説明

フィルムコンデンサ用のフィルムの製造方法、フィルム、及びフィルムコンデンサ

【課題】比較的簡素な工程により、フィルムコンデンサ用フィルムの両面に金属膜を形成しつつ、絶縁欠陥部の周辺の金属膜も除去できるようにする。
【解決手段】フィルムコンデンサ用フィルムの製造方法は、フィルム体(22)の一方の面(22a)に金属を蒸着して金属膜(23)を形成する第1蒸着工程と、第1蒸着工程の後のフィルム体(22)の他方の面(22b)に電圧を印加し、フィルム体(22)に存在する絶縁欠陥部(30)周辺の金属膜(23)を除去する除去工程と、除去工程の後のフィルム体(22)の他方の面(22b)に金属を蒸着して金属膜(24)を形成する第2蒸着工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面に金属膜が形成される両面金属化フィルムと、このフィルムを備えたフィルムコンデンサと、このフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルム表面に金属膜を蒸着して誘電体の電極とするフィルムコンデンサ(金属化フィルムコンデンサ)が知られている。この種のフィルムコンデンサは、例えば電子機器や電気機器に利用され、電解コンデンサと比較すると低損失であり信頼性にも優れている。このため、金属化フィルムコンデンサは、例えば空調機やハイブリッド自動車等の電子回路の平滑コンデンサとしても利用されている。
【0003】
ところで、この種のフィルムコンデンサ用のフィルム材料は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタラート(PET)を延伸して厚さ数μm程度に薄膜化したものが使われるが、延伸による薄膜化工程において、フィルムの厚さ方向にピンホールが形成されることがある。このピンホールはフィルムが絶縁欠陥部となり、フィルムコンデンサの耐電圧特性の低下を招いたり、製品検査時における品質不良の頻度が多くなって歩留まりの悪化を招いたりすることがあった。
【0004】
上記課題を解決する方法として、特許文献1では、フィルムコンデンサに存在する絶縁欠陥部の蒸着金属を連続的に除去し、生産性を向上することができるフィルムの製造方法が開示されている。この製造方法では、1枚の連続な金属化フィルムを連続して巻き取りながら、金属化フィルムの表裏に転接する金属ロール間に電圧を印加(プレヒーリング)することで、その電気エネルギーにより絶縁欠陥部の蒸着金属を溶融除去するようにしている。
【0005】
しかしながら、従来のプレヒーリング方法では、両面に金属膜が形成された両面金属化フィルムに対してプレヒーリングを行うことは困難であった。両面蒸着フィルムでは、金属膜に電圧を印加したときに、作業者がフィルムコンデンサの端部に触れていた場合には、長さ方向に連続する金属膜を導通して金属膜全体に電圧が印加された状態となるため、安全性が損なわれる可能性があるためである。
【0006】
このような課題を解決する手段として、特許文献2には、フィルム体の金属膜が形成されるフィルムの製造時において、片側の金属膜をセグメント化しつつプレヒーリングを行うことで、絶縁欠陥部の周辺の金属膜を除去し、両面金属化フィルムにおいても安全にプレヒーリングを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−79017号公報
【特許文献2】特開2010−10258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
両面に金属膜を形成するフィルムにおいて、従来技術によるプレヒーリングを行うためには、例えば特許文献2のように、例えば金属膜をセグメント化する場合、セグメント化のための処理(例えばマスク処理)が必要となる。また、金属膜が確実にセグメント化されているか(即ち、周囲の金属膜との絶縁が確保されているか)を検査する工程も必要となる。このため、製造設備や製造工程の複雑化を招き、製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡素な工程により、フィルムコンデンサ用フィルムの両面に金属膜を形成しつつ、絶縁欠陥部の金属を除去できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、フィルムコンデンサ用のフィルムの製造方法を対象とする。そして、この製造方法は、フィルム体(22)の一方の面(22a)に金属を蒸着して金属膜(23)を形成する第1蒸着工程と、前記第1蒸着工程の後のフィルム体(22)の他方の面(22b)に電圧を印加し、該フィルム体(22)に存在する絶縁欠陥部(30)周辺の金属膜(24)を除去する除去工程と、前記除去工程の後のフィルム体(22)の他方の面(22b)に金属を蒸着して金属膜(24)を形成する第2蒸着工程とを備えていることを特徴とする。
【0011】
第1の発明では、まず、第1蒸着工程において、フィルム体(22)の一方の面(22a)に金属膜(23)が形成される。次いで、除去工程において、フィルム体(22)の他方の面(22b)に電圧が印加される。この面(22b)には、未だ金属膜(24)が形成されていないため、電圧を印加しても周囲への絶縁が確保される。その結果、フィルム体(22)の絶縁欠陥部(30)の周辺の金属膜(23)を安全且つ確実に除去できる。次いで、第2蒸着工程において、フィルム体(22)の他方の面(22b)に金属膜(24)が形成される。
【0012】
以上のようにして得られたフィルムコンデンサ用フィルムでは、絶縁欠陥部(30)を挟んでフィルム体(22)の片側に金属膜(23)の除去部が形成される。このため、フィルム体(22)では、両側の金属膜(23,24)が絶縁欠陥部(30)を通じて短絡してしまうことが回避される。
【0013】
第2の発明は、フィルムコンデンサ用フィルムを対象とし、第1の発明の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0014】
第2の発明では、第1の発明の製造方法によって、フィルム体(22)の両面に金属膜(23,24)が形成され、且つ絶縁欠陥部(30)の周囲の金属膜(23)が除去されたフィルムコンデンサ用フィルムが得られる。このため、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムでは、絶縁欠陥部(30)を通じて両側の金属膜(23,24)の間で短絡が生じることが回避される。
【0015】
第3の発明は、巻芯(13)と、該巻芯(13)に巻回されるフィルムコンデンサ用フィルム(21)とを備えたフィルムコンデンサを対象とする。そして、このフィルムコンデンサは、前記フィルムコンデンサ用フィルム(21)が、第2の発明のフィルムコンデンサ用フィルムで構成されていることを特徴とする。
【0016】
第3の発明では、第2の発明のフィルム(21)が巻芯(13)に巻回されることで、絶縁性に優れたフィルムコンデンサが得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィルム体(22)の一方の面(22a)に金属膜(23)を形成した後、このフィルム体(22)の他方の面(22b)(即ち、金属が未蒸着となっている面)に電圧を印加している。このため、例えば高電圧が、フィルム体(22)の巻き部やその周辺の機器等に漏れることを防止しつつ、絶縁欠陥部(30)周辺の金属膜(23)を確実に除去できる。
【0018】
また、本発明によれば、除去工程の後、フィルム体(22)の他方の面(22b)に金属膜(24)を形成している。この状態では、絶縁欠陥部(30)の周辺の金属膜(23)が既に除去されているため、フィルム体(22)の両側の金属膜(23,24)の間での絶縁も確実に確保できる。
【0019】
以上のように、本発明では、第1蒸着工程、除去工程、及び第2蒸着工程を経ることで、比較的簡素な製造工程、及び製造装置によって、フィルムコンデンサ用フィルムを得ることができる。
【0020】
第2の発明では、ピンホール等の絶縁欠陥部(30)の影響を抑えた信頼性の高いフィルム(21)を提供することができる。第3の発明では、所望の耐電圧特性を有するフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係るフィルム製造装置の概略構成図であり、図3(A)は第1蒸着工程を、図3(B)及び図3(C)はプレヒーリング工程を、図3(D)は第2蒸着工程をそれぞれ示すものである。
【図4】図4は、本発明に係るフィルムの製造方法で得られた金属化フィルムの断面図である。
【図5】図5は、参考例に係るフィルムの製造方法で得られた金属化フィルムの断面図である。
【図6】図6は、変形例1に係るフィルム製造装置の概略構成図である。
【図7】図7は、変形例2に係るフィルム製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
−全体構成−
本実施形態に係るフィルムコンデンサ(11)は、電源供給回路の平滑コンデンサ等に用いられる。図1に示すように、フィルムコンデンサ(11)は、巻芯(13)と、該巻芯(13)に巻回されるコンデンサ素子(20)と、該コンデンサ素子(20)の軸方向両端部にそれぞれ設けられるメタリコン電極(14)と、各メタリコン電極(14)にそれぞれ電気的に接続される外部端子(16)と、コンデンサ素子(20)の外周面を覆うように配設される絶縁カバー(17)とを備えている。絶縁カバー(17)、コンデンサ素子(20)、巻芯(13)、メタリコン電極(14)、及び外部端子(16)は、封止樹脂(18)によって封止されて覆われる。
【0024】
巻芯(13)は、円筒状の樹脂部材で構成されている。なお、この円筒状の巻芯(13)の内部に金属製の芯部を設けてもよい。メタリコン電極(14)は、コンデンサ素子(20)の軸方向端部に金属を溶射することによって形成される。メタリコン電極(14)は、コンデンサ素子(20)の軸方向端部に露出する2つの金属化フィルム(21,21)と電気的に導通する。
【0025】
外部端子(16)は、その基端部が巻芯(13)に対応する位置で、メタリコン電極(14)と電気的に接続している。これらの外部端子(16)は、メタリコン電極(14)の径方向外方に向かって延び、その先端部が封止樹脂(18)から外方に突出して基板(26)に接続している。
【0026】
絶縁カバー(17)は、樹脂材料からなるシート状の部材を、円筒状のコンデンサ素子(20)の外周面に沿うように丸めて円筒状にしたものである。この絶縁カバー(17)は、コンデンサ素子(20)全体を覆うように設けられている。なお、コンデンサ素子(20)の外周側を覆うように絶縁カバー(17)を配設しているが、この限りではなく、絶縁カバー(17)がなく、該コンデンサ素子(20)を封止樹脂(18)で直接、封止するような構成であってもよい。
【0027】
図2に示すように、コンデンサ素子(20)は、フィルムコンデンサ用フィルムを構成する2枚の金属化フィルム(21,21)が厚さ方向に重ね合わされて構成される。各金属フィルム(21)は、フィルム体(22)と、該フィルム体(22)の一方の面に形成される第1金属膜(23)と、フィルム体(22)の他方の面に形成される第2金属膜(24)とを有する。フィルム体(22)は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフッ化ビニリデン (PVDF)等の絶縁性の高分子材料で構成される。つまり、フィルム体(22)は、帯状の誘電体フィルムで構成される。このフィルム体(22)は、延伸処理によって薄膜化されることが多いが、フィルム体(22)では、詳細は後述する絶縁欠陥部(30)の一要因となる、ピンホールができ易くなる。第1金属膜(23)と第2金属膜(24)とは、フィルム体(22)の表面にアルミニウム等の金属を蒸着させて形成される。
【0028】
−金属化フィルムの製造装置−
次いで、金属化フィルム(21)の製造装置(40)について説明する。
【0029】
本実施形態のフィルム製造装置(40)は、図3に示すように、1つの蒸着機(41)と、1つのプレヒーリング機(50)とを有している。
【0030】
蒸着機(41)は、巻き出し部(42)、冷却送り部(43)、蒸着部(44)、及び巻き取り部(45)を備えている。巻き出し部(42)には、巻回された状態のフィルム体(22)がセットされる。冷却送り部(43)は、フィルム体(22)を冷却しながら送り出す。蒸着部(44)は、アルミニウム等の金属材料を蒸発させて、フィルム体(22)の表面に蒸着させる。フィルム体(22)は、蒸着金属から受ける高熱で変形・溶融しないように、冷却送り部(43)によって冷却される。巻き取り部(45)によって、金属膜(23,24)が形成された後のフィルム体(22)が巻き取られる。
【0031】
プレヒーリング機(50)は、第1金属ロール部(51)と、第2金属ロール部(52)と、電源部(53)とを備えている。第1金属ロール部(51)と第2金属ロール部(52)とは、フィルム体(22)を挟み込みながら、該フィルム体(22)を長さ方向に送り出すように回転する。第1金属ロール部(51)は、電源部(53)のマイナス側と接続している。第1金属ロール部(51)には、高圧のマイナスの電圧が印加される。第2金属ロール部(52)は、電源部(53)のプラス側に接続されている。電源部(53)のプラス側は、アース(図示省略)に接続されている。プレヒーリング機(50)では、フィルム体(22)の厚さ方向の両面(22a,22b)のうち金属膜(23)が形成されていない方の面(22b)に、マイナスの高電圧が印加される。
【0032】
−金属化フィルムの製造方法−
次いで、金属化フィルム(21)の製造方法について、図3を参照しながら説明する。金属化フィルム(21)の製造方法では、第1蒸着工程、プレヒーリング工程(除去工程)、第2蒸着工程が順に行われる。
【0033】
図3(A)に示すように、第1蒸着工程では、巻き出し部(42)に未蒸着状態のフィルム体(22)がセットされ、このフィルム体(22)が図3(A)の矢印で示す方向に送り出される。フィルム体(22)が蒸着部(44)を通過すると、アルミニウム等の蒸着金属がフィルム体(22)の一方の面(22a)に付着する。この蒸着金属が冷却送り部(43)によって冷却されることで、フィルム体(22)の表面にアルミニウムから成る第1金属膜(23)が順次形成されていく。以上のようにして、片側のみに金属膜(23)が形成されたフィルム体(22)は、巻き取り部(45)に巻き取られていく。
【0034】
第1蒸着工程の後には、プレヒーリング工程が行われる。図3(B)に示すように、プレヒーリング工程では、片側のみに金属膜(23)が形成されたフィルム体(22)が、2つの金属ローラ部(51,52)の間で長さ方向に送り出される。金属ローラ部(51,52)には、電源部(53)から電圧が適宜印加される。この電圧の印加のON/OFFは、例えばフィルム体(22)の絶縁状態を適宜検出することで、切り換えられる。
【0035】
例えば図3(B)に示すように、フィルム体(22)にピンホール(31)が形成される場合、前記第1蒸着工程によって、このピンホール(31)内にまで金属が入り込み、この金属が絶縁欠陥部(30)を構成する。プレヒーリング工程では、この絶縁欠陥部(30)、及びその周辺の金属膜が除去される。
【0036】
具体的に、図3(B)の状態で、第1金属ロール部(51)にマイナスの高電圧が印加されると、ピンホール(31)内の金属が電気エネルギーによって溶融して除去される。同時に、第1金属膜(23)では、ピンホール(31)の開口端の周囲の金属膜も溶融して除去される。その結果、第1金属膜(23)には、ピンホール(31)の開口部に対応する部位に、金属膜が存在しない除去部(32)が形成される(図3(C)を参照)。以上のようにしてプレヒーリング処理が行われたフィルム体(22)は、巻き取り部(図示省略)によって再び巻き取られる。
【0037】
プレヒーリング工程の後には、第2蒸着工程が行われる。第2蒸着工程では、フィルム体(22)において、第1金属膜(23)と逆側に第2金属膜(24)が形成される。具体的に、図3(D)に示すように、第2蒸着工程では、巻き出し部(42)に片面のみ金属膜(23)が形成されたフィルム体(22)がセットされ、このフィルム体(22)が図3(D)の矢印で示す方向に送り出される。フィルム体(22)のうち未蒸着側の面(22b)が蒸着部(44)を通過すると、この面(22b)にアルミニウム等の蒸着金属が付着する。この蒸着金属が冷却送り部(43)によって冷却されることで、フィルム体(22)にアルミニウムから成る第2金属膜(24)が順次形成されていく。以上のようにして、両側に金属膜(23,24)が形成されたフィルム体(22)は、巻き取り部(45)に巻き取られていく。
【0038】
以上のようにして得られた金属化フィルム(21)は、図4に示すような断面形状となる。金属化フィルム(21)では、フィルム体(22)の一方の面(22a)に第1蒸着工程で得られた第1金属膜(23)が形成される。第1金属膜(23)には、前記プレヒーリング工程によって、ピンホール(31)に対応する部位に除去部(32)が形成される。金属化フィルム(21)では、フィルム体(22)の他方の面(22b)に第2蒸着工程で得られた第2金属膜(24)が形成される。また、フィルム体(22)では、第2蒸着工程時の蒸着金属がピンホール(31)の内部にまで入り込み、ピンホール(31)の内部に金属(35)が存在することがある(図4を参照)。しかしながら、金属化フィルム(21)では、第1金属膜(23)と第2金属膜(24)とが除去部(32)を介して互いに離間することになる。このため、本実施形態の金属化フィルム(21)では、両者の金属膜(23,24)の絶縁が確保される。
【0039】
なお、図5は、参考例の金属化フィルム(100)を示したものである。この金属化フィルム(100)は、フィルム体(101)の両側にそれぞれ金属膜(102,103)を形成した後、何らかの絶縁対策を講じてプレヒーリング処理を行ったものである。この金属化フィルム(100)では、各金属膜(102,103)について、それぞれピンホール(104)に対応する切除部(105)が形成される。即ち、本実施形態の金属化フィルム(21)では、片側の金属膜(23)のみに除去部(32)が形成されるのに対し、参考例の金属化フィルム(100)では、両側の金属膜(102,103)にそれぞれ切除部(105,105)が形成される。
【0040】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、フィルム体(22)の片側に金属膜(23)を形成した後、反対側の面に高電圧を印加してプレヒーリング処理を行うようにしている。図3(B)に示すように、フィルム体(22)の未蒸着面に高電圧を印加したとしても、その周囲に電圧が流れることがない。従って、フィルム体(22)の巻き取り部位や、その周辺機器に対する絶縁を十分に確保できる。
【0041】
また、上記実施形態では、従来例のようなマスク処理等を行う必要がなく、第1蒸着工程、プレヒーリング工程、第2蒸着工程を経て、容易に金属化フィルム(21)を製造できる。従って、金属化フィルム(21)の製造工程や製造設備の簡素化を図ることができ、ひいては製造コストを低減できる。
【0042】
しかも、上記実施形態で得られた金属化フィルム(21)では、第1金属膜(23)と第2金属膜(24)とが除去部(32)を介して離間する。その結果、両者の金属膜(23,24)の絶縁を確実に確保でき、金属化フィルム(21)、ひいてはフィルムコンデンサ(11)の信頼性を確保できる。
【0043】
〈実施形態の変形例〉
上述した実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0044】
−変形例1−
図6に示す変形例1のフィルム製造装置(40)は、片面式の蒸着機(41)にプレヒーリング部(60)が組み込まれている。即ち、図6に示す蒸着機(41)には、蒸発部(44)と巻き取り部(45)との間のラインに、上記実施形態のプレヒーリング機(50)と同様の、プレヒーリング部(60)が設けられている。変形例1の蒸着機(41)では、蒸着部(44)を通過した後のフィルム体(22)が、プレヒーリング部(60)を通過する。その結果、上記実施形態と同様にして、絶縁欠陥部(30)及びその周囲の金属が除去される。以上のようにして、プレヒーリング処理が行われたフィルム体(22)は、巻き取り部(45)に巻回され、その後、実施形態1と同様にして、第2蒸着工程が行われる。
【0045】
以上のように、変形例1では、片面式の蒸着機(41)にプレヒーリング部(60)を組み込むことで、フィルム製造装置(40)の簡素化を図ることができる。
【0046】
−変形例2−
図7に示す変形例2のフィルム製造装置(40)は、両面式の蒸着機(70)にプレヒーリング部(60)が組み込まれている。即ち、蒸着機(70)には、巻き出し方向から巻き取り方向に向かって順に、巻き出し部(42)、第1冷却送り部(43a)、第1蒸着部(44a)、プレヒーリング部(60)、第2冷却送り部(43b)、第2蒸着部(44b)、巻き取り部(45)が設けられている。
【0047】
第1蒸着部(44a)では、前記第1蒸着工程が行われ、フィルム体(22)の一方の面(22a)に第1金属膜(23)が形成される。その後、プレヒーリング部(60)では、前記プレヒーリング工程が行われ、絶縁欠陥部(30)、及びその周囲の金属が除去される。その後、第2蒸着部(44b)では、前記第2蒸着工程が行われ、フィルム体(22)の他方の面(22b)に第2金属膜(24)が形成される。
【0048】
以上のように、変形例2では、両面式の蒸着機(70)にプレヒーリング部(60)を組み込むことで、フィルム製造装置(40)の更なる簡素化を図ることができる。
【0049】
−その他の実施形態−
上記実施形態のプレヒーリング工程では、マイナス電位の高電圧をフィルム体(22)の未蒸着側の面(22b)に印加しているが、プラス電位の高電圧をフィルム体(22)の未蒸着側の面(22b)に印加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、フィルムと、このフィルムを備えたフィルムコンデンサと、このフィルムの製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0051】
13 巻芯
21 金属化フィルム(フィルムコンデンサ用フィルム)
22 フィルム体
23 第1金属膜
24 第2金属膜
30 絶縁欠陥部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム体(22)の一方の面(22a)に金属を蒸着して金属膜(23)を形成する第1蒸着工程と、
前記第1蒸着工程の後のフィルム体(22)の他方の面(22b)に電圧を印加し、該フィルム体(22)に存在する絶縁欠陥部(30)周辺の金属膜(23)を除去する除去工程と、
前記除去工程の後のフィルム体(22)の他方の面(22b)に金属を蒸着して金属膜(24)を形成する第2蒸着工程と
を備えていることを特徴とするフィルムコンデンサ用フィルムの製造方法。
【請求項2】
フィルムコンデンサ用フィルムであって、
請求項1に記載のフィルムコンデンサ用フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項3】
巻芯(13)と、該巻芯(13)に巻回されるフィルムコンデンサ用フィルム(21)とを備えたフィルムコンデンサであって、
前記フィルムコンデンサ用フィルム(21)は、請求項2に記載のフィルムコンデンサ用フィルムで構成されていることを特徴とするフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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