説明

フィルムの製造方法

【課題】テンション支持方式にて支持された可撓性支持体上にスロットダイを使用して塗布膜を形成する方法において、原反の外観形状にかかわらずスジムラと呼ばれる塗布膜の厚みムラの発生を抑制する。
【解決手段】スロットダイ10の塗布液2が吐出されるスロット13に対して可撓性支持体1の走行方向25の下流側に配されたリップ12の先端面は円筒面21を有している。円筒面の可撓性支持体の走行方向の下流側端211における円筒面の接平面211pと可撓性支持体とがなす角度をθ1、円筒面の可撓性支持体の走行方向の上流側端212における円筒面の接平面212pと可撓性支持体とがなす角度をθ2としたとき、1°≦θ1+θ2≦15°、θ1≦6°を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットダイを用いて可撓性支持体に塗布液を塗布するフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエブ状の可撓性支持体に塗布液を塗布する工程は、光学フィルム、磁気記録テープ、接着テープ、写真用印画紙、オフセット版材、電池極板、燃料電池触媒層等の各製造において広く行われている。このうち光学フィルムとしては、例えば反射防止フィルム、防眩フィルム、光拡散フィルム、光補償フィルムなどを例示することができ、これらは陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶表示装置(LCD)、EL(electro-luminescence)表示装置等の画像表示装置の表示画面に貼付され、その需要は年々高まっている。このような用途に用いられる光学フィルムの性能は、塗布膜の厚さ変動により大きく影響される。そのため、光学フィルムの分野では、より高度な塗布膜の厚さの均一性が求められる。
【0003】
可撓性支持体に塗布液を塗布する塗布方式として、例えば、バーコータ方式、リバースロールコータ方式、グラビアロールコータ方式、エクストルージョンコータなどのスロットダイコータ方式などが挙げられ、これらの中では特にグラビアロールコータ方式が採用される場合が多い(例えば特許文献1)。
【0004】
しかしながら、グラビアロールコータ方式では、塗布前の塗布液が空気に晒されているため塗布液の濃度変化が生じやすい。塗布前の塗布液の濃度が変化してしまうと、形成される塗布膜の膜厚が変化してしまう。高度な塗布膜厚の均一性が求められ、近年の需要の高まりにより大量生産が求められている光学フィルムをグラビアロールコータ方式で製造することは一般に困難である。
【0005】
一方、スロットダイのスロットから塗布液を可撓性支持体上に吐出するスロットダイコータ方式では、塗布前の塗布液が空気に晒されることがなく、且つ、高速塗布が可能であるので、グラビアロールコータ方式の上記の問題は生じない。
【0006】
特許文献2には、可撓性支持体をバックアップロールで支持しながら連続走行させ、可撓性支持体をバックアップロールとの間に挟むように配置されたスロットダイから、塗布液を可撓性支持体上に吐出して塗布する、バックアップロール支持方式のスロットダイコータ方式が記載されている。
【0007】
スロットダイコータ方式にて可撓性支持体に塗布液を塗布する際の、可撓性支持体の支持方式としては、上記特許文献2に記載されたバックアップロール支持方式の他に、平行に配置された一対のロール間に可撓性支持体を架け渡し、一対のロール間に且つ可撓性支持体に対向してスロットダイを配置して、可撓性支持体上にスロットダイから塗布液を吐出する、いわゆるテンション支持方式が知られている。テンション支持方式は、バックアップロール支持方式に比べ、高速塗布が可能であるため生産性がよいことや、より薄い塗布膜の形成が可能であることから、優れた支持方式であるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−95443号公報
【特許文献2】特開2007−75798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
テンション支持方式では、一般に、長尺の可撓性支持体がロール状に巻回された巻回体(一般に「原反」と呼ばれる)から可撓性支持体を巻き出しながら、可撓性支持体に塗布液が塗布される。
【0010】
可撓性支持体の厚みムラや巻き状態によって、原反の外周面に凹凸が形成されることがある。外周面に凹凸が形成された、いわゆる外観形状が悪い原反から可撓性支持体を巻き出して、テンション支持方式で塗布液を塗布すると、塗布膜に、その厚みムラに起因して可撓性支持体の長手方向に延びた「スジムラ」と呼ばれる外観不良が発生するという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の従来の問題を解決し、テンション支持方式にて支持された可撓性支持体にスロットダイを使用して塗布液を塗布する工程を備えるフィルムの製造方法において、原反の外観形状にかかわらず、スジムラと呼ばれる塗布膜の厚みムラの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフィルムの製造方法は、連続走行する可撓性支持体にスロットダイを使用して塗布液を塗布する工程を備えるフィルムの製造方法であって、前記可撓性支持体は一対のサポートロールの間に架け渡されており、前記スロットダイは前記一対のサポートロールの間に前記可撓性支持体に対向して配置される。
【0013】
前記スロットダイの前記塗布液が吐出されるスロットに対して前記可撓性支持体の走行方向の下流側に配された前記スロットダイのリップの先端面は、円筒面を有している。
【0014】
前記円筒面の前記可撓性支持体の走行方向の下流側端における前記円筒面の接平面と前記可撓性支持体とがなす角度をθ1、前記円筒面の前記可撓性支持体の走行方向の上流側端における前記円筒面の接平面と前記可撓性支持体とがなす角度をθ2としたとき、
1°≦θ1+θ2≦15° …(1)
θ1≦6° …(2)
を満足する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外観形状が悪い原反を用いた場合であっても、テンション支持方式にて支持された可撓性支持体上にスロットダイを使用してスジムラと呼ばれる塗布膜の厚みムラを有しない、均一厚さの塗布膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明のフィルムの製造方法の一実施形態を説明する概略断面図である。
【図2】図2は、実施例で使用した原反の外観形状を測定する方法を示した斜視図である。
【図3】図3は、原反の外観形状と、実施例及び比較例の塗布膜厚との測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を、その一実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明はこの一実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明のフィルムの製造方法の一実施形態を示した、可撓性支持体(以下、単に「支持体」という)1の走行方向25と平行な面に沿った断面図である。図1は、各部材の構成や配置を理解しやすいように誇張して描かれており、各部材の相対的な大きさや距離は実際の装置と一致していない。
【0019】
支持体1は、可撓性を有する長尺のウエブ状物(フィルム、シート等)であって、ロール状に巻回された原反(図示せず。図2参照)として供給される。支持体1は、原反から巻き出され、互いに平行に、且つ、離間して配置された上流側サポートロール31と下流側サポートロール32との間に所定の張力が印加された状態で架け渡されて、矢印25の方向に走行する。
【0020】
支持体1の材料は、特に制限はなく、塗布膜3が形成された支持体1の用途に応じて適宜選択することができるが、例えば樹脂、具体的には、セルロースエステル(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィンなどを用いることができる。このうち、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0021】
支持体1の厚さは特に制限はなく、塗布膜3が形成された支持体1の用途に応じて適宜選択することができるが、その下限値は3μm以上、さらには50μm以上が好ましく、また、その上限値は200μm以下、さらには150μm以下が好ましい。一般に、支持体1の厚さが厚くなればなるほど、支持体1の曲げ剛性が大きくなり、支持体1を安定して走行させるためには一対のサポートロール31,32間の支持体1に印加する張力を大きくする必要がある。
【0022】
サポートロール31,32の間に、支持体1に対向してスロットダイ10が配置されている。スロットダイ10は、支持体1に対して、サポートロール31,32が配置された側とは反対側に配置されている。
【0023】
スロットダイ10は、支持体1の走行方向25の上流側に配置された上流側リップ11と、下流側に配置された下流側リップ12とを有する。上流側リップ11と下流側リップ12とは離間して配置され、両リップ11,12間の隙間は、塗布液2を支持体1に向かって吐出させるスロット13を構成する。スロット13の支持体1とは反対側は、塗布液2を滞留させることができるマニホールド(図示せず)と連通していても良い。この場合、塗布液は、マニホールドに流入し、スロット13を通過して、支持体1上に吐出される。図1に示したスロットダイ10の断面形状は、支持体1の幅方向(支持体1の長手方向(即ち、走行方向25)と直交する方向)において、塗布膜3が形成される範囲にわたって一定である。
【0024】
下流側リップ12の支持体1と対向する先端面は、支持体1側に凸の円筒面21と、円筒面21に対して走行方向25の上流側に位置する平面22とからなる。
【0025】
平面22は、支持体1との間隔が走行方向25の下流側ほど小さくなるように支持体1に対して傾斜した傾斜面である。
【0026】
円筒面21は、軸21cを中心軸とし、半径Rの円筒面の一部を構成する。サポートロール31,32間に架け渡されて走行する支持体1に対して円筒面21が押し付けられ、その結果、支持体1は円筒面21に沿って湾曲している。図1において、角度αは、円筒面21の軸21cに対する中心角、角度βは、支持体1が円筒面21に対して塗布液2を挟んで一定間隔を維持して湾曲している部分(巻き付き部)の軸21cに対する角度(巻き付け角)である。
【0027】
塗布液2は、スロット13から吐出され、傾斜した平面22と支持体1との間に形成された、断面が略楔状の液溜まり23に一時的に滞留する。これにより、支持体1の表面に塗布液2を確実に接触させることができる。その後、塗布液2は、支持体1の移動にともなって支持体1と円筒面21との間に移動し、支持体1と円筒面21との間で圧力を受けて支持体1の幅方向に広がる。円筒面21の支持体21の走行方向の下流側端211には、塗布液2の表面張力と支持体2及び下流側リップ12の表面との相互作用によって凹型のメニスカス24が形成される。塗布液2は、メニスカス24にて下流側リップ12から離れ、支持体1の表面に付着して、塗布膜3を形成する。
【0028】
上述したように、支持体1が巻回された原反の外周面に凹凸が形成されていると、幅方向に一定厚みの塗布膜3を形成することができず、支持体1の長手方向に延びた帯状のスジムラと呼ばれる外観不良が発生する。
【0029】
このスジムラの発生原因について、鋭意検討した結果、原反の外周面の凹凸によって支持体1が伸び変形しているためであることが判明した。即ち、原反の外周面に凸部が形成された部分では凹部が形成された部分に比べて支持体1は硬く巻かれており、支持体1は伸び変形している。伸び変形が生じた部分では、塗布液2の圧力によって支持体1と円筒面21との間隔が大きくなるので、塗布膜3が厚くなる。その結果、原反の外周面に凸部が形成された部分で塗布膜3が厚くなり、塗布膜の厚い部分が支持体1の長手方向に連続して形成されるために、帯状のスジムラが形成されるのである。
【0030】
本発明は、スロットダイ10の円筒面21に対する支持体1の巻き付け条件を以下のように規定することにより、上記のスジムラを解消する。即ち、図1に示すように、円筒面21の支持体1の走行方向の下流側端211における円筒面21の接平面211pと支持体1(特に、支持体1の下流側端211よりも下流側の部分)とがなす角度をθ1、円筒面21の支持体1の走行方向の上流側端212における円筒面21の接平面212pと支持体1(特に、支持体1の上流側端212よりも上流側の部分)とがなす角度をθ2としたとき、
1°≦θ1+θ2≦15° …(1)
θ1≦6° …(2)
を満足するように、支持体1を円筒面21に巻き付ける。
【0031】
式(1)は、円筒面21に対する支持体1の巻き付け状態、即ち、円筒面21の中心角αに対する支持体1の巻き付け角βを規定している。支持体1に対する円筒面21の押し込み量を大きくすると、円筒面21に対する支持体1の巻き付け角βが大きくなり、θ1+θ2が小さくなる。逆に、支持体1に対する円筒面21の押し込み量を小さくすると、円筒面21に対する支持体1の巻き付け角βが小さくなり、θ1+θ2が大きくなる。
【0032】
θ1+θ2が式(1)の下限値より小さいと、支持体1に対する円筒面21の押し込み量が大きすぎるので、支持体1と円筒面21との間に介在する塗布液2の圧力が高くなる。その結果、原反の凸部によって伸び変形した支持体1の部分に塗布液2が集まりやすくなり、この部分で塗布膜3が厚くなる。従って、塗布膜3の帯状のスジムラを解消することが困難となる。
【0033】
θ1+θ2が式(1)の上限値より大きいと、支持体1に対する円筒面21の押し込み量が小さすぎるので、支持体1と円筒面21との間に介在する塗布液2の圧力が低くなる。その結果、支持体1と円筒面21とが対向する領域において、塗布液2が支持体1の幅方向に拡がりにくくなるので、均一な厚みの塗布膜3を形成することが困難となる。更に、支持体1上に未塗布部領域が形成されることもある。
【0034】
式(2)は、円筒面21の下流側端211近傍での円筒面21に対する支持体1の巻き付け状態を規定し、これはメニスカス24の形成状態と密接に関連する。
【0035】
θ1が式(2)の上限値より大きいと、メニスカス24が大きくなり、メニスカス24での塗布液2の挙動が不安定となり、塗布膜3に等ピッチのスジ状の欠点(「リビング」と呼ばれることがある)が形成されることがある。
【0036】
従来は、支持体1と円筒面21との間に介在する塗布液2を支持体1の幅方向に拡げるために、支持体1の巻き付け角βを円筒面21の中心角αにほぼ一致させていた。また、リビングの発生を抑えるために、角度θ1をほぼゼロになるように設定していた。β≒αであるので、支持体1の伸び変形した部分に塗布液2が集まる。また、θ1≒0であるので、メニスカス24がほとんど形成されず、伸び変形した部分に集まった塗布液2を幅方向に分散させることができない。従って、塗布膜3に帯状のスジムラが形成されてしまう。
【0037】
本発明では、リビングが発生しない限度で、円筒面21の中心角αに対する支持体1の巻き付け角βの比を従来よりも小さくする。これにより、支持体1と円筒面21との間に介在する塗布液2の圧力を低下させ、支持体1の伸び変形した部分に塗布液2が集まるのを防ぐ。また、仮に塗布液2が伸び変形した部分に集まったとしても、適度な大きさのメニスカス24を形成することにより、伸び変形した部分に集まった塗布液2を幅方向に分散させる。これらの結果、塗布膜3の厚さが均一になり、帯状のスジムラが発生するのを抑制することができる。
【0038】
本発明では、塗布液2の粘度は1mPa・s以上500mPa・s以下であることが好ましい。ここで、粘度は、E型粘度計を用い、測定コーンプレート直径が50mm、測定コーン角が1度、測定ズリ速度が100(l/s)の条件で測定される粘度をいう。塗布液2の粘度が上記の上限値より大きいと、塗布液2の流動性が低下するので、塗布膜3にリビングが生じやすくなる。塗布液2の粘度が上記の下限値より小さいと、支持体1の伸び変形した部分に塗布液2が集まりやすくなるので、塗布膜3に帯状のスジムラが発生しやすくなる。
【0039】
円筒面21の半径Rの下限値は、特に制限はないが、30mm以上、好ましくは50mm以上であることが好ましい。半径Rが小さいと、式(1)を満足させるためにには、支持体1に対する円筒面21の押し込み量を大きくする必要があるので、支持体1と円筒面21との間に介在する塗布液2の圧力が高くなり、塗布膜3に帯状のスジムラが発生しやすくなる。特に、支持体1を光学フィルム用途に使用する場合には、一般に支持体1が厚いので、支持体1と円筒面21との間に介在する塗布液2の圧力が高くなりやすく、スジムラが発生しやすくなるので注意を要する。
【0040】
円筒面21の半径Rの上限値は、特に制限はないが、150mm以下、更には100mm以下であることが好ましい。半径Rが大きいと、式(1)を満足させるためにには、支持体1に対する円筒面21の押し込み量を小さくする必要があるので、支持体1と円筒面21との間に介在する塗布液2の圧力が低くなる。従って、支持体1と円筒面21とが対向する領域において塗布液2が支持体1の幅方向に拡がりにくくなるので、均一な厚みの塗布膜3を形成することが困難となったり、支持体1上に未塗布部領域が形成されたりすることがある。
【0041】
上記の実施形態は一例に過ぎず、本発明はこの実施形態に限定されず、種々に変更することができる。
【0042】
例えば、上記の実施形態では、下流側リップ12の先端面は円筒面21及び平面22の2種類の面で構成されていたが、本発明では、上記式(1)及び式(2)を満足する円筒面21が形成されていれば良い。好ましくは、該円筒面21は、下流側リップ12の最も下流側の領域に形成されていることが好ましい。従って、この円筒面21よりも上流側の領域は、平面22以外の面(例えば曲面)が形成されていても良く、あるいは、複数種類の面(例えば、平面、円筒面などの組み合わせ)で構成されていても良い。
【実施例】
【0043】
幅800mm、長さ2000m、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートからなる支持体がロール状に巻回された原反を用意した。図2に示すように、この原反5にダイヤルゲージ等の測定針7を当てて幅方向8に移動させて、原反5の外周面の変位(原反5の外観形状)を測定した。図2において、参照符号6は支持体1が巻回される巻き芯である。
【0044】
原反5から支持体1を巻き出しながら、図1に示した構成の塗布装置を用いて、支持体1の片面に塗布液2を塗布した。塗布液2の粘度は2mPa・sであった。円筒面21の半径RはR=60mm、中心角αはα=5.74°であった。
【0045】
本発明である実施例では、θ1=2.6°、θ2=0°、β=3.14°であった。また、接平面211pと接平面212pとがなす角度θ(θ≧90°)はθ=176.86°であった。
【0046】
従来の塗布方法に相当する比較例では、θ1=−0.04°、θ2=−0.3°、β=5.74°、θ=173.92°であった。
【0047】
同一の原反5を用いて、塗布液2の塗布の途中で支持体1の走行を停止させて、塗布条件を実施例と比較例との間で切り替えた。
【0048】
塗布液2を塗布して得られた塗布膜3の厚さを支持体1の幅方向に測定した。塗布膜3の厚さは、分光光度計(日本分光社製、Vbest、V−570型)を用い、低屈折率層を入射側として、可視光線波長領域(300nm〜800nm)における反射率を測定し、反射率を膜厚に換算することにより測定した。
【0049】
図3に、原反5の外観形状と、実施例及び比較例の塗布膜の厚さの測定結果を示す。図3において、原反5の外観形状は、図2の方法で測定した原反5の外周面の変位の実測値を支持体1の1枚当たりの変位量に換算したものである。
【0050】
比較例では、図3に示されているように、塗布膜3の厚さは、原反5の外周面に凸部が形成された部分では厚く、凹部が形成された部分では薄く形成されており、目視検査では塗布膜3にスジムラが認められた。
【0051】
一方、実施例では、図3に示されているように、塗布膜3の厚さは、原反5の外観形状にかかわらずほぼ一定であり、目視検査では塗布膜3にスジムラやリビングなどの欠点は一切認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の利用分野は特に制限はないが、可撓性支持体上にテンション支持方式にて塗布膜を塗布する場合に広範囲に利用することができる。例えば、光学用、磁気媒体用、包装用、粘着(又は接着)用、写真用、印刷用、電池用等の各種フィルムを製造する場合に利用することができる。中でも、塗布膜の厚みの均一性に高い精度が要求されるフィルム、例えば光学フィルムを製造する場合に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 可撓性支持体
2 塗布液
3 塗布膜
5 原反
10 スロットダイ
11 上流側リップ
12 下流側リップ
13 スロット
21 円筒面
211 円筒面の下流側端
211p 下流側端での接平面
212 円筒面の上流側端
212p 上流側端での接平面
22 平面
23 液溜まり
24 メニスカス
25 可撓性支持体の走行方向
31 上流側サポートロール
32 下流側サポートロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行する可撓性支持体にスロットダイを使用して塗布液を塗布する工程を備えるフィルムの製造方法であって、
前記可撓性支持体は一対のサポートロールの間に架け渡されており、
前記スロットダイは前記一対のサポートロールの間に前記可撓性支持体に対向して配置され、
前記スロットダイの前記塗布液が吐出されるスロットに対して前記可撓性支持体の走行方向の下流側に配された前記スロットダイのリップの先端面は、円筒面を有し、
前記円筒面の前記可撓性支持体の走行方向の下流側端における前記円筒面の接平面と前記可撓性支持体とがなす角度をθ1、前記円筒面の前記可撓性支持体の走行方向の上流側端における前記円筒面の接平面と前記可撓性支持体とがなす角度をθ2としたとき、
1°≦θ1+θ2≦15° …(1)
θ1≦6° …(2)
を満足することを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記塗布液の粘度が1mPa・s以上500mPa・s以下である請求項1に記載のフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−56432(P2011−56432A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210585(P2009−210585)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】