フィードバックの間隔の制御
それぞれの隣接セルが1以上のユーザに信号を送信し、1以上のユーザから送信された信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セルを有する種類の多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおける使用が意図される方法が開示される。ユーザは、関連する基地局とユーザとの間のチャネルに関するチャネルの状態情報を関連する基地局にフィードバックし、基地局は、チャネルの変動を考慮して、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を適合する。提案される方法は、チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報を取得し、チャネルの空間構造における時間変動に基づいて、チャネルの状態情報をユーザがフィードバックするタイミングを調節する。本発明は、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの間の適切なバランスを達成し、様々なCoMP送信モードに従って動作するシステムにおいて動作する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関するものであり、より詳細には、セル間の送信の調整が存在するマルチセルの多入力多出力(MIMO)システムに関する。
【0002】
本発明は、3GPPLTE,3GPP LTE−A,IEEE 802.16及び802.11の規格のグループに準拠するシステムで実現されることが想定されるが、これらは単なる例であり、本発明は、マルチセルのMIMOシステムの他の形式においても同様に実現されることが明からに理解される。
【背景技術】
【0003】
[基礎技術]
この節は、所定の関連する技術に対する導入となる概要及び本発明が関連する分野に含まれる原理を与え、本発明の文脈を提供することに役立つものである。
【0004】
基地局(BS)の範囲にある加入者局(SS)又は移動局(MS)又はユーザ装置(UE)と基地局が通信する無線通信システムが広く知られている。用語「加入者局(SS)」、「移動局(MS)」及び「ユーザ装置(UE)」等は、本明細書において交換可能であることが考慮される。これらは、便宜的且つ限定されるものではないが、ユーザ又はUEと一般に呼ばれる。また、先の用語は、交換可能であると考慮されるが、用語「モバイル」は、特に、移動局、加入者局等(すなわち「ユーザ」又はUE)が常に移動可能である必要があることを必ずしも意味するものではないことが解釈されるべきである。多くの場合、確かに移動可能(例えばモバイルハンドセット)である。しかし、無線通信システム(及び本発明)は、ユーザが特定の位置に固定される場合にも動作する。
【0005】
(典型的には3である)1以上の基地局によりカバーされるエリア(すなわちそれらの基地局により給仕される地理学的な領域)は、セルと一般に呼ばれ、典型的に、多くの基地局(BS)は、隣接するセルと多かれ少なかれ継ぎ目なく広い地理的な領域をカバーするように、適切な位置に設けられる。それぞれのBSは、その利用可能な帯域幅、すなわち周波数及び時間のリソースを、ユーザの個々のリソースの割り当てに分割する。より多くのユーザ、より多くのデータ量の多いサービス及び/又は高いデータ伝送速度を収容するため、係るシステムの容量を増加し、リソースの利用の効率を改善する一定の必要性が存在する。
【0006】
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)は、無線通信システムにおいてデータを伝送する1つの公知の技術である。OFDMに基づく通信スキームは、多数の加入者の間で伝送されるデータシンボルを分割するものであり、従って用語「周波数分割多重」である。データは、その位相、振幅、又は位相と振幅の両者を調節することでサブキャリアで変調される。名前「OFDM」の「直交“Orthogonal”」の部分は、周波数領域におけるサブキャリアの配置が数学的な意味で他のサブキャリアに対して直交するように特に選択されるという事実による。言い換えれば、サブキャリアの配置は、隣接するサブキャリアのサイドバンドがオーバラップすることが許容され、サブキャリア間の干渉なしに受信されるように、周波数軸に沿って配置される。数学的な用語において、それぞれのサブキャリアの正弦波は、線形チャネルの固有関数と呼ばれ、それぞれ正弦波のピークは、それぞれ他の正弦波のゼロと一致する。これは、サブキャリアをシンボル期間の逆数の倍数で配置させることで達成される。
【0007】
個々のサブキャリア又はサブキャリアのセットが異なるユーザに割り当てられるとき、結果的に、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)と呼ばれる。当該技術分野で使用される用語「OFDM」は、OFDMAを含むことが意図されることがある。従って、2つの用語は、本発明の説明のために交換可能であることが考慮される。異なる周波数/時間リソースをセルにおけるそれぞれのユーザに割り当てることで、OFDMAは、所与のセルにおけるユーザの間で干渉を実質的に回避することができる。
【0008】
基本のOFDMスキームの更なる変更は、MIMO−OFDMと呼ばれ、MIMOは、多入力他出力を意味する。このタイプのスキームは、送信機と受信機との間で達成可能なデータ容量を改善するため、(両者であることがある)送信機及び/又は受信機で複数のアンテナを採用する。典型的に、これは、1以上の基地局とそれらの基地局により給仕されるユーザ装置(UE)との間の改善されたデータ容量を達成するために使用される。
【0009】
例により、2×2のMIMOコンフィギュレーションは、送信機での2つのアンテナと受信機での2つのアンテナを含む。同様に、4×4のMIMOコンフィギュレーションは、送信機での4つのアンテナと受信機での4つのアンテナを含む。送信機及び受信機にとって、同じ数のアンテナを採用する必要はない。典型的に、無線通信システムにおけるBSは、電力、コスト及びサイズの制限における違いのため、(例えばモバイルハンドセットのような)UEとの比較において多くのアンテナが設けられる。
【0010】
用語「チャネル」は、送信機と受信機との間の無線リンクの周波数(又は等価的に時間遅延)応答を説明するために使用される。いわゆるMIMOチャネル(又は“channel”)は全ての加入者を含み(先の加入者に関する説明を参照)、送信の全体の帯域幅をカバーする。MIMOチャネルは、多くの個々の無線リンクを含む。これらの個々の無線リンクの数は、1入力1出力(SISO)チャネル(サブチャネルと呼ばれることもある)と個別に呼ばれる場合があり、Nr×NTであり、この場合、NTは、送信機でのアンテナの数、Nrは、受信機でのアンテナの数である。例えば、3×2のMIMOアレンジメントは、6つのリンクを含み、従って6つのSISOチャネルを有する。
【0011】
図1に概念的に表される簡略化された2×3のMIMOシステムを考えると、受信機RのアンテナR0は、送信機Tの送信アンテナT0,T1及びT2のそれぞれからの送信を受ける。同様に、受信機のアンテナR1は、送信機のアンテナT0,T1及びT2からの送信を受信する。従って、受信機で受信された信号は、送信機のアンテナからの送信(すなわちSISOチャネル)の組み合わせを有する(又はから構成される)。一般に、SISOチャネルは、1以上のデータストリームを受信機に送信する様々なやり方で結合される。
【0012】
図2は、より一般化されたMIMOシステムの概念図である。図2では、送信機は、NT個の送信アンテナを利用して信号を送信し、受信機は、Nr個の受信アンテナを利用して送信機から信号を送信する。全体のMIMOチャネルの特性の数学モデルを作成するため、送信機と受信機との間の個々のSISOチャネルを表現することが必要である。図2に示されるように、個々のSISOチャネルは、H0,0〜HNr-1,NT-1により表現され、図で指摘されるように、これらは、チャネルマトリクス又はチャネル応答マトリクスHと一般に呼ばれるマトリクスの項を形成する。H0,0は、送信アンテナ0から受信アンテナ0に信号を伝送するチャネル特性(例えばチャネル周波数応答)を表すことが認識される。同様に、HNr-1,NT-1は、送信アンテナNT−1を受信アンテナNr−1に信号を送信するためにチャネル特性を表す。
【0013】
図2では、送信アンテナ0〜NT−1を使用して送信された信号エレメントを表すシンボルx0〜xNT−1は、送信信号ベクトルx(すなわちx=(x0,x1,x2,...,xNT−1)T)を互いに形成する。ここで()Tは、ベクトルの転置を示す。同様に、受信アンテナ0〜Nr−1により受信された受信信号ベクトルy0〜yNr-1は、受信信号ベクトルy(すなわちy=(y0,y1,y2,...,yNT−1)T)を互いに形成する。図2に示される(及び図3においても示される)簡略化されたシステムのベクトルyとベクトルxとの間の関係は、基本のMIMOシステムの式によりモデル化される。
【数1】
この場合Hは、上述されたチャネルマトリクスであり、nは雑音を表すベクトルである。雑音エレメントn0〜nNr−1は、図2に示され、それぞれの受信信号エレメントy0〜yNr−1における雑音を表す。従って、雑音ベクトルnは、n=(n0,n1,n2,...,nNT−1)Tにより与えられる。式(1)により与えられるモデルについて、ベクトルnにより表される雑音が平均ゼロと分散σ2をもつ付加白色ガウス雑音である。
【0014】
名前「多入力多出力」にかかわらず、MIMOシステムは、送信機と受信機のうちの一方が唯一のアンテナを有する場合でさえ(すなわちNT=1又はNr=1である場合でさえ)動作することができる。実際、MIMOシステムは、送信機と受信機の両者が唯一のアンテナを有する場合でさえ(すなわちNT=Nr=1である場合でさえ)動作すると技術的にいう場合があるが、この状況は、式(1)の数学モデルにおいて、MIMOチャネルがマトリクスHではなくスカラーにより表現されるため、特定の場合を構成することが考慮される。
【0015】
MIMO送信スキームは、「非適応的」及び「適応的」として記載される場合がある。非適応的な場合、送信機は、チャネル特性の情報を有さず、このことは、チャネルの状態において変化を生じさせる状態の変化を考慮しないので、性能を制限する。適応型のスキームは、受信機から送信機に情報(チャネルの状態情報又はCSI(Channel State Information))のフィードバックに依存し、状態の変化を考慮して、データのスループットを最大にするために送信信号の変更を可能にする。本発明は、これら適応型のMIMOスキームに主に関するものである。
【0016】
先に述べたフィードバックは、特にいわゆるFDD(周波数分割複信)システムにおいて重要であり、このFDDでは、アップリンク送信(すなわちユーザ装置から基地局への送信)とダウンリンク送信(基地局からユーザ装置への送信)において2つの異なる搬送波周波数を利用する。周波数の変化のため、アップリングチャネルとダウンリンクチャネルは異なり、CSIは、信号を送信するときに(チャネル状態における変化のような)チャネルの変動を考慮するため、送信機がいわゆる「適応変調“link adaptation”」を実行することができるように、適応的なスキームを提供するためにフィードバックされる必要がある。他方で、いわゆるTDD(Time Division Duplex)システムにおいて、アップリンク及びダウンリンクは、同じ周波数で2つの隣接するタイムスロットで送信される。2つのタイムスロットは、チャネルの状態が変化せず、従ってチャネルの状態情報がフィードバックされる必要がないことが道理的に想定されることを意味することを意味する、チャネルコヒーレンス時間内にある。送信機は、送信機によりパイロット又は既知の波形を逆方向リンクで送出された信号に挿入することで通常支援される、逆方向リンクでの受信信号からチャネル推定することができる。
【0017】
図3は、図1に示されるシステムに類似したMIMOシステムを表し、より一般化された図である。MIMOシステム1は、複数の送信アンテナ(0),(1),...,(NT−1)を有する送信機2と、複数の受信アンテナ(0),(1),...,(Nr−1)を有する受信機3とを有する。送信機2は、NT個の送信アンテナを使用してシンボル0,1,...,NT−1を送信する。シンボルは、垂直符号化(vertical encoding)と呼ばれる1つのデータストリーム、又は水平符号化(horizontal encoding)と呼ばれる異なるデータストリームから作成される。さらに、それぞれ送信されたシンボルは、例えば、変調方法が二位相偏移変調(BPSK: Binary Phase Shift Keying)である場合に1ビットデータに対応し、変調方法が直交位相偏移変調(QPSK)である場合に2ビットデータに対応する。これらの概念については、当業者であれば精通しているであろう。受信機3は、Nr個の受信アンテナを使用して送信機から送信された信号を受信し、受信機3は、受信された信号から送信シンボルを再生する信号再生ユニット4を備える。
【0018】
図3における矢印により示されるように、複数の送信アンテナから送信される信号は、複数の受信アンテナにより受信され、全体としてNr×NT個の可能性のあるサブチャネルを生じる。言い換えれば、送信アンテナ(0)から送信された信号は、受信アンテナ(0)〜(Nr−1)により受信され、送信アンテナ(1)から送信された信号は、受信アンテナ(0)〜(Nr−1)により受信される。i番目の送信アンテナからj番目の受信アンテナに信号を伝搬するサブチャネルの特性は、“Hji”として表現され、Nr×NTチャネルマトリクスHの1つのコンポーネントの項を形成する。
【0019】
更なる背景技術の説明として、MIMO−OFDM送信機とMIMO−OFDM受信機は、図4及び図5をそれぞれ参照して簡単に説明される。図4に概念的に示されるOFDM送信機において、高速の二進データは、(畳込み符号を例として)符号化され、インタリーブされ、(BPSK,QPSK,64QAM等のような変調スキームを使用して)変調される。独立のチャネルエンコーダは、それぞれの送信アンテナについて使用される。その後、データは並列の低速変調データストリームに変換され、この並列の低速変調データストリームは、M個のサブキャリアに供給される。それぞれのエンコーダからの出力は、複数のサブキャリアで個別に搬送される。変調信号は、M点逆離散フーリエ変換(IFFT)により周波数分割多重化され、ガードインターバルが付加される。結果として得られるOFDM信号は、D/Aコンバータによりアナログ信号に変換され、RF帯域にアップコーバートされ、無線で送信される。
【0020】
図5に概念的に示されるMIMO−OFDM受信機で、Nr個の受信アンテナからの受信信号は、帯域通過フィルタ(BPF)によりフィルタリングされ、ついで低周波にダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた信号は、A/Dコンバータによりサンプリングされ(すなわちデジタル信号に変換され)、サンプリングされたデータがM点高速フーリエ変換(FFT)に供給される前にガードインターバルが除去される。Nr個の受信アンテナにより受信された信号のそれぞれにフーリエ変換が施された後、MIMO信号処理ユニット11に供給される。MIMO信号処理ユニット11は、チャネル特性を保証する処理を行う(図3に示される)信号再生ユニット4を有する。
【0021】
送信機(図4)及び受信機(図6)の先の説明は、概略的な説明のみにより与えられた。当業者であれば、係る装置及びそれらの動作に関わる原理に精通しているであろう。
【0022】
なお、説明のため、先の説明は、単一の受信機にMIMO信号を送出する単一の送信機の場合に主に焦点を当てているが、勿論、実際のMIMO無線通信システムは、これよりも複雑であり、基地局が1以上のユーザ/UEに同時にそれぞれのMIMOチャネルを送信する多くの相互に隣接するセルを提供する。実際に、本発明は、以下に説明されるように、これらのより複雑なシステムに向けられ、それらのシステムに関連して生じる。
【0023】
[発明の背景]
先に説明されたように、周波数のリソースが従来のOFDMA−MIMOスキームで利用される手段は、所与のセルにおけるユーザ間の干渉を防止するか又は実質的に制限する。言い換えれば、セル内の干渉が実質的に回避される。しかし、先のパラグラフで説明されたより複雑なマルチセルネットワークにおいて、OFDMA及びMIMO送信の利益は、セル間環境により制限されることがある。
【0024】
セル間干渉は、例えば、あるセルにおけるユーザへのデータの送信において基地局により利用される周波数のリソース(すなわちキャリア及びサブキャリア)が、隣接セルにおけるユーザへのデータの送信において基地局により利用される周波数のリソースと同じであるために生じる。言い換えれば、本発明が使用を見い出す場合がある無線通信システムにおいては、当該技術分野における技術を使用して、隣接セル間の1:1の周波数の再使用となる可能性がある。この影響は、いわゆるセル間の境界近くに位置する「セルエッジユーザ」にとって特に重要である。「セルエッジユーザ」にとって、そのユーザに現在給仕しているある基地局への距離は、隣接セルにおける基地局への距離と大まかに同じであるか、又は僅かに異なる。結果として、セルのエッジ近くのユーザの視点から、給仕している基地局から受信された信号強度は、セルエッジユーザにより見たときに、隣接セルにおける基地局からの信号強度よりも僅かに強いか、又は近似的に同じである。そして、共通の周波数のリソースが隣接セルにおいて使用されるため(すなわち隣接セルにおいて実質的に同じ送信周波数が同時に使用されるため)、隣接セルにおいて送信されている信号は、セルエッジユーザに送信されているデータと干渉することがある。
【0025】
この問題に対処するために提案されている1つの方法は、セル間環境を除去又は低減するために複数の基地局間でMIMO送信を調整(すなわち隣接セル又は近くのセルにおける送信を調整)することである。この調整を達成するために採用される技術の完全な説明は、この説明の目的のために必要ではない。この目的について、この調整は、調整されたセル(又は調整されたセルの部分)間のセル間干渉を低減又は除去することができ、これにより、高データレートのカバレッジ、セルエッジのスループット及び/又は全体のシステムスループットにおける大幅な改善となることを述べることで十分である。しかし、この改善のトレードオフは、マルチセルMIMOシステムにおける送信の調整はチャネルの状態情報(CSI)及びデータ情報が調整された基地局間で共有されることを要求する。これは、システムの送信及びデータ容量のリソースへの大幅な更なる負荷となる。特に、FDDシステムについて、基地局のチャネルの情報は、ユーザ装置(UE)のフィードバックにより主に取得される。複数のセル(又は複数のセルのセクタ)が調整された送信に参加するので、フィードバックされるために必要とされるチャネルの情報量は、協働するセル(cooperating cells)の数(又は協働するセルのセクタの数)と共に線形に増加する。これはアップリンクチャネルに重い負荷を課すことが理解される。
【0026】
先のパラグラフで説明されたように、(調整されるマルチポイント送信/受信又はCoMPとも呼ばれる)調整される複数のセルのMIMO送信/受信は、高データレートのカバレッジ、セルエッジのスループットを改善し、及び/又はシステムのスループットを増加するために使用される。CoMPで使用されるダウンリンクスキームは、以下の2つのカテゴリに含まれると考えられる。
・「調整されたスケジューリング(Coordinated Scheduling)及び/又は調整されたビーム成形(Coordinated Beamforming)(CS/CB)」
・「共同処理(Joint Processing)/共同送信(Joint Transmission)(JP/JT)」
ちなみに、当業者であれば、指向性の信号送信及び/又は受信を支援する建設的及び破壊的な干渉を利用する信号処理技術である、ビーム成形の基礎及び基本原理に精通しているであろう。従って、ビーム成形の更なる説明は、ここでは必要とされない。
【0027】
CS/CBでは、単一のUEへのデータは、ある送信ポイントから即座に送信されるが、ユーザスケジューリング(すなわち、それぞれのユーザに送信のタイミングのスケジューリング)に関する判定、及び/又はビーム成形の判定は、協働するセル(又はセルのセクタ)間の調整により行われる。言い換えれば、スケジューリング/ビーム成形の判定は、調整されたスキームに参加しているセル(又はセルのセクタ)間の調整により行われる。
【0028】
他方で、JP/JTにおいて、単一のUEへのデータは、(コヒーレント又は非コヒーレントに)受信された信号の品質を改善し、及び/又は他のUEの干渉をキャンセルするため、複数の送信ポイントから同時に送信される。
【0029】
図6は、図6におけるセルの分布に関して基地局が示される方式が、実際の無線通信システムの実現における基地局の向かい合うセルの真の分布を正確に反映していないが、CoMPで使用されるダウンリンク送信の2つの上述されたカテゴリの動作原理を概念的に示す。しかし、図6は、CoMPで使用される、CS/CB及びJPダウンリンクの送信スキームの原理を説明するために十分である。
【0030】
共同処理(JP)は、図6(a)において表されており、図6(a)において、セルA,B及びCがUEに積極的に送信し、セルDがセルA,B及びCにより使用される送信インターバルの間に送信しない。
【0031】
調整されたスケジューリング及び/又は調整されたビーム成形(CS/CB)は、図6(b)に表されており、図6(b)において、協働セルの間の同一チャネルのセル間干渉が低減又は除去されるように、セルBのみがデータをUEに積極的に送信し、ユーザのスケジューリング/ビーム成形の判定は、セルA,B,C及びSの間の調整により行われる。
【0032】
CoMPの動作において、UEは、チャネルの状態情報をフィードバックする。チャネルの状態情報は、詳細にわたることがあり、1以上のチャネルの状態/統計情報、狭帯域のSINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)等のうちの1以上の測定値を含むことがある。チャネルの状態情報は、チャネルの空間構造及び他のチャネルに関連するパラメータに関連する測定値を含む。
【0033】
先に説明したように、チャネルの状態情報のフィードバックにより、チャネルの状態の変化を考慮し、データのスループットを最大にするため、送信信号の変更(典型的に送信前の基地局による変更)が可能となる。より詳細には、このフィイードバックは、この基地局でのプレコーダ設計、適応変調及びスケジューリングを実行するために行われることがある。また、先に説明されたように、FDDシステムについて、フィードバックされるために必要とされるチャネル情報の量は、協働するセル(又はセルのセクタ)の数に線形に増加し、これにより、特にアップリンクチャネルについて重い更なる負荷が形成される。
【0034】
さらに、ハイパフォーマンスのCoMP送信スキームは、期限が経過しているチャネル情報に非常に感度が高いことがある。従って、CoMPの利益は弱められるか、又は、例えばUEの速度が120km/h以上であるような高い移動度のシナリオにおいて実現可能ではない場合がある。これは、係る高速度について最適又は良好にCoMPが機能するのを可能にするフィードバック要件を満たすことが困難であるためである。従って、本発明は、例えばUEが約30km/hまでの速度をもつような低速及び中速のシナリオにおけるCoMPの環境において典型的に実現されることが想定される。しかし、この点について厳密な制限はなく、おそらくフィードバック要件により課される課題に係らず、又は満足するのを容易にするフィードバック要件を最小にするか又は効率化するための手段が考え出された場合、本発明は高い移動度のシナリオで実現されることが明らかに理解される。
【0035】
この節の残りは、チャネルの状態情報のフィードバックに関連する先に提案された方法及び他の開示について説明する。
【0036】
中国特許CN101415229号は、空間分割多元接続システムにおける制限されたフィードバック制限に基づいてチャネルの状態情報(CSI)をフィードバックする方法を記載している。本方法は、量子化誤差の閾値及びチャネルゲインの閾値を使用して、CSIをフィードバックすべきユーザを選択する。
【0037】
国際特許出願PCT/US2008056579は、無線通信システムにおけるCQI(チャネル品質指標/インジケータ)フィードバック情報における冗長度を低減するため、受信機でCQIフィードバックを圧縮するシステム及び方法を提示する。周波数領域でCQIを圧縮するため、この文献における主要な考えは、そのCQIが最も変化したサブバンドのCQIをフィードバックすることであり、時間領域でCQIを圧縮することである。離散コサイン変換は、CQIに関して実行される。
【0038】
台湾特許TW274482号では、フィードバックレートを低減するためのMIMO−OFDMシステムで適用される方法が開示される。主要な提案は、周波数帯域の一部についてCSIをフィードバックすることであり、次いで全ての周波数帯域のCSIは、フィードバックでの補間により表される。
【0039】
米国特許第7,359,470号は、MIMOシステムにおけるCSIについて最小のフィードバックレートを決定する方法を提案する。CSIの最近のフィードバックに基づいて、容量における期待されるパフォーマンスの損失を推定する方法が提案される。この方法は、推定される空間共分散情報に基づいて、期待されるパフォーマンスの損失を推定する。期待されるパフォーマンスの損失に関する推定を使用することで、期待される容量が予め決定された閾値よりも大きい最大の許容可能なチャネルフィードバック遅延が計算され、最大の許容可能なチャネルフィードバック遅延に基づいて、最小のフィードバックレートが導出される。
【0040】
欧州特許第1437854号では、無線通信システムにおける可変のチャネル品質のフィードバックレートは、基地局から移動局への送信の有無に基づいて提案される。
【0041】
米国特許第7050759号は、3つの個別のフィードバックのサブチャネルを使用することによるフィードバックのオーバヘッドを低減する方法を開示する。主要な考えは、それぞれのサブチャネルで搬送される情報は、チャネル状態を記憶する内部レジスタを選択的に更新するために基地局により個別に又は全体として使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明の1態様(又は1態様の少なくとも1つの実施の形態)は、概して、多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおいて使用される方法である。MIMO無線通信システムにおいて、それぞれのセルが、1以上のユーザに信号を送信し、1以上のユーザから送信される信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セルが設けられ、ユーザは、関連する基地局に、関連する基地局とそのユーザとの間のチャネルに関連するチャネルの状態情報をフィードバックし、基地局は、チャネルの変動を考慮して、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を適合させる。本方法は、チャネルの空間構造における時間変動に関連する情報を取得するステップ、及びチャネルの空間構造における時間変動に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節するステップを含む。
【0043】
本発明の別の態様(又は別の態様の少なくとも1つの実施の形態)は、概して、多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおける使用向けのユーザ装置である。MIMO無線通信システムにおいて、それぞれがユーザ装置(及び他のユーザ装置)に信号を送信し、ユーザ装置から信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セル又はセルのセクタが設けられ、ユーザ装置は、関連する基地局とユーザ装置との間のチャネルに関連するチャネルの状態情報を関連する基地局にフィードバックし、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザ装置(及び/又は他のユーザ装置)への送信のために基地局が信号を適合させるのを可能にし、チャネルの空間構造における時間変動に関連する情報を取得し、チャネルの空間構造における時間変動に基づいて、チャネルの状態情報がフィードバックされるタイミングを調節する。
【0044】
本発明の更に別の態様(又は更に別の態様の少なくとも1つの実施の形態)は、概して、多入力多出力(MIMO)無線通信システムである。MIMO無線通信システムにおいて、それぞれが1以上のユーザに信号を送信し、1以上のユーザから送信された信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セル又はセルのセクタが設けられ、1以上のユーザは、関連する基地局とそれぞれのユーザとの間のチャネルに関連するチャネルの状態情報を関連する基地局にフィードバックし、基地局は、チャネルの変動を考慮するため、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を適合させ、チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報が取得され、チャネルの空間構造における時間変化に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングが調節される。
【0045】
本発明の更なる態様(又は更なる態様の少なくとも1つの実施の形態)は、概して、先のパラグラフに記載された多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおける使用向けの基地局にある。基地局は、チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータの閾値を1以上のユーザに送信し、1以上のユーザは、パラメータを連続して計算し、パラメータが閾値の等しいか又は閾値を超えるときに、チャネルの状態情報を基地局に、及び/又は1以上の他の基地局にフィードバックする。
【0046】
一般に、それとは反対に明らかな意図がない場合には、本発明の1態様に関して記載される特徴は、同様に、組み合わせが本明細書において明示的に言及又は記載されないとしても、他の態様と組み合わせて適用される場合がある。
【0047】
通常、MIMO無線通信システムでは、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックする時間間隔は固定されており、又は、別のセルに対してあるセル(又はセルのセクタ)において使用される異なるフィードバック時間間隔が存在する場合、それぞれの係る時間間隔は、他のセル/セクタにおける間隔を参照することなしに典型的に選択される。しかし、先に説明されたように、CoMPにおいて、セル間において調整があり、実際に、先に説明された共同処理(JP)ダウンリンクの送信スキームの場合、単一のUEへのデータは、複数の送信ポイントから同時に送信される。従って、従来の固定された又は独立に設定されたフィードバック間隔は、CoMPの環境における使用向けに適切ではない。
【0048】
本発明の有利な特徴の1つは、チャネルの状態情報のそれぞれのフィードバック間の時間間隔の長さは、MIMOチャネルの時間変化の特性(すなわちチャネルの特性が時間的に変化するやり方)、特に、MIMOチャネルの空間構造における時間変化を考慮して決定される。この重要性を理解するため、高速に時間変化するMIMOチャネルについて、本発明は、フィードバック間隔が短くされるのを可能にし、より低速に時間変化するMIMOチャネルについて、フィードバック間隔を長くされるのを可能にすることが理解される。これは、MIMOチャネルの状態(及び特に空間構造)が時間的に迅速に変化し、チャネルの状態情報が関連する基地局に十分に頻繁に送出されない場合に、適応変調等を行うために基地局が使用する情報が時代遅れ且つ不正確となり、これがシステムパフォーマンスに悪影響を及ぼす状況を低減するか、又は回避するために役立つ。他方で、MIMOチャネルの状態(及び特に空間構造)が時間的に低速に変化する場合、効率的な適応変調等を達成するために必要なよりも迅速にチャネルの状態情報をフィードバックすることで、不要な送信負荷が形成される状況が低減されるか、又は回避される。従って、本発明は、一方で高速に時間変化するMIMOチャネルにおいて満足するパフォーマンスを達成するために必要とされる十分に迅速なフィードバックを可能にし、アップリンクのオーバヘッドに不要な負荷を形成するように迅速にフィードバックすることがない、適応的なフィードバック間隔の制御が実行されるのを可能にする。言い換えれば、本発明は、フィードバックの負荷とシステムのパフォーマンスとの間で適切なバランスを達成するのに役立つ。本発明は、様々なCoMP送信モードに従って動作するシステムにおいて、このバランスを達成するのに役立つ。
【0049】
上述の説明から明らかであるように、本発明は、多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおける基地局とユーザとの間の信号信号に関する。基地局は、係る信号を送信及び受信するために適切な形式を取る。基地局は、3GPP LTE,3GPP LTE−A,IEEE 802.16及び802.11規格のグループにおける実現について提案される形式を取り、従って異なる状況において必要に応じてNodeB又はeNodeB(eNB)として記載される。しかし、この点について特に限定されるものではないことは明らかに理解される。確かに、本発明の機能的な要件に依存して、一部又は全部の基地局は、ユーザからの信号を送信及び受信し、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいてユーザへの送信のために信号を適合するために適した他の形式を取る場合がある。
【0050】
同様に、本発明では、それぞれのユーザは、基地局からの信号を送信及び受信するために適した形式を取る場合がある。例えば、ユーザは、加入者局(SS)、又は移動局(MS)、ユーザ装置(UE)、又は他の適切な固定された位置又は移動可能な形式である。本発明を可視化するため、モバイルハンドセットとしてのユーザ(及び多くの例では少なくとも幾つかのユーザはモバイルハンドセットを有する)を想像することは便利であるが、この点について限定されるものではない。ユーザは、3GPP LTE,3GPP LTE−A,IEEE 802.16及び802.11規格のグループと互換性のある形式をとる場合があるが、この点について限定されるものではない。
【0051】
無線通信システムでは、互いに関して基地局の配置は、セル(及びセルのセクタ)のレイアウトを定義する。本発明は、特定の基地局の配置又はセルのレイアウトに必ずしも限定されるものではない。本発明の所定の好適な実施の形態は、セルに対する基地局の配置はセル当たりの3つのセルのセクタを定義する六角形のセル構成を参照して以下に記載される。しかし、他の構成の範囲も可能である。
【0052】
先に説明されたように、本発明では、ユーザは、関連する基地局にチャネルの状態情報をフィードバックするように適合される。また、本発明は、マルチセルのMIMO送信及び受信に主に関し、特にいわゆる調整されたマルチポイント(CoMP: Co-ordinated MultiPoint)スキームに関する。説明されるように、異なるCoMPスキームにおいて異なるダウンリンクモードが使用される。これは、異なるCoMPスキームで使用された異なるダウンリンクモードが異なるフィードバックモードを必要とするために重要である。
【0053】
異なるダウンリンクCoMPモードのサポートで使用されるフィードバック方法は、この業界における議論及び交渉の主部である。結果として、(例えば3GPP LTE−A等に準拠するシステムのような)少なくとも所定の種類の無線通信システムに関して、以下の3つのカテゴリに含まれるCoMPフィードバックメカニズムが利用される。
・明示的なチャネルの状態/統計的な情報のフィードバック、
・暗黙的なチャネルの状態/統計的な情報のフィードバック、
・SRS(Sounding Reference Signal)のUE送信は、チャネルの相互関係を利用することで、基地局でのCSI推定のために使用される。
【0054】
これらの3つのフィードバックメカニズムのうち、最初の2つは、FDDシステムを主にターゲットとしており、3番目は、TDDシステムをターゲットとしている。先に説明された理由のため、本発明は、FDDシステムを特に狙いとしており、ダウンリンクのCoMPのサポートにおいてフィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの間の適切なバランスを達成する。
【0055】
先のフィードバックメカニズムの第一のカテゴリ(明示的なチャネルの状態/統計的な情報のフィードバック)において、フィードバックされるチャネルの状態情報は、送信機又は受信機の処理を想定することなしに受信機により観察される。対照的に、第二のフィードバックメカニズムのカテゴリ(暗黙のチャネルの状態/統計的な情報のフィードバック)は、例えばチャネル品質指標(CQI: Channel Quality Index)、プレコーディングマトリクス指標(Precoding Matrix Index)、チャネルマトリクスに関するランク情報(RI: Rank Information)に関連する、異なる送信及び/又は受信の前提を使用する。
【0056】
しかし、誤解を避けるため、本発明は先の(又は他の)フィードバック方法又はメカニズムの何れかに必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明が実現されるシステムで使用されるダウンリンクモードが与えられると、適切なフィードバックメカニズムが使用される。チャネルの状態情報でフィードバックされるか、チャネルの状態情報の一部としてフィードバックされる情報の種類は、BER(Bit-Error Rate)、CBER(Channel BER)、CNR(Carrier to Noise Ratio)、SINR(Signal to Interference Noise Ratio)、MER(Modulation Error Ratio)及び、チャネルの空間構造に関する他の統計的な情報又は他の情報、及び/又は、チャネルマトリクス情報、空間相関マトリクス情報、PMI、RI及びコードブックのような時間変化を含む。これらは例であり、他の量、又は異なる形式で与えられる類似の量を送信することもできる。
【0057】
本発明では、基地局は、チャネル変化(特にチャネルの空間構造における変化)を考慮し、データのスループットを最大にするため、フィードバックされるチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を適合させることが好ましい。より詳細には、基地局は、プレコーダ設計及び適応変調を実行することが好ましい。プレコーダの設計及び適応変調の詳細は、本発明の説明の範囲外である。
【0058】
重要なことに、本発明の様々な態様に置いて、本発明は、チャネルの状態における時間変化に関連する情報を取得し、チャネルの状態における時間変化に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節する。特に、本発明は、チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報を取得し、チャネルの空間構造における時間変化に基づいてユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節する。チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報は、多種多様な形式をとり、それらの全ては、本発明の範囲に含まれると考えられる。好適な実施の形態では、チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報は、チャネルマトリクス情報、空間相関マトリクス情報、PMI、固有値及び固有ベクトルである。
【0059】
本発明の幾つかの実施の形態では、チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータが定義される。好ましくは、パラメータは、チャネルの空間構造における時間的な変化の程度を示す。幾つかの例では、変化の速度を表すと考えられる。パラメータは、異なる状況においてスカラーベクトル、マトリクス又はテンソルである場合がある。
【0060】
当業者であれば理解するように、チャネルの状態における変化は、ある理由により生じる。例えば、チャネルの空間構造における変化は、チャネルへのドップラ効果により生じる場合がある。この例では、同じユーザと異なる基地局との間のチャネルのドップラスペクトルは異なる場合があるので、異なる送信セルのセクタにおけるチャネルは、異なる時間変動を受ける。チャネルの状態及びチャネルの空間構造における時間変化の他の原因は、当業者により良好に理解されるであろう。
【0061】
好適な実施の形態では、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングの調節は、上述されたパラメータの閾値を定義し、連続する回数(典型的に周期的)でパラメータを計算し、パラメータが閾値に等しいか又は閾値を超えるとき、1以上の基地局にチャネルの状態情報をユーザにフィードバックさせるか、ユーザのフィードバックを可能にする。適切に、パラメータの計算において、1以上のチャネルについてチャネルマトリクスが使用される。好ましくは、閾値は、ルックアップテーブルに記憶され、基地局又はユーザ装置で、シミュレーションにより取得されることが好ましい。
【0062】
幾つかの特定の実施の形態では、1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、調整されたスケジューリング(CS)、調整されたビーム成形(CB)、ローカルのプレコーディングによる共同処理(JP)、又は重み付けされたローカルのプレコーディングによる共同処理(JP)のうちの1つを含む。これらの実施の形態は、調整されたセル、又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネルマトリクスを使用して、前記セル又はセルの一部のそれぞれについて前記パラメータを計算すること、そのセル又はセルの一部のパラメータが閾値に等しいか又は閾値を超えるときに、セル又はセルの一部の基地局にチャネルの状態情報をユーザにフィードバックされるか、又はユーザフィードバックを可能にすることを含む。
【0063】
他の特定の実施の形態では、1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、グローバルプレコーディングによる共同処理(JP)を含む。これらの他の実施の形態は、調整されたセル又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネルマトリクスから連結されたチャネルマトリクスを計算すること、連結されたチャネルマトリクスを使用して前記パラメータを計算すること、パラメータが閾値に等しいか又は閾値を超えるときに、調整されたセル又はセルの一部の基地局に、チャネルの状態情報をユーザにフィードバックされるか又はユーザフィードバックを可能にすることを含む。
【0064】
なお更に特定の実施の形態では、1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、MBSFNプレコーディングによる共同処理(JP)を含む。更なる実施の形態は、調整されたセル又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネルマトリクスから合計されたチャネルマトリクスを計算すること、合計されたチャネルマトリクスを使用して前記パラメータを計算すること、パラメータが閾値に等しいか又は閾値を超えるとき、調整されたセル又はセルの一部の基地局にチャネルの状態情報をユーザフィードバックさせるか又はユーザのフィードバックを可能にすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1〜図6は、本明細書に関連して、本発明に対する背景技術を説明する。残りの図は、本発明の所定の特徴、態様及び動作を説明する。しかし、図面は、説明のために、理解を支援するためにのみ与えられ、本発明は、必ずしも、図示される背景情報、特徴又は態様又はこれらの一部に限定されず、また、図面を参照して記載される背景情報、特徴又は態様又はこれらの一部に限定されないことを理解されたい。
【図1】簡略化された2×3のMIMOシステム、及びそれぞれ送信機のアンテナと受信機のアンテナとの間の個々のSISOチャネルを例示する図である。
【図2】送信機がNT個の送信アンテナを有し、受信機がNr個の受信アンテナを有する一般化されたMIMOシステム、受信アンテナにより受信された信号に雑音が導入されることを例示する図である。
【図3】図1に与えられるシステムに類似し、一般化されたMIMOシステムに関連するシステムを例示する図である。
【図4】MIMO−OFDM送信機の所定の重要な機能コンポーネントを例示する図である。
【図5】MIMO−OFDM受信機の所定の重要な機能コンポーネントを例示する図である。
【図6】(a)は、CoMPで使用される、いわゆる共同処理(JP)のダウンリンク送信の動作原理を例示する図である。(b)は、CoMPで使用される、いわゆる調整されたスケジューリング及び/又はビーム成形(CS/CB)のダウンリンクの送信の動作原理を例示する図である。
【図7】基地局、セル及びセルの一部(セクタ)が本発明が適用可能な種類の無線通信システムに分布される1つの方法を例示する図である。基地局及びセル等は代替となる無線通信システムにおいて他の方法で分布される場合があり、本発明は係る他の代替的なスキームにおいても同様に適用される。言い換えれば、本発明は、セル/基地局/セルセクタの分布の配置の特定の形式に限定されるものではない。
【図8】CB/CSダウンリンクの送信を使用したCoMPスキームにおいて、3km/hのUEの速度を想定したときの、UEと2つの異なるセルのセクタの送信機との間で生成される広帯域CMDの比較を示す図である。
【図9】グローバルプレコーディングによるJPダウンリンクの送信を使用したCoMPスキームにおいて、2つの協働するセルのセクタからの連結されたチャネルマトリクスを使用して計算された広帯域CMDの時間変化を示す図である。
【図10】MBSFNプレコーディングによるJPダウンリンクの送信を使用してCoMPスキームにおいて、2つの協働するセルのセクタからの合計されたチャネルマトリクスを使用して計算された広帯域CMDの時間変化を示す図である。
【図11a】提案される低減されたオーバヘッドのフィードバック間隔の制御スキームの様々な実施の形態が集合的/全体的に実現される方法を例示するフローチャートである。
【図11b】図11bに続く、提案される低減されたオーバヘッドのフィードバック間隔の制御スキームの様々な実施の形態が集合的/全体的に実現される方法を例示するフローチャートである。
【図12】固定されたフィードバック間隔のスキームが使用される4つのセルのセクタの広帯域CMD値を示すシミュレーション結果のプロットである。
【図13】CB/CSダウンリンク送信によるCoMPシステム、或いはローカル又は重み付けされたローカルプレコーディングを使用したJPダウンリンクの送信によるCoMPシステムにおいて提案されるフィードバック間隔の制御スキームが使用される、4つの調整されたセルセクタの広帯域CMD値を示すシミュレーション結果のプロットである。
【図14】図13に類似するが、グローバルプレコーディング及びMBSFNプレコーディングを使用してJPダウンリンクの送信によるCoMPスキームにおいて提案されるフィードバックインターバルの制御スキームが使用される、4つの調整されたセルの広帯域CMD値を示す図である。
【図15】図14に対するシミュレーション結果を示すが、低い移動度のシナリオに関する中間の移動度のシナリオについてのシミュレーション結果を示す図である。
【図16】固定されたフィードバック間隔のスキームが中間の移動度のシナリオで使用される、4つのセルセクタについて広帯域CMD値を示すシミュレーション結果のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
先に説明されたように、本発明は、チャネルの状態が時間的に変化するやり方に基づいて、1以上のUEがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節する。好適な実施の形態では、フィードバックの間隔は、チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータに基づいて適応的に変更される。
【0067】
以下で記載される本発明の特定の好適な実施の形態では、この目的のために選択されるパラメータは、「拡張された相関行列の距離(extended Correlation Matrix Distance)」又は「広帯域の相関行列の距離」(すなわち拡張CMD又は広帯域CMD、これらの用語は、交換可能であると考えられる)と呼ばれ、記号dwd_corrにより表される。しかし、先に述べたように、本発明は、この特定のパラメータの使用に必ずしも限定されるものではなく、本発明の他の実施の形態は、チャネルの状態における時間変化又はチャネルの空間構造における時間変化に関連する他のパラメータを使用するか、或いは、チャネルの状態又は空間構造における時間変化に基づいてフィードバックの間隔を調節する他の手段を使用して代替的に動作することができる。
【0068】
相関行列の距離として知られる量は、M. Herdin, N. Czink, H. Ozcelik及びE. Bonekによる文献“Correlation matrix distance, a meaningful measure for evaluation of non-stationary MIMO channels”, in IEEE VTC spring 2005, vol. 1, 2005, pp.136-140に記載されている。
【0069】
注記:上記文献で記載される相関行列の距離の基準は、「拡張CMD」/「広帯域CMD」のdwd_corrの基準のそれぞれの量がある観点において類似しているとしても、以下で記載される本発明の実施の形態で使用される「拡張CMD」/「広帯域CMD」のdwd_corrの基準と混乱されるべきではない。それらの間の区別は、以下に更に説明される。
【0070】
先の文献では、相関行列の距離は、狭帯域の高速フェージングMIMOチャネルの構造における変化の測度として導入される。先の文献は、以下のように相関行列の距離dcorrを定義する。
【数2】
ここでtr{・}は行列のトレースを示し、‖・‖は、行列のフロベニウスノルムを示し、R(t1)及びR(t2)は、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定されたMIMOチャネルの空間的な相関行列である。
【0071】
送信機側の空間的な相関について、空間的な相関行列は、以下のように計算される。
【数3】
【0072】
受信機側について、空間的な相関行列は、以下のように計算される。
【数4】
ここで(・)Hは、行列の共役転置を示し、(・)Tは、行列の転置を示し、H(t)は、Nr個の受信機アンテナとNT個の送信機アンテナをもつシステムについて、ある時間サンプルでのNr×NT個のMIMOチャネル行列を表し、E{・}は、期待値演算子である。
【0073】
式(III)及び(IV)において、空間的な相関行列を計算するために、時間領域において平均が計算される。言い換えれば、式(III)及び(IV)における期待値演算子内の行列積の期待値は、それぞれの行列積の時間平均であることが想定される。式(II)から分かるように、相関行列の距離dcorrの値は、0と1との間の範囲に及ぶ。より詳細には、空間的な相関行列R(t1)及びR(t2)が同じであるとき(スカラー要素は別として)、dcorrは0であり、R(t1)及びR(t2)が完全に相関しないとき、dcorrの最大値は1である。先に定義されたように、相関行列の距離の基準は、狭帯域の高速フェージングMIMOチャネルの構造における変化のシステムの独立な測度として使用される。相関行列の距離の基準により、1つの値と行列のサブスペースの両者を比較する間に、単一のパラメータにより変化が特徴付けられるのを可能にする。従って、相関行列の距離の基準は、MIMOチャネルの主要な特性をカバーする一方で、簡単な手段を提供する利点を有する。
【0074】
先に記載された相関行列の距離の基準の特性は、すなわち、システムに独立な測度であって、1つの値と行列のサブスペースの両者を比較する間に、単一のパラメータにより変化が特徴付けられるのを可能にするものであり、本発明の観点から有効な特性であると考えられる。しかし、本発明の記載される実施の形態は、狭帯域の高速フェージングMIMOチャネルの構造ではなく、広帯域の高速フェージングMIMOチャネルの空間構造における時間変化に焦点を当てるものであり、この焦点は、先に定義された相関行列の距離の焦点である。従って、記載される実施の形態において、相関行列の距離の基準は、広帯域の高速フェージングMIMOチャネルの空間構造における時間変化の測度を提供し、様々なCoMPのシナリオにおいて係る測度を提供するために変更される。言い換えれば、相関行列の距離の基準は、以下に記載される実施の形態で使用される拡張CMD(又は広帯域CMD)のdwd_corrとなるように変更される。広帯域の高速フェージングMIMOチャネルの拡張されたCMDの基準dwd_corrは、以下のように定義される。
【数5】
この場合、先の式(II)〜(IV)を参照して記載された相関行列の距離に類似して、Rwd(t1)及びRwd(t2)は、広帯域の高速フェージングMIMOチャネルについて、この場合、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定される空間的な相関行列である。
【0075】
また、先の式(II)〜(IV)とは対照的に、受信機側の空間的な相関について式(V)を使用して拡張CMDのdwd_corrを計算するため、例えばRwd(t1)及びRwd(t2)は、以下の式を使用して実行される。
【数6】
この場合、H(t,f)は、時変インパルス応答行列(すなわち時変チャネル行列)H(t,τ)にフーリエ変換を適用することで得られた時変転送行列であり、Nは、フーリエ変換のサイズである(MIMO送信機及びMIMO受信機のそれぞれのアンテナ数であるNT及びNrと混同しないように留意されたい)。広帯域の場合、受信機側で空間的な相関行列Rwd_Rx(t1)及びRwd_Rx(t2)は、帯域幅を通しての平均のチャネル相関行列Rwd_avg(t)に基づく。シミュレーションにおいて、この時間領域の平均は、以下のように、長さSのスライディングウィンドウを通して行われる。
【数7】
【0076】
(狭帯域の高速フェージングMIMOチャネルにおける変化に関連する)式(II)〜(IV)を参照して上述された基本の相関行列の距離の基準dcorrに関して、(広帯域の高速フェージングMIMOチャネルの空間構造における時間変化に関して)以下に記載される本発明の実施の形態において使用される広帯域CMDのdwd_corrについて、Rwd(t)及びRwd(t2)が同一である場合、広帯域CMDのdwd_corrは0であり、Rwd(t)及びRwd(t2)が急進的に変化する場合、広帯域CMDのdwd_corrは1になる。
【0077】
また、式(VI)に対する調節は、異なるシナリオで式(V)により与えられる広帯域CMDの基準dwd_corrを計算するために行うことができる。例えば広帯域MIMOチャネルについて、所定の周波数の時間変化に関心がある場合、式(VI)は、以下のように書き換えられる。
【数8】
【0078】
シミュレーションにおいて、時間領域の平均は、以下により実行される。
【数9】
そして、式(VI)における期待値演算子が取り除かれるか、又は式(VII)におけるスライディングウィンドウの長さSが1に設定される場合、それは、チャネル行列における変化を示す、調査された時間平均された空間的な相関行列ではない、瞬間的な空間的な相関行列における時間変化である。
【0079】
以下に記載される本発明の好適な実施の形態では、様々な適応的な周波数間隔の制御スキームが異なるCoMPシナリオについて提案され、拡張/広帯域CMDの基準dwd_corrは、異なるシナリオにおけるMIMOチャネルの時間変化を評価するために使用される。実施の形態は、シミュレートされたマルチセルのMIMOチャネルデータを参照して記載される。時変のマルチセルMIMOチャネルをシミュレートするために使用されるモデルは、文献“3GPP TR 25.996: Spatial channel model for multiple input multiple output (MIMO) simulations”, V8.0.0,2008-12で述べられている。
【0080】
要するに、シミュレートされたデータは、先の文献で規定されたアーバンマクロシナリオ(urban macro scenario)を使用して得られる。特に、それぞれのセルは、セル当たり3つのセクタをもつ六角形となることが想定される。セル当たり3つのセクタをもつ六角形のセルの配置の例は、図7に与えられる。図7において、(実線により線引きされる)セルは、3つの六角形のセルが集まるコーナに位置される基地局で形成される。例示のため、1つのセルは、図7においてグレイで影付けされる。それぞれの基地局は、異なるチャネルで3つの異なるセルに信号をそれぞれ送信し、異なるチャネルで3つの異なるセルからの信号を受信する3つの異なる方向に向けられる3つの指向性アンテナのセットを有する。このように、それぞれのセルは、3つのセクタを含む。セルのセクタは、点線により図7において示される。
【0081】
時変のマルチセルMIMOチャネルをシミュレートするために使用されるモデルを再び参照して、はじめに、UEとそれぞれのセクタの送信機との間の異なる時間サンプルでのインパルス応答行列が生成される。等間隔線形アレイ(ULA: Uniform Linear Array)は、UEで、それぞれの送信セクタで使用される。UEで2つのアンテナが存在し、送信機で8つのアンテナが存在する。それぞれのシミュレーションの実行の開始で、UEの位置、UEのアンテナの方向、UEの動きの速度及び方向、異なる送信セクタでのアンテナの方向が定義され、シミュレーション期間において一定であると想定される。連続する時間サンプルの間の時間間隔は、1msに設定される(当業者であれば、1msは、3GPP LTEシステムにおける1サブフレーム期間に対応することを認識されるであろう)。それぞれの時間サンプルで、UEとそれぞれのセクタ送信機との間の一連のインパルス応答チャネル行列H(t,τ)が生成され、次いで、フーリエ変換により一連の転送行列H(t,f)に変換される。次いで、転送行列は、広帯域CMDの基準dwd_corrを計算して、それぞれのセクタにおけるMIMOチャネルにおける時間変化を個別に測定するために使用される。
【0082】
異なる送信セクタにおける同じUEのドップラスペクトルは異なる(及び異なることがある)ので、異なる送信セクタにおけるチャネルは、時間的に非常に異なる。また、全てのシナリオにおいて、受信機側の空間的な相関行列は、広帯域CMDを生成するために使用される。
【0083】
図8は、UEの速度が3km/hであるとして、UEと2つの異なるセルのセクタの送信機との間で、先に説明された、生成された広帯域CMDの比較を示す。図7に示されるセルのセクタ1の送信機とセルのセクタ2の送信機として(例えば)想定される、これら2つの異なる送信機は、以下、セルセクタ1及びセルセクタ2とそれぞれシンプルに呼ばれる。セルセクタ1とセルセクタ2の両者について、スライディングウィンドウの長さSは、1に設定され、すなわち広帯域CMDを計算するために、瞬間的な空間的な相関行列が式(V)において使用される。MIMOチャネルの時間変化は、200個の時間サンプルについて追跡される。
【0084】
200個のサンプル時間の間に、セルセクタ1の広帯域CMD(実線)は、時間サンプル1から時間サンプル120まで非常に緩やかに変化し、時間サンプル120から、0.18に次第に増加し、これは、UEとセルセクタ1との間のMIMOチャネル(すなわちUEとセルセクタ1の送信機との間のチャネル)がこれら200個の時間サンプルについて緩やかに変化し、最初の120個のサンプル期間について殆ど変化しないことを意味することが図8から分かる。他方で、セルセクタ2(破線)の広帯域CMDは、セルセクタ1のそれよりも非常に迅速に増加し、時間サンプル140の後に0,7前後に存在し続ける。一般に、このような違いは、同じUEと異なる送信機との間でチャネルの異なるドップラスペクトルに起因する。
【0085】
従って、CB/CSダウンリンク送信の場合(単一のUEへのデータは、1つの送信ポイントから瞬間的に送信されるが、ユーザスケジューリング及び/又はビーム成形に関する判定は、セル又はセルセクタ間の調整により行われる)、UEがセルセクタの送信機に更新されたチャネル情報を送出するフィードバックの間隔は、異なるセルセクタについて異なって扱われる。図8に示されるシミュレーション結果を例として取り上げ、セルセクタ1は、その送信機がデータをUEに送信するセルセクタであり、セルセクタ2は、協働しているセルセクタであると想定する。(従来のように)両方のセクタについて固定されたフィードバックの間隔の制御方法が使用される場合、これは、セルセクタ1について不要なフィードバックのオーバヘッドを生じる、セルセクタ1の観点から望まれるよりも短いフィードバック間隔につながるか、又は、セルセクタ2について適切なシステムのパフォーマンスを提供するために必要とされるよりも長いフィードバックの間隔に(必然的に)つながる。
【0086】
本発明により提供される利点のうちの1つは、広帯域CMDの基準により、UEについて予め定義されたフィードバックの広帯域CMDの閾値を設定することで(すなわち、CB/CS送信の開始で、送信BSの送信機がUEに予め定義された閾値を送出することができる)、異なる時変のシナリオについてフィードバックの間隔の適合が可能となり、次いで、UEは、所与の時間で前記セルセクタのそれぞれの広帯域CMDを閾値と比較し、その時間で拡張CMDが閾値を超えるセルセクタにのみフィードバックすることで、それぞれのセルセクタにおけるフィードバックを何時送出すべきかを判定する。図8により与えられる例では、広帯域CMDのフィードバックの閾値が0.2として設定される場合、時間サンプル200まで、セルセクタ1にフィードバックする必要がない。しかし、セルセクタ2について、UEは、200個の時間サンプルの期間において数回のフィードバックを必要とする。
【0087】
CB送信モードが使用される場合が示すように、本発明の広帯域CMDに基づく適応フィードバックの間隔の制御方法は、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの釣り合いの観点で改善されたパフォーマンスを提供する。多くの状況において(すなわち本発明がフィードバックを抑えるか、又はフィードバックがさもなければ行われたときにフィードバックしない場合、すなわち固定されたフィードバック間隔のスキームが使用される場合)、これは、フィードバックのオーバヘッドにおける相当な節約を可能にする場合がある。ごく一般的な言い方をすると、これらの利点は、それぞれ協働するセルセクタのフィードバック間隔を適応的に制御するために使用される、前記セルセクタのそれぞれの広帯域CMDの計算において、それぞれの協働するセルセクタのチャネル行列を利用することで達成される。
【0088】
調整されたJP送信の場合(単一のUEへのデータが複数の送信ポイントから同時に送信される場合)、多数の異なるダウンリンクのプレコーディングスキームのうちの1つが異なる状況において調節された送信機で使用されるので、異なるプレコーディングスキームを参照して、異なるバリエーション(すなわち異なる実施の形態)の提案されるフィードバックの間隔の制御スキームが以下に個別に説明される。ここで説明されるダウンリンクのプレコーディングスキームは、以下の通りである。
【0089】
「グローバルプレコーディング“global precoding”」
「MBSFNプレコーディング(MBSFNは、Multimedia Broadcast over Single Frequency Network)」
「ローカルプレコーディング“local precoding”」
「重み付けローカルプレコーディング“weighted local precoding”」
これらのプレコーディングスキームは、文献R1-090022“Considerations on precoding scheme for DL joint processing CoMP”, Sharp, 3GPP TSG-RAN WG1 #55bis, 12-16 Jan, 2009, Ljubljana, Sloveniaに記載されている。
【0090】
グローバルプレコーディングスキームについて、複数のセルセクタの送信機により同時に給仕されるUEにより受信される信号は、以下のように表される。
【数10】
この場合、xは、L×1の送信データベクトル(Lはデータシンボルの数)、nは、Nr×1の付加白色ガウス性雑音ベクトルであり、Hcatは、連結されたチャネル行列、すなわちHcat=[H(1),H(2)...H(B)]であり、Bは、JPセルセクタの数であり、H(b)(b=1...B)は、セルbとUEとの間のNr×NTである。Hcatのサイズは、Nr×BNTであり、Wcatは、BNr×NTのグローバルプレコーダである。
【0091】
時変チャネルに従う全ての送信機のWcatを更新するため、フィードバックされる必要があるチャネル情報は、特定のセルセクタのものではなく、全ての協働しているJPセルセクタのそれである。従って、図9は、UEの速度が3km/hであり、協働しているJPセルセクタの数が2である場合について、連結されたチャネルマトリクスを使用して計算される広帯域CMDの時間変化を示す。比較のため、個々のセルセクタの広帯域CMDは、図9に示される。
【0092】
図9から、200個の時間サンプルの期間において、セルセクタ1の個々のチャネル行列を使用して計算された広帯域CMD(破線)は、セルセクタ2の個々のチャネル行列を使用して計算された広帯域CMD(破線及び交差線)よりも緩やかに変化する。連結されたチャネル行列を使用して計算された広帯域CMDの時間変化(実線)は、個々のセルセクタのチャネルの何れかを使用して計算されたものよりもずっと遅い。これは、連結されたチャネル行列の時間変化は、全ての調整されたJPセルセクタにおけるMIMOチャネルにより決定されることを示し、連結されるチャネル行列の時間変化は、最も迅速に時間変化するチャネルを有するセルセクタにおける時間変化よりもずっと遅い。
【0093】
モンテカルロシミュレーションを行うことで、図9に示されるものに類似するシミュレーション結果における考察は、協働するセルセクタの数が2である時間の約90%で発見される。例えば10個の協働するセルセクタといった協働するセルセクタの数が増加するとき、連結されるチャネルマトリクスが、非常に迅速に時間変化するMIMOチャネルを有するセルセクタにおける時間変化よりもずっと遅い時間変化を有する確率は、100%に近づく。
【0094】
図9に示されるシナリオについて、本発明が使用され、且つフィードバックの広帯域CMDの閾値が0.2に設定される場合、(連結されたチャネル行列を使用して得られた拡張CMDが0.2に到達することがないか又は0.2を超えることがないため)200個の時間サンプルの期間においてフィードバックを行う必要がない。しかし、(従来のように)固定されたフィードバックの間隔の制御方法が両方のセクタについて使用される場合、セルセクタ1について不要なフィードバックのオーバヘッドを引き起こす、セルセクタ1の観点から望まれるよりも短いフィードバックの間隔につながるか、又はセルセクタ2について適切なシステムパフォーマンスを提供するために必要とされるよりも長いフィードバックの間隔に繋がる可能性が高い。さらに、それぞれのセルセクタのフィードバック間隔がそれ自身の拡張CMD基準に基づいて個別に制御されるとしても、(個々のセルセクタ1の拡張CMDは0.2に到達しないので)この時間期間においてセルセクタ1においてフィードバックはないが、幾つかのフィードバックは、(個々のセルセクタ2の拡張CMDは約80の時間サンプルの後に0.2を超えるので)セルセクタ2において必要とされ、これは、全ての協働しているセルセクタの連結されたチャネル行列は、上述された広帯域CMDを計算するために使用されるこの実施の形態について説明された状況と比較して不要なオーバヘッドを引き起こし、200の時間サンプルの期間においてフィードバックの必要がない。
【0095】
従って、JP送信モードがグローバルプレコーディングと使用される場合、本実施の形態の広帯域CMDに基づく適応的なフィードバックの間隔の制御方法は、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの釣り合いの観点で改善されたパフォーマンスを提供することができる。多くの状況(すなわち、特に本発明がフィードバックを抑えるか、フィードバックがさもなければ行われたときにフィードバックしない場合、すなわち固定された又は個々にセル設定されたフィードバックの間隔のスキームが使用される場合)、これは、フィードバックのオーバヘッドにおける相当な節約を可能にする。ごく一般的な言い方をすると、これらの利益は、異なる協働しているセルセクタのフィードバックの間隔を適応的に制御するために使用される、広帯域CMDの計算において連結されたチャネル行列を利用することで達成される。上述されたMBSFNプレコーディングスキームを使用したJPダウンリンクの送信について、複数のセルセクタの送信機により同時に給仕されるUEにより受信された信号は、以下のように表される。
【数11】
ここで、x,n及びH(b)の定義は、式(X)で使用された定義と同じである。Hsumは、それぞれのセルセクタの送信機でNT個の送信機アンテナを想定して、Nr×NTである大きさをもつ合計チャネル行列である。Wは、そのサイズがNT×Lである全てのJPセルセクタについて共通のプレコーディング行列である。
【0096】
上述されたグローバルプレコーディングスキームの場合に類似して、MBSFNプレコーディングが使用されるWを更新するため、全てのJPセルセクタからのチャネル情報が必要とされる。この場合、広帯域CMDは、合計されたチャネル行列の時間変化の測度である。
【0097】
図10は、UEの速度が3km/hであり、且つJPセルセクタの数が2であると想定して、HSUMを使用することで生成される広帯域CMDと、それぞれのJPセルセクタのチャネル行列を個々に使用して計算された広帯域CMDとの比較を示す。200の時間サンプルの期間において、合計されたチャネル行列の時間変化は、セルセクタ2において迅速に時間変化するチャネルよりも、セルセクタ1において低速で時間変化するチャネルにより影響される傾向があり、合計されたチャネル行列の時間変化は、最も迅速に時間変化するチャネルをもつセルセクタの時間変化よりもずっと遅い。
【0098】
従って、グローバルプレコーディングによるJP送信の場合に説明されたのと類似の理由のため、JP送信モードがMBSFNプレコーディングと使用されル場合、本発明の広帯域CMDに基づく適応的なフィードバックの間隔の制御方法は、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの釣り合いの観点で、改善されたパフォーマンスを提供することができる。また、多くの状況において、これは、フィードバックのオーバヘッドにおける相当の節約を可能にする。ごく一般的な言い方をすると、これらの利益は、異なる協働しているセルのフィードバックの間隔を適応的に制御するために使用される、広帯域CMDの計算において合計されたチャネル行列を利用することで達成される。
【0099】
ローカルプレコーディング及び重み付けされたローカルプレコーディング送信スキームの場合、複数のセルセクタの送信により同時に給仕されるUEでの受信された信号は、以下のように表される。
【数12】
及び
【数13】
ここで、W(b)は、JPセルセクタbで採用されるNT×Lのローカルプレコーディング行列を表し、式(XIII)におけるD(b)は、それぞれのJPセルセクタの重み付け係数からなるL×Lのセルに固有の対角行列を表す。
【0100】
式(XII)及び(XIII)について、それぞれのセルセクタのプレコーディング行列W(b)又は重み付け行列D(b)を更新するため、上述されたCB送信スキームにおける場合に類似した単一のセルセクタのチャネルの状態情報が必要とされる。
【0101】
これら2つのJPプレコーディングスキームの両者について、本発明の広帯域CMDに基づく適応FIC方法は、CB/CSダウンリンク送信に関連して先に与えられたものと類似の理由のため、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの釣り合いの観点で改善されたパフォーマンスを提供する。さらに、多くの状況において(すなわち、本発明がフィードバックを抑えるか、フィードバックがさもなければ生じたときにフィードバックしない場合、すなわち固定されたフィードバックの間隔のスキームが使用される場合)、これは、フィードバックのオーバヘッドにおける相当な節約を可能にする。ごく一般的な言い方をすれば、これらの利点は、異なる協働しているセルのフィードバックの間隔を適応的に制御するために使用される、広帯域CMDの計算においてそれぞれ協働しているセルセクタのチャネル行列を利用することで達成される。
【0102】
この点に関して、様々なCoMPモードに含まれる異なる種類のMIMOチャネルの時間変化は、フィードバックのオーバヘッドを低減する、CoMPのフィードバックの間隔の制御スキームの多数のバリエーション(実施の形態)が提案されることに基づいて分析される。図11は、様々な提案される低減されたオーバヘッドの(すなわち適応的な)フィードバックの間隔の制御スキームが集合的に/一緒に実現される場合がある方法を総括する。
【0103】
図11に示されるように、ある送信モードに従う送信の開始であるステップ1102で、UEは、送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値βを受信する。送信モードのインジケータαは、送信において使用される特定の送信モードを示し、フィードバックの閾値βは、広帯域CMDの閾値を示し、この閾値を超えて、UEによるチャネルの状態情報のフィードバックが可能となる/フィードバックを行わせる。
【0104】
ステップ104で、UEは、送信モードのインジケータαが単一のセルセクタからの送信を示すかを判定する。送信モードが単一のセルセクタから送信を含むと判定された場合(ステップ104で“Yes”)、これは、非CoMP送信を示し(すなわちセル間干渉を低減するためにセルセクタ間で調整がない送信スキーム)、次いで、本方法は、ステップ1106に進む(本発明は非CoMPスキームで実現されることを述べることは重要である)。代替的に、送信モードは単一のセルセクタからの送信を含まないことが判定される(すなわちステップ1104)、これは、CoMP送信の幾つかの形式を示し、本方法は、ステップ1116に進む(以下を参照)。
【0105】
先に説明されたように、ステップ1104で、送信モードは単一のセルセクタからの非CoMP送信を含むことが判定され、本方法は、ステップ1106に進む。ステップ1106で、時間t0で給仕しているセルセクタの空間的なチャネル相関行列(すなわちRwd(s)(t0))と時間tで給仕しているセルセクタのチャネル相関行列(すなわちRwd(s)(t))は、時間tでの拡張CMDを計算するため(すなわちdwd_corr(t)=dwd_corr(Rwd(s)(t0),Rwd(s)(t)))に使用される。つぎに、ステップ1108で、UEは、拡張CMDの計算された値がステップ1102で受信されたフィードバックの閾値βに等しいか又は該フィードバックの閾値を超えるかを判定する。言い換えれば、ステップ108で、UEは、dwd_corr(t)≧βであるかを評価する。拡張CMDの値がフィードバック閾値に等しいか又は該フィードバック閾値よりも大きいと判定された場合(すなわちdwd_corr(t)≧β、従ってステップ1108で“Yes”)、UEは、チャネル状態情報を給仕しているセルセクタにフィードバックし(ステップ1110)、次いで基準となる空間的なチャネル相関行列を更新し(ステップ1112)、すなわちUEはRwd(s)(t0)及びRwd(s)(t)を設定する。次いで、本方法は、ステップ1114に進む。
【0106】
ステップ1108に戻り、(上記の選択肢において)拡張CMDの値がフィードバック閾値未満である場合(すなわちdwd_corr(t)<β、従ってステップ1108で“No”)、本方法は、ステップ1114にダイレクトに進む。
【0107】
ステップ1114で、基地局(すなわち給仕しているセルセクタ送信機)からの情報に基づいて、現在の送信モードを変えるか又は終了するかを判定する。現在の送信モードを変更又は終了しないと判定された場合(ステップ1114で“No”)、本方法は、次の時間サンプルのためにステップ1106から繰り返す。代替的に、現在の送信モードを変更又は終了すると判定した場合(ステップ1114で“Yes”)、本方法は終了し、次いで、同じ送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値β、又は異なるα及び/又はβに基づいて冒頭から再開する。
【0108】
先に説明されたように、ステップ1104で、送信モードが単一のセルセクタからの非CoMP送信を含むと判定された場合(すなわちステップ1104で“No”)、これは、CoMP送信の幾つかの形式を示し、本方法は、ステップ1116に進む。ステップ1116で、UEは、送信モードのインジケータαから、送信モードが、グローバルプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPと対応するかを判定する。対応する場合(すなわちステップ1116で“Yes”)、本方法は、ステップ1118に進む。さもなければ(すなわち、ステップ1116で“No”)、本方法は、ステップ1128に進む(以下を参照)。
【0109】
ステップ1118で、時間t0での連結されたチャネル行列Hcatを使用して計算される、時間t0での連結された空間的なチャネル相関行列、すなわちRwd_cat(t0)、及び時間tでの連結されたチャネル行列を使用して計算される、時間tでの連結された空間的なチャネル相関行列、すなわちRwd_cat(t0)は、時間tでの拡張CMDを計算する(すなわちdwd_corr(t)=dwd_corr(Rwd(s)(t0),Rwd(s)(t))を計算する)ために使用される。つぎに、ステップ1120で、UEは、拡張CMDの計算された値がステップ1102で受信されたフィードバックの閾値βに等しいか又はフィードバックの閾値を超えるかを判定する。拡張されたCMDの値がフィードバックの閾値に等しいか又はフィードバックの閾値よりも大きいと判定された場合(すなわちdwd_corr(t)≧β、従ってステップ1120で“Yes”)、UEは、全ての協働しているJPセルセクタにチャネルの状態情報をフィードバックし(ステップ1122)、次いで基準となる連結されたチャネルの相関行列を更新する(ステップ1124)。すなわちUEは、Rwd_cat(t0)=Rwd_cat(t)を設定する。次いで、本方法は、ステップ1126に進む。
【0110】
ステップ1120に戻り、(上記の選択肢において)拡張CMDの値はフィードバック閾値未満であると判定された場合(すなわち、dwd_corr(t)<β、従ってステップ1120で“No”)、本方法は、ステップ1126にダイレクトに進む。
【0111】
ステップ1126で、UEは、協働しているセルセクタからの情報に基づいて、現在の送信モードを変えるか又は終了するかを判定する。現在の送信モードを変えないか又は終了しないと判定した場合(ステップ1126で“No”)、本方法は、次の時間サンプルについてステップ1118から繰返す。代替的に、現在の送信モードを変えるか又は終了すると判定され場合(ステップ1126で“Yes”)、本方法は、終了し、同じ送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値β、或いは異なるα及び/又はβに基づいて、冒頭から再開する。
【0112】
先に説明されたように、ステップ1116で、UEは、送信モードのインジケータαから、送信モードがグローバルプレコーディングを使用したJPダウンリンクによるCoMPに対応するかを判定し、対応しないと判定した場合(すなわち、ステップ1116で“No”である場合)、本方法はステップ1128に進む。ステップ1128で、UEは、送信モードのインジケータαから、送信モードがMBSFNプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPに対応するかを判定する。対応すると判定した場合(すなわち、ステップ1128で“Yes”)、本方法は、ステップ1130に進む。さもなければ(すなわち、ステップ1128で“No”)、本方法は、ステップ1140に進む(以下を参照)。
【0113】
ステップ1130で、時間t0での合計されたチャネル行列Hsumを使用して計算された、時間t0での合計されたチャネルの相関行列、すなわちRwd_sum(t0)と、時間tでの合計されたチャネル行列を使用して計算された、時間tでの合計されたチャネルの相関行列、すなわちRwd_sum(t0)は、時間tでの拡張CMDを計算する(すなわち、dwd_corr(t)=dwd_corr(Rwd(s)(t0),Rwd(s)(t)))ために使用される。つぎに、ステップ1132で、UEは、拡張CMDの計算された値がステップ1102で受信されたフィードバック閾値βに等しいか又はフィードバック閾値を超えるかを判定する。拡張CMDの値がフィードバック閾値に等しいか又はフィードバック閾値よりも大きいと判定された場合(すなわち、dwd_corr(t)≧β、従ってステップ1132で“Yes”)、UEは、チャネルの状態情報をフィードバックし(ステップ1134)、次いで、基準のチャネル相関行列を更新する(ステップ1136)。すなわちUEは、Rwd_sum(t0)=Rwd_sum(t)を設定する。次いで、本方法は、ステップ1138に進む。ステップ1132に戻り、(先の選択肢において)拡張CMDの値がフィードバック閾値未満であると判定された場合(すなわちdwd_corr(t)<β、従ってステップ1132で“No”)、本方法は、ステップ1138にダイレクトに進む。
【0114】
ステップ1138で、UEは、現在の送信モードを変えるか又は終了するかを判定する。現在の送信モードを変えないこと又は終了しないことを判定した場合(ステップ1138で“No”)、本方法は、次の時間サンプルについてステップ1130から繰返す。代替的に、現在の送信モードを変えるか又は終了することを判定した場合(ステップ1138で“Yes”)、本方法は終了し、次いで、同じ送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値β、或いは、異なるα及び/又はβに基づいて冒頭から再開する。
【0115】
先に説明されたように、ステップ1128で、UEは、送信モードのインジケータから、送信モードがMBSFNプレコーディングを使用したJPダウンリンクの送信によるCoMPに対応するかを判定し、対応しないと判定した場合(ステップ1128で“No”)、本方法は、ステップ1140に進む。ステップ1140で、UEは、送信モードのインジケータαから、送信モードが、CB/CSダウンリンク送信によるCoMP、或いは、ローカル又は重み付けローカルプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPに対応するかを判定する。これらのうちの1つに対応する場合(ステップ1140で“Yes”)、本方法は、ステップ1142に進む。さもなければ(ステップ1140で“No”)、本方法は、送信モードが未知であるので終了する。
【0116】
ステップ1142で、時間t0でチャネル行列H(b)から計算された、時間t0でのそれぞれの協働しているセルセクタbの空間的なチャネル相関行列、すなわちRwd(b)(t0)と、時間tでそれぞれ協働しているセルセクタbの空間的なチャネル相関行列、すなわちRwd(b)(t)とは、時間tでそれぞれ協働しているセルセクタbの拡張CMDを計算するために使用される。つぎに、ステップ1144で、UEは、協働しているセルセクタの何れかの拡張CMDの計算された値がステップ1102で受信されたフィードバックの閾値βに等しいか又はフィードバックの閾値を超えるかを判定する。協働しているセルセクタbの拡張CMDの値がフィードバックの閾値に等しいか又はフィードバックの閾値よりも大きいと判定された場合(すなわち任意のセルセクタbについてdwd_corr(t)≧β、従ってステップ1144で“Yes”)、UEは、それぞれ係るセルセクタbについてチャネルの状態情報をフィードバックし(ステップ1146)、次いで、基準のチャネル相関行列を更新する(ステップ1148)。すなわち、UEは、Rwd(b)(t0)=Rwd(b)(t)を設定する。次いで、本方法は、ステップ1150に進む。
【0117】
ステップ1144に戻り、(先の選択肢において)全てのセルセクタbの拡張CMDの値がフィードバック閾値未満であると判定された場合(すなわち、全てのbについてdwd_corr(t)<β、従ってステップ1132で“No”)、本方法は、ステップ1150にダイレクトに進む。
【0118】
ステップ1150で、UEは、現在の送信モードを変えるか又は終了するかを判定する。現在の送信モードを変えないこと又は終了しないことを判定した場合(ステップ1150で“No”)、次の時間サンプルについてステップ1142から繰り返す。代替的に、現在の送信モードを変えるか又は終了することを判定した場合(ステップ1150で“Yes”)、本方法は終了し、次いで、同じ送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値β、或いは、異なるα及び/又はβに基づいて、冒頭から再開する。
【0119】
当業者であれば、本発明の提案されるフィードバックの間隔の制御スキームは、関連するCoMPモードに対応する関連する拡張CMDを生成するために所定のサブバンドのチャネル行列を使用することで、図8、図9及び図10に示されるものに類似の考察が得られるので、広帯域MIMOチャネルの所定のサブバンドについてチャネルの状態情報のフィードバックの間隔を制御することに適用可能であることを理解されるであろう。
【0120】
[パフォーマンス結果]
以下では、広帯域MIMOチャネル行列を使用することで生成されるシミュレーション結果により、提案されるフィードバックの間隔の制御スキームのパフォーマンスが評価される。パフォーマンス結果の説明は、2つのステージに分割される。ステージ1は、提案される適応的なフィードバックの間隔の制御方法を、固定されたフィードバックの間隔を使用して得られる結果と比較し、ステージ2は、様々なCoMPのシナリオにおける提案される適応的なフィードバックの間隔の制御スキームのパフォーマンスを分析する。ステージ1及び2が順に説明される。
【0121】
ステージ1:適応フィードバック制御−固定フィードバック制御
ステージ1における分析は、CBダウンリンク送信、或いは、ローカル及び/又は重み付けされたローカルプレコーディングによるJPダウンリンク送信の何れかによるCoMPスキームにおいて使用されたとき、提案される適応的なフィードバックの間隔の制御システムを考える。分析を実行するため、以下の提案される適応的なフィードバックの間隔の制御方法が使用される。
【0122】
a.時間t0で、それぞれ協働しているセルセクタの最初のチャネル情報は、ネットワークにフィードバックされ、時間t0でのそれぞれのセルセクタbの空間的な相関行列(すなわちRwd(b)(t0))は、基準として選ばれ、ついで、個々のセルセクタのその後の拡張CMDは、式(V)を使用して計算される。
【0123】
b.異なる時間サンプルでの個々のセルセクタの拡張CMDは、予め定義されたフィードバックの閾値βと比較される。任意の協働しているセルの拡張CMDが時間tでβよりも大きいか又はβに等しい場合、それらのセルセクタのチャネル情報は、その時間でのフィードバックにより更新される。その一方で、それらのセルセクタの基準の相関行列は、時間tでそれらの相関行列に更新される。
【0124】
c.手順a〜bは、繰返される。
【0125】
提案される適応的なフィードバックの間隔の制御スキームを固定的なフィードバックの間隔を使用したフィードバックスキームと比較するため、以下が実行される。
【0126】
(i)(適応的なフィードバックの間隔の制御方法の手順aと同じ)
(ii)固定された時間間隔δで、全ての協働しているセルセクタのチャネル情報は、フィードバックにより更新され、全ての協働しているセルの基準の相関行列は、期間δ毎に更新される。
【0127】
(iii)手順(i)〜(ii)が繰返される。
【0128】
先の手順を使用して実行されるシミュレーションについて、考慮される協働するセルセクタの数は4であり、UEの速度は3km/hであり、拡張CMDは、5個の時間サンプル、すなわちS=5を通して平均されるチャネルの相関行列に基づいて生成される。196個の時間サンプルでの拡張CMDは、それぞれのセルのセクタについてプロットされ、隣接する時間サンプル間の時間間隔は、1msである。δ及びβの値は、20及び0.2にそれぞれ設定される。固定及び適応方法のこれらのシミュレーションの結果は、図12及び図13にそれぞれ示される。
【0129】
図12と図13を比較して、固定的なフィードバックの間隔を使用することは、適応的なフィードバックの間隔の制御方法を使用するよりもはるかに多くのフィードバックのインスタンスに繋がる可能性がある。また、図12に示される結果において、フィードバックが実行される多くの回数での拡張CMDは非常に低い(確実に0.2の閾値未満)ので、多数のフィードバックは不要である。さらに、図12に示される結果において、チャネルの状態情報の更新は、十分に迅速ではない。これは、拡張CMDは、フィードバックが実行されたときに既に高いためである。
【0130】
対照的に図13に示される適応的なフィードバックの間隔の制御方法の結果では、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの良好な釣り合いが達成される。特に、図12に示される4つのセルセクタのフィードバックのインスタンスの全体数は、40であり、図13に示される提案される適応的なフィードバックの間隔の制御スキームを使用して同じ4つのセルセクタのフィードバックのインスタンスの全体数は11である。これは、73%のフィードバックのオーバヘッドの低減である。従って、提案される適応的なフィードバックの間隔の制御方法を使用して達成可能なフィードバックのオーバヘッドにおける低減は、著しい。重要なことに、提案される適応スキームは、システムの容量又はブロック誤り率(BLER)の観点でCoMPのパフォーマンスを低下することが期待されない。
【0131】
[ステージ2:様々なCoMPシナリオにおける提案される適応FICスキームのパフォーマンス]
図14は、様々なCoMPシナリオにおける提案される適応的なフィードバックの間隔の制御スキームのパフォーマンスを示す。図14のシミュレーション設定は、図13のそれと同じである。実際、図14に示される個々のセルセクタのそれぞれの時間ステップでの拡張CMDは、図13に示されるのと同じであり、上述されたように、拡張CMDは、CBダウンリンク送信によるCoMPスキーム、或いは、ローカル又は重み付けローカルプレコーディングを使用したJP送信によるCoMPスキームにおいて使用されたときに、提案されたフィードバックの間隔の制御システムに対応する。しかし、これに加えて、図14は、グローバルプレコーディング及びMBSFNプレコーディングをそれぞれ使用したJPダウンリンク送信によるCoMPスキームに対応する、4つのセルを使用した連結されたチャネル行列Hcat及び合計されたチャネル行列Hsumを使用して、それぞれの時間ステップで生成される拡張CMD値を示す。
【0132】
図14から、連結されたチャネル行列及び合計されたチャネル行列を使用することで、グローバルプレコーディング及びMBSFNプレコーディングをそれぞれ使用したJPダウンリンク送信によるCoMPスキームで必要とされるフィードバックのオーバヘッドは、更に低減される。例えば、これらの送信のシナリオの両者の4つのセルセクタのフィードバックインスタンスの全体数は4であり、上述された固定フィードバック間隔のスキームに比較して90%のフィードバックのオーバヘッドの低減となる。従って、それぞれ個別の協働するセルセクタにおける固定的なフィードバックの間隔を使用したスキームに比較して、提案されるスキームは、フィードバックのオーバヘッドを大幅に節約することができ、異なるCoMPのシナリオの範囲における適用のために適合される。
【0133】
図14に示されるパフォーマンス結果は、UEの速度が3km/hである、様々なCoMPの低移動度のシナリオに対応する。対照的に、図15は、UEの速度が30km/hである、様々なCoMPの中移動度のシナリオにおける提案されるスキームのパフォーマンスを示す。図15のシミュレーション設定は、UEの速度が増加するときにチャネルの時間変化が迅速であるために、16個の拡張CMD値のみをそれぞれのCoMPモードについてプロットして提案されるスキームのパフォーマンスを評価する点を除いて、図14のそれらと同じである。
【0134】
30km/hの移動度のシナリオにおける固定的なフィードバックの間隔の方法のシミュレーション結果は、図15に与えられるものと比較するために図16に示される。図16に示されるシミュレーション結果について使用されるδの値は2である。
【0135】
図15から、30km/hの移動度のシナリオについて、異なるCoMPモデルの相対的なパフォーマンスは、3km/hの移動度のシナリオのそれに類似する。16の時間サンプルの期間において、CBダウンリンク送信によるCoMPについて、或いは、ローカル又は重み付けローカルプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPについて、4つのセルセクタのフィードバックインスタンスの全体数は7である。さらに、グローバルプレコーディング又はMBSFNプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPについて、4つのセルセクタのフィードバックインスタンスの全体数は4である。従って、提案されるスキームは、フィードバックインスタンスの全体数が36である固定フィードバック間隔スキームにおけるフィードバックのオーバヘッドに比較して、81%及び89%のフィードバックのオーバヘッドの低減となる。従って、提案されるスキームは、様々なCoMPの中移動度のシナリオにも適用可能である。
【0136】
先に記載された本発明の態様又は実施の形態の何れかにおいて、様々な特徴がハードウェアで実現されるか、又は1以上のプロセッサで実行するソフトウェアモジュールとして実現される。1態様の特徴は、他の態様の何れかに適用される。
【0137】
また、本発明は、本明細書で記載された方法の何れかを実行するコンピュータプログラム又はコンピュータプログラムプロダクト、本明細書で記載された方法の何れかを実行するプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【0138】
本発明を実施するコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶され、又は、例えばインターネットのウェブサイトから供給されるダウンロード可能なデータのような信号の形式であるか、或いは任意の他の形式である。
【0139】
様々な変形及び/又は変更が本発明の精神及び又は範囲から逸脱することなしに記載された特定の実施の形態に対してなされる場合がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関するものであり、より詳細には、セル間の送信の調整が存在するマルチセルの多入力多出力(MIMO)システムに関する。
【0002】
本発明は、3GPPLTE,3GPP LTE−A,IEEE 802.16及び802.11の規格のグループに準拠するシステムで実現されることが想定されるが、これらは単なる例であり、本発明は、マルチセルのMIMOシステムの他の形式においても同様に実現されることが明からに理解される。
【背景技術】
【0003】
[基礎技術]
この節は、所定の関連する技術に対する導入となる概要及び本発明が関連する分野に含まれる原理を与え、本発明の文脈を提供することに役立つものである。
【0004】
基地局(BS)の範囲にある加入者局(SS)又は移動局(MS)又はユーザ装置(UE)と基地局が通信する無線通信システムが広く知られている。用語「加入者局(SS)」、「移動局(MS)」及び「ユーザ装置(UE)」等は、本明細書において交換可能であることが考慮される。これらは、便宜的且つ限定されるものではないが、ユーザ又はUEと一般に呼ばれる。また、先の用語は、交換可能であると考慮されるが、用語「モバイル」は、特に、移動局、加入者局等(すなわち「ユーザ」又はUE)が常に移動可能である必要があることを必ずしも意味するものではないことが解釈されるべきである。多くの場合、確かに移動可能(例えばモバイルハンドセット)である。しかし、無線通信システム(及び本発明)は、ユーザが特定の位置に固定される場合にも動作する。
【0005】
(典型的には3である)1以上の基地局によりカバーされるエリア(すなわちそれらの基地局により給仕される地理学的な領域)は、セルと一般に呼ばれ、典型的に、多くの基地局(BS)は、隣接するセルと多かれ少なかれ継ぎ目なく広い地理的な領域をカバーするように、適切な位置に設けられる。それぞれのBSは、その利用可能な帯域幅、すなわち周波数及び時間のリソースを、ユーザの個々のリソースの割り当てに分割する。より多くのユーザ、より多くのデータ量の多いサービス及び/又は高いデータ伝送速度を収容するため、係るシステムの容量を増加し、リソースの利用の効率を改善する一定の必要性が存在する。
【0006】
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)は、無線通信システムにおいてデータを伝送する1つの公知の技術である。OFDMに基づく通信スキームは、多数の加入者の間で伝送されるデータシンボルを分割するものであり、従って用語「周波数分割多重」である。データは、その位相、振幅、又は位相と振幅の両者を調節することでサブキャリアで変調される。名前「OFDM」の「直交“Orthogonal”」の部分は、周波数領域におけるサブキャリアの配置が数学的な意味で他のサブキャリアに対して直交するように特に選択されるという事実による。言い換えれば、サブキャリアの配置は、隣接するサブキャリアのサイドバンドがオーバラップすることが許容され、サブキャリア間の干渉なしに受信されるように、周波数軸に沿って配置される。数学的な用語において、それぞれのサブキャリアの正弦波は、線形チャネルの固有関数と呼ばれ、それぞれ正弦波のピークは、それぞれ他の正弦波のゼロと一致する。これは、サブキャリアをシンボル期間の逆数の倍数で配置させることで達成される。
【0007】
個々のサブキャリア又はサブキャリアのセットが異なるユーザに割り当てられるとき、結果的に、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)と呼ばれる。当該技術分野で使用される用語「OFDM」は、OFDMAを含むことが意図されることがある。従って、2つの用語は、本発明の説明のために交換可能であることが考慮される。異なる周波数/時間リソースをセルにおけるそれぞれのユーザに割り当てることで、OFDMAは、所与のセルにおけるユーザの間で干渉を実質的に回避することができる。
【0008】
基本のOFDMスキームの更なる変更は、MIMO−OFDMと呼ばれ、MIMOは、多入力他出力を意味する。このタイプのスキームは、送信機と受信機との間で達成可能なデータ容量を改善するため、(両者であることがある)送信機及び/又は受信機で複数のアンテナを採用する。典型的に、これは、1以上の基地局とそれらの基地局により給仕されるユーザ装置(UE)との間の改善されたデータ容量を達成するために使用される。
【0009】
例により、2×2のMIMOコンフィギュレーションは、送信機での2つのアンテナと受信機での2つのアンテナを含む。同様に、4×4のMIMOコンフィギュレーションは、送信機での4つのアンテナと受信機での4つのアンテナを含む。送信機及び受信機にとって、同じ数のアンテナを採用する必要はない。典型的に、無線通信システムにおけるBSは、電力、コスト及びサイズの制限における違いのため、(例えばモバイルハンドセットのような)UEとの比較において多くのアンテナが設けられる。
【0010】
用語「チャネル」は、送信機と受信機との間の無線リンクの周波数(又は等価的に時間遅延)応答を説明するために使用される。いわゆるMIMOチャネル(又は“channel”)は全ての加入者を含み(先の加入者に関する説明を参照)、送信の全体の帯域幅をカバーする。MIMOチャネルは、多くの個々の無線リンクを含む。これらの個々の無線リンクの数は、1入力1出力(SISO)チャネル(サブチャネルと呼ばれることもある)と個別に呼ばれる場合があり、Nr×NTであり、この場合、NTは、送信機でのアンテナの数、Nrは、受信機でのアンテナの数である。例えば、3×2のMIMOアレンジメントは、6つのリンクを含み、従って6つのSISOチャネルを有する。
【0011】
図1に概念的に表される簡略化された2×3のMIMOシステムを考えると、受信機RのアンテナR0は、送信機Tの送信アンテナT0,T1及びT2のそれぞれからの送信を受ける。同様に、受信機のアンテナR1は、送信機のアンテナT0,T1及びT2からの送信を受信する。従って、受信機で受信された信号は、送信機のアンテナからの送信(すなわちSISOチャネル)の組み合わせを有する(又はから構成される)。一般に、SISOチャネルは、1以上のデータストリームを受信機に送信する様々なやり方で結合される。
【0012】
図2は、より一般化されたMIMOシステムの概念図である。図2では、送信機は、NT個の送信アンテナを利用して信号を送信し、受信機は、Nr個の受信アンテナを利用して送信機から信号を送信する。全体のMIMOチャネルの特性の数学モデルを作成するため、送信機と受信機との間の個々のSISOチャネルを表現することが必要である。図2に示されるように、個々のSISOチャネルは、H0,0〜HNr-1,NT-1により表現され、図で指摘されるように、これらは、チャネルマトリクス又はチャネル応答マトリクスHと一般に呼ばれるマトリクスの項を形成する。H0,0は、送信アンテナ0から受信アンテナ0に信号を伝送するチャネル特性(例えばチャネル周波数応答)を表すことが認識される。同様に、HNr-1,NT-1は、送信アンテナNT−1を受信アンテナNr−1に信号を送信するためにチャネル特性を表す。
【0013】
図2では、送信アンテナ0〜NT−1を使用して送信された信号エレメントを表すシンボルx0〜xNT−1は、送信信号ベクトルx(すなわちx=(x0,x1,x2,...,xNT−1)T)を互いに形成する。ここで()Tは、ベクトルの転置を示す。同様に、受信アンテナ0〜Nr−1により受信された受信信号ベクトルy0〜yNr-1は、受信信号ベクトルy(すなわちy=(y0,y1,y2,...,yNT−1)T)を互いに形成する。図2に示される(及び図3においても示される)簡略化されたシステムのベクトルyとベクトルxとの間の関係は、基本のMIMOシステムの式によりモデル化される。
【数1】
この場合Hは、上述されたチャネルマトリクスであり、nは雑音を表すベクトルである。雑音エレメントn0〜nNr−1は、図2に示され、それぞれの受信信号エレメントy0〜yNr−1における雑音を表す。従って、雑音ベクトルnは、n=(n0,n1,n2,...,nNT−1)Tにより与えられる。式(1)により与えられるモデルについて、ベクトルnにより表される雑音が平均ゼロと分散σ2をもつ付加白色ガウス雑音である。
【0014】
名前「多入力多出力」にかかわらず、MIMOシステムは、送信機と受信機のうちの一方が唯一のアンテナを有する場合でさえ(すなわちNT=1又はNr=1である場合でさえ)動作することができる。実際、MIMOシステムは、送信機と受信機の両者が唯一のアンテナを有する場合でさえ(すなわちNT=Nr=1である場合でさえ)動作すると技術的にいう場合があるが、この状況は、式(1)の数学モデルにおいて、MIMOチャネルがマトリクスHではなくスカラーにより表現されるため、特定の場合を構成することが考慮される。
【0015】
MIMO送信スキームは、「非適応的」及び「適応的」として記載される場合がある。非適応的な場合、送信機は、チャネル特性の情報を有さず、このことは、チャネルの状態において変化を生じさせる状態の変化を考慮しないので、性能を制限する。適応型のスキームは、受信機から送信機に情報(チャネルの状態情報又はCSI(Channel State Information))のフィードバックに依存し、状態の変化を考慮して、データのスループットを最大にするために送信信号の変更を可能にする。本発明は、これら適応型のMIMOスキームに主に関するものである。
【0016】
先に述べたフィードバックは、特にいわゆるFDD(周波数分割複信)システムにおいて重要であり、このFDDでは、アップリンク送信(すなわちユーザ装置から基地局への送信)とダウンリンク送信(基地局からユーザ装置への送信)において2つの異なる搬送波周波数を利用する。周波数の変化のため、アップリングチャネルとダウンリンクチャネルは異なり、CSIは、信号を送信するときに(チャネル状態における変化のような)チャネルの変動を考慮するため、送信機がいわゆる「適応変調“link adaptation”」を実行することができるように、適応的なスキームを提供するためにフィードバックされる必要がある。他方で、いわゆるTDD(Time Division Duplex)システムにおいて、アップリンク及びダウンリンクは、同じ周波数で2つの隣接するタイムスロットで送信される。2つのタイムスロットは、チャネルの状態が変化せず、従ってチャネルの状態情報がフィードバックされる必要がないことが道理的に想定されることを意味することを意味する、チャネルコヒーレンス時間内にある。送信機は、送信機によりパイロット又は既知の波形を逆方向リンクで送出された信号に挿入することで通常支援される、逆方向リンクでの受信信号からチャネル推定することができる。
【0017】
図3は、図1に示されるシステムに類似したMIMOシステムを表し、より一般化された図である。MIMOシステム1は、複数の送信アンテナ(0),(1),...,(NT−1)を有する送信機2と、複数の受信アンテナ(0),(1),...,(Nr−1)を有する受信機3とを有する。送信機2は、NT個の送信アンテナを使用してシンボル0,1,...,NT−1を送信する。シンボルは、垂直符号化(vertical encoding)と呼ばれる1つのデータストリーム、又は水平符号化(horizontal encoding)と呼ばれる異なるデータストリームから作成される。さらに、それぞれ送信されたシンボルは、例えば、変調方法が二位相偏移変調(BPSK: Binary Phase Shift Keying)である場合に1ビットデータに対応し、変調方法が直交位相偏移変調(QPSK)である場合に2ビットデータに対応する。これらの概念については、当業者であれば精通しているであろう。受信機3は、Nr個の受信アンテナを使用して送信機から送信された信号を受信し、受信機3は、受信された信号から送信シンボルを再生する信号再生ユニット4を備える。
【0018】
図3における矢印により示されるように、複数の送信アンテナから送信される信号は、複数の受信アンテナにより受信され、全体としてNr×NT個の可能性のあるサブチャネルを生じる。言い換えれば、送信アンテナ(0)から送信された信号は、受信アンテナ(0)〜(Nr−1)により受信され、送信アンテナ(1)から送信された信号は、受信アンテナ(0)〜(Nr−1)により受信される。i番目の送信アンテナからj番目の受信アンテナに信号を伝搬するサブチャネルの特性は、“Hji”として表現され、Nr×NTチャネルマトリクスHの1つのコンポーネントの項を形成する。
【0019】
更なる背景技術の説明として、MIMO−OFDM送信機とMIMO−OFDM受信機は、図4及び図5をそれぞれ参照して簡単に説明される。図4に概念的に示されるOFDM送信機において、高速の二進データは、(畳込み符号を例として)符号化され、インタリーブされ、(BPSK,QPSK,64QAM等のような変調スキームを使用して)変調される。独立のチャネルエンコーダは、それぞれの送信アンテナについて使用される。その後、データは並列の低速変調データストリームに変換され、この並列の低速変調データストリームは、M個のサブキャリアに供給される。それぞれのエンコーダからの出力は、複数のサブキャリアで個別に搬送される。変調信号は、M点逆離散フーリエ変換(IFFT)により周波数分割多重化され、ガードインターバルが付加される。結果として得られるOFDM信号は、D/Aコンバータによりアナログ信号に変換され、RF帯域にアップコーバートされ、無線で送信される。
【0020】
図5に概念的に示されるMIMO−OFDM受信機で、Nr個の受信アンテナからの受信信号は、帯域通過フィルタ(BPF)によりフィルタリングされ、ついで低周波にダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた信号は、A/Dコンバータによりサンプリングされ(すなわちデジタル信号に変換され)、サンプリングされたデータがM点高速フーリエ変換(FFT)に供給される前にガードインターバルが除去される。Nr個の受信アンテナにより受信された信号のそれぞれにフーリエ変換が施された後、MIMO信号処理ユニット11に供給される。MIMO信号処理ユニット11は、チャネル特性を保証する処理を行う(図3に示される)信号再生ユニット4を有する。
【0021】
送信機(図4)及び受信機(図6)の先の説明は、概略的な説明のみにより与えられた。当業者であれば、係る装置及びそれらの動作に関わる原理に精通しているであろう。
【0022】
なお、説明のため、先の説明は、単一の受信機にMIMO信号を送出する単一の送信機の場合に主に焦点を当てているが、勿論、実際のMIMO無線通信システムは、これよりも複雑であり、基地局が1以上のユーザ/UEに同時にそれぞれのMIMOチャネルを送信する多くの相互に隣接するセルを提供する。実際に、本発明は、以下に説明されるように、これらのより複雑なシステムに向けられ、それらのシステムに関連して生じる。
【0023】
[発明の背景]
先に説明されたように、周波数のリソースが従来のOFDMA−MIMOスキームで利用される手段は、所与のセルにおけるユーザ間の干渉を防止するか又は実質的に制限する。言い換えれば、セル内の干渉が実質的に回避される。しかし、先のパラグラフで説明されたより複雑なマルチセルネットワークにおいて、OFDMA及びMIMO送信の利益は、セル間環境により制限されることがある。
【0024】
セル間干渉は、例えば、あるセルにおけるユーザへのデータの送信において基地局により利用される周波数のリソース(すなわちキャリア及びサブキャリア)が、隣接セルにおけるユーザへのデータの送信において基地局により利用される周波数のリソースと同じであるために生じる。言い換えれば、本発明が使用を見い出す場合がある無線通信システムにおいては、当該技術分野における技術を使用して、隣接セル間の1:1の周波数の再使用となる可能性がある。この影響は、いわゆるセル間の境界近くに位置する「セルエッジユーザ」にとって特に重要である。「セルエッジユーザ」にとって、そのユーザに現在給仕しているある基地局への距離は、隣接セルにおける基地局への距離と大まかに同じであるか、又は僅かに異なる。結果として、セルのエッジ近くのユーザの視点から、給仕している基地局から受信された信号強度は、セルエッジユーザにより見たときに、隣接セルにおける基地局からの信号強度よりも僅かに強いか、又は近似的に同じである。そして、共通の周波数のリソースが隣接セルにおいて使用されるため(すなわち隣接セルにおいて実質的に同じ送信周波数が同時に使用されるため)、隣接セルにおいて送信されている信号は、セルエッジユーザに送信されているデータと干渉することがある。
【0025】
この問題に対処するために提案されている1つの方法は、セル間環境を除去又は低減するために複数の基地局間でMIMO送信を調整(すなわち隣接セル又は近くのセルにおける送信を調整)することである。この調整を達成するために採用される技術の完全な説明は、この説明の目的のために必要ではない。この目的について、この調整は、調整されたセル(又は調整されたセルの部分)間のセル間干渉を低減又は除去することができ、これにより、高データレートのカバレッジ、セルエッジのスループット及び/又は全体のシステムスループットにおける大幅な改善となることを述べることで十分である。しかし、この改善のトレードオフは、マルチセルMIMOシステムにおける送信の調整はチャネルの状態情報(CSI)及びデータ情報が調整された基地局間で共有されることを要求する。これは、システムの送信及びデータ容量のリソースへの大幅な更なる負荷となる。特に、FDDシステムについて、基地局のチャネルの情報は、ユーザ装置(UE)のフィードバックにより主に取得される。複数のセル(又は複数のセルのセクタ)が調整された送信に参加するので、フィードバックされるために必要とされるチャネルの情報量は、協働するセル(cooperating cells)の数(又は協働するセルのセクタの数)と共に線形に増加する。これはアップリンクチャネルに重い負荷を課すことが理解される。
【0026】
先のパラグラフで説明されたように、(調整されるマルチポイント送信/受信又はCoMPとも呼ばれる)調整される複数のセルのMIMO送信/受信は、高データレートのカバレッジ、セルエッジのスループットを改善し、及び/又はシステムのスループットを増加するために使用される。CoMPで使用されるダウンリンクスキームは、以下の2つのカテゴリに含まれると考えられる。
・「調整されたスケジューリング(Coordinated Scheduling)及び/又は調整されたビーム成形(Coordinated Beamforming)(CS/CB)」
・「共同処理(Joint Processing)/共同送信(Joint Transmission)(JP/JT)」
ちなみに、当業者であれば、指向性の信号送信及び/又は受信を支援する建設的及び破壊的な干渉を利用する信号処理技術である、ビーム成形の基礎及び基本原理に精通しているであろう。従って、ビーム成形の更なる説明は、ここでは必要とされない。
【0027】
CS/CBでは、単一のUEへのデータは、ある送信ポイントから即座に送信されるが、ユーザスケジューリング(すなわち、それぞれのユーザに送信のタイミングのスケジューリング)に関する判定、及び/又はビーム成形の判定は、協働するセル(又はセルのセクタ)間の調整により行われる。言い換えれば、スケジューリング/ビーム成形の判定は、調整されたスキームに参加しているセル(又はセルのセクタ)間の調整により行われる。
【0028】
他方で、JP/JTにおいて、単一のUEへのデータは、(コヒーレント又は非コヒーレントに)受信された信号の品質を改善し、及び/又は他のUEの干渉をキャンセルするため、複数の送信ポイントから同時に送信される。
【0029】
図6は、図6におけるセルの分布に関して基地局が示される方式が、実際の無線通信システムの実現における基地局の向かい合うセルの真の分布を正確に反映していないが、CoMPで使用されるダウンリンク送信の2つの上述されたカテゴリの動作原理を概念的に示す。しかし、図6は、CoMPで使用される、CS/CB及びJPダウンリンクの送信スキームの原理を説明するために十分である。
【0030】
共同処理(JP)は、図6(a)において表されており、図6(a)において、セルA,B及びCがUEに積極的に送信し、セルDがセルA,B及びCにより使用される送信インターバルの間に送信しない。
【0031】
調整されたスケジューリング及び/又は調整されたビーム成形(CS/CB)は、図6(b)に表されており、図6(b)において、協働セルの間の同一チャネルのセル間干渉が低減又は除去されるように、セルBのみがデータをUEに積極的に送信し、ユーザのスケジューリング/ビーム成形の判定は、セルA,B,C及びSの間の調整により行われる。
【0032】
CoMPの動作において、UEは、チャネルの状態情報をフィードバックする。チャネルの状態情報は、詳細にわたることがあり、1以上のチャネルの状態/統計情報、狭帯域のSINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)等のうちの1以上の測定値を含むことがある。チャネルの状態情報は、チャネルの空間構造及び他のチャネルに関連するパラメータに関連する測定値を含む。
【0033】
先に説明したように、チャネルの状態情報のフィードバックにより、チャネルの状態の変化を考慮し、データのスループットを最大にするため、送信信号の変更(典型的に送信前の基地局による変更)が可能となる。より詳細には、このフィイードバックは、この基地局でのプレコーダ設計、適応変調及びスケジューリングを実行するために行われることがある。また、先に説明されたように、FDDシステムについて、フィードバックされるために必要とされるチャネル情報の量は、協働するセル(又はセルのセクタ)の数に線形に増加し、これにより、特にアップリンクチャネルについて重い更なる負荷が形成される。
【0034】
さらに、ハイパフォーマンスのCoMP送信スキームは、期限が経過しているチャネル情報に非常に感度が高いことがある。従って、CoMPの利益は弱められるか、又は、例えばUEの速度が120km/h以上であるような高い移動度のシナリオにおいて実現可能ではない場合がある。これは、係る高速度について最適又は良好にCoMPが機能するのを可能にするフィードバック要件を満たすことが困難であるためである。従って、本発明は、例えばUEが約30km/hまでの速度をもつような低速及び中速のシナリオにおけるCoMPの環境において典型的に実現されることが想定される。しかし、この点について厳密な制限はなく、おそらくフィードバック要件により課される課題に係らず、又は満足するのを容易にするフィードバック要件を最小にするか又は効率化するための手段が考え出された場合、本発明は高い移動度のシナリオで実現されることが明らかに理解される。
【0035】
この節の残りは、チャネルの状態情報のフィードバックに関連する先に提案された方法及び他の開示について説明する。
【0036】
中国特許CN101415229号は、空間分割多元接続システムにおける制限されたフィードバック制限に基づいてチャネルの状態情報(CSI)をフィードバックする方法を記載している。本方法は、量子化誤差の閾値及びチャネルゲインの閾値を使用して、CSIをフィードバックすべきユーザを選択する。
【0037】
国際特許出願PCT/US2008056579は、無線通信システムにおけるCQI(チャネル品質指標/インジケータ)フィードバック情報における冗長度を低減するため、受信機でCQIフィードバックを圧縮するシステム及び方法を提示する。周波数領域でCQIを圧縮するため、この文献における主要な考えは、そのCQIが最も変化したサブバンドのCQIをフィードバックすることであり、時間領域でCQIを圧縮することである。離散コサイン変換は、CQIに関して実行される。
【0038】
台湾特許TW274482号では、フィードバックレートを低減するためのMIMO−OFDMシステムで適用される方法が開示される。主要な提案は、周波数帯域の一部についてCSIをフィードバックすることであり、次いで全ての周波数帯域のCSIは、フィードバックでの補間により表される。
【0039】
米国特許第7,359,470号は、MIMOシステムにおけるCSIについて最小のフィードバックレートを決定する方法を提案する。CSIの最近のフィードバックに基づいて、容量における期待されるパフォーマンスの損失を推定する方法が提案される。この方法は、推定される空間共分散情報に基づいて、期待されるパフォーマンスの損失を推定する。期待されるパフォーマンスの損失に関する推定を使用することで、期待される容量が予め決定された閾値よりも大きい最大の許容可能なチャネルフィードバック遅延が計算され、最大の許容可能なチャネルフィードバック遅延に基づいて、最小のフィードバックレートが導出される。
【0040】
欧州特許第1437854号では、無線通信システムにおける可変のチャネル品質のフィードバックレートは、基地局から移動局への送信の有無に基づいて提案される。
【0041】
米国特許第7050759号は、3つの個別のフィードバックのサブチャネルを使用することによるフィードバックのオーバヘッドを低減する方法を開示する。主要な考えは、それぞれのサブチャネルで搬送される情報は、チャネル状態を記憶する内部レジスタを選択的に更新するために基地局により個別に又は全体として使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明の1態様(又は1態様の少なくとも1つの実施の形態)は、概して、多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおいて使用される方法である。MIMO無線通信システムにおいて、それぞれのセルが、1以上のユーザに信号を送信し、1以上のユーザから送信される信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セルが設けられ、ユーザは、関連する基地局に、関連する基地局とそのユーザとの間のチャネルに関連するチャネルの状態情報をフィードバックし、基地局は、チャネルの変動を考慮して、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を適合させる。本方法は、チャネルの空間構造における時間変動に関連する情報を取得するステップ、及びチャネルの空間構造における時間変動に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節するステップを含む。
【0043】
本発明の別の態様(又は別の態様の少なくとも1つの実施の形態)は、概して、多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおける使用向けのユーザ装置である。MIMO無線通信システムにおいて、それぞれがユーザ装置(及び他のユーザ装置)に信号を送信し、ユーザ装置から信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セル又はセルのセクタが設けられ、ユーザ装置は、関連する基地局とユーザ装置との間のチャネルに関連するチャネルの状態情報を関連する基地局にフィードバックし、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザ装置(及び/又は他のユーザ装置)への送信のために基地局が信号を適合させるのを可能にし、チャネルの空間構造における時間変動に関連する情報を取得し、チャネルの空間構造における時間変動に基づいて、チャネルの状態情報がフィードバックされるタイミングを調節する。
【0044】
本発明の更に別の態様(又は更に別の態様の少なくとも1つの実施の形態)は、概して、多入力多出力(MIMO)無線通信システムである。MIMO無線通信システムにおいて、それぞれが1以上のユーザに信号を送信し、1以上のユーザから送信された信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セル又はセルのセクタが設けられ、1以上のユーザは、関連する基地局とそれぞれのユーザとの間のチャネルに関連するチャネルの状態情報を関連する基地局にフィードバックし、基地局は、チャネルの変動を考慮するため、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を適合させ、チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報が取得され、チャネルの空間構造における時間変化に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングが調節される。
【0045】
本発明の更なる態様(又は更なる態様の少なくとも1つの実施の形態)は、概して、先のパラグラフに記載された多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおける使用向けの基地局にある。基地局は、チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータの閾値を1以上のユーザに送信し、1以上のユーザは、パラメータを連続して計算し、パラメータが閾値の等しいか又は閾値を超えるときに、チャネルの状態情報を基地局に、及び/又は1以上の他の基地局にフィードバックする。
【0046】
一般に、それとは反対に明らかな意図がない場合には、本発明の1態様に関して記載される特徴は、同様に、組み合わせが本明細書において明示的に言及又は記載されないとしても、他の態様と組み合わせて適用される場合がある。
【0047】
通常、MIMO無線通信システムでは、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックする時間間隔は固定されており、又は、別のセルに対してあるセル(又はセルのセクタ)において使用される異なるフィードバック時間間隔が存在する場合、それぞれの係る時間間隔は、他のセル/セクタにおける間隔を参照することなしに典型的に選択される。しかし、先に説明されたように、CoMPにおいて、セル間において調整があり、実際に、先に説明された共同処理(JP)ダウンリンクの送信スキームの場合、単一のUEへのデータは、複数の送信ポイントから同時に送信される。従って、従来の固定された又は独立に設定されたフィードバック間隔は、CoMPの環境における使用向けに適切ではない。
【0048】
本発明の有利な特徴の1つは、チャネルの状態情報のそれぞれのフィードバック間の時間間隔の長さは、MIMOチャネルの時間変化の特性(すなわちチャネルの特性が時間的に変化するやり方)、特に、MIMOチャネルの空間構造における時間変化を考慮して決定される。この重要性を理解するため、高速に時間変化するMIMOチャネルについて、本発明は、フィードバック間隔が短くされるのを可能にし、より低速に時間変化するMIMOチャネルについて、フィードバック間隔を長くされるのを可能にすることが理解される。これは、MIMOチャネルの状態(及び特に空間構造)が時間的に迅速に変化し、チャネルの状態情報が関連する基地局に十分に頻繁に送出されない場合に、適応変調等を行うために基地局が使用する情報が時代遅れ且つ不正確となり、これがシステムパフォーマンスに悪影響を及ぼす状況を低減するか、又は回避するために役立つ。他方で、MIMOチャネルの状態(及び特に空間構造)が時間的に低速に変化する場合、効率的な適応変調等を達成するために必要なよりも迅速にチャネルの状態情報をフィードバックすることで、不要な送信負荷が形成される状況が低減されるか、又は回避される。従って、本発明は、一方で高速に時間変化するMIMOチャネルにおいて満足するパフォーマンスを達成するために必要とされる十分に迅速なフィードバックを可能にし、アップリンクのオーバヘッドに不要な負荷を形成するように迅速にフィードバックすることがない、適応的なフィードバック間隔の制御が実行されるのを可能にする。言い換えれば、本発明は、フィードバックの負荷とシステムのパフォーマンスとの間で適切なバランスを達成するのに役立つ。本発明は、様々なCoMP送信モードに従って動作するシステムにおいて、このバランスを達成するのに役立つ。
【0049】
上述の説明から明らかであるように、本発明は、多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおける基地局とユーザとの間の信号信号に関する。基地局は、係る信号を送信及び受信するために適切な形式を取る。基地局は、3GPP LTE,3GPP LTE−A,IEEE 802.16及び802.11規格のグループにおける実現について提案される形式を取り、従って異なる状況において必要に応じてNodeB又はeNodeB(eNB)として記載される。しかし、この点について特に限定されるものではないことは明らかに理解される。確かに、本発明の機能的な要件に依存して、一部又は全部の基地局は、ユーザからの信号を送信及び受信し、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいてユーザへの送信のために信号を適合するために適した他の形式を取る場合がある。
【0050】
同様に、本発明では、それぞれのユーザは、基地局からの信号を送信及び受信するために適した形式を取る場合がある。例えば、ユーザは、加入者局(SS)、又は移動局(MS)、ユーザ装置(UE)、又は他の適切な固定された位置又は移動可能な形式である。本発明を可視化するため、モバイルハンドセットとしてのユーザ(及び多くの例では少なくとも幾つかのユーザはモバイルハンドセットを有する)を想像することは便利であるが、この点について限定されるものではない。ユーザは、3GPP LTE,3GPP LTE−A,IEEE 802.16及び802.11規格のグループと互換性のある形式をとる場合があるが、この点について限定されるものではない。
【0051】
無線通信システムでは、互いに関して基地局の配置は、セル(及びセルのセクタ)のレイアウトを定義する。本発明は、特定の基地局の配置又はセルのレイアウトに必ずしも限定されるものではない。本発明の所定の好適な実施の形態は、セルに対する基地局の配置はセル当たりの3つのセルのセクタを定義する六角形のセル構成を参照して以下に記載される。しかし、他の構成の範囲も可能である。
【0052】
先に説明されたように、本発明では、ユーザは、関連する基地局にチャネルの状態情報をフィードバックするように適合される。また、本発明は、マルチセルのMIMO送信及び受信に主に関し、特にいわゆる調整されたマルチポイント(CoMP: Co-ordinated MultiPoint)スキームに関する。説明されるように、異なるCoMPスキームにおいて異なるダウンリンクモードが使用される。これは、異なるCoMPスキームで使用された異なるダウンリンクモードが異なるフィードバックモードを必要とするために重要である。
【0053】
異なるダウンリンクCoMPモードのサポートで使用されるフィードバック方法は、この業界における議論及び交渉の主部である。結果として、(例えば3GPP LTE−A等に準拠するシステムのような)少なくとも所定の種類の無線通信システムに関して、以下の3つのカテゴリに含まれるCoMPフィードバックメカニズムが利用される。
・明示的なチャネルの状態/統計的な情報のフィードバック、
・暗黙的なチャネルの状態/統計的な情報のフィードバック、
・SRS(Sounding Reference Signal)のUE送信は、チャネルの相互関係を利用することで、基地局でのCSI推定のために使用される。
【0054】
これらの3つのフィードバックメカニズムのうち、最初の2つは、FDDシステムを主にターゲットとしており、3番目は、TDDシステムをターゲットとしている。先に説明された理由のため、本発明は、FDDシステムを特に狙いとしており、ダウンリンクのCoMPのサポートにおいてフィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの間の適切なバランスを達成する。
【0055】
先のフィードバックメカニズムの第一のカテゴリ(明示的なチャネルの状態/統計的な情報のフィードバック)において、フィードバックされるチャネルの状態情報は、送信機又は受信機の処理を想定することなしに受信機により観察される。対照的に、第二のフィードバックメカニズムのカテゴリ(暗黙のチャネルの状態/統計的な情報のフィードバック)は、例えばチャネル品質指標(CQI: Channel Quality Index)、プレコーディングマトリクス指標(Precoding Matrix Index)、チャネルマトリクスに関するランク情報(RI: Rank Information)に関連する、異なる送信及び/又は受信の前提を使用する。
【0056】
しかし、誤解を避けるため、本発明は先の(又は他の)フィードバック方法又はメカニズムの何れかに必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明が実現されるシステムで使用されるダウンリンクモードが与えられると、適切なフィードバックメカニズムが使用される。チャネルの状態情報でフィードバックされるか、チャネルの状態情報の一部としてフィードバックされる情報の種類は、BER(Bit-Error Rate)、CBER(Channel BER)、CNR(Carrier to Noise Ratio)、SINR(Signal to Interference Noise Ratio)、MER(Modulation Error Ratio)及び、チャネルの空間構造に関する他の統計的な情報又は他の情報、及び/又は、チャネルマトリクス情報、空間相関マトリクス情報、PMI、RI及びコードブックのような時間変化を含む。これらは例であり、他の量、又は異なる形式で与えられる類似の量を送信することもできる。
【0057】
本発明では、基地局は、チャネル変化(特にチャネルの空間構造における変化)を考慮し、データのスループットを最大にするため、フィードバックされるチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を適合させることが好ましい。より詳細には、基地局は、プレコーダ設計及び適応変調を実行することが好ましい。プレコーダの設計及び適応変調の詳細は、本発明の説明の範囲外である。
【0058】
重要なことに、本発明の様々な態様に置いて、本発明は、チャネルの状態における時間変化に関連する情報を取得し、チャネルの状態における時間変化に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節する。特に、本発明は、チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報を取得し、チャネルの空間構造における時間変化に基づいてユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節する。チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報は、多種多様な形式をとり、それらの全ては、本発明の範囲に含まれると考えられる。好適な実施の形態では、チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報は、チャネルマトリクス情報、空間相関マトリクス情報、PMI、固有値及び固有ベクトルである。
【0059】
本発明の幾つかの実施の形態では、チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータが定義される。好ましくは、パラメータは、チャネルの空間構造における時間的な変化の程度を示す。幾つかの例では、変化の速度を表すと考えられる。パラメータは、異なる状況においてスカラーベクトル、マトリクス又はテンソルである場合がある。
【0060】
当業者であれば理解するように、チャネルの状態における変化は、ある理由により生じる。例えば、チャネルの空間構造における変化は、チャネルへのドップラ効果により生じる場合がある。この例では、同じユーザと異なる基地局との間のチャネルのドップラスペクトルは異なる場合があるので、異なる送信セルのセクタにおけるチャネルは、異なる時間変動を受ける。チャネルの状態及びチャネルの空間構造における時間変化の他の原因は、当業者により良好に理解されるであろう。
【0061】
好適な実施の形態では、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングの調節は、上述されたパラメータの閾値を定義し、連続する回数(典型的に周期的)でパラメータを計算し、パラメータが閾値に等しいか又は閾値を超えるとき、1以上の基地局にチャネルの状態情報をユーザにフィードバックさせるか、ユーザのフィードバックを可能にする。適切に、パラメータの計算において、1以上のチャネルについてチャネルマトリクスが使用される。好ましくは、閾値は、ルックアップテーブルに記憶され、基地局又はユーザ装置で、シミュレーションにより取得されることが好ましい。
【0062】
幾つかの特定の実施の形態では、1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、調整されたスケジューリング(CS)、調整されたビーム成形(CB)、ローカルのプレコーディングによる共同処理(JP)、又は重み付けされたローカルのプレコーディングによる共同処理(JP)のうちの1つを含む。これらの実施の形態は、調整されたセル、又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネルマトリクスを使用して、前記セル又はセルの一部のそれぞれについて前記パラメータを計算すること、そのセル又はセルの一部のパラメータが閾値に等しいか又は閾値を超えるときに、セル又はセルの一部の基地局にチャネルの状態情報をユーザにフィードバックされるか、又はユーザフィードバックを可能にすることを含む。
【0063】
他の特定の実施の形態では、1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、グローバルプレコーディングによる共同処理(JP)を含む。これらの他の実施の形態は、調整されたセル又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネルマトリクスから連結されたチャネルマトリクスを計算すること、連結されたチャネルマトリクスを使用して前記パラメータを計算すること、パラメータが閾値に等しいか又は閾値を超えるときに、調整されたセル又はセルの一部の基地局に、チャネルの状態情報をユーザにフィードバックされるか又はユーザフィードバックを可能にすることを含む。
【0064】
なお更に特定の実施の形態では、1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、MBSFNプレコーディングによる共同処理(JP)を含む。更なる実施の形態は、調整されたセル又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネルマトリクスから合計されたチャネルマトリクスを計算すること、合計されたチャネルマトリクスを使用して前記パラメータを計算すること、パラメータが閾値に等しいか又は閾値を超えるとき、調整されたセル又はセルの一部の基地局にチャネルの状態情報をユーザフィードバックさせるか又はユーザのフィードバックを可能にすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1〜図6は、本明細書に関連して、本発明に対する背景技術を説明する。残りの図は、本発明の所定の特徴、態様及び動作を説明する。しかし、図面は、説明のために、理解を支援するためにのみ与えられ、本発明は、必ずしも、図示される背景情報、特徴又は態様又はこれらの一部に限定されず、また、図面を参照して記載される背景情報、特徴又は態様又はこれらの一部に限定されないことを理解されたい。
【図1】簡略化された2×3のMIMOシステム、及びそれぞれ送信機のアンテナと受信機のアンテナとの間の個々のSISOチャネルを例示する図である。
【図2】送信機がNT個の送信アンテナを有し、受信機がNr個の受信アンテナを有する一般化されたMIMOシステム、受信アンテナにより受信された信号に雑音が導入されることを例示する図である。
【図3】図1に与えられるシステムに類似し、一般化されたMIMOシステムに関連するシステムを例示する図である。
【図4】MIMO−OFDM送信機の所定の重要な機能コンポーネントを例示する図である。
【図5】MIMO−OFDM受信機の所定の重要な機能コンポーネントを例示する図である。
【図6】(a)は、CoMPで使用される、いわゆる共同処理(JP)のダウンリンク送信の動作原理を例示する図である。(b)は、CoMPで使用される、いわゆる調整されたスケジューリング及び/又はビーム成形(CS/CB)のダウンリンクの送信の動作原理を例示する図である。
【図7】基地局、セル及びセルの一部(セクタ)が本発明が適用可能な種類の無線通信システムに分布される1つの方法を例示する図である。基地局及びセル等は代替となる無線通信システムにおいて他の方法で分布される場合があり、本発明は係る他の代替的なスキームにおいても同様に適用される。言い換えれば、本発明は、セル/基地局/セルセクタの分布の配置の特定の形式に限定されるものではない。
【図8】CB/CSダウンリンクの送信を使用したCoMPスキームにおいて、3km/hのUEの速度を想定したときの、UEと2つの異なるセルのセクタの送信機との間で生成される広帯域CMDの比較を示す図である。
【図9】グローバルプレコーディングによるJPダウンリンクの送信を使用したCoMPスキームにおいて、2つの協働するセルのセクタからの連結されたチャネルマトリクスを使用して計算された広帯域CMDの時間変化を示す図である。
【図10】MBSFNプレコーディングによるJPダウンリンクの送信を使用してCoMPスキームにおいて、2つの協働するセルのセクタからの合計されたチャネルマトリクスを使用して計算された広帯域CMDの時間変化を示す図である。
【図11a】提案される低減されたオーバヘッドのフィードバック間隔の制御スキームの様々な実施の形態が集合的/全体的に実現される方法を例示するフローチャートである。
【図11b】図11bに続く、提案される低減されたオーバヘッドのフィードバック間隔の制御スキームの様々な実施の形態が集合的/全体的に実現される方法を例示するフローチャートである。
【図12】固定されたフィードバック間隔のスキームが使用される4つのセルのセクタの広帯域CMD値を示すシミュレーション結果のプロットである。
【図13】CB/CSダウンリンク送信によるCoMPシステム、或いはローカル又は重み付けされたローカルプレコーディングを使用したJPダウンリンクの送信によるCoMPシステムにおいて提案されるフィードバック間隔の制御スキームが使用される、4つの調整されたセルセクタの広帯域CMD値を示すシミュレーション結果のプロットである。
【図14】図13に類似するが、グローバルプレコーディング及びMBSFNプレコーディングを使用してJPダウンリンクの送信によるCoMPスキームにおいて提案されるフィードバックインターバルの制御スキームが使用される、4つの調整されたセルの広帯域CMD値を示す図である。
【図15】図14に対するシミュレーション結果を示すが、低い移動度のシナリオに関する中間の移動度のシナリオについてのシミュレーション結果を示す図である。
【図16】固定されたフィードバック間隔のスキームが中間の移動度のシナリオで使用される、4つのセルセクタについて広帯域CMD値を示すシミュレーション結果のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
先に説明されたように、本発明は、チャネルの状態が時間的に変化するやり方に基づいて、1以上のUEがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節する。好適な実施の形態では、フィードバックの間隔は、チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータに基づいて適応的に変更される。
【0067】
以下で記載される本発明の特定の好適な実施の形態では、この目的のために選択されるパラメータは、「拡張された相関行列の距離(extended Correlation Matrix Distance)」又は「広帯域の相関行列の距離」(すなわち拡張CMD又は広帯域CMD、これらの用語は、交換可能であると考えられる)と呼ばれ、記号dwd_corrにより表される。しかし、先に述べたように、本発明は、この特定のパラメータの使用に必ずしも限定されるものではなく、本発明の他の実施の形態は、チャネルの状態における時間変化又はチャネルの空間構造における時間変化に関連する他のパラメータを使用するか、或いは、チャネルの状態又は空間構造における時間変化に基づいてフィードバックの間隔を調節する他の手段を使用して代替的に動作することができる。
【0068】
相関行列の距離として知られる量は、M. Herdin, N. Czink, H. Ozcelik及びE. Bonekによる文献“Correlation matrix distance, a meaningful measure for evaluation of non-stationary MIMO channels”, in IEEE VTC spring 2005, vol. 1, 2005, pp.136-140に記載されている。
【0069】
注記:上記文献で記載される相関行列の距離の基準は、「拡張CMD」/「広帯域CMD」のdwd_corrの基準のそれぞれの量がある観点において類似しているとしても、以下で記載される本発明の実施の形態で使用される「拡張CMD」/「広帯域CMD」のdwd_corrの基準と混乱されるべきではない。それらの間の区別は、以下に更に説明される。
【0070】
先の文献では、相関行列の距離は、狭帯域の高速フェージングMIMOチャネルの構造における変化の測度として導入される。先の文献は、以下のように相関行列の距離dcorrを定義する。
【数2】
ここでtr{・}は行列のトレースを示し、‖・‖は、行列のフロベニウスノルムを示し、R(t1)及びR(t2)は、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定されたMIMOチャネルの空間的な相関行列である。
【0071】
送信機側の空間的な相関について、空間的な相関行列は、以下のように計算される。
【数3】
【0072】
受信機側について、空間的な相関行列は、以下のように計算される。
【数4】
ここで(・)Hは、行列の共役転置を示し、(・)Tは、行列の転置を示し、H(t)は、Nr個の受信機アンテナとNT個の送信機アンテナをもつシステムについて、ある時間サンプルでのNr×NT個のMIMOチャネル行列を表し、E{・}は、期待値演算子である。
【0073】
式(III)及び(IV)において、空間的な相関行列を計算するために、時間領域において平均が計算される。言い換えれば、式(III)及び(IV)における期待値演算子内の行列積の期待値は、それぞれの行列積の時間平均であることが想定される。式(II)から分かるように、相関行列の距離dcorrの値は、0と1との間の範囲に及ぶ。より詳細には、空間的な相関行列R(t1)及びR(t2)が同じであるとき(スカラー要素は別として)、dcorrは0であり、R(t1)及びR(t2)が完全に相関しないとき、dcorrの最大値は1である。先に定義されたように、相関行列の距離の基準は、狭帯域の高速フェージングMIMOチャネルの構造における変化のシステムの独立な測度として使用される。相関行列の距離の基準により、1つの値と行列のサブスペースの両者を比較する間に、単一のパラメータにより変化が特徴付けられるのを可能にする。従って、相関行列の距離の基準は、MIMOチャネルの主要な特性をカバーする一方で、簡単な手段を提供する利点を有する。
【0074】
先に記載された相関行列の距離の基準の特性は、すなわち、システムに独立な測度であって、1つの値と行列のサブスペースの両者を比較する間に、単一のパラメータにより変化が特徴付けられるのを可能にするものであり、本発明の観点から有効な特性であると考えられる。しかし、本発明の記載される実施の形態は、狭帯域の高速フェージングMIMOチャネルの構造ではなく、広帯域の高速フェージングMIMOチャネルの空間構造における時間変化に焦点を当てるものであり、この焦点は、先に定義された相関行列の距離の焦点である。従って、記載される実施の形態において、相関行列の距離の基準は、広帯域の高速フェージングMIMOチャネルの空間構造における時間変化の測度を提供し、様々なCoMPのシナリオにおいて係る測度を提供するために変更される。言い換えれば、相関行列の距離の基準は、以下に記載される実施の形態で使用される拡張CMD(又は広帯域CMD)のdwd_corrとなるように変更される。広帯域の高速フェージングMIMOチャネルの拡張されたCMDの基準dwd_corrは、以下のように定義される。
【数5】
この場合、先の式(II)〜(IV)を参照して記載された相関行列の距離に類似して、Rwd(t1)及びRwd(t2)は、広帯域の高速フェージングMIMOチャネルについて、この場合、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定される空間的な相関行列である。
【0075】
また、先の式(II)〜(IV)とは対照的に、受信機側の空間的な相関について式(V)を使用して拡張CMDのdwd_corrを計算するため、例えばRwd(t1)及びRwd(t2)は、以下の式を使用して実行される。
【数6】
この場合、H(t,f)は、時変インパルス応答行列(すなわち時変チャネル行列)H(t,τ)にフーリエ変換を適用することで得られた時変転送行列であり、Nは、フーリエ変換のサイズである(MIMO送信機及びMIMO受信機のそれぞれのアンテナ数であるNT及びNrと混同しないように留意されたい)。広帯域の場合、受信機側で空間的な相関行列Rwd_Rx(t1)及びRwd_Rx(t2)は、帯域幅を通しての平均のチャネル相関行列Rwd_avg(t)に基づく。シミュレーションにおいて、この時間領域の平均は、以下のように、長さSのスライディングウィンドウを通して行われる。
【数7】
【0076】
(狭帯域の高速フェージングMIMOチャネルにおける変化に関連する)式(II)〜(IV)を参照して上述された基本の相関行列の距離の基準dcorrに関して、(広帯域の高速フェージングMIMOチャネルの空間構造における時間変化に関して)以下に記載される本発明の実施の形態において使用される広帯域CMDのdwd_corrについて、Rwd(t)及びRwd(t2)が同一である場合、広帯域CMDのdwd_corrは0であり、Rwd(t)及びRwd(t2)が急進的に変化する場合、広帯域CMDのdwd_corrは1になる。
【0077】
また、式(VI)に対する調節は、異なるシナリオで式(V)により与えられる広帯域CMDの基準dwd_corrを計算するために行うことができる。例えば広帯域MIMOチャネルについて、所定の周波数の時間変化に関心がある場合、式(VI)は、以下のように書き換えられる。
【数8】
【0078】
シミュレーションにおいて、時間領域の平均は、以下により実行される。
【数9】
そして、式(VI)における期待値演算子が取り除かれるか、又は式(VII)におけるスライディングウィンドウの長さSが1に設定される場合、それは、チャネル行列における変化を示す、調査された時間平均された空間的な相関行列ではない、瞬間的な空間的な相関行列における時間変化である。
【0079】
以下に記載される本発明の好適な実施の形態では、様々な適応的な周波数間隔の制御スキームが異なるCoMPシナリオについて提案され、拡張/広帯域CMDの基準dwd_corrは、異なるシナリオにおけるMIMOチャネルの時間変化を評価するために使用される。実施の形態は、シミュレートされたマルチセルのMIMOチャネルデータを参照して記載される。時変のマルチセルMIMOチャネルをシミュレートするために使用されるモデルは、文献“3GPP TR 25.996: Spatial channel model for multiple input multiple output (MIMO) simulations”, V8.0.0,2008-12で述べられている。
【0080】
要するに、シミュレートされたデータは、先の文献で規定されたアーバンマクロシナリオ(urban macro scenario)を使用して得られる。特に、それぞれのセルは、セル当たり3つのセクタをもつ六角形となることが想定される。セル当たり3つのセクタをもつ六角形のセルの配置の例は、図7に与えられる。図7において、(実線により線引きされる)セルは、3つの六角形のセルが集まるコーナに位置される基地局で形成される。例示のため、1つのセルは、図7においてグレイで影付けされる。それぞれの基地局は、異なるチャネルで3つの異なるセルに信号をそれぞれ送信し、異なるチャネルで3つの異なるセルからの信号を受信する3つの異なる方向に向けられる3つの指向性アンテナのセットを有する。このように、それぞれのセルは、3つのセクタを含む。セルのセクタは、点線により図7において示される。
【0081】
時変のマルチセルMIMOチャネルをシミュレートするために使用されるモデルを再び参照して、はじめに、UEとそれぞれのセクタの送信機との間の異なる時間サンプルでのインパルス応答行列が生成される。等間隔線形アレイ(ULA: Uniform Linear Array)は、UEで、それぞれの送信セクタで使用される。UEで2つのアンテナが存在し、送信機で8つのアンテナが存在する。それぞれのシミュレーションの実行の開始で、UEの位置、UEのアンテナの方向、UEの動きの速度及び方向、異なる送信セクタでのアンテナの方向が定義され、シミュレーション期間において一定であると想定される。連続する時間サンプルの間の時間間隔は、1msに設定される(当業者であれば、1msは、3GPP LTEシステムにおける1サブフレーム期間に対応することを認識されるであろう)。それぞれの時間サンプルで、UEとそれぞれのセクタ送信機との間の一連のインパルス応答チャネル行列H(t,τ)が生成され、次いで、フーリエ変換により一連の転送行列H(t,f)に変換される。次いで、転送行列は、広帯域CMDの基準dwd_corrを計算して、それぞれのセクタにおけるMIMOチャネルにおける時間変化を個別に測定するために使用される。
【0082】
異なる送信セクタにおける同じUEのドップラスペクトルは異なる(及び異なることがある)ので、異なる送信セクタにおけるチャネルは、時間的に非常に異なる。また、全てのシナリオにおいて、受信機側の空間的な相関行列は、広帯域CMDを生成するために使用される。
【0083】
図8は、UEの速度が3km/hであるとして、UEと2つの異なるセルのセクタの送信機との間で、先に説明された、生成された広帯域CMDの比較を示す。図7に示されるセルのセクタ1の送信機とセルのセクタ2の送信機として(例えば)想定される、これら2つの異なる送信機は、以下、セルセクタ1及びセルセクタ2とそれぞれシンプルに呼ばれる。セルセクタ1とセルセクタ2の両者について、スライディングウィンドウの長さSは、1に設定され、すなわち広帯域CMDを計算するために、瞬間的な空間的な相関行列が式(V)において使用される。MIMOチャネルの時間変化は、200個の時間サンプルについて追跡される。
【0084】
200個のサンプル時間の間に、セルセクタ1の広帯域CMD(実線)は、時間サンプル1から時間サンプル120まで非常に緩やかに変化し、時間サンプル120から、0.18に次第に増加し、これは、UEとセルセクタ1との間のMIMOチャネル(すなわちUEとセルセクタ1の送信機との間のチャネル)がこれら200個の時間サンプルについて緩やかに変化し、最初の120個のサンプル期間について殆ど変化しないことを意味することが図8から分かる。他方で、セルセクタ2(破線)の広帯域CMDは、セルセクタ1のそれよりも非常に迅速に増加し、時間サンプル140の後に0,7前後に存在し続ける。一般に、このような違いは、同じUEと異なる送信機との間でチャネルの異なるドップラスペクトルに起因する。
【0085】
従って、CB/CSダウンリンク送信の場合(単一のUEへのデータは、1つの送信ポイントから瞬間的に送信されるが、ユーザスケジューリング及び/又はビーム成形に関する判定は、セル又はセルセクタ間の調整により行われる)、UEがセルセクタの送信機に更新されたチャネル情報を送出するフィードバックの間隔は、異なるセルセクタについて異なって扱われる。図8に示されるシミュレーション結果を例として取り上げ、セルセクタ1は、その送信機がデータをUEに送信するセルセクタであり、セルセクタ2は、協働しているセルセクタであると想定する。(従来のように)両方のセクタについて固定されたフィードバックの間隔の制御方法が使用される場合、これは、セルセクタ1について不要なフィードバックのオーバヘッドを生じる、セルセクタ1の観点から望まれるよりも短いフィードバック間隔につながるか、又は、セルセクタ2について適切なシステムのパフォーマンスを提供するために必要とされるよりも長いフィードバックの間隔に(必然的に)つながる。
【0086】
本発明により提供される利点のうちの1つは、広帯域CMDの基準により、UEについて予め定義されたフィードバックの広帯域CMDの閾値を設定することで(すなわち、CB/CS送信の開始で、送信BSの送信機がUEに予め定義された閾値を送出することができる)、異なる時変のシナリオについてフィードバックの間隔の適合が可能となり、次いで、UEは、所与の時間で前記セルセクタのそれぞれの広帯域CMDを閾値と比較し、その時間で拡張CMDが閾値を超えるセルセクタにのみフィードバックすることで、それぞれのセルセクタにおけるフィードバックを何時送出すべきかを判定する。図8により与えられる例では、広帯域CMDのフィードバックの閾値が0.2として設定される場合、時間サンプル200まで、セルセクタ1にフィードバックする必要がない。しかし、セルセクタ2について、UEは、200個の時間サンプルの期間において数回のフィードバックを必要とする。
【0087】
CB送信モードが使用される場合が示すように、本発明の広帯域CMDに基づく適応フィードバックの間隔の制御方法は、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの釣り合いの観点で改善されたパフォーマンスを提供する。多くの状況において(すなわち本発明がフィードバックを抑えるか、又はフィードバックがさもなければ行われたときにフィードバックしない場合、すなわち固定されたフィードバック間隔のスキームが使用される場合)、これは、フィードバックのオーバヘッドにおける相当な節約を可能にする場合がある。ごく一般的な言い方をすると、これらの利点は、それぞれ協働するセルセクタのフィードバック間隔を適応的に制御するために使用される、前記セルセクタのそれぞれの広帯域CMDの計算において、それぞれの協働するセルセクタのチャネル行列を利用することで達成される。
【0088】
調整されたJP送信の場合(単一のUEへのデータが複数の送信ポイントから同時に送信される場合)、多数の異なるダウンリンクのプレコーディングスキームのうちの1つが異なる状況において調節された送信機で使用されるので、異なるプレコーディングスキームを参照して、異なるバリエーション(すなわち異なる実施の形態)の提案されるフィードバックの間隔の制御スキームが以下に個別に説明される。ここで説明されるダウンリンクのプレコーディングスキームは、以下の通りである。
【0089】
「グローバルプレコーディング“global precoding”」
「MBSFNプレコーディング(MBSFNは、Multimedia Broadcast over Single Frequency Network)」
「ローカルプレコーディング“local precoding”」
「重み付けローカルプレコーディング“weighted local precoding”」
これらのプレコーディングスキームは、文献R1-090022“Considerations on precoding scheme for DL joint processing CoMP”, Sharp, 3GPP TSG-RAN WG1 #55bis, 12-16 Jan, 2009, Ljubljana, Sloveniaに記載されている。
【0090】
グローバルプレコーディングスキームについて、複数のセルセクタの送信機により同時に給仕されるUEにより受信される信号は、以下のように表される。
【数10】
この場合、xは、L×1の送信データベクトル(Lはデータシンボルの数)、nは、Nr×1の付加白色ガウス性雑音ベクトルであり、Hcatは、連結されたチャネル行列、すなわちHcat=[H(1),H(2)...H(B)]であり、Bは、JPセルセクタの数であり、H(b)(b=1...B)は、セルbとUEとの間のNr×NTである。Hcatのサイズは、Nr×BNTであり、Wcatは、BNr×NTのグローバルプレコーダである。
【0091】
時変チャネルに従う全ての送信機のWcatを更新するため、フィードバックされる必要があるチャネル情報は、特定のセルセクタのものではなく、全ての協働しているJPセルセクタのそれである。従って、図9は、UEの速度が3km/hであり、協働しているJPセルセクタの数が2である場合について、連結されたチャネルマトリクスを使用して計算される広帯域CMDの時間変化を示す。比較のため、個々のセルセクタの広帯域CMDは、図9に示される。
【0092】
図9から、200個の時間サンプルの期間において、セルセクタ1の個々のチャネル行列を使用して計算された広帯域CMD(破線)は、セルセクタ2の個々のチャネル行列を使用して計算された広帯域CMD(破線及び交差線)よりも緩やかに変化する。連結されたチャネル行列を使用して計算された広帯域CMDの時間変化(実線)は、個々のセルセクタのチャネルの何れかを使用して計算されたものよりもずっと遅い。これは、連結されたチャネル行列の時間変化は、全ての調整されたJPセルセクタにおけるMIMOチャネルにより決定されることを示し、連結されるチャネル行列の時間変化は、最も迅速に時間変化するチャネルを有するセルセクタにおける時間変化よりもずっと遅い。
【0093】
モンテカルロシミュレーションを行うことで、図9に示されるものに類似するシミュレーション結果における考察は、協働するセルセクタの数が2である時間の約90%で発見される。例えば10個の協働するセルセクタといった協働するセルセクタの数が増加するとき、連結されるチャネルマトリクスが、非常に迅速に時間変化するMIMOチャネルを有するセルセクタにおける時間変化よりもずっと遅い時間変化を有する確率は、100%に近づく。
【0094】
図9に示されるシナリオについて、本発明が使用され、且つフィードバックの広帯域CMDの閾値が0.2に設定される場合、(連結されたチャネル行列を使用して得られた拡張CMDが0.2に到達することがないか又は0.2を超えることがないため)200個の時間サンプルの期間においてフィードバックを行う必要がない。しかし、(従来のように)固定されたフィードバックの間隔の制御方法が両方のセクタについて使用される場合、セルセクタ1について不要なフィードバックのオーバヘッドを引き起こす、セルセクタ1の観点から望まれるよりも短いフィードバックの間隔につながるか、又はセルセクタ2について適切なシステムパフォーマンスを提供するために必要とされるよりも長いフィードバックの間隔に繋がる可能性が高い。さらに、それぞれのセルセクタのフィードバック間隔がそれ自身の拡張CMD基準に基づいて個別に制御されるとしても、(個々のセルセクタ1の拡張CMDは0.2に到達しないので)この時間期間においてセルセクタ1においてフィードバックはないが、幾つかのフィードバックは、(個々のセルセクタ2の拡張CMDは約80の時間サンプルの後に0.2を超えるので)セルセクタ2において必要とされ、これは、全ての協働しているセルセクタの連結されたチャネル行列は、上述された広帯域CMDを計算するために使用されるこの実施の形態について説明された状況と比較して不要なオーバヘッドを引き起こし、200の時間サンプルの期間においてフィードバックの必要がない。
【0095】
従って、JP送信モードがグローバルプレコーディングと使用される場合、本実施の形態の広帯域CMDに基づく適応的なフィードバックの間隔の制御方法は、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの釣り合いの観点で改善されたパフォーマンスを提供することができる。多くの状況(すなわち、特に本発明がフィードバックを抑えるか、フィードバックがさもなければ行われたときにフィードバックしない場合、すなわち固定された又は個々にセル設定されたフィードバックの間隔のスキームが使用される場合)、これは、フィードバックのオーバヘッドにおける相当な節約を可能にする。ごく一般的な言い方をすると、これらの利益は、異なる協働しているセルセクタのフィードバックの間隔を適応的に制御するために使用される、広帯域CMDの計算において連結されたチャネル行列を利用することで達成される。上述されたMBSFNプレコーディングスキームを使用したJPダウンリンクの送信について、複数のセルセクタの送信機により同時に給仕されるUEにより受信された信号は、以下のように表される。
【数11】
ここで、x,n及びH(b)の定義は、式(X)で使用された定義と同じである。Hsumは、それぞれのセルセクタの送信機でNT個の送信機アンテナを想定して、Nr×NTである大きさをもつ合計チャネル行列である。Wは、そのサイズがNT×Lである全てのJPセルセクタについて共通のプレコーディング行列である。
【0096】
上述されたグローバルプレコーディングスキームの場合に類似して、MBSFNプレコーディングが使用されるWを更新するため、全てのJPセルセクタからのチャネル情報が必要とされる。この場合、広帯域CMDは、合計されたチャネル行列の時間変化の測度である。
【0097】
図10は、UEの速度が3km/hであり、且つJPセルセクタの数が2であると想定して、HSUMを使用することで生成される広帯域CMDと、それぞれのJPセルセクタのチャネル行列を個々に使用して計算された広帯域CMDとの比較を示す。200の時間サンプルの期間において、合計されたチャネル行列の時間変化は、セルセクタ2において迅速に時間変化するチャネルよりも、セルセクタ1において低速で時間変化するチャネルにより影響される傾向があり、合計されたチャネル行列の時間変化は、最も迅速に時間変化するチャネルをもつセルセクタの時間変化よりもずっと遅い。
【0098】
従って、グローバルプレコーディングによるJP送信の場合に説明されたのと類似の理由のため、JP送信モードがMBSFNプレコーディングと使用されル場合、本発明の広帯域CMDに基づく適応的なフィードバックの間隔の制御方法は、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの釣り合いの観点で、改善されたパフォーマンスを提供することができる。また、多くの状況において、これは、フィードバックのオーバヘッドにおける相当の節約を可能にする。ごく一般的な言い方をすると、これらの利益は、異なる協働しているセルのフィードバックの間隔を適応的に制御するために使用される、広帯域CMDの計算において合計されたチャネル行列を利用することで達成される。
【0099】
ローカルプレコーディング及び重み付けされたローカルプレコーディング送信スキームの場合、複数のセルセクタの送信により同時に給仕されるUEでの受信された信号は、以下のように表される。
【数12】
及び
【数13】
ここで、W(b)は、JPセルセクタbで採用されるNT×Lのローカルプレコーディング行列を表し、式(XIII)におけるD(b)は、それぞれのJPセルセクタの重み付け係数からなるL×Lのセルに固有の対角行列を表す。
【0100】
式(XII)及び(XIII)について、それぞれのセルセクタのプレコーディング行列W(b)又は重み付け行列D(b)を更新するため、上述されたCB送信スキームにおける場合に類似した単一のセルセクタのチャネルの状態情報が必要とされる。
【0101】
これら2つのJPプレコーディングスキームの両者について、本発明の広帯域CMDに基づく適応FIC方法は、CB/CSダウンリンク送信に関連して先に与えられたものと類似の理由のため、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの釣り合いの観点で改善されたパフォーマンスを提供する。さらに、多くの状況において(すなわち、本発明がフィードバックを抑えるか、フィードバックがさもなければ生じたときにフィードバックしない場合、すなわち固定されたフィードバックの間隔のスキームが使用される場合)、これは、フィードバックのオーバヘッドにおける相当な節約を可能にする。ごく一般的な言い方をすれば、これらの利点は、異なる協働しているセルのフィードバックの間隔を適応的に制御するために使用される、広帯域CMDの計算においてそれぞれ協働しているセルセクタのチャネル行列を利用することで達成される。
【0102】
この点に関して、様々なCoMPモードに含まれる異なる種類のMIMOチャネルの時間変化は、フィードバックのオーバヘッドを低減する、CoMPのフィードバックの間隔の制御スキームの多数のバリエーション(実施の形態)が提案されることに基づいて分析される。図11は、様々な提案される低減されたオーバヘッドの(すなわち適応的な)フィードバックの間隔の制御スキームが集合的に/一緒に実現される場合がある方法を総括する。
【0103】
図11に示されるように、ある送信モードに従う送信の開始であるステップ1102で、UEは、送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値βを受信する。送信モードのインジケータαは、送信において使用される特定の送信モードを示し、フィードバックの閾値βは、広帯域CMDの閾値を示し、この閾値を超えて、UEによるチャネルの状態情報のフィードバックが可能となる/フィードバックを行わせる。
【0104】
ステップ104で、UEは、送信モードのインジケータαが単一のセルセクタからの送信を示すかを判定する。送信モードが単一のセルセクタから送信を含むと判定された場合(ステップ104で“Yes”)、これは、非CoMP送信を示し(すなわちセル間干渉を低減するためにセルセクタ間で調整がない送信スキーム)、次いで、本方法は、ステップ1106に進む(本発明は非CoMPスキームで実現されることを述べることは重要である)。代替的に、送信モードは単一のセルセクタからの送信を含まないことが判定される(すなわちステップ1104)、これは、CoMP送信の幾つかの形式を示し、本方法は、ステップ1116に進む(以下を参照)。
【0105】
先に説明されたように、ステップ1104で、送信モードは単一のセルセクタからの非CoMP送信を含むことが判定され、本方法は、ステップ1106に進む。ステップ1106で、時間t0で給仕しているセルセクタの空間的なチャネル相関行列(すなわちRwd(s)(t0))と時間tで給仕しているセルセクタのチャネル相関行列(すなわちRwd(s)(t))は、時間tでの拡張CMDを計算するため(すなわちdwd_corr(t)=dwd_corr(Rwd(s)(t0),Rwd(s)(t)))に使用される。つぎに、ステップ1108で、UEは、拡張CMDの計算された値がステップ1102で受信されたフィードバックの閾値βに等しいか又は該フィードバックの閾値を超えるかを判定する。言い換えれば、ステップ108で、UEは、dwd_corr(t)≧βであるかを評価する。拡張CMDの値がフィードバック閾値に等しいか又は該フィードバック閾値よりも大きいと判定された場合(すなわちdwd_corr(t)≧β、従ってステップ1108で“Yes”)、UEは、チャネル状態情報を給仕しているセルセクタにフィードバックし(ステップ1110)、次いで基準となる空間的なチャネル相関行列を更新し(ステップ1112)、すなわちUEはRwd(s)(t0)及びRwd(s)(t)を設定する。次いで、本方法は、ステップ1114に進む。
【0106】
ステップ1108に戻り、(上記の選択肢において)拡張CMDの値がフィードバック閾値未満である場合(すなわちdwd_corr(t)<β、従ってステップ1108で“No”)、本方法は、ステップ1114にダイレクトに進む。
【0107】
ステップ1114で、基地局(すなわち給仕しているセルセクタ送信機)からの情報に基づいて、現在の送信モードを変えるか又は終了するかを判定する。現在の送信モードを変更又は終了しないと判定された場合(ステップ1114で“No”)、本方法は、次の時間サンプルのためにステップ1106から繰り返す。代替的に、現在の送信モードを変更又は終了すると判定した場合(ステップ1114で“Yes”)、本方法は終了し、次いで、同じ送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値β、又は異なるα及び/又はβに基づいて冒頭から再開する。
【0108】
先に説明されたように、ステップ1104で、送信モードが単一のセルセクタからの非CoMP送信を含むと判定された場合(すなわちステップ1104で“No”)、これは、CoMP送信の幾つかの形式を示し、本方法は、ステップ1116に進む。ステップ1116で、UEは、送信モードのインジケータαから、送信モードが、グローバルプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPと対応するかを判定する。対応する場合(すなわちステップ1116で“Yes”)、本方法は、ステップ1118に進む。さもなければ(すなわち、ステップ1116で“No”)、本方法は、ステップ1128に進む(以下を参照)。
【0109】
ステップ1118で、時間t0での連結されたチャネル行列Hcatを使用して計算される、時間t0での連結された空間的なチャネル相関行列、すなわちRwd_cat(t0)、及び時間tでの連結されたチャネル行列を使用して計算される、時間tでの連結された空間的なチャネル相関行列、すなわちRwd_cat(t0)は、時間tでの拡張CMDを計算する(すなわちdwd_corr(t)=dwd_corr(Rwd(s)(t0),Rwd(s)(t))を計算する)ために使用される。つぎに、ステップ1120で、UEは、拡張CMDの計算された値がステップ1102で受信されたフィードバックの閾値βに等しいか又はフィードバックの閾値を超えるかを判定する。拡張されたCMDの値がフィードバックの閾値に等しいか又はフィードバックの閾値よりも大きいと判定された場合(すなわちdwd_corr(t)≧β、従ってステップ1120で“Yes”)、UEは、全ての協働しているJPセルセクタにチャネルの状態情報をフィードバックし(ステップ1122)、次いで基準となる連結されたチャネルの相関行列を更新する(ステップ1124)。すなわちUEは、Rwd_cat(t0)=Rwd_cat(t)を設定する。次いで、本方法は、ステップ1126に進む。
【0110】
ステップ1120に戻り、(上記の選択肢において)拡張CMDの値はフィードバック閾値未満であると判定された場合(すなわち、dwd_corr(t)<β、従ってステップ1120で“No”)、本方法は、ステップ1126にダイレクトに進む。
【0111】
ステップ1126で、UEは、協働しているセルセクタからの情報に基づいて、現在の送信モードを変えるか又は終了するかを判定する。現在の送信モードを変えないか又は終了しないと判定した場合(ステップ1126で“No”)、本方法は、次の時間サンプルについてステップ1118から繰返す。代替的に、現在の送信モードを変えるか又は終了すると判定され場合(ステップ1126で“Yes”)、本方法は、終了し、同じ送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値β、或いは異なるα及び/又はβに基づいて、冒頭から再開する。
【0112】
先に説明されたように、ステップ1116で、UEは、送信モードのインジケータαから、送信モードがグローバルプレコーディングを使用したJPダウンリンクによるCoMPに対応するかを判定し、対応しないと判定した場合(すなわち、ステップ1116で“No”である場合)、本方法はステップ1128に進む。ステップ1128で、UEは、送信モードのインジケータαから、送信モードがMBSFNプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPに対応するかを判定する。対応すると判定した場合(すなわち、ステップ1128で“Yes”)、本方法は、ステップ1130に進む。さもなければ(すなわち、ステップ1128で“No”)、本方法は、ステップ1140に進む(以下を参照)。
【0113】
ステップ1130で、時間t0での合計されたチャネル行列Hsumを使用して計算された、時間t0での合計されたチャネルの相関行列、すなわちRwd_sum(t0)と、時間tでの合計されたチャネル行列を使用して計算された、時間tでの合計されたチャネルの相関行列、すなわちRwd_sum(t0)は、時間tでの拡張CMDを計算する(すなわち、dwd_corr(t)=dwd_corr(Rwd(s)(t0),Rwd(s)(t)))ために使用される。つぎに、ステップ1132で、UEは、拡張CMDの計算された値がステップ1102で受信されたフィードバック閾値βに等しいか又はフィードバック閾値を超えるかを判定する。拡張CMDの値がフィードバック閾値に等しいか又はフィードバック閾値よりも大きいと判定された場合(すなわち、dwd_corr(t)≧β、従ってステップ1132で“Yes”)、UEは、チャネルの状態情報をフィードバックし(ステップ1134)、次いで、基準のチャネル相関行列を更新する(ステップ1136)。すなわちUEは、Rwd_sum(t0)=Rwd_sum(t)を設定する。次いで、本方法は、ステップ1138に進む。ステップ1132に戻り、(先の選択肢において)拡張CMDの値がフィードバック閾値未満であると判定された場合(すなわちdwd_corr(t)<β、従ってステップ1132で“No”)、本方法は、ステップ1138にダイレクトに進む。
【0114】
ステップ1138で、UEは、現在の送信モードを変えるか又は終了するかを判定する。現在の送信モードを変えないこと又は終了しないことを判定した場合(ステップ1138で“No”)、本方法は、次の時間サンプルについてステップ1130から繰返す。代替的に、現在の送信モードを変えるか又は終了することを判定した場合(ステップ1138で“Yes”)、本方法は終了し、次いで、同じ送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値β、或いは、異なるα及び/又はβに基づいて冒頭から再開する。
【0115】
先に説明されたように、ステップ1128で、UEは、送信モードのインジケータから、送信モードがMBSFNプレコーディングを使用したJPダウンリンクの送信によるCoMPに対応するかを判定し、対応しないと判定した場合(ステップ1128で“No”)、本方法は、ステップ1140に進む。ステップ1140で、UEは、送信モードのインジケータαから、送信モードが、CB/CSダウンリンク送信によるCoMP、或いは、ローカル又は重み付けローカルプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPに対応するかを判定する。これらのうちの1つに対応する場合(ステップ1140で“Yes”)、本方法は、ステップ1142に進む。さもなければ(ステップ1140で“No”)、本方法は、送信モードが未知であるので終了する。
【0116】
ステップ1142で、時間t0でチャネル行列H(b)から計算された、時間t0でのそれぞれの協働しているセルセクタbの空間的なチャネル相関行列、すなわちRwd(b)(t0)と、時間tでそれぞれ協働しているセルセクタbの空間的なチャネル相関行列、すなわちRwd(b)(t)とは、時間tでそれぞれ協働しているセルセクタbの拡張CMDを計算するために使用される。つぎに、ステップ1144で、UEは、協働しているセルセクタの何れかの拡張CMDの計算された値がステップ1102で受信されたフィードバックの閾値βに等しいか又はフィードバックの閾値を超えるかを判定する。協働しているセルセクタbの拡張CMDの値がフィードバックの閾値に等しいか又はフィードバックの閾値よりも大きいと判定された場合(すなわち任意のセルセクタbについてdwd_corr(t)≧β、従ってステップ1144で“Yes”)、UEは、それぞれ係るセルセクタbについてチャネルの状態情報をフィードバックし(ステップ1146)、次いで、基準のチャネル相関行列を更新する(ステップ1148)。すなわち、UEは、Rwd(b)(t0)=Rwd(b)(t)を設定する。次いで、本方法は、ステップ1150に進む。
【0117】
ステップ1144に戻り、(先の選択肢において)全てのセルセクタbの拡張CMDの値がフィードバック閾値未満であると判定された場合(すなわち、全てのbについてdwd_corr(t)<β、従ってステップ1132で“No”)、本方法は、ステップ1150にダイレクトに進む。
【0118】
ステップ1150で、UEは、現在の送信モードを変えるか又は終了するかを判定する。現在の送信モードを変えないこと又は終了しないことを判定した場合(ステップ1150で“No”)、次の時間サンプルについてステップ1142から繰り返す。代替的に、現在の送信モードを変えるか又は終了することを判定した場合(ステップ1150で“Yes”)、本方法は終了し、次いで、同じ送信モードのインジケータα及びフィードバックの閾値β、或いは、異なるα及び/又はβに基づいて、冒頭から再開する。
【0119】
当業者であれば、本発明の提案されるフィードバックの間隔の制御スキームは、関連するCoMPモードに対応する関連する拡張CMDを生成するために所定のサブバンドのチャネル行列を使用することで、図8、図9及び図10に示されるものに類似の考察が得られるので、広帯域MIMOチャネルの所定のサブバンドについてチャネルの状態情報のフィードバックの間隔を制御することに適用可能であることを理解されるであろう。
【0120】
[パフォーマンス結果]
以下では、広帯域MIMOチャネル行列を使用することで生成されるシミュレーション結果により、提案されるフィードバックの間隔の制御スキームのパフォーマンスが評価される。パフォーマンス結果の説明は、2つのステージに分割される。ステージ1は、提案される適応的なフィードバックの間隔の制御方法を、固定されたフィードバックの間隔を使用して得られる結果と比較し、ステージ2は、様々なCoMPのシナリオにおける提案される適応的なフィードバックの間隔の制御スキームのパフォーマンスを分析する。ステージ1及び2が順に説明される。
【0121】
ステージ1:適応フィードバック制御−固定フィードバック制御
ステージ1における分析は、CBダウンリンク送信、或いは、ローカル及び/又は重み付けされたローカルプレコーディングによるJPダウンリンク送信の何れかによるCoMPスキームにおいて使用されたとき、提案される適応的なフィードバックの間隔の制御システムを考える。分析を実行するため、以下の提案される適応的なフィードバックの間隔の制御方法が使用される。
【0122】
a.時間t0で、それぞれ協働しているセルセクタの最初のチャネル情報は、ネットワークにフィードバックされ、時間t0でのそれぞれのセルセクタbの空間的な相関行列(すなわちRwd(b)(t0))は、基準として選ばれ、ついで、個々のセルセクタのその後の拡張CMDは、式(V)を使用して計算される。
【0123】
b.異なる時間サンプルでの個々のセルセクタの拡張CMDは、予め定義されたフィードバックの閾値βと比較される。任意の協働しているセルの拡張CMDが時間tでβよりも大きいか又はβに等しい場合、それらのセルセクタのチャネル情報は、その時間でのフィードバックにより更新される。その一方で、それらのセルセクタの基準の相関行列は、時間tでそれらの相関行列に更新される。
【0124】
c.手順a〜bは、繰返される。
【0125】
提案される適応的なフィードバックの間隔の制御スキームを固定的なフィードバックの間隔を使用したフィードバックスキームと比較するため、以下が実行される。
【0126】
(i)(適応的なフィードバックの間隔の制御方法の手順aと同じ)
(ii)固定された時間間隔δで、全ての協働しているセルセクタのチャネル情報は、フィードバックにより更新され、全ての協働しているセルの基準の相関行列は、期間δ毎に更新される。
【0127】
(iii)手順(i)〜(ii)が繰返される。
【0128】
先の手順を使用して実行されるシミュレーションについて、考慮される協働するセルセクタの数は4であり、UEの速度は3km/hであり、拡張CMDは、5個の時間サンプル、すなわちS=5を通して平均されるチャネルの相関行列に基づいて生成される。196個の時間サンプルでの拡張CMDは、それぞれのセルのセクタについてプロットされ、隣接する時間サンプル間の時間間隔は、1msである。δ及びβの値は、20及び0.2にそれぞれ設定される。固定及び適応方法のこれらのシミュレーションの結果は、図12及び図13にそれぞれ示される。
【0129】
図12と図13を比較して、固定的なフィードバックの間隔を使用することは、適応的なフィードバックの間隔の制御方法を使用するよりもはるかに多くのフィードバックのインスタンスに繋がる可能性がある。また、図12に示される結果において、フィードバックが実行される多くの回数での拡張CMDは非常に低い(確実に0.2の閾値未満)ので、多数のフィードバックは不要である。さらに、図12に示される結果において、チャネルの状態情報の更新は、十分に迅速ではない。これは、拡張CMDは、フィードバックが実行されたときに既に高いためである。
【0130】
対照的に図13に示される適応的なフィードバックの間隔の制御方法の結果では、フィードバックのオーバヘッドとシステムのパフォーマンスとの良好な釣り合いが達成される。特に、図12に示される4つのセルセクタのフィードバックのインスタンスの全体数は、40であり、図13に示される提案される適応的なフィードバックの間隔の制御スキームを使用して同じ4つのセルセクタのフィードバックのインスタンスの全体数は11である。これは、73%のフィードバックのオーバヘッドの低減である。従って、提案される適応的なフィードバックの間隔の制御方法を使用して達成可能なフィードバックのオーバヘッドにおける低減は、著しい。重要なことに、提案される適応スキームは、システムの容量又はブロック誤り率(BLER)の観点でCoMPのパフォーマンスを低下することが期待されない。
【0131】
[ステージ2:様々なCoMPシナリオにおける提案される適応FICスキームのパフォーマンス]
図14は、様々なCoMPシナリオにおける提案される適応的なフィードバックの間隔の制御スキームのパフォーマンスを示す。図14のシミュレーション設定は、図13のそれと同じである。実際、図14に示される個々のセルセクタのそれぞれの時間ステップでの拡張CMDは、図13に示されるのと同じであり、上述されたように、拡張CMDは、CBダウンリンク送信によるCoMPスキーム、或いは、ローカル又は重み付けローカルプレコーディングを使用したJP送信によるCoMPスキームにおいて使用されたときに、提案されたフィードバックの間隔の制御システムに対応する。しかし、これに加えて、図14は、グローバルプレコーディング及びMBSFNプレコーディングをそれぞれ使用したJPダウンリンク送信によるCoMPスキームに対応する、4つのセルを使用した連結されたチャネル行列Hcat及び合計されたチャネル行列Hsumを使用して、それぞれの時間ステップで生成される拡張CMD値を示す。
【0132】
図14から、連結されたチャネル行列及び合計されたチャネル行列を使用することで、グローバルプレコーディング及びMBSFNプレコーディングをそれぞれ使用したJPダウンリンク送信によるCoMPスキームで必要とされるフィードバックのオーバヘッドは、更に低減される。例えば、これらの送信のシナリオの両者の4つのセルセクタのフィードバックインスタンスの全体数は4であり、上述された固定フィードバック間隔のスキームに比較して90%のフィードバックのオーバヘッドの低減となる。従って、それぞれ個別の協働するセルセクタにおける固定的なフィードバックの間隔を使用したスキームに比較して、提案されるスキームは、フィードバックのオーバヘッドを大幅に節約することができ、異なるCoMPのシナリオの範囲における適用のために適合される。
【0133】
図14に示されるパフォーマンス結果は、UEの速度が3km/hである、様々なCoMPの低移動度のシナリオに対応する。対照的に、図15は、UEの速度が30km/hである、様々なCoMPの中移動度のシナリオにおける提案されるスキームのパフォーマンスを示す。図15のシミュレーション設定は、UEの速度が増加するときにチャネルの時間変化が迅速であるために、16個の拡張CMD値のみをそれぞれのCoMPモードについてプロットして提案されるスキームのパフォーマンスを評価する点を除いて、図14のそれらと同じである。
【0134】
30km/hの移動度のシナリオにおける固定的なフィードバックの間隔の方法のシミュレーション結果は、図15に与えられるものと比較するために図16に示される。図16に示されるシミュレーション結果について使用されるδの値は2である。
【0135】
図15から、30km/hの移動度のシナリオについて、異なるCoMPモデルの相対的なパフォーマンスは、3km/hの移動度のシナリオのそれに類似する。16の時間サンプルの期間において、CBダウンリンク送信によるCoMPについて、或いは、ローカル又は重み付けローカルプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPについて、4つのセルセクタのフィードバックインスタンスの全体数は7である。さらに、グローバルプレコーディング又はMBSFNプレコーディングを使用したJPダウンリンク送信によるCoMPについて、4つのセルセクタのフィードバックインスタンスの全体数は4である。従って、提案されるスキームは、フィードバックインスタンスの全体数が36である固定フィードバック間隔スキームにおけるフィードバックのオーバヘッドに比較して、81%及び89%のフィードバックのオーバヘッドの低減となる。従って、提案されるスキームは、様々なCoMPの中移動度のシナリオにも適用可能である。
【0136】
先に記載された本発明の態様又は実施の形態の何れかにおいて、様々な特徴がハードウェアで実現されるか、又は1以上のプロセッサで実行するソフトウェアモジュールとして実現される。1態様の特徴は、他の態様の何れかに適用される。
【0137】
また、本発明は、本明細書で記載された方法の何れかを実行するコンピュータプログラム又はコンピュータプログラムプロダクト、本明細書で記載された方法の何れかを実行するプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【0138】
本発明を実施するコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶され、又は、例えばインターネットのウェブサイトから供給されるダウンロード可能なデータのような信号の形式であるか、或いは任意の他の形式である。
【0139】
様々な変形及び/又は変更が本発明の精神及び又は範囲から逸脱することなしに記載された特定の実施の形態に対してなされる場合がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多入力多出力(MIMO)無線通信システムで行われる方法であって、
前記MIMO無線通信システムにおいて、
それぞれの隣接セルが1以上のユーザに信号を送信し、前記1以上のユーザからの信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セルが設けられ、
ユーザは、関連する基地局と前記ユーザとの間のチャネルに関連するチャネルの状態情報を前記関連する基地局にフィードバックし、
前記1以上の基地局は、チャネルの変化を考慮するため、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を調節し、
当該方法は、
チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報を取得するステップと、
前記チャネルの空間構造における時間変化に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節するステップと、を含む方法。
【請求項2】
チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータの閾値を定義するステップと、
前記パラメータを連続して計算するステップと、
前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるとき、前記1以上の基地局にチャネルの状態情報をユーザにフィードバックさせるか、又はユーザがフィードバックするのを可能にするステップと、
を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
それぞれのチャネルのチャネルの空間構造は、チャネル行列により表現され、
当該方法は、前記パラメータの計算において1以上のチャネルについて前記チャネル行列を使用することを更に含む、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
セル間の干渉を低減するため、セルの間又はセルの一部の間で調整が行われる、
請求項1乃至3の何れか記載の方法。
【請求項5】
前記1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、調整されたスケージューリング(CS)、調整されたビーム成形(CB)、ローカルプレコーディングによる共同処理(JP)、又は重み付けローカルプレコーディングによる共同処理(JP)のうちの1つを含み、
当該方法は、
調整されたセル、又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネル行列を使用して、前記セル又は前記セルの一部のそれぞれのパラメータを計算するステップと、
セル又はセルの一部のパラメーラが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるとき、前記セル又はセルの一部の基地局にチャネルを状態情報をユーザにフィードバックさせるか又はユーザがフィードバックするのを可能にする、
請求項3に従属する請求項4記載の方法。
【請求項6】
それぞれ調整されたセル又はセルのセクタb=1,...,B(Bは調整されたセル又はセルのセクタの数)について、式
【数14】
を使用して前記パラメータdwd_corrを計算するステップを更に含み、
ここでRwd(b)(t1)及びRwd(b)(t2)は、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定される、受信機側又は送信機側の何れかを表す空間的な相関行列であり、
それぞれのRwd(b)(t)は、時間tで、受信機側について
【数15】
により決定されるか、又は送信機側について
【数16】
により決定され、
それぞれのH(b)(t,f)は、あるチャネルのチャネル行列H(b)(t,τ)にフーリエ変換を適用することで得られる行列であり、Nは、フーリエ変換のサイズである、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、グローバルプレコーディングによる共同処理(JP)を含み、
当該方法は、
調整されたセル又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネル行列から連結されたチャネル行列を計算するステップと、
前記連結されたチャネル行列を使用して、前記パラメータを計算するステップと、
前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるときに、前記調整されたセル又はセルの一部の基地局へのチェネルの状態情報をユーザにフィードバックさせるか、ユーザがフィードバックするのを可能にするステップを更に含む、
請求項3に従属する請求項4記載の方法。
【請求項8】
式
【数17】
を使用して、前記パラメータdwd_corrを計算するステップを更に含み、
Rwd_cat(t1)及びRwd_cat(t2)は、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定される、受信機側又は送信機側の何れかを表す空間的な相関行列であり、
それぞれのRwd_cat(t)は、時間tで、受信機側について
【数18】
により決定されるか、又は送信機側について
【数19】
により決定され、
それぞれのHcat(t,f)は、連結されたチャネル行列Hcat(t,τ)にフーリエ変換を適用することで得られる行列であり、Nは、フーリエ変換のサイズである、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、MBSFNプレコーディングによる共同処理(JP)を含み、
当該方法は、
調整されたセル又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネル行列から合計されたチャネル行列を計算するステップと、
前記合計されたチャネル行列を使用して前記パラメータを計算するステップと、
前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるとき、前記調整されたセル又はセルの一部の基地局へのチャネルの状態情報をユーザにフィードバックさせるか又はユーザがフィードバックするのを可能にするステップと、
を更に含む請求項3に従属する請求項4記載の方法。
【請求項10】
式
【数20】
を使用して、前記パラメータdwd_corrを計算するステップを更に含み、
Rwd_sum(t1)及びRwd_sum(t2)は、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定される受信機側又は送信機側の何れかを表す空間的な相関行列であり、
それぞれのRwd_sum(t)は、時間tで、受信機側について
【数21】
により決定されるか、又は送信機側で
【数22】
により決定され、
それぞれのHsum(t,f)は、あるチャネルの合計されたチャネル行列Hsum(t,τ)にフーリエ変換を適用することで得られる行列であり、Nは、フーリエ変換のサイズである、
請求項7記載の方法。
【請求項11】
多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおいて使用されるユーザ装置であって、
前記MIMO無線通信システムにおいて、
それぞれの隣接するセル又はセルのセクタが前記ユーザ装置に信号を送信し、前記ユーザ装置から送信される信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接するセル又はセルのセクタが設けられ、
当該ユーザ装置は、
関連する基地局と当該ユーザ装置との間のチャネルに関連するチャネルの状態情報を前記関連する基地局にフィードバックし、前記関連する基地局が、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、当該ユーザ装置への送信のために信号を調節するのを可能にし、
チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報を取得し、
前記チャネルの空間構造における時間変化に基づいてチャネルの状態情報がフィードバックされるタイミングを調節する、ユーザ装置。
【請求項12】
当該ユーザ装置は、さらに、
前記チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータの閾値を基地局から受信し、
前記パラメータを連続して計算し、
前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるとき、1以上の基地局にチャネルの状態情報をフィードバックする、
請求項11記載のユーザ装置。
【請求項13】
それぞれのチャネルのチャネルの空間構造は、チャネル行列により表現され、
当該ユーザ装置は、前記パラメータの計算において1以上のチャネルについて前記チャネル行列を使用する、
請求項12記載のユーザ装置。
【請求項14】
セル間の干渉を低減するため、セルの間又はセルの一部の間で調整が行われ、
前記ユーザ装置は、請求項5乃至10の何れか記載の方法を使用して前記パラメータを計算する、
請求項11乃至13の何れか記載のユーザ装置。
【請求項15】
多入力多出力(MIMO)無線通信システムであって、
それぞれの隣接セル又はセルのセクタが1以上のユーザに信号を送信し、前記1以上のユーザから送信された信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セル又はセルのセクタと、
1以上のユーザは、関連する基地局とそれぞれの前記ユーザとの間のチャネルに関するチャネルの状態情報を前記前記関連する基地局にフィードバックし、
基地局は、チャネルの変動を考慮して、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を調節し、
チャネルの空間構造における時間変化に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングが調節される、MIMO無線通信システム。
【請求項16】
請求項15記載の多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおいて使用される基地局であって、
当該基地局は、チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータの閾値を1以上のユーザに送信し、
前記1以上のユーザは、前記パラメータを連続して計算し、前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるときに、当該基地局及び/又は1以上の他の基地局にチャネルの状態情報をフィードバックする、基地局。
【請求項1】
多入力多出力(MIMO)無線通信システムで行われる方法であって、
前記MIMO無線通信システムにおいて、
それぞれの隣接セルが1以上のユーザに信号を送信し、前記1以上のユーザからの信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セルが設けられ、
ユーザは、関連する基地局と前記ユーザとの間のチャネルに関連するチャネルの状態情報を前記関連する基地局にフィードバックし、
前記1以上の基地局は、チャネルの変化を考慮するため、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を調節し、
当該方法は、
チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報を取得するステップと、
前記チャネルの空間構造における時間変化に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングを調節するステップと、を含む方法。
【請求項2】
チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータの閾値を定義するステップと、
前記パラメータを連続して計算するステップと、
前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるとき、前記1以上の基地局にチャネルの状態情報をユーザにフィードバックさせるか、又はユーザがフィードバックするのを可能にするステップと、
を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
それぞれのチャネルのチャネルの空間構造は、チャネル行列により表現され、
当該方法は、前記パラメータの計算において1以上のチャネルについて前記チャネル行列を使用することを更に含む、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
セル間の干渉を低減するため、セルの間又はセルの一部の間で調整が行われる、
請求項1乃至3の何れか記載の方法。
【請求項5】
前記1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、調整されたスケージューリング(CS)、調整されたビーム成形(CB)、ローカルプレコーディングによる共同処理(JP)、又は重み付けローカルプレコーディングによる共同処理(JP)のうちの1つを含み、
当該方法は、
調整されたセル、又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネル行列を使用して、前記セル又は前記セルの一部のそれぞれのパラメータを計算するステップと、
セル又はセルの一部のパラメーラが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるとき、前記セル又はセルの一部の基地局にチャネルを状態情報をユーザにフィードバックさせるか又はユーザがフィードバックするのを可能にする、
請求項3に従属する請求項4記載の方法。
【請求項6】
それぞれ調整されたセル又はセルのセクタb=1,...,B(Bは調整されたセル又はセルのセクタの数)について、式
【数14】
を使用して前記パラメータdwd_corrを計算するステップを更に含み、
ここでRwd(b)(t1)及びRwd(b)(t2)は、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定される、受信機側又は送信機側の何れかを表す空間的な相関行列であり、
それぞれのRwd(b)(t)は、時間tで、受信機側について
【数15】
により決定されるか、又は送信機側について
【数16】
により決定され、
それぞれのH(b)(t,f)は、あるチャネルのチャネル行列H(b)(t,τ)にフーリエ変換を適用することで得られる行列であり、Nは、フーリエ変換のサイズである、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、グローバルプレコーディングによる共同処理(JP)を含み、
当該方法は、
調整されたセル又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネル行列から連結されたチャネル行列を計算するステップと、
前記連結されたチャネル行列を使用して、前記パラメータを計算するステップと、
前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるときに、前記調整されたセル又はセルの一部の基地局へのチェネルの状態情報をユーザにフィードバックさせるか、ユーザがフィードバックするのを可能にするステップを更に含む、
請求項3に従属する請求項4記載の方法。
【請求項8】
式
【数17】
を使用して、前記パラメータdwd_corrを計算するステップを更に含み、
Rwd_cat(t1)及びRwd_cat(t2)は、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定される、受信機側又は送信機側の何れかを表す空間的な相関行列であり、
それぞれのRwd_cat(t)は、時間tで、受信機側について
【数18】
により決定されるか、又は送信機側について
【数19】
により決定され、
それぞれのHcat(t,f)は、連結されたチャネル行列Hcat(t,τ)にフーリエ変換を適用することで得られる行列であり、Nは、フーリエ変換のサイズである、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記1以上の基地局からユーザに信号を送信するために使用される送信スキームは、MBSFNプレコーディングによる共同処理(JP)を含み、
当該方法は、
調整されたセル又は調整されたセルの一部のそれぞれのチャネル行列から合計されたチャネル行列を計算するステップと、
前記合計されたチャネル行列を使用して前記パラメータを計算するステップと、
前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるとき、前記調整されたセル又はセルの一部の基地局へのチャネルの状態情報をユーザにフィードバックさせるか又はユーザがフィードバックするのを可能にするステップと、
を更に含む請求項3に従属する請求項4記載の方法。
【請求項10】
式
【数20】
を使用して、前記パラメータdwd_corrを計算するステップを更に含み、
Rwd_sum(t1)及びRwd_sum(t2)は、時間サンプルt1及びt2のそれぞれで決定される受信機側又は送信機側の何れかを表す空間的な相関行列であり、
それぞれのRwd_sum(t)は、時間tで、受信機側について
【数21】
により決定されるか、又は送信機側で
【数22】
により決定され、
それぞれのHsum(t,f)は、あるチャネルの合計されたチャネル行列Hsum(t,τ)にフーリエ変換を適用することで得られる行列であり、Nは、フーリエ変換のサイズである、
請求項7記載の方法。
【請求項11】
多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおいて使用されるユーザ装置であって、
前記MIMO無線通信システムにおいて、
それぞれの隣接するセル又はセルのセクタが前記ユーザ装置に信号を送信し、前記ユーザ装置から送信される信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接するセル又はセルのセクタが設けられ、
当該ユーザ装置は、
関連する基地局と当該ユーザ装置との間のチャネルに関連するチャネルの状態情報を前記関連する基地局にフィードバックし、前記関連する基地局が、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、当該ユーザ装置への送信のために信号を調節するのを可能にし、
チャネルの空間構造における時間変化に関連する情報を取得し、
前記チャネルの空間構造における時間変化に基づいてチャネルの状態情報がフィードバックされるタイミングを調節する、ユーザ装置。
【請求項12】
当該ユーザ装置は、さらに、
前記チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータの閾値を基地局から受信し、
前記パラメータを連続して計算し、
前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるとき、1以上の基地局にチャネルの状態情報をフィードバックする、
請求項11記載のユーザ装置。
【請求項13】
それぞれのチャネルのチャネルの空間構造は、チャネル行列により表現され、
当該ユーザ装置は、前記パラメータの計算において1以上のチャネルについて前記チャネル行列を使用する、
請求項12記載のユーザ装置。
【請求項14】
セル間の干渉を低減するため、セルの間又はセルの一部の間で調整が行われ、
前記ユーザ装置は、請求項5乃至10の何れか記載の方法を使用して前記パラメータを計算する、
請求項11乃至13の何れか記載のユーザ装置。
【請求項15】
多入力多出力(MIMO)無線通信システムであって、
それぞれの隣接セル又はセルのセクタが1以上のユーザに信号を送信し、前記1以上のユーザから送信された信号を受信する1以上の基地局を含む複数の隣接セル又はセルのセクタと、
1以上のユーザは、関連する基地局とそれぞれの前記ユーザとの間のチャネルに関するチャネルの状態情報を前記前記関連する基地局にフィードバックし、
基地局は、チャネルの変動を考慮して、フィードバックされたチャネルの状態情報に基づいて、ユーザへの送信のために信号を調節し、
チャネルの空間構造における時間変化に基づいて、ユーザがチャネルの状態情報をフィードバックするタイミングが調節される、MIMO無線通信システム。
【請求項16】
請求項15記載の多入力多出力(MIMO)無線通信システムにおいて使用される基地局であって、
当該基地局は、チャネルの空間構造における時間変化に関連するパラメータの閾値を1以上のユーザに送信し、
前記1以上のユーザは、前記パラメータを連続して計算し、前記パラメータが前記閾値に等しいか又は前記閾値を超えるときに、当該基地局及び/又は1以上の他の基地局にチャネルの状態情報をフィードバックする、基地局。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2013−515386(P2013−515386A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543846(P2012−543846)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070315
【国際公開番号】WO2011/076766
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070315
【国際公開番号】WO2011/076766
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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