説明

フィルム所定量保管装置およびその使用方法

【課題】 省スペースで、フィルムにしわや折れを発生させないフィルム所定量保管装置およびその使用方法を提供すること。
【解決手段】 駆動ロールモータ2により駆動される駆動ロール1と従動ロール4とによって送り出された所定量のフィルム7をサクションロールモータ6によって駆動され真空吸着可能なサクションロール5に巻き取って保管するフィルム所定量保管装置であり、駆動ロールモータ2は回転量を検出するエンコーダ3を備え、サクションロールモータ6はエンコーダ3からのパルス信号に分周回路9を含む周波数変換回路によって周波数変換されたパルス信号に応じてサクションロール5を駆動し、サクションロール5の回転量は駆動ロール1の回転量よりも少ないように前記周波数変換回路による周波数比が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送り出した所定量のフィルム端末部を蓄えておくためのフィルム所定量保管装置およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は従来技術によるフィルム端末部の処理状態を示す模式的斜視図である。フィルム7を、必要長さ分、送り出し蓄えておく場合、その蓄え分のフィルム長さを放置すると、その長さにあったスペースを必要とした。また、近くに他ユニット等がある場合は他のユニットと干渉した。対策として、送り出したフィルム7の端末を受け取る受け皿11を設けて送り出されたフィルム7が他ユニット等に干渉しないようにしていたが、受け皿11上でフィルム7にしわや折れが発生してしまうことがある。
【0003】
また、ロールにフィルムを巻き取って保管するやり方は一般的であり、たとえば、特許文献1に開示された例などがあるが、場合によっては、ロールによるフィルム7の巻き取りを行ったときに、巻き取り時の張力などによってフィルム7にしわや折れが発生してしまうことがある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−63877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すでに上述したように、送り出されたフィルム端末を受け取る受け皿を設けても、送り出されたフィルムの量に応じたスペースが必要で、近くの他ユニットヘ干渉することがあり、受け皿上でフィルムにしわや折れが発生することもある。また、ロールによるフィルムの巻き取りを行った場合も巻き取り時の張力などによってフィルムにしわや折れが発生してしまうことがある。
【0006】
この状況にあって、本発明の課題は、省スペースで、フィルムにしわや折れを発生させないフィルム所定量保管装置およびその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、空転する従動ロールとモータにより駆動する駆動ロールにより挟み込まれ送り出しが可能な状態のフィルムを、真空吸着が可能なサクションロールに真空吸着させ、駆動ロールによりフィルムを送り出す際に駆動ロールに付いている回転量を検出するエンコーダからのパルス信号を分周する分周回路により周波数変換されたサクションロール駆動パルス信号によりサクションロールのモータを駆動させ、フィルムをサクションロールに巻き取ることとした。
【0008】
すなわち、本発明のフィルム所定量保管装置は、第1のモータにより駆動される駆動ロールと従動ロールとによって送り出された所定量のフィルムを第2のモータによって駆動され真空吸着可能なサクションロールに巻き取って保管するフィルム所定量保管装置において、前記第1のモータは回転量を検出するエンコーダを備え、前記第2のモータは前記エンコーダからのパルス信号に分周回路を含む周波数変換回路によって周波数変換されたパルス信号に応じて前記サクションロールを駆動し、前記サクションロールの回転量は前記駆動ロールの回転量よりも少ないように前記周波数変換回路による周波数比が設定されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のフィルム所定量保管装置の使用方法は、前記周波数変換回路によって変換されるパルス信号の周波数比を、前記エンコーダのパルス分解能と、前記駆動ロールの周長と、前記サクションロールの駆動分解能と、前記サクションロールの周長と、巻き取って保管される所定量のフィルムのたるみ比率とから算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
空転する従動ロールとモータで駆動する駆動ロールにより挟み込まれ送り出しが可能な状態のフィルムを真空吸着が可能なサクションロールに真空吸着させ、駆動ロールによりフィルムを送り出す際に駆動ロールに付いている回転量を検出するエンコーダからのパルス信号を分周する分周回路に入力し、分周回路から出力されたサクションロール駆動パルス信号によりサクションロールモータを駆動ロールと同調駆動させ、フィルムをサクションロールに巻き取ることにより、送り出されたフィルムの量に応じたスペースや受け皿を設ける必要がなく、フィルムのしわや折れの問題がなくなり、スペースも少なくて済む。
【0011】
また、分周回路の分周設定値を適切に設定することにより、サクションロールの回転量を駆動ロールの分周設定値分少なくすることができ、フィルムをたるませながら巻き取ることができる。このようにフィルムをたるませながら巻き取ることによりフィルムに大きな張力を与えず、巻き取り時の張力によるしわや折れが発生することもなくなる。
【0012】
また、サクションロールモータは駆動ロールに付いているエンコーダからのパルス信号により駆動されるため、駆動ロールに速度変動があった場合でもサクションロールのモータは駆動ロールと同調して駆動され、巻き締まりや必要以上のたるみは発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態でのフィルム所定量保管装置を示す模式的斜視図である。空転する従動ロール4と駆動ロールモータ(第1のモータ)2により駆動する駆動ロール1があり、従動ロール4と駆動ロール1は互いに接触できる配置になっており、フィルム7を挟み込んでいる。駆動ロール1の駆動ロールモータ2には回転量を検出するエンコーダ3が付いている。サクションロール5には真空吸着穴が配置されている。サクションロールモータ(第2のモータ)6は、駆動ロールモータ2のエンコーダ3からのエンコーダパルス信号8を分周する分周回路9により出力されたサクションロール駆動パルス信号10により駆動される。
【0014】
次に、このような構成図を基にしたフィルム所定量保管装置の動作説明をする。駆動ロール1と従動ロール4により挟み込まれているフィルム7は駆動ロール1が時計回りに回転することにより送り出される。送り出されたフィルム7の端末は駆動ロールモータ2と同期回転しているサクションロールモータ6により駆動されているサクションロール5に配置された真空吸着穴により真空吸着されながらサクションロール5に巻き取られる。このことにより、送り出されたフィルムの長さに応じた受け皿等を用意することもなくなる。
【0015】
また、駆動ロール周長とサクションロール周長が同じで且つ駆動ロールエンコーダ分解能とサクションロールエンコーダ分解能が同じ場合に分周回路9の分周設定値を1/n倍(nは2以上の整数)にし、1/n倍に変換された周波数のサクションロール駆動パルス信号10により、サクションロール5の回転量を駆動ロール1の分周設定値分少なくすることができ、図2のようにフィルム7をたるませながらサクションロール5に巻き取ることが可能となり、フィルムに大きな張力を与えず、かつ、フィルム7のしわや折れが発生することもなくなる。ただし、フィルム7にたるみを持たせるためにはnは適切な値に設定しなければならない。
【0016】
なお、駆動ロール1の回転数に対して、サクションロール5の回転数を制御するのに、駆動ロールモータ2に付加されたエンコーダ3からのエンコーダパルス信号8を分周回路9により1/n(nは2以上の整数)の周波数に変換した後、m倍(mは2以上の整数)に逓倍した周波数のサクションロール駆動パルス信号10によりサクションロールモータ6を駆動することもできる。
【0017】
さらに、駆動ロール1とサクションロール5の周長や分解能が異なる場合でも分周設定によって定められる周波数比は下記計算式により算出可能である。例として駆動ロールの回転量(駆動ロールの周上の点の移動量)に対してサクションロールの回転量を80%にし、それをたるみ比率とした際、そのたるみを持って巻き取る場合は、分周設定による周波数比={駆動ロール周長/サクションロール周長}×{駆動ロールエンコーダ分解能/サクションロールエンコーダ分解能}×{80/100(たるみ比率)}となる。
【0018】
以上に説明した実施の形態ではフィルムの端末部の所定量を処理保管する方法として送り出されたフィルムをサクションロールにて真空吸着を行い巻き取る構成であるが、フィルムの巻き取りが可能な巻き取りロールを備えていれば、真空吸着が可能なサクションロールに限定されるものではない。
【0019】
本発明は、フィルムの種類や材質に関わらず、フィルムを必要長さ分送り出し蓄えておくのに、その蓄え分のスペースの問題や蓄え時のフィルムの折れやしわが問題になる場合の対策として有効である。また、ロールによるフィルムの巻き取りを行うとき、巻き取り時の張力などによってフィルムにしわや折れが問題になる場合の対策として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のフィルム所定量保管装置を示す模式的斜視図。
【図2】本発明のフィルム所定量保管装置でのフィルム巻き取り状態を示す模式的斜視図。
【図3】従来のフィルム端末部の処理状態を示す模式的斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 駆動ロール
2 駆動ロールモータ
3 エンコーダ
4 従動ロール
5 サクションロール
6 サクションロールモータ
7 フィルム
8 エンコーダパルス信号
9 分周回路
10 サクションロール駆動パルス信号
11 受け皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモータにより駆動される駆動ロールと従動ロールとによって送り出された所定量のフィルムを第2のモータによって駆動され真空吸着可能なサクションロールに巻き取って保管するフィルム所定量保管装置において、前記第1のモータは回転量を検出するエンコーダを備え、前記第2のモータは前記エンコーダからのパルス信号に分周回路を含む周波数変換回路によって周波数変換されたパルス信号に応じて前記サクションロールを駆動し、前記サクションロールの回転量は前記駆動ロールの回転量よりも少ないように前記周波数変換回路による周波数比が設定されたことを特徴とするフィルム所定量保管装置。
【請求項2】
請求項1記載のフィルム所定量保管装置の使用方法において、前記周波数変換回路によって変換されるパルス信号の周波数比は、前記エンコーダのパルス分解能と、前記駆動ロールの周長と、前記サクションロールの駆動分解能と、前記サクションロールの周長と、巻き取って保管される所定量のフィルムのたるみ比率とから算出することを特徴とするフィルム所定量保管装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−321582(P2006−321582A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144143(P2005−144143)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】