説明

フィルムキャリアテープおよびフィルムキャリアテープの製造方法

【課題】従来技術を用いてマーキング用ターゲットを用いて不良ピースを識別する場合、一回の打ち抜き工程を行う場合には適しているが、不良工程を追跡する場合、どの工程で不良が発生したかを把握する目的には適しておらず、不良解析が困難になるという課題がある。
【解決手段】第1の検査工程で不良と判定された第1のピースについては、マーキング用ターゲットの第1部分に沿って第1のマークを付与し、前記第1の検査工程の下流に配置された第2の検査工程で不良と判定された第2のピースについては、前記マーキング用ターゲットの第2部分に沿って第2のマークを付与し、サイズが大きい2回目のマークが、一回目のマークを内包する。そのため、マークを付与する場所が1ヶ所に集約され、マークの確認が容易となる。また、不良マークのサイズや形により不良と判定された工程を識別できる。従って、不良工程の追跡を効率的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムキャリアテープおよびフィルムキャリアテープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装用フィルムキャリアテープであるTAB(Tape Automated Bonding)は、液晶装置等に好適に用いられている。また、近年、TABに代えてCOF(Chip On Film)が液晶装置や携帯電話等の用途に用いられてきている。COFは、TABと比較して高い実装密度が得られるという特徴があり、微細化、高精細化を進めるために好適な構造である。
【0003】
フィルムキャリアテープの製造において不良が発生した場合、不良ピースを識別するためのマークを付与し、後工程となる検査工程や加工工程、半導体チップの実装工程等の実行を止めることが工程増を防止するために重要な課題となる。ここで、ピースとは、図1(a)に示すように、フィルムキャリアテープの繰り返し単位を指すものとする。
【0004】
TABを用いた場合には、各ピースがデバイスホールと呼ばれる開口部(半導体チップがここに搭載される)を備えており、不良ピースに対しては、例えばこのデバイスホールを、より大きく開口すること等で不良ピースを区別することができる。この場合、観察すべき領域は一定の場所にあり、目視検査や、パターン認識等で容易に不良ピースを識別することが可能となる。
【0005】
一方、COFを用いた場合にはこのような開口部が無い。そのため、特許文献1に示すように、不良ピース識別用のパターン位置を定めるべく、各ピースと並べてターゲットマーク(マーキング用ターゲット)を配置し、不良ピースを識別できるようマーキング用ターゲットを形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−235227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたマーキング用ターゲットを用いて不良ピースを識別する場合、一回の打ち抜き工程を行う場合には適しているが、複数の不良工程を追跡する場合等、どの工程で不良が発生したかを把握する目的には適しておらず、不良解析が困難になるという課題がある。
【0008】
ここで、複数の場所に対して打ち抜き工程を行うことで、不良工程の追跡が可能となるが、目視検査や、パターン認識等の検査にかかる負担が大きくなり(複数の場所を観察することが必要となる)、スループットが低下するという課題がある。また、フィルムキャリアテープの強度が低下して切れやすくなる。また、商品として見た場合、不良ピースを見分けるために複数個所の確認を強いられることとなり、一箇所の確認で済むものと比べ商品としての競争力が低下するという課題がある。
【0009】
また、マーキング用ターゲットは、通常機械的に打ち抜く方法が用いられているが、打ち抜く領域と、ソルダーレジストが配置された領域が重なると、塵埃が発生するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]
本適用例にかかるフィルムキャリアテープの製造方法は、配線パターンとマーキング用ターゲットを含むピースと、前記ピースが連続的に連なった電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法であって、前記製造方法は複数の加工工程と複数の検査工程を含み、第1の検査工程で不良と判定された第1のピースについては、マーキング用ターゲットの第1部分に沿って第1のマークを付与し、前記第1の検査工程の下流に配置された第2の検査工程で不良と判定された第2のピースについては、前記マーキング用ターゲットの第2部分に沿って第2のマークを付与し、前記第1のマークと前記第2のマークはサイズが異なり、サイズが大きい方のマークが、小さい方のマークを内包することを特徴とする。
【0012】
これによれば、マーキング用ターゲットの一部はアライメント用のパターンとして使用できる。そのため、アライメント用のパターンを持たない場合と比べ高い位置精度をもって不良マークを付与することができる。また、マークを付与する場所が1ヶ所に集約され、マークの確認が容易となる。また、不良マークのサイズや形により不良と判定された工程を識別できる。そして、フィルムキャリアテープを打ち抜いて開口を形成することで、マークを付与する場合、テープ強度の低下を抑制できる。
【0013】
[適用例2]
上記適用例にかかるフィルムキャリアテープの製造方法であって、前記第2の検査工程より下流に配置され、前記第1のマークおよび前記第2のマークにより、不良と判定された検査工程を特定する工程を有することを特徴とする。
【0014】
上記した適用例によれば、不良を発生させた工程を絞り込むこみやすくなり、不良原因の調査を効率的に行うことができる。
【0015】
[適用例3]
上記適用例にかかるフィルムキャリアテープの製造方法であって、前記第2の検査工程で、前記第1のマークが付与された前記第1のピースの検査を省略することを特徴とする。
【0016】
上記した適用例によれば、検査工程を省略することで、効率的なフィルムキャリアテープの製造が可能となる。
【0017】
[適用例4]
上記適用例にかかるフィルムキャリアテープの製造方法であって、前記第1の検査工程より下流に配置された加工工程で、前記第1のマークが付与された前記第1のピースの加工を省略することを特徴とする。
【0018】
上記した適用例によれば、加工工程を省略することで、効率的なフィルムキャリアテープの製造が可能となる。
【0019】
[適用例5]
上記適用例にかかるフィルムキャリアテープの製造方法であって、前記第2の検査工程より下流に配置され、前記第1のピースの前記第1のマークおよび、前記第2のピースの前記第2のマークに対して、それらを内包する第3のマークを付与するマーク工程を有することを特徴とする。
【0020】
上記した適用例によれば、不良ピースを見分けるのに、確認場所が1箇所で、不良マークが1種類となり、その後のICの実装工程等を効率的に実施できる。
【0021】
[適用例6]
上記適用例にかかるフィルムキャリアテープの製造方法であって、前記第1から3のマークは、前記フィルムキャリアテープを打ち抜いて開口を形成し、前記第1から3のマークの少なくとも1つは、前記配線パターンと平面的に重なっていることを特徴とする。
【0022】
上記した適用例によれば、不良品のピースは電気的に切断される。そのため、不良品のピースに対し、電子部品を誤って実装してしまうミスを事前に防ぐことが可能となる。
【0023】
[適用例7]
上記適用例にかかるフィルムキャリアテープの製造方法であって、前記第1から3のマークは、前記フィルムキャリアテープを打ち抜いて開口を形成し、前記第1から3のマークの少なくとも1つは、前記フィルムキャリアテープに搭載された前記第1のピース及び前記第2のピースの絶縁被覆材と平面的に分離されていることを特徴とする。
【0024】
上記した適用例によれば、打ち抜き加工を行う際に発生する塵埃の量を低減することが可能となる。そのため、当該塵埃の付着に起因する不良発生を抑制することが可能となる。
【0025】
[適用例8]
本適用例にかかるフィルムキャリアテープであって、前記マーキング用ターゲットは、第1の円を構成する第1の円弧と第2の円を構成する第2の円弧を含み、前記第1の円と前記第2の円は中心を共有し半径が異なり、前記第1の円弧と前記第2の円弧が互いに沿うことを特徴とする。
【0026】
上記した適用例によれば、マーキング用ターゲットの輪郭はアライメント用のパターンとして使用できる。そのため、アライメント用のパターンを持たない場合と比べ高い位置精度をもって不良マークを形成しうるフィルムキャリアテープを提供することが可能となる。また、製造工程に対応した不良マークを形成できる。即ち、不良マークのサイズや形により不良を発生させた工程を特定することができる。そのため、不良原因の調査を容易に行うことが可能となる。
【0027】
[適用例9]
本適用例にかかるフィルムキャリアテープであって、前記マーキング用ターゲットは、第1の矩形を構成する第1の辺と第2の矩形を構成する第2の辺を含み、前記第1の矩形と前記第2の矩形は中心を共有し互いに相似で、前記第1の辺と前記第2の辺が互いに沿うことを特徴とする。
【0028】
上記した適用例によれば、マーキング用ターゲットの輪郭はアライメント用のパターンとして使用できる。そのため、アライメント用のパターンを持たない場合と比べ高い位置精度をもって不良マークを形成しうるフィルムキャリアテープを提供することが可能となる。また、製造工程に対応した不良マークを形成できる。即ち、不良マークのサイズにより不良を発生させた工程を特定することができる。そのため、不良原因の調査を容易に行うことが可能となる。
【0029】
[適用例10]
本適用例にかかるフィルムキャリアテープであって、前記マーキング用ターゲットは、前記配線と同じ材料を用いていることを特徴とする。
【0030】
上記した適用例によれば、製造工程を増やすことなくマーキング用ターゲットを形成することが可能となり、加工コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は、ICが搭載されたCOFピースの2ピースを含むフィルムキャリアテープの平面図、(b)は、図1(a)のA−A’線断面図。
【図2】(a)〜(d)は、マーキング用ターゲットを銅配線パターンと近接させて配置した場合を示す平面図。
【図3】(a)〜(d)は矩形構造の一部を備えた場合の例を示す平面図。
【図4】(a)は、半円を2つ繋げた構成を備えるマーキング用ターゲットの平面図、(b)は、(a)のパターンに対応した抜き穴の平面図。
【図5】複数の孤立した領域を備えるマーキング用ターゲットの構成を示す平面図。
【図6】銅配線パターンを外して打ち抜く場合のマーキング用ターゲットの平面図。
【図7】ドーナッツ状の形状を備えるマーキング用ターゲットの構成を示す平面図。
【図8】フィルムキャリアテープを製造する工程を説明するためのフローチャート。
【図9】(a)〜(f)は、フィルムキャリアテープの製造ステップ途中における1ピース分の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。
(マーキング用ターゲットの構成)
【0033】
図1(a)は、ICが搭載されたCOF(Chip On Film)ピースの2ピースを含むフィルムキャリアテープの平面図、(b)は、図1(a)のA−A’線断面図である。ここではCOFピース101に加え、ICチップ110、ICチップ110が備える金バンプ111、ICチップ110を固定するアンダーフィル材112についても記載している。フィルムキャリアテープ100はCOFピース101が連続的に連なっており、COFピース101は、スプロケットホール106を備えたテープ基材102、銅配線パターン103、ソルダーレジスト104、を備えている。そして、銅配線パターン103と分離され、隣り合う位置にマーキング用ターゲット120が配置されている。次に、ICが搭載されたCOFピース101の構成について説明する。ここで、COFピース101に加えて、ICチップ110、ICチップ110に搭載される金バンプ111、そして、ICチップ110をCOFピース101に固定するアンダーフィル材112についても簡単な説明を行う。なお、半田や、合わせマーク等、本発明の記載に不要な構成要素については、省略している。
【0034】
ICチップ110は、銅配線パターン103の一端から加えられた電気信号を処理して、他端に送り出す機能を備えている。そして、ICチップ110とCOFピース101の銅配線パターン103との間で、金バンプ111により電気的および機械的に接続されている。
【0035】
テープ基材102は絶縁性のフィルムを含み、導体としての銅配線パターン103や、ICチップ110を支える基材として機能している。ここで、スプロケットホール106とは、フィルムキャリアテープ100を送るために、フィルムキャリアテープ100の両側に形成された矩形の穴を指している。この穴に突起付きのベルトの突起を引っかけて、そのベルトを回転させることで、フィルムキャリアテープを送る。テープ基材102としては、例えばポリイミドを用いることが機械的強度等の観点から好適である。
【0036】
銅配線パターン103は、ICチップ110等と外部回路とを電気的に接続させる機能を備えており、ピースとしてのCOFピース101の導体として機能している。
【0037】
ソルダーレジスト104は、半田の付着を避ける機能を備えており、半田を不用とする領域に配置されている。
【0038】
アンダーフィル材112は、ICチップ110とテープ基材102との間に介在しており、ICチップ110とテープ基材102との間の密着性を向上させている。アンダーフィル材112としては、例えばエポキシ樹脂等を用いることができる。なお、アンダーフィル材112は、ICチップ110の搭載例を示すために図示したものであり、図1(a)に示す平面図では記載を省略している。
【0039】
次に、マーキング用ターゲット120について説明する。図2(a)〜(d)は、マーキング用ターゲットを銅配線パターンと近接させて配置した場合を示す平面図である。マーキング用ターゲットは、銅配線パターンと接していてもよい。図2(a)に示すように、マーキング用ターゲット120は、第1の円弧121aと、第2の円弧122aと、を備えており、中心を共有し半径が異なる形状を有し、互いに沿うように配置されている。そして、第1の円弧121aと、第2の円弧122aとを用いることでマーク140aとマーク141aの位置合わせが行える。そのため、マーキング用ターゲット120の打ち抜き具合を、観察位置を変えることなく抜いた後の大きさで判断することが可能となる。
【0040】
ここで、マーキング用ターゲット120は、銅配線パターン103と同じ材料を用いることがプロセスコスト低減に効果的ではあるが、印刷等の方法を用いて構成しても差し支えない。
【0041】
この場合、第1の円弧121aと第2の円弧122aとは、銅配線パターン103を切断する第1の円弧121aと対応するマーク140a(ここでは円形:図2(b)参照)と第2の円弧122aと対応するマーク141a(ここでは円形:図2(d)参照)の一部を備えており、不良品のCOFピース101は電気的に切断される。ここで不良品の識別は、マーキング用ターゲット120の開口状況を調べることでも容易にできるため、電気的に銅配線パターン103を切断する位置にマーク140aやマーク141aを備えることは必須ではない。即ち、銅配線パターン103とマーク140aおよびマーク141aは接していなくてもよい。
【0042】
また、第1の円弧121aと第2の円弧122aによりアライメントされるマーク140a、マーク141a(ここでは共に円形)とソルダーレジスト104とを離すことも、塵埃の発生が抑えられることから好適である。
【0043】
次に、図2(a)に示すマーキング用ターゲット120を用いてCOFピース101を検査する工程について説明する。ここでは、製造工程で2回の検査工程を行うものとする。まず、1回目の検査工程で不良が見つかった場合、第1の円弧121aと沿ったマーク140aを打ち抜き、1回目の検査工程で不良が見つかったことを示しておく(図2(a)、(b))。このパターンが打ち抜かれている場合には、1回目の工程以前で不良が発生したことがわかる。そして、2回目の検査工程で不良が見つかった場合には、第2の円弧122aと沿ったマーク141aを打ち抜き、2回目の検査工程で不良が見つかったことを示しておく(図2(c)、(d))。第1の円弧121aと沿ったマーク140aを打ち抜かれている場合には、2回目の検査は不要のため、検査工程を飛ばすことができる。このようにすることで、短時間で効率良く不良検査を行うことが可能となる。また、1回目の検査工程で不良が見つかった場合に、マーク141aを打ち抜き、2回目の検査工程で不良が見つかった場合にマーク140aを打ち抜いても良い。
【0044】
マーキング用ターゲットのパターン形状としては、例えば矩形を用いても良い。図3(a)〜(d)は矩形構造の一部を備えた場合の例を示す平面図である。ここでマーキング用ターゲット120は、第1の辺121bと第2の辺122bを備えている。そして、第1の辺121bよりも第2の辺122bの辺の長さが長くなっている。この場合においても、上記した方法と同様の処理を行うことができる。1回目の検査工程で不良が見つかった場合、第1の辺121bと沿ったマーク140bを打ち抜き、1回目の検査工程で不良が見つかったことを示しておく(図3(a)、(b))。このパターンが打ち抜かれている場合には、1回目の工程以前で不良が発生したことがわかる。そして、2回目の検査工程で不良が見つかった場合には、第2の辺122bと沿ったマーク141bを打ち抜き、2回目の検査工程で不良が見つかったことを示しておく(図3(c)、(d))。1回目の検査工程で打ち抜かれている場合には、2回目の検査は不要のため、検査工程を飛ばすことができる。このようにすることで、上記した例と同様、短時間で効率良く不良検査を行うことが可能となる。
【0045】
また、中空部を備えるマーキング用ターゲット120を用いても良い。図4(a)は、半円を2つ繋げた構成を備えるマーキング用ターゲットの平面図である。図4(b)は、(a)のパターンに対応した抜き穴(この場合は円形)の平面図である。この場合、マーキング用ターゲット120に4つの円弧が含まれるため、4種のマークを付与することができ、4回の検査工程を備える場合にも対応可能である。
【0046】
具体的には、図4(b)に示すように、まず1回目に第1の円弧121cを一部とする円を打ち抜き、同様に第2の円弧122c、第3の円弧121d、第4の円弧122dと打ち抜いていくことで4回の検査工程を備える場合についても用いることが可能となる。そして、4回を超える検査工程がある場合には、同様に円弧を増やしていくことで対応することが可能となる。
【0047】
また、複数の孤立した領域を含むマーキング用ターゲット120を用いても良い。図5は、2つ(複数)の孤立した領域を備えるマーキング用ターゲットの構成を示す平面図である。
【0048】
具体的には、マーキング用ターゲット120に、第1の円弧121e、第2の円弧122e、第3の円弧121f、第4の円弧122fが含まれる。
【0049】
このように複数の孤立した領域を備えるマーキング用ターゲット120を用いることで、マーキング用ターゲット120は多数の輪郭を備えることが可能となり、各製造工程に対応した不良マークを形成できる。即ち、不良マークの大きさや形状により不良を発生させた工程を特定することができる。そのため、不良原因の調査を容易に行うことが可能となる。
【0050】
ここで、マーキング用ターゲット120は、打ち抜き加工を行う際に銅配線パターン103を打ち抜く構成を備えている場合について説明したが、これは必須な構成要素ではない。図6は、銅配線パターンを外して打ち抜く場合のマーキング用ターゲットの平面図である。例えば図6に示すように、銅配線パターン103を打ち抜かずに形成されるパターンに対しても適用可能である。マーキング用ターゲット120は、この場合、互いに沿う第1の円弧121gと第2の円弧122gを備えている。この場合においても複数の検査工程に対して不良が発生した工程を同定することが可能となる。また上記したように、矩形、中空を備えた形状、複数の孤立した領域を含む場合に対しても同様に適用することが可能である。
【0051】
また、この場合、ドーナッツ状のマーキング用ターゲット120を用いることもできる。図7は、ドーナッツ状の形状を備えるマーキング用ターゲットの構成を示す平面図である。この場合、マーキング用ターゲット120は、第1の円122hと、第2の円121hを備えている。ここで、マーキング用ターゲット120は上記したように複数あっても良く、多数回の検査工程を備える場合に対応可能となる。また、矩形形状を用いた場合でも同様な効果を得ることができる。また、同心円状の領域以外に、例えば中心に円形のパターンを備えていても良い。この場合、同心円状の領域に対して、上述した効果を得ることが可能となる。
【0052】
(フィルムキャリアテープの製造方法)
次に、フィルムキャリアテープの製造方法について説明する。図8はフィルムキャリアテープを製造する工程を説明するためのフローチャートである。図9(a)〜(f)は、フィルムキャリアテープの製造ステップ途中における1ピース分の平面図である。
【0053】
まず、ステップ1として、スプロケットホール106を備えたテープ基材102に銅配線パターン前駆体(図示しない)が形成されたフィルムにフォトレジスト層(図示しない)を形成する。
【0054】
次に、ステップ2として、フォトレジスト層をパターン露光し、現像することで銅配線パターン103およびマーキング用ターゲット120のレジストパターン(図示しない)を形成する。
【0055】
次に、ステップ3として、前記レジストパターンをマスクとしてエッチングを行い、銅配線パターン103とマーキング用ターゲット120とを形成する。その後、レジスト等を剥離し、除去する。マーキング用ターゲット120としては、中空部を備えるパターン(図4参照)を用いた場合について説明を続ける。
【0056】
次に、ステップ4として、第1の検査として外観検査を行う。この時点で不良があった場合には、第1の円弧121cを一部とする円(点線で図示)を打ち抜き、不良であることを明示する。図9(a)はこのステップを終えた時点での平面図である。マーキング用ターゲット120の寸法は小さいため、図9(a)では、略円形で示している。図9(b)はマーキング用ターゲット120の近傍を拡大した平面図である。
【0057】
次に、ステップ5として、ソルダーレジスト104を印刷法により塗布する。ここで、第1の検査の不良マークが見られる不良ピースについては、塗布を省略する。
【0058】
次に、ステップ6として、第2の検査の電気特性検査を行う。第1の検査の不良マークが見られる不良ピースについては、第2の検査を省略する。
第2の検査で不良があった場合には、第2の円弧122cを一部とする円を打ち抜き、不良であることを明示する。図9(c)はこのステップを終えた時点での平面図である。マーキング用ターゲット120の寸法は小さいため、図9(c)では、略円形で示している。図9(d)はマーキング用ターゲット120の近傍を拡大した平面図である。
【0059】
次に、ステップ7として、第3の検査の外観検査を行う。ここで、第1の検査または第2の検査の不良マークが見られる不良ピースについては、第3の検査を省略する。なお、この外観検査で初めて不良が見つかった場合には、第3の円弧121dを一部とする円を打ち抜き、不良であることを明示する。
【0060】
次に、ステップ8として、不良ピースに形成した不良マークにより、ここまでのステップで発生した不良を解析する。その後、第1〜3の検査において不良マークを形成した不良ピースについては、COFピース101の不良を示すマーキング用ターゲット120の第4の円弧122dを開口し、マーキング用ターゲット120の開口形状を揃える。この場合、第3の円弧121dを開口し、マーキング用ターゲットの開口形状を揃えてもよい。これによって、不良ピースを見分けるのに、確認場所が1箇所で、不良マークが1種類となり、その後のICの実装工程等を効率的に実施できる。以上のステップを刻むことで、COFピース101を含むフィルムキャリアテープ100が形成される。図9(e)はこのステップを終えた時点での平面図である。マーキング用ターゲット120の寸法は小さいため、図9(e)では、略円形で示している。図9(f)はマーキング用ターゲット120の近傍を拡大した平面図である。マーキング用ターゲット120はこの場合消滅するが、説明の都合上、図9(e)では括弧を付けて示している。このようなステップを用いて製造することで、不良が発生した工程を抽出することが可能となる。即ち、不良解析をより迅速に行うことが可能となる。また、不良マークが形成された不良ピースに対して、検査工程や加工工程を飛ばすことができる。このようにすることで、短時間で効率良く検査や加工を行うことが可能となる。
【0061】
上記した、本実施形態のフィルムキャリアテープ、およびその製造方法を用いることにより、以下に示す効果を得ることができる。
【0062】
マーキング用ターゲット120と、銅配線パターン103とを同じ材料で用い、同時にエッチングして形成することで、工程を増やすことなくマーキング用ターゲット120を形成することが可能となる。
【0063】
マーキング用ターゲット120を印刷法を用いて構成することで、高い自由度を持ってマーキング用ターゲット120を形成することが可能となる。
【0064】
銅配線パターン103を切断する第1の円弧121aと対応するマーク140aと第2の円弧122aと対応するマーク141aの一部を備えているため、不良品のCOFピース101は電気的に切断される。そのため、確実な不良情報(導通異常)が得られるため、電子部品(この場合ではICチップ110)を誤って実装してしまうミスを事前に防ぐことが可能となる。
【0065】
マーキング用ターゲット120を、銅配線パターン103と離れた位置に配置することで、高い自由度を持ってマーキング用ターゲット120を配置することが可能となる。
【0066】
複数の検査工程に対応して、異なるマーク140a,141aを対応させることで、不良が発生した工程を同定することが可能となり、不良発生工程を追跡することができるようになる。そのため、不良発生原因を容易に調査することが可能となる。
【0067】
中空部を備えた(例えば半円を2つ繋げた)構成を備えるマーキング用ターゲット120を用いることで、1回目に第1の円弧121cを一部とする円を打ち抜き、同様に第2の円弧122c、第3の円弧121d、第4の円弧122dと打ち抜いていくことで4回の検査工程を備える場合についても用いることが可能となる。また、空隙部を増やすことで、さらに精密に不良解析を行うことが可能となる。
【0068】
複数の孤立した領域を備えるマーキング用ターゲット120を用いることで、空隙部を備えた構成と同様に、多数回検査工程を備える場合についても用いることが可能となる。
【0069】
銅配線パターン103を切断する第1の円弧121aと対応するマーク140aと第2の円弧122aと対応するマーク141aの一部を備えており、不良品のCOFピース101は電気的に切断される。そのため、確実な不良情報(導通異常)が得られるため、電子部品(この場合ではICチップ110)を誤って実装してしまうミスを事前に防ぐことが可能となる。
【0070】
第1の円弧121aと第2の円弧122aとによりアライメントされるマーク140aやマーク141aと、ソルダーレジスト104とを離すことで、打ち抜き加工を行う際に発生する塵埃の量を低減することが可能となる。そのため、当該塵埃の付着に起因する不良発生を抑制することが可能となる。
【0071】
マーキング用ターゲット120をドーナッツ状の形状とすることで、輪郭の全部分を用いて不良品のCOFピース101に対してアライメントして打ち抜き処理することが可能となり、打ち抜き位置精度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
100…フィルムキャリアテープ、101…COFピース、102…テープ基材、103…銅配線パターン、104…ソルダーレジスト、106…スプロケットホール、110…ICチップ、111…金バンプ、112…アンダーフィル材、120…マーキング用ターゲット、121a…第1の円弧、121b…第1の辺、121c…第1の円弧、121d…第3の円弧、121e…第1の円弧、121f…第3の円弧、121g…第1の円弧、121h…第2の円、122a…第2の円弧、122b…第2の辺、122c…第2の円弧、122d…第4の円弧、122e…第2の円弧、122f…第4の円弧、122g…第2の円弧、122h…第1の円、140a…マーク、140b…マーク、141a…マーク、141b…マーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンとマーキング用ターゲットを含むピースと、前記ピースが連続的に連なった電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法であって、
前記製造方法は複数の加工工程と複数の検査工程を含み、
第1の検査工程で不良と判定された第1のピースについては、マーキング用ターゲットの第1部分に沿って第1のマークを付与し、
前記第1の検査工程の下流に配置された第2の検査工程で不良と判定された第2のピースについては、前記マーキング用ターゲットの第2部分に沿って第2のマークを付与し、
前記第1のマークと前記第2のマークはサイズが異なり、
サイズが大きい方のマークが、小さい方のマークを内包することを特徴とするフィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムキャリアテープの製造方法であって、
前記第2の検査工程より下流に配置され、前記第1のマークおよび前記第2のマークにより、不良と判定された検査工程を特定する工程を有することを特徴とするフィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルムキャリアテープの製造方法であって、
前記第2の検査工程で、前記第1のマークが付与された前記第1のピースの検査を省略することを特徴とするフィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルムキャリアテープの製造方法であって、
前記第1の検査工程より下流に配置された加工工程で、前記第1のマークが付与された前記第1のピースの加工を省略することを特徴とするフィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルムキャリアテープの製造方法であって、
前記第2の検査工程より下流に配置され、前記第1のピースの前記第1のマークおよび、前記第2のピースの前記第2のマークに対して、それらを内包する第3のマークを付与するマーク工程を有することを特徴とするフィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルムキャリアテープの製造方法であって、前記第1から3のマークは、前記フィルムキャリアテープを打ち抜いて開口を形成し、前記第1から3のマークの少なくとも1つは、前記配線パターンと平面的に重なっていることを特徴とする、
フィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルムキャリアテープの製造方法であって、前記第1から3のマークは、前記フィルムキャリアテープを打ち抜いて開口を形成し、前記第1から3のマークの少なくとも1つは、前記フィルムキャリアテープに搭載された前記第1のピース及び前記第2のピースの絶縁被覆材と平面的に分離されていることを特徴とする、
フィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項8】
配線パターンとマーキング用ターゲットを含むピースと、前記ピースが連続的に連なった電子部品実装用フィルムキャリアテープであって、
前記マーキング用ターゲットは、第1の円を構成する第1の円弧と第2の円を構成する第2の円弧を含み、前記第1の円と前記第2の円は中心を共有し半径が異なり、前記第1の円弧と前記第2の円弧が互いに沿うことを特徴とする、
フィルムキャリアテープ。
【請求項9】
配線パターンとマーキング用ターゲットを含むピースと、前記ピースが連続的に連なった電子部品実装用フィルムキャリアテープであって、
前記マーキング用ターゲットは、第1の矩形を構成する第1の辺と第2の矩形を構成する第2の辺を含み、前記第1の矩形と前記第2の矩形は中心を共有し互いに相似で、前記第1の辺と前記第2の辺が互いに沿うことを特徴とする、
フィルムキャリアテープ。
【請求項10】
請求項8または9に記載のフィルムキャリアテープであって、
前記マーキング用ターゲットは、
前記配線と同じ材料を用いていることを特徴とする、
フィルムキャリアテープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−198888(P2011−198888A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62075(P2010−62075)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】