説明

フィールド機器およびこれを用いたフィールド機器ソフトウェア更新システム

【課題】フィールド機器のソフトウェア入替の際に、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握すること。
【解決手段】 上位装置からフィールドバスを介してソフトウェアをダウンロードして実行するソフトウェアの入れ替えを行うフィールド機器において、前記上位装置からソフトウェアがダウンロードされると、実行中である前記ソフトウェアの履歴情報を生成し記憶する履歴情報生成管理手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールドバスを介してソフトウェアの入れ替えを行うフィールド機器およびこれを用いたフィールド機器ソフトウェア更新システムに関し、特に、ソフトウェアの履歴情報管理の実現に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インダストリアルオートメーションなどのプロセス制御システムにおいて、プロセスの改善等を目的とした機能分散を進める上で、フィードバック制御などの制御ループを構成する流量計や温度計などのセンサ、アクチュエータ、コントローラを含むフィールド機器にも自己診断機能の拡張などの付加機能が求められている。また従来のフィールド機器は、機能が豊富になったためにバグが発生する可能性も大きくなったので、フィールドバスの通信機能を用いてフィールド機器に実装されるソフトウェアまたはファームウェアを入れ替える(更新する)ことが行われている。
【0003】
このようなフィールド機器およびこれを用いたフィールド機器ソフトウェア更新システムに関連する先行技術文献として、下記の特許文献1がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−173747号公報
【0005】
図7は従来のフィールド機器およびフィールド機器を用いたプロセス制御システムの構成例を示す構成図であり、図7において、アナログインプットファンクションブロックAI、あるいはPIDファンクションブロックPID等が内蔵されているフィールド機器1は、FOUNDATION Fieldbus(登録商標)やシリアル伝送などのためのフィールドバス2に接続される。また図示しない複数のフィールド機器がフィールドバス2に接続されている。
【0006】
フィールド機器1は、プロセス量を測定するセンサ11と、フィールドバス2を介して他のフィールド機器またはその他の機器とデータ通信する通信部12と、フィールド機器1の各機能を制御しソフトウェアまたはファームウェアの入れ替えを実行する演算制御部13と、ソフトウェアまたはファームウェア、センサからの測定信号を出力信号に変換するための演算部分のプログラムなどを格納するプログラム格納領域14A、14Bを有する記憶部14から構成される。
【0007】
フィールド機器1は、ソフトウェアの機能アップや問題解決を行なうために新規ソフトウェアに入れ替えることが可能となっている。
【0008】
またフィールドバス2には、図示しないその他のフィールド機器、および、図示しないI/Oユニットやバスを介して、ホスト3が接続されている。ホスト3は、ソフトウェアをフィールド機器へダウンロード・転送するソフトウェア転送手段を備えたDCSなどの上位装置である。
【0009】
このような構成において、フィールド機器1は、ホスト3から新規ソフトウェアのデータをフィールドバス2を介して受信し、動作中のソフトウェアが格納されていない記憶領域14Bに受信した新規ソフトウェアを記憶する。
【0010】
フィールド機器1は、ダウンロード後に再起動し、プログラム記憶領域14Bに格納された新規ソフトウェアを動作する。つまりフィールド機器1では、動作中のソフトウェアの書き換えが行われることになる。
【0011】
このように、従来のフィールド機器は、フィールドバスの通信機能を用いてフィールド機器に実装されるソフトウェアまたはファームウェアを入れ替えることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のフィールド機器は、ソフトウェアの入替は可能であるものの、以前動作していたソフトウェアがどういうRevisionのものであるか等の履歴情報を知ることが出来ないという問題点があった。
【0013】
また従来のフィールド機器では、以前動作していたソフトウェアのRevisionが把握できないので、不具合が生じた場合にフィールド機器の動作を以前のRevisionのソフトウェアの動作に戻すことが困難であるという問題点があった。
【0014】
さらに従来のフィールド機器は、以前動作していたソフトウェアのRevisionが把握できないので、これまで実装されてきた複数のソフトウェアの経緯・経過が分からず、過去におきたソフトウェアの不具合の調査ができないという問題点もあった。
【0015】
また従来のフィールド機器は、以前動作していたソフトウェアのRevisionが把握できないので、不具合が生じた場合にフィールド機器の動作を以前のRevisionのソフトウェアの動作に戻すことが容易ではなく、ソフトウェアのメンテナンスに時間がかかりプロセス制御システム全体に影響を与えてしまうという問題点もあった。
【0016】
本発明は上述の問題点を解決するものであり、その目的は、フィールド機器のソフトウェア入替の際に、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握することができるフィールド機器およびこれを用いたフィールド機器ソフトウェア更新システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
上位装置からフィールドバスを介してソフトウェアをダウンロードし、実行するソフトウェアの入れ替えを行うフィールド機器において、
前記上位装置からソフトウェアがダウンロードされると、実行中である前記ソフトウェアの履歴情報を生成し記憶する履歴情報生成管理手段を有することを特徴とするフィールド機器である。
【0018】
請求項2記載の発明は、
FOUNDATIONFieldbus規格に準拠し、ソフトウェアを格納するプログラム記憶領域を2個以上有する記憶部を備え、フィールドバスを介して接続される上位装置からダウンロードした新規ソフトウェアを現在実行中であるソフトウェアが格納されていない方のプログラム記憶領域に記憶し、前記新規ソフトウェアを実行してソフトウェアの入れ替えを行うフィールド機器において、前記上位装置から新規ソフトウェアがダウンロードされると、実行中である前記ソフトウェアのRevision情報及び自機に搭載されている各種機能の有無効を示すOption情報に基づき、実行中である前記ソフトウェアの履歴情報を生成し前記記憶部に備えられた履歴情報記憶領域に記憶する履歴情報生成管理手段を有することを特徴とするフィールド機器である。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のフィールド機器において
前記記憶部は、前記複数のプログラム記憶領域内に前記履歴情報を記憶する前記履歴情報記憶領域を有し、前記履歴情報生成管理手段は、前記ソフトウェアがダウンロードされると、現在動作中のソフトウェアが格納されている前記プログラム記憶領域内の前記履歴情報記憶領域に格納されている履歴情報を、新規ソフトウェアが格納される方のプログラム記憶領域の履歴情報記憶領域にコピーすることを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載のフィールド機器において、
前記記憶部は、前記複数のプログラム記憶領域内に最古の前記履歴情報を記憶する最古履歴情報記憶領域を有し、前記履歴情報生成管理手段は、新規ソフトウェアのダウンロードが初回の時は、生成した前記履歴情報を最古の前記履歴情報として前記最古履歴情報記憶領域に記憶することを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4いずれか記載のフィールド機器において、
前記履歴情報生成管理手段は、前記フィールドバスを介して前記上位装置から受信する前記記憶部の前記履歴情報を取得するためのパラメータが設定されたパケットに基づき、前記履歴情報または最古の前記履歴情報を前記上位機器に送信することを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の発明は、
前記請求項1〜5に記載のフィールド機器と、
前記フィールドバスを介して前記フィールド機器と接続され、前記ソフトウェアを前記フィールド機器にダウンロードするためのソフトウェアダウンロード手段を備えた上位装置と、を備えたことを特徴とするフィールド機器ソフトウェア更新システム。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のフィールド機器ソフトウェア更新システムにおいて、前記上位装置は、前記履歴情報または最古の前記履歴情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明のフィールド機器およびこれを用いたフィールド機器ソフトウェア更新システムは、ソフトウェア入替の際に履歴情報を作成し、この履歴情報を複数のプログラム記憶領域のそれぞれに設けられた履歴情報記憶領域に保存することにより、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握できる。
【0025】
また本発明によれば、フィールド機器がソフトウェア入替の際に履歴情報を作成して記憶部に保存し、ホストがフィールド機器から履歴情報を取得・表示することにより、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握・表示できるので、不具合が生じた場合にフィールド機器の動作を以前のRevisionのソフトウェアの動作に戻すことが容易となる。
【0026】
また本発明によれば、これまで実装されてきた複数のソフトウェアの経緯・経過を把握でき、過去におきたソフトウェアの不具合の調査が可能となる。
【0027】
また本発明によれば、不具合が生じた場合にフィールド機器の動作を以前のRevisionのソフトウェアの動作に戻すことが容易となり、ソフトウェアのメンテナンスが短時間となることにより、プロセス制御システム全体に与える影響が従来と比較して減少できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明に係るフィールド機器の一実施例を示す構成図であり、図7などと共通する部分には同一の符号を付けて適宜説明を省略する。図1と図7との相違点は、図1では演算制御部13がソフトウェアまたはファームウェアの履歴情報を作成し、記憶部14にRevision情報を記憶・管理する点などである。
【0029】
図1において、フィールド機器1は、プロセス量を測定するセンサ11と、フィールドバス2を介して他のフィールド機器またはその他の機器とデータ通信するためのFF通信用のインタフェースである通信部12と、データを伝送する通信機能やAI(アナログ信号入力)・AO(アナログ信号入出力)・PID演算(比例、積分、微分演算)などのフィールド機器固有の機能ブロックの実行・ソフトウェアまたはファームウェアの入れ替えの実行・ソフトウェアに関する履歴情報を生成し記憶管理する履歴情報生成管理手段などの各機能・手段を制御するCPUなどの演算制御部13とから構成される。
【0030】
またフィールド機器1は、ソフトウェアまたはファームウェア、センサからの測定信号を出力信号に変換するための演算部分のプログラムおよびネットワーク情報を構成するコンフィギュレーション情報を保存するEPROM、FlashROM、EEPROMなどの不揮発性メモリまたはRAM、ハードディスクなどの記憶部14からも構成される。
【0031】
フィールド機器1の記憶部14は、現在実行中のソフトウェアまたは入替前後のソフトウェアが格納されるプログラム記憶領域14Aおよび14Bと、実行すべきソフトウェアの格納領域(プログラム記憶領域14Aまたは14B)を指定する実行プログラム情報が格納されているプログラム実行先記憶領域14Cとを有する。
【0032】
プログラム記憶領域14Aおよび14Bは、ソフトウェアダウンロードの履歴情報が格納される履歴情報記憶領域14Dおよび14Eをそれぞれ有する。またプログラム記憶領域14Aおよび14Bは、ソフトウェアダウンロードの最古の履歴情報が格納される最古情報記憶領域14Fおよび14Gをそれぞれ有する。
【0033】
図2は、図1の演算制御部13の機能ブロック図であり、図2において演算制御部13は、プログラム実行先記憶領域14Cの実行プログラム情報に基づき、実行プログラム情報により指定されているプログラム記憶領域14Aまたは14Bに格納されているソフトウェアを実行する実行管理部13Aと、受信した新規ソフトウェアのデータを保存するプログラム記憶管理部13Bを有する。
【0034】
プログラム記憶管理部13Bは、受信した新規ソフトウェアのデータを現在動作していないソフトウェアを格納しているプログラム記憶領域14Aまたは14Bに保存する。
【0035】
またフィールド機器1の演算制御部13は、新規ソフトウェアを保存する際に現在動作中であるソフトウェアの各種情報に基づきソフトウェアダウンロード履歴情報を生成して履歴情報記憶領域14Dまたは14Eに追加記憶し、最初のソフトウェアダウンロードの場合では生成された履歴情報を最古の履歴情報として最古情報記憶領域14Fまたは14Gに記憶する、上述の履歴情報生成管理手段である履歴情報生成管理部13Cも有する。
【0036】
図3は、図1のフィールド機器1により構成されるフィールド機器ソフトウェア更新システムの構成図である。
【0037】
なお、フィールド機器1のソフトウェアの機能アップや問題解決を行なうための新規ソフトウェアの入れ替え作業は、フィールド機器の動作に応じて、Class1(更新中も正常に動作)、Class2(バスには参加するも演算などは停止)、Class3(バスに参加のみ)に分類される。図3は、最も実現が困難であるClass1によるソフトウェアダウンロード時のフィールド機器ソフトウェア更新システムの構成を図示したものである。
【0038】
図3において、フィールド機器ソフトウェア更新システム100は、フィールド機器1とフィールド機器間の信号のやりとりをデジタル通信を用いて行うネットワークであるフィールドバス2と、ホスト3から構成される。
【0039】
ホスト3は、図示しない入力手段、表示手段、記憶手段、ソフトウェアをフィールド機器へ転送またはダウンロードするためのソフトウェアダウンロード手段を備えたDCSなどの上位装置である。
【0040】
フィールド機器1は、フィールドバス2に接続される。またフィールドバス2には、図示しないその他のフィールド機器、および、図示しないI/Oユニット、バスを介して、ホスト3が接続される。
【0041】
図4は、図1等のフィールド機器1およびホスト3の動作フロー図である。前提として、フィールド機器1の実行管理部13Aは、プログラム記憶領域14Aに格納されているソフトウェアを現在使用しているものとする。
【0042】
ステップS101において、ソフトウェアダウンロードを行なうユーザは、入れ替えたい新規ソフトウェアをホスト3(DCS等)に用意する。具体的には、入れ替え対象である新規ソフトウェアは、図示しない記憶メディア読み取り装置などを介して、ホスト3に読み取られ一時的にホスト3に記憶される。
【0043】
ステップS102において、ホスト3は、ユーザにより入力されたソフトウェアの入替を行う入替対象としてフィールド機器1を指定する指定信号を図示しない入力手段を介して受信する。
【0044】
ステップS103において、ホスト3は、ユーザにより入力されたソフトウェアダウンロードの開始命令信号を図示しない入力手段を介して受信する。
【0045】
ステップS104において、ホスト3は、入力手段を介して入力された開始命令に基づき、FOUNDATION Fieldbus通信(以下、FF通信という)のプロトコルに従って新規ソフトウェアの転送を開始する。いいかえれば、ホスト3のソフトウェアダウンロード手段は、開始命令に基づきソフトウェアダウンロードを開始する。
【0046】
ステップS105において、入替対象となったフィールド機器1は、FF通信プロトコルに従ってフィールドバス2を介して新規ソフトウェアのデータを順次受信する。
【0047】
ステップS106において、フィールド機器1のプログラム記憶管理部13Bは、受信した新規ソフトウェアのデータを現在動作していないプログラム記憶領域14Bに保存する。
【0048】
またフィールド機器1の履歴情報生成部13Cは、新規ソフトウェアを保存する際、記憶部12に格納されている現在動作中のソフトウェアのRevision情報およびOption情報に基づきソフトウェアダウンロード履歴情報を生成し、履歴情報記憶領域14Eに追加記憶する。
【0049】
なおRevision情報は、現在動作中のソフトウェアの細かい変更・修正を表す改訂番号を示す情報であってユーザに公開されており、たとえば「R3.01」、「R3.02」などで表される。Option情報は、フィールド機器1に搭載されている機能(PID、AI、AOなどの機能ブロック)の有無効を示し、たとえば、「E000」、「E001」などで表される。これらRevision情報はプログラム記憶領域に格納されているソフトウェア内に記載されており、Option情報は記憶部14に記憶されている。
【0050】
具体的には、履歴情報生成部13Cは、「E000」などのOption情報および「3.02」などのRevision情報に基づき、「E000/3.02」などのソフトウェアダウンロード履歴情報を生成し、プログラム記憶領域14B内の履歴情報記憶領域14Eに記憶する。
【0051】
また、履歴情報生成管理部13Cは最初のソフトウェアダウンロードの時のみ、最古情報としてプログラム記憶領域14B内の最古情報記憶領域14Gにソフトウェアダウンロード履歴情報を記憶する。
【0052】
ステップS107において、フィールド機器1の演算制御部12の実行管理部13Aは、新規ソフトウェアの受信を完了すると、新たに受信したプログラムの記憶領域14Bに記憶されたソフトウェアを実行するように、プログラム実行先領域14Cの実行プログラム情報を変更する。
【0053】
ステップS108において、フィールド機器1の実行管理部13Aは、プログラム実行先領域14Cの実行プログラム情報が更新完了した後に、たとえばソフトウェアを再起動することにより、新規ソフトウェアを実行する。
【0054】
また履歴情報をホスト3の図示しない表示手段に表示させるためには、フィールド機器1およびホスト3は以下のステップS109〜S112の動作を行う。
【0055】
ステップS109において、ホスト3の図示しない入力手段を介して、フィールド機器1から履歴情報を取得するための、たとえばSOFTDL_HIST_DATAといったパラメータがホスト3に入力される。
【0056】
ステップS110において、ホスト3は、入力されたパラメータに基づき、このパラメータが設定されたFF通信プロトコルのパケット(以下、履歴要求パケットという)をフィールド機器1に送信する。
【0057】
ステップS111において、フィールド機器1の履歴情報生成管理部13Cは、ホスト3からフィールドバス2を介して受信した履歴要求パケットに基づいて、履歴情報をホスト3に通信部12を介して送信する。
【0058】
ステップS112において、ホスト3は、フィールド機器1から受信した履歴情報に基づき、これらの履歴情報を図示しない表示手段に表示する。
【0059】
この結果、本発明のフィールド機器およびこれを用いたフィールド機器ソフトウェア更新システムは、ソフトウェア入替の際に履歴情報を作成し、この履歴情報を複数のプログラム記憶領域のそれぞれに設けられた履歴情報記憶領域に記憶することにより、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握できる。
【0060】
また本発明によれば、ソフトウェア入替の際に履歴情報を作成して記憶部に保存し、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握・表示できるので、フィールド機器の動作に不具合が生じた場合に、安定して動作していた以前のRevisionのソフトウェアを改めてダウンロードし、安定した動作に戻すことが容易となる。
【0061】
また本発明によれば、ソフトウェア入替の際に履歴情報を作成して記憶部に保存し、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握・表示できるので、これまで実装されてきた複数のソフトウェアの経緯・経過を把握でき、過去におきたソフトウェアの不具合の調査が可能となる。
【0062】
また本発明によれば、ソフトウェア入替の際に履歴情報を作成して記憶部に保存し、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握・表示できるので、不具合が生じた場合にフィールド機器の動作を以前のRevisionのソフトウェアの動作に戻すことが容易となり、ソフトウェアのメンテナンスが短時間となり、プロセス制御システム全体に与える影響が従来と比較して減少できる。
【0063】
なお、本発明に係るフィールド機器およびこれを用いたフィールド機器ソフトウェア更新システムは、上述のステップS106において履歴情報を記憶すると説明したが、フィールド機器の状態によって記憶方法が異なるものでもよい。図5は、各種状況下でのフィールド機器のソフトウェアダウンロードの動作説明図である。
【0064】
図5(A)はフィールド機器が履歴管理機能を有しない場合のソフトウェアダウンロード、(B)はフィールド機器が履歴管理機能を有する場合の1回目のダウンロード、(C)はフィールド機器が履歴管理機能を有しする場合であって2回目以降のダウンロード、(D)はフィールド機器履歴情報を記憶しており履歴情報記憶件数の最大記憶件数を超えてしまう場合のダウンロードの動作説明図である。
【0065】
図5(A)において、動作中のソフトウェアが履歴管理機能を有しないフィールド機器1の場合であって新規ソフトウェアをホスト3などからダウンロードするときには、フィールド機器1はダウンロードした新規ソフトウェア(R3.02)をプログラム記憶領域14Bに格納するが、履歴情報は生成できず記憶できない。
【0066】
図5(B)において、履歴管理機能を有しているフィールド機器1の場合であって、ホスト3から新規ソフトウェアを初めてダウンロードするときは、履歴情報生成部13Cは動作中のソフトウェアのRevision情報(R3.02)およびOption情報(E000)に基づきソフトウェアダウンロード履歴情報(E000/3.02)を作成し、受信した新規ソフトウェアが記憶されているプログラム記憶領域14B内の履歴情報記憶領域14Eに記憶する。また、履歴情報生成管理部13Cは、最初のソフトウェアダウンロードである場合は、生成された履歴情報を最古の履歴情報として最古情報記憶領域14Gにもソフトウェアダウンロード履歴情報を記憶する。
【0067】
図5(C)において、履歴管理機能を有しているフィールド機器1の場合であってホスト3から新規ソフトウェアをダウンロードするのが2回目(または2回目以降)であるときは、フィールド機器1の履歴情報生成管理部13Cは、現在保持している履歴情報に動作中のソフトウェアのRevision情報およびOption情報に基づきソフトウェアダウンロード履歴情報(E000/3.03)を作成し、受信した新規ソフトウェアが記憶されているプログラム記憶領域14Bの履歴情報記憶領域14Eに記憶する。
【0068】
またフィールド機器1は、新規ソフトウェアをダウンロードするのが2回目(または2回目以降)である場合、ソフトウェアの入替時に現在動作中のソフトウェアが格納されているプログラム記憶領域14A内の履歴情報記憶領域14Dに記憶される履歴情報(たとえば、E000/3.02)をコピーし、もう一方のプログラム記憶領域14Bの履歴情報記憶領域14Eに保存する
【0069】
図5(D)において、ソフトウェアダウンロードに際して作成された履歴情報の件数が、ダウンロードにて受信したソフトウェアが記憶されるプログラム記憶領域14Aまたは14B内の履歴情報記憶領域14Dまたは14Eの最大記憶件数に達した場合には、履歴情報生成管理部13Cは、現在保持している履歴情報記憶領域14Dまたは14Eに記憶されている中で一番古いデータ(E000/3.02)を1件削除し、現在動作中のソフトウェアのRevision情報およびOption情報に基づきソフトウェアダウンロード履歴情報を作成して、ソフトウェアダウンロードにて受信した新規ソフトウェアの記憶領域内の履歴情報記憶領域14Dまたは14Eに記憶する。なお最大記憶件数は、あらかじめ設定され記憶部12内に記憶されるものでもよい。
【0070】
このように、本発明によれば、複数のプログラム記憶領域のそれぞれに履歴情報を保存する履歴情報記憶領域を有し、ソフトウェアのダウンロード・入替毎に現在動作中のソフトウェアが格納されるプログラム記憶領域の履歴情報記憶領域に格納されている履歴情報を、新規ソフトウェアが格納される方のプログラム記憶領域の履歴情報記憶領域にコピーし記憶することにより、各プログラム記憶領域において以前動作していたソフトウェアの履歴情報を全て把握できる。
【0071】
また本発明によれば、履歴情報を更新の順序に応じて履歴情報記憶領域に保存することにより、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握できる。
【0072】
また本発明によれば、ソフトウェア入替の際に履歴情報を作成して記憶部に保存し、最古の履歴情報を最古履歴情報記憶領域に記憶するため、履歴情報記憶領域の履歴情報が最大記憶件数を超える場合であっても最古の履歴情報は削除されず記憶が保持されることにより、履歴情報管理を開始した初回の履歴情報が把握できるので、当時のRevisionのソフトウェアを改めてダウンロードし、当時の動作に戻すことが容易となる。
【0073】
また本発明に係るフィールド機器ソフトウェア更新システムは、ホスト3はFF通信プロトコルにて各種パラメータを指定することによりフィールド機器1から履歴情報を取得できるものでもよい。図6は、各種パラメータの説明とその動作の説明図であり、(A)は最古履歴情報を取得するためのパラメータの一例、(B)はソフトウェアダウンロード履歴情報を取得するためのパラメータの一例、(C)は各履歴情報を取得する動作説明図である。
【0074】
最古履歴情報を取得する場合には、ユーザはホスト3の図示しない入力手段などを介して、最古履歴情報を取得する対象としてフィールド機器1を選択し、(A)に示すようなパラメータ「SOFTDL_HIST_FIRST_VERSION」を入力する。このパラメータ「SOFTDL_HIST_FIRST_VERSION」は、フィールド機器出荷時に搭載していたソフトウェアのバージョン等の最古情報を取得するためのパラメータである。
【0075】
ホスト3は、フィールド機器1に取得対象であるパラメータ(SOFTDL_HIST_FIRST_VERSION)を指定するため、FF通信プロトコルのパケットにこのパラメータを設定しフィールド機器1に送信する。
【0076】
フィールド機器1は、ホスト3から「SOFTDL_HIST_FIRST_VERSION」のような最古情報を取得するためのパラメータを指定するパケットを受信すると、返信パケットにフィールド機器1の最古情報記憶領域14Gに記憶している履歴情報をパラメータ情報として準備して返信する。
【0077】
ホスト3は、図6(C)に示すようにフィールド機器1から受信した返信パケットに基づき最古履歴情報(たとえばE00/3.02−7−6.01)を取得し、最古履歴情報を図示しない表示手段に表示する。
【0078】
一方、履歴情報を取得する場合には、ユーザはホスト3の図示しない入力手段などを介して、履歴情報を取得する対象としてフィールド機器1を選択し、(B)に示すようなパラメータ「SOFTDL_HIST_DATA」を入力する。このパラメータ「SOFTDL_HIST_DATA」は、ソフトウェアダウンロードの履歴情報を取得するためのパラメータである。
【0079】
ホスト3は、フィールド機器1に取得対象であるパラメータ「SOFTDL_HIST_DATA」を指定するため、FF通信プロトコルのパケットにこのパラメータを設定しフィールド機器1に送信する。
【0080】
フィールド機器1は、ホスト3から「SOFTDL_HIST_DATA」のような履歴情報を取得するためのパラメータを指定するパケットを受信すると、返信パケットにフィールド機器1の履歴情報記憶領域14DまたはEに記憶している履歴情報をパラメータ情報として準備して返信する。
【0081】
ホスト3は、図6(C)に示すように、フィールド機器1から受信した返信パケットに基づき履歴情報を取得し、履歴情報(たとえばE00/3.03―7−6.02、E00/3.04−7―6.03、・・・、xxxx/xxx−x−xxx)を図示しない表示手段に表示する。
【0082】
このように本発明によれば、フィールド機器がソフトウェア入替の際に履歴情報を作成して記憶部に保存し、ホストがFF通信を利用して各種パラメータを入力しフィールド機器から履歴情報を取得・表示することにより、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握できる。また本発明によれば、ホストがFF通信を利用して各種パラメータを入力し最新の履歴情報から最古の履歴情報まで自由に表示できることにより、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握できる。
【0083】
また上述の実施例に係るフィールド機器は、フィールド機器のRevision情報およびOption情報に基づき履歴情報を作成し記憶すると説明しているが、ソフトウェアダウンロードを実行した日時を示す「日付情報」、LCD部やセンサ部などの部品ごとに機能アップした改訂番号である「各部レビジョン情報(Device Revision)」に基づきソフトウェアダウンロード履歴情報を作成し記憶するものでもよい。またこれら「日付情報」および「各部レビジョン情報」を、ステップS106で作成されたソフトウェアダウンロードの履歴情報に関連付けて履歴情報記憶領域に記憶するものでもよい。
【0084】
また上述の実施例に係るフィールド機器は、ソフトウェアのデータをウエブサイトからインターネットを経由して取得するものであってもよい。
【0085】
以上説明したように、本発明では、ソフトウェア入替の際に履歴情報を作成して記憶部に保存し、以前動作していたソフトウェアの履歴情報を把握・表示できるので、インダストリアルオートメーションなどのプロセス制御システムにおいてプロセスの改善に貢献でき、フィールド制御ループによる被制御対象の最適運転・制御にも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係るフィールド機器の一実施例を示す構成図である。
【図2】図1の演算制御部13の機能ブロック図である。
【図3】図1のフィールド機器1により構成されるフィールド機器ソフトウェア更新システムの構成図である。
【図4】図1等のフィールド機器1およびホスト3の動作フロー図である。
【図5】各種状況下でのフィールド機器のソフトウェアダウンロードの動作説明図である。
【図6】各種パラメータの説明とその動作の説明図である。
【図7】従来のフィールド機器およびフィールド機器を用いたプロセス制御システムの構成例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0087】
1 フィールド機器
11 センサ
12 通信部
13 演算制御部
13A 実行管理部
13B プログラム記憶管理部
13C 履歴情報生成管理部
14 記憶部
14A、14B プログラム記憶領域
14C プログラム実行先記憶領域
14D、14E 履歴情報記憶領域
14F、14G 最古履歴情報記憶領域
2 フィールドバス
3 ホスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置からフィールドバスを介してソフトウェアをダウンロードして実行するソフトウェアの入れ替えを行うフィールド機器において、
前記上位装置からソフトウェアがダウンロードされると、実行中である前記ソフトウェアの履歴情報を生成し記憶する履歴情報生成管理手段を有することを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
FOUNDATIONFieldbus規格に準拠し、ソフトウェアを格納するプログラム記憶領域を2個以上有する記憶部を備え、フィールドバスを介して接続される上位装置からダウンロードした新規ソフトウェアを現在実行中であるソフトウェアが格納されていない方のプログラム記憶領域に記憶し、前記新規ソフトウェアを実行してソフトウェアの入れ替えを行うフィールド機器において、
前記上位装置から新規ソフトウェアがダウンロードされると、実行中である前記ソフトウェアのRevision情報及び自機に搭載されている各種機能の有無効を示すOption情報に基づき、実行中である前記ソフトウェアの履歴情報を生成し前記記憶部に備えられた履歴情報記憶領域に記憶する履歴情報生成管理手段を有することを特徴とするフィールド機器。
【請求項3】
前記記憶部は、
前記複数のプログラム記憶領域内に前記履歴情報を記憶する前記履歴情報記憶領域を有し、
前記履歴情報生成管理手段は、
前記ソフトウェアがダウンロードされると、現在動作中のソフトウェアが格納されている前記プログラム記憶領域内の前記履歴情報記憶領域に格納されている履歴情報を、新規ソフトウェアが格納される方のプログラム記憶領域の履歴情報記憶領域にコピーすることを特徴とする
請求項2記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記記憶部は、
前記複数のプログラム記憶領域内に最古の前記履歴情報を記憶する最古履歴情報記憶領域を有し、
前記履歴情報生成管理手段は、
新規ソフトウェアのダウンロードが初回の時は、生成した前記履歴情報を最古の前記履歴情報として前記最古履歴情報記憶領域に記憶することを特徴とする
請求項2または3記載のフィールド機器。
【請求項5】
前記履歴情報生成管理手段は、
前記フィールドバスを介して前記上位装置から受信する前記記憶部の前記履歴情報を取得するためのパラメータが設定されたパケットに基づき、前記履歴情報または最古の前記履歴情報を前記上位機器に送信することを特徴とする
請求項2〜4いずれかに記載のフィールド機器。
【請求項6】
前記請求項1〜5に記載のフィールド機器と、
前記フィールドバスを介して前記フィールド機器と接続され、前記ソフトウェアを前記フィールド機器にダウンロードするソフトウェアダウンロード手段を備えた上位装置と、
を備えたことを特徴とするフィールド機器ソフトウェア更新システム。
【請求項7】
前記上位装置は、
前記履歴情報または最古の前記履歴情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする
請求項5記載のフィールド機器ソフトウェア更新システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−117753(P2010−117753A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288524(P2008−288524)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】