説明

フィルム処理装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、面積が広いフィルム原反に複数の製造工程で加工を施して、磁気テープ,磁気ディスク,コンデンサー等のもととなるフィルム状の半製品を製造するフィルム処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気テープ,磁気ディスク,コンデンサー等の製品では、面積が広いフィルム原反に複数の製造工程で蒸着,塗布,プラズマCVD等の加工を施してフィルム状の半製品を製造した上、このフィルム状の半製品を細分化して最終製品を製造している。
【0003】ところで、磁気テープ,磁気ディスク,コンデンサー等の製品においては、近年、製造原価の低減に対する要求が高まりつつあるが、これ等の要求に応えるため、フィルム原反を広幅化したり、長尺化したりして、フィルム原反の面積を広げることにより、磁気テープ,磁気ディスク,コンデンサー等の製品を1つのフィルムから大量に生産できるようにして、製造原価を低減している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、広幅化,長尺化したフィルム原反の全面に亘って欠陥なく加工を施すことは非常に困難で、所々に欠陥が発生することは避けられない上、複数の製造工程でフィルム原反に加工を施すと、前工程迄の加工でフィルム原反に欠陥が発生したときには、前工程迄の加工での欠陥に起因する自工程の加工でのトラブルが発生して、その欠陥が拡大することにより、製品の歩留まりを低下させて、製造原価を高くしてしまう。
【0005】又、フィルム原反の表面にプラズマCVDによって保護膜を形成する工程において、前工程迄の加工でフィルム原反に穴を明けてしまうと、穴の部分で異常放電が発生して、穴が拡大するのみならず、最悪時には、フィルム原反が切断されて、この工程における加工が継続不能になることにより、製造速度を低下させて、製造原価を高くしてしまう。
【0006】本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、前工程迄の加工で発生した欠陥に起因する自工程の加工でのトラブルの発生を防止することにより、製品の歩留り及び製造速度を向上させて、製造原価を低減するフィルム処理装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明は、フィルムを搬送しながら連続的に該フィルムに加工を施す装置であって、前記フィルムに記録された欠陥データを読み出す読出手段と、前記フィルムに加工を施す加工手段と、前記読出手段が読み出した欠陥データに応じて前記加工手段の加工条件を制御する制御手段と、前記フィルムに加工を施した結果について良否を検査する検査手段と、前記検査手段の検査で加工の欠陥を検出したときに、前記検査手段の検査結果に応じた欠陥データを前記フィルムに記録する記録手段とを具備し、前記フィルムの搬送方向に対して前記読出手段、前記加工手段、前記検査手段、前記記録手段の順に配設しものである。
【0008】本発明によれば、自工程でフィルム原反に加工を施すときに、前工程迄の加工で生じた欠陥のデータをフィルム原反から読み取ると、自工程の加工条件を欠陥データに応じて制御して、自工程での欠陥の拡大を防止すると共に、自工程で生じた欠陥を検出した場合は、その欠陥のデータをフィルム原反に記録して、後工程での欠陥の拡大を防止することにより、製品の歩留まり及び製造速度が向上して、製造原価が低減される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】図1は本発明のフィルム処理装置の概略の構成を示す概念図で、1は、自工程のフィルム処理装置のフィルム繰出し側に配設した繰出しロール2と、フィルム巻取り側に配設した巻取りロール3との間に張設された磁気テープ,磁気ディスク,コンデンサー等のフィルム原反である。
【0011】4は繰出しロール2から繰り出されたフィルム原反1の少なくとも一方の縁端部からバーコード,文字,磁気等で記録された前工程迄に施した加工の欠陥データを読み出すデータ読出部で、このデータ読出部4はバーコードリーダー,光学式文字読取装置,磁気再生装置等からなる。5は繰出しロール2から繰り出されたフィルム原反1に蒸着,塗布,プラズマCVD等の加工を施す加工部で、この加工部5は蒸着装置,塗布装置,プラズマCVDの電源,フィルム原反1の搬送装置等からなる。6は、データ読出部4によってフィルム原反1の縁端部から読み出した欠陥データに基づき、フィルム原反1の欠陥部分及びその周辺における加工条件を決定して、自工程の加工部5の動作を制御する制御部である。
【0012】7は自工程の加工部5においてフィルム原反1に施した加工の良否を検査する検査部で、この検査部7は光学式の反射率測定器,透過率測定器等からなる。8は、検査部7の検査で加工の欠陥を検出したときには、検査部7の検査結果に応じた欠陥データをフィルム原反1の縁端部にバーコード,文字,磁気等で記録する記録部で、この記録部8はインクジェット方式の印刷機,レーザー式のマーカー,磁気記録装置等からなる。
【0013】このように構成された本発明のフィルム処理装置の動作について、磁気テープ用のフィルム原反1の表面に保護膜を形成する工程を例として説明する。
【0014】繰出しロール2から繰り出されたフィルム原反1の縁端部に欠陥データが記録されていなければ、制御部6は加工部5をそのまま駆動させて、フィルム原反1の表面に加工を施す。
【0015】そして、検査部7が、フィルム原反1或いはフィルム原反1の表面に施した加工に欠陥がないと判断したときには、フィルム原反1は、縁端部に何も記録されずに、巻取りロール3に巻き取られる。
【0016】しかしながら、繰出しロール2から繰り出されたフィルム原反1の縁端部に欠陥データが記録されているのをデータ読出部4が読み出したときには、制御部6は、欠陥データにおける欠陥の内容,程度等に応じてフィルム原反1の欠陥部分及びその周辺における加工条件、例えば蒸着装置,塗布装置,プラズマCVDの電源電圧,フィルム原反1の搬送装置の搬送速度等を決定して、蒸着装置,塗布装置,プラズマCVD,搬送装置等の加工部5の動作を制御する。
【0017】例えば、磁気テープの保護膜を形成する工程において、前工程迄にフィルム原反1に穴が明いて、穴が明いている」という欠陥データがフィルム原反1の縁端部に記録されているのをデータ読出部4が読み取ったときには、制御部6は、この欠陥データに応じてフィルム原反1の欠陥部分及びその周辺における加工条件を、プラズマCVDのスパッタ電圧及びフィルム原反1の搬送装置の搬送速度を下げるように決定し、フィルム原反1の欠陥部分及びその周辺を加工するときには、制御部6の決定に基づいて加工部5のプラズマCVD及び搬送装置を駆動させることにより、穴での異常放電を防止して、穴の拡大を防止すると共に、プラズマCVDのスパッタ電圧の低下に伴う保護膜の厚みの減少を防止して、保護膜の厚さを一定に保つ。
【0018】又、検査部7が、フィルム原反1或いはフィルム原反1の表面に施した加工に欠陥があると判断したときには、フィルム原反1は、その縁端部に欠陥データが記録部8によって記録された上、巻取りロール3に巻き取られる。
【0019】例えば、検査部7が、自工程の異常放電等によって磁気テープのフィルム原反1或いはフィルム原反1に形成した膜等に穴を明けたり、明いている穴を拡大させたり、膜厚が許容範囲外となる等の欠陥を検出すると、記録部8は、検査部7の検出した欠陥の内容,程度等に応じた欠陥データをフィルム原反1の縁端部に磁気的に記録する。
【0020】このため、フィルム原反1の裁断工程等のように、磁気テープのフィルム原反1の保護膜形成工程の後工程では、フィルム原反1の縁端部に記録された欠陥データに基づいて裁断等の加工を制御することにより、フィルム切れ等の新たな欠陥の発生を防止できる。
【0021】なお、本発明のフィルム処理装置は、磁気テープの製造工程を例にして説明したが、面積が広いフィルム原反に複数の製造工程で加工を施して、磁気ディスク,コンデンサー等のもとになるフィルム状の半製品を製造するフィルム処理装置にも実施できる。
【0022】又、本発明のフィルム処理装置は、磁気テープの保護膜作成装置の例で説明をしたが、他の蒸着装置、塗布装置等にも実施できる。
【0023】更に、本発明のフィルム処理装置は、各工程毎に加工を施したフィルム原反1をその都度巻取りロール3に巻き取る例で説明したが、各工程を連続配置してフィルム原反に連続的に加工を施すフィルム処理装置であっても、各工程毎にデータ読出部4,加工部5,制御部6,検査部7及び記録部8を設けることにより、実施できる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、自工程でフィルム原反に加工を施すときに、前工程迄に生じた欠陥のデータをフィルム原反から読み取った場合は、自工程の加工条件を欠陥に応じて制御して、自工程での欠陥の拡大を防止すると共に、自工程で生じた欠陥を検出した場合は、その欠陥のデータをフィルム原反に記録して、後工程での欠陥の拡大を防止することにより、製品の歩留まり及び製造速度が向上して、製造原価が低減されるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフィルム処理装置の概略の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
1…フィルム原反、 2…繰出しロール、 3…巻取りロール、 4…データ読出部、 5…加工部、 6…制御部、 7…検査部、 8…記録部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィルムを搬送しながら連続的に該フィルムに加工を施す装置であって、前記フィルムに記録された欠陥データを読み出す読出手段と、前記フィルムに加工を施す加工手段と、前記読出手段が読み出した欠陥データに応じて前記加工手段の加工条件を制御する制御手段と、前記フィルムに加工を施した結果について良否を検査する検査手段と、前記検査手段の検査で加工の欠陥を検出したときに、前記検査手段の検査結果に応じた欠陥データを前記フィルムに記録する記録手段と、を具備し、前記フィルムの搬送方向に対して前記読出手段、前記加工手段、前記検査手段、前記記録手段の順に配設したことを特徴とするフィルム処理装置。

【図1】
image rotate


【特許番号】特許第3400305号(P3400305)
【登録日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【発行日】平成15年4月28日(2003.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−201585
【出願日】平成9年7月28日(1997.7.28)
【公開番号】特開平11−44659
【公開日】平成11年2月16日(1999.2.16)
【審査請求日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−126068(JP,A)
【文献】特開 平7−160859(JP,A)
【文献】特開 平8−245059(JP,A)