説明

フェニルホウ素誘導体およびそれを用いたp−ボロノフェニルアラニンの製造方法

【課題】p−ボロノフェニルアラニンおよびL−p−ボロノフェニルアラニンを、従来よりも、より安価に、より安全に、より工業的に製造することを可能とするフェニルホウ素誘導体およびその製造方法を提供する。また、上記フェニルホウ素誘導体を用いることにより、p−ボロノフェニルアラニンおよびL−p−ボロノフェニルアラニンを、従来よりも、より安価に、より安全に、より工業的に製造する方法を提供する。
【解決手段】下記式(3):


(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体(ただし、式中Xはハロゲン元素等を表し、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基等を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)を脱保護反応後、加水分解、脱炭酸反応を行い、p−ボロフェニルアミノアラニンを得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、特に中性子補足療法薬剤の中間体として有用なフェニルホウ酸ピナコールエステル誘導体およびその製造方法に関する。また、本発明は、上記フェニルホウ酸ピナコールエステル誘導体を用いたp−ボロノフェニルアラニン(BPA)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射性アイソトープを利用した新しい癌の治療方法として、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が注目を集めている。ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素10同位体(10B)を含むホウ素化合物をガン細胞に取り込ませ、低エネルギーの中性子線(たとえば熱中性子)を照射して、細胞内で起こる核反応により局所的にガン細胞を破壊する治療方法である。
【0003】
このような目的で臨床にて使用される有機ホウ素化合物としてp−ボロノフェニルアラニン(L−p−ボロノフェニルアラニン)がある。上記p−ボロノフェニルアラニンは、これまで以下に示すような方法により合成されてきた(たとえば、非特許文献1〜3、特許文献1〜2参照)。また、4−ブロモメチルフェニルホウ酸誘導体は、p−ボロノフェニルアラニンの中間体として有用な化合物である。
【0004】
上記p−ボロノフェニルアラニン(L−p−ボロノフェニルアラニン)の合成方法として、光臭素化反応を用いる合成方法が知られている(たとえば、非特許文献1参照)。かかる手法はアルコールや水を反応溶媒として利用することができるため環境負荷の点で優れているが、光臭素化反応ではハロゲン化溶媒を使用し、さらには光反応装置を必須とするものであるため、特に工業的生産においては安全性に大きな懸念がされている。
【0005】
また、L−p−ボロノフェニルアラニンの合成方法として、不斉ロジウム(Rh)触媒や不斉パラジウム(Pd)触媒を用いた水素添加反応用いる合成方法が知られている(たとえば、非特許文献2、特許文献1参照)。しかしながら、かかる合成方法では、水素添加反応を行う対象化合物であるL−p−ボロノフェニルアラニン前駆体の合成するまでの保護反応、脱保護反応が煩雑であり、さらに高価な不斉触媒を使用するものでありその不斉収率も不十分であるため、特に工業的生産には大きな問題がある。
【0006】
また、p−ボロノフェニルアラニン(L−p−ボロノフェニルアラニン)の合成方法として、ピナコールボランを用いた合成方法が知られている(たとえば、特許文献2〜3参照)。しかしながら、かかる合成方法では、爆発性のボランを原料として用いるため、工業的製法としては安全性の面で十分な対応が必要となる。
【0007】
このため、p−ボロノフェニルアラニン(L−p−ボロノフェニルアラニン)をより安価に、より安全に、より工業的に製造する方法の開発が求められつつある。
【0008】
【非特許文献1】H.R.Synder,A.J.Reedy,W.M.J.Lennarz,J.Am.Chem.Soc.,1958,80,835.
【非特許文献2】C.Malan,C.Morin,SYNLETT,1996,167.
【特許文献1】米国特許第5157149号明細書
【特許文献2】特開2000−212185号公報
【特許文献3】特許第2979139号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、p−ボロノフェニルアラニンおよびL−p−ボロノフェニルアラニンを、従来よりも、より安価に、より安全に、より工業的に製造することを可能とするフェニルホウ素誘導体およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、上記フェニルホウ素誘導体を用いることにより、p−ボロノフェニルアラニン(BPA)およびL−p−ボロノフェニルアラニン(L−BPA)を、従来よりも、より安価に、より安全に、より工業的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、p−ボロノフェニルアラニン(BPA)およびL−p−ボロノフェニルアラニン(L−BPA)の合成方法を鋭意研究を重ねた結果、以下に示すフェニルホウ素誘導体ならびにそれを用いたp−ボロノフェニルアラニン(BPA)およびL−p−ボロノフェニルアラニン(L−BPA)の合成方法を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記式(1):
【化1】

(1)
で表される化合物と下記式(2):
【化2】

(2)
で表される化合物とをアルカリ条件下で反応させる工程を含むことを特徴とする下記式(3):
【化3】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体の製造方法に関する。
(ただし、式中Xはヨウ素、臭素、塩素、またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)。
【0013】
また、本発明は、下記式(4):
【化4】

(4)
で表される化合物とピナコールまたはピナコール誘導体とを反応させる第一工程、
前記第一工程で得られた化合物のベンジル位をXに置換して下記式(5):
【化5】

(5)
で表される化合物を得る第二工程、および、
前記式(5)で表される化合物と下記式(1):
【化6】

(1)
で表される化合物とをアルカリ条件下で反応させる第三工程、
を含むことを特徴とする下記式(3):
【化7】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体の製造方法に関する。
(ただし、式中Xはヨウ素、臭素、塩素、またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)。
【0014】
さらに、本発明は、Xが臭素であって、前記第二工程において臭素酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムを用いることを特徴とする上記ピナコールホウ酸誘導体の製造方法に関する。
【0015】
また、上記ピナコールホウ酸誘導体の製造方法は、Rがアセチル基であり、Rが水素である請求項3に記載のピナコールホウ酸誘導体であることが好ましい。
【0016】
また、上記ピナコールホウ酸誘導体の製造方法は、R〜Rがメチル基である請求項3または4に記載のピナコールホウ酸誘導体であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、上述の製造方法により得られた下記式(3):
【化8】

(3)
で表されるフェニルホウ素誘導体であるピナコールホウ酸誘導体に関する。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)。
【0018】
また、上記ピナコールホウ酸誘導体は、Rがアセチル基であり、Rが水素である請求項3に記載のピナコールホウ酸誘導体であることが好ましい。
【0019】
また、上記ピナコールホウ酸誘導体は、R〜Rがメチル基である請求項3または4に記載のピナコールホウ酸誘導体であることが好ましい。
【0020】
一方、本発明は、上述の下記式(3):
【化9】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応する工程を含むことを特徴とする下記式(6):
【化10】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体の製造方法に関する。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)。
【0021】
また、本発明は、上述の下記式(3):
【化11】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応して下記式(6):
【化12】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、および、
次工程として、前記式(6)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を加水分解する工程を含むことを特徴とする下記式(7):
【化13】

(7)
で表されるp−ボロノフェニルアラニンの製造方法に関する。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)。
【0022】
さらに、本発明は、上述の下記式(3):
【化14】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応して下記式(6):
【化15】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、および、
次いで、前記式(6)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を加水分解することにより下記式(8):
【化16】

(8)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程を含むことを特徴とするp−ボロノフェニルアラニン誘導体の製造方法に関する。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)。
【0023】
他方、本発明は、上述の下記式(3):
【化17】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応して下記式(6):
【化18】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、
次いで、前記式(6)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を加水分解することにより下記式(8):
【化19】

(8)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、および、
次いで、前記式(8)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体をアシラーゼにより光学分割することにより下記式(9):
【化20】

(9)
で表されるL−p−ボロノフェニルアラニンを得る工程を含むことを特徴とするL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法に関する。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)。
【0024】
また、本発明は、下記式(6):
【化21】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を加水分解することにより下記式(8):
【化22】

(8)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、および、
前記式(8)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体をアシラーゼにより光学分割することにより下記式(9):
【化23】

(9)
で表されるL−p−ボロノフェニルアラニンを得る工程を含むことを特徴とするL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法に関する。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)。
【0025】
また、本発明は、下記式(8):
【化24】

(8)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体をアシラーゼにより光学分割することにより下記式(9):
【化25】

(9)
で表されるL−p−ボロノフェニルアラニンを得る工程を含むことを特徴とするL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法に関する。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表す。)。
【0026】
また、上述のL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法においては、Rがアセチル基であり、Rが水素であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明のフェニルホウ素誘導体(ピナコールホウ酸誘導体)の製造方法を用いることにより、下記式(3):
【化26】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を、従来よりも、より安価に、より安全に、より工業的に製造することが可能となる。
【0028】
また、本発明のp−ボロノフェニルアラニン(BPA)およびL−p−ボロノフェニルアラニン(L−BPA)の製造方法は、上記式(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体を用いることにより、p−ボロノフェニルアラニン(BPA)およびL−p−ボロノフェニルアラニン(L−BPA)を、従来よりも、より安価に、より安全に、より工業的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、下記式(3):
【化27】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体およびその製造方法に関する。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)。
【0030】
上記一般式(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体において、Rはアミノ基の保護基を表す。上記保護基は特に限定されないが、たとえば、ベンジルオキシカルボニル基、第3ブチルオキシカルボニル基などのウレタン型保護基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基などのアシル型保護基などをあげることができる。また、フタルイミドやマレイミドでRの二つのプロトンを置換することやハロゲン原子等の置換基などを用いてもよい。なかでも、Rがアセチル基またはベンゾイル基であることが、BPA合成時のアルカリ脱炭酸反応条件下でも安定であること、工業的な入手が容易であること、アシラーゼによる光学分割に特に適していることなどの観点からも特に好ましい。なお、Rは本願明細書中の他の化合物においても同様である。
【0031】
上記一般式(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体において、Rは水素またはアミノ基の保護基を表す。上記保護基はRで示したものと同様のものを適宜用いることができる。Rがアミノ基の保護基を示す場合、Rと同一であっても異なっていてもよい。なお、Rは本願明細書中の他の化合物においても同様である。
【0032】
上記一般式(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体において、RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。RおよびRは、特に限定されないが、炭素数1〜7のアルキル基または炭素数7〜8のアラルキル基(アリールアルキル基)を示す。たとえば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基などのアルキル基、ベンジル基などのアラルキル基等があげられる。また、ハロゲン原子やニトロ基等の置換基などを適宜用いてもよい。なかでも、Rおよび/またはRがメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基であることが好ましい。なお、RおよびRは本願明細書中の他の化合物においても同様である。
【0033】
上記一般式(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体において、R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。R〜Rは、特に限定されないが、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数6〜8のアラルキル基(アリールアルキル基)を示す。たとえば、メチル基、エチル基、イソプロピル基などのアルキル基、フェニル基、ベンジル基などのアラルキル基等があげられる。なかでも、R〜Rがメチル基、エチル基、フェニル基であることが好ましく、さらにはR〜Rがすべてメチル基であるものが特に好ましい。なお、R〜Rは本願明細書中の他の化合物においても同様である。
【0034】
また、上記一般式(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体は、下記式(1):
【化28】

(1)
で表される化合物と下記式(2):
【化29】

(2)
で表される化合物とをアルカリ条件下で反応させる工程を経ることにより得ることができる。
(ただし、式中Xはヨウ素、臭素、塩素、またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)。
【0035】
上記一般式(2)で表される化合物において、Xはヨウ素、臭素、塩素、またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。なかでも、Xが臭素であることが、ホウ酸基のピナコール(またはピナコール誘導体)による保護反応と臭素化反応とをワンポットで処理可能な臭素酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムを用いた製造方法(合成方法)を使用することが可能となることからも好ましい。なお、Xは本願明細書中の他の化合物においても同様である。
【0036】
また、上記アルカリ条件下で反応させる工程では、上記式(1)と上記式(2)のカップリング反応が可能であれば特に限定はされないが、たとえば、ナトリウムエトキシドなどのナトリウムアルコキシド、カリウムエトキシドなどのカリウムアルコキシドなどをあげることができる。
【0037】
また、上記一般式(2)で表される化合物は、下記式(4):
【化30】

(4)
で表される化合物とピナコールまたはピナコール誘導体とを反応させる第一工程、および、
前記第一工程で得られた化合物のベンジル位をXに置換して下記式(5):
【化31】

(5)
で表される化合物を得る第二工程を経ることにより得ることができる。
【0038】
上述のホウ酸基のピナコール(またはピナコール誘導体)による保護反応は公知の反応を適宜用いることができる。たとえば、テトラヒドロフラン中で加熱または還流させる手法などをあげることができる。
【0039】
また、上述のベンジル位をXに置換するX置換反応(特に臭素化)反応は、ピナコール保護部に影響を与えない限り、公知の反応を適宜用いることができる。たとえば、臭素酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムを用いる手法、N−ブロモコハク酸イミドと少量の過酸化物を用いる手法などをあげることができる。なかでも、臭素酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムを用いることが好ましい。
【0040】
さらに、上記一般式(4)で表される化合物のホウ酸基のピナコール(またはピナコール誘導体)による保護反応とX置換反応(特に臭素化)反応とをワンポットで処理することが好ましい。特にワンポットで処理するにはピナコール保護で酢酸エチルを溶媒として使用することが好ましく、臭素化工程前にヘキサンで希釈することが好ましい。この方法によって臭素化反応の副生物であるジブロモ体(ホウ素も臭素で置換されたジブロモ体やベンジル位が2つ臭素化された化合物)の生成が抑制される。かかる観点からも、特にXが臭素であって、前記第二工程において臭素酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムを用いることが好ましい。
【0041】
また、本発明においては、上述のようにホウ酸基をピナコール(またはピナコール誘導体)による保護することを特徴としている。ピナコール(またはピナコール誘導体)による保護によるピナコールホウ素誘導体とすることにより、簡易かつ安全に高い収率で目的物を得ることが可能となり、さらにはその後の取り扱いを容易かつ安全に効率よく行うことができる。一方、ピナコール(またはピナコール誘導体)以外の、たとえば下記式(p):
【化32】


および、下記式(q):
【化33】


で表されるホウ酸の一般的な保護基による保護では、特に上述の臭素化反応中に脱保護されてしまい目的物が痕跡量しか得られない場合があり好ましくない。
【0042】
また、本発明は、上述の下記式(3):
【化34】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応する工程を含むことを特徴とする下記式(6):
【化35】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体の製造方法に関する。
【0043】
上記一般式(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体のピナコール保護部の脱保護反応においては、アミノ基の保護およびエステル基に影響を与えない限り、公知の反応を適宜用いることができる。たとえば、過ヨウ素酸ナトリウムと酢酸アンモニウムを含む溶液中で適宜加熱する手法などをあげることができる。
【0044】
また、本発明は、上述の下記式(3):
【化36】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応して下記式(6):
【化37】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、および、
次工程として、前記式(6)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を加水分解する工程を含むことを特徴とする下記式(7):
【化38】

(7)
で表されるp−ボロノフェニルアラニンの製造方法に関する。
【0045】
上記一般式(6)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体の加水分解反応は、たとえば、下記のような合成経路で行うことができる。
【化39】


なお、上記スキームではRがアセチル基、Rが水素、RおよびRがエチル基である場合であり、さらに後工程としてα−キモトリプシンを用いて光学分割する例を示す。
【0046】
また、上記一般式(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体のピナコール保護部の脱保護反応においては、アミノ基の保護およびエステル基に影響を与えない限り、公知の反応を適宜用いることができる。たとえば、過ヨウ素酸ナトリウムと酢酸アンモニウムを含む溶液中で適宜加熱する手法などをあげることができる。
【0047】
また、本発明は、下記式(8):
【化40】

(8)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体をアシラーゼにより光学分割することにより下記式(9):
【化41】

(9)
で表されるL−p−ボロノフェニルアラニンを得る工程を含むことを特徴とするL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法に関する。
【0048】
上記一般式(6)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体の加水分解反応は、たとえば、下記のような合成経路で行うことができる。
【化42】


なお、上記スキームではRがアセチル基、Rが水素、RおよびRがエチル基である場合である。
【0049】
L−p−ボロノフェニルアラニン誘導体の光学分割は公知の手法を適宜用いてもよいが、上記式(8)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体に対してアシラーゼを用いて光学分割する手法が特に好ましい。かかる手法を用いることにより、上記スキーム1に記載のステップAおよびB(加水分解)、ステップC(エステル化)、ステップD(光学分割)の複数のステップを行うことなく、上述のステップA(加水分解)とステップB’(光学分割)という簡略した工程とすることが可能となる。さらには、アシラーゼを用いた本発明の製造方法を用いることにより、より高い収率での製造が容易に行うことが可能となる。
【0050】
また、上述のL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法においては、Rがアセチル基であり、Rが水素であることが好ましい。
【0051】
上記アシラーゼには、市販のアシラーゼが利用できる。
【0052】
また、上記アシラーゼを用いた光学分割処理は、反応温度は30〜60℃の範囲、pHは7.0〜9.0の範囲で反応時間24〜60時間で行うことができる。反応収率と不純物の抑制から、反応温度50℃、pH8.0、反応時間48時間でおこなうことが好ましい。
【0053】
なお、上記各工程における詳細な合成方法例は、実施例に記載している。
【0054】
上述のように、本発明の上記式(3)で表されるピナコールホウ酸誘導体を用いることにより、p−ボロノフェニルアラニン(BPA)およびL−p−ボロノフェニルアラニン(L−BPA)を、従来よりも、より安価に、より安全に、より工業的に製造することが可能となる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾、変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
下記実施例において、化合物の分析および分離精製には以下の機種や試薬を用いて行った。
・NMRスペクトル:(日本電子社製、JNM−AL series AL400 400MHz)
・カラムクロマトグラフィー用シリカゲル:(メルク社製、シリカゲル60(63−200μm)。
【0057】
〔実施例1〕
(4−ブロモメチルフェニルホウ酸ピナコールエステル(b)の合成)
ピナコール14.2g(120mmol)と4−メチルフェニルホウ酸(a)16.3g(120mmol)を酢酸エチル240mLに溶かした溶液を90℃で2時間加熱還流した。この溶液を25℃に冷却して、n−ヘキサン240mLを加えて希釈した。次に臭素酸ナトリウム40.6g(269mmol)を水138mlに溶かした溶液を加え、これに亜硫酸水素ナトリウム28.8g(276mmol)の水溶液278mLを内温35℃以下に保つように12分間かけて滴下した後、室温で4時間撹拌した。反応液に酢酸エチル20mLを加えて分液し、有機相を5%Na水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下に溶媒を留去した。粗生成物の白色粉末32.8gを得た。得られた白色粉末をヘキサン5mLに懸濁させて洗浄し、次いでろ別して減圧乾燥し、4−ブロモメチルフェニルホウ酸ピナコールエステル(b)の白色粉末18.5gを得た。収率は52%であった。
【0058】
得られた白色粉末について、H−NMR(400MHz)で同定を行い、これが4−ブロモメチルフェニルホウ酸ピナコールエステル(b)であることを確認した。H−NMRスペクトルの測定においては、溶媒として重クロロホルム、内部標準物質としてテトラメチルシランを用いた。得られたデータならびに反応スキームを以下に示す。
【0059】
【化43】


H−NMR(CDCL) δ(ppm):1.34(s,12H)、4.49(s,2H)、2.96(m,2H)、7.39(d,2H,J=8.05Hz)、7.79(d,2H,J=8.05Hz)。
【0060】
〔実施例2〕
(ジエチル2−アセトアミド−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)マロネート(d)の合成)
20%ナトリウムエトキシド5.10g(15.0mmol)をエタノール19.5mLで希釈した溶液に、アセトアミドマロン酸ジエチル(c)3.04g(14.0mmol)を加え、25℃で30分間撹拌した。次に4−ブロモメチルフェニルホウ酸ピナコールエステル(b)2.97g(10.0mmol)を加え、100℃で12時間加熱還流した。この溶液を25℃に冷却して、3N塩酸を3.3mL加えた。減圧下でエタノールを留去したのち、酢酸エチル95mLで希釈し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下に溶媒を留去して、粗生成物のオレンジ色オイル4.60gを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1)に付し、ジエチル2−アセトアミド−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)マロネート(d)のオレンジ色無定形物質3.45gを得た。収率は80%であった。
【0061】
得られたオレンジ色無定形物質について、H−NMR(400MHz)で同定を行い、これがジエチル2−アセトアミド−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)マロネート(d)であることを確認した。H−NMRスペクトルの測定においては、溶媒として重クロロホルム、内部標準物質としてテトラメチルシランを用いた。得られたデータならびに反応スキームを以下に示す。
【0062】
【化44】


H−NMR(CDCL) δ(ppm):1.30(t,6H,J=7.08Hz)、1.33(s,12H)、2.02(s,3H)、3.66(s,2H)、4.27(q,4HJ=7.08Hz)、6.50(s,1H)、7.01(d,2H,J=7.81Hz)、7.70(d,2H,J=7.81Hz)。
【0063】
〔実施例3〕
(4−(2−アセトアミド−3−エトキシ−2−(エトキシカルボニル)−3−オキソプロピル)フェニルホウ酸(e)の合成)
ジエチル2−アセトアミド−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)マロネート(d)0.5g(1.15mmol)をアセトン40mLに溶かした溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム0.74g(3.45mmol)、酢酸アンモニウム0.27g(3.45mmol)および水20mLを加え、25℃で48時間撹拌した。析出物をろ別し、減圧下でアセトンを留去した後、酢酸エチル50mLで希釈し、水、飽和食塩水で洗浄した。減圧下に溶媒を留去して、4−(2−アセトアミド−3−エトキシ−2−(エトキシカルボニル)−3−オキソプロピル)フェニルホウ酸(e)の白色粉末0.40gを得た。収率は99%であった。
【0064】
得られた白色粉末について、H−NMR(400MHz)で同定を行い、これが4−(2−アセトアミド−3−エトキシ−2−(エトキシカルボニル)−3−オキソプロピル)フェニルホウ酸(e)であることを確認した。H−NMRスペクトルの測定においては、溶媒として重クロロホルム+重メタノール、内部標準物質としてテトラメチルシランを用いた。得られたデータならびに反応スキームを以下に示す。
【0065】
【化45】


H−NMR(CDCL+CDOD) δ(ppm):1.30(t,6H,J=7.08Hz)、1.92(s,2H)、2.02(s,3H)、3.64(s,2H)、4.21−4.30(m,4H)、6.63(s,1H)、7.00(d,2H,J=7.56Hz)、7.63(d,2H,J=7.56Hz)。
【0066】
〔実施例4〕
(2−アセトアミド−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸(f)の合成)
4−(2−アセトアミド−3−エトキシ−2−(エトキシカルボニル)−3−オキシプロピル)フェニルボロン酸(e)21.6g(61.7mmol)、5%水酸化ナトリウム水溶液179mLを85.0−91.0℃で4時間撹拌した。43−53℃に冷却し、3N−塩酸90mLを加え、さらに85.0−90.0℃で1時間撹拌した。45℃に冷却し、反応液を減圧濃縮した。残留物に水32mLを加えて20℃で30分間撹拌し、析出した結晶をろ過して、水20mLで洗浄した。結晶を45℃で減圧乾燥し、2−アセトアミド−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸(f)の白色粉末11.5gを得た。収率は74.6%であった。
【0067】
得られた白色粉末について、H−NMR(400MHz)で同定を行い、これが2−アセトアミド−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸(f)であることを確認した。H−NMRスペクトルの測定においては、溶媒として重メタノール、内部標準物質としてメタノールを用いた。得られたデータならびに反応スキームを以下に示す。
【0068】
【化46】


H−NMR(CDOD) δ(ppm):1.87(s,3H)、2.92(dd,2H,J=13.7,8.30Hz)、3.20(dd,2H,J=13.7,4.64Hz)、4.53(dd,1H,J=8.30,4.64Hz)、7.20(d,2H,J=7.56Hz)、7.59(br.s,2H)。
【0069】
〔実施例5〕
((2S)−2−アミノ−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸(g)の合成)
水酸化ナトリウム1.84g(46.0mmol)を水58mLに溶かし、50℃で2−アセトアミド−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸(f)11.5g(46.0mmol)を加えて撹拌した。この溶液に濃塩酸を加えてpH8.0に調整し、次にアシラーゼ(天野エンザイム社製、アシラーゼ「アマノ」)0.575gを加えて撹拌した。濃塩酸を加えて反応液のpH8.0を調整しながら,50℃で48時間撹拌した。反応液を25℃に冷却し,濃塩酸を加えてpH6.4に調整した。5℃で1時間静置したのち、水23mLを加えて希釈し,析出した結晶をろ過し,水23mL、エタノール12mLで洗浄した。結晶を減圧乾燥し、(2S)−2−アミノ−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸(g)の白色粉末4.54gを得た。収率は47.5%であった。
【0070】
得られた白色粉末について、H−NMR(400MHz)で同定を行い、これが(2S)−2−アミノ−3−[4−(ジヒドロキシボリル−10B)フェニル]プロパン酸(g)であることを確認した。H−NMRスペクトルの測定においては、溶媒として重水+重塩酸、内部標準物質として3−トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム−d(TSP)を用いた。得られたデータならびに反応スキームを以下に示す。
【0071】
【化47】


H−NMR(DO+DCl) δ(ppm):3.27(dd,1H,J=14.8,7.6Hz),3.40(dd,1H,J=14.8,6.0Hz),4.42(dd,1H,J=7.6,6.0Hz),7.38(d,2H,J=8.0Hz),7.77(d,2H,J=8.0Hz)。
【0072】
さらに、得られた(2S)−2−アミノ−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸(g)の光学純度はHPLC分析により確認した。HPLCの測定は、HPLCカラムにダイセル化学工業社製CROWN PAK CR(+)(移動相:60%HClO/HO=12/3000、検出器波長:223nm、カラム温度:25℃)を用いて分析した。(2S)−2−アミノ−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸は9.7分付近の保持時間であるとき、(2R)−2−アミノ−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸(g)は6.7分付近の保持時間に装置を調節し、得られた(2S)−2−アミノ−3−[4−(ジヒドロキシボリル)フェニル]プロパン酸の分析を行った結果、6.7分付近にピークは観測されず、光学純度99.9%e.e.以上であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

(1)
で表される化合物と下記式(2):
【化2】

(2)
で表される化合物とをアルカリ条件下で反応させる工程を含むことを特徴とする下記式(3):
【化3】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体の製造方法。
(ただし、式中Xはヨウ素、臭素、塩素、またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)
【請求項2】
下記式(4):
【化4】

(4)
で表される化合物とピナコールまたはピナコール誘導体とを反応させる第一工程、
前記第一工程で得られた化合物のベンジル位をXに置換して下記式(5):
【化5】

(5)
で表される化合物を得る第二工程、および、
前記式(5)で表される化合物と下記式(1):
【化6】

(1)
で表される化合物とをアルカリ条件下で反応させる第三工程、
を含むことを特徴とする下記式(3):
【化7】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体の製造方法。
(ただし、式中Xはヨウ素、臭素、塩素、またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)
【請求項3】
Xが臭素であって、前記第二工程において臭素酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムを用いることを特徴とする請求項2に記載のピナコールホウ酸誘導体の製造方法。
【請求項4】
がアセチル基であり、Rが水素である請求項1〜3のいずれかに記載のピナコールホウ酸誘導体の製造方法。
【請求項5】
〜Rがメチル基である請求項1〜4のいずれかに記載のピナコールホウ酸誘導体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られた下記式(3):
【化8】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)
【請求項7】
がアセチル基であり、Rが水素である請求項6に記載のピナコールホウ酸誘導体。
【請求項8】
〜Rがメチル基である請求項6または7に記載のピナコールホウ酸誘導体。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の下記式(3):
【化9】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応する工程を含むことを特徴とする下記式(6):
【化10】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体の製造方法。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)
【請求項10】
請求項6〜8のいずれかに記載の下記式(3):
【化11】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応して下記式(6):
【化12】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、および、
次工程として、前記式(6)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を加水分解する工程を含むことを特徴とする下記式(7):
【化13】

(7)
で表されるp−ボロノフェニルアラニンの製造方法。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)
【請求項11】
請求項6〜8のいずれかに記載の下記式(3):
【化14】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応して下記式(6):
【化15】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、および、
次いで、前記式(6)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を加水分解することにより下記式(8):
【化16】

(8)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程を含むことを特徴とするp−ボロノフェニルアラニン誘導体の製造方法。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)
【請求項12】
請求項6〜8のいずれかに記載の下記式(3):
【化17】

(3)
で表されるピナコールホウ酸誘導体を脱保護反応して下記式(6):
【化18】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、
次いで、前記式(6)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を加水分解することにより下記式(8):
【化19】

(8)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、および、
次いで、前記式(8)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体をアシラーゼにより光学分割することにより下記式(9):
【化20】

(9)
で表されるL−p−ボロノフェニルアラニンを得る工程を含むことを特徴とするL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表し、式中R〜Rは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)
【請求項13】
下記式(6):
【化21】

(6)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を加水分解することにより下記式(8):
【化22】

(8)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体を得る工程、および、
前記式(8)で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体をアシラーゼにより光学分割することにより下記式(9):
【化23】

(9)
で表されるL−p−ボロノフェニルアラニンを得る工程を含むことを特徴とするL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表し、式中RおよびRは同一または異なってアルキル基またはアラルキル基を表す。)
【請求項14】
下記式(8):
【化24】

(8)
で表されるp−ボロノフェニルアラニン誘導体をアシラーゼにより光学分割することにより下記式(9):
【化25】

(9)
で表されるL−p−ボロノフェニルアラニンを得る工程を含むことを特徴とするL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法。
(ただし、式中Rはアミノ基の保護基を表し、式中Rは水素またはアミノ基の保護基を表す。)
【請求項15】
がアセチル基であり、Rが水素である請求項12〜14のいずれかに記載のL−p−ボロノフェニルアラニンの製造方法。

【公開番号】特開2008−214319(P2008−214319A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57651(P2007−57651)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000162847)ステラケミファ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】