説明

フィルムコンデンサ用フィルムおよびフィルムコンデンサ

【課題】フッ化ビニリデン系樹脂の高い比誘電率を維持したまま電気絶縁性、特に高温での電気特性が改善されたフィルムコンデンサ用フィルムを提供する。
【解決手段】フッ化ビニリデン単位およびテトラフルオロエチレン単位をフッ化ビニリデン単位/テトラフルオロエチレン単位(モル%比)で0/100〜49/51の範囲で含むテトラフルオロエチレン系樹脂(a1)をフィルム形成樹脂(A)として含むフィルムコンデンサ用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電性でかつ電気絶縁性、特に高温での電気特性が改善されたフィルムコンデンサ用フィルムおよびフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムコンデンサ用フィルムには、その比誘電率の高さから、フィルム形成樹脂としてフッ化ビニリデン(VDF)系樹脂(単独重合体や共重合体)を用いることが提案されている(特許文献1、2)。そして、さらに高誘電性を達成するために、各種の高誘電性複合酸化物粒子を配合することも知られている(特許文献3〜6)。
【0003】
また、高誘電性複合酸化物粒子に加えて、加工改良剤としてシリカを少量(VDF系樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部)配合することも知られている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−199046号公報
【特許文献2】国際公開第2008/090947号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/088924号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/017109号パンフレット
【特許文献5】特開2009−38088号公報
【特許文献6】特開2009−38089号公報
【特許文献7】国際公開第2008/050971号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらのフィルムコンデンサ用フィルムに用いられているVDF系樹脂はVDF系樹脂の高誘電性を利用するべくVDF単位の含有量が多いものである。しかし、本発明者らは電気絶縁性、特に高温での電気特性をさらに改善する必要があることに気付き、VDF系樹脂自体の改良を検討し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の目的は、VDF系樹脂の高い比誘電率を維持したまま電気絶縁性、特に高温での電気特性が改善されたフィルムコンデンサ用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フッ化ビニリデン(VDF)単位およびテトラフルオロエチレン(TFE)単位をVDF単位/TFE単位(モル%比)で0/100〜49/51の範囲で含むTFE系樹脂(a1)をフィルム形成樹脂(A)として含むフィルムコンデンサ用フィルムに関する。
【0008】
上記TFE系樹脂(a1)は、さらにエチレン性不飽和単量体単位を含んでいてもよい。
【0009】
また、上記TFE系樹脂(a1)としては、
(a1−1)TFE単位を55.0〜90.0モル%、VDF単位を5.0〜44.9モル%、および式(1):
CX=CX(CF
(式中、X、X、XおよびXは同じかまたは異なり、いずれもH、FまたはCl;nは0〜8の整数。ただし、TFEおよびVDFは除く)で示されるエチレン性不飽和単量体単位を0.1〜10.0モル%含むTFE−VDF系樹脂;
(a1−2)TFE単位を55.0〜90.0モル%、VDF単位を9.2〜44.2モル%、および式(2):
CF=CF−ORf
(式中、Rfは炭素数1〜3のアルキル基またはフルオロアルキル基)で示されるエチレン性不飽和単量体単位を0.1〜0.8モル%含むTFE−VDF系樹脂;または
(a1−3)TFE単位を55.0〜90.0モル%、VDF単位を5.0〜44.8モル%、式(1):
CX=CX(CF
(式中、X、X、XおよびXは同じかまたは異なり、いずれもH、FまたはCl;nは0〜8の整数。ただし、TFEおよびVDFは除く)で示されるエチレン性不飽和単量体単位を0.1〜10.0モル%、および式(2):
CF=CF−ORf
(式中、Rfは炭素数1〜3のアルキル基またはフルオロアルキル基)で示されるエチレン性不飽和単量体単位を0.1〜0.8モル%含むTFE−VDF系樹脂
が好ましくあげられる。
【0010】
また、上記TFE系樹脂(a1)は、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaであることが好ましい。
【0011】
上記フィルム形成樹脂(A)は、上記TFE系樹脂(a1)のほかに非フッ素系樹脂(a2)を含んでいてもよい。
【0012】
非フッ素系樹脂(a2)としては、セルロース系樹脂およびアクリル樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましくあげられる。
【0013】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、さらに無機酸化物粒子(B)を含んでいてもよい。
【0014】
上記無機酸化物粒子(B)としては、(B1)周期表の2族、3族、4族、12族または13族の1種の金属元素の無機酸化物粒子、またはこれらの無機酸化物複合粒子を少なくとも含むものが好ましくあげられる。好ましい無機酸化物粒子またはこれらの無機酸化物複合粒子(B1)としては、Al、MgO、ZrO、Y、BeOおよびMgO・Alよりなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子があげられ、特にγ型Alが好ましい。
【0015】
また、上記無機酸化物粒子(B)としては、以下の(B2)〜(B5):
(B2)式(B2):
a1b1c1
(式中、Mは周期表の2族金属元素;Nは周期表の4族金属元素;a1は0.9〜1.1;b1は0.9〜1.1;c1は2.8〜3.2である;MとNはそれぞれ複数であってもよい)で示される複合酸化物粒子、
(B3)式(B3):
a2b2c2
(式中、MとMは異なり、Mは周期表の2族金属元素、Mは周期表の第5周期の金属元素;a2は0.9〜1.1;b2は0.9〜1.1;c2は2.8〜3.2である)で示される複合酸化物粒子、
(B4)周期表の2族金属元素および4族金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも3種の金属元素を含む複合酸化物粒子、および
(B5)周期表の2族、3族、4族、12族または13族の金属元素の酸化物と酸化ケイ素との無機酸化物複合粒子
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の高誘電性無機粒子(ただし、前記無機酸化物粒子またはこれらの無機酸化物複合粒子(B1)は除く)を少なくとも含んでいてもよい。
【0016】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、押出成形法により製造することができる。
【0017】
本発明はまた、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの少なくとも片面に電極層が積層されているフィルムコンデンサにも関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムによれば、高い比誘電率を維持したまま電気絶縁性、特に高温での電気特性が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、VDF単位およびTFE単位をVDF単位/TFE単位(モル%比)で0/100〜49/51の範囲で含むTFE系樹脂(a1)をフィルム形成樹脂(A)として含む。
【0020】
以下、各成分について説明する。
【0021】
(A)フィルム形成樹脂
フィルム形成樹脂(A)は、VDF単位およびTFE単位をVDF単位/TFE単位(モル%比)で0/100〜49/51の範囲で含むTFE系樹脂(a1)を含む。
【0022】
本発明で用いるTFE系樹脂(a1)は、TFE単位を多く含有するため融点が高く、特に高温での電気特性が改善されると共に、押出成形法によりフィルムを製造することができる。
【0023】
TFE系樹脂(a1)としては、TFEの単独重合体(TFE単位100モル%)でもよいが、VDFの高誘電性を有効に利用する点から、VDF単位をVDF単位とTFE単位の合計中に5モル%以上含むことが好ましく、40モル%以下含むことが好ましい。
【0024】
また、TFE系樹脂(a1)は、さらにエチレン性不飽和単量体単位、特に式(1):
CX=CX(CF
(式中、X、X、XおよびXは同じかまたは異なり、いずれもH、FまたはCl;nは0〜8の整数。ただし、TFEおよびVDFは除く)で示されるエチレン性不飽和単量体単位、および/または
式(2):
CF=CF−ORf
(式中、Rfは炭素数1〜3のアルキル基またはフルオロアルキル基)で示されるエチレン性不飽和単量体単位を含んでいてもよい。
【0025】
式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体としては、たとえばCF=CFCl、CF=CFCFCF、式(3):
CH=CF−(CF
(式中、Xおよびnは式(1)と同じ)、および式(4):
CH=CH−(CF
(式中、Xおよびnは式(1)と同じ)
よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが、TFE系樹脂の機械的強度が良好な点から好ましい。
【0026】
なかでも、TFE系樹脂の機械的強度が良好な点から、CF=CFCl、CH=CFCF、CH=CH−C、CH=CH−C13、CH=CF−C、CF=CFCF、CH=CF−CHなどが好ましくあげられ、特に、高温での機械的強度が良好な点からは、CF=CFCl、CH=CFCF、CH=CH−C、CH=CH−C13およびCH=CF−CHよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく挙げられる。
【0027】
式(2)で示されるエチレン性不飽和単量体としては、たとえばCF=CF−OCF、CF=CF−OCFCFおよびCF=CF−OCFCFCFよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、TFE系樹脂の高温での機械的強度が良好な点から好ましい。
【0028】
式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体単位(1)を含むTFE−VDF系樹脂(a1−1)としては、TFE単位を55.0〜90.0モル%、VDF単位を5.0〜44.9モル%、およびエチレン性不飽和単量体単位(1)を0.1〜10.0モル%含む共重合体があげられる。
【0029】
より好ましいTFE−VDF系樹脂(a1−1)としては、高温での機械的強度が良好な点から、TFE単位を55.0〜85.0モル%、VDF単位を10.0〜44.9モル%、およびエチレン性不飽和単量体単位(1)を0.1〜5.0モル%含む共重合体があげられ、さらには、高温での機械的強度が良好な点から、TFE単位を55.0〜85.0モル%、VDF単位を13.0〜44.9モル%、およびエチレン性不飽和単量体単位(1)を0.1〜2.0モル%含む共重合体があげられる。
【0030】
また、TFE−VDF系樹脂の高温での機械的強度が良好であることから、エチレン性不飽和単量体(1)がCH=CH−C、CH=CH−C13およびCH=CF−CHよりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、TFE単位を55.0〜80.0モル%、VDF単位を19.5〜44.9モル%、およびエチレン性不飽和単量体単位(1)を0.1〜0.6モル%含む共重合体が好ましくあげられる。
【0031】
式(2)で示されるエチレン性不飽和単量体単位(2)を含むTFE−VDF系樹脂(a1−2)としては、TFE単位を55.0〜90.0モル%、VDF単位を9.2〜44.2モル%、およびエチレン性不飽和単量体単位(2)を0.1〜0.8モル%含む共重合体が、高温での機械的強度が良好な点から好ましい。
【0032】
より好ましいTFE−VDF系樹脂(a1−2)としては、高温での機械的強度が良好な点から、TFE単位を58.0〜85.0モル%、VDF単位を14.5〜39.9モル%、およびエチレン性不飽和単量体単位(2)を0.1〜0.5モル%含む共重合体があげられる。
【0033】
また、エチレン性不飽和単量体単位(1)および(2)の両者を含むTFE−VDF系樹脂(a1−3)としては、TFE単位を55.0〜90.0モル%、VDF単位を5.0〜44.8モル%、エチレン性不飽和単量体単位(1)を0.1〜10.0モル%およびエチレン性不飽和単量体単位(2)を0.1〜0.8モル%含む共重合体が、高温での機械的強度が良好な点から好ましい。
【0034】
より好ましいTFE−VDF系樹脂(a1−3)としては、機械的強度が良好な点から、TFE単位を55.0〜85.0モル%、VDF単位を9.5〜44.8モル%、エチレン性不飽和単量体単位(1)を0.1〜5.0モル%およびエチレン性不飽和単量体単位(2)を0.1〜0.5モル%含む共重合体があげられ、さらには、高温での機械的強度が良好な点から、TFE単位を55.0〜80.0モル%、VDF単位を19.8〜44.8モル%、エチレン性不飽和単量体単位(1)を0.1〜2.0モル%およびエチレン性不飽和単量体単位(2)を0.1〜0.3モル%含む共重合体があげられる。また、好ましいTFE−VDF系樹脂(a1−3)として、高温での機械的強度が良好な点から、TFE単位を58.0〜85.0モル%、VDF単位を9.5〜39.8モル%、エチレン性不飽和単量体単位(1)を0.1〜5.0モル%およびエチレン性不飽和単量体単位(2)を0.1〜0.5モル%含む共重合体であってもよい。
【0035】
本発明で用いるTFE系樹脂(a1)は、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaであることが好ましい。貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaであるとき、機械的強度が好ましい。好ましい貯蔵弾性率(E’)は、フィルム化の加工性が良好な点から80〜350MPa、さらに好ましくは、100〜350MPaである。
【0036】
本発明における貯蔵弾性率(E’)は、動的粘弾性測定により170℃で測定する値であり、より具体的には、アイティー計測制御社製の動的粘弾性装置DVA220で長さ30mm、幅5mm、厚さ0.25mmのサンプルを引張モード、つかみ幅20mm、測定温度25℃から250℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件にて測定して得られる値である。
【0037】
本発明で用いるTFE系樹脂(a1)は、メルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10minであることが、フィルム化の加工性が良好な点から好ましい。
【0038】
MFRは、ASTM D3307−1に準拠し、メルトインデクサー(東洋精機(株)製)を用い、297℃、5kg荷重の下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたり流出するポリマーの質量(g/10min)である。
【0039】
本発明で用いるTFE系樹脂(a1)は、融点が180℃以上であることが好ましい。融点が高いことにより、高温での電気特性、特に、誘電特性などが向上する。より好ましい融点は200℃以上であり、上限は加工性の点から300℃、さらには250℃、特に220℃が好ましい。
【0040】
融点は、示差操作熱量計RDC220(Seiko Instrument製)を用い、ASTMD−4591に準拠して、昇温速度10℃/minにて熱測定を行い、2ndランにて得られる吸熱曲線のピークに当る温度である。
【0041】
本発明で用いるTFE系樹脂(a1)は、熱分解開始温度(1%質量減温度)が360℃以上であることが好ましい。より好ましい熱分解開始温度は370℃以上であり、上限には特に制限はないが、熱分解開始温度が470℃程度のものも使用できる。
【0042】
熱分解開始温度は、示差・熱重量測定装置(TG−DTA)を用いて加熱試験に供したTFE系樹脂の1質量%が分解する温度である。
【0043】
本発明で用いるTFE系樹脂(a1)は、従来公知の溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法によって、従来公知の重合条件に従って製造することができる。
【0044】
本発明において、フィルム形成樹脂(A)は、TFE系樹脂(a1)に加えて非フッ素系樹脂(a2)を併用してもよい。
【0045】
併用する非フッ素系樹脂(a2)としては、セルロース系樹脂および/またはアクリル樹脂が、TFE系樹脂との相溶性がよい点から好ましい。
【0046】
非フッ素系樹脂(a2)を併用する場合は、TFE系樹脂(a1)の誘電損失の温度依存性、特に高温での温度依存性を低減化するという効果が奏される。
【0047】
セルロース系樹脂としては、たとえばモノ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース、トリ酢酸セルロース、酢酸セルロースプロピオネート、酢酸セルロースブチレートなどのエステル置換セルロース;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのエーテルで置換されたセルロースなどが例示できる。これらの中でも、TFE系樹脂との相溶性がよい点から、酢酸セルロースプロピオネート、酢酸セルロースブチレートが好ましい。
【0048】
アクリル樹脂としては、たとえばポリメタクリル酸メチル、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などが例示でき、なかでもポリメタクリル酸メチルがTFE系樹脂との相溶性がよい点から好ましい。
【0049】
非フッ素系樹脂(a2)を併用する場合は、TFE系樹脂(a1)と非フッ素系樹脂(a2)を90/10〜99.9/0.1、さらには95/5〜98/2の質量比で含むことが、比誘電率が大きく、かつHzオーダーの周波数での誘電損失の温度依存性が小さい点から好ましい。
【0050】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、さらに無機酸化物粒子(B)を含んでいてもよい。
【0051】
本発明に用いてもよい無機酸化物粒子(B)としては、まず、つぎの無機酸化物粒子(B1)が好ましくあげられる。
【0052】
(B1)周期表の2族、3族、4族、12族または13族の1種の金属元素の無機酸化物粒子、またはこれらの無機酸化物複合粒子:
金属元素としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Ti、Zr、Zn、Alなどがあげられ、特に、Al、Mg、Y、Znの酸化物が汎用で安価であり、また体積抵抗率が高い点から好ましい。
【0053】
具体的には、Al、MgO、ZrO、Y、BeOおよびMgO・Alよりなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子が、体積抵抗率が高い点から好ましい。
【0054】
なかでも、結晶構造がγ型のAlが、比表面積が大きく、樹脂への分散性が良好な点から好ましい。
【0055】
また、本発明に用いてもよい無機酸化物粒子(B)として、無機酸化物粒子(B1)に代えて、または無機酸化物粒子(B1)に加えてつぎの無機酸化物粒子(B2)〜(B5)の少なくとも1種を用いることができる。ただし、無機酸化物粒子(B2)〜(B5)において、前記の無機酸化物粒子、またはこれらの無機酸化物複合粒子(B1)は除く。
【0056】
(B2)式(B2):
a1b1c1
(式中、Mは周期表の2族金属元素;Nは周期表の4族金属元素;a1は0.9〜1.1;b1は0.9〜1.1;c1は2.8〜3.2である;MとNはそれぞれ複数であってもよい)で示される無機複合酸化物粒子:
4族の金属元素としては、たとえばTi、Zrが好ましく、2族の金属元素としてはMg、Ca、Sr、Baが好ましい。
【0057】
具体的には、BaTiO、SrTiO、CaTiO、MgTiO、BaZrO、SrZrO、CaZrOおよびMgZrOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子が、体積抵抗率が高い点から好ましい。
【0058】
(B3)式(B3):
a2b2c2
(式中、MとMは異なり、Mは周期表の2族金属元素、Mは周期表の第5周期の金属元素;a2は0.9〜1.1;b2は0.9〜1.1;c2は2.8〜3.2である)で示される複合酸化物粒子:
複合酸化物(B3)としては、具体的には、スズ酸マグネシウム、スズ酸カルシウム、スズ酸ストロンチウム、スズ酸バリウム、アンチモン酸マグネシウム、アンチモン酸カルシウム、アンチモン酸ストロンチウム、アンチモン酸バリウム、ジルコン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸バリウム、インジウム酸マグネシウム、インジウム酸カルシウム、インジウム酸ストロンチウム、インジウム酸バリウムなどがあげられる。
【0059】
(B4)周期表の2族金属元素および4族金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも3種の金属元素を含む複合酸化物粒子:
複合酸化物(B4)において、周期表の2族金属元素の具体例としては、たとえばBe、Mg、Ca、Sr、Baなどがあげられ、周期表の4族金属元素の具体例としては、たとえば、Ti、Zr、Hfなどがあげられる。
【0060】
周期表の2族金属元素と4族金属元素から選ばれる3種以上の好ましい組合せとしては、たとえば、Sr、Ba、Tiの組合せ、Sr、Ti、Zrの組合せ、Sr、Ba、Zrの組合せ、Ba、Ti、Zrの組合せ、Sr、Ba、Ti、Zrの組合せ、Mg、Ti、Zrの組合せ、Ca、Ti、Zrの組合せ、Ca、Ba、Tiの組合せ、Ca、Ba、Zrの組合せ、Ca、Ba、Ti、Zrの組合せ、Ca、Sr、Zrの組合せ、Ca、Sr、Ti、Zrの組合せ、Mg、Sr、Zrの組合せ、Mg、Sr、Ti、Zrの組合せ、Mg、Ba、Ti、Zrの組合せ、Mg、Ba、Zrの組合せなどがあげられる。
【0061】
複合酸化物(B4)としては、具体的には、チタン酸ジルコン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ジルコン酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどがあげられる。
【0062】
(B5)周期表の2族、3族、4族、12族または13族の金属元素の酸化物と酸化ケイ素との無機酸化物複合粒子:
無機酸化物粒子(B1)と酸化ケイ素との複合体粒子であり、具体的には、3Al・2SiO、2MgO・SiO、ZrO・SiOおよびMgO・SiOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子があげられる。
【0063】
なお、これらの複合酸化物粒子に加えて、チタン酸ジルコン酸鉛、アンチモン酸鉛、チタン酸亜鉛、チタン酸鉛、酸化チタンなどの他の複合酸化物粒子を併用してもよい。
【0064】
本発明においては、無機酸化物粒子(B)の一次平均粒子径は小さい方が好ましく、特に1μm以下のいわゆるナノ粒子が好ましい。このような無機酸化物ナノ粒子が均一分散することにより、少量の配合でフィルムの電気絶縁性を大幅に向上させることができる。好ましい一次平均粒子径は300nm以下、さらには200nm以下、特に100nm以下である。下限は特に限定されないが、製造の困難性や均一分散の困難性、価格の面から、10nm以上であることが好ましい。
一次平均粒子径は、BET法から換算して得られる値である。
【0065】
これらの無機酸化物粒子(B)には、誘電性の向上を目的としないもの、たとえば無機酸化物粒子(B1)と、誘電性を向上させるために配合される強誘電性(比誘電率(1kHz、25℃)が100以上)の無機酸化物粒子(B2)〜(B5)がある。
【0066】
無機酸化物(B1)は、電気絶縁性、ひいては体積抵抗率の向上を目的としているので、必ずしも高誘電性である必要はない。したがって、汎用で安価な1種類の金属の無機酸化物粒子(B1)として、特にAlやMgOなどを使用しても、体積抵抗率の向上を図ることができる。これら1種類の金属の無機酸化物粒子(B1)の比誘電率(1kHz、25℃)は、100未満、さらには10以下である。
【0067】
誘電性を向上させるために配合されている強誘電性(比誘電率(1kHz、25℃)が100以上)の無機酸化物粒子(B2)〜(B5)を用いる場合、電気絶縁性、ひいては体積抵抗率の向上を目的とする場合は、その配合量は誘電性の向上効果がそれ程見込めない少量とすればよい。また、粒径の観点からも、多量に配合すると均一分散が困難である一次平均粒子径が1μm以下のものを用いることも有効である。
【0068】
強誘電性の無機酸化物粒子(B2)〜(B5)を構成する無機材料としては、複合金属酸化物、その複合体、固溶体、ゾルゲル体などが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。
【0069】
無機酸化物粒子(B)の含有量は、電気絶縁性、ひいては体積抵抗率の向上を目的とする場合は、フィルム形成樹脂(A)100質量部に対して、無機酸化物粒子(B1)が好ましくは0.01質量部以上20質量部未満である。含有量が20質量部以上になると却って電気絶縁性(耐電圧)が低下していく傾向にあるほか、無機酸化物粒子(B1)をフィルム形成樹脂(A)中に均一に分散させることが容易ではなくなることがある。より好ましい上限は8質量部、さらには6質量部である。また、含有量が少なすぎると電気絶縁性の向上効果が得られず、したがってより好ましい下限は、0.1質量部、さらには0.5質量部、特に1質量部である。
【0070】
一方、誘電性を向上させる目的では、強誘電性の無機酸化物粒子(B2)〜(B5)を比較的多量に配合してもよい。たとえばフィルム形成樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以上、300質量部以下が例示できる。
【0071】
(C)他の任意成分
本発明において、高誘電性フィルムの電気絶縁性を向上させるためには、上記の特定のフィルム形成樹脂(A)と無機酸化物粒子(B)で充分であるが、そのほか、他の補強用フィラーや親和性向上剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で含ませてもよい。
【0072】
補強用フィラーは機械的特性(引張強度、硬度など)を付与するために添加される成分であって、上記の無機酸化物粒子(B)以外の粒子または繊維であり、たとえば炭化ケイ素、窒化ケイ素、硼素化合物の粒子または繊維があげられる。なお、シリカ(酸化ケイ素)は、加工改良剤や補強用フィラーとして配合してもよいが、絶縁性向上効果の点からは、熱伝導率が低く、特に高温で体積抵抗率が大きく低下するため、上記無機酸化物粒子(B)よりも劣る。
【0073】
親和性向上剤としては、上記フィルム形成樹脂(A)以外の化合物であり、たとえば官能基変性ポリオレフィン、スチレン改質ポリオレフィン、官能基変性ポリスチレン、ポリアクリル酸イミド、クミルフェノールなどがあげられ、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。なお、絶縁性向上効果の点からはこれらの成分は含まないことがより好ましい。
【0074】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、押出成形法や圧縮成形法、ブロー成形法などによってフィルム化することができる。
【0075】
押出成形法によりフィルム化する方法としては、たとえばフィルム形成樹脂(A)、さらに要すれば無機酸化物粒子(B)、他の成分(C)を溶融混練し、フラットダイで押出す方法が例示できる。また、圧縮成形法によりフィルム化する方法としては、たとえばフィルム形成樹脂(A)、さらに要すれば無機酸化物粒子(B)、他の成分(C)をラボプラストミル等で溶融混練し、ヒートプレス等で加熱圧縮する方法が例示できる。さらにブロー成形法によりフィルム化する方法としては、たとえばフィルム形成樹脂(A)、さらに要すれば無機酸化物粒子(B)、他の成分(C)を溶融混練し、インフレーション成形する方法が例示できる。
【0076】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの製造は、もちろんたとえばフィルム形成樹脂(A)、さらに要すれば無機酸化物粒子(B)、他の成分(C)と溶剤(D)とを含むコーティング組成物をコーティングしてフィルムを形成し、ついで剥離することで作製することもできる。
【0077】
コーティング組成物を調製するための溶剤(D)としては、TFE系樹脂(a1)、さらに要すれば非フッ素系樹脂(a2)を溶解する任意の溶媒を使用できるが、特に、極性有機溶媒が好ましい。なかでも極性有機溶媒としては、たとえばケトン系溶剤、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒、環状エーテル系溶媒、アミド系溶剤が好ましい。具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが好ましくあげられる。
【0078】
コーティング組成物では、溶剤(D)により、フィルム形成樹脂(A)、無機酸化物粒子(B)、その他の任意成分(C)のうちの固形分の合計の固形分濃度を5〜30質量%とすることが、コーティング作業が容易で、組成物の安定性がよいことから好ましい。コーティング組成物は、これらの各成分を溶剤に溶解または分散させることにより調製できる。
【0079】
本発明において、無機酸化物粒子(B)をフィルム形成樹脂(A)中に均一に分散させることが重要である。本発明においては、無機酸化物粒子(B)の配合量が少ないので、比較的均一に分散させることが容易である。ただ、必要に応じて、上記の親和性向上剤を使用するほか、界面活性剤をコーティング組成物に添加してもよい。
【0080】
界面活性剤としては、電気絶縁性を損なわない範囲でカチオン性、アニオン性、非イオン性、両性の界面活性剤が使用できるが、なかでも非イオン性界面活性剤、特に高分子系の非イオン性界面活性剤が好ましい。高分子系非イオン性界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどが例示できる。
【0081】
コーティング組成物のコーティング方法としては、ナイフコーティング法、キャストコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ブレードコーティング法、ロッドコーティング法、エアドクタコーティング法、カーテンコーティング法、ファクンランコーティング法、キスコーティング法、スクリーンコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、押出コーティング法、電着コーティング法などが使用できるが、これらのうち操作性が容易な点、膜厚のバラツキが少ない点、生産性に優れる点からロールコーティング法、グラビアコーティング法、キャストコーティング法、特にキャストコーティング法が好ましく、優れたフィルムコンデンサ用フィルムを製造することができる。
【0082】
たとえばコーティング組成物を基材表面にキャストし、乾燥した後、該基材から剥離するときは、得られるフィルムは、電気絶縁性が高く、耐電圧が高い点で優れ、また薄膜で可撓性を有する点で優れたものである。
【0083】
かくして得られる本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、膜厚を250μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは10μm以下にすることができる。膜厚の下限は機械的強度の維持の点から約2μmが好ましい。
【0084】
本発明はまた、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの少なくとも片面に電極層が積層されているフィルムコンデンサに関する。
【0085】
フィルムコンデンサの構造としては、たとえば、電極層と高誘電体フィルムが交互に積層された積層型(特開昭63−181411号公報、特開平3−18113号公報など)や、テープ状の高誘電体フィルムと電極層を巻き込んだ巻回型(高誘電体フィルム上に電極が連続して積層されていない特開昭60−262414号公報などに開示されたものや、高誘電体フィルム上に電極が連続して積層されている特開平3−286514号公報などに開示されたものなど)などがあげられる。構造が単純で、製造も比較的容易な、高誘電体フィルム上に電極層が連続して積層されている巻回型フィルムコンデンサの場合は、一般的には片面に電極を積層した高誘電体フィルムを電極同士が接触しないように2枚重ねて巻き込んで、必要に応じて、巻き込んだ後に、ほぐれないように固定して製造される。
【0086】
電極層は、特に限定されないが、一般的に、アルミニウム、亜鉛、金、白金、銅などの導電性金属からなる層であって、金属箔として、または蒸着金属被膜として用いる。本発明においては、金属箔と蒸着金属被膜のいずれでも、また、両者を併用しても構わない。電極層を薄くでき、その結果、体積に対して容量を大きくでき、誘電体との密着性に優れ、また、厚さのバラつきが小さい点で、通常は、蒸着金属被膜が好ましい。蒸着金属被膜は、一層のものに限らず、たとえば耐湿性を持たせるためにアルミニウム層にさらに半導体の酸化アルミニウム層を形成して電極層とする方法(たとえば特開平2−250306号公報など)など、必要に応じて多層にしてもよい。蒸着金属被膜の厚さも特に限定されないが、好ましくは100〜2,000オングストローム、より好ましくは200〜1,000オングストロームの範囲とする。蒸着金属被膜の厚さがこの範囲である時に、コンデンサの容量や強度がバランスされ好適である。
【0087】
電極層として蒸着金属被膜を用いる場合、被膜の形成方法は特に限定されず、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを採用することができる。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0088】
真空蒸着法としては、たとえば成形品のバッチ方式と、長尺品で使用される半連続(セミコンテニアス)方式と連続(air to air)方式などがあり、現在は、半連続方式が主力として行われている。半連続方式の金属蒸着法は、真空系の中で金属蒸着、巻き取りした後、真空系を大気系に戻し、蒸着されたフィルムを取り出す方法である。
【0089】
半連続方式については、具体的には、たとえば特許第3664342号明細書に図1を参照して記載されている方法で行うことができる。
【0090】
フィルムコンデンサ用フィルム上に金属薄膜層を形成する場合、あらかじめフィルム表面に、コロナ処理、プラズマ処理など、接着性向上のための処理を施しておくこともできる。電極層として金属箔を用いる場合も、金属箔の厚さは特に限定されないが、通常は、0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜15μmの範囲である。
【0091】
固定方法は、特に限定されず、たとえば樹脂で封止したり絶縁ケースなどに封入したりすることにより、固定と構造の保護とを同時に行えばよい。リード線の接続方法も限定されず、溶接、超音波圧接、熱圧接、粘着テープによる固定などが例示される。巻き込む前から電極にリード線を接続しておいてもよい。絶縁ケースに封入する場合など、必要に応じて、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で開口部などを封止して酸化劣化などを防止してもよい。
【0092】
このようにして得られた本発明のフィルムコンデンサは、高誘電性を維持したまま、電気絶縁性、特に高温での電気特性が向上したものである。
【実施例】
【0093】
つぎに本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はかかる例のみに限定されるものではない。
【0094】
なお、本明細書で使用している特性値は、上記した以外の測定方法以外は、つぎの方法で測定したものである。
【0095】
(共重合体組成)
19F−NMR分析と、適宜、元素分析を組み合わせて決定する。19F−NMR分析は、NMR装置(Bruker−Biospin社製)を用い、測定温度をポリマーの融点+20℃とする。
【0096】
(膜厚)
デジタル測長機((株)仙台ニコン製のMF−1001)を用いて、基板に載せたフィルムを室温下にて測定する。
【0097】
(誘電正接および比誘電率)
複合フィルムを真空中で両面にアルミニウムを蒸着しサンプルとする。このサンプルをインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製のHP4194A)にて、30℃および90℃下で、周波数100Hz、1kHzおよび10kHzでの静電容量と誘電正接を測定する。得られた各静電容量から比誘電率を算出する。
【0098】
(体積抵抗率)
デジタル超絶縁計/微小電流計にて、体積抵抗率(Ω・cm)を90℃、ドライエアー雰囲気下、DC300Vで測定する。
【0099】
合成例1 TFE系樹脂Aの製造
174L容積のオートクレーブに蒸留水51.0Lを投入し、十分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン55.0kgを仕込み、系内の温度を35℃、撹拌速度200rpmに保った。ついでCH=CHCFCFCFCFCFCF13g、TFE4.97kgおよびVDF1.37kgを順次仕込んだ後、重合開始剤ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)の50質量%メタノール溶液を140g添加して重合を開始した。重合開始と同時に酢酸エチルを156g仕込んだ。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、TFE/VDF混合ガスモノマー(TFE/VDF=60.2/39.8モル%比)を仕込み、また、追加する混合ガスモノマー100質量部に対してCH=CHCFCFCFCFCFCFを1.21質量部になるように同時に仕込み、系内圧力を0.8MPaに保った。最終的に混合ガスモノマーの追加仕込み量が11kgになった時点で重合を停止し、放圧して大気圧に戻した後、得られたTFE/VDF/CH=CHCFCFCFCFCFCF共重合体を水洗、乾燥して10.4kgの粉末を得た。
【0100】
ついでφ20mm単軸押出機を用いてシリンダー温度290℃で溶融混練を行い、ペレットを得た。このペレットを150℃にて12時間加熱した。
【0101】
得られたペレットは以下の組成および物性を有していた。
TFE/VDF/CH=CHCFCFCFCFCFCF:60.1/39.6/0.3(モル%比)
融点:218℃
MFR:1.7g/10min(297℃、5kg)
170℃における貯蔵弾性率(E’):153MPa
熱分解開始温度(1%質量減温度):372℃
【0102】
合成例2 TFE系樹脂Bの製造
174L容積のオートクレーブに蒸留水52.2Lを投入し、十分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン39.1kgを仕込み、系内の温度を35℃、撹拌速度200rpmに保った。ついでパーフルオロ(プロピル)ビニルエーテル(CF=CF−OCFCFCF)0.34kg、TFE6.00kgおよびVDF1.08kgを順次仕込んだ後、重合開始剤ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)の50質量%メタノール溶液を130g添加して重合を開始した。重合開始と同時に酢酸エチルを0.3kg仕込んだ。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、TFE/VDF混合ガスモノマー(TFE/VDF=65.5/34.5モル%比)を仕込み、また、追加する混合ガスモノマー100質量部に対してパーフルオロ(プロピル)ビニルエーテルを0.9質量部になるように同時に仕込み、系内圧力を0.9MPaに保った。最終的に混合ガスモノマーの追加仕込み量が8kgになった時点で重合を停止し、放圧して大気圧に戻した後、得られたTFE/VDF/パーフルオロ(プロピル)ビニルエーテル共重合体を水洗、乾燥して7.5kgの粉末を得た。
ついでφ20mm単軸押出機を用いてシリンダー温度280℃で溶融混練を行い、ペレットを得た。このペレットを150℃にて12時間加熱した。
【0103】
得られたペレットは以下の組成および物性を有していた。
TFE/VDF/パーフルオロ(プロピル)ビニルエーテル:65.5/34.3/0.2(モル%比)
融点:228℃
MFR:1.6g/10min(297℃、5kg)
170℃における貯蔵弾性率(E’):87MPa
熱分解開始温度(1%質量減温度):383℃
【0104】
合成例3 TFE系樹脂Cの製造
174L容積のオートクレーブに蒸留水51.0Lを投入し、十分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン55.0kgを仕込み、系内の温度を35℃、撹拌速度200rpmに保った。ついでCH=CHCFCFCFCFCFCF9g、パーフルオロ(プロピル)ビニルエーテル60g、TFE4.99kgおよびVDF1.37kgを順次仕込んだ後、重合開始剤ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)の50質量%メタノール溶液を140g添加して重合を開始した。重合開始と同時に酢酸エチルを140g仕込んだ。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、TFE/VDF混合ガスモノマー(TFE/VDF=60.0/40.0モル%比)を仕込み、また、追加する混合ガスモノマー100質量部に対して、CH=CHCFCFCFCFCFCF0.8部、パーフルオロ(プロピル)ビニルエーテルを0.3部になるように同時に仕込み、系内圧力を0.8MPaに保った。最終的に混合ガスモノマーの追加仕込み量が9kgになった時点で重合を停止し、放圧して大気圧に戻した後、得られたTFE/VDF/CH=CHCFCFCFCFCFCF/パーフルオロ(プロピル)ビニルエーテル共重合体を水洗、乾燥して8.6kgの粉末を得た。
ついでφ20mm単軸押出機を用いてシリンダー温度290℃で溶融混練を行い、ペレットを得た。このペレットを150℃にて12時間加熱した。
【0105】
得られたペレットは以下の組成および物性を有していた。
TFE/VDF/CH=CHCFCFCFCFCFCF/パーフルオロ(プロピル)ビニルエーテル:59.8/39.9/0.2/0.1(モル%比)
融点:221℃
MFR:1.8g/10min(297℃、5kg)
170℃における貯蔵弾性率(E’):123MPa
熱分解開始温度(1%質量減温度):377℃
【0106】
実施例1
合成例1で得られたペレット樹脂を250℃でヒートプレスにて成形し、厚さ207μmのフィルムを得た。
【0107】
実施例2
合成例2で得られたペレット樹脂を250℃でヒートプレスにて成形し、厚さ201μmのフィルムを得た。
【0108】
実施例3
合成例3で得られたペレット樹脂を250℃でヒートプレスにて成形し、厚さ202μmのフィルムを得た。
【0109】
実施例4
合成例1で得られたペレット樹脂100質量部と、アルミナ(一次平均粒子径100nm)10質量部とを混合して、250℃で混練した後、250℃でヒートプレスにて成形し、厚さ210μmのフィルムを得た。
【0110】
実施例5
合成例1で得られたペレット樹脂100質量部と、チタン酸バリウム(一次平均粒子径100nm)20質量部とを混合して、250℃で混練した後、250℃でヒートプレスにて成形し、厚さ215μmのフィルムを得た。
【0111】
比較例1
実施例1において、フィルム形成樹脂としてVDFの単独重合体(ダイキン工業(株)製のネオフロンVDF VP−832)を用いたほかは同様にして比較用のフィルムコンデンサ用フィルムを得た。
【0112】
得られた各フィルムについて、誘電正接、比誘電率および体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
表1から、本発明の樹脂は、特に誘電正接が改善され低くなり、また周波数依存性も小さいということが分かる。
【0115】
実施例6
実施例1で製造したフィルムの両面に、真空蒸着装置((株)真空デバイス製のVE−2030)により3Ω/□を目標にしてアルミニウムを蒸着して電極を形成した。これらのアルミニウム電極に電圧印加用のリード線を取り付け、スタンプ型(簡易評価用)のフィルムコンデンサを作製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン単位およびテトラフルオロエチレン単位をフッ化ビニリデン単位/テトラフルオロエチレン単位(モル%比)で0/100〜49/51の範囲で含むテトラフルオロエチレン系樹脂(a1)をフィルム形成樹脂(A)として含むフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系樹脂(a1)が、さらにエチレン性不飽和単量体単位を含む請求項1記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系樹脂(a1)が、テトラフルオロエチレン単位を55.0〜90.0モル%、フッ化ビニリデン単位を5.0〜44.9モル%、および式(1):
CX=CX(CF
(式中、X、X、XおよびXは同じかまたは異なり、いずれもH、FまたはCl;nは0〜8の整数。ただし、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンは除く)で示されるエチレン性不飽和単量体単位を0.1〜10.0モル%含む請求項2記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系樹脂(a1)が、テトラフルオロエチレン単位を55.0〜90.0モル%、フッ化ビニリデン単位を9.2〜44.2モル%、および式(2):
CF=CF−ORf
(式中、Rfは炭素数1〜3のアルキル基またはフルオロアルキル基)で示されるエチレン性不飽和単量体単位を0.1〜0.8モル%含む請求項2記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項5】
前記テトラフルオロエチレン系樹脂(a1)が、テトラフルオロエチレン単位を55.0〜90.0モル%、フッ化ビニリデン単位を5.0〜44.8モル%、式(1):
CX=CX(CF
(式中、X、X、XおよびXは同じかまたは異なり、いずれもH、FまたはCl;nは0〜8の整数。ただし、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンは除く)で示されるエチレン性不飽和単量体単位を0.1〜10.0モル%、および式(2):
CF=CF−ORf
(式中、Rfは炭素数1〜3のアルキル基またはフルオロアルキル基)で示されるエチレン性不飽和単量体単位を0.1〜0.8モル%含む請求項2記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項6】
前記テトラフルオロエチレン系樹脂(a1)が、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaである請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項7】
フィルム形成樹脂(A)が、前記テトラフルオロエチレン系樹脂(a1)と非フッ素系樹脂(a2)を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項8】
非フッ素系樹脂(a2)が、セルロース系樹脂およびアクリル樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項9】
さらに無機酸化物粒子(B)を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項10】
前記無機酸化物粒子(B)が、(B1)周期表の2族、3族、4族、12族または13族の1種の金属元素の無機酸化物粒子、またはこれらの無機酸化物複合粒子を少なくとも含む請求項9記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項11】
前記無機酸化物粒子またはこれらの無機酸化物複合粒子(B1)が、Al、MgO、ZrO、Y、BeOおよびMgO・Alよりなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子である請求項10記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項12】
前記無機酸化物粒子またはこれらの無機酸化物複合粒子(B1)が、γ型Alである請求項10記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項13】
前記無機酸化物粒子(B)が、以下の(B2)〜(B5):
(B2)式(B2):
a1b1c1
(式中、Mは周期表の2族金属元素;Nは周期表の4族金属元素;a1は0.9〜1.1;b1は0.9〜1.1;c1は2.8〜3.2である;MとNはそれぞれ複数であってもよい)で示される複合酸化物粒子、
(B3)式(B3):
a2b2c2
(式中、MとMは異なり、Mは周期表の2族金属元素、Mは周期表の第5周期の金属元素;a2は0.9〜1.1;b2は0.9〜1.1;c2は2.8〜3.2である)で示される複合酸化物粒子、
(B4)周期表の2族金属元素および4族金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも3種の金属元素を含む複合酸化物粒子、および
(B5)周期表の2族、3族、4族、12族または13族の金属元素の酸化物と酸化ケイ素との無機酸化物複合粒子
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の高誘電性無機粒子(ただし、前記無機酸化物粒子またはこれらの無機酸化物複合粒子(B1)は除く)を少なくとも含む請求項9〜12のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルムの少なくとも片面に電極層が積層されているフィルムコンデンサ。

【公開番号】特開2012−89832(P2012−89832A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205647(P2011−205647)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VDF
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】