に用いたときに要求される通過帯域(2.4GHz〜2.45GHz)の低域側に十分な減衰特性が得られていることがわかる。また、図6(b)と図7とを比較すると、0.88GHz〜2.2GHzの位相は、図7に示すシールド電極を有さないフィルタ装置では−101度〜−34度であるのに対して、図6(b)の本発明のフィルタ装置では−79度〜−23度となっており、シールド電極5によって位相がよりオープン側(0度側)になるとともに、帯域内の位相差も小さくなっていることが分かる。
【0037】
このような結果から、本発明のフィルタ装置は、移相ラインを設けていなくても通過帯域の低域側のインピーダンスが高く(オープン側に)なっており、移相ラインを設けていないことで通過帯域の低域側の広い周波数域において十分な減衰特性が得られ、ダイプレクサのハイバンド側に用いるのに最適な特性となっているといえる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・積層体
1a・・・誘電体層
2・・・接地電極
3・・・共振器電極
4・・・短縮容量電極
5・・・シールド電極
5a・・・平面シールド電極
5b・・・貫通シールド電極
6・・・接続導体
7・・・入力電極
7a・・・入力端子電極
8・・・出力電極
8a・・・出力端子電極
11・・・共振器
12・・・短縮容量
13・・・結合容量
14・・・入力容量
15・・・出力容量
16・・・入力端子
17・・・出力端子
18・・・共振器回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されてなる積層体と、
該積層体の下面に配置された接地電極と、
前記積層体の第1の層間において平面視で横並びに整列された、それぞれ一方端が短絡端で他方端が開放端である2つの共振器電極と、
前記積層体の第1の層間と前記接地電極との間の第2の層間において互いに側面で容量結合するように平面視で横並びに整列されて前記接地電極に対向するとともに、接続導体を介して2つの前記共振器電極のそれぞれの開放端に接続された2つの短縮容量電極と、
2つの前記共振器電極の間に前記共振器電極の長さ方向にわたって配置された、少なくとも前記第1の層間の上下の層を貫通して形成されるとともに前記接地電極に電気的に接続されているシールド電極と
を備えることを特徴とするフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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