説明

フェナントロチオフェン系化合物、および、その用途、ならびに製造方法

【課題】ルテニウム等の枯渇性原料を使用せず、耐久性の強い骨格構造を有し、安価で高い変換効率性能を有する色素増感型光電変換セル用の増感色素に適する化合物を提供する。
【解決手段】増感色素は、フェナントロチオフェン、ペリレン系化合物であり、このチオフェン環を有していることにより、分子中にポリエン構造を導入することなく光電変換用増感色素に必要な幅広い吸収領域有する。構造はポリエン構造に見られるような、酸化等を受けにくく、安定な構造である。また、励起状態になると、中心のフェナントレン骨格を通しての電荷(電子)の移動が起きる。この電荷(電子)は、末端のカルボン酸基を通して酸化チタンへ電荷(電子)をスムーズに注入することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェナントロチオフェン系化合物、およびこれを用いた光電変換用増感色素に関する。また、本発明は、この光電変換用増感色素を用いた光電変換材料、光電変換電極、およびこれを用いた光電変換セルに関する。さらには、上記の化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、テルル化カドミウムやセレン化インジウム銅などの化合物太陽電池が実用化、もしくは研究開発対象となっているが、普及させる上で製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバックタイムが長い等の問題点を克服する必要がある。一方、大面積化や低価格を指向した有機材料を用いた太陽電池もこれまでに多く提案されているが変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があった。
【0003】
こうした状況の中で、色素によって増感された半導体微多孔質体を用いた光電変換電極および光電変換セル、ならびにこれを作成するための材料および製造技術が開示された(非特許文献1および特許文献1参照)。開示された電池は、ルテニウム錯体色素によって分光増感された酸化チタン多孔質薄層を作用電極としヨウ素を主体とする電解質層および対電極から成る色素増感型光電変換セルである。この方式の第一の利点は酸化チタン等の安価な酸化物半導体を用いるため、安価な光電変換素子を提供できる点であり、第二の利点は用いられるルテニウム錯体色素が可視光域に幅広く吸収を有していることから比較的高い変換効率が得られる点である。
【0004】
しかしながら一方で、色素増感型光電変換セルの問題点のひとつとして、色素の原料にルテニウムを用いていることが挙げられる。ルテニウムはクラーク数が0.01ppmと白金やパラジウムに匹敵する量しか地球に現存せず、大量に使われると枯渇を免れない。さらにルテニウム錯体色素の価格も高価な物となり、光電変換セルの大量普及の妨げとなる。
【0005】
近年、色素増感型光電変換セルにおける増感色素として、非ルテニウム錯体色素の研究が盛んに行なわれている。その例としてはクマリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素等があげられる。これらの有機色素はルテニウム錯体に比較して吸光係数が大きく、分子設計の自由度も大きいため、高い光電変換効率が期待されている。しかしながら、色素の光吸収領域がせまく、酸化チタンへの電荷の注入が非効率的である等の理由から、増感色素の改良が求められていた。
【0006】
これらの問題を解決するため、酸化チタンとの吸着末端に特徴をもたせた増感色素として、置換アクリル酸部位を持つ増感色素が比較的高い変換効率を有することが開示されている(特許文献2、3参照)。これらの増感色素に特徴的な点はアクリル酸末端のカルボン酸基が結合する炭素原子が同時にシアノ基を代表とする電子吸引性置換基を有することによりアクリル酸末端の電子吸引効果を増大させている点にある。増感色素は末端のカルボン酸基で酸化チタン等の無機酸化物半導体表面に結着し、増感色素が光吸収することによって生じた励起電子をカルボン酸基を通して無機酸化物側へ注入しているが、この部位の電子吸引効果が強くなることによって電子注入効果が促進され、ひいては高い変換効率を実現している。代表的な例としては、クマリン骨格とシアノ基を有するアクリル酸末端とを組み合わせた増感色素で、5%以上の高い変換効率を実現している(非特許文献2参照)。また、ポリエン構造とアミノ基を組み合わせた発色団に同様のアクリル酸末端を導入した増感色素においても5%以上の高い変換効率が達成されている(非特許文献3参照)。
【0007】
しかしクマリン骨格等の吸収波長領域は可視光領域の中で比較的短波長側に寄っているため、この骨格を基に長波長化を図ろうとすれば長鎖の二重結合部位(ポリエン構造)などを導入することになる。長鎖の二重結合部位は活性酸素等に酸化されやすいことや熱安定性が低い等、耐久性の弱い性質を有している。同様の理由で、非特許文献3に記載のポリエン構造を有する増感色素も耐久性に問題があることが予想される。また、増感色素として機能するシアニン系色素等も長鎖二重結合部位を有し、耐久性の弱い色素の一例である。
【0008】
長鎖二重結合部位等のように耐久性の弱い部位の導入にたよらず、耐久性の強い骨格構造を有し、さらに、安価で枯渇性の原料を使用せず、高い変換効率特性を有した光電変換セルを提供できる増感色素が求められていた。
【0009】
【非特許文献1】Nature(第353巻、第737−740頁、1991年)
【非特許文献2】Chem.commun.(第569−570頁、2001年)
【非特許文献3】Chem.commun.(第252−253頁、2003年)
【特許文献1】米国特許4927721号明細書
【特許文献2】特開2002‐164089号公報
【特許文献3】WO 02/11213号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的はルテニウム等の枯渇性原料を使用せず、耐久性の強い骨格構造を有し、安価で高い変換効率性能を有する色素増感型光電変換セル用の増感色素に適する化合物を提供することである。さらにはこの化合物を用いた増感色素を無機半導体多孔質体表面に連結させた光電変換材料、および光電変換材料を導電性表面を有する透明基材の導電面に積層して成る光電変換電極、および光電変換電極を電解質層を介して導電性対極を組み合わせて成る光電変換セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記一般式[1]であらわされるフェナントロチオフェン系化合物に関する。
【0012】
一般式[1]
【化1】


【0013】
(式中、m、および、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、
X、および、Yは、それぞれ独立に、水素原子、ホルミル基、もしくは、下記一般式[2]で表される基である。
1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0014】
一般式[2]
【化2】

【0015】
(式中、Mは水素原子、カルボン酸と塩を形成する陽イオン、もしくは、炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0016】
また、本発明は、X、および、Yが、それぞれ独立に、水素原子、または、一般式[2]で表される基である上記フェナントロチオフェン系化合物に関する。ただし、X、および、Yのうち少なくとも一つは、一般式[2]で表される基である。
【0017】
また、本発明は、X、および、Yが水素原子である上記フェナントロチオフェン化合物に関する。
【0018】
また、本発明は、X 、および、Yが、それぞれ独立に、水素原子、または、ホルミル基である上記フェナントロチオフェン化合物に関する。ただし、X、および、Yのうち少なくとも一つは、ホルミル基である。
【0019】
また、本発明は、上記フェナントロチオフェン化合物を含んでなる光電変換用増感色素に関する。
【0020】
また、本発明は、上記光電変換用増感色素と、さらに、1種以上の光電変換用増感色素を含んでなる光電変換用増感色素に関する。
【0021】
また、本発明は、上記増感色素と、無機半導体多孔質体とを連結させてなる光電変換材料に関する。
【0022】
また、本発明は、上記光電変換材料を透明電極に積層させてなる光電変換電極に関する。
【0023】
また、本発明は、上記光電変換電極、電解質層、および導電性対極を含んでなる光電変換セルに関する。
【0024】
また、本発明は、下記一般式[3]で表される化合物から下記一般式[4]で表される化合物を生成させる第一工程と、
下記一般式[4]で表される化合物から下記一般式[5]で表される化合物を生成させる第二工程とからなる一般式[5]で表される化合物の製造方法に関する。
【0025】
一般式[3]
【化3】


【0026】
(式中、m、および、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、
1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0027】
一般式[4]
【化4】

【0028】
(式中、m、および、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、
V、および、Wは、それぞれ独立に、水素原子、または、ホルミル基である。ただし、V、および、Wのうち少なくとも一つは、ホルミル基である。
1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0029】
一般式[5]
【化5】

【0030】
(式中、m、および、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、
T、および、Uは、それぞれ独立に、水素原子、または、下記一般式[2]で表される基である。ただし、T、および、Uのうち少なくとも一つは、一般式[2]で表される基である。
1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0031】
一般式[2]
【化6】


【0032】
(式中、Mは水素原子、カルボン酸と塩を形成する陽イオン、もしくは、炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0033】
本発明において一般式[1]の化合物(光電変換用増感色素)を用い、枯渇性のない材料でかつ高い光電変換効率を有する光電変換セルを提供することができた。また、一般式[1]の化合物(光電変換用増感色素)は、太陽光に対して幅広い波長領域で光電変換機能を発現でき、高効率な光電変換材料、光電変換電極および光電変換セルを作成することができた。さらに、光劣化や熱劣化等が起きにくく電池の長期安定性に高い効果が確認された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、詳細にわたって本発明を説明する。
本発明の化合物は、主に光機能材料として、種々の用途に使用することが出来る。ここでいう光機能材料とは、光を吸収することによって、増感効果、発熱効果、発色効果、退色効果、蓄光効果、相変化効果、光電変換効果、光磁気効果、光触媒効果、光変調効果、光記録効果、ラジカル発生効果等の機能を発現する材料、あるいは逆にこれらの効果を受けて発光機能を有する材料のことをさす。当該化合物の用途の例としては、光電変換材料、発光材料、光記録材料、画像形成材料、フォトクロミック材料、エレクトロルミネッセンス材料、光導電材料、二色性材料、ラジカル発生材料、酸発生材料、塩基発生材料、蓄光材料、非線形光学材料、第2高調波発生材料、第3高調波発生材料、感光材料、光吸収材料、近赤外吸収材料、フォトケミカルホールバーニング材料、光センシング材料、光マーキング材料、光化学治療用増感材料、光相変化記録材料、光焼結記録材料、光磁気記録材料、光線力学療法用色素、光触媒水分解用増感色素および光電変換用増感色素等に幅広く用いることができる。
【0035】
本明細書においては一般式[1]で表される化合物を主として光電変換用増感色素として用いるので、この化合物を主として光電変換用増感色素あるいは増感色素として呼称する場合が多いが、前記の幅広い応用を否定するものではない。
【0036】
本発明のフェナントロペリレン系化合物は、一般式[1]で表される化合物であることを特徴とする。
【0037】
一般式[1]の中のm、および、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。
【0038】
また、X、および、Yは、それぞれ独立に、水素原子、ホルミル基、もしくは、一般式[2]で表される基である。
【0039】
一般式[2]の中のMは水素原子、または、カルボン酸と塩を形成する陽イオン、もしくは、炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0040】
陽イオンとしては、上記のカルボン酸と塩を形成する陽イオンであれば特に制限はないが、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属イオンやテトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム等の4級アンモニウムイオンがあげられる。
【0041】
また、炭素数1〜8のアルキル基としては特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基といった直鎖状のアルキル基や、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基といった分岐のアルキル基があげられる。
【0042】
また、一般式[1]中のR1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。アルキル基としては、前述のものがあげられる。
さて、一般式[1]の好ましい形態のひとつとしては、X、および、Yが、それぞれ独立に、水素原子、または、一般式[2]で表される場合(ただし、X、および、Yのうち少なくとも一つは、一般式[2]で表される基である。)があげられ、これは製造方法における一般式[5]に相当するものである。
【0043】
上記構造をとることで、X、またはYに一般式[2]で表されるカルボン酸基、その塩、もしくは、エステル基を持つことができるため、光電変換用増感色素として色素増感型光電変換セルに好適に使用することが出来るからである。
光電変換用増感色素を無機半導体に吸着させて使用する場合には、一般式[2]中のMは水素原子または4級アンモニウム塩であることが好ましい。しかしながらMがアルキル基で何ら問題なく使用することができる。たとえば、Mがアルキル基の場合には、適当な触媒等を用いて系中で加水分解をしながら吸着させることもできる。
【0044】
ここで、色素増感型光電変換セルの動作機構としては、太陽光を吸収した増感色素が光励起された後、励起状態の増感色素から酸化チタン等の無機半導体の伝導帯へ電子が注入される過程と、無機半導体に電子を注入して酸化された増感色素へ、ヨウ素をはじめとするレドックス系からの電子注入による還元からなる。
【0045】
したがって、光電変換用増感色素に必要な機能としては、色素が広い吸収領域を有して太陽光の発光を効率的に吸収できることや、酸化チタン等の無機半導体に効率よく電荷を注入できることが挙げられる。
【0046】
一般式[1]の化合物が、X,Yの少なくとも一つに一般式[2]の置換基を有することで、下記の特徴を有する。
【0047】
基底状態でアミノ基の窒素原子周辺に局在化している電子が太陽光を吸収して、励起状態になると、中心のフェナントレン骨格を通しての電荷(電子)の移動が起きる。この電荷(電子)は一般式[2]で表される末端のカルボン酸基(アクセプター)を通して酸化チタンへ電荷(電子)をスムーズに注入する可能となる。この際、近傍に位置するシアノ基は補助アクセプターとして機能して、電荷(電子)の注入をより効率的にする効果を発揮する。
【0048】
また、本発明の化合物は、チオフェン環を有していて、これにより、分子中にポリエン構造を導入することなく、光電変換用増感色素に必要な幅広い吸収領域有している。そのため、ポリエン構造に見られるような、酸化等を受けにくく、安定な構造といえる。
【0049】
すなわち、一般式[1]の化合物で、XまたはYに、一般式[2]の置換基を有する構造は、高い光電変換効率と高い安定性を達成しうる構造であることがいえる。
【0050】
次に一般式[1]で表される本発明の化合物のうち、光電変換用増感色素に好適に使用できる化合物の具体例を表1に示すが、これらに限定されるものではない。表中、Phはフェニル基、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基を表す。
尚、表1中の一般式[1]で表される化合物は、二重結合を有するため、シス体、トランス体などの構造異性体をとりうるが、その立体構造は特に限定されず、いずれも、たとえば光電変換用増感色素として、良好に使用することができる。例えば、表1中のシアノ基とカルボキシル基が入れ替わってシス、トランス、任意の幾何異性体を選択できる。
【0051】
【表1】

【0052】
【表1】

【0053】
また、一般式[1]で表される本発明の化合物のうち、別の好ましい例としては、X、および、Yが水素原子である場合もあげられる。この理由としては、これらの化合物が、前述の種々用途に使用できることの他に、X、Yのうち少なくとも一つが一般式[2]で表される光電変換用増感色素として有用な化合物の中間体として用いられるためであり、製造方法における一般式[3]に相当するものである。
【0054】
同様の理由から、一般式[1]で表される本発明の化合物のうち、X 、および、Yが、それぞれ独立に、水素原子、または、ホルミル基である上記フェナントロチオフェン化合物(ただし、X、および、Yのうち少なくとも一つは、ホルミル基)も好ましい例としてあげることができ、これは製造方法における一般式[4]に相当するものである。
【0055】
一般式[1]で表される本発明の化合物のうち、特に中間体として有用な化合物を表2に示すが、これらに限定されるものではない。表中Phはフェニル基、Etはエチル基を表す。
【0056】
【表2】

【0057】
【表2】

【0058】
本発明の化合物の合成方法
本発明の化合物の合成方法としては、表2に示す本発明の化合物を中間体として合成し、表1に示す化合物(光電変換用増感色素)を合成する方法があげられる。すなわち以下の化学式に示されるような合成方法が適用できる。以下反応式を適宜組み合わせることで、本発明の化合物は容易に合成が可能である。
反応1
【0059】
【化7】



反応2
【0060】
【化8】



反応3
【0061】
【化9】



反応4
【0062】
【化10】





反応5
【0063】
【化11】



反応6
【0064】
【化12】





反応7
【0065】
【化13】



反応8
【0066】
【化14】



反応9
【0067】
【化15】

【0068】
以下、本発明の化合物を光電変換用増感色素として用いる場合について、詳細に説明する。
【0069】
本発明の化合物を光電変換用増感色素として用いる場合、本発明に係る光電変換用増感色素は、上述の本発明に係る光電変換用増感色素の1種以上を含むものであるが、一般式[1]等の光電変換用増感色素がカバーしきれない領域の太陽光吸収を補うために、1種以上の他の光電変換用増感色素を併せて含むことができる。つまり、一般式[1]等で表される光電変換用増感色素を単独で、または複数種を組み合わせて用いるほか、1種以上の他の増感色素と組み合わせて用いることができる。本発明に係る光電変換用増感色素を他の増感色素と組み合わせる場合の両者の配合比は、特に限定はされないが、本発明にかかる光電変換用増感色素1モルに対し、他の増感色素を0.01〜100モルとすることが好ましく、0.1〜10モルとすることがより好ましい。
【0070】
他の増感色素としては、たとえば、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0071】
これらの増感色素は、その構造中に、無機半導体表面に連結することができるような官能基を有していることが望ましい。その理由としては、光励起された色素の励起電子を無機半導体の伝導帯に迅速に伝えることができることが挙げられる。ここでいう官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、ヒドロキサム酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、および、ボロン酸基等が挙げられるが、無機半導体表面に増感色素を連結し、色素の励起電子を無機半導体の伝導帯に迅速に伝える役割を有する置換基であれば、これらに限定はされない。
【0072】
以下に、上述の本発明に係る光電変換用増感色素を用いて得られる本発明に係る光電変換材料、光電変換電極、および光電変換セルについて、増感色素以外の材料を含めて説明する。
【0073】
1.光電変換材料
上述の光電変換用増感色素を、連結基を介して無機半導体表面に連結することによって、無機半導体が増感された光電変換材料、すなわち、無機半導体と、この無機半導体に連結された増感色素とを含む光電変換材料が得られる。ここで、連結とは、無機半導体と増感色素が化学的あるいは物理的に結合していることを意味し、たとえば両者が吸着により結合していることも含んでいる。また、本明細書では、連結基、アンカー基、吸着基は、いずれも、同等の機能を有する基を表す語として用いられている。
【0074】
(無機半導体)
無機半導体は一般に、一部の領域の光に対して光電変換機能を有しているが、この表面に増感色素を連結することによって、可視光および/または近赤外光領域までの光電変換が可能となる。無機半導体の材質としては、主に無機酸化物が用いられるが、増感色素を連結することによって光電変換機能を有する無機半導体であれば、これに限らない。
【0075】
たとえば、無機酸化物ではない無機半導体としては、シリコン、ゲルマニウム、III族‐V族系半導体、金属カルコゲニド等が挙げられる。
【0076】
無機酸化物半導体としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、酸化バナジウム等を挙げることができるが、表面に増感色素を連結することによって可視光および/または近赤外光領域までの光電変換が可能となるものであれば、これらに限定されない。無機酸化物半導体の表面が増感色素によって増感されるためには、無機酸化物の伝導帯が増感色素の光励起順位から電子を受け取りやすい位置に存在することが望ましい。このため、無機酸化物半導体のなかでも、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ等が特に好ましく用いられる。さらに、価格や環境衛生性等の点からは、酸化チタンが特に好ましく用いられる。
【0077】
これらの無機半導体は、上述したなかから一種を用いるほか、複数種を選択して組み合わせて用いることもできる。
【0078】
(無機半導体の多孔質化)
上記の無機半導体は、多孔質化して、無機半導体多孔質体として使用することが好ましい。無機半導体多孔質体は、多量の増感色素をその表面に連結し、高効率な光電変換能力を有することができるように、多孔質化による広い表面積を有しているからである。多孔質化の方法としては、粒子径が数ナノメートルから数十ナノメートルの、酸化チタン等の無機酸化物粒子をペースト化した後に焼結する方法が広く知られているが、多孔質化して広い表面積が得られる方法であればこれに限られない。
【0079】
無機酸化物粒子のペースト化方法、無機半導体多孔質体の好ましい膜厚および無機半導体多孔質体表面への増感色素の連結方法等については、後述する。
【0080】
2.光電変換電極
上記光電変換材料を透明電極上に積層することによって、光電変換電極、すなわち、透明電極とこの透明電極上に積層された光電変換材料を含む光電変換電極が形成される。透明電極は、通常、透明基材の表面に形成される導電層であり、つまり、導電性表面を有する透明基材の導電面を意味する。
【0081】
(導電性表面)
用いられる導電性表面(透明電極)としては、太陽光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない導電材料なら特に限定されないが、ITO(インジウム−スズ酸化物)、酸化スズ(フッ素等がドープされたものを含む)、酸化亜鉛等の導電性の良好な金属酸化物が好適である。基板(導電性表面を有する透明基材)のシート抵抗(表面抵抗)はできるだけ低いほうが好ましく、具体的には20Ω/□(Ω/sq.)以下であることが好ましいので、導電層はそれに応じた厚みを有していることが好ましい。
【0082】
(透明基材)
用いられる透明基材としては、太陽光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない材料であれば特に限定されない。石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニル等の樹脂基材等を用いることができる。
【0083】
(積層方法)
導電性表面を有する透明基材の導電面に光電変換材料を積層する方法としては、たとえば、導電面にペースト化した無機酸化物粒子を塗布後、乾燥または焼結させて無機酸化物半導体多孔質体を形成し、これを透明基材ごと、増感色素を溶解させた溶液中に浸すことにより、無機酸化物半導体の多孔質表面と増感色素のアンカー基の親和性を利用して、増感色素をその多孔質表面に結合させる方法が、一般的方法として挙げられるが、この方法に限定されることはない。
【0084】
無機酸化物粒子をペースト化させるには、無機酸化物粒子を水または適当な有機溶剤中に分散させればよい。均質で表面積が大きい無機多孔質体として積層させるには、分散性の良いペーストを調製することが大切なので、必要に応じて、硝酸やアセチルアセトン等の酸やポリエチレングリコール、トリトンX−100等の分散剤をペースト成分に混合し、ペイントシェーカー等を用いてペースト化することが好ましい。
【0085】
ペーストを透明基材の導電面に塗布する方法としては、スピンコーターによる塗布方法やスクリーン印刷法、スキージを用いた塗布方法、ディップ法、吹き付け法、ローラー法等が用いられる。塗布された無機酸化物ペーストは、乾燥または焼成によりペースト中の揮発成分が除去されて、透明基材の導電面上に、無機酸化物半導体多孔質体を形成する。乾燥または焼成の条件としては、たとえば400〜500℃の温度で30分〜1時間程度の熱エネルギーを与える方法が一般的であるが、透明基材の導電面に密着性を有し、太陽光照射時に良好な起電力が得られる乾燥または焼成方法である限り、これに限定されることはない。
【0086】
増感色素を溶解させた溶液を作るためには、溶剤として、エタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;炭酸ジエチル、炭酸プロピレン等の炭酸エステル系溶剤;ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジメチルイミダゾリノン、Nメチルピロリドン、水等を用いることができるが、これらに限られない。溶液の濃度は、特に限定はされないが、0.01〜10mmol/L程度であることが好ましい。
【0087】
増感色素を溶解させた溶液中への無機半導体多孔質体の浸漬条件は、特に限定はされず、望ましい光電変換効率が得られるように適宜設定すればよいが、一般に、1〜60時間程度、室温〜80℃程度であることが好ましい。
【0088】
透明基材の導電面上に形成される無機半導体多孔質体の膜厚は、0.5〜200μm程度であることが望ましい。膜厚がこの範囲未満であると、有効な変換効率が得られない恐れがある。一方、膜厚がこの範囲より厚い場合は、成膜時に割れや剥がれが生じるなど、膜の作成が困難になるとともに、無機半導体多孔質体表層と導電面との距離が長くなるために発生電荷が導電面に有効に伝えられなくなって、良好な変換効率が得られにくくなる恐れがある。
【0089】
3.光電変換セル
以上のようにして得られる光電変換電極を、電解質層を介して導電性対極を組み合わせることによって光電変換セル、すなわち、光電変換電極と、電解質層と、導電性対極とを含む光電変換セルを形成することができる。
【0090】
(電解質層)
電解質層は、電解質、媒体、および添加物を含んで構成されることが好ましい。ここで、電解質としては、I2とヨウ化物(例としてLiI、NaI、KI、CsI、MgI2、CaI2、CuI、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等)の混合物、Br2と臭化物(例としてLiBr等)の混合物、有機溶融塩化合物等を用いることができるが、この限りではない。ここでいう有機溶融塩化合物とは、有機カチオンと無機または有機アニオンからなるイオン対化合物であって、融点が室温以下であるものを指す。
【0091】
具体的に有機溶融塩化合物を構成する有機カチオンとしては、芳香族系カチオン類として、たとえば、N−メチル−N’−エチルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−プロピルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−ヘキシルイミダゾリウムカチオン等のN−アルキル−N’−アルキルイミダゾリウムカチオン類;N−ヘキシルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン等のN−アルキルピリジニウムカチオン類が挙げられる。脂肪族カチオン類として、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムカチオン等の脂肪族系カチオン類、N,N−ジメチルピロリジニウム等の環状脂肪族カチオン類が挙げられる。
【0092】
有機溶融塩化合物を構成する無機または有機アニオンとしては、たとえば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、六フッ化リンイオン、四フッ化ホウ素イオン、三フッ化メタンスルホン酸塩、過塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の無機アニオン類;ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド等のアミド、イミド系アニオン類が挙げられる。
【0093】
有機溶融塩のその他の例としては、Inorganic Chemistry、35巻、1168〜1178頁、1996年に記載のものが挙げられる。
【0094】
以上に挙げたヨウ化物、臭化物等は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。なかでも、I2とヨウ化物の組み合わせ、たとえばI2とLiI、ピリジニウムヨーダイド、またはイミダゾリウムヨーダイド等を混合した電解質が好ましく用いられるが、これらに限定されることはない。
【0095】
好ましい電解質濃度は、媒体中にI2が0.01〜0.5Mであり、ヨウ化物および/または臭化物等(複数種の場合はそれらの混合物)が0.1〜15M以下である。
【0096】
電解質層に用いられる媒体は、良好なイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。液状の媒体としては、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類;メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物;ジメチルスルホキシド、スルホランなど非プロトン極性物質、水などを用いることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いられる。
【0097】
固体状(ゲル状を含む)の媒体を用いる目的で、液状媒体にポリマーを含ませることもできる。この場合、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーを上記液状媒体中に添加したり、エチレン性不飽和基を有した多官能性モノマーを上記液状媒体中で重合させたりして、媒体を固体状にすることができる。
【0098】
電解質層としてはこの他、CuI、CuSCN(これらの化合物は液状媒体を必要としないp型半導体であり電解質として作用する。)等やNature、395巻、583〜585頁(1998年10月8日)記載の2,2’,7,7’‐テトラキス(N, N‐ジ‐p‐メトキシフェニルアミン)‐9,9’‐スピロビフルオレンのような正孔輸送材料を用いることができる。
【0099】
電解質層には、光電変換セルの耐久性や電気的出力を向上させることを目的として各種添加物を加えることもできる。たとえば、耐久性向上を目的としてヨウ化マグネシウム等の無機塩類を添加してもよいし、出力向上を目的としてt-ブチルピリジン、2-ピコリン、2,6-ルチジン等のアミン類;デオキシコール酸等のステロイド類;グルコース、グルコサミン、グルクロン酸等の単糖類およびそれらの糖アルコール類;マルトース等の二糖類;ラフィノース等の直鎖状オリゴ糖類;シクロデキストリン等の環状オリゴ糖類;ラクトオリゴ糖等の加水分解オリゴ糖類、を添加することもできる。
【0100】
これら添加剤と上述の増感色素を併用することで、本発明の効果をより効果的に引き出すことができる。
【0101】
形成される電解質層の厚みは、特に限定されないが、導電性対極と色素の吸着した無機半導体層とが直接接触しないような最小の厚みとすることが好ましい。具体的には、0.1〜100μm程度であることが好ましい。
【0102】
(導電性対極)
導電性対極は、光電変換セルの正極として機能するものである。対極に用いられる導電性の材料としては、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、金属酸化物(ITO(インジウム‐スズ酸化物)、酸化スズ(フッ素等がドープされた物を含む)、酸化亜鉛等)、または炭素等が挙げられる。対極の膜厚は、特に制限はないが、5nm以上10μm以下であることが好ましい。
【0103】
(組み立て方)
上記光電変換電極と導電性対極を、電解質層を介して組み合わせることによって、光電変換セルを形成する。必要に応じて、電解質層の漏れや揮発を防ぐために、光電変換セルの周囲に封止を行う。封止には、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、ガラスフリット等を封止材料として用いることができる。光電変換セルは、必要に応じて、小面積の光電変換セルを連結させて作ることができる。たとえば、光電変換セルを直列に組み合わせることによって、起電圧を高くすることができる。
【実施例】
【0104】
以下に実施例を具体的に示すが本発明は以下に限定されるものではない。
【0105】
実施例1
化合物(17)の合成方法
6,9−Dibromo−9,10−phenanthorenequinone
(反応式)
【0106】
【化16】


【0107】
(操作)
ニトロベンゼン 30 ml に9,10−phenanthrenequinone 4.16 g ( 20 mmol ) を加え100℃にて加熱撹拌し、bromine 2.3 ml ( 44 mmol ) を加え、一夜加熱撹拌を行った。室温まで冷却後、チオ硫酸ナトリウムをbromineが消失するまで加え、吸引ろ過し、メタノールにて洗浄した。得られた固体を乾燥し、3,6−dibromo−9,10−phenanthrenequinone 5.58 g( 76% ) を得た。
【0108】
(物性値)
黄色固体
1H NMR (CDCl3,300MHz)
δ(ppm) =8.12 (sd, J=1.8 Hz, 2H)
=8.07 (d, J=8.2 Hz, 2H)
=7.67 (dd, J=1.8 and 8.5 Hz, 2H)
Ethyl−6,9−dibromophenanthro [9,10−c]thiophene−1−carboxylate
(反応式)
【0109】
【化17】


【0110】
(操作)
窒素雰囲気下、3,6−dibromophenanthrenequinone(3.66 g, 10.0 mmol)をdryToluene(150 ml)に溶解し、ここにdiethylthiodiglicolate(2.0 ml, 10.0 mmol),dry Ethanol(5 ml),DBU (6.1 ml, 40.0 mmol)を加え、室温にて3日間攪拌した。減圧濃縮し、50 ml程度になったところで水道水100 ml、クロロホルム100 mlを加え、6N塩酸水溶液を滴下しpH 1にした。クロロホルム(100 ml×3)で抽出し、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後濃縮し薄い黄色のクリーム状態となったところでメタノールを加え、ろ過した。得られた固体を乾燥し、ethyl−6,9−dibromophenanthro [9,10−c]thiophene−1−carboxylate(2.76 g, 60%)を得た。
【0111】
(物性値)
黄色固体
1HNMR ( CDCl3 300MHz )
δ(ppm) =9.39 (d, J=8.8 Hz, 1H)
=8.48 (m, , 2H)
=8.28 (s, 1H)
=8.06 (d,J=8.5, 1H)
=7.70−7.65 ( m,, 2H)
=4.48 (q, J=7.0 Hz)
=1.47 (t, J=7.0 Hz)
6,9−Dibromophenanthro[9,10−c]thiophene−1−carboxylic acid
(反応式)
【0112】
【化18】


【0113】
(操作)
Ethyl−6,9−dibromophenanthro[9,10−c]thiophene−1−carboxylate 5.60 g(12 mmol)をエタノール 200 mlに懸濁させ、2N NaOH aq. 30 mlを加え、一晩還流攪拌した。室温まで冷却後塩酸を加え酸性にした後、析出した固体をろ過し、水、メタノールで洗浄することにより6,9−Dibromophenanthro[9,10−c]thiophene−1−carboxylic acid 4.90 g(94%)を得た。
【0114】
(物性値)
薄い茶色固体
1H NMR(DMSO−d6,300MHz)
δ(ppm) =9.52(d, J=8.8 Hz, 1H)
=8.93(s, 1H)
=8.83(s, 2H)
=8.39(d, J=8.8 Hz, 1H)
=7.79−7.74(m, 2H)
IR(KBr)=2935,1681,1400,1268,1201,862,811,777(cm-1
6,9−dibromophenanthro [9,10−c]thiophene
(反応式)
【0115】
【化19】


【0116】
(操作)
6,9−dibromophenanthro [9,10−c]thiophene−1−carboxylic acid(4.0 g, 9.17 mmol)をエチレングリコール(80 ml)に懸濁させ、6N HCl aq.(16 ml)を加え125 ℃にて17時間過熱攪拌した。ろ過にて得られた固体を水、メタノールにて洗浄し6,9−dibromophenanthro [9,10−c]thiophene(3.32 g, 92%)を得た。
【0117】
(物性値)
薄い茶色固体
1HNMR (CDCl3 300MHz)
δ(ppm)=8.43 (sd, J=1.8, 2H)
=8.06 (d,J=8.5, 2H)
=8.05 (s, 2H)
=7.65 (dd, J=8.5 and 1.8, 2H)
IR(KBr) 3099,1716,1540,1473,1394,1267,871,833,812,777
6,9−Bis(diphenylamino)phenanthro[9,10−c]thiophene・・・化合物(17)
(反応式)
【0118】
【化20】


【0119】
(操作)
窒素雰囲気下、o−xylene 20 mlに6,9−Dibromophenanthro[9,10−c]thiophene 784 mg(2.0 mmol)、Diphenylamine 745 mg(4.4 mmol)、t−BuOK 423 mg(4.4 mmol)を溶解させ、o−xylene 4 mlにPd(OAc)2 18 mg(0.08 mmol)、PBut3 60.7 mg(0.3 mmol)を溶解させ室温にて30分攪拌したものを加え120℃にて3時間加熱攪拌した。水100 mlを加えクロロホルム100 ml×3にて抽出した。無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧濃縮することで茶色オイル状物質を得た。これにヘキサンを加え、白色固体をろ過よって得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘキサン、1:2)にて
6,9−Bis(diphenylamino)phenanthro[9,10−c]thiophene 801 mg(71%)を白色固体として得た。
【0120】
(物性値)
白色固体
1HNMR ( CDCl3 300MHz )
δ(ppm) =8.03 (d, J=8.5, 2H)
=7.86 (s, 2H)
=7.67 (sd, J=1.5 Hz, 2H)
=7.25−6.99 (m, 22H)
IR(KBr) 3031,1593,1487,1342,1315,1274,775,752,725,696
【0121】
実施例2、3
化合物(18)、(19)の合成方法
6,9−Bis(diphenylamino)−1−(2’−thienyl)phenanthro[9,10−c]thiophene・・・化合物(18)
6,9−Bis(diphenylamino)−1,3− (2’,2”− bisthienyl)phenanthro[9,10−c]thiophene・・・化合物(19)
(反応式)
【0122】
【化21】


【0123】
(操作)
6,9−Bis(diphenylamino)phenanthro[9,10−c]thiophene (455 mg, 0.8 mmol)をDMF(15 ml)に溶解し、0℃にて攪拌しながらNBS(313 mg, 1.76 mmol)をDMF(15 ml)に溶解し0℃に冷却したものを滴下した。0℃にて1時間攪拌した後室温にて2.5時間攪拌した。水道水(100ml)を加えクロロホルム(50 ml×3)にて抽出し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム(100 ml×2),水道水(100 ml)にて洗浄し、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸マグネシウムにて乾燥しシリカゲルカラムクロマトグラフィーにてモノブロモ体とジブロモ体の混合物448 mgを黄色固体として得た。得られ固体447mgをトルエン(4 ml)−エタノール(1.6 ml)に溶解し、5,5−Dimethyl−2−(2−thienyl)−1,3,2−dioxaborinane(306 mg)、水道水(1.6 ml)に炭酸ナトリウム(346 mg)を溶解したもの、tetrakis(triphenylphosphine(40 mg)を加え1時間アルゴンでバブリングした後80℃にて一晩加熱攪拌した。水道水(50 mg)を加えクロロホルム(50 ml×3)で抽出し、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(GPC)にて単離収率それぞれ6,9−Bis(diphenylamino)−1,3−bis(2−thienyl)phenanthro[9,10−c]thiophene(68 mg, 11.5%)
6,9−Bis(diphenylamino)−1−(2−thienyl)phenanthro[9,10−c]thiophene(41 mg, 7.8%)で得た。
【0124】
(物性値)
6,9−Bis(diphenylamino)−1−(2’−thienyl)phenanthro[9,10−c]thiophene・・・化合物(18)
黄色固体
1H NMR(CDCl3, 300 MHz)
δ(ppm)=8.03(d, J=8.8 Hz, 1H)
=7.92(s, 1H, Hg)
=7.76(d, J=9.1 Hz, 1H)
=7.64(m, 2H)
=7.46(sd, J=5.0 Hz, 1H)
=7.30−6.87(m, 24H)
IR(KBr)= 3455,3035,1593,1552,1487,1340,1275,752,694 (cm-1
【0125】
6,9−Bis(diphenylamino)−1,3− (2’,2”− bis thienyl)phenanthro[9,10−c]thiophene・・・化合物(19)
黄色固体
1H NMR(CDCl3, 300 MHz)
δ(ppm)=7.74(d, J=8.8 Hz, 2H)
=7.62(s, 2H)
=7.76(2d, J=4.1 Hz, 2H)
=7.28−6.67(m, 64H)
IR(KBr)=3060,1593,1487,1348,1271,819,752,694 (cm-1
【0126】
実施例4
化合物(20)の合成方法
6,9−Bis(diphenylamino)phenanthro [9,10−c]thiophene−1−carbaldehyde
(反応式)
【0127】
【化22】


【0128】
(操作)
窒素雰囲気下6,9−Bis(diphenylamino)phenanthro[9,10−c]thiophene (284 mg, 0.5 mmol)をTHF(5 ml)に懸濁させ、−78℃に冷却しn−BuLiのヘキサン溶液(472 μl, 0.75 mmol)を加え30分攪拌した。dryDMF(58 μl, 0.75mol)を加え1時間攪拌した。水100 mlを加えクロロホルム(100 ml×2)にて抽出し、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘキサン 1:1)にて精製し6,9−Bis(diphenylamino)phenanthro [9,10−c]thiophene−1−carbaldehyde(216 mg, 73%)を得た。
【0129】
(物性値)
橙色固体
1HNMR ( CDCl3 300MHz )
δ(ppm) =10.55 (s, 1H)
=8.52 (d,J=8.8, 1H)
=8.37 (s, 1H)
=8.01 (d, J=8.8, 1H)
=7.67 (sd, J=2.3, 1H)
=7.61 (sd, J=2.1, 1H)
=7.29−7.02 (m, 22H)
IR(KBr) 1637,1593,1540,1508,1489,1458,1419,1340,1271,752,696
【0130】
実施例5、6
化合物(23)、(24)の合成方法
6,9−Bis(diphenylamino)−1,3−Bis[2’−(5’−formyl)thienyl]−phenanthro[9,10−c]thiophene・・・化合物(23)
6,9−Bis(diphenylamino)−1−[2’−(5’−formyl)thienyl]−3−(2”−thienyl)phenanthro[9,10−c]thiophene・・・化合物(24)
(反応式)
【0131】
【化23】


【0132】
(操作)
窒素雰囲気下、6,9−Bis(diphenylamino)−1,3−Bis(2’−thienyl)phenanthro[9,10−c]thiophene
(36.5 mg, 0.05 mmol)をTHFに溶解し、−78℃に冷却しn−BuLiのヘキサン溶液(75 μl, 0.12 mmol)を加え1時間攪拌後、DMF(10μl, 0.12 mmol)を加えさらに1時間攪拌後、室温にて1時間攪拌した。水(50 ml)を加え、クロロホルム(50 ml×3)にて抽出した。無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(クロロホルム)にて精製し、6,9−Bis(diphenylamino)−1,3−Bis[2’−(5’−formyl)thienyl]−phenanthro[9,10−c]thiophene(8 mg, 20%)、6,9−Bis(diphenylamino)−1−[2’−(5’−formyl)thienyl]−3−(2”−thienyl)phenanthro
[9,10−c]thiophene(5 mg, 12%)をそれぞれオレンジ色固体として得た。
【0133】
(物性値)・・・化合物(24)
橙色固体
1H NMR (CDCl3,300MHz)
δ(ppm) =9.93 (s, 2H)
=7.80 (d, J=3.8 Hz, 2H)
=7.73 (dd, J=9.1 and 8.5 Hz, 2H)
=7.59 (sd, J=2.3 Hz, 2H)
=7.38 (d, J=3.8 Hz, 2H)
=7.24−7.00 ( m, 20H)
=6.93 (dd, J=2.3 and 8.9 Hz)
【0134】
実施例7
化合物(1)の合成方法
1−(2’−Carboxy−2’−cyanoethenyl)−6.9−bis(diphenylamino)phenanthro[9,10−c]thiophene
(反応式)
【0135】
【化24】


【0136】
(操作)
6.9−Bis(diphenylamino)phenanthro[9,10−c]thiophene−1−carbaldehyde(119 mg, 0.2 mmol)とシアノ酢酸(18.7 mg, 0.22 mmol)をTHF(5 ml)に溶解し、ピペリジンを3滴加え、64時間還流撹拌した。クロロホルム(100 ml)を加え、0.5N NaOH aq.(100 ml×2)、0.5NHCl
aq.(100 ml×2)、水(100 ml×2)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)にて精製し、目的化合物である1−(2’−carboxy−2’−cyanoethenyl)−6.9−bis(diphenylamino)phenanthro[9,10−c]thiophene(41 mg, 30%)を得た。
【0137】
(物性)
赤色固体
1HNMR (DMSO−d6 300MHz)
δ(ppm) =8.98 (s, 1H)
=8.89 (s, , 1H)
=8.29 (d, J=7.3 Hz, 1H)
=7.99 (d, J=7.9 Hz, 1H)
=7.45−7.02 (m, 24H)
【0138】
実施例8
化合物(11)の合成方法
1−(2’−Carbethoxy−2’−cyanoethenyl)−6.9−bis(diphenylamino)phenanthro[9,10−c]thiophene
(反応式)
【0139】
【化25】


【0140】
(操作)
試験管に6.9−Bis(diphenylamino)phenanthro[9,10−c]thiophene−1−carbaldehyde(74 mg, 0.124 mmol)、エタノール(2 ml)を入れた。これにシアノ酢酸エチル(13.2 μl, 0.124 mmol)を加えた。さらにピペリジン(12.2 μl)を加え、22時間撹拌した。水(50 ml)を加え、クロロホルム(50 ml×3)で抽出した。無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムにて乾燥させた後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘキサン 1:1)にて精製し、目的化合物である1−(2’−carbethoxy−2’−dicyanoethenyl)−6.9−bis(diphenylamino)
phenanthro[9,10−c]thiophene(72 mg, 86%)を得た。
【0141】
(物性)
赤色固体
1HNMR ( CDCl3 300MHz )
δ(ppm) =9.09 ( s, , 1H)
=8.31 ( s, , 1H)
=8.01 ( d,J=8.8, 1H)
=7.97 ( d,J=9.0, 1H)
=7.66 ( sd,J=2.1, 1H)
=7.59 ( sd,J=2.1, 1H)
=7.29−7.02 ( m,22H)
=4.38 ( q,J=7.1, 2H)
=1.40 ( t,J=7.0, 3H)
IR(KBr) 1716,1568,1487,1234,883,752,698,356,468,428
【0142】
実施例9〜36
実施例1〜8と同様にして表1、表2中の化合物をすべて合成することが出来た。これら合成した化合物について質量分析(使用機器:ブルカーAutoFlex II)を行った。その結果について表3に示す。
【0143】
【表3】

【0144】
次に、光電変換用増感色素の評価方法として、増感色素を用いて光電変換セルを組み立て、光電変換セルの変換効率を測定する方法について、光電変換セルの試験サンプルを表した図1を参照しつつ説明する。
【0145】
透明電極
フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付ガラス基板3(旭ガラス社製、タイプU−TCO)を使用した。
【0146】
導電性対極
フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3(旭ガラス社製、タイプU−TCO)の導電層上に、スパッタリング法により白金層(白金電極層)(厚み150nm)を積層した導電性対極4を用いた。
【0147】
酸化チタンペーストの調製
下記の処方でジルコニアビーズと混合し、ペイントシェーカーを用いて分散して酸化チタンペーストを得た(「部」は重量部を表す)。
【0148】
酸化チタン(日本アエロジル社製 P25 粒子径 21nm) 6 部
水(硝酸添加でpH2に調整) 14 部
アセチルアセトン 0.6 部
界面活性剤(ICN社製 Triton X−100) 0.04 部
PEG‐#500,000 0.3 部
【0149】
酸化チタン多孔質層の作成
透明電極の導電面(透明電極層3)に厚さ60μmのメンディングテープを張り、1cm角のテープを除去することでマスクを作り、空いた部分に上記酸化チタンペーストを数滴たらした後に、スキージで余分なペーストを除去した。風乾後、全てのマスクを除去し、450℃のオーブンで1時間焼成して、有効面積1cm2の酸化チタン多孔質層を有する酸化チタン電極を得た。
【0150】
増感色素の吸着
光電変換用増感色素をテトラヒドロフラン:アセトニトリル=1:1(体積比)に溶解(濃度0.6mmol/L)し、メンブランフィルターで不溶分を除去し、この色素溶液に上記酸化チタン電極を浸し、室温で24時間放置した。浸漬時間は、実際にセルを作成して変換効率を求め、その変換効率が最大となるように設定した。
【0151】
着色した電極表面を、溶解に使用した溶剤およびアルコールで洗浄した後、4‐t‐ブチルピリジンの2mol%アルコール溶液に30分浸した後、乾燥させて、増感色素の吸着した酸化チタン多孔質層1を有する光電変換電極を得た。
【0152】
電解質溶液の調製
下記処方の電解質溶液を調製した。溶媒にはメトキシアセトニトリルを用いた。
【0153】
LiI 0.1M
2 0.05M
4‐t‐ブチルピリジン 0.5M
1‐プロピル‐2,3‐ジメチルイミダゾリウムヨージド 0.6M
【0154】
光電変換セルの組み立て
図1に示すように、光電変換セルの試験サンプルを組み立てた。すなわち、上記のようにして光電変換用増感色素を吸着させた酸化チタン多孔質層1が形成された上記透明電極(フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3)と、フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板の導電層上に白金層が積層された導電性対極4とを、樹脂フィルム製スペーサー6(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン」フィルム(25μm厚))を挟んで固定し、その空隙に上記電解質溶液を注入して電解質溶液層2を形成した。ガラス基板3及び白金対極層には、それぞれ変換効率測定用の導線7を固定した。
【0155】
変換効率の測定方法
ORIEL社製ソーラーシュミレーター(#8116)をエアマスフィルターと組み合わせ、光量計で100mW/cm2 の光量に調整して測定用光源とし、光電変換セルの試験サンプルに光照射をしながら、KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用してI‐Vカーブ特性を測定した。変換効率ηは、I‐Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)、ff(フィルファクター値)を用いて下記式により算出した。
【0156】
【化26】

【0157】
実施例37〜52、および比較例1
表1中の本発明の光電変換用増感色素(1)〜(16)と比較例として、WO 02/11213号パンフレットに記載のポリエン色素である(A)を用いてセルを組み立て評価を行なった。また、作成セルを樹脂フィルム(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン」フィルム(25μm厚))とエポキシ樹脂型接着剤にて封止して寿命測定を行った。表4に結果を示す。
【0158】
【化27】

【0159】
【表4】

【0160】
上記の結果から明らかなように、比較例の増感色素は光劣化が著しいのに対し、本発明の増感色素である化合物(1)〜(16)は光劣化をほとんど起こさない安定な増感色素として機能することが分かった。
実施例53〜55、比較例2
次に、本発明の増感色素である化合物の混合溶液(おのおのの濃度は1×10-5M)から作成したセルの結果およびRu錯体増感色素(B)との混合溶液(おのおのの濃度は1×10-5M)から作成したセルの結果を表5に示す。比較例として、(B)を単独で用いた場合の結果についても同様に表5に示す。
【0161】
【表5】

【0162】
表5の結果から、同種の増感色素同士、あるいは異種増感色素との混合により、単独で用いた場合と比較して相乗効果(加成効果)が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は、光電変換セル試験サンプルを表す。
【図2】図2は、化合物(1)の吸収スペクトル(溶媒、テトラヒドロフラン)を表す。
【符号の説明】
【0164】
1.酸化チタン多孔質層(光電変換用増感色素が吸着済)
2.電解質溶液層
3.透明電極層(フッ素ドープ型酸化スズ)
4.Pt電極層
5.ガラス基盤
6.樹脂フィルム製スペーサー
7.変換効率測定用導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]であらわされるフェナントロチオフェン系化合物。
一般式[1]
【化1】





(式中、m、および、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、
X、および、Yは、それぞれ独立に、水素原子、ホルミル基、もしくは、下記一般式[2]で表される基である。
1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
一般式[2]
【化2】





(式中、Mは水素原子、カルボン酸と塩を形成する陽イオン、もしくは、炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【請求項2】
X、および、Yが、それぞれ独立に、水素原子、または、一般式[2]で表される基である請求項1記載のフェナントロチオフェン系化合物。ただし、X、および、Yのうち少なくとも一つは、一般式[2]で表される基である。
【請求項3】
X、および、Yが水素原子である請求項1記載のフェナントロチオフェン化合物。
【請求項4】
X、および、Yが、それぞれ独立に、水素原子、または、ホルミル基である請求項1記載のフェナントロチオフェン化合物。ただし、X、および、Yのうち少なくとも一つは、ホルミル基である。
【請求項5】
請求項2記載のフェナントロチオフェン化合物を含んでなる光電変換用増感色素。
【請求項6】
請求項5記載の光電変換用増感色素と、さらに、1種以上の光電変換用増感色素を含んでなる光電変換用増感色素。
【請求項7】
請求項5または6記載の増感色素と、無機半導体多孔質体とを連結させてなる光電変換材料。
【請求項8】
請求項7記載の光電変換材料を透明電極に積層させてなる光電変換電極。
【請求項9】
請求項8記載の光電変換電極、電解質層、および導電性対極を含んでなる光電変換セル。
【請求項10】
下記一般式[3]で表される化合物から下記一般式[4]で表される化合物を生成させる第一工程と、下記一般式[4]で表される化合物から下記一般式[5]で表される化合物を生成させる第二工程とからなる一般式[5]で表される化合物の製造方法。


一般式[3]
【化3】





(式中、m、および、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、
1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
一般式[4]
【化4】





(式中、m、および、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、
V 、および、Wは、それぞれ独立に、水素原子、または、ホルミル基である。ただし、V、および、Wのうち少なくとも一つは、ホルミル基である。
1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
一般式[5]
【化5】





(式中、m、および、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、
T、および、Uは、それぞれ独立に、水素原子、または、下記一般式[2]で表される基である。ただし、T、および、Uのうち少なくとも一つは、一般式[2]で表される基である。
1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。)

一般式[2]
【化6】





(式中、Mは水素原子、カルボン酸と塩を形成する陽イオン、もしくは、炭素数1〜8のアルキル基を表す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−226505(P2008−226505A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59326(P2007−59326)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】