フィルム光導波路の製造方法および製造装置
【課題】 フィルム光導波路の任意の箇所において、光路変換ミラーを任意の形態で生産性良く作成できる、フィルム光導波路の製造方法を実現する。
【解決手段】 各構成要素(下クラッド層、コア部、上クラッド層)がポリマー材料から構成され、可とう性を有するフィルム光導波路10を、ダイ51の載置面上に設置し、パンチ52による打抜きを行う。このとき、ダイ51の載置面を、打抜き方法(すなわち、パンチ52の移動方向)に対して傾斜させることで。傾斜切断面(例えば、光路変換ミラー)を有するフィルム光導波路11を製造する。
【解決手段】 各構成要素(下クラッド層、コア部、上クラッド層)がポリマー材料から構成され、可とう性を有するフィルム光導波路10を、ダイ51の載置面上に設置し、パンチ52による打抜きを行う。このとき、ダイ51の載置面を、打抜き方法(すなわち、パンチ52の移動方向)に対して傾斜させることで。傾斜切断面(例えば、光路変換ミラー)を有するフィルム光導波路11を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路変換ミラーを組み込んだフィルム光導波路の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で大容量のデータ通信が行える光通信網が拡大している。また、通信されるデータ量の増大とともに機器内の伝送路や民生機器への光通信網の拡大が見込まれ、今後、光電変換する光通信モジュールの小型化が望まれる。面発光型の発光素子や面受光型の受光素子と、入出力部に光路変換ミラーを有する光導波路とを組み合わせて入出力部を構成すれば、コンパクトな光通信モジュールが得られる。
【0003】
光導波路においては、近年、ポリマー材料により構成された可とう性を有するフィルム光導波路の研究が盛んになっている。このようなフィルム光導波路は、可とう性を有し厚さも薄いため切断加工が容易であり、ガラス等の硬質な材料で構成された光導波路では実現できなかった、異なる場所を結ぶ光通信モジュールを得ることが可能となる。
【0004】
また、光導波路の入出力部に光路変換ミラーを組み込むためには、例えば、特許文献1に公開されているように、光導波路コアの垂直方向から所望の光路変換角度に加工されたブレードを回転させて切削することにより光路変換ミラーを作製する方法がある。さらに、上記特許文献1には、光導波路の端面を2枚のブレードにて斜めに切断し、その切断面を光路変換ミラーとする方法が記載されている。
【特許文献1】特開平10−300961号公報(公開日平成10年11月13日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1における回転ブレードを用いて切削する方法では、複数の光路変換ミラーを一括して作成することができず、その生産性に課題がある。
【0006】
また、光導波路の端面を2枚のブレードにて斜めに切断する方法では、可とう性のあるフィルム光導波路の切断を行う場合、フィルム光導波路の保持が不安定であるため、2枚のブレードによって挟まれる部分に曲げが生じ、この曲げによって切断面の傾斜角度を所望の角度に制御することが困難になるといった問題がある。さらには、光路変換ミラーの作成箇所が光導波路の端面のみに限定され、光導波路の任意の箇所に任意の形態で光路変換ミラーを作成したいという要望に対して適用性が低い。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム光導波路の任意の箇所において、光路変換ミラーを任意の形態で生産性良く作成できる、フィルム光導波路の製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフィルム光導波路の製造方法は、上記課題を解決するために、ポリマー材料からなる下クラッド層、コア部、上クラッド層から構成され、その一部に上記下クラッド層および上クラッド層の接合面の法線方向に対して傾斜する傾斜切断面(例えば、光路変換ミラー)を有するフィルム光導波路の製造方法において、傾斜切断面が形成される前のフィルム光導波路をダイの載置面上に設置し、この載置面法線方向に対して傾斜した打抜き方向によってパンチによる打抜き加工を行い、上記傾斜切断面を形成することを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、各構成要素(下クラッド層、コア部、上クラッド層)がポリマー材料から構成され、可とう性を有するフィルム光導波路において、斜め方向からの打抜きによって傾斜切断面を形成することができる。このように打抜きを用いることにより、複数箇所の傾斜切断面を同時に形成できるため生産性がよく、また、打抜き時にフィルム光導波路はダイの載置面上で面支持されるため曲がりが生じにくく、傾斜切断面の精度低下も生じにくい。
【0010】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、上記傾斜切断面の少なくとも一つは、フィルム光導波路のコア部長手方向の端部に形成されることで、フィルム光導波路の端部の入出力部における光路変換ミラーや、入出力部におけるリターンロスを無くすための傾斜面とすることができる。
【0011】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、上記傾斜切断面の少なくとも一つは、フィルム光導波路のコア部長手方向の両端部間に溝状の切欠きを形成することによって形成される。これにより、フィルム光導波路の端部以外の箇所にも傾斜切断面を形成することが可能となり、例えば、4つ以上の光路変換ミラーを有するフィルム光導波路によって3枚以上の基板を接続することが可能となる。
【0012】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、上記ダイの載置面は、パンチの打抜き方向に対して異なる角度に傾斜する複数の平面で構成され、各平面での打抜きによって、異なる傾斜角を有する傾斜切断面を形成することができる。これにより、異なる傾斜角を有する傾斜切断面を1回の打抜き加工で同時に形成することができる。
【0013】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、ほぼ平行に形成される2本以上のコア部を有し、これらのコア部の端部付近においてその間隔が広がるように曲げ領域が形成されているフィルム光導波路の端部に、上記曲げ領域において、2つ以上の平面からなると共にコアの長手方向に対して傾斜している傾斜切断面を形成することができる。これにより、例えば、フィルム光導波路の端部で、クロストークを防止するためにその間隔を広げられたコア部を再び平行にする区間を設けなくても光路変換ミラーを形成することができ、光伝送モジュールの小型化に対して有利となる。
【0014】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、ほぼ平行に形成される2本以上のコア部を有するフィルム光導波路の端部に、コア部長手方向に段差を有する傾斜切断面を形成することができる。これにより、例えば、フィルム光導波路の端部で、クロストークを防止するために段差を設けられた光路変換ミラーを形成することができ、光伝送モジュールの小型化に対して有利となる。
【0015】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、1枚の積層フィルム内に複数のフィルム光導波路分に相当するコア部を作成された機材に対し、1回の打抜き加工によって、上記傾斜切断面の形成とフィルム光導波路の個片化とを同時に行うことができる。これにより、入出力部に光路変換ミラー等が組込まれたフィルム光導波路を、生産性良くローコストに製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るフィルム光導波路の製造方法は、各構成要素(下クラッド層、コア部、上クラッド層)がポリマー材料から構成され、可とう性を有するフィルム光導波路において、斜め方向からの打抜きによって傾斜切断面を形成することができる。このように打抜きを用いることにより、複数箇所の傾斜切断面を同時に形成でき、光路変換ミラー等が組み込まれたフィルム光導波路を生産性良く製造できるといった効果を奏する。また、打抜き時にフィルム光導波路はダイの載置面上で面支持されるため曲がりが生じにくく、傾斜切断面の精度低下も生じにくいといった効果を併せて奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図3に基づいて説明すると以下の通りである。
【0018】
先ずは、光路変換ミラー形成前のフィルム光導波路の製造方法の一例を、図2(a)〜(d)を参照して簡単に説明する。
【0019】
図2(a)に示すように、ガラス等からなる基板21上に、例えばUV硬化樹脂を滴下し、下クラッド層22に任意形状の凸部が形成されたスタンパ31を押し当てながら、UV光の照射を行い、下クラッド層22を硬化させる。これにより、下クラッド層22には、スタンパ31の凸部パターンに対応する溝部が形成される。
【0020】
次に、図2(b)に示すように、スタンパ31を取り外して、下クラッド層22の溝部にコア部23を形成する。コア部23は、例えばUV硬化樹脂を下クラッド層22の溝部に滴下し、平坦面を有するスタンパ32を押し当てながらUV光の照射を行い、上記溝部に埋め込まれた樹脂を硬化させることで形成する。
【0021】
次に、図2(c)に示すように、スタンパ32を取り外して、下クラッド層22およびコア部23の上面に、例えばUV硬化樹脂を滴下し、その後、UV光の照射を行い、UV硬化樹脂を硬化させて上クラッド層24を形成する。
【0022】
最後に、図2(d)に示すように、基板21を剥離することで、コア部23を下クラッド層22および上クラッド層24で挟んだ構造となるフィルム光導波路10が製造される。
【0023】
上記フィルム光導波路10では、基板21が無く、その構成要素の全て(コア部23、下クラッド層22および上クラッド層24)をポリマー材料にて構成することで、フィルム光導波路10に可とう性を持たせることができ、異なる基板同士の接続に用いることができる。また、上記フィルム光導波路10を、異なる基板同士の接続に用いる場合には、その入出力部に光路変換ミラーを形成することが、光通信モジュールをコンパクト化するうえで好ましい。
【0024】
フィルム光導波路の両端に光路変換ミラーを形成した場合の構成を図3(a),(b)に示す。図3(a),(b)に示すフィルム光導波路11は、上記フィルム光導波路10の両端を、下クラッド層22および上クラッド層24の接合面の法線方向(垂直方向)に対して45°に傾斜切断することで、この切断面を光路変換ミラー11A,11Bとして作用させる構成となっている。尚、以下の説明において、傾斜角とは下クラッド層22および上クラッド層24の接合面に垂直な面と切断面とが交差する角度にて示されるものとする。このように、フィルム光導波路11では、両端に光路変換ミラー11A,11Bを設けることで、それぞれ発光素子31および受光素子32を有する基板33,34同士をフレキシブルに接続することが可能となる。
【0025】
ここで、上記フィルム光導波路11における光路変換ミラー11A,11Bの形成方法を説明する。本発明においては、フィルム光導波路における光路変換ミラーの形成には打抜き加工を用いる。
【0026】
本実施の形態1では、一例として、図1(a)〜(c)に示すように、ダイ51およびパンチ52を用いて、フィルム光導波路10に打抜き加工を行い、光路変換ミラー11A,11Bを有するフィルム光導波路11を製造する場合を説明する。
【0027】
先ず、図1(a)に示すように、フィルム光導波路10はダイ51の載置面上に設置される。このとき、ダイ51の載置面は、打抜き方法(すなわち、パンチ52の移動方向)に対して、45°傾斜させられている。この状態で、図1(b)に示すように、パンチ52を移動させて打抜きを行う。これにより、図1(c)に示すように、両端に45°の傾斜に切断された光路変換ミラー11A,11Bを有するフィルム光導波路11が得られる。尚、上記パンチ52は、複数の切断箇所に対して同時に切断が行えることが好ましい。
【0028】
上述のように、打抜き加工によって光路変換ミラーを形成する方法では、複数の光路変換ミラーを一括して形成することが可能となり、生産性を向上させることができる。尚、ここで、複数の光路変換ミラーを一括して形成するとは、一つのフィルム光導波路の異なる箇所(例えば両端)に光路変換ミラーを同時に形成することにのみならず、ダイの載置面上に並べて配置された複数のフィルム光導波路に対して光路変換ミラーを一括して形成することも可能である。また、フィルム光導波路は可とう性を有するものであるが、このフィルム光導波路は加工時にダイの載置面上で面支持されるため、打抜き時に掛かる切断力によっても曲げが生じにくく、切断面の傾斜角における精度を向上させることができる。
【0029】
尚、上記打抜き加工において、フィルム光導波路の切断面における傾斜角度は45°に限定されるものではなく、任意の角度に設定することが可能である。例えば、光導波路においては、端部に光路変換ミラーを形成しない場合であっても、光の入射面または出射面におけるリターンロスを軽減するために若干の傾斜角(通常、8°程度)を形成する場合があるが、このような傾斜角を形成する場合にも本発明は適用可能である。
【0030】
また、本実施形態においては、ダイ51を傾斜させたが、必ずしもダイを傾斜させることは必要でなく、ダイの載置面に対しパンチの打ち抜き方向が斜め方向であればよい。例えば、ダイの載置面を水平にしてフィルム光導波路10を載置し、パンチを斜め方向から打ち抜いて光路変換ミラー11A,11Bを形成してもよい。
【0031】
さらに、本実施形態においては、フィルム光導波路10はスタンパによる複製法で作製したが、作製方法はこれに限るものではなく、例えば、半導体製造プロセスを利用したフォトリソグラフィー法やエッチングなどによって作製されるものであってもよい。
【0032】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図4および図7に基づいて説明すると以下の通りである。
【0033】
上記実施の形態1においては、ダイ51の載置面は単一の平面とされている。このため、フィルム光導波路11において、光路変換ミラー11A,11Bとなる切断面は、フィルム光導波路11に曲げのない状態では平行となっている(図3(b)参照)。フィルム光導波路11は、基板33および基板34において、受光素子と発光素子との接続面が逆方向である場合の接続には好適であるが、受光素子と発光素子との接続面が同方向にある基板同士を接続したい場合もありうる。
【0034】
このような場合は、図4(a),(b)に示すように、フィルム光導波路11を捻らせることで接続可能である。しかしながら、例えば設計上の制約等により、フィルム光導波路を捻らせることが好ましくない場合には、フィルム光導波路において光路変換ミラーを形成する切断面の向きや傾斜角を異ならせるようにすることも必要である。本実施の形態2は、同一のフィルム光導波路において、向きや傾斜角の異なる切断面を同時に形成する方法に関する。
【0035】
本実施の形態2では、一例として、図5(a)〜(c)に示すように、ダイ53およびパンチ54を用いて、フィルム光導波路10に打抜き加工を行い、光路変換ミラー12A,12Bを有するフィルム光導波路12を製造する場合を説明する。ここでは、ダイ53における載置面が、単一の平面ではなく、2つの平面を組み合わせた山形の載置面であることを大きな特徴としている。
【0036】
先ず、図5(a)に示すように、フィルム光導波路10はダイ51の載置面上に設置される。このとき、ダイ53の載置面は、打抜き方法(すなわち、パンチ54の移動方向)に対して、45°傾斜させられた2つの平面を有しており(これら2つの平面は直交している)、打抜き箇所はそれぞれの平面において設けられている。この状態で、図5(b)に示すように、パンチ54を移動させて打抜きを行う。これにより、図5(c)に示すように、両端に45°の傾斜に切断された互いに平行でない光路変換ミラー12A,12Bを有するフィルム光導波路12が得られる。
【0037】
このようなフィルム光導波路12では、図6(a),(b)に示すように、フィルム光導波路12を捻らせることなく、受光素子と発光素子との接続面が同方向にある基板同士を接続することが可能となる。
【0038】
尚、上記打抜き加工においても、フィルム光導波路の切断面における傾斜角度は特定の角度に限定されるものではなく、それぞれの切断面の傾斜角を任意の角度に設定することが可能である。例えば、図7(a),(b)に示すフィルム光導波路13のように、基板上の受光素子もしくは発光素子と光ケーブル35とを接続するような場合には、一端に傾斜角45°の光路変換ミラーを形成し、他端は傾斜角0°(あるいはリターンロスを軽減するために8°の傾斜角と形成しても良い)としてもよい。
【0039】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について図8ないし図10に基づいて説明すると以下の通りである。
【0040】
上記実施の形態1および2では、フィルム光導波路の端部において任意の傾斜角を有する切断面を形成する場合について説明したが、本発明の適用によっては、さらに様々な形状のフィルム光導波路を形成することが可能である。
【0041】
例えば、図8(a),(b)に示すフィルム光導波路14のように、光路変換ミラーをフィルム光導波路の端部以外にも形成することが可能となる。すなわち、フィルム光導波路14では、その両端部において光路変換ミラー14A,14Bが形成されていると共に、長手方向の中途箇所(両端部間)においても傾斜した溝部を形成し、この溝部の傾斜面を光路変換ミラー14C,14Dとして作用させるものである。
【0042】
このように、光路変換ミラーをフィルム光導波路の端部と端部との間にも設けることにより、3ヶ所以上の入出力部を有する光伝送モジュールが実現できる。上記フィルム光導波路14では、4箇所の光路変換ミラーを有し、1つのフィルム光導波路14によって4枚の基板が接続されている。
【0043】
また、2つ以上のコア部を有し、かつコア部間隔が端部において大きいフィルム光導波路において、その端部に光路変換ミラーを作成するにあたって本発明を以下のように適用することができる。
【0044】
2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路では、その同一側端部に複数の入出力部が存在するが、これらの入出力部の距離が近いと、以下のような問題が発生する恐れがある。同一側端部に入力部と出力部が配置されている場合には、この入出力部に対応して設けられる基板上の発光素子と受光素子とが近接して配置されるため、発光素子からの漏れ光が受光素子に入射してクロストークが発生する。また、同一側端部に複数の入力部が配置されている場合には、隣接するコアからの漏れ光が受光素子に入射してクロストークが発生する。このため、2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路において、端部に光路変換ミラーを形成する場合には、そのコア部間隔は端部において大きくなっている必要がある。一方で、2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路において、端部以外ではコア部は近接して形成されていることが、該フィルム光導波路と接続される光ケーブルの細線化等に関して有利である。
【0045】
そして、2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路において、端部部分でコア部を広げる構成とした場合に、その端部に光路変換ミラーを形成するにあたって従来の方法を用いると、以下のような問題が生じる。すなわち、特許文献1に示したような、回転ブレードを用いて切削する方法や光導波路の端面を2枚のブレードにて斜めに切断する方法では、その傾斜切断面は一つの平面で一直線状に形成される(2回以上の切断工程を設ければ、この限りではないが、その場合は工程数の増加といった課題がある)。一方で、光路変換ミラー上に存在するコア部の端部は、光路変換ミラーの面上において、該光路変換ミラーの面と下クラッド層22および上クラッド層24の接合面との交線に直交している必要がある。これより、上記従来の方法で光路変換ミラーを形成する場合には、図9(a)に示すように、フィルム光導波路の端部付近でその間隔を広げられたコア部は、その先で再び平行状態に戻され、光路変換ミラーはこの平行部分で形成されなければならない。このようにすると、フィルム光導波路の端部でコア部を平行に戻すために要する区間が長くなり、光伝送モジュールの小型化に対する障害となり得る。
【0046】
これに対し、本発明のように、打抜き加工によって光路変換ミラーを形成する方法では、その切断面は一つの平面で形成される必要は無い。このため、例えば図9(b)に示すフィルム光導波路15では、その端部に形成される光路変換ミラー15Aを、V字状に交差する2つの平面からなる切断面とすることができる。これにより、フィルム光導波路15の端部で、その間隔を広げられるために曲げられたコア部を再び平行にする区間を設けなくても、クロストークを防止するだけの距離を離すだけで、コア部の曲げ領域において光路変換ミラー15Aを形成することができ、光伝送モジュールの小型化に対して有利となる。
【0047】
また、2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路において、同一側端部に存在する複数の入出力部の距離を大きく取るためには、図10に示すような構成とすることもできる。図10に示すフィルム光導波路16では、光路変換ミラー16A,16Bが、コア部の長手方向に対して段差を有して設けられている。本発明のように、打抜き加工によって光路変換ミラーを形成する方法では、このような段差を有する切断面も1回の打抜きによって容易に形成できる。
【0048】
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施形態について図11および図12に基づいて説明すると以下の通りである。
【0049】
上記実施の形態1ないし3では、フィルム光導波路の端部等において任意の傾斜角を有する切断面を形成する場合について説明したが、本発明の適用によっては、さらに傾斜切断面の形成(光路変換ミラー形成等)とフィルム光導波路の個片化とを同時に行うことが可能である。
【0050】
例えば、図11(a)に示すように、1枚の積層フィルム内に複数のフィルム光導波路分に相当するコア部(図中、実線にて示す)を作成しておき、この積層フィルムに対して打抜きを行うことで、コア部の端面に傾斜切断面を形成すると同時に、各コア部の形成領域間を切断することで、各フィルム光導波路の個片化とを同時に実施できる。これにより、図11(b)に示すような、入出力部に光路変換ミラーが組込まれたフィルム光導波路が、生産性良くローコストに得られる。
【0051】
また、打抜き加工においては、光路変換ミラー以外の打抜き加工形状は任意に設定できるため、コア形状に沿う形に外周部を打抜き加工を実施すると、図12に示すように、フィルム光導波路のコアパターンのない領域に他のフィルム光導波路のコアパターンを配置できるので、打抜き加工前の積層フィルムにおいて、その面積の縮小化を図ることができる。これにより、一回の打抜き工程で多数のフィルム光導波路を個片化できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1(a)〜(c)は、本発明の実施形態を示すものであり、フィルム光導波路における光路変換ミラーの形成方法を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、光路変換ミラーの形成前のフィルム光導波路の製造手順を示す断面図である。
【図3】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板の接続方法の一例を示すものであり、図3(a)は斜視図、図3(b)は断面図である。
【図4】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板の接続方法の一例を示すものであり、図4(a)は斜視図、図4(b)は断面図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、本発明の他の実施形態を示すものであり、フィルム光導波路における光路変換ミラーの形成方法を示す断面図である。
【図6】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板の接続方法の一例を示すものであり、図6(a)は斜視図、図6(b)は断面図である。
【図7】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板と光ケーブルとの接続方法の一例を示すものであり、図7(a)は斜視図、図7(b)は断面図である。
【図8】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板の接続方法の一例を示すものであり、図8(a)は斜視図、図8(b)は断面図である。
【図9】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路の端部形状の一例を示す上面図であり、図9(a)は本発明、図9(b)は比較のための従来例を示す。
【図10】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路の端部形状を示す上面図である。
【図11】打抜き加工によって傾斜切断面の形成とフィルム光導波路の個片化とを行う場合の例を示す図であり、図11(a)は打抜き前の積層フィルムの上面図、図11(b)は打抜きによって個片化されたフィルム光導波路を示す上面図である。
【図12】打抜き加工によって傾斜切断面の形成とフィルム光導波路の個片化とを行う場合の他の例を示す図であり、打抜き前の積層フィルムの上面図である。
【符号の説明】
【0053】
11〜16 フィルム光導波路
11A,11B,14A〜14D,15A,16A,16B
光路変換ミラー(傾斜切断面)
22 下クラッド層
23 コア部
24 上クラッド層
51,53 ダイ
52,54 パンチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路変換ミラーを組み込んだフィルム光導波路の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で大容量のデータ通信が行える光通信網が拡大している。また、通信されるデータ量の増大とともに機器内の伝送路や民生機器への光通信網の拡大が見込まれ、今後、光電変換する光通信モジュールの小型化が望まれる。面発光型の発光素子や面受光型の受光素子と、入出力部に光路変換ミラーを有する光導波路とを組み合わせて入出力部を構成すれば、コンパクトな光通信モジュールが得られる。
【0003】
光導波路においては、近年、ポリマー材料により構成された可とう性を有するフィルム光導波路の研究が盛んになっている。このようなフィルム光導波路は、可とう性を有し厚さも薄いため切断加工が容易であり、ガラス等の硬質な材料で構成された光導波路では実現できなかった、異なる場所を結ぶ光通信モジュールを得ることが可能となる。
【0004】
また、光導波路の入出力部に光路変換ミラーを組み込むためには、例えば、特許文献1に公開されているように、光導波路コアの垂直方向から所望の光路変換角度に加工されたブレードを回転させて切削することにより光路変換ミラーを作製する方法がある。さらに、上記特許文献1には、光導波路の端面を2枚のブレードにて斜めに切断し、その切断面を光路変換ミラーとする方法が記載されている。
【特許文献1】特開平10−300961号公報(公開日平成10年11月13日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1における回転ブレードを用いて切削する方法では、複数の光路変換ミラーを一括して作成することができず、その生産性に課題がある。
【0006】
また、光導波路の端面を2枚のブレードにて斜めに切断する方法では、可とう性のあるフィルム光導波路の切断を行う場合、フィルム光導波路の保持が不安定であるため、2枚のブレードによって挟まれる部分に曲げが生じ、この曲げによって切断面の傾斜角度を所望の角度に制御することが困難になるといった問題がある。さらには、光路変換ミラーの作成箇所が光導波路の端面のみに限定され、光導波路の任意の箇所に任意の形態で光路変換ミラーを作成したいという要望に対して適用性が低い。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム光導波路の任意の箇所において、光路変換ミラーを任意の形態で生産性良く作成できる、フィルム光導波路の製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフィルム光導波路の製造方法は、上記課題を解決するために、ポリマー材料からなる下クラッド層、コア部、上クラッド層から構成され、その一部に上記下クラッド層および上クラッド層の接合面の法線方向に対して傾斜する傾斜切断面(例えば、光路変換ミラー)を有するフィルム光導波路の製造方法において、傾斜切断面が形成される前のフィルム光導波路をダイの載置面上に設置し、この載置面法線方向に対して傾斜した打抜き方向によってパンチによる打抜き加工を行い、上記傾斜切断面を形成することを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、各構成要素(下クラッド層、コア部、上クラッド層)がポリマー材料から構成され、可とう性を有するフィルム光導波路において、斜め方向からの打抜きによって傾斜切断面を形成することができる。このように打抜きを用いることにより、複数箇所の傾斜切断面を同時に形成できるため生産性がよく、また、打抜き時にフィルム光導波路はダイの載置面上で面支持されるため曲がりが生じにくく、傾斜切断面の精度低下も生じにくい。
【0010】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、上記傾斜切断面の少なくとも一つは、フィルム光導波路のコア部長手方向の端部に形成されることで、フィルム光導波路の端部の入出力部における光路変換ミラーや、入出力部におけるリターンロスを無くすための傾斜面とすることができる。
【0011】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、上記傾斜切断面の少なくとも一つは、フィルム光導波路のコア部長手方向の両端部間に溝状の切欠きを形成することによって形成される。これにより、フィルム光導波路の端部以外の箇所にも傾斜切断面を形成することが可能となり、例えば、4つ以上の光路変換ミラーを有するフィルム光導波路によって3枚以上の基板を接続することが可能となる。
【0012】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、上記ダイの載置面は、パンチの打抜き方向に対して異なる角度に傾斜する複数の平面で構成され、各平面での打抜きによって、異なる傾斜角を有する傾斜切断面を形成することができる。これにより、異なる傾斜角を有する傾斜切断面を1回の打抜き加工で同時に形成することができる。
【0013】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、ほぼ平行に形成される2本以上のコア部を有し、これらのコア部の端部付近においてその間隔が広がるように曲げ領域が形成されているフィルム光導波路の端部に、上記曲げ領域において、2つ以上の平面からなると共にコアの長手方向に対して傾斜している傾斜切断面を形成することができる。これにより、例えば、フィルム光導波路の端部で、クロストークを防止するためにその間隔を広げられたコア部を再び平行にする区間を設けなくても光路変換ミラーを形成することができ、光伝送モジュールの小型化に対して有利となる。
【0014】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、ほぼ平行に形成される2本以上のコア部を有するフィルム光導波路の端部に、コア部長手方向に段差を有する傾斜切断面を形成することができる。これにより、例えば、フィルム光導波路の端部で、クロストークを防止するために段差を設けられた光路変換ミラーを形成することができ、光伝送モジュールの小型化に対して有利となる。
【0015】
また、本発明のフィルム光導波路の製造方法では、1枚の積層フィルム内に複数のフィルム光導波路分に相当するコア部を作成された機材に対し、1回の打抜き加工によって、上記傾斜切断面の形成とフィルム光導波路の個片化とを同時に行うことができる。これにより、入出力部に光路変換ミラー等が組込まれたフィルム光導波路を、生産性良くローコストに製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るフィルム光導波路の製造方法は、各構成要素(下クラッド層、コア部、上クラッド層)がポリマー材料から構成され、可とう性を有するフィルム光導波路において、斜め方向からの打抜きによって傾斜切断面を形成することができる。このように打抜きを用いることにより、複数箇所の傾斜切断面を同時に形成でき、光路変換ミラー等が組み込まれたフィルム光導波路を生産性良く製造できるといった効果を奏する。また、打抜き時にフィルム光導波路はダイの載置面上で面支持されるため曲がりが生じにくく、傾斜切断面の精度低下も生じにくいといった効果を併せて奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図3に基づいて説明すると以下の通りである。
【0018】
先ずは、光路変換ミラー形成前のフィルム光導波路の製造方法の一例を、図2(a)〜(d)を参照して簡単に説明する。
【0019】
図2(a)に示すように、ガラス等からなる基板21上に、例えばUV硬化樹脂を滴下し、下クラッド層22に任意形状の凸部が形成されたスタンパ31を押し当てながら、UV光の照射を行い、下クラッド層22を硬化させる。これにより、下クラッド層22には、スタンパ31の凸部パターンに対応する溝部が形成される。
【0020】
次に、図2(b)に示すように、スタンパ31を取り外して、下クラッド層22の溝部にコア部23を形成する。コア部23は、例えばUV硬化樹脂を下クラッド層22の溝部に滴下し、平坦面を有するスタンパ32を押し当てながらUV光の照射を行い、上記溝部に埋め込まれた樹脂を硬化させることで形成する。
【0021】
次に、図2(c)に示すように、スタンパ32を取り外して、下クラッド層22およびコア部23の上面に、例えばUV硬化樹脂を滴下し、その後、UV光の照射を行い、UV硬化樹脂を硬化させて上クラッド層24を形成する。
【0022】
最後に、図2(d)に示すように、基板21を剥離することで、コア部23を下クラッド層22および上クラッド層24で挟んだ構造となるフィルム光導波路10が製造される。
【0023】
上記フィルム光導波路10では、基板21が無く、その構成要素の全て(コア部23、下クラッド層22および上クラッド層24)をポリマー材料にて構成することで、フィルム光導波路10に可とう性を持たせることができ、異なる基板同士の接続に用いることができる。また、上記フィルム光導波路10を、異なる基板同士の接続に用いる場合には、その入出力部に光路変換ミラーを形成することが、光通信モジュールをコンパクト化するうえで好ましい。
【0024】
フィルム光導波路の両端に光路変換ミラーを形成した場合の構成を図3(a),(b)に示す。図3(a),(b)に示すフィルム光導波路11は、上記フィルム光導波路10の両端を、下クラッド層22および上クラッド層24の接合面の法線方向(垂直方向)に対して45°に傾斜切断することで、この切断面を光路変換ミラー11A,11Bとして作用させる構成となっている。尚、以下の説明において、傾斜角とは下クラッド層22および上クラッド層24の接合面に垂直な面と切断面とが交差する角度にて示されるものとする。このように、フィルム光導波路11では、両端に光路変換ミラー11A,11Bを設けることで、それぞれ発光素子31および受光素子32を有する基板33,34同士をフレキシブルに接続することが可能となる。
【0025】
ここで、上記フィルム光導波路11における光路変換ミラー11A,11Bの形成方法を説明する。本発明においては、フィルム光導波路における光路変換ミラーの形成には打抜き加工を用いる。
【0026】
本実施の形態1では、一例として、図1(a)〜(c)に示すように、ダイ51およびパンチ52を用いて、フィルム光導波路10に打抜き加工を行い、光路変換ミラー11A,11Bを有するフィルム光導波路11を製造する場合を説明する。
【0027】
先ず、図1(a)に示すように、フィルム光導波路10はダイ51の載置面上に設置される。このとき、ダイ51の載置面は、打抜き方法(すなわち、パンチ52の移動方向)に対して、45°傾斜させられている。この状態で、図1(b)に示すように、パンチ52を移動させて打抜きを行う。これにより、図1(c)に示すように、両端に45°の傾斜に切断された光路変換ミラー11A,11Bを有するフィルム光導波路11が得られる。尚、上記パンチ52は、複数の切断箇所に対して同時に切断が行えることが好ましい。
【0028】
上述のように、打抜き加工によって光路変換ミラーを形成する方法では、複数の光路変換ミラーを一括して形成することが可能となり、生産性を向上させることができる。尚、ここで、複数の光路変換ミラーを一括して形成するとは、一つのフィルム光導波路の異なる箇所(例えば両端)に光路変換ミラーを同時に形成することにのみならず、ダイの載置面上に並べて配置された複数のフィルム光導波路に対して光路変換ミラーを一括して形成することも可能である。また、フィルム光導波路は可とう性を有するものであるが、このフィルム光導波路は加工時にダイの載置面上で面支持されるため、打抜き時に掛かる切断力によっても曲げが生じにくく、切断面の傾斜角における精度を向上させることができる。
【0029】
尚、上記打抜き加工において、フィルム光導波路の切断面における傾斜角度は45°に限定されるものではなく、任意の角度に設定することが可能である。例えば、光導波路においては、端部に光路変換ミラーを形成しない場合であっても、光の入射面または出射面におけるリターンロスを軽減するために若干の傾斜角(通常、8°程度)を形成する場合があるが、このような傾斜角を形成する場合にも本発明は適用可能である。
【0030】
また、本実施形態においては、ダイ51を傾斜させたが、必ずしもダイを傾斜させることは必要でなく、ダイの載置面に対しパンチの打ち抜き方向が斜め方向であればよい。例えば、ダイの載置面を水平にしてフィルム光導波路10を載置し、パンチを斜め方向から打ち抜いて光路変換ミラー11A,11Bを形成してもよい。
【0031】
さらに、本実施形態においては、フィルム光導波路10はスタンパによる複製法で作製したが、作製方法はこれに限るものではなく、例えば、半導体製造プロセスを利用したフォトリソグラフィー法やエッチングなどによって作製されるものであってもよい。
【0032】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図4および図7に基づいて説明すると以下の通りである。
【0033】
上記実施の形態1においては、ダイ51の載置面は単一の平面とされている。このため、フィルム光導波路11において、光路変換ミラー11A,11Bとなる切断面は、フィルム光導波路11に曲げのない状態では平行となっている(図3(b)参照)。フィルム光導波路11は、基板33および基板34において、受光素子と発光素子との接続面が逆方向である場合の接続には好適であるが、受光素子と発光素子との接続面が同方向にある基板同士を接続したい場合もありうる。
【0034】
このような場合は、図4(a),(b)に示すように、フィルム光導波路11を捻らせることで接続可能である。しかしながら、例えば設計上の制約等により、フィルム光導波路を捻らせることが好ましくない場合には、フィルム光導波路において光路変換ミラーを形成する切断面の向きや傾斜角を異ならせるようにすることも必要である。本実施の形態2は、同一のフィルム光導波路において、向きや傾斜角の異なる切断面を同時に形成する方法に関する。
【0035】
本実施の形態2では、一例として、図5(a)〜(c)に示すように、ダイ53およびパンチ54を用いて、フィルム光導波路10に打抜き加工を行い、光路変換ミラー12A,12Bを有するフィルム光導波路12を製造する場合を説明する。ここでは、ダイ53における載置面が、単一の平面ではなく、2つの平面を組み合わせた山形の載置面であることを大きな特徴としている。
【0036】
先ず、図5(a)に示すように、フィルム光導波路10はダイ51の載置面上に設置される。このとき、ダイ53の載置面は、打抜き方法(すなわち、パンチ54の移動方向)に対して、45°傾斜させられた2つの平面を有しており(これら2つの平面は直交している)、打抜き箇所はそれぞれの平面において設けられている。この状態で、図5(b)に示すように、パンチ54を移動させて打抜きを行う。これにより、図5(c)に示すように、両端に45°の傾斜に切断された互いに平行でない光路変換ミラー12A,12Bを有するフィルム光導波路12が得られる。
【0037】
このようなフィルム光導波路12では、図6(a),(b)に示すように、フィルム光導波路12を捻らせることなく、受光素子と発光素子との接続面が同方向にある基板同士を接続することが可能となる。
【0038】
尚、上記打抜き加工においても、フィルム光導波路の切断面における傾斜角度は特定の角度に限定されるものではなく、それぞれの切断面の傾斜角を任意の角度に設定することが可能である。例えば、図7(a),(b)に示すフィルム光導波路13のように、基板上の受光素子もしくは発光素子と光ケーブル35とを接続するような場合には、一端に傾斜角45°の光路変換ミラーを形成し、他端は傾斜角0°(あるいはリターンロスを軽減するために8°の傾斜角と形成しても良い)としてもよい。
【0039】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について図8ないし図10に基づいて説明すると以下の通りである。
【0040】
上記実施の形態1および2では、フィルム光導波路の端部において任意の傾斜角を有する切断面を形成する場合について説明したが、本発明の適用によっては、さらに様々な形状のフィルム光導波路を形成することが可能である。
【0041】
例えば、図8(a),(b)に示すフィルム光導波路14のように、光路変換ミラーをフィルム光導波路の端部以外にも形成することが可能となる。すなわち、フィルム光導波路14では、その両端部において光路変換ミラー14A,14Bが形成されていると共に、長手方向の中途箇所(両端部間)においても傾斜した溝部を形成し、この溝部の傾斜面を光路変換ミラー14C,14Dとして作用させるものである。
【0042】
このように、光路変換ミラーをフィルム光導波路の端部と端部との間にも設けることにより、3ヶ所以上の入出力部を有する光伝送モジュールが実現できる。上記フィルム光導波路14では、4箇所の光路変換ミラーを有し、1つのフィルム光導波路14によって4枚の基板が接続されている。
【0043】
また、2つ以上のコア部を有し、かつコア部間隔が端部において大きいフィルム光導波路において、その端部に光路変換ミラーを作成するにあたって本発明を以下のように適用することができる。
【0044】
2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路では、その同一側端部に複数の入出力部が存在するが、これらの入出力部の距離が近いと、以下のような問題が発生する恐れがある。同一側端部に入力部と出力部が配置されている場合には、この入出力部に対応して設けられる基板上の発光素子と受光素子とが近接して配置されるため、発光素子からの漏れ光が受光素子に入射してクロストークが発生する。また、同一側端部に複数の入力部が配置されている場合には、隣接するコアからの漏れ光が受光素子に入射してクロストークが発生する。このため、2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路において、端部に光路変換ミラーを形成する場合には、そのコア部間隔は端部において大きくなっている必要がある。一方で、2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路において、端部以外ではコア部は近接して形成されていることが、該フィルム光導波路と接続される光ケーブルの細線化等に関して有利である。
【0045】
そして、2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路において、端部部分でコア部を広げる構成とした場合に、その端部に光路変換ミラーを形成するにあたって従来の方法を用いると、以下のような問題が生じる。すなわち、特許文献1に示したような、回転ブレードを用いて切削する方法や光導波路の端面を2枚のブレードにて斜めに切断する方法では、その傾斜切断面は一つの平面で一直線状に形成される(2回以上の切断工程を設ければ、この限りではないが、その場合は工程数の増加といった課題がある)。一方で、光路変換ミラー上に存在するコア部の端部は、光路変換ミラーの面上において、該光路変換ミラーの面と下クラッド層22および上クラッド層24の接合面との交線に直交している必要がある。これより、上記従来の方法で光路変換ミラーを形成する場合には、図9(a)に示すように、フィルム光導波路の端部付近でその間隔を広げられたコア部は、その先で再び平行状態に戻され、光路変換ミラーはこの平行部分で形成されなければならない。このようにすると、フィルム光導波路の端部でコア部を平行に戻すために要する区間が長くなり、光伝送モジュールの小型化に対する障害となり得る。
【0046】
これに対し、本発明のように、打抜き加工によって光路変換ミラーを形成する方法では、その切断面は一つの平面で形成される必要は無い。このため、例えば図9(b)に示すフィルム光導波路15では、その端部に形成される光路変換ミラー15Aを、V字状に交差する2つの平面からなる切断面とすることができる。これにより、フィルム光導波路15の端部で、その間隔を広げられるために曲げられたコア部を再び平行にする区間を設けなくても、クロストークを防止するだけの距離を離すだけで、コア部の曲げ領域において光路変換ミラー15Aを形成することができ、光伝送モジュールの小型化に対して有利となる。
【0047】
また、2つ以上のコア部を有するフィルム光導波路において、同一側端部に存在する複数の入出力部の距離を大きく取るためには、図10に示すような構成とすることもできる。図10に示すフィルム光導波路16では、光路変換ミラー16A,16Bが、コア部の長手方向に対して段差を有して設けられている。本発明のように、打抜き加工によって光路変換ミラーを形成する方法では、このような段差を有する切断面も1回の打抜きによって容易に形成できる。
【0048】
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施形態について図11および図12に基づいて説明すると以下の通りである。
【0049】
上記実施の形態1ないし3では、フィルム光導波路の端部等において任意の傾斜角を有する切断面を形成する場合について説明したが、本発明の適用によっては、さらに傾斜切断面の形成(光路変換ミラー形成等)とフィルム光導波路の個片化とを同時に行うことが可能である。
【0050】
例えば、図11(a)に示すように、1枚の積層フィルム内に複数のフィルム光導波路分に相当するコア部(図中、実線にて示す)を作成しておき、この積層フィルムに対して打抜きを行うことで、コア部の端面に傾斜切断面を形成すると同時に、各コア部の形成領域間を切断することで、各フィルム光導波路の個片化とを同時に実施できる。これにより、図11(b)に示すような、入出力部に光路変換ミラーが組込まれたフィルム光導波路が、生産性良くローコストに得られる。
【0051】
また、打抜き加工においては、光路変換ミラー以外の打抜き加工形状は任意に設定できるため、コア形状に沿う形に外周部を打抜き加工を実施すると、図12に示すように、フィルム光導波路のコアパターンのない領域に他のフィルム光導波路のコアパターンを配置できるので、打抜き加工前の積層フィルムにおいて、その面積の縮小化を図ることができる。これにより、一回の打抜き工程で多数のフィルム光導波路を個片化できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1(a)〜(c)は、本発明の実施形態を示すものであり、フィルム光導波路における光路変換ミラーの形成方法を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、光路変換ミラーの形成前のフィルム光導波路の製造手順を示す断面図である。
【図3】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板の接続方法の一例を示すものであり、図3(a)は斜視図、図3(b)は断面図である。
【図4】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板の接続方法の一例を示すものであり、図4(a)は斜視図、図4(b)は断面図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、本発明の他の実施形態を示すものであり、フィルム光導波路における光路変換ミラーの形成方法を示す断面図である。
【図6】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板の接続方法の一例を示すものであり、図6(a)は斜視図、図6(b)は断面図である。
【図7】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板と光ケーブルとの接続方法の一例を示すものであり、図7(a)は斜視図、図7(b)は断面図である。
【図8】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路による基板の接続方法の一例を示すものであり、図8(a)は斜視図、図8(b)は断面図である。
【図9】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路の端部形状の一例を示す上面図であり、図9(a)は本発明、図9(b)は比較のための従来例を示す。
【図10】光路変換ミラーが形成されたフィルム光導波路の端部形状を示す上面図である。
【図11】打抜き加工によって傾斜切断面の形成とフィルム光導波路の個片化とを行う場合の例を示す図であり、図11(a)は打抜き前の積層フィルムの上面図、図11(b)は打抜きによって個片化されたフィルム光導波路を示す上面図である。
【図12】打抜き加工によって傾斜切断面の形成とフィルム光導波路の個片化とを行う場合の他の例を示す図であり、打抜き前の積層フィルムの上面図である。
【符号の説明】
【0053】
11〜16 フィルム光導波路
11A,11B,14A〜14D,15A,16A,16B
光路変換ミラー(傾斜切断面)
22 下クラッド層
23 コア部
24 上クラッド層
51,53 ダイ
52,54 パンチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料からなる下クラッド層、コア部、上クラッド層から構成され、その一部に上記下クラッド層および上クラッド層の接合面の法線方向に対して傾斜する傾斜切断面を有するフィルム光導波路の製造方法において、
傾斜切断面が形成される前のフィルム光導波路をダイの載置面上に設置し、この載置面法線方向に対して傾斜した打抜き方向によってパンチによる打抜き加工を行い、上記傾斜切断面を形成することを特徴とするフィルム光導波路の製造方法。
【請求項2】
上記傾斜切断面の少なくとも一つは、フィルム光導波路のコア部長手方向の端部に形成されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項3】
上記傾斜切断面の少なくとも一つは、フィルム光導波路のコア部長手方向の両端部間に溝状の切欠きを形成することによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項4】
上記ダイの載置面は、パンチの打抜き方向に対して異なる角度に傾斜する複数の平面で構成され、各平面での打抜きによって、異なる傾斜角を有する傾斜切断面を形成することを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項5】
ほぼ平行に形成される2本以上のコア部を有し、これらのコア部の端部付近においてその間隔が広がるように曲げ領域が形成されているフィルム光導波路の端部に、上記曲げ領域において、2つ以上の平面からなると共にコアの長手方向に対して傾斜している傾斜切断面を形成することを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項6】
ほぼ平行に形成される2本以上のコア部を有するフィルム光導波路の端部に、コア部長手方向に段差を有する傾斜切断面を形成することを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項7】
1枚の積層フィルム内に複数のフィルム光導波路分に相当するコア部を作成された機材に対し、1回の打抜き加工によって、上記傾斜切断面の形成とフィルム光導波路の個片化とを同時に行うことを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項8】
ポリマー材料からなる下クラッド層、コア部、上クラッド層から構成され、その一部に上記下クラッド層および上クラッド層の接合面の法線方向に対して傾斜する傾斜切断面を有するフィルム光導波路の製造装置において、
傾斜切断面が形成される前のフィルム光導波路をダイの載置面上に設置し、このダイのの載置面上に設置されたフィルム光導波路に対して打抜き加工を行うための上記ダイおよび上記パンチを備えており、
上記パンチの打抜き方向が、上記ダイの載置面法線方向に対して傾斜していることを特徴とするフィルム光導波路の製造装置。
【請求項9】
上記ダイの載置面は、パンチの打抜き方向に対して異なる角度に傾斜する複数の平面で構成されていることを特徴とする請求項8に記載のフィルム光導波路の製造装置。
【請求項1】
ポリマー材料からなる下クラッド層、コア部、上クラッド層から構成され、その一部に上記下クラッド層および上クラッド層の接合面の法線方向に対して傾斜する傾斜切断面を有するフィルム光導波路の製造方法において、
傾斜切断面が形成される前のフィルム光導波路をダイの載置面上に設置し、この載置面法線方向に対して傾斜した打抜き方向によってパンチによる打抜き加工を行い、上記傾斜切断面を形成することを特徴とするフィルム光導波路の製造方法。
【請求項2】
上記傾斜切断面の少なくとも一つは、フィルム光導波路のコア部長手方向の端部に形成されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項3】
上記傾斜切断面の少なくとも一つは、フィルム光導波路のコア部長手方向の両端部間に溝状の切欠きを形成することによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項4】
上記ダイの載置面は、パンチの打抜き方向に対して異なる角度に傾斜する複数の平面で構成され、各平面での打抜きによって、異なる傾斜角を有する傾斜切断面を形成することを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項5】
ほぼ平行に形成される2本以上のコア部を有し、これらのコア部の端部付近においてその間隔が広がるように曲げ領域が形成されているフィルム光導波路の端部に、上記曲げ領域において、2つ以上の平面からなると共にコアの長手方向に対して傾斜している傾斜切断面を形成することを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項6】
ほぼ平行に形成される2本以上のコア部を有するフィルム光導波路の端部に、コア部長手方向に段差を有する傾斜切断面を形成することを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項7】
1枚の積層フィルム内に複数のフィルム光導波路分に相当するコア部を作成された機材に対し、1回の打抜き加工によって、上記傾斜切断面の形成とフィルム光導波路の個片化とを同時に行うことを特徴とする請求項1に記載のフィルム光導波路の製造方法。
【請求項8】
ポリマー材料からなる下クラッド層、コア部、上クラッド層から構成され、その一部に上記下クラッド層および上クラッド層の接合面の法線方向に対して傾斜する傾斜切断面を有するフィルム光導波路の製造装置において、
傾斜切断面が形成される前のフィルム光導波路をダイの載置面上に設置し、このダイのの載置面上に設置されたフィルム光導波路に対して打抜き加工を行うための上記ダイおよび上記パンチを備えており、
上記パンチの打抜き方向が、上記ダイの載置面法線方向に対して傾斜していることを特徴とするフィルム光導波路の製造装置。
【請求項9】
上記ダイの載置面は、パンチの打抜き方向に対して異なる角度に傾斜する複数の平面で構成されていることを特徴とする請求項8に記載のフィルム光導波路の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−11179(P2006−11179A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190370(P2004−190370)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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